「共同参画」2014年 6月号

「共同参画」2014年 6月号

特集1

ワーク・ライフ・バランスの実現に向けた現状と課題
内閣府男女共同参画局仕事と生活の調和推進室

ワーク・ライフ・バランスに関する最新の情報についてご紹介します。

仕事と生活の調和が実現した社会に向けては、「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」と「仕事と生活の調和推進のための行動指針」(平成19年12月策定、平成22年6月改定)に基づき、官民一体となって、様々な取組が進められていますが、「仕事と生活の調和連携推進・評価部会」では、「行動指針」の数値目標に向けての取組の進捗状況について点検・評価し、政策への反映を図っています。その成果は、毎年「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)レポート」にまとめ公表しています。

以下、最新の情報と今後の課題についてご紹介します。

1.長時間労働の現状について

週労働時間60時間以上の雇用者の割合は、近年9%台が続いていましたが、2013年には8.8%に改善しています。

これを男女別にみると、女性と比べて男性の方がその割合が高く、特に30歳代の男性の割合が一貫して高くなっています(図表1)。

業種別では、「運輸業、郵便業」、「建設業」、「情報通信業」が高くなっています(図表2)。

また、残業している人に対する上司の評価について部下が抱いているイメージ(労働時間別)は、1日当たりの労働時間が長い正社員ほどポジティブな評価をしていると感じる割合が高くなっています(図表3)。

一方で、企業の人事部では、「従業員が残業や休日出勤をせず、時間内に仕事を終え帰宅すること」は、人事評価においては考慮されていない場合が最も多くなっています(図表4)。

正社員が残業削減に効果的だと考える取組は、「計画的な残業禁止日の設定」、「上司からの声かけ」、「短時間で質の高い仕事をすることを評価する」などが多く挙げられています。このうち、「短時間で質の高い仕事をすることを評価する」などでは、実際に職場で取り組んでいると回答した人が少なくなっています(図表5)。


図表1 週労働時間60時間以上の就業者の割合(男性・年齢別)


図表2 業種別の週労働時間60時間以上の雇用者の割合の推移


図表3 労働時間別にみた残業に対する上司の評価イメージ〔個人調査〕(正社員)


図表4 所定労働時間内に仕事を終えることに対する人事評価〔企業調査〕


図表5 残業削減に効果的と考えられる取組と、実際の取組〔個人調査〕(正社員)


2.休暇取得の現状について

年次有給休暇取得率は、2000年以降、50%を下回る水準で推移しており、2012年には47.1%となっています。

取得率の傾向としては、企業規模が大きいほど取得率が高くなっています。

また、計画的付与制度を有する企業の方が取得率は高くなっています。

3.女性の就業継続の現状について

第1子出産前後の女性の継続就業率は2005〜2009年では38.0%であり長期的に見ても4割弱で推移している状況が続いています(図表6)。

これを正規の職員とパート・派遣等に分けて見ると、正規の職員は就業を継続している者の割合が5割を超えていますが、パート・派遣は就業を継続する者の割合が2割に達していません(図表7)。

末子妊娠時の退職理由を見ると、最多の「家事・育児に専念するため、自発的に辞めた」(正社員34.5%、非正社員48.1%)に次いで、正社員では、「就業時間が長い、勤務時間が不規則」(26.1%)、「勤務先の両立支援制度が不十分だった」(21.2%)、非正社員では、「体調不良などで両立が難しかった」(19.0%)が多く挙げられています。

一方、正社員・非正規社員とも、第1子妊娠判明時に、仕事のやりがいを強く感じている女性ほど、出産後も就業を継続する意向が強い傾向があります(図表8)。

また、第1子出産後も就業を継続する意向があり、実際に就業を継続した女性は、概ね小学生のころ、両親が「結婚・出産しても女性は仕事を続けるべきだ」と考えていたと感じる割合が高くなっています。反対に、就業を継続する意向がなかった女性は、両親が「結婚したら家事・育児に専念すべきだ」と考えていたと感じる割合が高くなっています(図表9)。


図表6 出産前有職者に係る第1子出産前後での就業状況


図表7 出産前有職者の就業継続率(就業形態別)


図表8 仕事のやりがい別にみた就業継続意向〔個人調査〕(女性)


図表9 概ね小学生時に感じた両親の意識別に見た就業継続意向〔個人調査〕(女性)


