「共同参画」2013年 4・5月号

「共同参画」2013年 4・5月号

特集2

国立高等専門学校における男女共同参画の推進
独立行政法人国立高等専門学校機構男女共同参画推進室

技術者、研究者及び経営者など各分野で活躍する幅広い人材を輩出している国立高等専門学校において、男女共同参画の推進は重要な課題となっています。国立高等専門学校機構では、各国立高等専門学校と一体となって様々な取組を進めています。

はじめに

平成16年度に独立行政法人となった国立高等専門学校機構(以下「機構」という)は、北海道から沖縄まで国立高等専門学校(以下「高専」という)51校(55キャンパス)を有し、学生53,000人、教職員6,300人を抱える大規模な高等教育機関です。工学系分野を主に、創造性と実践性を育む特色ある教育により、制度創設からこれまで50年間にわたり、技術者、研究者及び経営者など各分野で活躍する幅広い人材を輩出してきています。

構成員に占める女性の比率は、現在、学生17.5%、教員7.9%、職員27.0%となっており、大学等と同様に、男女共同参画の推進は重要な課題となっています。このため、機構では、本部と各高専が一体となって様々な取組を進めています。

1 男女共同参画の推進体制と行動計画の策定

機構では、平成22年度に、男女共同参画推進委員会を設置し、男女共同参画に関する推進方策について審議しています。平成24年には、本部に男女共同参画推進室を置き、本部と各高専における取組を総合的に連絡調整し取り進める体制を整えました。

こうした体制を整備する中で、平成23年3月に「男女共同参画宣言」を理事長名で公表し、次いで平成23年9月に男女共同参画行動計画(以下「行動計画」という)を策定しました。

行動計画は、4つの基本方針とその下にそれぞれの重点課題を掲げています。推進期間は平成30年度までですが、平成25年度に中間評価を行い、その後の取組に反映させることにしています。

国立高等専門学校機構男女共同参画行動計画

(基本方針)

1 教育活動全般を通じた男女共同参画の推進

2 教育・研究・就業における男女共同参画の推進、仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)を図るための環境整備

3 男女共同参画の意識啓発

4 法人・学校運営における意思決定への男女共同参画の推進

 ※各基本方針の下に重点課題を掲げている。

2 教育活動における取組

女子学生の比率は、この10年近く17%前後で横ばいです。分野による差も大きく、最も少ない機械系では6%程度です。女子の志願者を増やすため、中学生・保護者・中学校関係者等を対象に、本部や各高専において、パンフレット「キラキラ高専ガール」をはじめとする各種資料の作成・配布、オープンキャンパスや科学教室の開催などに取り組んでいます。

女子中高生夏の学校2012
女子中高生夏の学校2012

女子中学生向けパンフレット
女子中学生向けパンフレット

また、女子学生が高専で学び培った実力を存分に発揮し技術者として社会で活躍できるよう、キャリア支援にも力を入れています。例えば、奈良高専が代表校となり全国9校が協力して取り組んでいる「高専女子ブランドの発信事業」があります。2年間の事業の集大成として、本年3月26日(火)には、内閣府男女共同参画局及び文部科学省の後援も得て、学術総合センターを会場に、企業関係者も多数参加し「高専女子フォーラム」を開催しました。この事業において女子学生が自ら作成に取り組んだ冊子「高専女子百科」は、企業の女性技術者の受入れ拡大に向けて活用していくことにしています。

2012年度全国高専女子フォーラム
2012年度全国高専女子フォーラム

高専女子百科
高専女子百科

また、機構では、女子学生の受入れのために、全校に女子寮を完備しており、安全で快適な施設・設備の整備も進めています。

女子寮(居室)
女子寮(居室)

3 女性教員の比率向上とキャリア形成支援

機構の行動計画では、新規採用教員に占める女性比率20%という数値目標を掲げています。現状は15.9%です。国の「第4期科学技術基本計画」及び「第3次男女共同参画基本計画」における目標値である自然科学系全体で30%も参考にし、当面20%を早期に達成することを目指しています。機構全体では年間150名前後の教員公募がありますが、多くの高専で「業績等が同等の場合、女性を優先的に採用」と明記しており、女性限定公募も実施しています。

機構では、各高専に女性教職員の採用・登用計画の策定を求めるとともに、その取組を促進するため、25年度からポジティブアクション(積極的改善措置)に取り組むことにしています。女性教員を採用した高専には教育研究に必要な経費を配分することや、十分な業績のある女性教員の昇任のため、必要な期間、人員枠の運用について弾力化すること等を内容としています。

