「共同参画」2013年 4・5月号

「共同参画」2013年 4・5月号

行政施策トピックス2

「ダイバーシティ経営企業100選」と「なでしこ銘柄」
経済産業省経済産業政策局経済社会政策室

経済産業省は、女性など多様な人材を生かす経営に取り組む企業を「ダイバーシティ経営企業100選」として、選定・表彰しています。また、この「ダイバーシティ経営企業100選」と相乗効果を狙い、女性活躍に優れた上場企業を選定する「なでしこ銘柄」の発表を東京証券取引所と共同で行っています。

<ダイバーシティ経営企業100選>

「ダイバーシティ経営企業100選」では、業種・規模・地域において様々なベストプラクティスを集め、それを広く発信していくことで、「ダイバーシティは競争力の源泉である」ということについて、気づきの機会としていただくとともに、取組の道筋をご紹介し、ダイバーシティ経営への取組を後押ししていくことが狙いです。

表彰対象は、女性、高齢者、外国人、障がい者など多様な人材の能力を最大限発揮させることにより、イノベーションの創出や生産性向上等の成果をあげている企業(100選)と、他社のダイバーシティ推進をサポートする企業(促進事業表彰)があり、有識者から成る運営委員会において選考を行いました。多様なロールモデルを選定するため、女性管理職比率などの数値指標ではなく、取組の内容(実践性、革新性・先進性、トップのリーダーシップ)と、その取組が経営上の成果につながっているかを軸に評価を行いました。

本事業は数年かけて累積100社程度の表彰を目指していますが、初年度(2012年度)から、160を超える応募があり、その中から「100選」43社(大企業21社、中小企業22社)、「促進事業表彰」6社を選定し、本年3月22日に表彰式を行いました。(表1受賞企業一覧)

表1 ダイバーシティ経営企業100選受賞企業一覧

今回受賞した企業での取組とその成果として、以下のような事例がありました。

  • 車の購買決定権の6割を占める女性ニーズを設計に反映させるため、女性の魅力創出グループが開発工程に参画し、継続的プロダクトイノベーションを実現
  • 補助的業務を担当していた女性社員の語学力を活かし、海外向けウェブ販売事業を立ち上げ、海外売上高の増加に貢献
  • 理系女性が、主体的に商品開発に関わり、掃除を楽にしたい、収納場所に悩みたくないといったニーズに応える家づくりに参画、成約件数増加に貢献
  • 補助業務の女性職員に対して、コンサルティング業務や、営業支援業務への職域拡大を実施。目標設定・評価方法もあわせて変更し、自発的な業務改善提案やシビアな目標設定など、意識や行動の変化が生じ、生産性も向上

受賞企業43社における取組(ベストプラクティス)から共通的な要素を抜き出し、ダイバーシティ経営を成果につなげるための基本的な考え方を整理した「価値創造のためのダイバーシティ経営に向けて」(下に抜粋)を作成しています。

「価値創造のためのダイバーシティ経営に向けて」(抜粋)

1.なぜ今「ダイバーシティ経営」なのか

(1)競争優位を構築するための経営戦略

 「ダイバーシティ経営」は、福利厚生やCSR(企業の社会的責任)ではなく、グローバル化等による環境変化に対応して、個々の企業が競争優位を築くために必要不可欠なもの。経営戦略の一環として、「競争力向上のための人材活用」という目的意識を持って取り組むことが重要。

(2)ダイバーシティ経営の成果について、以下の4つに分類。

 (1)プロダクトイノベーション(新たな商品・サービスの開発)

 (2)プロセスイノベーション(生産プロセスやマーケティングの改良等)

 (3)外的評価(顧客満足度、社会的認知度)の向上

 (4)職場内の効果(社員のモチベーション向上など)

