男性にとっての男女共同参画シンポジウムin とっとり 報告・開催概要

  • 8 会場からの質問
萩原:
ここで、会場の皆さまからの質問をお受けしたい。お二人に聞いてみたいことがある方は手を挙げてほしい。

(1)大学生に向けたアプローチについて

女性:
大学で教えている者だが、若い学生に子育てなどを伝えるため、学生主体のプロジェクトを立ち上げようとしているが、就職が厳しい中、そういうことに対するチベーションが上がらない。今の大学生に子育てや将来のことをしっかり考えてもらう機会を作るために、どういうアプローチが有効だろうか。学生に聞くと「楽しい」とか「自慢できる」などの付加価値があるといい、という話は出るのだが。
浜田:
例えば先ほどご紹介した「ワーク・ライフ・インターン」には男子学生も入っている。そういう体験をすることで、育児の体験もできるし、アルバイトで収入を得ることもできるし、メンターとして後輩の指導をし、リーダー的立場になることもできるので男子学生にも好評だった。
とはいえ、目の前の就職で失敗できないという気持ちも分かる。今の就職活動のシステムが、学生の人格を否定しないような形にならないと難しい面もある。
また、学生側も、ある程度の能力を身に付けないと就職ができない。企業に就職がしたいのであれば、自分の能力を高めることも重要である。実際、能力があり、自分で仕事ができる人は、ある程度、自分の裁量で自由に時間を使えるという面がある。
安藤:
女子大でも授業をさせていただいている。正しい知識として現状を知ってほしいのは、これから、仕事を続けながら結婚したいと思うならそういうパートナーを見つけるべき。共働き・共子育てがこの時代は合理的だと言っている。実際、30歳の平均所得は東京でも400万円を切っている。こう話すと学生は納得するが、専業主婦になりたがった理由は「母がそう言っている」ということが多い。母親からの刷り込みに反論するロジックがないまま、専業主婦が良いと思い込んでしまうと、うまくいけばいいが、案外厳しい行く末が待っていたりする時代である。

(2)ワーク・ライフ・バランス 「自分の趣味に没頭して仕事はそこそこ」でよいのか

男性:
ワーク・ライフ・バランスについて、一部の方はライフの方に偏り過ぎてしまう。仕事はそこそこで自分の趣味に没頭し、キャリアや給料はそこそこでいいという方がいることに、将来の組織力という点で危機意識をもっている。育児や家事をしながら、やるべき仕事を自分の責任でやるという意識を持てるために、どうすればよいか。
安藤:
ライフ重視派、というのは話題になっているが、そういう方は、今やっている仕事が面白くない、適材適所になっていない、という面があるのでは。本人の希望や家族の状況も含め、管理者がどうにかできる面もあるような気がする。自分が会社員だったときも、「自己評価シート」に自分の不満などは書かずに、「我慢して仕事しているんだから休みをくれ」という態度を取る部下社員もいた。自分はそれは違うと思う。仕事もプライベートも充実させて楽しめるようにするべきだし、そのための希望があるならなるべく叶えてあげるのが上司の役割だと思う。話をした結果、彼を異動させたところ、新しい職場が合っていたようで、活き活きと仕事をするようになった。新しい部署の上司からも「安藤さん、いい人をくれたね」と言われた。
浜田:
採用で「御社のワーク・ライフ・バランスはどうですか」といきなり聞いてくる学生がいると、面接官はどうしていいか分からなくなってしまう。以前は、子どもを持っている母親は、死に物狂いで働いて、仕事で認められて、ようやく子どもを産むことができた。今はさすがに、体力のある若いうちに子どもを産みなさい、という話をしているが、それでも入社したてで「趣味に生きます」というような人を、企業は採用しない。いずれにしても、ワークが充実しなければ、ライフも充実しないと思う。その点で子どものいる母親は、迎えの時間があるから時間内に仕事を終える意識が高く、時間当たりの生産性がきわめて高い。そういう風にやらないとライフを充実させられないということを若い人に伝えたい。
安藤:
仕事と生活のどちらかを犠牲にするのではなく、仕事を充実させることで生活も充実させるべきだ。FJにも最近は、まだ結婚する前の若い男性が来ることがある。「早く結婚して子どもを作って育児休業を取りたい」というので、「だったら、今のうちに仕事を頑張って成果を出していた方がよい」と言っている。その男性がパパになる頃は、まだ育児休業も取り易くはないと思うので、「お前が取ると言うなら仕方ない」というくらいの成果を出しておくべきだと。
萩原:
ワーク・ライフ・バランスというが、一人ひとりバランスが違う。「バランス」というとトレードオフの関係を思い浮かべてしまいがちだが、実際は「ハーモニー」であり、相乗効果ではないかと思う。
安藤:
子育てができるパパは仕事ができる。仕事ができるパパは子育てもできる。