「共同参画」2010年 12月号

「共同参画」2010年 12月号

特集

APEC 女性と経済活動(3)
内閣府男女共同参画局総務課

分科会(1)

「女性たちも経営に参加しよう!」

企画・運営:NPO法人J-Win

http://www.j-win.jp/index.html

当法人の内永ゆか子理事長がWLN実行委員長を務めることになったので、J-Winとしてもこの機会を、自己啓発やグローバルネットワーキング、そして日本のキャリア女性たちのアピールの場と捉えて、積極的な参画を目指しました。83社の会員企業にもWLNの広報をはじめさまざまな協力を依頼し、50名の女性メンバー、事務局スタッフをWLN会合に参加させることができました。

また会合2日目の午後からは、「組織における女性のキャリア構築」という共通テーマのもと、3つの分科会が持たれ、J-Winはそのうちの第1分科会「女性の経営参加」分科会を企画運営しました。

その他に、エクスカーションでは、2つのコースを担当。さらに本会議終了後の翌22日には、内閣府・男女共同参画推進連絡会議との共催で2つのサイドイベント「グローバルリーダーを目指して」と、「理系女性のためのグローバルキャリアディべロップメント」(こちらはIEEEとも共催)を開くなど、非常に充実した数日間となりました。ここでは、紙面の関係で、第1分科会の内容について報告をします。

女性も恐れずにチャレンジしよう!

まず、みずほ証券(株)代表取締役社長の横尾敬介氏にスピーチいただきました。

企業経営においては、人材が全てであり、優秀な人材を確保するには、男性も女性も人種や宗教、年齢も関係ない。ダイバーシティこそ、グローバル化された市場で戦うための源泉であり、経営戦略として真剣に取り組んでいると具体的な取り組みを含めて語りました。そして、女性たちには、失敗を恐れずにチャレンジして欲しい。失敗を恐れて試さないことよりも、チャレンジして失敗したほうが多くのことを学ぶことができると、会場の女性たちへ熱いメッセージを送りました。

横尾敬介氏
女性たちに
熱いメッセージを贈る
みずほ証券(株)社長の
横尾敬介氏

自己アピール上手になろう!

続いてのパネルディスカッション「女性たちも経営に参加しよう!」には、6カ国の女性管理職が壇上に並びました。

ジュリー・ゾウ氏(IBM中国グローバルデリバリーセンターHR役員)、ビョン・オク・ソン氏(韓国プルデンシャル生命保険最高執行責任者/K-Win理事長)、キャンディス・ジェニファー・アラバンザ・イヨグ氏(フィリピン セブ・パシフィック航空マーケティング・流通部長)、ダンジャイタウィン アナンタチャイ氏(タイ リサーチ・ダイナミクスマネージングディレクター)、テリー・テオ氏(シンガポール アグファ・アセアン 地域販路マネージャー)、星野朝子氏(日産自動車((株)執行役員兼市場情報室室長)。ジュリー・ゾウ氏がファシリテーターを務め、パネラーそれぞれが自身のキャリアを語るとともに、仕事への姿勢や女性エグゼクティブになるための心構え、ヒントをたくさん提示されました。

★「どのようにキャリアを築いてきたか、そのために何が必要だったか」という質問には、最初から役員を目指していたわけではなく、仕事を愛し、一生懸命取り組んできた結果という人がほとんど。しかし、人よりも20%は多く仕事をする、職場でのベストになる、ボスを上手にマネージするよう心がけたなど、人並みでない努力をしている。日産自動車の星野さんは、日本女性が男性よりも足りないのは、自分ブランドをアピールすること。自分の強みをみつけ、それを活かす戦略を立て、プロモーションする。周りの人たちに持てる力を理解されてこそエグゼクティブになれるとメッセージされました。

★「エグゼクティブにとって大切なことは?」という質問には、人間関係の重要性やチームワークなど、コミュニケーションを上げる人が多かったが、アナンタチャイ氏は、大きなチームを率いるための「3つのE」を挙げました。

