「共同参画」2013年 10月号

「共同参画」2013年 10月号

特集

地域における女性の活躍の現状について
内閣府男女共同参画局総務課

経済活性化、地域活性化の観点から、地域における女性の活躍推進をいかに図るかが課題となっています。ここでは、地域における女性の活躍の姿を都道府県別データから見てみます。

安倍内閣においては、女性の活躍推進が成長戦略の中核として位置づけられおり、各地域においても、経済活性化、地域活性化の観点から、女性の活躍をどのように推進していくかが、課題になっています。

男女共同参画会議基本問題・影響調査専門調査会においても、地域活性化に向けた女性の活躍推進をテーマに、現在検討が行われているところです。

ここでは、主に都道府県別データからみた地域における女性の活躍の現状、また、コラムでは、地域における女性活躍推進に向けた先進的な取組として、「女性の大活躍推進福岡県会議」について紹介します。

地域における女性の活躍の現状

女性の活躍について、我が国全体では、二つの課題が挙げられています。第一に、労働力率が30〜40歳代前半を谷とした「M字カーブ」を描いており、結婚、出産、子育て期に、仕事との両立困難等から就業を中断する女性が多いことです。第二に、政府は「指導的地位に占める女性の割合を2020年までに30%程度」とする目標を掲げていますが、企業等における役員や管理職に占める女性割合は、緩やかに伸びてはいますが、依然として低い水準であるということです。

まず、この二つの課題について、都道府県別の状況を見てみます。

(1)都道府県別М字カーブの深さ

図表1は、全国知事会が平成24年7月に取りまとめた「女性の活躍の場の拡大による経済活性化のための提言─M字カーブの解消に向けて─」による、各都道府県のM字カーブの深さ(左側の山の頂点と谷底との差)です。この深さは、結婚、出産、子育て期に女性が離職している程度を示していると考えられます。最も浅いのは高知県(2.5ポイント)で、島根県(3.5ポイント)がこれに続きます。これに対して、M字カーブが深いのは神奈川県(18.0ポイント)を筆頭に、奈良県(16.8ポイント)、東京都(15.6ポイント)、千葉県(14.9ポイント)、大阪府(14.3ポイント)、埼玉県(13.8ポイント)、兵庫県(13.7ポイント)と大都市とその周辺地域となっています。

(2)都道府県別女性の管理職比率

図表2は、各都道府県における管理職(会社役員、管理的公務員等)に占める女性の割合です。最も高いのが徳島県(15.3%)、ついで、東京都(14.8%)。もっとも低いのが福井県(9.5%)、ついで富山県(9.5%)であり、北陸・中部地方に割合が低い地域が目立ちます。


図表1 M字の深さ(都道府県別)


図表2 女性の管理職比率(都道府県別)


(3)M字の深さと管理職比率の関係〜地域ごとに異なる女性活躍推進の課題〜

これらの二つの課題について、端的に一つの図表で見ようとしたものが図表3です。

横軸は、M字の深さで、右に行くほど、M字が浅く、結婚・出産・子育て等により就労を中断せず、働き続ける女性が多いことを示しています。縦軸は、女性の管理職比率で、上に行くほど管理職に占める女性割合が高いことを示しています。

グラフ上の点は、各象限に散らばっていることから、女性が働きつづけることと管理職への登用という、女性の活躍に関する二つの課題の状況には相関といったものはないと考えられます。一方で、どの象限にどの県がプロットされているかについては、地域的な特性が影響していると考えられます。

第1象限(右上の区域)は、全国平均よりM字が浅く、かつ、管理職比率も高い地域です。高知県、徳島県、青森県等が該当し、これらの地域では、相対的に、女性が継続して働き続けることができ、かつ、管理職等に昇進している、と考えられます。

第2象限(左上の区域)は、全国平均よりM字が深いものの、管理職比率が高い地域です。東京都、京都府、大阪府等、いずれも大都市を抱える地域が該当しています。大都市では、相対的に、継続して働き続けていない割合が高い一方で、管理職等に昇進している割合が高いと考えられます。

第3象限(左下の区域)は、M字が全国平均より深く、管理職比率も低い地域です。神奈川県、奈良県、千葉県等、大都市の周辺地域が該当しています。これらの地域では、相対的に、女性が、継続して働いている割合が低く、また、管理職等に昇進している割合も低いと考えられます。

第4象限(右下の区域)は、M字が全国平均より浅い一方で、管理職比率は全国平均より低い地域です。福井県、石川県、富山県等北陸地方の県名が挙がっています。これらの地域では、相対的に、女性は継続して働くことはできるものの、その一方で、管理職等に昇進する割合は低いと考えられます。


図表3 都道府県別M字カーブの深さ、管理職比率、出生率


(4)県別のM字カーブ(女性の年齢階級別有業率)〜M字を描かない県もある〜

図表1、3では、女性の継続就業の状況を把握するために、M字の深さを取り上げましたが、女性の雇用状況を把握する上では、年齢階級別の就業状況を把握し、M字カーブの水準や形状全体をみることも必要です。

