「共同参画」2012年 9月号

「共同参画」2012年 9月号

特集3

リオ+20
成果文書交渉を終えて
外務省国際協力局参事官(地球規模課題担当) 南 博

リオ+20では、約半年に及ぶ文書交渉を経て「我々の求める未来」と題する成果文書が採択された。先進国は経済的な困難に直面していたこと、一方、途上国はアフリカ諸国や新興国など、発展段階の差もあり、グループとしての意見の収束にこれまで以上に時間を費やしていたことから、成果文書交渉のとりまとめは以前と比べ困難であった。一部メディアやNGOからは今回の成果は野心的でないという評価を受けているが、成果文書交渉に携わってきた者としては、今回合意された成果文書は各国が真剣に交渉した結果であり、まさに現在の国際社会の世相を反映していると言えよう。

当初は本会合最終日の6月22日まで成果文書交渉が続くことを覚悟して交渉に臨んだが、議長国ブラジルのリーダーシップにより、結局、各国首脳が現地入りする前の19日に実質合意するに至った。成果文書については様々な捉え方があろうが、我が国としては、持続可能な開発の重要性を再度政治的に確認し、グリーン経済の重要性に合意したこと、持続可能な開発目標(SDGs)の策定に合意したことなど、意味があるものと考えている。

リオ+20の主要テーマの一つであるグリーン経済については、途上国の警戒感が極めて強く、「グリーン経済は新しい形の植民地主義である」とまで発言する国も見られた。結局、グリーン経済が重要なツールであることには合意されたが、具体的な取組は各国の裁量に任される形となった。

もう一つのテーマである制度的枠組みについては、ハイレベル政治フォーラムの立ち上げに合意したが、詳細な議論はこれからである。また国際環境ガバナンスの強化についても、欧州、アフリカを中心として専門機関を創設すべきとの主張がなされたが合意には至らず、最終的にはUNEPの強化という形で普遍的メンバーシップの導入や資金面の強化がはかられることとなった。

SDGsについては、成果文書交渉の過程では非常に激しい議論が行われたが、具体的な内容については合意に至らなかった。交渉の過程では具体的な分野への言及がなされていたが最終的にはそれらは落ち、また、今後の進め方についても政府間交渉を求める途上国と事務総長に委託すべきという先進国とが対立し、結局は政府間交渉プロセスを立ち上げることで合意した。ポストMDGsとの関係については、SDGsは最終的にはポストMDGsに統合されることになったが、具体的な議論は今後の交渉に委ねられており、フォローアップについては、今後難航することが予想される。

分野別の取組としては我が国が重視していた防災、都市を含め26分野の取組が記載された。また、実施手段については、当初途上国側は年間300億ドル、1000億ドルといった新たなコミットを要求したが先進国はこれに強く反対、結局「持続可能な開発ファイナンシング戦略」の策定のための交渉プロセスが立ち上げられることとなった。

最後に、今回の成果文書交渉は10年前、20年前の国際会議と比べると隔世の感がある。各国交渉官がiPadを片手にドラフティング交渉を行い、交渉の模様がネット上で瞬時に見られるなどは、一昔前であれば考えられないことであった。その意味では、成果文書交渉は過去のように閉ざされたものではなく、よりオープンかつ透明で、市民社会がよりアクセスしやすくなってきているものと考える。

成果文書交渉会合の様子(1)
成果文書交渉会合の様子(1)

成果文書交渉会合の様子(2)
成果文書交渉会合の様子(2)

プレナリーの様子
プレナリーの様子