(1)Empathy(傾聴、共感)

(2)Encouragement(奨励)

(3)Empowerment(権限付与)

会場にはさまざまな国の約300名の参加者からたくさんの質問も出て活気あふれる会となりました。

女性エグゼクティブ 女性エグゼクティブ
中国、韓国、フィリピン、タイ、シンガポール、日本と6ヶ国の
女性エグゼクティブがキャリアアップについて語った

分科会(2)

「女性の生涯にわたるキャリア開発を支える教育システム」

企画・運営:(財)日本女性学習財団

http://wwwsoc.nii.ac.jp/jawe2

コーディネーターに入江直子氏(神奈川大学人間科学部教授)、パネリストに、萩原貴子氏(ソニー(株)人事部門ダイバーシティ開発部統括部長)、エレーナ・フェダシナ氏(ロシア・The Committee of 20事務局長)、パトリス・ブラウン氏(オーストラリア・バララット大学地域革新競争センター部長)、イ・ビョンジュン氏(韓国・釜山大学教育学部教授)、三輪建二氏(お茶の水女子大学大学院人間文化創成科学研究科教授)を迎え、パネルディスカッションを行った。会場後方では、模造紙に議論の流れを絵で描いていくグラフィックファシリテーション(GF)を実施した。参加者は200人近くに上り、人材育成・教育への関心の高さがうかがわれた。

描かれたGFの1枚
描かれたGFの1枚

まずコーディネーターの入江氏から、女性の経済参画を阻む問題として、(1)システムの問題(目に見えるカリキュラム)と(2)ジェンダーの問題(目に見えないカリキュラム)が挙げられた後、企業・非営利団体・地域・大学などそれぞれの立場から、10分ずつ女性のキャリア開発の課題や取組が報告された。

萩原氏は企業の立場から、男性上司の「行き過ぎた」配慮や女性の自信の無さを課題として挙げ、ロールモデルとネットワーキングの重要性を述べた。フェダシナ氏は、キャリア開発の障害には外的要因と共に内的要因があることを指摘し、学生からトップ管理職に至る女性に向けた、メンタリングを中心とするキャリア開発支援の取組を事例として提示した。ブラウン氏は、知識経済社会における経済参画に向けて、メタ・コンピテンシーの開発と女性に合わせた学習方法が必要であるとし、試行プログラムと成果となる学習の枠組みを報告した。イ氏は、釜山大学で基礎的職業能力開発プログラムを一般教育課程へ導入したことと、自治体や地域女性センターとの連携によるキャリア開発の取組を報告した。最後に、三輪氏は、職業教育を軸にした大学改革が求められること、長期的展望に立った、女性のエンパワーメントにつながるキャリア開発支援の必要性を提起した。

フロアからの質問を聴くパネリストたち
フロアからの質問を聴くパネリストたち

会場からは10名を超える質問者が立ち、「大学への基礎的職業能力開発プログラム導入の成果」「女子高生の働くイメージと教育の関係」「育休後のキャリアプラン」などについてスピーカーとやりとりをし、議論がさらに深まる時間となった。

議論をまとめるコーディネーター
議論をまとめるコーディネーター

3日目の成果報告では入江氏が登壇し、(1)「第三段階の教育(初等・中等教育に続く教育)」を、職業教育を軸に再定義し、生涯にわたるキャリア開発を支えるシステムに変革していくこと、(2)ジェンダーの視点に立ったキャリア開発で女性をエンパワーメントしていくことをまとめ、産業界・教育機関・地域社会が連携してシステムを開発し女性のキャリア開発を支えていくことが、女性の経済参画推進につながると提言した。

アンケートでは8割を超える人が「よかった」と回答し、自由記述でも「各国の事例が聴けて有意義だった」「教育は学校の中だけでなく、社会と連携して行うことでよいものになると実感」「親として、社会人として、生涯学習の必要性を痛感。娘の世代に間に合うようなプログラムを期待」などの声が寄せられた。

