「共同参画」2008年 4・5月号

「共同参画」2008年 4・5月号

スペシャル・インタビュー/第1回

「いのちにつながる仕事に就いて」─男女共同参画は新しい時代のコンセプト─ KAMIKAWA YOKO

スペシャルインタビューでは、男女共同参画に関するキーパーソンに様々なお話をお伺いしていきます。

今回は男女共同参画総合情報誌のリニューアルにともない、インタビューのお一人目に上川陽子男女共同参画担当大臣にご登場願いました。

これからの時代、大切なことは『対話と協働の精神』ではないでしょうか。

─ はじめに、政治の世界に入られたのはどのようなことがきっかけだったのでしょうか。

上川大臣 折しも日本経済がバブル絶頂期に、私はアメリカに留学しました。世界各国から優秀な学生が集まってくる中、とりわけアジアからの留学生が必死に頑張っている姿を目の当たりにし、今後彼らが活躍する時代になった時に、日本はアジアに伍していけるのだろうか。そんな危機感から、新しい日本の国づくりのため精一杯働きたいと強く考え、帰国後政治の道をめざしました。その後、家族や女性、少子化等の問題を積極的に取り上げ、活動を続けてきましたが思いがけなく昨年8月末に少子化対策、男女共同参画担当相を拝命することとなりました。

─ 大臣に任命されてから約半年が経ちましたが、どのようなことをお感じになっておりますか。

上川大臣 就任当初、自らのイメージを子ども家庭省の担当大臣としてこの仕事に取り組もうと決意しましたが、その思いは今も変わりません。現在の担当分野は、食育や青少年の健全育成も含め、すべて子どもや家族、地域に関連しており、将来の日本のあるべき姿を基本から考え直すことが求められます。政治家としての私自身にとりましても、非常によい機会をいただいたと感じています。私はこの15年間、生命(いのち)に関わるあらゆることを大切にしていきたいという思いで、政治活動を続けてきましたので、日本にとってとりわけ重要なこの時期に全力で取り組むことができる機会を与えられたことに心から感謝しています。

─ 男女共同参画についてはどのようなことをお感じでしょうか。

上川大臣 私は男女共同参画に携わってこられた諸先輩方のご努力の賜物である男女雇用機会均等法の恩恵を受けた最初の世代なのです。私が就職した時はまだこの法律の施行前でしたので、私は事務職の立場で実際には総合職の仕事をこなしていました。その後、男女雇用機会均等法の施行により、総合職に転換したのです。そのような人間ですので、諸先輩方のご努力には大変感謝いたしております。また、それだけに一層、後に続く皆さんのために、子育ての両立支援策や少子化対策、そしてもちろん女性の参画加速プログラムやワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)の推進などを積極的に押し進め、次の世代にしっかりバトンを渡していきたいと考えています。

昨年11月のヤングリーダー会議最終日のプレゼンテーションでは、現場の若い人たちが男女共同参画を非常に素直に展開しておられ、また、男女共同参画という考え方を地方の皆さんに正しく理解してもらい、試行錯誤を重ねながら着実に実践している姿に深く共感を覚えました。こうした若い人たちのために頑張りたいと改めて思った次第です。

─ 大臣として、大切にしていることはどのようなことでしょうか。

上川大臣 これからの時代に、大切なことは『対話と協働の精神』ではないでしょうか。それぞれ立場が違ったり、考え方が違うかもしれないけれど、日本のすばらしさを子どもたちに伝え、受け継いでいくためには、お互いが尊重し合い、真撃に対話を重ね、協働して事にあたることが大切だと考えています。その意味では、男女共同参画という考え方は、これからの時代に欠かせない重要なコンセプトではないかと思います。

─ 具体的にはどのようなことでしょうか。

上川大臣 少し乱暴な言い方かもしれませんが、留学経験を通じて感じたことは、日本社会は明らかにアメリカなどと比べて、均質であることを前提として造られてきた社会だと思うのです。でも本当にそうなのでしょうか。例えば、地域の中で共に暮らしている障がい者や高齢者、妊婦の皆さん、在日二世・三世や外国人労働者の方たち、さらには犯罪被害者の皆さん。私たちが共に暮している地域も、本当に多様なバックグラウンドの人々が一緒にいる、ダイバーシティ(多様)な社会と見ることもできます。しかし、それにもかかわらず日本社会は均質だというふうに思い込んでしまっている。そうした無意識な思い込みが、日本の弱みになっているのではないかと感じています。多様性を認識し、違いが存在していることを認めることが問題解決の糸口となるにもかかわらず、均質であることを前提にしている結果、ますます問題解決が難しくなってしまう。たとえば男女間の問題に関していえば、配偶者間・恋人間の暴力(ドメスティック・バイオレンス)などが、新たな社会問題としてクローズアップされていますが、こうした問題を解決に導くような受け皿となる場所がなかなかない。男女共同参画には、そうした課題を受け止める最後の砦のような役割も担っているのではないかと思います。

女性の活躍は、今後の我が国にとって重要です。先月8日、福田総理を本部長とする男女共同参画推進本部において策定した「女性の参画加速プログラム」を強力に推進し、医師など特に仕事と生活の調和の実現が難しい3つの分野に焦点を当てた戦略的な取組の成果を他の分野にも波及させていきます。

私は、これからも、男女共同参画に関わる方々を支える役目をしっかり果たしていきたいと考えております。

─ 本日はお忙しい中、貴重なお時間を割いていただきありがとうございました。

内閣府特命担当大臣(少子化対策、男女共同参画) 上川陽子
内閣府特命担当大臣
(少子化対策、男女共同参画)
上川 陽子

かみかわ・ようこ/東京大学教養学部教養 学科卒。(株)三菱総合研究所研究員、ハ ーバード大学院JFケネディスクール政治 行政修士卒、(株)グローバリング総合研 究所代表取締役を経て、2000年衆議院議員 に初当選、以降当選3回。自由民主党女性 局長、総務大臣政務官などを歴任。2007年8月より内閣府特命担当大臣(少子化対策、 男女共同参画)。