「共同参画」2009年 3月号

「共同参画」2009年 3月号

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男女共同参画社会基本法制定10周年女子差別撤廃条約採択30周年
本年3月に、男女共同参画社会基本法制定10周年を迎えます。
また、12月には、女子差別撤廃条約採択30周年になります。男女共同参画の取組の新たなステージに向かう記念すべき年です。

特集1

農山漁村における女性の参画促進 ―活力ある農山漁村の実現に向けて― 農林水産省

我が国の農山漁村では、女性が農業就業人口のおよそ過半数を占めるなど農林水産業において重要な役割を果たしています。経済情勢が厳しさを増している中、農林水産業は、自らの創意工夫により経営発展を図ることが可能となる限りない潜在力を秘めた我が国に残された数少ない成長産業です。このような中、安心・安全な食料生産、農業体験を通じた食育活動、地元食材の地域利用促進等の地産地消に向けた活動など、農林水産業経営や地域の活性化における女性の活躍に対して今まで以上に高い期待が寄せられています。

しかしながら、こうした個々の経営や地域農業のあり方に対して大きな力をもっている農業委員、農業協同組合役員など関係団体等の意思決定の場の女性の登用割合は依然として低く、女性の持つ視点や能力を農林水産分野において発揮するためには、一層の参画促進が必要となっています。

図表1 就業人口に占める女性の割合

図表2 農林漁業者団体の役員等に占める女性の割合の推移

「農山漁村女性の日」について

「農山漁村女性の日」について

こうした状況を改善するため、農山漁村女性の役割を正しく認識し、適正な評価への気運を高め、女性の能力発揮を促進することを目的として、農林水産省では、昭和62(1987)年度から3月10日を「農山漁村女性の日」として設け、毎年記念行事を行うなど普及啓発に取り組んでいます。

第22回目となる本年度の記念行事は、大会キャッチフレーズを「男女(とも)にきずく農山漁村(ふるさと)新時代」と定め、優良事例発表を行うとともに、農山漁村における女性の社会参画の必要性やその実現に向けた課題等を明らかにするため、現在農業委員など地域で指導的地位に立ち活躍をしている女性や、女性の活動の必要性を感じている組織の長としての男性の参加を得て、シンポジウムを行います。

  • 日時 平成21年3月10日
  • 場所 日本青年館(東京都新宿区)
  • 内容
    1. 農林水産業に関する優良事例の活動発表(農山漁村女性チャレンジ活動表彰受賞者)
    2. シンポジウム「男女(とも)にすすめよう女性の社会参画」をテーマとした講演と農林漁業者参加のパネルディスカッションを行います。

講演:「Change! -女性リーダーが日本を変える-」坂東眞理子氏((社)農山漁村女性・生活活動支援協会会長)

(概要)

「女性の参画加速プログラム」の策定など、参画促進に向けた様々な取組が始まっている中、農山漁村女性の社会参画は依然として低い水準にあります。女性が意思決定の場に参画して意見を伝えることは今までの日本の農山漁村のあり方を変え、活力をもたらします。

女性の視点や発想を活かして社会参画し、新しい時代を築いていくときが日本にもやってきました。

パネルディスカッションコーディネーター:安倍 澄子氏((社)全国農業改良普及支援協会主任研究員)

パネリスト: 農林漁業者6名(農業委員会会長、JA組合長、女性農業委員他)

「農山漁村女性の日」設立の経緯

この日は、「国際婦人の10年」ナイロビ世界会議(昭和60年)で採択された「婦人の地位向上のためのナイロビ将来戦略」を受け、我が国において決定された、「西暦2000年に向けての新国内行動計画」(昭和62年策定)の具体的施策の一つとして、位置付けられたものです。

3月10日に設定することについては、まず第1に国際的な視点として「国際婦人の10年」の基本となる世界行動計画草案が検討された時期であること、第2に農家・農村の生活リズムの視点から、農作業が比較的少なく社会生活においても女性が学習や話し合いを共にする条件が整っていること、第3に女性自身の視点として農山漁村女性の3つの能力(知恵、技、経験)をトータル(十)に発揮して欲しいという願いも込められています。

農山漁村で活躍する女性達

農林水産省では、農山漁村地域での女性の素晴らしい活躍を広く知っていただくため、様々な表彰を行っています。また、本年度は「男女共同参画第2次基本計画」の「2020年までに指導的地位における女性の割合を30%」という目標達成に向けた取り組みの強化を図るべく、新たに全国農業協同組合中央会主催で、女性の登用を積極的にすすめているJA を表彰する「JA男女共同参画優良表彰」が始まっています。