当財団では、この成果を活かして、産業界や教育機関、地域等と連携して女性のキャリア開発支援に今後取り組んでいきたい。

分科会(3)

「女性技術者・科学者のリーダーの育成」

企画・運営:IEEE JC WIE(IEEE Japan Council Women in Engineering Affinity Group)

http://www.ieee-jp.org/japancouncil/affinitygroup/WIE/

グローバル化が進む現代、経済発展における女性技術者・科学者の重要性はさらに高まっています.本分科会では科学技術分野の女性リーダー育成に焦点を当てたパネルディスカッションを行いました。

パネリストは、エステラ F.アラバストロ氏(フィリピン科学技術省前長官)、イレーナ・アトブ氏(オーストラリア、IEEE WIE Chair Person、 テルソナコーポレーション ネットワークアーキテクチャリライアビリティグループ テクニカルマネジャー)、エリザベス・ボン・フランド氏(チリ、北カトリカ大学准教授)、シャオ・フェンジン氏(中国、青島大学副学長)、山口しのぶ氏(日本、東京工業大学教授)、國井秀子氏(日本、リコーITソリューションズ株式会社取締役会長執行役員)の6名です。参加者は100名を超え、熱気に溢れる中分科会が始まりました。

基調講演者であるアラバストロ氏はフィリピン初の女性科学技術省長官として、卓越したリーダーシップにより女性技術者・科学者支援策を進めてこられた方です。工学部に進む女子がほとんどいなかったフィリピンにおいて、ジェンダー意識育成や科学技術分野の女性登用支援といった施策を打つことで、女性リーダーの育成に成功した過程を述べられました。科学技術分野における教育と女性の自立の重要性、女性技術者・科学者のネットワーキングの必要性も示されました。

さらに、それぞれのパネリストから7分の発表(ポジショントーク)がありました。司会者でもあるアトブ氏は、オーストラリアでは科学技術分野を専攻する女性の数が少ない、科学技術分野を専攻した女性の多くが、キャリア開発の過程において専門分野から離れてしまう、という問題が存在することを示し、フランド氏も、チリでは工学を目指す女子学生が非常に少なく、工学専攻の女子学生の支援策が不十分であるとの現状を厳しく指摘しました。フェンジン氏は、科学技術分野における中国の女性参画の成果を披露すると同時に、トップレベルの女性技術者・科学者の数は未だ十分でなく、さらなる連携が必要との考えを示しました。山口氏、國井氏もそれぞれ、日本における女性技術者・科学者の遅れている現状と問題について述べ、各国多少の状況は違えども、同じ課題に直面していることが再認識されました。

続くディスカッションでは「女性技術者・科学者が少ない原因は?」、「なぜ女性のキャリアが伸びにくいか」、「現状を改善するためにどのようなアクションを取ればよいか?」などの質問に関して、熱い議論が繰り広げられ、最終的に以下のような提言案が示されました。

●科学技術分野へ女性参画高めるため、国や地域レベルの戦略・政策作りを連携して推進すること

●科学技術分野の女性リーダーロールモデルとしてハイライトすること

●科学技術分野の女性の参画評価する統一した指標を確立し、定期的に報告しあうこと

分科会(3)の会場ではツイッターアカウントも用意され、参加者からのリアルタイムの質問など、多数の発言が寄せられました。その様子は会場のサブスクリーンに流され、明るい雰囲気の下、議論は進められました。終了後のアンケートでも「各国の話が聞けてよかった」、「日本の遅れている状況が再認識できた」、「トップの決断の重要性を感じた」との感想が寄せられ、97%の参加者が「非常に良い」、「良い」との回答した大好評のディスカッションとなりました。

本分科会に続き、9月22日には「2010 APEC WLN サイドイベント “理系女性のためのグローバルキャリアディベロップメント”」が開催され、分科会のパネリストを中心に、各人のキャリアの軌跡やグローバルに活躍するためのノウハウなどが活発に議論されました。

科学・技術分野の分科会が来年以降もAPEC WLN会合において引き続き開催されることを大いに期待しています。

分科会(4)

