「共同参画」2011年 4・5月号

「共同参画」2011年 4・5月号

連載 その3 女性首長から

花の町の心配り
北海道東神楽町長 川野 恵子

このたびの「東日本大震災」により被災されました皆さまに心よりお見舞い申し上げますとともに、犠牲になられた方々とご遺族の皆さまに謹んでお悔やみ申し上げます。一日も早い復興をお祈りいたします。

すてきな笑顔と花のまち 東神楽町は、北海道の北の空の玄関旭川空港の所在地で、眼前に大雪山を一望し空気と水がきれいな農業の町です。平成元年から北海道第二の都市旭川の隣接地区に大規模な住宅団地を造成し、生活基盤を整備することにより、人口も増えています。宅地造成により農地の減少はありますが、農業者の高い技術力と確かな経営に支えられ農業生産量は変わりません。

日本型の農業経営は男女共同参画のモデルとなり得る要素を持っていると思っています。農家女性は家庭生活と農作業の区切りのない時間の流れの中で家事をこなし、また農作業の労働力となり、日本の食料生産に貢献してきました。しかし、その労力や貢献が公正に評価され、対価として農家女性に手渡されていないのが現状です。それはわが町とて例外ではありません。

農家の男女格差を解消すべく、さらには将来の農家女性の経済的自立を促すためにも、家族経営協定の締結や農業者年金の個別加入促進を呼びかけています。また、女性が農業に魅力ややりがいを感じることができるよう、直売所等施設を整備し消費者との触れ合いの機会づくりや研修会の開催を企画しています。

個別農業者の意識改革はもとよりですが、農業という産業全体を見渡した時に農協正組合員の在り方や地域農業委員の選出(推薦)等、大きな視点からの改革も必要であると考えます。

少子高齢化が進展するなか、地方自治体では「子育て支援」は重要かつ優先順位の高い政策であり、特色あるメニューで自治体としての独自性と差別化を図り子育て世代の定住促進に努めています。東神楽町は都市に隣接し恵まれた立地環境で、比較的年少人口が多く子育て支援の充実は不可欠ですが、「○○の無料化」、「○○の補助・減免」という個別的経済援助にもバランスと限度と言うものがあります。そこで「子育て」はもとより、社会全体で子どもの成長を見守る「子育ち」の視点で支援を進めています。今年度、子育てサポートファイル『えんじん』の運用を開始し、子ども一人ひとりの発育や発達を保護者が確認しながら子どもの「育ち」を見守り子育て支援の輪を築こうというものです。また、核家族化や共働きが増えるなか、父親の子育て参画は家族の絆を強める重要な役割ととらえ、お父さんとして地域に気楽にデビューできる『にこ父サロン』を開催し、子どもとともに地域と交流できる機会を設けています。

介護現場の男女格差解消は永遠の課題だと思います。介護は「妻や嫁の役目」「女性の仕事」と言った既成概念を払拭する意識改革が急務ですが、時間がかかりそうです。多様な介護需要が増大するなか、閉塞的介護を解消するため「介護者支援」に重点をおいて取り組みを進めています。

経済低迷と成熟社会にあって、これからはどれだけ住民から満足してもらえる「心配り」ができるのか、地方自治体の力量が試される時代だと考えています。

北海道東神楽町長 川野 恵子
かわの・けいこ/東海大学工芸短期大学卒業。昭和62年6月東神楽町に転居。平成11年5月から町議会議員。平成19年5月から町議会副議長。平成20年2月から町長(1期目)