「共同参画」2011年 2月号

「共同参画」2011年 2月号

連載 その3

平成22年度 女性のライフプランニング支援総合推進事業
女性のライフプランニング支援事業等を実施する男女共同参画センター等における事業評価システムの開発と普及

文部科学省生涯学習政策局男女共同参画学習課

全国女性会館協議会では、文部科学省が実施している「女性のライフプランニング支援総合推進事業」の受託先のひとつとして、男女共同参画センターなど女性関連施設における事業評価システムの開発・普及事業に取り組んでいます。

■事業の自己評価を実施しているセンターは36%

指定管理者制度の導入や地方公共団体の財政状況の悪化など、男女共同参画センターを取り巻く状況が厳しさを増すなかで、男女共同参画推進の拠点施設として確実な事業実施、さらには組織基盤の強化のために、事業成果の検証は不可欠です。しかし、国立女性教育会館と全国女性会館協議会が実施した全国の男女共同参画センター等女性関連施設(356カ所)を対象にした事業評価に関する調査では、センター自らが事業評価を実施しているところは、わずかに36.0%にすぎませんでした(図表1)。

図表1 自己評価実施の有無
図表1 自己評価実施の有無

■行政評価ではない、主体性に基づいた自己評価の意義と構造の明確化

男女共同参画センターの関係者が「評価」という言葉を使うとき、ある人は外部評価や行政評価、第3者評価を指し、ある人は自己評価や内部評価を意味します。男女共同参画センターは通常、設置者である地方公共団体等からの評価(外部評価/行政評価)を受けていますが、自らが自らの主体性を発揮して自らの事業を評価するという自己評価はあまり実施してきませんでした(図表2)。

図表2 自己評価を実施していない理由
図表2 自己評価を実施していない理由

そこで、この委託事業では地方公共団体等からの“される評価”ではなく、自らが“する評価”、すなわち自己評価の重要性に着目し、その意義と構造を明確化し、規模の大小、地域性などを踏まえ、各地の多様なセンターでカスタマイズできる自己評価システムの開発と普及を目指しました。

事業の優劣をつけたり、結果を批判することが自己評価の目的ではありません。自己評価を実施する目的は、自らの組織基盤の強化を図り、設置者(地方公共団体等)による外部評価への影響力を行使し、さらに市民・設置者への説明責任を果たすためなのです。

図表1・2/出典:

「女性関連施設における事業評価に関する調査報告書」(平成19年度)

(独立行政法人国立女性教育会館・特定非営利活動法人全国女性会館協議会)

■自己評価システムを作るための研修

自己評価は個別事業の評価から始まり、個別事業の集合体である分野ごとの評価、さらにはセンター全体の総合評価へと段階を踏む必要があります。昨年度は、個別事業を評価する際の構造を明らかにして、各地の男女共同参画センターが一定の研修を受ければ、独自に事業評価システムを作ることができるような方法を検討し、全国3カ所のセンターで研修を行いました。今年度は、分野別の評価やセンター全体の総合評価、さらに協働事業における相互評価のためのシステム、相対的評価のためのベンチマークの把握方法などを検討し、やはり全国3カ所で研修を実施しています(※参考)。

※参考

自己評価の研修を実施した施設

 平成21年度

  こうち男女共同参画センター

  静岡県男女共同参画センター

  尼崎市立女性・勤労婦人センター

 平成22年度

  大田区男女平等推進センター

  埼玉県男女共同参画推進センター

  北九州市立男女共同参画センター

研修は講義とワークショップで6時間ほどの構成になっています。スタッフのほぼ全員が参加するため、多くはセンターの休館日に実施されます。「センター全体でミッションや事業のあり方について、共通の軸で考え合う時間がもてることは大きな意味があった」「客観的に自分のセンターを見る重要さがわかった」「事業評価を行うことによって、自分の事業を(外部に)説明することができるようになることがわかった」など、研修の評価は大変よいものでした。

次年度は全国女性会館協議会のネットワークを通じ、自己評価システムの普及を図っていきたいと考えています。

(全国女性会館協議会 桜井陽子)