「共同参画」2014年 8月号

「共同参画」2014年 8月号

行政施策トピックス

「日本再興戦略」改訂2014について─「女性が輝く日本」の実現に向けて─
内閣官房女性が輝く社会づくりチーム

1 はじめに

安倍内閣では、女性の力は我が国最大の潜在力であるとして、「女性の活躍」を成長戦略の中核に位置付けています。

現在、政府では、昨年6月に閣議決定された「日本再興戦略─JAPAN is BACK─」に盛り込まれた施策を着実に実行しています。また、総理自ら国連総会などでも、女性の活躍推進について、その決意を強く発信してきました1

こうした取組の結果、各企業における経営陣への女性登用が進んできているなど、一定の成果を挙げてきており、その取組について世界からも注目を集めています。

こうした中、日本再興戦略を更に進化させるべく本年1月に決定された「成長戦略進化のための今後の検討方針」(産業競争力会議決定)では、その最初に、「「女性が輝く日本」の実現」が掲げられました。これを受け、森まさこ女性活力・子育て支援担当大臣の下に「女性が輝く社会づくりチーム」を立ち上げるとともに、局長級の関係府省庁連絡会議を開催し、年央の成長戦略改定に向けて、政府一丸となって検討をしてきました。

本年6月24日に「「日本再興戦略」改訂2014─未来への挑戦─」が閣議決定されましたので、その内容について御紹介します。

1 平成25年9月、第68回国連総会における安倍内閣総理大臣一般討論演説。「いかにして、日本は成長を図るのか。ここで、成長の要因となり、成果ともなるのが、改めていうまでもなく、女性の力の活用にほかなりません。女性にとって働きやすい環境をこしらえ、女性の労働機会、活動の場を充実させることは、今や日本にとって、選択の対象となりません。まさしく、焦眉の課題です。「女性が輝く社会をつくる」──。そう言って、私は、国内の仕組みを変えようと、取り組んでいます。」

2 「「日本再興戦略」改訂2014─未来への挑戦─」の概要

新たな成長戦略では「女性の活躍推進」が大きな柱に掲げられています。具体的な施策は大きく「育児・家事環境の拡充」「企業等における女性の登用を促進するための環境整備」「働き方に中立的な税制・社会保障制度等への見直し」に分かれています。

そのうち、主な施策について御紹介します。


(1) 「放課後子ども総合プラン」

女性の力を最大限に発揮するためには、安全で安心して子供を預けることができる環境整備が不可欠です。

保育所は子供を長い時間預かってくれたが、小学校1年生になると、放課後児童クラブ等の開設場所や開所時間が必ずしも十分ではないために、仕事と子育ての両立ができなくなるという、いわゆる「小1の壁」という問題が、特に子育て中の女性の仕事と生活の両立を阻んできました。

この問題を打破するため、平成31年度末までに、新たに約30万人分の放課後児童クラブを整備します。その際、学校の余裕教室等を徹底的に活用しつつ、放課後の子供たちの居場所を、より良いものにしていく必要があるため、厚生労働省と文部科学省を中心に、年央の「放課後子ども総合プラン」の策定に向けて検討を進めています。

放課後対策の総合的な推進

(2) 女性の活躍推進に向けた新たな法的枠組みの構築

安倍総理は、本年1月の世界経済フォーラムにおいても「2020年までに、指導的地位にいる人の3割を、女性にします」とスピーチしており、我が国の女性活躍推進のための取組への国際的な関心は高まりつつあります。

こうした動きを踏まえ、いわゆる「202030」の実現に向けて、着実に成果を見せてきている女性活躍推進の取組を一過性のものにせず、更に前進させるため、新たな総合的枠組みについて検討します。

具体的には、国、地方公共団体、民間事業者における女性の登用状況の把握、目標設定、目標達成に向けた自主的行動計画の策定及びこれらの情報開示等、それぞれが取るべき対応について検討します。

また、それぞれの取組を促進するために、認定などの仕組みやインセンティブの付与等、実効性を確保するための措置についても検討を進め、最終的には、これらについて今年度中に結論を得て、国会への法案提出を目指します。

世界経済フォーラム 年次会議冒頭演説(平成26年1月22日)(官邸HPより)
世界経済フォーラム 年次会議冒頭演説
(平成26年1月22日)(官邸HPより)

(3) 企業における女性登用の「見える化」

女性の登用状況等の情報開示は、非財務情報に含まれる企業の「見えない価値」の一つとして、投資家からも注目を集めています。こうした取組により、投資家等による評価を通じて、女性の登用が促進されることが期待されています。

