「共同参画」2011年 4・5月号

「共同参画」2011年 4・5月号

特集

第55回国連婦人の地位委員会の開催
内閣府男女共同参画局総務課

本年2月22日~3月4日に開催された第55回国連婦人の地位委員会の概要をご紹介します。

第55回国連婦人の地位委員会(CSW)が、2011年2月22日から3月4日まで国連本部(ニューヨーク)で開催され、日本政府からは橋本ヒロ子日本代表をはじめ、NGO代表、外務省、内閣府、文部科学省、厚生労働省、 国連日本政府代表部、JICAの計17名からなる代表団が出席しました。

会合の様子
会合の様子

今回の国連婦人の地位委員会は、「完全雇用とディーセント・ワークへの女性の平等なアクセスの促進のためを含む教育、訓練及び科学・技術への女性と女児のアクセス及び参画」を主要テーマに開催されました。

会合では、各国代表や国連機関、NGO代表等によるステートメントの実施、主要テーマに関するハイレベル円卓会合や対話型専門家パネル、各種テーマ(「ジェンダー平等と持続可能な開発」及び「予防可能な妊産婦死亡・疾病の撲滅及び女性のエンパワーメント」)に関する対話型専門家パネルの開催、合意結論や決議についての協議等が行われました。

主要テーマに関する対話型専門家パネルでは、科学技術はミレニアム開発目標等、国際的に合意された開発目標の達成を加速する大切な手段であること、また、科学技術は生産力や競争力の増大に貢献するということに鑑み、経済成長にとっても重要であること、さらには、幼い時から女児にも数学・科学・技術を習得できる環境整備が必要であり、また、教育を受けても、女性はディーセント・ワークに就くにあたって引き続き、困難に直面していることに鑑み、受けた教育が生かせるよう、教育からディーセント・ワークと完全雇用への移行を確保する公共政策が特に女性の場合、必要であること等が確認されました。

また、「ジェンダー平等と持続可能な開発」対話型専門家パネルでは、 参加者から、持続可能な開発は、グローバルで包括的な視点が必要であること、ジェンダーも環境も横断的であるため各政策に反映させることが重要であること、消費社会、ビジネス・環境保護の中に女性(ジェンダー)をどのように組み込んでいくかは今後も議論すべきであること等の意見が出されました。

2月22日の開会式においては、UN Women(ジェンダー平等と女性のエンパワーメントのための国連機関)のミチェル・バチェレ初代事務局長より挨拶が行われました。バチェレ事務局長は、今回の主要テーマに関して、各国からの情報に基づいた分析として、固定的性別役割分担意識が男女間の職務分離の根本的な要因となっており、組織的な対応が必要であること、科学技術は男性と女性双方のニーズに十分に対応しておらず、研究開発の内容は、ジェンダーに配慮した利用者主導であるべきであること等を重要なポイントとして挙げ、CSW期間中にこれらについて実りある意見交換が行われることへの期待を示しました。そして、今後UN Womenのスタッフとともに、CSWの重要な任務を全力で支援するとの抱負を述べました。その他にも、バチェレ事務局長は、「予防可能な妊産婦死亡・疾病の撲滅及び女性のエンパワーメント」の対話型専門家パネルにおいてモデレータを務め鮮やかに議論を取り仕切るなど、今回のCSWに積極的に関与しました。また、2月24日には、パン・ギムン国連事務総長等も参加して、UN Womenの発足記念式典が行われました。

バチェレ事務局長がモデレータを務めた対話型専門家パネルの様子(左から3番目)
バチェレ事務局長がモデレータを務めた 対話型専門家パネルの様子(左から3番目)

我が国は、 2月24日に、 橋本代表よりステートメントを実施しました。

ステートメントでは、昨年の「北京+15」記念会合でのコミットメントどおり、昨年末に第3次男女共同参画基本計画を策定したこと、また、同計画では、今回のメインテーマでもある「科学技術・学術分野における男女共同参画」等を重点分野として掲げており、女性研究者の出産・子育て等と研究との両立のための環境作りや、女子学生・生徒の理工系分野の進路選択の支援を図ることが盛り込まれていると述べました。また、 同計画では、 「女性の活躍が、我が国経済社会の活性化に不可欠である」という視点を強調しており、計画に基づき、女性の継続就業等に対する支援に積極的に取り組むとともに、男性に対しても、長時間労働の抑制などの働き方の見直しや、家事・育児への参加促進などの取組を進めていくと述べました。また、国連システムにおけるUN Womenの主導的役割に期待するとともに、UN Womenの初代執行理事国として、積極的に貢献していく考えを表明しました。

ステートメントを実施する橋本日本政府代表
ステートメントを実施する橋本日本政府代表

今回の委員会の成果として、主要テーマに関する合意結論及び3つの決議が採択されました。「合意結論」では、各国が(1)国内の法令、政策及びプログラムの強化、(2)教育におけるアクセスと参画の拡大、(3)科学・技術の分野を含め、ジェンダーに配慮した質の高い教育及び訓練の強化、(4)教育から完全雇用とディーセント・ワークへの移行の支援、(5)科学・技術の雇用における女性の引き留めと昇格の強化、(6)女性のニーズに対応する科学・技術の構築、に必要に応じて取り組むことが要請されています。また、決議として「女性及び女児とHIV及びAIDS(日本:共同提案国)」、「気候変動におけるジェンダー平等と女性のエンパワーメント(日本:共同提案国)」、「パレスチナ女性の状況及びその支援」が採択されました。

今回のCSWにおいても、各国、国連機関、NGO等により様々なサイドイベントが開催され、我が国のNGO3団体(国際婦人年連絡会、国連NGO国内婦人委員会、日本女性監視機構)は、「日本において農林漁業に従事する女性たちのエンパワーメント」と題するサイドイベントを開催しました(2月28日)。これは来年の主要テーマに沿ったものであり日本の農業に従事する女性の現状と課題、農家の一主婦から農園取締役になられた方の体験談、日本の漁業女性の現状と課題、農山漁村女性のエンパワーメントに関する日本の国際貢献等について、各パネリストからの発表後、発表者及び参加者との間で活発な議論が行われました。

NGOサイドイベントの様子
NGOサイドイベントの様子

来年の第56回国連婦人の地位委員会は、2012年2月27日(月)~3月9日(金)の日程で、「農山漁村の女性のエンパワーメントと、貧困や飢えの撲滅及び開発、現在の課題における女性の役割」を主要テーマに開催される予定です。

また、今後のテーマは以下のとおりとなっています。

-2013年:女性と女児に対するあらゆる形態の暴力の撲滅と予防

-2014年:女性と女児のためのミレニアム開発目標の実施における課題と成果

第55回国連婦人の地位委員会HP:

<http://www.un.org/womenwatch/daw/beijing15/index.html>

内閣府男女局HP:

<http://www.gender.go.jp/fujin_ chii/index.html>

(合意結論の全文も掲載している)