「共同参画」2011年 1月号

「共同参画」2011年 1月号

特集

第3次男女共同参画基本計画について
内閣府男女共同参画局推進課

平成22年12月17日に、「第3次男女共同参画基本計画」が閣議決定されました。今回の特集では、本計画の内容について紹介します。

政府は、男女共同参画社会基本法に基づき、男女共同参画基本計画(以下、「基本計画」という。)を策定し、男女共同参画社会の形成の促進に関する施策を総合的・計画的に推進しています。

平成17年12月には第2次基本計画を閣議決定し、施策の推進を図ってきたところですが、様々な状況の変化を踏まえ、施策のさらなる充実を図るため、昨年7月に男女共同参画会議において「第3次男女共同参画基本計画策定に当たっての基本的な考え方(答申)」が取りまとめられました。これを踏まえ、この度、第3次基本計画を策定しました。

本計画では平成32年までを見通した長期的な政策の方向性と、平成27年度末までに実施する具体的施策を示しています。

図1 第3次男女共同参画基本計画の概要
図1 第3次男女共同参画基本計画の概要

■第3次基本計画の特徴

(1)経済社会情勢の変化等に対応して、第2次基本計画では設定されていなかった「男性、子どもにとっての男女共同参画」、「貧困など生活上の困難に直面する男女への支援」などを新たに重点分野として設定し、合計15の重点分野を設けています。

(2)第3次基本計画を実効性のあるアクション・プランとするため、それぞれの重点分野に「成果目標」を設定しています。「成果目標」とは、それぞれの重点分野に掲げる具体的施策を総合的に実施することによって、政府全体で達成を目指す水準です。当該成果目標に係る項目に直接取り組む機関・団体等が、政府以外の場合には、政府がこれらの機関、団体等に働きかける際に、政府として達成を目指す水準として位置づけられるものです。「成果目標」の項目数についても、第2次計画の42項目から2倍近い82項目を設定しています。

(3)第2次基本計画においても位置付けられていた「社会のあらゆる分野において、2020年までに指導的地位に女性が占める割合が、少なくとも30%程度になるよう期待する」という目標の達成に向けた取組を推進するため、例えば2015年を期限とする中間目標の設定や、分野や実施主体の特性に応じて、実効性のある多様なポジティブ・アクションを推進することとしています。また、政治、司法、経済分野など、これまで取り上げてこなかった分野や必ずしも積極的でなかった分野についても、国は積極的に働きかけることとしています。

(4)女性の活躍による経済社会の活性化や「M字カーブ問題」の解消についても強調しており、そのための女性の継続就業支援や再就職支援等の施策を実施することとしています。

■第1部 基本的な方針

第1部では、男女共同参画社会を実現することによって目指すべき社会とはどのような社会なのかを提示するとともに、「第3次基本計画策定に当たっての基本的考え方」、「改めて強調している視点」、「今後取り組むべき喫緊の課題」等について記述しています。

目指すべき社会
(1)固定的性別役割分担意識をなくした男女平等の社会
(2)男女の人権が尊重され、尊厳を持って個人が生きることのできる社会
(3)男
女が個性と能力を発揮することによる、多様性に富んだ活力ある社会
(4)男女共同参画に関して国際的な評価を得られる社会

◆第3次基本計画策定に当たっての基本的考え方

(1)男女共同参画会議の答申に示された基本法施行後10年間の反省を踏まえ、実効性のあるアクション・プランとするため、できる限り具体的な数値目標やスケジュールを明確に設定するとともに、その達成状況について定期的にフォローアップを行う。

(2)固定的性別役割分担を前提とした社会制度や社会構造の変革を目指すとともに、「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)」、「子ども・子育て支援」、「子ども・若者育成支援施策」、「人権施策」など、政府が一体となって府省横断的に取り組んでいる関連施策との密接な連携を図る。

(3)女子差別撤廃委員会の最終見解における指摘事項について点検するとともに、日本の文化、社会の状況等にも配慮しつつ、国際的な規範・基準の積極的な遵守や国内における実施強化などにより、国際的な概念や考え方(ジェンダー等)を重視し、国際的な協調を図る。

◆改めて強調している視点

(1)女性の活躍による経済社会の活性化

(2)男性、子どもにとっての男女共同参画

(3)様々な困難な状況に置かれている人々への対応

(4)女性に対するあらゆる暴力の根絶

(5)地域における身近な男女共同参画の推進

◆今後取り組むべき喫緊の課題

(1)実効性のある積極的改善措置(ポジティブ・アクション)の推進

(2)より多様な生き方を可能にする社会システムの実現

(3)雇用・セーフティネットの再構築

(4)推進体制の強化

■第2部 重点分野

第2部では、15の重点分野を掲げ、それぞれの分野において、「基本的考え方」、「成果目標」、「施策の基本的方向」、「具体的施策」について記述しています。

第3次基本計画における主な施策と成果目標

(※分野間で重複する目標は初出の分野において記載。また、それぞれの各項目の後ろに現状値→目標値(目標年)を示している。)

