「共同参画」2013年 4・5月号

「共同参画」2013年 4・5月号

連載 その2 女性首長から

「私からわかろうとすることの大切さ」
田尻町長 原 明美


田尻町は大阪と和歌山の中間に位置し、関西国際空港を対岸に臨む小さな町です。人口は8千人強。関空島とりんくうタウンを含めた面積は5.60km2。かつて本州一小さな町でしたが、合併によらず面積が2倍以上になっためずらしい自治体です。昔ながらの市街地は狭く、保育所、幼稚園、小学校、中学校もそれぞれ1つずつというまさにコンパクトシティです。

本町のように規模が小さいと行政を身近にダイレクトに感じます。教育、福祉、子育て、環境そしてまちづくりや防災といった施策の多くは、現状として家庭を預かることの多い女性がその中心的な役割を担っていると思います。一母親としてPTA活動から様々な地域活動を続けるにつれ、「生活の中心となる女性が町のあり方に積極的に関わってきただろうか?町の意思決定に女性の思いは反映されているだろうか?」という疑問が私のなかで芽生え、大きくなりました。私たちの価値観、生き方、家族関係や人間関係、社会との関わりは多様で刻々と変化しますが、生活者として具体的に物事をとらえる女性は、暮らしに根ざし柔軟に対応できると考えます。この町で暮らす多くの人に優れた力があるのなら、放っておくのはもったいない!見つけ、引き出し、もっともっと活用すべきですし、安心して能力を発揮できる環境づくりに取り組んでいきたいと強く感じました。

町長就任からまもなく1年半。生活者の代表として、先ずは女性ならではの視点をもって自身の思いを実現することとしました。妊婦検診公費助成の更なる拡充、ファミリーサポート事業の推進、中学生への英語教育推進事業の展開、通学路の安全対策として路側帯のカラー化、町営住宅への子育て世帯の入居条件緩和など、安心して子どもを産み育てられる環境と積極的に就労できる環境の整備に主力を傾注しているところです。

私は現在、府内唯一の女性首長です。町長として仕事をするうえで「女性としての視点、発想、進め方」などが評価されるならば、大いにそれを歓迎しご期待に応えようと思います。一方、社会のなかで当然とされる「男性としての視点、発想、進め方」については、わかっていないことが多いかもしれません。人としてわかっていないことには謙虚になり、違いを認め受け容れながら、わかろうと努力し続けることの大切さを私自身の戒めにしなければならないと考えております。女性がトップでも本町の議会や各種審議会、地域団体、管理職等の女性の参画が少ないなど、男女共同参画の取り組みはまだまだこれからです。私が町長職を元気にいきいきとこなすことが、女性をはじめ全ての人への最大のエンパワー、エールを贈ることになると信じております。みんなが幸せに元気になってもらえるよう、牽引役として精一杯がんばってまいります。

折しも今年、本町は町制施行60周年を迎えます。町制へ移行した1950年代は紡績・繊維産業が栄え、各地から働き手として多くの方々が田尻町に来られました。時代とともに人が行き交い、現在は、専門日本語研修を行う国際交流基金関西国際センターの外国人研修生や漁港での日曜朝市、田尻歴史館へのお客様など様々な方が町を訪れてくださいます。りんくうマーブルビーチから見る空と海、特に夕陽は絶景です。ぜひお越しください。

はら・あけみ氏
はら・あけみ/1957年大阪府生まれ。相愛大学音楽学部卒業。音楽家として演奏指導に携わるとともに、2000年と2003年に田尻町PTA連絡協議会会長を務める。2011年4月田尻町文化協会を設立し初代会長に就任。2011年12月田尻町長就任。現在1期目。