「共同参画」2009年 2月号

「共同参画」2009年 2月号

連載/その2

仕事と生活の調和推進室だより8 内閣府仕事と生活の調和推進室

仕事と生活の調和の実現に向けた取組を、EU加盟各国に発信!

-樋口美雄トップ会議委員がEUフォーラムに出席し、日本の取組を紹介-

 平成20年11月24日~25日、EU(欧州連合)が主催する「The 2nd European Forum on Demography(人口動態フォーラム)」が、ベルギー・ブリュッセルにて開催されました。日本からは、樋口美雄仕事と生活の調和推進官民トップ会議委員(慶應義塾大学商学部教授)が出席し、日本の仕事と生活の調和の推進に向けた取組をEU加盟各国に発信しました。

今回の日本の参加は、EU委員会にて雇用・社会・機会均等を担当するシュピドラEU委員(チェコ元首相)の招聘により実現したもので、これは、「日・EUシンポジウム」(20年1月、東京)や「G8労働大臣会合」(20年5月、新潟)など、あらゆる機会を捉え、日本とEUが仕事と生活の調和に関する施策運営について、積極的な情報交換を行ってきた成果といえます。

樋口委員は、EU加盟国以外の唯一の参加国の代表として、1.日本における少子・高齢化の現状と課題、2.Active aging、世代間の支え合いの重要性、3.少子化対策への対応としての家族政策の必要性、4.ワーク・ライフ・バランスの必要性と政府の取組(政労使合意と各主体の取組)について、具体的事例を交えて紹介し、「世界が経験したことのない急速な少子高齢化に直面している我が国は、サステイナビリティの確保という危機意識を共有しながら、経済界、労働界、地方公共団体と政府が力を合わせて、取組を推進していくことが重要である」と、トップ会議委員であるご自身の取組にかける意気込みも交えて講演しました。講演後も、EU加盟各国から質問が相次ぐなど、日本の取組への高い関心を実感することができ、大変有意義な講演となりました。

フォーラムを通じて明らかになったことは、EU加盟諸国においても日本と同様に、少子・高齢化は深刻化しており、その有効な対策として、仕事と生活の調和が重要視されていることです。特に、エスピン・アンデルセン教授(スペイン)の講演にて紹介された、1.出産を奨励するのではなく、可能にする政策が必要であること、2.仕事と家庭の両立、男女均等について適切な政策が行われている北欧では、出生率が回復していること、3.女性に安定的かつ柔軟な雇用を提供することが出生率の向上に寄与すること、4.2人目以降を出産するには父親の育児参加が重要であること、5.仕事との両立の観点では、幼児期の保育サービスの提供が重要であり、デンマークのような充実した政策を行うと、GDPの2%程度が必要となるが、将来の経済効果を勘案すれば投資効果は12倍ほどになり、極めてリターンの高い投資と言えること、といった具体的な事例は、日本の取組を推進する上でも大いに参考となるものです。

フォーラムの締めくくりとして、アルムニアEU委員(経済・通貨担当)が「少子・高齢化の進行は経済、社会に深刻な影響を与えるが、未来の社会の構築に向けて楽天的に臨もうと考えている」と述べられたとおり、世界でも経験したことのない急速な少子化が進行している日本においても、決して悲観的になることなく、少子化対策や仕事と生活の調和の実現に向けた取組を推進することの必要性を再認識するとともに、EU加盟国にとどまらず、世界各国に日本の取組を発信し、情報共有していくことの重要性を体感した有意義なフォーラム参加となりました。

フォーラムで得た知見、ネットワークは、今後の施策運営に大いに活用してまいります。

  • Charlemagne Building(フォーラム会場)
    Charlemagne Building(フォーラム会場)
  • 講演する樋口委員(左端)
    講演する樋口委員(左端)
  • フォーラムの様子
    フォーラムの様子