「共同参画」2010年 11月号

「共同参画」2010年 11月号

特集

女性に対する暴力の根絶に向けて(4)
札幌法務局人権擁護部

「交際相手からの暴力に対する予防啓発活動~札幌法務局の取組~」

【はじめに】

本年9月17日、当局において、内閣府男女共同参画局推進課及び佐賀県DV総合対策センター原健一所長の御協力をいただき、日ごろ交際相手からの暴力の予防啓発活動に取り組んでいる人権擁護委員、配偶者暴力相談支援センター(北海道立女性相談援助センター)相談員、DV被害者を支援するNPO法人の職員及びスクールソーシャルワーカー・スクールカウンセラーの方々47名の参加の下、「交際相手からの暴力に関する予防啓発指導者研修(以下、「指導者研修」という。」を実施しました。

本指導者研修は、当局において、若年層における交際相手からの暴力(以下、「デートDV」という。)に関する予防啓発活動の取組の一層の強化に向け、人権擁護委員に対する研修会の企画を検討する中で、内閣府男女共同参画局推進課に対し、研修の実施につき協力を依頼したところ、快く引き受けていただき実施に至ったものです。また、指導者研修の内容が、人権擁護委員のみならず、日ごろDV被害者に対する支援活動及びデートDVの予防啓発活動に取り組んでいる公的機関の相談員、NPO法人等の民間活動家及びスクールカウンセラー等の方々にも有意義なものになると考え、前記の方々に対し、本研修への参加の案内をしたところ多くの参加をいただきました。

【法務省の人権擁護機関における各種人権課題への取組】

法務省の人権擁護機関である法務省人権擁護局、法務局人権擁護部(全国8か所)、地方法務局人権擁護課(全国42か所)及び法務局・地方法務局の下部機関である支局(全国273か所)では、法務大臣から委嘱され全国の市区町村に配置された人権擁護委員(全国約14,000名)とともに、人権相談、人権侵害を受けた被害者の救済活動及び人権尊重思想の普及高揚を図るための人権啓発活動を行っています。また、全国の法務局・地方法務局の管轄市区町村に在住する人権擁護委員をもって組織された人権擁護委員組織体には、子どもの人権問題や男女共同参画など、個別の問題に取り組む委員会(又は部会)が設置され、人権擁護委員は、それぞれの委員会等においても活動しているところです。

法務省の人権擁護機関では、「女性」「子ども」「高齢者」「障害のある人」「同和問題」「アイヌの人々」「外国人」「HIV感染者・ハンセン病患者等」「刑を終えて出所した人」「犯罪被害者等」「インターネットによる人権侵害」「ホームレス」「性的指向」「性同一性障害者」「北朝鮮当局によって拉致された被害者等」「人身取引(トラフィッキング)」等に関する人権問題に取り組んでおり、子どもの人権課題及び女性の人権課題においては、全国50か所の法務局・地方法務局に全国共通の専用相談電話「子どもの人権110番(0120-007-0110)「女性の人権ホットライン(0570-070-810)」を設置し、いじめ、虐待、体罰といった子どもをめぐる様々な人権問題、夫やパートナーからの暴力、職場等におけるセクシュアル・ハラスメント、ストーカー行為といった女性をめぐる様々な人権問題に関する相談に応じるとともに、啓発活動や調査救済活動に取り組んでいます。

「デートDVに対する札幌法務局及び札幌人権擁護委員連合会の取組状況」

法務省の人権擁護機関が行う人権啓発活動の目的は、人権尊重思想の普及高揚とともに、様々な人権侵害行為を未然に防止することにあります。

札幌法務局及び同局が管轄する市町村に在住する人権擁護委員で組織された札幌人権擁護委員連合会では、前述した様々な人権課題につき人権啓発活動を行う中で、平成19年度、札幌人権擁護委員連合会内の男女共同参画社会推進委員会を中心に、「青少年啓発プロジェクト」を立ち上げ、デートDVの予防啓発を主とした青少年に対する啓発活動を実施すべく準備を開始し、平成20年6月、同連合会では初めて、札幌市内の大学生を対象に「出前講座」の形式でデートDVの予防啓発活動を実施しました。

当時は、事例を交えながら、(1)DVとはなにか(2)愛情と束縛・支配の違い(3)互いに尊重することができる関係を築くにはどうすべきか(4)友人からDVに関する相談をされたときどうすべきか・・などを内容とした講義、「恋人からの暴力・デートDV」のビデオ視聴及び学生によるロールプレイの手法により実施しました。

現在においても、人権擁護委員が学校を訪問し、学校長に対し、デートDVに関する予防啓発活動の必要性を説明するとともに、「デートDV出前講座」の開催につき協力を要請し、開催の申込みがされた学校において出前講座を実施しているところです。

北海道内には、札幌法務局のほか、函館、旭川及び釧路の各地方法務局が設置され、また、それぞれの地方法務局が管轄する市町村に在住する人権擁護委員で組織する函館、旭川及び釧路人権擁護委員連合会が組織されており、道内の各地方法務局及び各人権擁護委員連合会においても、工夫を凝らした 「デートDV出前講座」が行われているところです。

出前講座の実施においては、生徒及び先生方に出前講座に関するアンケートへの協力をお願いしているところですが、生徒の多くは、「デートDVの意味」「あらゆる暴力が相手に及ぼす影響」「互いに尊重し合うことの重要性」についての理解を示し、多くの先生方からは、「デートDVに関する知識は、現代の生徒に必要なものであること」という感想が多く聞けます。

【指導者研修実施に当たっての目的とその成果について】

本指導者研修は、DV被害者に対する支援活動及びデートDVの予防啓発活動に取り組んでいる人権擁護委員、公的機関の相談員、NPO法人等の民間活動家及びスクールカウンセラー等の方々のスキルの向上及び官民の活動者間での相互連携体制が確立されることを期待し、ひいては、今後、官民の活動家が一体となって活動することにより、地域での予防啓発活動の充実強化、DV被害者の救済活動の更なる推進に繋がるものと考え実施したものです。

本研修後に実施したアンケート調査結果(研修員47名中30名の回答)につき、感想等を紹介しますと、

◆「本研修内容が、今後、DV被害者に対する支援及び若年層に対するDV予防啓発活動を行う上で、参考になったか」との質問に対しては、回答者全員が参考になったと回答

◆研修内容

・デートDVの現状、課題を理解することができ、予防啓発を指導する者にとって、講演、グループワークは、今後の活動の参考となった。

・予防啓発の必要性と難しさを改めて認識した。

◆研修全般

・今後、内閣府作成の教材を活用していきたい。

・様々な機関から参加している受講者との情報交換ができ有意義であった。これを機会にお互い協力・支援体制ができればよい。

などの感想を多くいただいたことからすれば、当初の目的は、達成できたのではないかと考えております。

【おわりに】

札幌法務局では、本指導者研修によって確立された官民間の相互連携体制を基に、今後とも、当地域において、官民が力を合わせ、より効果的な予防啓発活動を推進することができるよう、人権擁護活動に取り組んでまいりたいと考えてます。

(指導者研修の風景) (指導者研修の風景)
(指導者研修の風景)