「共同参画」2012年 1月号

「共同参画」2012年 1月号

連載 その4

PKOの選挙支援と女性の参画
内閣府国際平和協力本部事務局(PKO)

PKOの選挙支援とは

内戦が終わった国では、敵対していた双方が和平合意を結び、暫定政権の下、国際社会の支援を受け、選挙によって新しい政府を樹立します。公正な選挙・投票は、国民が国家の意思決定過程に参加するための具体的な手段の一つであり、当該国の民主化が進展するために必要な条件です。その選挙の準備から実施までを支える様々な活動を選挙支援と呼び、選挙支援もPKOの直接の任務の一つとなっています。PKOの選挙支援は国連政務局選挙支援部や国連開発計画(UNDP)等の他の国連機関との協働です。その中でもPKOの役割は、(1)治安の確保、(2)技術的支援、(3)後方支援等です。具体的には、有権者が暴力にさらされることなく安全な選挙活動や投票ができるようなパトロールの実施、当地の選挙管理委員の職員の訓練・監督、当地の暫定政府に対する法制度や法整備の支援、選挙に関わる市民教育やメディアを使っての情報流通の促進、投票箱や投票用紙の運搬等の後方支援を含めた様々な活動を行っています。

ジェンダーと選挙支援

和平交渉や和平合意の席にも女性の参画は著しく少なく、2010年の国連の報告によると和平プロセスに関わる女性の数は8%以下、和平合意には3%以下です。その結果、和平合意にも、新しい政府で憲法や政策を作る際にも、女性たちの声が反映されるのは至難の業です。女性の参画を促進するため、PKOの選挙支援では(1)選挙の準備、選挙委員や政党設立や候補者選び等の企画の段階から男女とも平等な参画の機会が確保されているか、(2)選挙登録や投票、運営の参画の機会が平等に確保されているか、(3)政党や議会にある程度の女性の数が確保されているか、(4)女性候補者が事前に能力開発の機会を与えられているか、(5)女性に特化した選挙教育が行われているか(男性より女性は非識字者が多く、政治参加は認められてこなかった背景があるため)、に焦点をあてています。女性の参画を促進するためには地に足の着いた支援が必要です。例えば、女性の政治参画の重要性について女性だけでなく、夫を含めた家族や地域において教育することや、小さな子どものいる女性に対しては、登録手続の間に子どもを預ける機能を設ける等があります。

女性の参画:南スーダンの住民投票

選挙の際には、各国や国際機関などから選挙監視団が派遣され、公正さや人権侵害がないか等の全体の監視・評価を行うために現地入りします。PKOも選挙監視を行い、支援をします。我が国の内閣府国際平和協力本部事務局が派遣した国際的な選挙への監視団は、これまで1998年のボスニア・ヘルツェゴビナへの派遣を皮切りに、2011年までに7か国へ9回、累計137名に上ります。2011年1月に南スーダンの住民投票では、日本の監視団は女性の参画の在り方を選挙監視のチェックリストに入れ、よりこまやかな監視・報告を行いました。投票総人口の52%が女性と、女性の参画率も高く、選挙管理委員等にも女性職員が配置されていました。選挙当日、村から何時間もかけ、食事や家族の世話を交代して投票所へ参集した南スーダンの女性たちは皆、晴れ着姿でした。幼子を連れた女性は投票所の係員に子どもを預けて投票を済ませました。南スーダンの女性たちは生まれて初めて自分の政治権利を実行し、結果、南部スーダンの独立を選びました。投票への女性の平等な参画は、平和的で民主的な国造りへの第一歩なのです。

(内閣府国際平和協力本部事務局 国際平和協力研究員 与那嶺 涼子)

図表1
図表1
2009年ネパールの制憲議会選挙。投票所に配置される女性の武装警察と女性の選挙管理員。

図表2
図表2
南スーダン、ジュバの投票所で投票する女性(2011年1月)。

図表3
図表3
左は投票に行こう!と呼びかけるポスター。右の女性は「1月9日の投票を楽しみにしている」と答えていた。