「共同参画」2009年 8・9月号

「共同参画」2009年 8・9月号

連載 その3

長期的な視点に立った女性の人生設計を支援するために
「女性のライフプランニング調査研究考察」 文部科学省

平成21年度から、文部科学省による「女性のライフプランニング支援総合推進事業」がスタートし、全国7地域で男女共同参画センターやNPO等を核としたモデル事業が実施されています。

では、「女性のライフプランニング支援」には、どのようなニーズがあるのでしょうか。

女性の支援ニーズ

平成18年度に内閣府が30代・40代の女性を対象に行った調査によれば、女性の「働き方の希望」は、結婚や出産・子育てといったライフステージによって変化します。子どもが小さな時期には、「働きたくない」という人もいますが、子どもが小学生の頃には9割以上の女性が働くことを希望しています。働き方も、子どもが小さなうちは、在宅や短時間勤務の希望が高く、大きくなるに連れてフルタイムで働くことを希望する人が増えます。しかし「現実」は、働いていない人が希望よりも圧倒的に多く、働き方も子どもの年代を問わずパート・アルバイトに集中しており、希望と現実の間にギャップがみられます。

このようなギャップが生じている背景には、結婚・出産を機に就業継続を断念する女性が多い状況や、子育て中の女性が思うような再就職を果たせていない状況があります。近年は、就職して数年の間に離職し、正社員から契約社員等の非正社員に移行してしまう女性が多く、育児休業等の両立環境が整ってきてもそれらを十分活用できない女性が増えているという問題もあります。

企業のニーズ

このような問題は、多くは企業におけるハードな就労環境に起因するものです。しかし、それだけではありません。平成19年度に文部科学省が行った企業に対するヒアリング調査からは、ワーク・ライフ・バランス(WLB)や両立環境が整ってきた企業では、女性社員に、長期的な視点でキャリアを考えた上で、制度を活用して欲しいと考えていることが分かりました。仕事と生活をどのようなバランスで調和させるかは個々人の選択ですが、短時間勤務などを活用する女性の多くがキャリアアップをあきらめてしまっている状況は、企業にとっても望ましいものではありません。また、両立環境が整っても、「キャリアの展望が描けない」という理由で辞めてしまう女性や再就職に踏み切れない女性もいます。

WLBとライフプランニング支援

女性の働き方の「希望と現実のギャップ」を埋めるためには、多様な働き方の希望を持った女性を受け入れられる職場環境づくりとしての「WLB施策」が重要です。同時に、こうした支援策や、結婚・出産などのライフイベントにおいて女性が直面する問題を、女性がよく理解し、長期的な視点で自分のキャリアや人生を考えて、就業選択や制度活用が行えるような支援が必要です。この支援こそが「ライフプランニング支援」です。具体的には、情報提供・相談・研修・ロールモデルや仲間づくり等の支援です。誰もが必要な時期に、地域や職場でこうした支援を受けられるようにするにはどうしたらよいのか。今年度のモデル事業では、具体的な試みが展開されています。

(三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社 主任研究員 矢島洋子)