「共同参画」2010年 2月号

「共同参画」2010年 2月号

特集/特別鼎談

泉 健太 内閣府大臣政務官、安藤 哲也氏、山田 正人氏
父親も育児を楽しもう!

今回は、「男性にとっての共同参画」を考えるため、内閣府の泉大臣政務官がお二人の男性ゲスト-父親の子育ての楽しさを伝える伝道師として有名なファザーリング・ジャパン代表の安藤さんと経済産業省在職中に1年間の育児休業を取得した横浜市副市長の山田さん-をお迎えし、鼎談を行いました。

  • 泉 健太
  • 安藤 哲也
  • 山田 正人

 今回のテーマは、「男性にとっての共同参画」特に「家庭・地域への参画」です。「男女共同参画」は、女性の活躍促進などの側面だけでなく、男性側の意識改革も重要なのは言うまでもありません。とはいえ、堅苦しく考えず、男性が参画することで得られるメリットや育児を楽しむコツなどについて、私から見ると父親の「先輩」であるお二人を交えて語り合っていきたいと思います。では、まずご自身の子育てについて教えてください。

-はじめはみんな育児初心者-

安藤 僕は12年前に父親になりましたが、最初はまだ自分の中のOS(オペレーティングシステム。コンピューターを動かす基本的なソフトウェアのこと。ここでは、意識や思考様式のような意味あい)が古かったというか、共働きなのでやらねばという意識だけで、空回りして苦労しました。妻が休日出勤のときに一日育児をしてみたら、へとへとになって。でも、女性でも、最初からできるわけじゃないし、こうやって失敗しながら日々慣れていくことが大事なんですよね。だから、やりたいことだけやるのではなくて、自分がちょっと体がしんどいときや、眠いときでも、おむつを替えたり、夜泣きに対応したり、少し前のめりにやってみると、技術的にもスキルがアップしてきて、楽になってくる。楽になると余裕が出てきて、子どもの表情をうまく感じとれるようになって、いい循環に入っていきました。

山田 私の家では、最初、男女の双子が生まれたんですね。妻とは共稼ぎで経産省の同期でして、子どもが生まれるまでは家事と仕事も二人で対等にやっていました。でも、子どもが生まれても私もすぐにはOSが変わらなくて、当たり前のように残業していたんです。深夜に帰宅しても、既に双子は寝ていますし、妻も育児で精根尽き果てたようになっていて。そういう中で3番目の子どもの妊娠が分かったときに、妻が「このままでは私は産めない。」と。そう言われた瞬間に、3番目の子どもの命より大切な仕事なんてあるはずもないんだから、僕がやらなくちゃいけないと思い、1年間の育児休業をとりました。私も最初の半年は、たどたどしく育児をやっており、ほとんど苦行でしたけれども、やるうちに子育てを楽しむ余裕が生まれてきまして、残りの半年は毎日が本当に楽しかったです。子どもが成長していく過程を見ていると、自分が子どもだったころのことを思い出し、人生をもう一度生きているような感じになって、これはやめられないなという感じです。

 私は小さい頃、父親が自営業で家にいましたので、父親と過ごした思い出や感動が今でも記憶に強く残っていています。自分も子どもが生まれたら絶対やってやりたいなという思いはあるのですが、うちは妻が専業主婦なので、ほとんど任せっきりにしているところもあるんです。だから妻の見えない苦労をなかなか分かってあげられない。やっぱりまだまだ夜中に子どもをあやすこととかは私はまだ苦手です。

-パパ友ネットワークを作ろう-

安藤 そういう育児に関する基礎知識って、習っていないし、誰も教えてくれないですよね。

 そうですね。情報交換とかも余りできないというか。

安藤 ネットワークもないし。実は僕らの支援活動もそこに力を入れています。ママ友という、平日お母さんたちが自然と公園でつながるのとは違って、お父さんたちがいきなり地域でデビューなんて難しいし、誰かのパパ同士というあやふやな関係性は結べないわけですね。利害関係がないから、本当はその方が楽なのにね。でも、育児をすると、結局母親と同じような、あるいはちょっと女性とは違う悩みや課題が必ず出てくるはずです。だから、僕らはパパ友を作ろうということを呼びかけているんです。

 それは私もすごく欲しいですね。

安藤 僕は今、地域に40人のパパ友がいますよ。保育園とか学童とか小学校で出会って。お子さんが大きくなっていくと、そういうコミュニティに出ますから、父親もそういう地域活動や学校に関わっていくことで、ネットワークができます。

山田 子どもが生まれた直後は、パパが育児をしていると、孤独なんです。私も友達がいなくて、どこに行ってもママの集まりしかいないので、辛い思いをしまして。小学校に上がると習い事などをする中で、安藤さんみたいなお父さんが中心となって引っ張ってくれたりはします。でも、その前段階では、ネットワークを作るのは難しいので、自治体が支援できないかと考えているところです。

