「共同参画」2015年 1月号

「共同参画」2015年 1月号

特集2

北京+20—北京宣言、行動綱領の採択から20年—
内閣府男女共同参画局総務課

今年は、第4回世界女性会議の開催から、そして同会議において「北京宣言」及び「行動綱領」が採択されてから20年を迎えます。

今年は、女性の地位向上等に向けて、様々な国際的な取組が行われます。国連の女性機関であるUNWomenが世界各国とともに取組を行っている「北京+20」はその一つです。

1995年(平成7年)に北京で開催された第4回世界女性会議において、「北京宣言」及び「行動綱領」が採択されてから20年。これを契機に、国連では「北京+20」として、本年3月に開催される国連婦人の地位委員会(CSW)において、これまでの取組状況に関するレビューを行うほか、広報・啓発等の活動を行っています。

今回は、「北京+20」に向けた国内の取組などをご紹介するほか、第4回世界女性会議にご参加された有馬真喜子さんに、「北京宣言」及び「行動綱領」が採択された当時の様子などを御寄稿いただきました。

(国連が作成した「北京+20」ロゴマーク)
(国連が作成した「北京+20」ロゴマーク)


第4回世界女性会議において採択された「行動綱領」は、貧困、教育、健康など12の重大問題領域(注)にそって、女性のエンパワーメントを図るためのアジェンダを記載しており、現在まで、女性の地位向上のための国際的基準となっています。

国連は、「北京宣言」及び「行動綱領」の採択以後5年、10年といった節目に特別な会議を開催し、それらに基づく取組状況について、レビューを行ってきています。

採択から20年目を迎える今年は、3月に行われる第59回CSWを「北京+20」記念会合として、2009年から2014年までの5年間における取組のレビューや新たな課題等についての議論が行われる予定です。

これに向けて、国連は各国に対して、国内でのレビューや、「北京+20」の広報・啓発活動を行うことなどを求めています。

日本でも、昨年9月に開催した「女性が輝く社会に向けた国際シンポジウム」(WAW! Tokyo 2014)を、「北京+20」関連イベントとして開催しています。

国内でのレビュー〜「聞く会」における意見交換

日本国内のレビューを進め、また「北京+20」に向けて国内の機運を高めるため、男女共同参画推進連携会議企画委員会は、昨年4月及び7月に、「「北京+20」に向けて」と題する聞く会(意見交換会)を開催しました。

聞く会では、特定非営利活動法人国連ウィメン日本協会の有馬真喜子理事長をコーディネーターとしてお迎えし、CSW日本代表の橋本ヒロ子さんを始め、これまで「北京宣言」及び「行動綱領」の実施に向けて尽力されてきた関係者、民間団体の方々、学識経験者に御登壇いただき、内閣府男女共同参画局を交えたパネルディスカッションが行われました。

4月の聞く会は、「北京宣言」及び「行動綱領」の実施に向けた、最近の国際社会の動向や、国際的な観点からの日本の貢献の在り方などをテーマとし、また、7月の聞く会は、国内及び国際的な課題等を踏まえて、アジア地域、世界に向けて、「新たな優先課題」として、日本からどのようなことを提案していくのか等をテーマとしました。

会場には、多くの方が参加され、「北京+20」に対する期待、これまでの成果や課題、「北京宣言」及び「行動綱領」を若い世代にどう伝えていくかなど、パネリスト間、更に会場の参加者を交えて、熱心な意見交換が行われました。

(聞く会(4月)日本学術会議講堂)
(聞く会(4月)日本学術会議講堂)

(聞く会(7月)中央合同庁舎8号館講堂)
(聞く会(7月)中央合同庁舎8号館講堂)


国内でのレビュー〜日本報告書の国連提出

政府は、関係省庁の協力により、日本の国内レビュー報告書の取りまとめを行い、国連に報告書を提出しています。

レビュー報告書では、「行動綱領」の12の重大問題領域に関して、2009年以降の取組状況について、第3次男女共同参画基本計画に基づく施策の展開を中心として、女性活躍推進の取組や、男女共同参画の視点からの防災・復興における対応等を始めとする取組を報告しています。

また、聞く会におけるパネルディスカッションの議論については、その概要を別添として報告しています。

ESCAPアジア太平洋地域レビュー

昨年11月17日から20日まで、国連アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)「男女共同参画及び女性のエンパワーメントに関するアジア太平洋会合」が、タイ・バンコクで開催されました。会合では、北京行動綱領に基づいて行った、アジア太平洋地域におけるこれまでの取組についてのレビューが行われました。

閣僚会合では、CSW日本代表の橋本ヒロ子さんが、日本の取組状況について、国内レビューの結果を踏まえた演説を行いました。

(ESCAP会合 タイ・バンコク)
(ESCAP会合 タイ・バンコク)

