「共同参画」2014年 6月号

「共同参画」2014年 6月号

特集2

地域経済の活性化に向けた女性の活躍促進について
─男女共同参画会議基本問題・影響調査専門調査会報告書─
内閣府男女共同参画局総務課

男女共同参画会議基本問題・影響調査専門調査会(会長:佐藤博樹東京大学大学院教授)は、平成25年7月以降、地域経済の活性化に向けた女性の活躍促進について検討を行い、26年4月に報告書を取りまとめました。報告書の内容を紹介します。

はじめに

平成25年6月に閣議決定された「日本再興戦略」では、「女性の活躍は成長戦略の中核」とし、女性が働きやすい環境を整え、社会に活力を取り戻すことを掲げています。

日本経済のみならず、地域経済の活性化にとっても、女性の活躍は鍵となります。

我が国の企業のうち99%以上が中小企業・小規模事業者で、これらの企業は、地域における雇用を創出し、地域資源を活用し、地域に還元する事業・サービスを行うなど、地域に根付いた経済活動を行っています。地域経済を支える中小企業・小規模事業者では、従業者に占める女性の割合が高くなっており、管理職に占める女性の割合も高くなっています。

地域によって異なる現状

女性の労働力率(M字カーブ)や管理的職業従事者に占める女性の割合、女性による起業の状況等、女性の活躍の現状は地域によって異なっています。

有業者の女性割合と管理的職業従事者の女性割合を都道府県別に見ると、高知県は有業者の女性割合も管理職の女性割合も高くなっています。石川県は、有業者の女性割合は高くなっていますが、管理職の女性割合は47都道府県中46位と低くなっています。東京都は、有業者の女性割合は低くなっていますが、管理職の女性割合は47都道府県中10位と高くなっています(図表1参照)。

地域によって女性の活躍状況は異なっており、現状における課題が異なることから、これを解決する方法も地域によって異なると考えられます。また、同じ都道府県内でも市区町村によって事情が異なると考えられます。


図表1 有業者・管理的職業従事者に占める女性割合


都道府県における取組の現状と課題

全ての都道府県において男女共同参画計画が策定され、企業等における女性の活躍推進についての記載がされています。女性の活躍推進の取組は着実に実施されているように見えますが、個別に取組の詳細を見ていくと、経済分野での女性の活躍に関する取組をほとんど行っていない都道府県もあります。

公共調達等による企業へのインセンティブ付与として、32都道府県が公共工事の競争参加資格審査等における男女共同参画等の項目の設定を行っていますが、仕事と子育て等の両立支援の取組のみを評価するものが多く、役員や管理職への女性の登用促進等を評価しているところは少なくなっています(図表2参照)。


図表2 公共調達における男女共同参画等の項目の設定(都道府県)


市区町村における取組の現状と課題

市区町村については、市区と町村とで現状が大きく異なっています。男女共同参画計画は市区では95%が策定済みですが、町村では策定済みは半数以下となっており(図表3参照)、推進体制も整備されていません。審議会等委員の女性割合の数値目標も、市区の9割が設定しているのに対し、町村で設定しているのは約3割となっています。

政令指定都市のように、公共調達に関する取組や企業の表彰等の取組や、女性による起業の支援等を行っている市区町村もありますが、女性の登用促進等について何の取組を行っていない市区町村も多くなっています。町村については、男女共同参画の推進に係る取組自体がほとんどないところもあります。


図表3 男女共同参画計画の策定状況(市区町村)


今後の方向性

以上のような現状の課題を踏まえ、地域経済の活性化に向け女性の活躍を推進するため、今後の方向性として3つの柱を提示しました。

(1)地域の実情に応じた地域に根差した取組の展開

女性の活躍状況は地域によって異なっており、市区町村によっても異なると考えられることから、都道府県はもちろんのこと、より住民・現場に近い市区町村レベルでの取組が不可欠です。

全ての都道府県・市区町村において、住民一人一人が女性の活躍を応援する気運を醸成し、地域の実情に応じた取組を推進することが求められます。

(2)両立支援に加え登用促進により女性の活躍を実現

地方公共団体の取組として、仕事と子育て等との両立支援にとどまらず、中小企業・小規模事業者における女性の登用や女性による起業・創業の拡大等、経済分野における女性の活躍を明確なターゲットとして捉えて、直接的に女性の登用促進に取り組むことが求められます。

その際、地域における女性の活躍がその地域の繁栄をもたらすとの理解を広げながら、地方公共団体を中心として地域社会全体が行動していくことが期待されます。

農林水産業については、女性グループ等による6次産業化の支援や、農林水産団体の役員や正組合員の女性割合を高めるなど、女性の活躍を推進することが重要となります。

(3)多様な主体による女性活躍のための支援ネットワークの構築

経済分野における女性の力の発揮を実現するためには、地域の各界各層がそれぞれ女性の活躍を支援するだけでなく、国、地方公共団体、民間団体、住民が連携・協働して取り組むことが必要です。

これには、地方公共団体の経済担当部局、農林水産担当部局はもちろん、従来型の男女共同参画社会づくりでは必ずしも主要なプレーヤーとしては位置付けられてこなかった商工会・商工会議所等の地域経済団体、地域銀行、信用金庫、信用組合等の地域金融機関、農業協同組合、森林組合、漁業協同組合等の農林水産団体、経済産業局、労働局等の国の地方機関、地域経済をけん引している個別の主要な企業、地域資源と市場ニーズ等とのマッチング等を行っているNPO等の参加が不可欠です。

それぞれの主体がその得意とする役割を自主的に果たしつつ、緊密な連携・協働の下、全体として隙間のない横断的・総合的な支援体制を構築することが求められます(図表4参照)。

図表4 ネットワーク構築のイメージ図


おわりに

平成26年4月25日に、男女共同参画会議が開催され、基本問題・影響調査専門調査会の佐藤博樹会長より、本報告書の内容が報告されました。男女共同参画会議は、政府において、女性の活躍推進に向けた全国的なムーブメントを作り、地域に根差した取組を促進していくこと、また、都道府県、市区町村に対して、積極的な取組を要請していくことを決定しました。

全国津々浦々で、多様な主体による女性活躍のための支援ネットワークが構築され、女性の活躍による地域経済の活性化が実現することを期待しています。

<参考URL>

http://www.gender.go.jp/kaigi/senmon/kihon/kihon_eikyou/chiiki_keizai.html