 なるほど。自治体によっては、親教室みたいなものをやっているところはあるものの、平日の昼間に設定されていたりして、そもそも行けないじゃないかということもありますよね。

安藤 そうなんです。最近はだいぶ父親参加率も高まっていますけれども、結局もく浴体験しかしないところも多い。赤ちゃんの人形を使って風呂に入れる練習をするだけで父親になるスイッチが入るわけないよと思うわけです。

また、男性は対面相談とか電話相談をなかなか利用してくれません。僕らも今度、東京都と組んで相談事業を始めるのですが、メールやウェブの掲示板でやろうという話になりました。女性は男女共同参画センターに母親相談などの窓口があるので、行く人は多いですが、そういうところへ男性はほとんど行かない。父子家庭ゆえに行政のサービスを受けられていないという例も多いです。男性は育児情報を受けとめるアンテナが立っていないと、情報も入ってこない。そうするとますます孤立してしまう。

山田 そうはいっても、この数年、随分赤ちゃんを連れているお父さんが増えたなという実感はありませんか。

安藤 間違いなくそれは増えています。ただ、やっぱりファッションとしての育児止まりという人が多い。「流行のベビーカーを押している俺、カッコいい」というところで終わっちゃう。ベビーカーのスペックを気にするなら、例えば離乳食の食材に気をつける、子どもの健康状態をうんちで見るとか、育児そのものに目をやってほしいです。

-仕事と育児の両立-

 とはいえ、男性は仕事をしながらという人が圧倒的に多いわけですから、両立で苦労することもあるかと思います。

山田 難しい問題ですよね。私も昔は午前2時、3時まで残業していました。しかし、長時間ずっと効率が高い状態で働いているはずはないんです。8時間の中で効率よく働こうという個人の気づき、さらに組織としての気づき、これを是非それぞれの組織で広げてもらえたらと思います。

今回、横浜市に移って驚いたのは、ワーク・ライフ・バランスが実態として進んでいるということです。不要不急の会議は午後5時15分以降に入れないことを徹底している局長も何人もいます。父親の育児休業の取得率も3年連続で4%台。4%は少ないですが、国よりは断然良いですよね。

安藤 気づく人が増えてくれば、そっちがスタンダードになってきますね。

山田 30代、20代は意識が変わってきているのに、管理職クラスの方は、父親が育児をするというのが考えもつかなかった時代に青年時代を送っていますから、すぐに変わるというのは難しいです。海外勤務を経験したり、娘が社会人になったり、そういう人は気づきが別のところで発生しますが、そういうきっかけがない人にも政府側から働きかけてもらえるとありがたいなと思います。

例えば、育児休業の取得率、女性職員の定着率、残業時間、休暇取得率を明らかにして、組織の内外から客観的に見られるようにするだけでも、気づきが生まれるのではないかと思います。どうしてうちの会社は、こんなに数字が悪いんだ?と。

 育児に伴う休暇というのは、上司になかなか言いにくい環境があるとも言われます。そこを、人事に直接申請して、それが承認されれば、人事が上司に対して、それでやりなさいと言える仕組みを作ると、組織としてもっと育児に対する認識が深まるのかな。

山田 それはあると思います。私は、企業で働く男性で育児休業を取った人と仲よくなる機会が多いのですが、むしろ人事の方から取らないかと言われることもあるそうです。もしかしたら「くるみんマーク」が欲しいからなのかもしれないけれども、たとえそうだとしても、人事から「育児休業がキャリアにマイナスにはならない」というメッセージを発することはとても意義のあることです。

 もっと言えば、育児休業を取得した人の上司も、その間仕事をうまく回すことができれば、プラスに評価されたら良いですよね。

-ライフが充実すると生産性は上がる-

安藤 ワーク・ライフ・バランスは、シーソーのようにどちらかを犠牲にしないと成り立たないということではなくて、本来的には仕事も育児も楽しめるようなバランス感覚を身に付けることが大事なんですね。業務の効率化や時間管理など働き方の改革を行ってできた時間を、子育て期であれば家庭に投資するという感覚を持てばいい。

山田 ライフを充実させると、それが不思議と本当に仕事の面でもよくなっていくんですよ。

安藤 でも、それがまだ公的機関の統計で定量的・定性的に結果が出ていないんです。これが出始めると経営者も変わってくるんではないかと。短期的な視点だけでなく、中長期的メリットに気づいてほしい。子育てがうまいパパは仕事もできると断言できます。

山田 段取り力ですよね。子育ては、複数のことを、いろんなことを同時進行でやらないといけないから。

安藤 それに女性の部下、同僚とのコミュニケーションもうまくいくんです。つまり、育児をしていると、働くお母さんたちの気持ちや悩みがよく分かるようになる。子どもが熱を出したと保育園から呼び出されることは必ず年に何度かありますが、後ろめたい思いで帰るあの感覚を上司が分かってくれる。すると部下も帰りやすくなって、モチベーションも上がります。