第1分野 政策・方針決定過程への女性の参画の拡大

○政治、司法を含めたあらゆる分野で「2020年30%」に向けた取組

○クオータ制など多種多様な手法によるポジティブ・アクションの検討

<目標>

・衆議院議員の候補者に占める女性の割合 16.7%(21年)→30%(32年)

・参議院議員の候補者に占める女性の割合 22.9%(22年)→30%(32年)

<成果目標>

・検察官(検事)に占める女性の割合 18.2%(21年)→23%(27年度末)

・国家公務員採用試験からの採用者に占める女性の割合 26.1%(22年度)→30%程度(27年度末)

・国家公務員採用Ⅰ種試験の事務系の区分試験の採用者に占める女性の割合 25.7%(22年度)→30%程度

・国の地方機関課長・本省課長補佐相当職以上に占める女性の割合 5.1%(20年度)→10%程度(27年度末)

・国の本省課室長相当職以上に占める女性の割合 2.2%(20年度)→5%程度(27年度末)

・国の指定職相当に占める女性の割合 1.7%(20年度)→3%程度(27年度末)

・国家公務員の男性の育児休業取得率 0.7%(20年度)→13%(32年)

・国の審議会等委員に占める女性の割合 33.2%(21年)→40%以上60%以下(32年)

・国の審議会等専門委員等に占める女性の割合 16.5%(21年)→30%(32年)

・都道府県の地方公務員採用試験からの採用者に占める女性の割合 21.3%(20年)→30%程度(27年度末)

・都道府県の本庁課長相当職以上に占める女性の割合 5.7%(21年)→10%程度(27年度末)

・地方公務員の男性の育児休業取得率 0.6%(20年度)→13%(32年)

・都道府県の審議会等委員に占める女性の割合 28.4%(21年)→30%(27年)

・市区町村の審議会等委員に占める女性の割合 23.3%(21年)→30%(27年)

・民間企業の課長相当職以上に占める女性の割合 6.5%(21年)→10%程度(27年)

第2分野 男女共同参画の視点に立った社会制度・慣行の見直し、意識の改革

○税制、社会保障制度、家族に関する法制などの検討

○調査・統計における男女別情報の充実

<成果目標>

・「男女共同参画社会」という用語の周知度 64.6%(21年)→100%(27年)

・「女子差別撤廃条約」という用語の周知度 35.1%(21年)→50%以上(27年)

・「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)」という用語の周知度 37.0%(21年)→50%以上(27年)

・6歳未満の子どもを持つ夫の育児・家事関連時間 1日当たり60分(18年)→1日当たり2時間30分(32年)

第3分野 男性、子どもにとっての男女共同参画

○男性にとっての男女共同参画の意義についての理解の促進

○子どもの頃からの男女共同参画の理解の促進

<成果目標>

・週労働時間60時間以上の雇用者の割合 10.0%(20年)→5割減(32年)

・年次有給休暇取得率 47.4%(20年)→70%(32年)

・男性の育児休業取得率 1.72%(21年)→13%(32年)

・次世代認定マーク(くるみん)取得企業数 920企業(22年)→2,000企業(26年)

・短時間勤務を選択できる事業所の割合(短時間正社員制度等) 8.6%以下(17年)→29%(32年)

・在宅型テレワーカーの数 330万人(20年)→700万人(27年)

・自殺死亡率(人口10万人当たりの自殺者数) 24.2(17年)→2割以上減(28年までに)

・常時診療体制が確保されている小児救急医療圏数 342地区(20年度)→全小児救急医療圏(26年度)

・公立中学校における職場体験の実施状況 94.5%(21年)→96%(27年)

・公立高等学校(全日制)におけるインターンシップの実施状況 72.6%(21年)→75%(27年)

第4分野 雇用等の分野における男女の均等な機会と待遇の確保

○M字カーブ問題の解消に向けた取組の推進

○同一価値労働同一賃金に向けた均等・均衡待遇の推進

○女性の活躍による経済社会の活性化

<成果目標>

・ポジティブ・アクション取組企業数の割合 30.2%(21年)→40%超(26年)

・自己啓発を行っている労働者の割合 正社員58.1% 非正社員37.3%(19年)→正社員70% 非正社員50%(32年)

