「共同参画」2010年 12月号

「共同参画」2010年 12月号

特集

APEC 女性と経済活動(6)
内閣府男女共同参画局総務課

WLN提言の採択

WLN会合中に開催された提言起草委員会での議論を経て、会合最終日にWLN提言が採択されました。今回の提言の特色は、APECエコノミー共通の指標を設定し(提言17参照)、今後フォローしていくことを打ち出したことです。

WLN提言は、9月23日に開催された第8回GFPN会合、10月1日に開催されたWES及び10月2,3日に開催されたAPEC中小企業大臣会合において発表されました。また、提言を踏まえた女性の活躍の重要性について、APECのハイレベル会合の成果物に反映されました。首脳宣言では「ビジネス及び政府における女性の起業家精神及びより大きなリーダーシップを促進する」と、閣僚声明では「女性のエンパワーメント」という項目において「3本柱からなるWLN提言を歓迎する」と、成長戦略では「あまねく広がる成長」の達成のため「『女性のための新たな経済機会の創出』に焦点を当てる」と、中小企業大臣会合共同声明では、女性の中小企業・起業家支援を強調した「WLN提言を認識する」と、記載されました。

首脳宣言等の全文は、APEC JAPAN 2010のホームページをご覧下さい。

http://www.apec2010.go.jp/docs/

第8回APEC男女共同参画担当者ネットワーク(GFPN)会合
第8回APEC男女共同参画担当者ネットワーク(GFPN)会合

【APEC首脳および閣僚へのWLN提言(仮訳)】

2010年9月19から21日にかけて、第15回APEC女性リーダーズネットワーク会合が東京で開催され、産業界、政府、学界、市民社会及び先住民の男女500人以上が集まり、「女性による新たな経済活動の創造―人・自然・文化を活かす―」をテーマに議論を行った。

WLNはAPEC首脳および閣僚に対し、アジア太平洋地域への女性の経済・貿易面での多大な貢献を評価し、以下の3点を柱とする政策提言の実施を通じ躍動的かつあまねく広がる成長を促すよう要請する。

・組織における女性のキャリア構築

・人・自然・文化を活かした女性による起業の実現

・女性のための新たな経済機会の創出(「女性のエンパワーメントのための指針」の推進が可能となる環境の構築を含む)

組織における女性のキャリア構築

[幹部役員への女性の登用]

1 民間部門と協力して、目標設定や進捗状況の報告等、女性の管理職、リーダー、役員の昇進を促し、加速させる取り組みを行う。

[能力開発-教育・訓練]

2 女性への継続教育、職業訓練、生涯学習を強化する。特に女性の(再)就業のための訓練を実施し、これらの訓練への参加を高める。こうした訓練プログラムに関する情報を普及させる。

[科学技術分野の女性]

3 民間部門と連携して後ろ向きの固定観念を廃し、科学技術分野の教育を受けた女性の雇用機会を増やし、存在感を高め、成功を促す。

[労働環境の整備]

4 フレックスタイム制や女性と男性が家族責任を分かち合うことを促すその他の取組等、ワーク・ライフ・バランスを実現する適切な政策の策定を通じ、女性が働き続けることを可能にし、かつ奨励する。

人・自然・文化を活かした女性による起業の実現

[資金調達]

5 女性の資金調達は、全てのAPECエコノミーにおいて依然として大きな課題である。WLNは首脳及び閣僚に対し、公的融資、エクイティ・ファイナンス、マイクロ・ファイナンスなどの多様な金融商品・サービスへの女性のアクセス向上に向けた取組を強化するよう要請する。法規制の障害の除去を通じ、インフォーマル・セクターも含めた女性が経営する中小企業、零細企業に対する新たな形の資金調達を拡大する。

[零細・中小企業の起業家支援]

6 WLNは各エコノミーに対し、女性の起業支援を含む戦略的な行動計画の策定を促す。

7 官民連携を通じて女性の起業推進に向けた取組を強化し、ビジネスが可能となる環境を整備する。WLNは、様々なAPECフォーラムが現在実施しているビジネス環境改善(EoDB)プログラムを評価し、少女を含む女性起業家を対象に、知識集約型経済で求められるスキルを向上させるプログラムの更なる実施を提言する。