「人・もの・環境を最大限に活かす農山漁村女性の起業活動成功の秘訣」

企画・運営:(社)農山漁村女性・生活活動支援協会

http://www.weli.or.jp/

コーディネーター 有馬 真喜子氏(国連女性開発基金日本国内委員会理事長、当協会顧問)

パネリスト:岡田 ミナ子氏、リ チェン・パン氏(台湾)、佐野 房氏、アメロウ・ベニテス・レイエス氏(フィリピン)

当分科会は、農村女性起業家としての自己・組織・地域変革への努力、経済的な自立、地域活性化への貢献など農村女性の活躍を世界へ発信することを目的とし、様々な分野に携わる150名近い参加者を得て、活発な意見交換がなされた。

自然・動物・人間の共存を

北海道で自然・動物・人の調和を目指して酪農を営む岡田ミナ子氏。自家用の豚をハム・ソーセージに加工して販売し始め、デパートの売場に立った時、お金を出せばいつでも食料を買えるという消費者の態度を目の当たりにした。そして「食料というのは動物・植物の命であり、私達はこれらの命を頂いて生かされている」ことに気づいたという。このメッセージを消費者に伝えるために、顔が見える販売にこだわった活動を続けている。「今年は口蹄疫で豚を飼えなかったことが一番辛い。自然界には人間の力が及ばないことがある。このことから自分も学びたいし、他の人にも学んでほしい」と結んだ。

農村カフェが雇用創出の場に

台湾の農村女性起業プログラム「ティン・ママ」は、伝統とモダンを融合させた新しい料理開発と経営に関する研修が中心で、体に良くておしゃれな料理を提供する農村カフェの起業家を育成している。研修を受けたリ チェン・パン氏は、「地元のしょうがの加工品(クッキー・ジュース)を中心にカフェを経営し、収入が2倍に増えた。娘を含め都市から村に戻ってくる若者が増え、村の雇用の場が広がっている」と報告した。

経営者としての戦略・決断力

地元のにんにくの加工品を開発・特産物化し地域を活性化させた佐野房氏。活動開始当時は加工商品で成功したJAの例はなく、JA女性部の加工活動に反対の声が多かった。しかし、佐野氏自らが資金面も含め全責任を負うことでJA関係者を説得し、7年後には赤字から黒字経営へと改善。その後、常勤役員に就任してJA合併を成功させるなど組織を動かす女性経営者としての戦略や行動力の重要性について説いた。

農業技術を女性に

「フィリピンの農村女性の置かれている状況は未だ厳しく課題は多い」とレイエス氏。「小さな土地でも十分に生産性を高められる農業技術を女性が身に付けることで、彼らの生活は確実によくなる。この分科会を通して産業界や技術者と農村女性を結びつけ、新たな協力が生まれることを期待する。そして、若者が農業に憧れ農業に従事する社会を作らなければならない」と述べた。

会場との意見交換から・・・男性社会への挑戦

岡田氏は、デパートの販売マネージャーがすべて男性で、最初は名刺も交換してくれないなど男性社会で行動を起こすことの苦労を語った。この報告に関係して、食品会社に勤める会場の質問者からは「食品産業のバイヤーも男性が多く男性社会。しかし、生活者(消費者)は女性が中心。」との指摘を。佐野氏も「JAの役員も男性社会。自分は女性の草分け的存在だったので大変苦労したが、理解者を増やして、これからの女性に苦労させない環境づくりが大事」と訴えた。

おわりに

当協会にとって、初めての国際会議で色々と苦労もありましたが、日本の農村女性起業家の心意気と実績を国際舞台でアピールしたいという所期の目的を達成することができました。21エコノミーの内外の方々に日本の女性農業者の取組の認識を印象付け、参加国との共通の課題や意義を共感する場をつくり、意見交換では、生活者と女性農業者のネットワークづくりの重要性を認識する機会となりました。今後とも女性農林漁業者の取組を内外に伝え、女性のネットワークに努めて参りたいと思います。

分科会(5)