さらに、女性の教員応募者を増やすため、大学等に出向き、高専教員職に関する情報提供を始めており、平成24年度はお茶の水女子大学、豊橋技術科学大学、長岡技術科学大学、奈良女子大学の協力を得て、キャリアガイダンスを開催しました。今後は、全国の高専が地元の大学等と連携協力してこの取組を展開することにしています。

教員公募ポスター
教員公募ポスター

現在、女性教員は、全国で295名(7.9%)、1校あたり平均5~6名です。女性教員の教育研究活動の活性化につながるよう、高専を超えたネットワークの形成を支援するため、平成24年度は「高専女性教員のキャリア形成支援ワークショップ」及び「女性研究者研究交流会」を初めて開催したほか、「女性研究者交流支援システム」を構築し、平成25年度から運用します。

小畑理事長による開会挨拶
小畑理事長による開会挨拶

女性研究者による研究発表
女性研究者による研究発表

4 ワーク・ライフ・バランスを図るための環境整備

平成24年度に、文部科学省補助事業「女性研究者研究活動支援事業」に採択され、平成26年度までの3年間、女性教員のワーク・ライフ・バランスへの支援を中心に、新たな事業を開始しました。本部男女共同参画推進室に女性研究者支援オフィスを開設し、コーディネーターとキャリアカウンセラーを置き、機構及び高専における諸事業を推進しています。事業の柱となっている、育児・介護中の女性教員(配偶者が研究者である男性も含む)への支援については、平成24年度は9校9名、平成25年度は12校14名に対し研究支援員を配置しています。

また、男女共同参画に関する意識とニーズを把握するため、全教職員を対象にアンケート調査を実施しました。今後この結果を詳細に分析して、男女を問わず、育児・介護休業の利用促進や時間外労働時間の縮減等を目指し、必要に応じて制度の拡充整備等を検討することにしています。

5 意識啓発

各高専には、男女共同参画を所掌として明記した体制の整備とともに、高専全体で意識啓発を図るための取組を求めています。本部においても、校長及び事務部長を対象に「男女共同参画トップセミナー」を開催したほか、啓発資料の作成などを行っています。さらに、このような高専機構における取組を広く社会に情報発信するため、男女共同参画HP(http://gender.kosen-k.go.jp/)を開設し、各高専の関係情報や、女子学生及び女性教員の活躍などを紹介しています。

トップセミナー
トップセミナー

男女共同参画HP
男女共同参画HP

6 推進モデル校

上記取組のほか、高専単位で総合的に取り組む先行事例をつくるため、モデル校を設けています。指定を受けた釧路、群馬、富山、奈良、沖縄の5校では、学内だけでなく、ブロックの高専にも呼びかけるなどして、教職員を対象とした啓発事業、学生のキャリア支援、女子大学院生を受け入れる教員職インターンシップなど様々な事業を始めています。モデル校の取組状況については、男女共同参画担当の教職員を対象に開催する3月の男女共同参画推進協議会でも報告し、全校への普及を目指しています。

モデル校におけるワークショップ
モデル校におけるワークショップ

7 意思決定過程への男女共同参画の推進

高専の教授職にある女性は全国で50名(3.2%)と、大学の理学・工学分野における比率と同様に低いのが現状です。校長を補佐して学校運営にあたる教務・学生・寮務の各主事等に、女性の参画を一層促すためには、上位職の女性教員の増と育成に努力していく必要があります。こうした状況も踏まえ、理事長の下に置かれる、校長を構成員とする機構の12の全委員会に、24年度からは女性教授を加えました。数少ない女性教員に負担過重とならないように配慮しつつ、清新な人材の登用にも努めていくことが重要であると考えています。

職員についても、上位職にいくほど女性の比率は低くなり、課長職以上は6名(3.5%)という状況です。国家公務員の相当職比率(5.1%)、全独立行政法人の課長相当職比率6.6%(看護師を除く)と較べても低く、人材の育成・登用方策についてさらに検討を進めていく予定です。

さいごに

機構では、性別に関わりなく、個人の能力を十分に発揮して活躍できる社会を目指し、高専の使命である技術者の育成を通して、科学技術分野への男女共同参画を積極的に推進していくことにしています。

関係機関の引き続きのご支援・ご協力をよろしくお願いいたします。

*データは平成24年5月現在