図表4は、いくつかの県のM字カーブを描いたものです。一般的にはM字カーブは年齢階級別「労働力率」で描かれますが、ここではデータ入手の都合により年齢階級別「有業率」を使用しています i

i  年齢階級Xの労働力率=年齢階級Xの(就業者(=有業者)+完全失業者)/年齢階級Xの人口、年齢階級Xの有業率=年齢階級Xの有業者/年齢階級Xの人口。前者には完全失業者が含まれる。

県によって、M字の姿も様々で、なかには、(本稿では便宜上M字カーブと呼んでいますが、)M字とはいえない形を描く県もあります。

図表4(1)が、全国と山形県、福井県、徳島県、高知県といったM字が浅い県の年齢階級別有業率です。全国のM字カーブについては、結婚、出産、育児期にあたる時期にM字の谷が存在し、また、M字の左側の山と右側の山がほぼ同じ高さです。ところが、山形県、福井県、徳島県、高知県については、M字の谷がほとんど見られず、結婚、出産、育児等を理由に離職する者が少ないと考えられます。山形県、福井県については、全国のM字の山の部分を大きく上回る形でM字カーブが描かれ、どの年齢階級においても有業率が高いことが示され、一方で、徳島県についてはM字が浅いといっても有業率の水準は山形県、福井県に比べて低いことが示されています。

また、高知県については、M字の左側の山より右側の山のほうが高く、年代が高いほど有業率が高くなっています。高知県では、育児期に離職する女性は少ない上に、さらに、若年期には就業していなかったものの、中高年期には就業している者がいると考えられます。

図表4(2)は、全国と東京都、神奈川県、大阪府、奈良県といったM字カーブが深い県のM字カーブです。

神奈川県、大阪府、奈良県については、全ての年齢階級において全国の有業率を下回っており、また、20歳代後半から30歳代前半に有業率が大きく低下し、M字が深くなっています。東京都については、20歳代後半、30歳代前半の有業率は全国を上回っていますが、30歳代後半以降に大きく低下し、全国を下回って推移しています。

また、これらの県のM字の左側の山と右側の山については、左側の山より右側の山が低くなっています。子育て期に当たる30歳代に離職する割合が高く、その後再就職する女性が多いものの、再就職しない女性も一定程度存在することがわかります。


図表4 女性の年齢階級別有業率(都道府県別)


(5)雇用形態別に見た正規雇用、非正規雇用〜M字の浅い県は、正規雇用が継続就業〜

県別に、有業率の雇用形態別内訳を示したものが図表5です。

雇用形態をみると、全国では、多くの女性が結婚・出産期にさしかかる25歳以降で、正規雇用が減少して非正規雇用が増加する傾向がみられます。

しかし、高知県では、正規雇用の割合は25〜34歳から45〜55歳までほぼ横ばいで推移しています。また、山形県、福井県、徳島県といったM字が浅い県においても、全国に比べ、正規雇用の減少が緩やかで、結婚、出産、子育て期においても就業を継続している女性が多いとみられます。一方で、非正規雇用についても、高知県は25〜34歳から45〜54歳までほぼ横ばいで推移し、その他の県の小幅な増加にとどまっています。これらの県については、正規雇用の落ち込みがない、あるいは小さいことから、M字の谷が浅くなっているといえます。また、これらの県は45〜54歳における非正規雇用の増加幅も全国より小さいものとなっています。

一方で、M字の深い東京都、神奈川県、大阪府、奈良県については、正規職員の割合が25歳以降、全国以上に顕著に低下しています。結婚、出産、子育て期に正規雇用から離職している女性が多いとみられます。非正規雇用についても、特に、神奈川県、大阪府、奈良県についてはその割合が25〜34歳に比べて45〜55歳が10%以上上昇しています。結婚・出産期に離職し、その後、非正規雇用で再就職している女性が多いと考えられます。また、東京都については、非正規雇用の割合の増加が神奈川県、大阪府、奈良県に比べて低く、正規職員を離職後、再就職しない女性の割合が他地域より高いと考えられます。


図表5 雇用形態別 年齢階級別有業率(都道府県別)


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このように、各都道府県によって、女性活躍推進を巡る状況は異なります。同一都道府県にあっても、市町村により、状況が異なると考えられます。

これは、地域の産業動向、雇用動向、住民の意識、さらに行政の取組等が反映されていると考えられます ii 。地域における女性活躍推進にあたっては、地域各々が自らの女性活躍の現状を把握した上で、適切な施策を推進していくことが必要とされます。

ii  本稿の考察においては、進学、就職、転勤、結婚、出産、介護等による都道府県をまたいだ居住地の変更を考慮していないが、都道府県の有業率は上記の人口移動を反映したものとなっている。