4.男性の家事・育児参画の現状について

男性の育児休業取得率は、2012年度には1.89%と非常に低い水準で推移しています(図表10)。

男性が育児休業を取得しない理由としては、「職場が制度を取得しにくい雰囲気だった」(30.3%)、「業務が繁忙であった」(29.7%)、「配偶者等、自分以外に育児をする人がいた」(29.4%)などが多く挙げられています。

また、6歳未満の子どもをもつ夫の育児・家事関連時間は、2011年では67分と先進国中最低の水準にとどまっています(図表11)。

さらに、6歳未満の子どもをもつ夫の「家事」及び「育児」の行動者率は、共働き世帯でも、約8割の男性が全く「家事」を行わず、約7割の男性が全く「育児」を行っていません(図表12)。

)社会生活基本調査においては、15分単位で行動を報告することとなっているため、15分に満たない行動は報告されない点に留意が必要。

なお、夫の労働時間別の1日当たりの行動時間は、週労働時間が49時間以上では、育児を含む家事関連時間が49時間未満の場合と比較して短い傾向がみられますが、35時間未満及び35〜49時間未満では、明確な傾向はみられません。

一方、男性正社員が平日の家事・育児の時間を増やすために必要なことは、1日の労働時間が長いほど「残業が少なくなること」、「職場の人員配置に余裕ができること」を挙げる割合が高く、1日当たりの労働時間が短いほど、「配偶者とのコミュニケーションの向上」、「家事・育児のスキルの向上」の割合が高くなっています(図表13)。

平日の家事・育児時間が長い男性正社員ほど、第1子出産前に夫婦で役割分担について話し合って納得した割合が高くなっています(図表14)。

また、家事・育児時間が長い男性正社員ほど、概ね小学生のころ、両親が「男性も家事・育児に積極的に参加すべきだ」と考えていたであろうと感じる割合が高くなっています(図表15)。


図表10 男性の育児休業取得率


図表11 6歳未満児のいる夫の家事・育児関連時間(1日当たり)─国際比較─


図表12 6歳未満の子どもをもつ夫の家事関連の行動者率


図表13 労働時間別にみた家事・育児時間を増やすために必要なこと〔個人調査〕(男性・正社員)


図表14 家事・育児時間別にみた夫婦の話し合いに対する納得度〔個人調査〕(男性・正社員)


図表15 概ね小学生時に感じた両親の意識別にみた平日の家事・育児時間〔個人調査〕(男性・正社員)


5.今後の課題
(健康で豊かな生活のための時間が確保できる社会の実現に向けて)

長時間労働の抑制や希望する方の年次有給休暇取得促進に向けて、労使において、意識の改革や職場の雰囲気づくりに取り組むことが必要です。また、経営者の主導の下、短時間で質の高い仕事を評価する仕組みの構築や仕事を代替できる体制づくりなどの雇用管理の改善が重要です。長時間労働の状況は業種によって違いが大きいことがあるため、業種に応じた重点的な取組とその支援が必要です。さらに、年次有給休暇取得率は、企業規模によって違いが大きいことや、計画的付与制度を有する企業の方が取得率が高い傾向にあることから、企業規模に応じた取組や、年次有給休暇の「計画的付与制度」の一層の普及・促進を図ることが必要です。

(多様な働き方・生き方が選択できる社会の実現に向けて)

男女がともに仕事と子育てを両立できる環境の整備に向けて、育児休業、短時間勤務やテレワークなどの多様で柔軟な働き方を可能とする環境整備が必要です。その際には、増加傾向にある非正規雇用の労働者についても、多様で柔軟な働き方を可能とする制度の利用促進を図ることが重要です。

あわせて、男女がともに仕事と子育てを両立し、その責任を担うためには、子育ての社会基盤の整備が必要です。このほか、女性が就業を継続していくためには、女性がキャリアを活かして様々な職域・職階で活躍できる環境整備も必要です。

男性の子育て等への参画促進については、育児をまったく行わない男性をゼロにするためには、育児を積極的にする男性「イクメン」の普及など職場や男性を取り巻く人たちを含め、男性の働き方や意識の改革を進めることが必要です。

さらに、子どもの頃からの男女共同参画の理解の促進に向けた取組や男女共同参画について国民的広がりを持った広報・啓発活動を展開することが重要です。

詳しくはこちら↓
http://wwwa.cao.go.jp/wlb/government/top/hyouka/report-13/zentai.html


カエルジャパン