「共同参画」2010年 11月号

「共同参画」2010年 11月号

取組事例ファイル/団体編

マイクロソフト株式会社

NPOと企業との協働による自立支援事業:「女性のためのUPプログラム」

マイクロソフト(日本法人)が、社会貢献活動の一環として女性の自立支援について検討を開始したのは、丁度今から8年前の2002年でした。当時日本に赴任していた、本社のバイスプレジデント、パメラ・パスマンは、女性としての立場に強く迫られるものを感じ、世界第二の経済大国である日本において、何故これほどに女性の社会進出が遅れているのだろうかと疑問を持ち、社会貢献チームで調査を開始しました。調べれば、日本は、女性の政治参加や経済界における活躍、意思決定への参加を指標にしたGEM(ジェンダー・エンパワメント指数)が他の先進国に比べても低く(2002年32位、2009年57位)、加えて一般労働者の男女間賃金格差のみならず、父子世帯と母子世帯の比較でも、母子世帯の平均収入が圧倒的に低い状況を知ることになりました。母子世帯になる原因のひとつである離婚の理由には、DV(ドメスティック・バイオレンス)の割合が目立ち、その境遇におかれる女性たちの自立支援に何かお手伝いが出来ないものかと考えて、相談をした先が東京ボランティア・市民活動センターです。パートナー団体の紹介も得ながら、東京ボランティアセンター・市民活動センターと一緒に首都圏を中心とした活動を開始しました。丁度、2001年に「配偶者からの暴力の防止及び保護に関する法律(DV防止法)」が施行され、少しずつ問題が顕在化していた時期でした。

私どもマイクロソフトのCSR活動は、その全てが自らの強みである「IT」を軸に形作られています。社会参画と就労支援を目的とした「女性のためのUPプログラム」(UP=Unlimited Potential・人々の無限の可能性を意味する)も、支援の内容はIT講習です。今や紙とペンと同様のコミュニケーションツールであるパソコン、あるいはインターネットを使った検索のノウハウは、講習を受講する女性お一人お一人が仕事情報を検索し、交流の範囲を広げられ、履歴書を仕上げ、仕事の面接に臨む上で活用されています。しかし、私どもマイクロソフトが、ツールとしてのITスキルを、受講者一人一人のおかれた環境やニーズにあわせてお伝えしていく上で、この方面の社会課題に対する専門的な知識を持つパートナー団体の存在は実に大きなものでした。2006年、私どもは、NPO法人全国女性シェルターネットとNPO法人全国女性会館協議会という二つの全国ネットワークを持つ組織とパートナーシップを結び、「女性のためのUPプログラム」は、全国展開という大きな節目を迎えました。長年、困難な女性への支援に専門的な見識を持つ二つの団体よりアドバイスをいただき、どのようなIT講習に、どう取り組むべきかから始まり、適切なプログラム作りを協議させていただくことによって、内容を充実させていきました。結果として、2006年~2010年(9月現在)にかけて全国で8,056名もの女性にIT講習を受講していただくことが出来ました。全国女性会館協議会とのパートナーシップは、現在も続いており、DV被害者に留まらず支援先を広げています。

(マイクロソフト社会貢献部 龍治玲奈)


女性のためのUPプログラム「農業漁業等に携わる女性のための、ITを活用した起業支援事業」

マイクロソフトについて/マイクロソフトでは、「Realizing Potential = 世界中のすべての人々とビジネスの持つ可能性を最大限に引き出すために支援をすること」という企業ミッションを掲げています。ソフトウェアの力でこのミッションを実現するために、マイクロソフトではプラットフォームとテクノロジーを提供するほか、企業市民活動としてさまざまな取り組みを行っています。世界的な経済停滞下にある現在、日本において、新しい活力が生まれることはとても重要です。このような時期だからこそ、IT による社会、経済の発展を支援する企業市民活動を積極的に推進し、企業としての社会的責任を果たしていきたいと考えています。