「共同参画」2010年 9月号

「共同参画」2010年 9月号

特集

第3次男女共同参画基本計画策定に当たっての基本的な考え方(答申)について(1)
内閣府男女共同参画局推進課

7月23日に、男女共同参画会議が開催され、同会議から内閣総理大臣に対し、「第3次男女共同参画基本計画策定に当たっての基本的な考え方」が答申されました。今回の特集では、本答申の内容について紹介します。

政府では、男女共同参画社会の形成の促進に関する施策を総合的・計画的に推進するため、男女共同参画社会基本法に基づき、平成22年中に第3次男女共同参画基本計画(以下、「第3次基本計画」という。)を策定する予定です。

平成21年3月、男女共同参画会議は、内閣総理大臣からの諮問を受け、第3次基本計画策定に当たっての基本的な考え方について、同会議の下にある基本問題・計画専門調査会を中心に検討を進めてきました。

本年4月には、「第3次男女共同参画基本計画策定に向けて(中間整理)」を公表し、国民からの意見募集や公聴会を実施し、いただいたご意見等を踏まえ、専門調査会で更に検討を進めてきました。

そして、7月23日、男女共同参画会議から内閣総理大臣に対し、「第3次男女共同参画基本計画策定に当たっての基本的な考え方」について答申がなされました。

◆ スケジュール
◆ スケジュール

第1部「基本的考え方」

第1部では、第3次基本計画の策定に当たって基盤となる考え方を示しています。まず、男女共同参画社会を実現することによって目指すべき社会とはどのような社会なのかを提示しています。

◆目指すべき社会

(1) 固定的性別役割分担意識をなくした男女平等の社会

(2) 男女の人権が尊重され、尊厳を持って個人が生きることのできる社会

(3) 男女が個性と能力を発揮することによる、多様性に富んだ活力ある社会

(4) 男女共同参画に関して、国際的な評価を得られる社会

また、今回の答申では、男女共同参画がこれまで必ずしも十分に進まなかった理由についても分析しています。これらについては真摯に反省した上で、更に充実した取組につなげていく必要があり、こうした分析や反省を踏まえた答申全体の特徴は次のとおりです。

■特徴

◆実効性のあるポジティブ・アクション(積極的改善措置)の推進

将来にわたり持続可能で、多様性に富んだ活力ある経済社会を構築するためには、多様な人材を活用していくことが重要であり、女性の参画をあらゆる分野で進めていくことが不可欠です。しかし、強力なリーダーシップが不足していたことなどにより、政策・方針決定過程への女性の参画の拡大が十分に進んでいない現状があります。本答申では、「社会のあらゆる分野において、2020年までに指導的地位に女性が占める割合が、少なくとも30%程度」(「2020年30%」)という目標の達成に向けて取組を強化し加速するために、クオータ制やインセンティブ付与など、強力なリーダーシップにより、分野や実施主体の特性に応じ実効性のあるポジティブ・アクションを推進することが重要であるとしています。

◆男性や子ども、地域における男女共同参画の推進

男女共同参画はあらゆる人々の課題であるにもかかわらず、働く女性のみの課題として認識されることが多かったことなどの反省に基づき、男女共同参画の理解に向けた男性への積極的なアプローチの重要性を盛り込むとともに、第2次基本計画では明確に位置付けられていなかった子どもの頃からの男女共同参画の理解促進についても取り上げています。

また、地域における人間関係の希薄化や家族形態の変化などの中で地域力を高めていくためには、女性も男性も誰もが出番と居場所のある地域社会を形成していくことが重要であることから、地域における方針決定過程への女性の参画を推進していくことが必要であるとしています。

◆世帯単位から個人単位の制度・慣行への移行

男女の社会における活動や個人の生き方が多様化する中で、男女の社会における活動の選択に対して中立的に働くような制度構築が必要です。男性片働き世帯を前提とした世帯単位の制度・慣行から、個人単位の制度・慣行への変更といった視点から、税制、社会保障制度、家族に関する法制などの検討を行っていくことを盛り込んでいます。

◆雇用問題の解決の推進、セーフティネットの構築

働きたい人が性別にかかわりなくその能力を十分に発揮できる社会づくりは、ダイバーシティの推進につながり、経済社会の活力の源という点からも極めて重要な意義を持っています。女性が当たり前に働き続けることができ、また暮らしていける賃金が確保できるよう、雇用の問題、特に男女間の賃金格差や「M字カーブ問題」の解消、均等待遇の確保、長時間労働の抑制、非正規雇用における課題への取組が必要であるとしています。

また、女性の貧困は以前よりみられた問題ですが、経済の低迷に伴う雇用・就業をめぐる環境の変化や家族の変容などが進む中で、貧困に陥る層が増加しています。貧困などの生活上の様々な困難の世代間連鎖を断ち切るためにも、セーフティネットの再構築など個人の様々な生き方に沿った切れ目ないサービスの提供が必要であるとしています。

◆国際的な概念や考え方の重視

国際化の進展等による定住外国人の増加、企業の国際展開による国際的な人の移動の活発化などがみられ、国際的な規範・基準と国内の制度・慣行の調和の必要性が高まっています。第3次基本計画の策定に当たっては、女子差別撤廃委員会からの最終見解(2009年8月)における指摘事項について点検するなど、国際的な規範・基準の積極的な遵守や国内における実施強化などにより、国際的な協調を図ること、そしてその際には、国際的な概念や考え方(ジェンダー、リプロダクティブ・ヘルス/ライツなど)を重視することに留意する必要があるとしています。

