「共同参画」2011年 11月号

「共同参画」2011年 11月号

取組事例ファイル/団体編

公益社団法人 日本産婦人科医会

日本産婦人科医会(以下、本会)では男女共同参画に向けて、二つの方向で活動しています。ひとつは社会へ向けた活動で、産婦人科医の職能集団であるという点から、医療に関連した活動です。もうひとつは産婦人科を専門とする女性医師の支援に向けた活動です。

本会の目的は、母子の生命・健康を保護すること、そして女性の健康を保持すること、つまり生涯にわたる女性の健康支援ということに他なりません。ですから全ての活動が女性支援という方向性を持つのですが、その中で特に性教育と性犯罪被害の支援についてご紹介します。

性教育を通して本会は、正しい知識の啓発、自尊心や自分自身を含め生命を尊重する心、決断・実行できる力の育成に努めています。毎年開催される性教育指導セミナーでは、医師のみならず、看護師や助産師、保健師、あるいは教職員、教育委員会関連の役員など、多くの参加を得、実りある性教育の実践に向けて熱心な討論が行われています。公開市民講座にも多くの一般市民の参加があります。そして多くの会員が日常の診療や地域の中でそれぞれの活動を続けています。

また、性暴力被害への支援として、検査や外傷の治療、性感染症や望まない妊娠の予防など直接支援に携わる本会会員に対して、「性犯罪被害者への対応・診療マニュアル」(小冊子)を作成し配布しました。各都道府県の実情調査を行い、検査や治療、診断書作成などの諸経費の負担ができる限り被害者本人に請求されないよう、各地域での公的助成による支払いが円滑に行われるよう、地元警察本部との連携を推進しています。また警察庁や支援団体、医療機関との意見交換会を年1回開催し、様々な支援の方策を検討しています。ワンストップ支援センター開設の推進や地域医療機関と支援団体との連携も大きなテーマのひとつです。

一方、産婦人科では近年女性医師が特に増加しており、これら若い医師たちがそのキャリアを十分に伸ばしながら、結婚や出産・育児も無理なく両立できるように支援することは、本会としても重要な使命だと考えています。女性医師への支援としては、ホームページ上に「女性医師支援情報サイト」を設け、女性医師支援に特化したメーリングリストを立ち上げるなどして、情報の発信や交換に役立てています。また、どのような具体的支援が必要なのかを検討するために、主に労働環境について実態調査を毎年継続して行い、結果を公表しています。女性医師支援は他の医学会でも始まっていますが、本会がいち早く取り組み始めたため、他学会や諸団体から意見を求められることもあり、当会の実態や支援のあり方について情報を発信しています。

日本産婦人科医会は今後も、母子・女性の健康支援、産婦人科医師への支援を通して、男女共同参画社会の推進に向けて活動を続けていきます。

(日本産婦人科医会幹事 高瀬 幸子)

定例の記者懇談会(日本プレスセンター)
定例の記者懇談会 (日本プレスセンター)

今年度の性教育セミナー(大分)
今年度の性教育セミナー(大分)

研修ノート
研修ノート

公益社団法人 日本産婦人科医会は全国の母体保護法指定医師を中心とした産婦人科医師の組織です。昭和24年の創立以来一貫して、母子そして女性の健康を守るために活動しています。会員は現在約12,000人、寺尾俊彦会長の下、会員研修を始めとして、発刊物やホームページ、定例の記者懇談会などによる社会やマスコミへの情報発信、母体保護法や医療保険の適正な運用など、様々な活動を続けています。会員や関係機関の努力により、産科医療補償制度や出産育児一時金の直接払い制度の立ち上げなど、よりよい母子保健制度へ向けての模索が続けられています。また、子宮頸がんのHPVワクチンについても多くの地域で公費助成が行われるなどの成果もあがっています。

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