「共同参画」2013年 7月号

「共同参画」2013年 7月号

特集

成長戦略の中核である女性の活躍に向けて
─平成25年版男女共同参画白書の公表─
内閣府男女共同参画局調査課

内閣府男女共同参画局では、本年6月21日(金)に、平成25年版男女共同参画白書を公表しました。本年版白書の特集「成長戦略の中核である女性の活躍に向けて」のポイントをご紹介します。

本年6月21日(金)に、平成25年版男女共同参画白書を公表しました。

本白書は、男女共同参画社会基本法に基づいて毎年国会に報告するもので、今回が14回目になります。

「平成24年度 男女共同参画社会の形成の状況」の第1部では、冒頭の特集で経済分野における女性の活躍を扱っているほか、例年どおり、各分野における男女の現状を様々な統計データを用いて示しています。昨年は、東日本大震災を特集のテーマに取り上げましたが、本年版では、引き続き関心を持って現状を注視していくべき分野として、第1部の最後に新たに章(防災・復興分野における男女共同参画)を設けています。第2部では平成24年度に講じた施策を、「平成25年度 男女共同参画社会の形成の促進施策」では25年度に講じようとする施策を、それぞれまとめています。

1.特集のねらい

女性の活躍は、現政権の成長戦略の中核に位置付けられています。本年の特集では、女性の活躍促進に向けた課題と取組の方向性を明らかにすべく、経済分野における女性を取り巻く状況、人々の意識や行動を、世代別、教育別等の様々な角度から分析しています。

2.経済分野における女性の活躍の現状

平成24年の我が国における全就業者に占める女性の割合は42.3%であり、海外の主要国と比べて大きな差は見られません。一方、管理的職業における女性割合は、近年上昇しつつあるものの、国際的に見て低い水準にとどまっています。

就業者数の産業別割合を見ると、平成24年においては、男性では製造業(20.1%)が、女性では医療・福祉(20.0%)が、それぞれ最も高くなっています。

職業別割合では、男性では生産工程従事者(17.8%)が、女性では事務従事者(27.0%)が、それぞれ最も高くなっています。

雇用者数を勤務先企業の従業者規模別に見ると、女性は男性に比べて小規模な企業に雇用されている割合が高いですが、近年は、従業者100人以上の企業に雇用される女性の数が徐々に増加しています。また、雇用形態では、女性では非正規雇用者が雇用者全体の半数以上を占めるのに対して、男性は約2割となっています。

自営業主数が最も多い産業は、男性では農林漁業、女性では生活関連サービス業・娯楽業となっています。

農林漁業では、農業従事者に占める女性割合は約50%で近年横ばいが続いていますが、漁業従事者に占める女性割合は15%程度で微減傾向にあります。

就業の場は、国内だけにとどまりません。自らの就業・就学等のために海外に在留する長期滞在者は、平成23年10月1日現在で49.8万人となっており、そのうちの36.2%は女性です。国連等の国際機関職員は特に女性の割合が高く、平成18年以降、専門職以上の日本人職員の半数以上を女性が占めています。

3.女性の労働力率(M字カーブ)の形状の背景

女性の労働力率(15歳以上人口に占める労働力人口(就業者+完全失業者)の割合)は、結婚・出産期に当たる年代に一旦低下し、育児が落ち着いた時期に再び上昇するという、いわゆるM字カーブを描くことが知られており、近年、M字の谷の部分が浅くなってきています。本年版白書の特集では、M字カーブを世代別、教育別等の様々な角度から検討し、M字の形状を描く背景及び形状の変化に関する要因を考えています。

(1)世代別の特徴

出生年5年間を1つの世代としてまとめて、年齢階級別労働力率を世代別に見ると、若い世代ほど、M字カーブの山が高くなると同時に谷が浅くなっており、全般的に労働力率が高くなっていること、及び谷が右にずれていることが分かります(図表1)。

女性の年齢階級別労働力率を配偶者の有無別で見ると、配偶者の有無を問わず全般的に労働力率が上がっており、特に有配偶者の25〜29歳の年齢階級において顕著に見られます。

図表1 女性の年齢階級別労働力率の世代による特徴


(2)就業形態別、教育別の特徴

女性の年齢階級別労働力率の就業形態別内訳を教育別に見ると、小学・中学・高校卒の女性は、結婚・出産期に一旦離職した場合も、非正規雇用で再就職する傾向があるのに対して、短大・高専卒及び大学・大学院卒の女性は、離職後に再就職する割合が相対的に低くなっています(図表2)。