【参考】
全国知事会「女性の活躍の場の拡大による経済活性化のための提言−M字カーブの解消に向けて−」(平成24年7月)
http://www.nga.gr.jp/news/H24.7.27%20danzyo%20itibusyuusei130716%EF%BC%89.pdf


今後の日程表

今後の男女共同参画フォーラム、男女共同参画宣言都市記念式典の開催予定

○男女共同参画フォーラム

*埼玉県さいたま市

「女性の輝きが未来を拓く」

日時:平成25年11月9日(土) 12:30〜16:00

場所:ホテルブリランテ武蔵野(さいたま市中央区新都心2番地2)

申込み方法:はがき、電話、FAX又はEメール

問い合わせ先:さいたま市男女共同参画推進センター

電話 048-642-8107

*福岡県福岡市

「女性の活躍推進と経済成長」

日時:平成25年12月5日(木) 12:30〜16:00

場所:福岡国際会議場メインホール(福岡市博多区石城町2−1)

申込み方法:メール、FAX等

問い合わせ先:福岡市市民局男女共同参画課

電話 092-711-4107


○男女共同参画宣言都市記念式典

*茨城県阿見町

日時:平成25年11月10日(日) 13:00〜16:20

場所:茨城県立医療大学大講義室(阿見町阿見4669-2)

申込み方法、問い合わせ先:阿見町役場町民活動推進課男女共同参画推進室

電話 029-888-1111(内線271)

*北海道苫小牧市

日時:平成25年11月17日(日) 13:00〜16:00

場所:苫小牧市民会館(苫小牧市旭町3丁目2−2)

申込み方法、問い合わせ先:苫小牧市市民生活部男女平等参画課

電話 0144-32-3544(内線3370)

*島根県雲南市

日程:平成25年11月30日(土)

*山梨県甲府市

日時:平成26年2月15日(土) 13:00〜16:00

場所:甲府市総合市民会館芸術ホール(甲府市青沼3丁目5−44)

申込み方法:電話、FAX等

問い合わせ先:甲府市役所市民部 人権男女参画課

電話 055-237-5209

*石川県金沢市

日程:平成26年3月8日(土)

コラム

福岡発! 経済界が主導で地域一体となった女性活躍推進運動
「女性の大活躍推進福岡県会議」

2013年5月に、経済界主導で、行政、企業・経済団体、女性、住民が一体となった「女性の大活躍推進福岡県会議」が発足しました。

福岡県においては、経済界を中心に、今後の地域企業の競争力強化、多様な雇用機会の創出、男女ともに働きやすく、生きやすい社会の構築に向けては、「人材」が問題であり、特に、「女性人材の活用」に急ぎ取り組むべきという認識が強まっていました。

経済団体間での女性の活躍推進について議論を重ねた結果、同会議の発足に至りました。女性の活躍推進をテーマに、経済界主導で、地域が一体となって取り組むのは、全国的にも先進的な取組といえます。

同会議では、重点とする活動を

(1)経済界などを中心に、女性管理職比率等の目標を設定し実現する活動。

(2)女性の能力・意欲・意思を高める活動。

(3)女性が活躍しやすい育児支援等の社会的環境を整備する活動。

の3つとしています。具体的には、企業が経営計画等に女性管理職等に関わる数値目標を設定する「自主宣言登録」の実施、社会変革に向けた啓蒙・啓発交流、女性の管理職のネットワーク構築活動に取り組んでいます。

「自主宣言登録制度」とは、例えば5年後を目標年として、企業が女性管理職比率又は女性管理職者数の数値目標を自主設定し、本会議に登録するという制度です。今年度100社、来年度は500社(県内法人企業の1%相当)の登録を目標としています。

この制度は、女性の活躍を広く社会に公表するとともに、女性の育成・登用計画が組織内で明確化する等、企業の外部、内部に対する女性の活躍の「見える化」が進展することが期待されています。

8月の制度の受付から1か月間に15件の宣言・登録があり、その内訳は企業11件、地方自治体4件です。また、宣言内容は、管理職比率目標が11件と多く、その数値は各主体の状況を反映して10%から33%まで幅がありました。管理職者数を目標としたのは4件、両方の数値目標を掲げたのは3件でした。

また、「女性管理職ネットワーク」については、中小企業等で見られる女性管理職の孤立化対策や女性管理職の高度人材化などを目的に、個々の企業や業種等を超えた幅広い交流、研修・自己研鑚、経営者側との意見交換などに取り組み、もって、女性人材の育成促進と企業の経営力強化に貢献することが期待されます。

10月から、自主宣言登録制度の企業等を中心に30人規模でスタートする予定です。

同時に、女性管理職ネットワーク構築の在り方について、企業トップや自治体担当者等が参加した検討会や企業・ヒアリング調査等を実施し、その成果をネットワーク構築に反映させていくこととしています(内閣府「平成25年度地域における男女共同参画連携支援事業」)。

現在は、福岡県会議として福岡県内の活動を行っていますが、将来的には九州会議への拡大、また、全国各地で同様の活動が展開されることを目指しています。