「共同参画」2010年 10月号

「共同参画」2010年 10月号

特集

地域における男女共同参画の推進について(1)
内閣府男女共同参画局推進課

地域課題解決の糸口を男女共同参画から
兵庫県理事 清原桂子

1994年(平成6)年、内閣に男女共同参画推進本部(本部長:内閣総理大臣)が設置されて以降、それまでの「婦人問題」という言葉にかえて「男女共同参画」という言葉が広く使われるようになりました。しかし、「男女共同参画」のとらえかたは、地域の現場ではまだ、男性も家事・育児をせよ(性別役割分業意識の改革)、女性を登用せよ、セクハラをするな、の3点についての女性の権利主張と、単純に受けとめられがちです。

今日、合計特殊出生率は1947(昭和22)年の4.54から2009(平成21)年の1.37まで下がり、総人口も現在の1億2700万人から今世紀半ばには3割減、人口構成も4割が65歳以上にと予測されています。これからへ向けてまず第1に、女性と男性がともに担い手として、地域課題の解決とまちづくりにかかわっていくことが不可欠であることを強く発信していく必要があります。高齢化がすすむ中山間地である兵庫県多可町の中村町では、今年3月の防災行動計画の策定にあたって、日々の生活を実際に担っている女性たちが「向こう三軒両隣り」の強い思いで、委員会や防災研修会ワークショップ等のプロセスに深くかかわってきました。女性消防団員が増えている地域も、もはや人口減と高齢化のなかで女性を抜きにしては担えなくなっていることが背中を押している現実があります。

第2に、そうした状況のなかで、講演会を開催して意識を変えてくださいという手法のみならず、地域課題解決のためにまず行動し、行動を重ねるなかで意識や慣習にもやわらかな変化が及んでいくという実践の手法が成果をあげてきていることです。多可町には、廃園された保育園を喫茶室に、農協合併で閉鎖された農協支店跡地に農産物加工販売施設を整備して、9年前にはじめられた「マイスター工房八千代」(藤原たか子施設長)もあります。今では巻き寿司や総菜で年商1億8,000万円、29人の雇用を創出し、地元米40t/年使用などや文化・福祉活動も含めて、女性たちの発言力を大いに高めてきています。

第3に、平均化した数字では見えない、地域ごとの実情のちがいに応じた具体的な取り組みをしていく必要があることです。兵庫県(41市町)でも、今年4月の保育所待機児童は997人(10市)ですが、しかし同時に、昨年度郡部を中心に607人(14市町)の保育所定員減も起こっています。15歳未満の子どものいる三世代同居率も、香美町65%から芦屋市6%まで大きく異なり、それぞれの地域の直面する課題や解決の手法もまた一律ではなく異なってきます。

第4に、取り組んでいくときのノウハウ(know how)の共有はもちろんですが、それと同時にノウフー(know who)=誰を知っているかということが重要であることです。ネットワークとよく言われますが、個人と個人の信頼に裏打ちされた人間関係のないところで、組織と組織のネットワークを機能させようとしてもむずかしい。民間・行政を問わず、肩書きが変わっても続いていく「持ち運べる人間関係」を紡ぐことのできるしかけ、一緒に何かを「する」ことによって人間関係を深めていくことのできるしかけが、今まさに大切であるように思います。

人口減少・少子高齢化が進む中、男女がともに取り組むことによってこそ地域課題解決の糸口はたぐり寄せることができる、またそうした具体の取り組みをともにする中でこそ人間関係もつくられ、意識も変わり、結果に結びつくことによって、男女共同参画が地域に根付いていくことができる~そうした実践を地域から広げていきたいと思います。

兵庫県理事 清原桂子