(橋本代表の演説)
(橋本代表の演説)


会合の結果は、「閣僚宣言」として取りまとめが行われ、「北京宣言」、「行動綱領」の完全かつ効果的な実施を再確認し、残された課題、新たな課題に対処すること、あらゆる形態の差別を非難し、行動を強化し、複合的な差別に傾注すること、女性のエンパワーメント、女性の地位向上を可能とする環境の創造へ関与すること、立法、計画、政策、事業、予算を策定し、強化し、実施することなどの取組を求めるとともに、12の重大問題領域ごとに、成果と課題を報告しています。

今後のうごき

ESCAPでの地域レビューの結果を踏まえた、世界的なレビューは、3月9日から20日まで、ニューヨークで開催される第59回CSWにおいて行われます。

また、今年9月には、2015年以降の国際開発目標である「ポスト2015開発アジェンダ」が策定されます。

世界的レビューや、国際開発目標策定の動きは、新たな男女共同参画基本計画の策定など、日本国内の今後の男女共同参画の取組にも大きく関連していきます。

第59回CSWにおける世界的なレビューの結果については、本誌で報告してまいります。国際的な動きに、引き続きご注目ください。


国連が作成した「北京+20」ロゴマークは、以下のサイトからダウンロードができます。利用条件等をご確認の上、広報・啓発に積極的にご活用ください。

URL:http://beijing20.unwomen.org/en/get-involved/toolkit

(注)12の重大問題領域
(1)女性と貧困、(2)女性の教育と訓練、(3)女性と健康、(4)女性に対する暴力、(5)女性と武力闘争、(6)女性と経済、(7)権力及び意思決定における女性、(8)女性の地位向上のための制度的な仕組み、(9)女性の人権、(10)女性とメディア、(11)女性と環境、(12)女児


有馬 真喜子さん御寄稿
「北京宣言、行動綱領について」
元 第4回世界女性会議日本代表顧問
元 国連婦人の地位委員会日本代表
特定非営利活動法人国連ウィメン日本協会理事長

特定非営利活動法人国連ウィメン日本協会理事長 有馬 真喜子さん


これまで4回の世界女性会議が開かれました。1975年のメキシコ、1980年のコペンハーゲン、1985年のナイロビ、そして1995年に北京で行われたのが「第4回世界女性会議」、いわゆる北京会議です。

それから今日まで、世界女性会議は開かれておりません。何度か第5回を開こうという動きはあったと聞いていますが、なかなか難しい状況があって開かれないままで今日に至っています。

私は、1975年に始まる3回の世界女性会議にメディアとして参加し、取材しました。そして、北京会議では、当時、私は国連婦人の地位委員会の日本代表を務めておりましたので、政府代表団の一員として参加しました。国連婦人の地位委員会では、北京会議の準備委員会として、3年ぐらいかけて準備を進めました。

北京会議には、約5万人が参加しました。それまでの3回の会議とは比べ物にならない大きな会議でした。日本からも、NGOを中心に約5,000人以上の方々が参加されました。これも史上最大でした。日本政府の首席代表を務められましたのは、当時の内閣官房長官の野坂浩賢さんでした。190か国・地域が参加したと報告されております。

北京会議の成果としては、「北京宣言」が、そして361項目にのぼる「行動綱領」が採択されました。

「北京宣言」と「行動綱領」はコンセンサス、つまり満場一致で採択されました。これは世界女性会議で初めてのことでした。それまでの会議では、宣言、あるいは行動計画をコンセンサスで採択することが難しかったのですが、北京会議ではコンセンサスで採択することができたという点で、画期的だと言われています。

しかし、「行動綱領」が採択された後、50以上の国が、361項目中の特定の項目について、留保、立場表明・解釈表明を行っています。特定項目について留保するということは、「我が国はその項目については受け入れない」ということであり、解釈表明というのは、「この文言はこのように解釈したから受け入れた」ということを表明するものです。主に人権の問題、それからreproductive rightsやservice、あるいはfamilyという課題について留保がつけられ、解釈表明が行われました。20年前のこうした問題の多くは、現在も残されたままです。

あれから20年、私たちの環境、地位、国の政策などに進展はありました。しかし残されたままの問題に加え、今日の時代が抱える新しい課題も出現しています。

時代にふさわしい、そしてこれからの時代を担う人々を見据えての新しい課題を考えることは大事なことであり、それらをも含めての取組を進めることによって、行動綱領はさらに生き生きとし、今日性を持った私たちの指針であり続けるのだと思います。

「北京宣言」及び「北京行動綱領」など関連する資料は、内閣府のホームページに掲載しています。
http://www.gender.go.jp/international/int_standard/index.html