『新機軸を担うニュービジネスとその未来』

企画・運営:NPO法人 アジア女性経済会議

http://www.awec.asia/index.html

21世紀「人・モノ・金」が益々自由にボーダーレスに動き、ビジネスの在り方も更に多様化する中で、国際的に活躍する女性エグゼクティブ、学識経験者や経営者達がそれぞれの経験と立場、また研究成果から「新機軸を担うニュービジネス」とは何かをそれぞれに語った。

ベトナムから参加し、自然との共存型開発エリア「ブン・タウ・ロイヤルパーク」の設計、建設プロジェクトを率いるドン・ティ・ミンチョウ氏(バ・リア・バン・タウ中小企業連合 副議長)は、孫・子の代まで長く人々が自然環境を保った開発エリアで暮らせるような、自然環境に配慮した開発計画を紹介。女性の目線を活かした持続可能性重視の地域開発の例を見せてくれた。

また、パワディー・トングタイ氏(タマサート大学 理事)は、タイでユニークな成功を収めた二人の女性起業家を紹介。彼らがそれぞれ、子供の気持ちを重視した新しい教育方法を編み出したエピソード、またタイの農村でエイズ感染に苦しむ女性達に、雇用の機会を作りだしたというエピソードから、女性の社会起業的な発想が成功した具体例を披露した。

日本からは、岡俊子氏(アビームM&Aコンサルティング株式会社代表取締役社長)が、M&Aという新しいビジネスのフィールドで、女性のプロジェクトリーダーがいかに多くの指導力、気づき、可能性を持つかを、自らの体験を元に語った。伝統的大企業では、まだまだ女性のエグゼクティブの存在が稀有である日本において、女性の特性が活かされる新しい分野があるという実例と発見は、多くの日本女性にとって励みになる話だったのではないだろうか。

マレーシアのキム・ハ・ワン氏(スマートリーダー・ワールドワイド取締役)は、20年前に子供向けの英語教育メソッドを創り、フランチャイズ化に成功した自らの体験を語った。女性だからといって、起業やビジネスを恐れることはない、自分は全くのゼロからビジネスをスタートしたが、知恵と工夫とで、必ず道は開けることを強調し、英語教育のフランチャイズビジネスが国内で多くの起業家を生み出すだけでなく、今や海外でも展開されるようになった理由を自ら分析し語った。

中国から参加した霍虹 フオ・ホン氏(シノモニターインターナショナル副社長)は、新しい消費時代に突入した中国都市部の主に若い世代の消費動向について多くの例を示しながら、自らが副社長を務めるマーケティング会社の調査結果を語ってくれた。世界第2位の経済大国となった中国で今後どのような消費文化が現れるか、予想、調査、分析におおいに女性の視点が期待されるところだろう。

香港から参加のジョアン・ウォン氏(フライシュマン・ヒラード共同経営者、クライアントサービス 業務執行取締役)は、米国企業のアジア地区のエグゼクティブとして、女性のコミュニケーション能力の高さが、いかにPRの分野で活かされているかを強調。在籍する会社において、世界50か所以上にある支社の3割以上で女性のトップを擁しており、多くの女性エグゼクティブが活躍していることを裏付けとして語った。

以上分科会5の参加者達からの話から、新時代のニュービジネスの定義と、その新機軸を創る女性の役割と可能性として、以下のようなまとめを試みる。

1.新時代のニュービジネスは、グローバル経済を牽引する可能性を持つものである。新たな需要を見出し、満たしながら、国境を超えて拡大、他国経済に寄与し、国境を越えた価値観を創り共有するものである。

2.21世紀のニュービジネスが成功するためのキーワードは、持続可能性、多様性、コミュニケーションである。つまり、新しい時代のニュービジネスを創り、育てるうえで、女性は「持続可能性を考え、またコミュニケーションに秀でているその特性」から大きな役割を担わざるを得ないと結論づけたい。

分科会(6)

