「共同参画」2010年 10月号

「共同参画」2010年 10月号

特集

地域における男女共同参画の推進について(2)
内閣府男女共同参画局推進課

人々にとって身近な暮らしの場である地域において男女共同参画を推進することは、男女共同参画の実現にとって重要です。そのため、内閣府では、地域において男女共同参画の推進に取り組む活動を支援するための事業を行っており、その事業の一端を紹介します。

地域における男女共同参画促進総合支援事業について

内閣府では、平成20年10月に出された男女共同参画会議基本問題専門調査会報告書「地域における男女共同参画推進の今後のあり方について」を踏まえ、平成21年度より「地域における男女共同参画促進総合支援事業」を開始しました。

この事業では、男女共同参画の視点を踏まえた地域課題の解決に向け、先進事例等情報の提供や人材養成のための研修プログラムの作成・提供、地域へのアドバイザー派遣等を実施することとしています。

このうち、人材養成のためのプログラムを作成していくにあたり、平成21年度はまず基本的な状況把握を行い、地域の男女共同参画推進の核となる男女共同参画センターについて、センターが提供している各種機能の現状を明らかにする「男女共同参画センターの現状に関する調査」及び利用者にあたる地域に暮らす人々のニーズを把握する「地域における相談ニーズ調査」をそれぞれ行い、両結果から今後センターにどのような機能が必要なのか検証し、本年度以降作成する人材育成プログラムに反映していくこととしました。

最初に、これらの調査結果から特徴的なものをご紹介します。

詳しくは男女共同参画局ホームページをご覧ください。

男女共同参画センターの現状に関する調査

本調査は、(独)国立女性教育会館に委託して、地方自治体が設置している男女共同参画センター(以下「センター」という)を対象にアンケート調査及びヒアリング調査を行ったものです。結果はセンターの現状を分析した『アンケート調査結果報告書』と、センターで行われている様々な工夫を課題別にまとめた『事例集』の2分冊になっています。 アンケート調査結果から、センターの抱える様々な課題が浮き上がってきています。また、ヒアリング結果からは、様々な制約の中で知恵を絞っているセンターの姿が見えます。事例集は、困ったときの便利帳をイメージし、課題別に参照できるように編集しています。各センターの今後の運営に際してご参考になれば幸いです。

◇アンケート調査結果報告書から

1.小規模な男女共同参画センターが多く、利用の広がり等が課題

職員5人未満のセンターが3割を占めるなど、全体として小規模。

運営面では「男女共同参画ということを前面に出すと事業の参加者が集まらない」「利用団体・利用者が固定化している」「予算が足りない」などが課題。

2.利用を広げるための工夫はしているが、ニーズ把握は不十分

政令指定都市では9割以上、全体でも約7割のセンターが利用者を広げるための工夫を行っているが、地域の課題や住民ニーズの把握については、講座等の参加者アンケートが9割弱のセンターで行われている以外は、日常業務等でのつながりや相談内容による把握等いずれも5割以下。

3.さまざまな外部機関・団体との連携が課題

相談事業以外における外部の機関・団体との連携について、都道府県・政令指定都市レベルでは約9割で実施している一方、小規模自治体のセンターは約6割とやや不十分。

連携先として女性団体等や行政部署とはそれぞれ8割以上、6割以上と多いが、それ以外の大学や企業等との連携は5割に届かず。

4.人間関係をはじめ様々な相談を受けている

センターの9割弱が面接・電話等で相談事業を実施。結婚・離婚に関する相談が8割弱、女性への暴力に関する相談、嫁姑問題など家族関係に関する相談がそれぞれ4割強。中でも女性への暴力に関する相談は半数近いセンターで相談が増加。

5.職員研修が必ずしも十分ではないなど体制の充実が必要

内部研修を行っていないセンターが半数近くにのぼっており、外部研修も小規模自治体のセンターでは6割程度の実施にとどまっている。相談員用マニュアルを備えているところも3割どまり。

6.専門知識等を持つ人材が不足

不足している人材として「語学力のある人」(約7割)「法律、行政制度に明るい人」(約6割)に次いで、「男女共同参画に関する専門の知識や経験が豊富な人」も半数超。

◇事例集から

<取り上げている課題>

・利用者が固定化していて、利用者層が広がらない

・事業の参加者が集まらない

・地域の特色にあわせた事業展開

・相談からニーズをくみとり企画に生かす

・機関、施設、市民グループ、企業等との連携ネットワークを広げる

・地域の人材・団体の育成

<具体例>

~課題「利用者が固定化し、利用層が広がらない」~

◆若い人のセンスを取り入れたリーフレット (京都市男女共同参画センター)

20~30代の女性にターゲットを絞ったリーフレット「あなたは○○できる ウィングス京都でできる4つのこと」(8ページ、バッグに入れやすい16㎝正方形)を、若いデザイナーを交え作成しました。行政色をなくし、思わず手に取ってしまいそうな懐かしさを感じるデザインにし、ターゲット層が手に取りやすい配布先を考えて近隣の美容院やカフェに配布しました。

リーフレット

  • 図1 男女共同参画センター等における
    2008年度実施事業(複数回答)
    図1 男女共同参画センター等における2008年度実施事業(複数回答)
  • 図2 学習・研修事業のテーマ
    図2 学習・研修事業のテーマ