今回はこれらの受賞者等の中から、特に優れた活動を行っている女性達の活動を簡単にご紹介させていただきます。

1 「農山漁村女性チャレンジ活動表彰」受賞者の紹介

この表彰は、農山漁村の生活の充実と開発に優れた活動の実績をもち、男女共同参画推進のために積極的に活動している女性の個人または集団を表彰するものです。

農林水産大臣賞(3事例)自分を活かした農業、業種を超えた“食と農”ネットワーク・地域づくり

泉谷美津子氏(秋田県横手市)

林檎のわい化栽培を導入するために自ら男性の研究会の中で技術を取得、男女共同参画潮流以前から経営参画の先駆けとなって、地域果樹農家の意識を変えた。平成7年に女性農業士に認定され同会会長として会員に刺激を与え続け、“目指す姿”としての役割を発揮し、さらに平成16年には指導農業士にも認定された。代表を務める「NPO法人“食と農”ネットワーク」(平成18年設立)の活動では、異業種との協働など農家女性の多様な可能性を示唆し、農を舞台に地域活性化をリードし続けている。

今庄そばの歴史を守る熱きおばちゃん達

有限会社 ほっと今庄(福井県南越前町)

福井県内では先駆けて法人化を図り経済的自立を目指す組織の事例であり、平成19年度に福井県版HACCPの認証を農村女性起業として初めて取得するなど、県内のモデル的存在になっている。経営規模も県内トップで、経営面でも他の模範となっている。町内の玄ソバを全て買い取り、生産者の意欲向上とソバのブランド化に一役かうと共に、「村の達人隊」として地域の食文化の伝承や普及に努め、地域農業の発展と振興、後継者の育成や社会教育等にも貢献している。

南の島からの挑戦

福留ケイ子氏(鹿児島県伊仙町)

徳之島ではほとんど例が無かった果樹経営にいち早く取り組み、経営を発展させたモデル的経営体で、徳之島が亜熱帯果樹産地として確立された功績は大きい。加工、販売にも多角的に取り組んで他の女性起業の範となるとともに、離島という地理的に不利な条件を逆に利用し通信販売を行っている。平成10年には県女性農業経営士に認定、平成11年に徳之島初の女性農業委員に当選。認定農業者としても地域の経済発展に寄与し、その行動力ある活動は地域の若手女性の目標となっている。

2 「農山漁村男女共同参画活動いきいきフォトコンクール」受賞作品の紹介

この表彰は、農林水産業、農山漁村における男女共同参画の実現に向け「男女がいきいきと参画している優良な取組」を表現した優秀な写真と地域での取組を表彰することにより、地域での男女共同参画の取組の促進を目的とする表彰です。

農林水産大臣賞 画題(テーマ):なかよし こよし

応募団体:うるま市(沖縄県)

撮影者:兼久 スミ子

夫婦の息のあったイ草植えの様子。地域で開催される研修にも夫婦揃って楽しく参加している。

うるま市での男女共同参画の推進は、平成18年度に策定した「うるま夢プラン」に基づき推進しており、農業関連では、各種委員会・審議会への女性の登用促進、起業活動支援、家族経営協定の締結促進等に加え、特に共同申請による認定農業者の育成に取り組むなど、男女共同参画の意識啓発を行っている。

農林水産省男女共同参画推進本部長賞(農林水産副大臣賞)

これからの農業を担っていく若い御夫婦の写真。御夫婦で、栽培技術はもとより経営管理などを共に学び話し合い、しっかりとした農業経営を目指し頑張っている。

白石町では、平成19年2月に「白石町男女共同参画推進プラン」を策定しており、特に農政分野では、女性認定農業者の認定及び共同申請の推進、家族経営協定の締結の推進等、男女共同参画意識の啓発に努めている。

3 「JA 男女共同参画優良表彰」受賞者の紹介

 この表彰は、農山村における男女共同参画社会の実現を図るため、JA組織全体の男女共同参画に関する意識を高めことを目的として、女性の参画を推進している優良なJAを表彰するものです。

農林水産大臣賞

紀の里農業協同組合(和歌山県)

女性役員数 5人(13.2%)

女性総代数 145人(29.0%)

女性性組合員数 2,340人(24.6%)

(取組概要)

平成16年度の理事会において、女性理事の登用について「地域の代表者として参画してこそ真の運営参画」という方針のもと、各地区において女性理事1名以上の選出を決議し、平成17年度に女性理事5名を選出している。

まとめ

このように農山漁村においても女性が中心となった様々な優れた活動が生まれてきています。食の安全・安心などが求められている中で、こういった女性の視点を活かした活動は、今まで以上に農山漁村活性化に向けた牽引役として大いに期待されており、その期待に応えるためにも、農山漁村それぞれの地域での地に足のついた女性の参画への取り組みを図って行く必要があります。

3月10日の「農山漁村女性の日」を機会に、農山漁村における女性の参画のあり方にについてそれぞれの地域で、組織で、そしてご家族で考えてみませんか。

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