図表2 女性の教育別年齢階級別労働力率の就業形態別内訳(平成24年)


(3)雇用形態別の特徴

女性の雇用形態別年齢階級別労働力率を世代別に見ると、正規雇用では、世代による大きな差はなく、一旦離職した後正規の職員・従業員としてはほとんど再就職しないという傾向が見られます。一方、非正規雇用では、M字の谷から右側の山の部分において、若い世代ほど労働力率が高くなっていることが分かります(図表3)。

図表3 女性の年齢階級別労働力率の世代による特徴(雇用形態別)


(4)就業希望者

非労働力人口は、労働力率算出の対象ではありません。平成24年において、女性の非労働力人口のうち303万人が就業を希望しており、そのうちの約7割は非正規雇用を希望しています。

4.女性のライフステージと就業

(1)女性のライフステージと就業に関する男女の意識と行動

○女性のライフステージ

平成24年における20歳代後半の女性の未婚の割合は約6割ですが、30歳代前半では約3割に低下し、代わって有配偶の割合が約6割となっています。

平成22年における有配偶女性の第1子出生時の平均年齢は27.4歳であり、初婚どうし夫婦の20歳代の妻の約7割が子どもを少なくとも1人持っています。一方、初婚どうし夫婦の40歳代の妻の1割弱には子どもがいません。

生涯未婚率(50歳時の未婚率)は近年上昇し続けており、平成22年には女性で約1割、男性で約2割となっています。

また、要介護者10万人に対する同居する主な介護・看護者数を年齢階級別に見ると、男女とも50歳代で急増しています。

○有配偶の女性による就業の選択

夫の就業率は、妻の年収の水準と関係なく90%以上となっている一方、平成14年と比べて、24年は全般的に妻の就業率が高くなっているものの、夫の年収が多くなるほど妻の就業率が低下するという関係は、この10年で変化していません(図表4)。

夫婦が受けた教育の組合せを見ると、平成22年においては、中学・高校卒の女性の夫の約3分の2は中学・高校卒であり、大学・大学院卒の女性の夫の約8割は大学・大学院卒となっています。

平成24年における男性の年収を教育別・年齢階級別に見ると、45〜54歳の年齢階級において、高校卒の男性と大学・大学院卒の男性の平均年収の差は300万円弱に達しています。また、高校卒の女性の平均年収は、正規雇用者では30歳代以降で300万円を超える一方、非正規雇用者では年齢階級に関わらず概ね200万円強となっています。男性の教育別の年収の違いを考えると、平均値で見た場合、高校卒同士の共働き夫婦の年収の合計は、大学・大学院卒の男性の平均年収とほぼ同じ水準となります。

図表4 夫/妻の収入階級と配偶者の就業率(平成14年、24年)


○女性のライフコースの理想と現実

女性が理想とする自らのライフコースは、平成9年以来大きな変動はありませんが、予定する自らのライフコースでは、専業主婦コースの割合が9年の17.7%から22年の9.1%に半減しています。再就職コースも減少しており、非婚就業コースと両立コースが増えています。

男性が女性に期待するライフコースでも、専業主婦の割合が平成9年の20.7%から22年の10.9%に半減し、両立コースが大きく上昇しています。

(2)女性のライフイベントと就業

○ライフイベントによる就業形態の変化

出産前に就業していた女性の約6割が第1子出産後に離職していることはよく知られていますが、結婚前に仕事を持っていた女性を基準とすると、約3割が結婚を機に、約4割が第1子出産を機に、それぞれ離職しています。

また、平成24年においては、介護・看護を理由に前職を離職した人は、完全失業者263万人のうち、男性が2万人、女性が3万人であり、非労働力人口3,232万人のうち、男性が13万人、女性が88万人となっています。

○雇用形態の選択と希望

M字カーブの谷に当たる30〜44歳の女性のうち、非正規雇用者の約4割が、非正規雇用を選択した理由として「家庭の事情(家事・育児・介護等)や他の活動(趣味・学習等)と両立しやすい」ことを挙げています。

また、M字カーブの左側の山から下り坂に当たる25〜34歳の非正規雇用者の女性で、会社勤務継続を希望している者のうち35〜40%が、正社員として働くことを希望しています。

(3)女性のライフステージとキャリア形成

○結婚・出産・育児と昇進

従業員100人以上の企業における雇用期間の定めのない雇用者の対人口割合は、男性では台形となり、女性では20歳代後半を頂点とする山形となります。女性については、雇用者数の割合の減少が始まる30〜34歳の年齢階級が、昇進の増え始める時期に重なっていることが分かります(図表5)。

