「共同参画」2010年 2月号

「共同参画」2010年 2月号

特集

男性にとっての男女共同参画
~男性の家庭への参画の現状~
民間企業等で行われている男性の家庭参画に関する事例
旭化成株式会社 人財・労務部

「男性の育児参加を後押しする」旭化成グループの取組

旭化成グループの育児休業制度導入は昭和49年で、その歴史は35年以上になる。

当初は女性社員が子が満一歳になるまで取得することができる休業制度であったが、平成4年に男性社員にも対象を拡大すると同時に育児短時間制度も導入した。平成11年には、育児休業・育児短時間制度共に、子が3歳到達後の4月1日まで適用期間を延長。その後、短時間制度については子が小学校3年生終了まで利用できるようになっている。これらの制度改訂で女性社員の育児休業取得者数は飛躍的に伸び、出産・育児を理由とした退職者も激減した。しかし男性社員の取得は、休業・短時間共に数名にとどまっていた。なぜ男性社員は取得しないのか?

2005年6月、若手男性社員8名による「ニューパパプロジェクト」をスタートさせ、この「なぜ?」への答えを探った。プロジェクトが2ケ月後に出した答えは、1)男性社員は配偶者が専業主婦であったり、育児休業を取得していれば自分が育児休業を取らなくても仕事を継続できる場合が多い。2)無給での育児休業は、長期にわたると生計にも支障がでてくる。3)男性の育児休業取得は「特別」なことであると思われており、周囲の理解が得にくい。上司に申請するのにも心理的なハードルが高い。昇進に影響がでるのではないか。との心配もある。以上3点が、男性の育児休業取得の阻害要因になっている。というもの。

しかし、男性社員であっても、育児にもっと参画したいと考えている人は多いであろうし、また会社としても、社員が子育てに積極的に関わることは何ら否定するものではない。むしろ一社会人として、次世代を育てることは非常に大切なことである。そうであれば、会社からもっと強く、社員の育児参加を積極的に支援するメッセージを発信し、男性社員の躊躇を取り払い、彼らの背中を押す施策を検討することが必要であろう。そういった視点に立ち、労使での議論を経て、2006年1月に育児休業の改訂を実施した。改訂の主なポイントは、 (1)育児休業の5日間有給化。 (2)配偶者条件の撤廃。(配偶者が専業主婦でも取得できる。) (3)休業の複数回取得可能に。 (4)短期であれば上司への口頭申請で取得可とする手続きの抜本的簡素化。以上4点。要は、「これなら誰でもとれるでしょ」と要件を緩和し心理的ハードルを低くすることにより、男性社員の育児休業取得が当たり前の風土醸成をめざしたわけである。また、この改訂を実のあるものとするため、取得者には自社製品を利用したオムツなどをプレゼントする「育児休業取得促進キャンペーン」を展開している。さらに子どもが産まれて8ヶ月時点で育児休業を取得していない社員には上司経由で取得を促すメールを人財・労務部より発信するなど、定着のためにきめ細かいフォローを行っている。

制度改訂より満4年、累計で約900名の男性社員がこの育児休業制度を利用。取得率は配偶者が出産した男性の約5割となっている。取得平均日数は約7日と短期だが長期(3ケ月)取得者も出始めた。多くのケースを積み重ねると、休業取得のためには、周囲の理解はもちろんのこと、上司が、対象となる社員の仕事をいかに理解しているかということが重要なポイントになることもわかってきた。男性の育児休業は、はからずも、マネジメントや仕事の仕方を見直すという、本質的な問題への問いかけともなっている。男女ともに子育てに参加しやすい企業風土をさらに確固たるものにするためにも、今後もこの問題に正面から取り組んでいきたいと考えている。

育児休業取得の推移

旭化成グループ社員の子育て参加促進の試み 「オープンオフィスデー」