2.ダイバーシティ経営の基本的な考え方と進め方

(1)ダイバーシティ経営推進のための戦略策定

  ダイバーシティ経営は、人材活用戦略という経営戦略の一環として、経営全体の方向性に整合的に設計される必要がある。

 (1)トップのコミットメント

   自社にとってのダイバーシティの意味を繰り返し発信し、社員とともに取り組む

 (2)行動指針や目標における計画策定

   行動指針に位置づけ、目標を設定し、PDCAサイクルを回す

 (3)担当部署の設置

   ダイバーシティを推進する体制を設け、関連部署と協力して取り組む

(2)多様な人材が活躍できる土壌づくり

  全ての人材が制約の中でも仕事への意欲を高め、能力を発揮できる環境整備が必要

 (1)多様で柔軟な働き方を可能とする環境整備

   フレックスタイムや在宅勤務など柔軟な勤務環境の整備

 (2)現場のマネジメント改革

   管理職層がダイバーシティの目的を理解し、マネジメントスキルを高める工夫

 (3)職務の明確化・公正な人事評価制度

   社員の属性や働き方に関わらず、職務やパフォーマンスに応じた公正な評価

 (4)多様な人材の積極的な登用

   数値目標ありきでない、能力や実績に応じた適材適所の実施

 (5)キャリア形成や能力開発のための教育・研修の拡充

   マネジメント研修やロールモデルの提示による意欲向上

 (6)社内外に対する情報発信

   全社で成果を共有し風土改革へ。社外への発信で優秀な人材確保


今年度は、7月頃から公募を開始する予定です。

<「なでしこ銘柄」の選定>

日本における女性の管理職比率は、国際的に見ても極めて低い水準にあります。こうした中、欧州の一部の国のように役員クォータ制をとるという選択肢もありますが、こうした規制的な措置は即効性がある反面、抵抗感も強くなるので、まずは、よりソフトなアプローチとして、企業における女性活躍状況の「見える化」を進め、市場における評価を通じて企業にとって取組へのインセンティブを強めることが重要です。

昨年、内閣府が中心となり「女性活躍状況の資本市場における見える化」について検討しました。その成果の一つとなるのが、経済産業省が東京証券取引所と共同で、「女性の活躍推進」に優れた上場企業を選定・公表する「なでしこ銘柄」の取組です。選定の方法は、各企業が出しておられるCSR報告書などの公開情報を元に、女性活躍推進の観点から、「女性のキャリア支援」と「仕事と家庭の両立支援」の二つの側面からスコアリングを行い、東証一部上場企業から72社を選び、その中から財務面でのパフォーマンスもよい(ROEが業種平均以上)各業種代表の17社(表2)を本年2月26日に発表しました。女性活躍に関するスコアが高い72社について、「なでしこ指数」として試算し(図1)、TOPIXと比較したところ、ほぼ一貫して「なでしこ指数」がTOPIXのパフォーマンスを上回り、超過収益率の幅が拡大する傾向にありました。

表2【なでしこ銘柄選定企業一覧】


図1 なでしこ指数とTOPIXの比較

この試算結果は、女性活躍推進に優れた企業は「中長期の企業価値向上」を重視する投資家にとって魅力ある銘柄として紹介することの裏付けにもなっており、東京証券取引所と連携し、最新の「なでしこ銘柄」を一から選定し直す形で、今年度以降も継続的に行っていきたいと考えています。

平成25年3月22日に「ダイバーシティ経営企業100選」表彰式・シンポジウム

佐藤政務官よりご挨拶
佐藤政務官よりご挨拶

集合写真(受賞企業全社、佐藤政務官、佐藤委員長)
集合写真(受賞企業全社、佐藤政務官、佐藤委員長)


ダイバーシティ経営企業100選の表彰式にラガルド国際通貨基金専務理事よりメッセージを頂きました。
動画は、以下のURLでご覧いただけます。

http://www.youtube.com/watch?v=DoODMlIbkcw

<参考URL>

ダイバーシティ経営企業100選

http://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/diversity/kigyo100sen.html

(表彰企業の取組をまとめたベストプラクティス集も掲載予定)

なでしこ銘柄

http://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/diversity/nadeshiko.html