「地域に根ざした企業経営における女性の力」

企画・運営:中小企業家同友会全国協議会

http://www.doyu.jp/

●登壇者紹介

コーディネーター:大槻眞一氏(阪南大学名誉教授)、パネリスト:フランシーヌ・ホワイトダック氏(カナダ ホワイトダック・リソース(株)代表取締役)、グエン・ティ・タン・ビン氏(ベトナム ビナストーンJV代表取締役)、ウー・フイ・ファング氏(中国 厦門天能電子(株)取締役社長)、糸数久美子氏(日本 (株)ITAC代表取締役)、司会:平田美穂氏(中小企業家同友会全国協議会 事務局次長)

●分科会テーマの紹介

一国の経済の発展は地域経済の発展の積み重ねであり、地域おこしは、地域に密着し、経営をしっかり確立させた中小企業が地域に存在すること、さらに経営者の間で信頼できるネットワークができるかどうかが問われ、最後に行政の効果的なサポートが求められる。興味深いことに今年のAPECの関連会議は、「中小企業」と「女性」の2つがキーワードになっていると感じた。女性の経営者が今注目されているのは、女性がもっと社会に進出を果たし、政治経済にいい影響を与えて、地域を良くし、世界を良くしていくことが求められているからだ。「地域に根ざした企業経営における女性の力」について討論を深めたい。

●パネリストの発言概要

フランシーヌ・ホワイトダック氏

先住民族、農村部などの女性の連携を促し、貿易機会を創出している。カナダのケベックで先住民族とのネットワーク、アメリカの500部族とのネットワークがあります。現在、250品目を扱っている。「商品を持っている人」「売り場のある人」を結びつけ、地域において売買の場を作ってきた。先住民の天然素材の手作り品は、時代にあっている、ビジネスチャンスになるのではと思い、そこでニッチな市場に注目し、ハイクオリティーの商品を提供し、付加価値を高めた。

グエン・ティ・タン・ビン氏

事業内容は天然石の採石、加工、設置。主にヨーロッパ、アメリカ、日本に輸出し、商業施設などに使われている。創業のきっかけは学校卒業後、務めたベルギーの会社の仕事がきっかけ。生まれ故郷ではその専門会社がなかったので、上司に会社を起業したいと言い、ベルギーの人と合弁会社を創設した。外国から石を輸入したのはベトナムでは当社が初めて。海外市場だけでなく、国内市場、ローカル市場に注目したのが成功した。

ウー・フイ・ファング氏

業務内容は電子回路基盤実装。わが社の強みはお客様とのパートナーシップにある。そしてお客様の要望にこたえる社会企業であること。弱みは技術革新、人材育成に課題があること。企業が成長し、安定期に入ったら社会に還元することが大事で、会社の社会への責任をどう果たしていくのを考えている。将来的にはビジネスや人をつなぐ「プラットホーム」を創りたい。中国と日本の架け橋、自分の夢を実現したい人への夢の応援をしていきたいと思う。

糸数久美子氏

(株)ITACでは、税理士業務以外の周辺業務を展開、事業承継や会計記帳業務などを行っている。会社理念は「幸せな生活の創造」。私は中小企業家同友会の理念と活動から多くことを学んだ。中小企業家同友会は「良い会社をつくろう、良い経営者になろう、よい経営環境をつくろう」の三つの目的と「自主・民主・連帯の精神」、「国民と地域とともに歩む中小企業」を理念としている。日本では雇用の70%が中小企業であり、中小企業の役割を明確にすることが雇用を守ることになり、地域や豊かな国民生活のために中小企業は重要であると考えている。

●まとめ

4人の報告者それぞれの事例で共通しているのは、地域に根ざした経営をしていること、女性の視点を活かした取り組みがなされているということであった。中小企業が雇用の受け皿であり、新しいサービスや技術の源であり、経済社会の発展に大きな役割を持っているという認識はいまや世界の常識である。日本でも中小企業憲章が作られた。今回のWLNでお互いに知り合い、自分の経営を安定させ、協力しあえるネットワークを広め、強めること、その成果を次回の2011年WLNで報告しあうことが大事である。