「共同参画」2009年 5月号

「共同参画」2009年 5月号

行政施策トピックス 2

NPOで活動する女性、NPOと男女共同参画~「女性の再チャレンジとNPOについての調査」から~

女性の再チャレンジの対象としてNPOが注目されることが増えています。しかし、NPOで活動(運営、就労、ボランティア活動)する女性の実態が十分把握されているとはいえないようです。女性の再チャレンジの対象としてみたNPOは、どのような特色や可能性を持っているのでしょうか。

また、男女共同参画会議基本問題専門調査会の報告「地域における男女共同参画推進の今後のあり方について」(平成20年10月)の中では、従来の知識習得や意識啓発を中心とした取組から、地域の課題解決のための実践的活動を通じて男女共同参画を推進していくという「第二ステージ」の取組への移行が提唱されています。この「第二ステージ」の取組では、男女共同参画センター(女性センター等を含む)とNPOなどの地域団体が連携・協働して地域の課題の解決のために重要な役割を果たすことが期待されています。

内閣府男女共同参画局では、NPOで活動する女性の実態を把握するとともに、男女共同参画の観点からみたNPOの状況やNPOと男女共同参画センター等との連携・協働の状況を把握するため、平成20年度に「女性の再チャレンジとNPOについての調査」を実施しました。調査対象は、全国のNPO、NPOで活動する女性、NPOの支援機関、男女共同参画センターです。

NPOはそれぞれ多様な性格・特色を持っており、画一的な整理は困難ですが、調査結果から浮かび上がってくるNPOとNPOで活動する女性のおおよその状況をみてみましょう。

NPOの女性代表者の状況

回答があった3,840のNPOのうち、女性代表者が設立・運営するNPOは43%でした。本調査では男女共同参画またはその関連分野のNPOからの回答が多かったため、他の調査に比べて女性代表者の割合が高くなっています。(注)

(注) たとえば、経済産業研究所「平成18年度「NPO法人の活動に関する調査研究(NPO調査)」報告書」(平成19年)では、NPO法人の代表者に占める女性割合は23%となっています。

女性がNPOを設立・運営することについては、女性代表者の大半が男性に比べて有利・不利はないと回答しています。女性の方が不利な点としては、家庭生活との両立や資金調達、組織・事業運営のマネジメントを挙げる人が比較的多くなっています。

男女ともにNPOの代表者は、やりがいがある、能力が活かせるなど満足度は高くなっていますが、報酬・給与や働き方、身分保障については不満が高くなっています。1週間の活動・就労時間は40~50時間の割合が最も高く、月平均の報酬・給与は5万円未満の割合が52%で、収入を得る手段としてではなく、やりがいなどを理由に活動している状況がうかがえます。

NPOで活動する女性の状況

回答のあったNPOの44%で再チャレンジした女性が参加しており、71%のNPOが再チャレンジする女性を登用・支援したいと回答しています。

個々のNPOをみると構成員が男女いずれかに偏る傾向はあるものの、NPOの組織内での権限・処遇等については、総じて男女差はないとの回答が多くなっています。(図1)

NPO活動における男女差(SA)

NPOで活動する女性5,784人から回答があり、内訳は役員22%、役員以外のスタッフ69%、ボランティア9%でした。

NPOに参加した理由は、能力等を生かしたい、知識や経験を得たい、家庭や他の仕事等と両立できるの順に多くなっています。やりがいを感じるなど活動に対する満足度は高いものの、報酬・給与の水準や雇用形態・身分保障についての不満度が高くなっています。NPOからの月平均の報酬・給与は10万円未満が61%で、NPOでの活動・就労のみで生活することは難しい状況です。

1週間の活動時間は、5時間未満から50時間未満までの間で回答が分散しており、企業に雇用される場合と比べて、活動時間の自由度が比較的高いことがうかがえます。また、多くのNPOが、女性スタッフに対して家庭生活と両立できるような就労形態、就労時間、スキルアップのための研修機会の提供等の配慮をしています。

女性の就労の場としてのNPO

以上の調査結果から、女性の再チャレンジの場としてみた現在のNPOは、おおむね次のように整理できます。

やりがいを感じられるなど活動自体の満足度は高く、就労条件の自由度が比較的高く多様な働き方が可能で、家庭生活との両立もしやすいといえます。その点で、企業等に雇用される場合とは違った多様な働き方の1つのモデルとなり得ます。また、女性のエンパワーメントの場として、NPOがもっと注目されてもよいでしょう。

しかし、NPO活動だけで十分な生活費が得られることは少なく、経済的に自立した働き方ができる状況にはありません。ヒアリング調査によると、育児が一段落したときや、家計の状況の変化をきっかけにNPO活動から離れ、より多くの収入が得られる企業等に就職する人も少なくないようです。将来は、地域に有益な活動をするNPOで働くことで経済的自立が可能となることが望ましいでしょう。

男女共同参画センターとNPOとの連携・協働

NPOにとっての男女共同参画センターは、どの取組についても利用率は5%未満と大変低い状況ですが、地域内の連携やネットワークなどで一定の期待が持たれています。(図2)

男女共同参画センター等との協働に期待すること・実際の成果(MA)

男女共同参画センターにとってのNPOは、現在はNPOに対する事業は少ないものの、女性の参画や男女共同参画の理解、地域の連携・ネットワークの拡がり等について期待が持たれています。

男女共同参画センターは、NPOと連携・協働するためには、専門職員・人員の不足、男女共同参画について理解が得にくいなどの問題があると考えています。

今後、地域で男女共同参画をさらに推進していくためには、理念だけではなく、地域の課題解決を通じて男女共同参画が多くの地域住民にとって「実際に役に立つこと」を示していくことが必要です。そのためには、男女共同参画の推進主体とNPO等の地域団体との連携・協働は不可欠です。連携・協働にあたっての問題の中には、まず同じ席に着くことで相互理解が得られ、結果的に解決していくものも多いのではないでしょうか。

調査の概要