山田 働いている側としては、職場で評価されたいという気持ちがあるのは当然なのですけれども、能力以上に評価されたいという気持ちがあると、長時間労働という形で頑張っちゃうことがある。本来は、能力どおりに評価されればいいわけですよね。そういう心の弱さというのが、かつての自分を振り返るとあったような気がしますね。

安藤 僕の知る限り、ワーク・ライフ・バランスを目的とした転職も出始めています。そのことが理解できない企業は、いい人材が取れない。共同参画の時代においては、男性の両立支援を5年、10年かけてきちんとした企業が、20年、30年後でも優良企業であり続けると思います。

-男性にとっての共同参画-

 では、最後にお二人から読者の方にメッセージをお願いします。

山田 私はシンプルに、育児は楽しいし、仕事の役にも立つし、人生を豊かにするものなので、本当にこれは女性だけに任せておくのはもったいないと言いたいです。

安藤 男性の意識も変えなければいけないけれども、女性たちの意識もまだ古いと思います。育児をやりたい男性が増えても、仕事をした上に育児や家事まで頼んだらかわいそう、という女性もまだいますよね。でも、それは甘やかしで、結局は男性の生活力、自活力を奪っているんですよ。シングルファーザーになってしまったり、介護の問題が出てきたときに、突然家事を始めるのはとてもたいへんなことです。家事責任も二人で一緒に負っていくということが本来的な共同参画の姿なんじゃないかなと思います。

泉 今日はたくさんのことを教えてもらったような気がします。ありがとうございました。

泉 健太 内閣府大臣政務官、安藤 哲也氏、山田 正人氏

「子ども・子育てビジョン」を策定しました。
内閣府政策統括官(共生社会政策担当)

内閣府では、子どもと子育てを応援する社会の実現に向けて、子育て支援の総合的な姿と将来の数値目標などを定めた「子ども・子育てビジョン」を策定いたしました(平成22年1月29日閣議決定)。

「子ども・子育てビジョン」について

「子ども・子育てビジョン」は、子どもを大切にする社会を目指し、今後5年間を視野に入れた総合的な子育て支援の方向性について示すものです。

本ビジョンは、「子どもが主人公(チルドレン・ファースト)」、「『少子化対策』から『子ども・子育て支援』へ」、「生活と仕事と子育ての調和」の3つを基本的な理念としています。

子育てについて、これまでのように個人に過重な負担がかかっている状況を改善し、これからは、社会全体で子育てを支えることにより、個人の希望が実現できる社会を目指していきます。

そのためには、バランスのとれた総合的な子育て支援を行うことが必要です。具体的には、子ども手当の創設、高校の実質無償化、児童扶養手当の父子家庭への支給、生活保護の母子加算などの「子育て家庭等への支援」と、待機児童の解消に向けた保育や放課後対策の充実、幼保一体化を含めた新たな保育サービスの在り方の検討などの「保育サービス等の基盤整備」の2つをバランスよく、車の両輪として実施していくことを目指しています。

また、「子ども・子育て支援」を進める際には、「男女共同参画」、「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)」、「子ども・若者育成支援」等のそれぞれの施策との密接な連携を図っていく必要があります。

待機児童の解消や男性の育児参加に向けて

ビジョンでは子ども・子育て支援に関する様々な取組や今後5年間の数値目標を掲げています。

その取組の1つに待機児童等の解消があります。例えば、3歳未満の子どもたちに対する保育サービスを、現在の75万人分(4人に1人)から年間5万人ずつ増やしていき、5年後の平成26年度には102万人分(3人に1人)の保育サービスを受けられることを目指しています。

また、放課後児童クラブの充実のために、現在81万人(5人に1人)がサービスを受けておりますが、平成26年度には111万人(3人に1人)がサービスを受けられることを目指しています。

このように、待機児童解消に向けた取組を進める一方で、男性の育児参加促進の取組も進める必要があります。男性の育児休暇の取得率については、現在の1.23%を、平成29年には10%とする目標を掲げています。

また、6歳未満の子どもをもつ男性の育児・家事時間については、現在は1日平均60分ですが、これを平成29年には1日平均2時間30分になるように目指しています。

このほか、企業の取組を促進したり、地域の子育て力を重視して、子育て拠点を増やすなど、様々な取組が盛り込まれています。

子育てに夢を持てる社会を目指して

次代を担う子どもたちが健やかにたくましく育ち、もっと子どもの笑顔があふれる社会にしていくために、この「子ども・子育てビジョン」は、子どもと子育てを全力で応援します。

内閣府少子化対策担当HP

http://www8.cao.go.jp/shoushi/vision/index.html