現状、有価証券報告書やコーポレート・ガバナンスに関する報告書における女性の登用状況等の情報開示はあまり進んでいません。

こうした状況を踏まえ、更なる情報開示を進めるため、有価証券報告書における役員の女性比率の記載の義務付けや、コーポレート・ガバナンスに関する報告書において、企業における役員、管理職への女性の登用状況等を記載するよう金融商品取引所に要請をしていきます。

有価証券報告書等における情報開示

(4) 「女性活躍応援プラン(仮称)」の実施

女性の登用促進を進める一方で、これまで出産や子育てに専念してきた主婦の方々を含め、活躍を希望する全ての女性の能力が十分に発揮されることが重要です。「女性活躍応援プラン(仮称)」として、各府省で実施する支援施策をパッケージ化し、強力に推進します。

具体的には、(1)家事・育児・介護等で地域貢献を希望する方、(2)正社員や保育士等として再就職を希望する方、(3)起業・NPO等の立ち上げを希望する方向けに、マザーズハローワークや学び直し支援、トライアル雇用や創業スクール等の取組を進めます。また、関係省庁から成る推進会議を新たに立ち上げ、「女性活躍応援プランサイト(仮称)」の開設や学び直しの地域ネットワークの創設など総合的推進体制を整備します。

すべての女性が輝く社会づくりに向けた能力発揮支援〜女性活躍応援プラン(仮称)〜

(5) 働き方に中立的な税制・社会保障制度等への見直し

「成長戦略進化のための今後の検討方針」では、「「女性が輝く日本」の実現」の項目において、働き方の選択に対して中立的な税制・社会保障制度の在り方について検討を行うこととされており、本年3月以降、政府税制調査会において、女性の働き方の選択に対して中立的な税制の検討を行ってきました2

2 基礎問題小委員会報告(働き方の選択に対して中立的な税制関係)(平成26年6月11日)https://www.cao.go.jp/zei-cho/gijiroku/zeicho/2014/26zen9kai.html

働き方の選択に対してより中立的な社会制度を構築するためには、幅広く総合的な取組が不可欠です。各種制度が配偶者の収入に対応してどのような効果を及ぼすかを整理すると、民間企業においては概ね7割〜8割の企業で家族手当を支給しており、そのうち約半数が103万円を支給基準として採用しております。公務員の扶養手当は、130万円が支給基準となっています。

現行の制度では、配偶者の収入増が逆に世帯収入の減少をもたらす制度となっており、その見直しについて引き続き総合的に検討していくことが必要です。このため、女性の活躍の更なる促進に向け、税制、社会保障制度、配偶者手当等について、経済財政諮問会議で年末までに総合的に検討します。

妻の収入による世帯収入への影響

この他にも、「待機児童解消加速化プラン」の確実な実施のための保育士確保策の着実な実施や、子育て支援員(仮称)の創設など、女性の活躍推進に向けた様々な施策が盛り込まれています3

3 新たな成長戦略の詳細は以下URLをご覧ください。
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/pdf/honbun2JP.pdf

3 「女性が輝く日本」の実現に向けて

新たな成長戦略の策定と合わせて、6月24日に安倍総理は経済界に対して、「202030」の実現に向けて、更なる女性の登用の推進のための取組を要請しました。

≪要請の内容≫

  • 各企業において、実情に応じて、主体的に、女性登用に向けた目標を設定し、目標達成に向けた自主行動計画を策定していただきたい。
  • 有価証券報告書における役員女性比率の記載をはじめ、各企業における女性登用状況等の情報開示を積極的に進めていただきたい。
  • 政府としても、国が率先して取り組んでいくことはもちろん、国・地方公共団体・企業、それぞれの主体における女性登用促進のため、実効性の高い新たな法的枠組みを構築したい。スピード感を持って検討していくので、経済界の皆様のご協力をお願いしたい。

経済界からも、自主行動計画の策定や情報の開示、新たな法的枠組みの構築など更なる取組について前向きな御意見を頂きました。「女性が輝く日本」の実現に向けて、政府だけでなく、経済界等とも連携しながら、強力に取組を進めていきます。

日本経済の成長にとって、我が国最大の潜在力である女性の力を活かしていくことが不可欠です。その女性の力を活かすべく新たな成長戦略に盛り込まれた施策を含め、全ての女性が輝く社会の実現に向けて、引き続き政府一丸となって施策を推進していきます。

経済界との意見交換会 (平成26年6月24日)(官邸HPより)
経済界との意見交換会
(平成26年6月24日)(官邸HPより)


「日本再興戦略」改訂2014ー未知への挑戦ー(概要)