地域における相談ニーズに関する調査

本調査は、(株)生活構造研究所に委託して、一般の方へのWEB上での意識調査や地域で様々な相談を受けている民生委員等への郵送調査、グループインタビューを行い、人々が感じている悩みや相談への意識等をできるだけ掬いあげようとしたものです。そして、調査で得られたニーズを前述した男女共同参画センターの調査結果とつき合わせて、地域の人々の抱える悩みへの男女共同参画センターの対応の可能性について検証しています。

人々の悩みには、性別役割分担意識に起因するものなど、男女共同参画の視点が解決の一助になると考えられるものもあり、男女共同参画センターには当該地域に住む人々が抱える悩み等をキャッチし、相談事業をはじめ様々な事業に反映していくことや地域で活躍する民生委員等様々な相談支援者との連携・支援が望まれます。

◇調査報告書から

【現状】

1 男女が抱える「悩み」

○この1年間に悩みがあった人は8割。悩みの多くは「仕事」、「健康」、「家計」の問題。4人に1人は「仕事」が最も大きな悩み。

○男性は7割が「仕事」をあげるなど偏りがあるが、女性は「仕事」、「健康」、「家計」がそれぞれ4~5割とさまざま。

2 顕在化しづらい相談ニーズ

○1人で悩みを抱え込んだ経験がある人は6割。男女別では男性の方がやや割合が高い。

○同居・近居の家族がいない人、地域とのつながりがない人は抱え込むことが多い。

○抱え込む理由は、「相談しても解決できないと思った」が男女とも6割と最多。男性が女性に比べ上回っているものでは、「相談するほどのことではない」の割合が高く、女性が上回っているものでは、「がまんすればよい」の割合が高い。

3 解決行動

○この1年間に最も大きかった悩みについて

・女性は男性に比べて配偶者、親族、友人・知人等に相談する人が多いが、男性は女性に比べて、そもそも「何もしない」人が多い。

・「弁護士など資格をもった専門家に相談」、「同じ悩みをかかえる人のグループに入った」、「保育所、学校、かかりつけ医など日頃接している機関に相談」といった解決行動に対する評価が高い。

○悩みの解決に当たって

・思い浮かべる相談機関・人としては、「インターネットの相談サイト」、「病院・医師・カウンセラー」、「区市町村の役所の窓口」、「弁護士・裁判所」が多いが、4人に1人は「特にない」と回答している。

・一番役に立った相談機関は当事者団体。

4 相談支援

○支援者は特定の分野への支援が中心で、支援活動としては、「問題の解決に応じた専門機関を紹介する」が多い。

○「情報の提供」、「解決方法を一緒に考えてほしい」といった支援を望む相談者が多いのに対し、支援者が相談を受けて困ったこととして「本人等の解決意欲が乏しい」、「課題が複合的で解決が難しい。」と感じており、受けとめ方に差異。

【課題・対応方策】

5 相談ニーズに対応していくための課題と方策等

 ○相談者が求めるのは自分自身で解決できるような支援

・悩みを一人で抱え込んだ時にあればよいと思う解決手段は、「話し相手」、「情報」、「同じような悩みをもった人同士が語れる場」など、自分自身で解決するための行動や意思決定を促すもの。

そのため、相談者に解決行動を促すような手段が必要。

 ○男性の解決行動を促す取組の必要性

・相談することで解決につながることがあると男性自身に認識させることが必要。また、男性が性別役割分担意識にとらわれ、気づかないまま抱えている悩みを引き出す工夫も必要。

 ○支援者の連携による対応の充実

・支援者は、現在、主に「市区町村の役所の窓口」、「地域包括支援センター」と連携しているが、今後、「弁護士、司法書士、法テラス、裁判所」、「支援者団体」、「警察」などとの連携を希望。

 ○地域における相談体制の充実

・支援者は、課題に対応していくには「地域住民が常日頃から支えあう意識を増やす」、「地域に出て行くようなきめ細かい相談活動を増やす」等を必要とする意見が多い。

6 男女共同参画センターへの期待

 ○男女共同参画センターは地域における相談ニーズに対応

・男女共同参画センターで実施している相談は、「結婚・離婚」、「女性への暴力」、「嫁姑問題など家族関係」など様々で、地域における相談ニーズに対応。

・悩みの中には、性別役割分担意識や女性のライフステージによる生活の変化を反映しているものも多いことから、男女共同参画の視点からの解決が期待できる。

 ○相談ニーズを把握し、様々な事業への反映や相談体制の充実が必要

・相談内容をニーズととらえ、講座等他の事業にも反映していくことが必要。

・相談者が相談機関に望むのは、「匿名で」、「お金をかけずに」、「自分の好きなときに」等に相談できること。一方、7割以上のセンターでは、面接相談の実施に当たり何らかの利用制限がある。

・相談員に研修をしていないセンターが全体の4分の1程度。また、相談員マニュアルを作成しているセンターは全体の3分の1にとどまり、相談員の活動を支える研修等体制の充実が必要。

 ○他機関や支援者との連携は、地域の課題解決とセンターの認知度向上にとって重要

・センターの認知度は4割弱で若年層ほど低かった。また、支援者の約8割はセンターとの連携がない回答。

・他機関や支援者と連携し、センターだけでは対応できないDVなどの課題解決を支援するとともに、支援者等への研修を行うなど、男女共同参画の視点の重要性を浸透させることを期待。

  • 図3 男女共同参画センターの認知度
    図3 男女共同参画センターの認知度
  • 図4 男女共同参画センターについて利用したい機能
    図4 男女共同参画センターについて利用したい機能