・25歳から44歳までの女性の就業率 66.0%(21年)→73%(32年)

・第一子出産前後の女性の継続就業率 38%(17年)→55%(32年)

第5分野 男女の仕事と生活の調和

○長時間労働の抑制、多様な働き方の普及、男性の家事・育児参画の促進、職務環境の整備

<成果目標>

・労働時間等の課題について労使が話合いの機会を設けている割合 52.1%(21年)→100%(32年)

・3歳未満児のうち、保育サービスを提供している割合 22.8%(22年度)→44%(29年)

・小学校1~3年生のうち、放課後児童クラブを提供している割合 21.2%(22年度)→40%(29年)

・放課後子ども教室の実施 9,280か所(22年)→「放課後子どもプラン」などの取組が、全国の小学校区で実施されるよう促す(24年度)

・地域子育て支援拠点事業 7,100か所(21年度見込)(市町村単独分含む)→10,000か所(26年)

・ファミリー・サポート・センター事業 599か所(21年度)→950市町村(26年)

・メンタルヘルスケアに関する措置を受けられる職場の割合 33.6%(19年)→100%(32年)

・20歳から34歳までの就業率 73.6%(21年)→77%(32年)

第6分野 活力ある農山漁村の実現に向けた男女共同参画の推進

○女性の農林漁業経営や地域社会への参画の推進

○加工・販売等の起業など6次産業化の取組への支援

<成果目標>

・農業委員会、農業協同組合における女性が登用されていない組織数

農業委員会 890(20年度)→0(25年度)

農業協同組合 535(19年度)→0(25年度)

・家族経営協定の締結数 40,000件(19年度)→70,000件(32年度)

第7分野 貧困など生活上の困難に直面する男女への支援

○セーフティネット機能の強化

○世帯や子どもの実情に応じたきめ細やかな支援

<成果目標>

・公共職業訓練受講者の就業率 施設内73.9%、委託62.4%(21年)→施設内80%、委託65%(32年)

・ジョブ・カード取得者 29.1万人(20年4月~22年7月)→300万人(32年)

・自立支援教育訓練給付金事業 90.0%(21年度)→全都道府県・市・福祉事務所設置町村で実施(26年度)

・高等技能訓練促進費事業 81.8%(21年度)→全都道府県・市・福祉事務所設置町村で実施(26年度)

・地域若者サポートステーション事業によるニートの就職等進路決定者数 10万人(32年)

・フリーター数 178万人(21年)→124万人(32年)

第8分野 高齢者、障害者、外国人等が安心して暮らせる環境の整備

○障害者、外国人等であることに加え、女性であることで複合的に困難な状況に置かれている人々への支援

<成果目標>

・バリアフリーの認知度 93.8%(17年度)→100%(24年度)

・ユニバーサルデザインの認知度 64.3%(17年度)→80%(24年度)

・60歳から64歳までの就業率 57.0%(21年)→63.0%(32年)

・地域自立支援協議会を設置している市町村数 約1,426市町村(21年4月)→全市町村(24年)

・障害者の実雇用率(民間企業) 1.68%(22年6月)→1.8%(32年)

第9分野 女性に対するあらゆる暴力の根絶

○配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等の推進 

○性犯罪への対策の推進

<成果目標>

・夫婦間における「平手で打つ」「なぐるふりをして、おどす」を暴力として認識する人の割合

58.4%(平手で打つ)、52.5%(なぐるふりをして、おどす)(21年)→100%(27年)

・配偶者暴力防止法の認知度 76.1%(21年)→100%(27年)

・配偶者からの暴力の相談窓口の周知度 29%(21年)→67%(27年)

・市町村における配偶者暴力相談支援センターの数 21か所(22年)→100か所(27年)

・性犯罪被害に関する相談を受けていることを明示して相談を行っている男女共同参画センター

22都道府県(22年)→各都道府県に最低1か所(27年)

第10分野 生涯を通じた女性の健康支援

○女性の生涯を通じた健康のための総合的な政策展開

○性差に応じた健康支援

<成果目標>

・食育に関心を持っている国民の割合 71.7%(21年)→90%以上(27年度)

・妊娠・出産について満足している者の割合 92.6%(21年度)→100%(26年)

・妊娠11週以下での妊娠の届出率 78.1%(20年度)→100%(26年)

・母性健康管理指導事項連絡カードを知っている妊婦の割合 41.2%(21年度)→100%(26年)

・出生1万人当たりNICU病床数 21.2床(20年度)→25~30床(26年度)