8 意識啓発と調達機会に関する研修の提供を通じ、企業、政府、国際市場およびグローバル・バリュー・チェーンへの女性の参加を促進する。

[社会的起業支援]

9 自然環境や伝統的知識を搾取することなく、自然・環境・文化面の地域的特徴を活かしたビジネスを推進する。

10 社会的起業に関する研究を実施し、社会的起業家になりうる人の教育訓練を行い、社会的起業という分野に参入するためのインセンティブを策定する。

女性のための新たな経済機会の創出

[経済の牽引役としての女性]

11 APECエコノミー間の地域経済・社会・市場の域内統合を推進するあまねく広がり持続可能な成長を促す指針として、国連婦人開発基金(UNIFEM)と国連グローバル・コンパクトが発表した「女性のエンパワーメントのための指針」(WEPs)を支持する。

12 昨今の金融危機や自然災害に対応し逆境をチャンスに変える上での、先住民女性を含む女性の役割と能力を評価する。

[イノベーションと情報通信技術(ICT)]

13 情報通信技術(ICT)への平等なアクセスを確保し、経済的エンパワーメントの手段としてICT活用の技術的ノウハウを学習し、習得したいと望む女性への支援を行う。

[ジェンダー主流化]

14 APECエコノミーにおいて男女別統計の収集、分析、普及を行う能力を高め、得られたデータを政策立案者の男女格差に関する意識啓発に活用する。これにより、政策の改革による男女別影響に対して理解を一層深めることができる。

[ネットワークの構築]

15 女性の積極的な経済参加を促すため、特に女性が携わることが少ない科学や技術、起業などの分野で、組織内、エコノミー内及び国境を越えたネットワークづくりの機会を促進する。経済団体に対し、女性を対象とする視察や交流プログラムを企画するよう促す。

16 APECビジネス諮問委員会(ABAC)では、女性は未だ過少代表となっている。WLNは首脳に対し、各エコノミー最低1名は確実に女性をABAC委員に任命するよう要請する。

[前進への活路]

17 上記提言の実施を促すため、WLNは、男女共同参画担当者ネットワーク(GFPN)に対し、中小企業作業部会と協力して、以下の進捗状況(女性の数または比率)についての主要実績評価指標(KPI)を「APECにおける女性の統合のためのフレームワークの実施報告書」に盛り込むよう要請する。

1.(上場)企業における役員

2.中小企業オーナー

3.APECビジネス諮問委員会(ABAC)メンバー

上記データの入手が不可能な場合、これに代わる具体的な施策の実施状況を報告すべきである。

WLNは、GFPNに各エコノミーにおける本提言の実施状況の監視について助力を求めるとともに、次回及び今後のWLN会合でGFPN議長がその活動について報告を行うよう要請する。

WLNは、2011年9月にサンフランシスコで「女性の経済的エンパワーメントに関するハイレベル政策会合」を開催するという米国の提案を歓迎する。

WLNは、本会合を開催した日本に感謝し、また第16回WLN会合の開催を申し出た米国に対し謝意を伝えたい。

※WLN提言の英語原文については、WLN会合ホームページをご覧下さい。

http://www.apecwln2010.jp/pdf/proposal.pdf

GFPN会合

男女共同参画担当者ネットワーク(GFPN)は、2002年にメキシコで開催されたAPEC女性問題担当大臣会合における大臣共同声明に基づいて設置されたフォーラム(委員会)です。APECの活動において持続的かつ効率的に女性の参画を促進し、男女共同参画の視点を反映させていくために、経済・技術協力運営委員会(SCE)に対して、毎年、報告・提言を行うとともに、APEC各フォーラムに対して政策的・実用的な助言を行うなどの役割を担っています。

本年は、日本がAPEC議長であることから、今年で8回目を迎えるGFPN会合が日本において初めて開催されました。本会合は、日本でGFPNを担当している内閣府男女共同参画局の主催で、9月23日に埼玉県嵐山町の国立女性教育会館において開催され、12エコノミーから48名の男女共同参画担当者が参加しました。

本会合では、武川恵子内閣府官房審議官が議長を務め、GFPNの活動成果、新たな課題、今後の方向性等について議論が行われたほか、各エコノミーから男女共同参画に関するエコノミー内の進捗状況の報告が行われました。また、会合の最後にSCEに対する報告・提言を採択しました。次回のGFPN会合は来年9月にアメリカで開催される予定です。