女性管理職が少ない(1割未満)あるいは全くいない管理職区分が1つでもある常用労働者10人以上の企業の48.9%は、女性管理職が少ない/全くいない理由として、「現時点では、必要な知識や経験、判断力等を有する女性がいない」ことを挙げています。このほか、勤務年数の短さに関連する要因が複数挙げられています。

平成22年において、従業員5,000人以上の大企業の約半数及び1,000〜4,999人の企業の45.9%が、労働者の職種や資格等に基づいて複数のコースを設定する、コース別雇用管理制度を導入しています。このような制度を導入している企業では、総合職採用予定者(平成23年)に占める女性割合は11.6%、総合職在職者に占める女性割合は5.6%となっています。また、10年前に採用された総合職の離職割合を見ると、女性は男性の2倍以上に当たる65.1%となっており、10年前に採用された総合職の女性が既に全員離職している企業は48.9%に上っています。

図表5 年齢階級別雇用者数の対人口割合と役職者人数(男女別、平成24年)


○介護・看護と役員就任

あらゆる事業規模の企業を対象とした場合、平成24年における役員に占める女性の割合は23.1%です。年齢階級別に見ると、50歳代後半以降に男女とも役員の人数が増加していますが、女性において介護・看護者の人数が特に多くなる年齢階級とほぼ重なっています。

○学び直しの状況

継続就業及び再就職のいずれの場合においても、学び直しはキャリアの可能性を拡大する機会であると考えられます。法務、会計、経営などの実務的な知識やスキルを習得する専門職学位は、修士号に比べて仕事により直結した学位であると言えます。平成15年以降における専門職学位課程への社会人入学者に占める女性の割合は、修士課程への社会人入学者に占める女性の割合と比べると低くなっています。

5.女性の活躍を支える環境

(1)制度の整備と利用の状況

○育児・介護支援の仕組み

育児向け措置、介護休暇制度のいずれについても、事業所規模が小さいほど整備に遅れが見られます。

育児向け措置の利用しやすさという観点では、非正規雇用者の場合は、正規雇用者と比べて全般的に措置が未整備であるものの、措置がある場合、5割前後の回答者が「利用しやすい雰囲気がある」と回答しています。

○男性の育児・介護への参加

男性の平均週間就業時間を世代別に見ると、同じ年齢階級における就業時間は前の世代より短くなっています。

平成13年から23年にかけて、有業者で有配偶の男性の家事関連時間は増加しましたが、女性との差は依然として大きいままとなっています。また、共働きの男性の1日に当たり平均家事関連時間は、子どもの成長に伴うライフステージの変化に関わらず短い一方、共働きの女性の場合は、男性と比べて全般に長く、特に末子が就学前の時期に目立って長くなっています。

○税制・社会保障制度が及ぼす影響

有配偶の女性の年間雇用所得の分布を見ると、各年齢階級において100万円付近で高くなる傾向が見られます。教育別に見ると、大学卒以上の女性では特定の金額に集中する傾向は見られず、100万円付近に集中する傾向は、どの年齢階級でも大学卒未満の女性に見られます。

(2)柔軟な就業・勤務形態

○自営業・起業

男女とも、年齢が高いほど人口に占める自営業主数の割合も高くなっており、女性についてもM字カーブは見られません。

個人経営の新設事業所数を産業別に見ると、男女とも飲食店業が最も多いという点で共通しています。これに次いで多い産業は、男性では医療業、飲食料品小売業となっていますが、女性では洗濯・理容・美容・浴場業、その他の教育・学習支援業となっています。

○テレワーク

平成23年においてテレワークを導入済みあるいは具体的に導入を考えている企業は全体の13.5%であり、従業者規模が大きいほど導入が進んでいます。

実際にテレワークを利用している就業者は、育児や介護と両立しながら仕事が可能になることをテレワークのメリットとして挙げている一方、育児や介護をしながらだと仕事の効率性・生産性が低下する、という点も指摘しています。

6.女性の活躍に向けた今後の課題等

成長の原動力として女性の活躍が進んでいけば、これまで女性と男性がそれぞれ担ってきた立場や役割も変わっていくと考えられます。

持続可能な経済成長を達成しつつ、職場で、家庭で、地域社会で、女性にも男性にも全ての人々にチャンスがあり、活躍できる社会の構築を目指して、取り組んでいく必要があります。

本白書の特集版では、国内外における女性活躍促進の取組等も紹介しています。詳しくは、内閣府ホームページを御覧ください。
http://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/index.html