・不妊治療を受ける際に患者が専門家のカウンセリングが受けられる割合 

不妊カウンセラー 専従15.3%、兼任47.4% 不妊コーディネーター 専従11.8%、 兼任47.5%(21年度)→100%(26年)

・不妊専門相談センター  61都道府県市(22年度)→全都道府県・指定都市・中核市(26年度)

・妊娠中の喫煙・飲酒

喫煙率 5.5%、4.4%、4.9%(3~4か月、1歳6か月、3歳児検診時の結果)(21年度)→なくす(26年)

飲酒率 7.6%、7.5%、8.1%(3~4か月、1歳6か月、3歳児検診時の結果)(21年度)→なくす(26年)

・子宮がん検診、乳がん検診受診率

子宮がん 21.3%(19年)→50%以上(23年度末)

乳がん 20.3%(19年)→50%以上(23年度末)

・成人の週1回以上スポーツ実施率 45.3%(21年)→65%程度(できる限り早期)

第11分野 男女共同参画を推進し多様な選択を可能にする教育・学習の充実

○男女平等を推進する教育・学習の充実

○多様な選択を可能にする教育・能力開発・学習機会の充実

<成果目標>

・ミレニアム開発目標のうち、全ての教育レベルにおける男女格差 27年までに解消

・都道府県及び市町村の教育委員会のうち、女性の教育委員を1人以上含む教育委員会の割合 93.2%(21年)→100%(27年)

・初等中等教育機関の教頭以上に占める女性の割合 14.7%(22年)→30%(32年)

・大学の教授等に占める女性の割合 16.7%(21年)→30%(32年)

第12分野 科学技術・学術分野における男女共同参画

○働きやすい環境整備に向けた取組の支援

○女性研究者の採用・登用の促進

<成果目標>

・女性研究者の採用目標値(自然科学系) 23.1%(20年) →「自然科学系25%(早期)、更に30%を目指す。特に理学系20%、工学系15%、農学系30%の早期達成及び医学・歯学・薬学系あわせて30%の達成を目指す。」(総合科学技術会議基本政策専門調査会報告)との目標を踏まえた第4期科学技術基本計画(平成23年度から27年度まで)における値

・日本学術会議の会員に占める女性の割合 20.5%(20年)→22%(27年)

・日本学術会議の連携会員に占める女性の割合 12.5%(20年)→14%(27年)

第13分野 メディアにおける男女共同参画の推進

○女性の人権を尊重した表現を推進するためのメディアの取組の支援

第14分野 地域、防災・環境その他の分野における男女共同参画の推進

○地域における男女共同参画の基盤づくりの推進

○防災における男女共同参画の推進

○男女共同参画の視点に立った環境問題への取組の推進

<成果目標>

・自治会長に占める女性の割合 4.1%(22年)→10%(27年)

・女性委員のいない都道府県防災会議の数 13(21年)→0(27年)

・全国の女性消防団員 19,103人(22年)→10万人

第15分野 国際規範の尊重と国際社会の「平等・開発・平和」への貢献

○条約等の積極的遵守、国内施策における実施・監視体制の強化、国内への周知

○ジェンダー主流化によるODAの効果的実施

<成果目標>

・平成27年を期限とするミレニアム開発目標 各国、各国際機関、NGOと協力して、ミレニアム開発目標の達成に努める

■第3部 推進体制

男女共同参画社会の形成には、第2部の各重点分野で述べた施策を総合的に展開するとともに、あらゆる施策に男女共同参画の視点を反映することが必要です。また、国の施策のみならず、地方公共団体、民間団体等が連携して国民全体で取組を推進していくことが重要です。さらに、第3次基本計画、女子差別撤廃委員会の最終見解の実施状況を監視し、その後の取組に反映していくことが不可欠です。

第3部では、第2部で示した取組を総合的かつ計画的に推進するために、以下のような体制の整備・強化について記述しています。

・国内本部機構の強化

・第3次基本計画、女子差別撤廃委員会の最終見解等の実施状況についての監視機能等の強化

・政府の施策が男女共同参画社会の形成に及ぼす影響についての調査の充実

・地方公共団体や民間団体等における取組への支援

以上が第3次基本計画の概要です。

このほか、第3次基本計画の各重点分野に関連して、男女共同参画社会の形成の状況を把握する上で重要な各種指標を「参考指標」とし、今後内閣府においてその指標の推移を定期的にフォローアップし、結果を公表することとしています。

※計画の全体版、「参考指標」の一覧や第3次基本計画に関連した用語解説については、下記のホームページをご覧ください。

http://www.gender.go.jp/kaigi/senmon/kihon/sanjikeikaku/boshukekka.html