第2部「重点分野」

第2部では、15の重点分野を掲げ、それぞれについて、(1)これまでの施策の効果と、当該分野において男女共同参画が十分に進まなかった理由、(2)今後の目標、(3)施策の基本的方向と具体的な取組について記述しています。

第2次基本計画では12の重点分野を設定していますが、今回の答申では見直しを行い、下記のとおりとしました。

◆重点分野
第1分野 政策・方針決定過程への女性の参画の拡大
第2分野 男女共同参画の視点に立った社会制度・慣行の見直し、意識の改革
第3分野 男性、子どもにとっての男女共同参画(
第4分野 雇用等の分野における男女の均等な機会と待遇の確保
第5分野 男女の仕事と生活の調和
第6分野 活力ある農山漁村の実現に向けた男女共同参画の推進
第7分野 貧困など生活上の困難に直面する男女への支援()
第8分野 高齢者、障害者、外国人等が安心して暮らせる環境の整備()
第9分野 女性に対するあらゆる暴力の根絶
第10分野 生涯を通じた女性の健康支援
第11分野 男女共同参画を推進し多様な選択を可能にする教育・学習の充実
第12分野 科学技術・学術分野における男女共同参画()
第13分野 メディアにおける男女共同参画の推進
第14分野 地域、防災・環境その他の分野における男女共同参画の推進()
第15分野 国際規範の尊重と国際社会の「平等・開発・平和」への貢献
():新設分野

■各重点分野における具体的な取組例

答申においては、以下の取組を始めとする具体的取組が記載されています。

◆第1分野「政策・方針決定過程への女性の参画の拡大」

・政治、司法を含めたあらゆる分野で「2020年30%」に向けた取組

・クオータ制など多種多様な手法によるポジティブ・アクションの検討

◆第2分野「男女共同参画の視点に立った社会制度・慣行の見直し、意識の改革」

・税制、社会保障制度、家族に関する法制などの検討

・調査・統計における男女別情報の充実

◆第3分野「男性、子どもにとっての男女共同参画」

・男性にとっての男女共同参画の意義についての理解の促進

・子どもの頃からの男女共同参画の理解の促進

◆第4分野「雇用等の分野における男女の均等な機会と待遇の確保」

・M字カーブ問題の解消に向けた取組の推進

・同一価値労働同一賃金に向けた取組の推進

◆第5分野「男女の仕事と生活の調和」

・長時間労働の抑制、多様な働き方の普及、男性の家事・育児参画の促進

◆第6分野「活力ある農山漁村の実現に向けた男女共同参画の推進」

・女性の農林漁業経営や地域社会への参画の推進

・加工・販売等の起業など6次産業化の取組への支援

◆第7分野「貧困など生活上の困難に直面する男女への支援」

・セーフティネット機能の強化

・世帯や子どもの実情に応じたきめ細やかな支援

◆第8分野「高齢者、障害者、外国人等が安心して暮らせる環境の整備」

・障害者、外国人等であることに加え、女性であることで複合的に困難な状況に置かれている人々への支援

◆第9分野「女性に対するあらゆる暴力の根絶」

・配偶者等からの暴力の防止及び被害者の保護等の推進

・性犯罪への対策の推進

◆第10分野「生涯を通じた女性の健康支援」

・女性の生涯を通じた健康のための総合的な政策展開

・性差に応じた健康支援

◆第11分野「男女共同参画を推進し多様な選択を可能にする教育・学習の充実」

・男女平等を推進する教育・学習の充実

・多様な選択を可能にする教育・能力開発・学習機会の充実

◆第12分野「科学技術・学術分野における男女共同参画」

・働きやすい環境整備に向けた取組の支援

・女性研究者の採用・登用の促進

◆第13分野「メディアにおける男女共同参画の推進」

・女性の人権を尊重した表現を推進するためのメディアの取組の支援

◆第14分野「地域、防災・環境その他の分野における男女共同参画の推進」

・地域における男女共同参画の基盤づくりの推進

・防災における男女共同参画の推進

・男女共同参画の視点に立った環境問題への取組の推進

◆第15分野「国際規範の尊重と国際社会の『平等・開発・平和』への貢献」

・条約等の積極的遵守、国内施策における実施・監視体制の強化、国内への周知

・ジェンダー主流化によるODAの効果的実施

第3部「推進体制」

第3部では、第2部で示された具体的な取組を推進していくための体制についてまとめています。男女共同参画社会の形成には、第2部の各重点分野において述べたような広範かつ多岐にわたる取組を展開することが必要であり、推進力を一層強化していくことが重要です。そのためには、男女共同参画会議等の国内本部機構や、基本計画、女子差別撤廃委員会最終見解等の実施状況についての監視機能を強化し、地方公共団体や民間団体等の積極的な取組を推進するとともに、国が地方公共団体、民間団体等と有機的に連携し、一体となって男女共同参画社会の実現に向けて取り組むことが必要です。

以上が答申の概要ですが、今後、本答申を踏まえ、年内を目途に第3次基本計画を閣議決定する予定です。女性にとっても男性にとっても生きやすい社会である男女共同参画社会を実現するため、実効性のある計画の策定に取り組んでまいります。

答申の詳細については、下記のホームページをご覧ください。

http://www.gender.go.jp/kaigi/senmon/kihon/sanjikeikaku/toshin/index.html