男性にとっての男女共同参画シンポジウムin とっとり 報告・開催概要

  • 1 自己紹介とイントロダクション
萩原:
夫は定年退職をしているが、その後JICAのシニアボランティアとして、ウズベキスタンに4年間行っていた。そこで嫌でも自分で身の回りのことをせざるを得なくなったことが今に活きている。朝起きると夫が朝食とコーヒーを用意してくれる。なんて素敵な朝、この日を待ち望んでいた、という感じである。夫が「生活者として自立」してくれ、今はいい関係になった。ただし子育ての時期は、そうもいかなかった。夫の世代は長時間労働が当たり前、地域参画したくてもできない世代だった。今日は、もっと自然に男性が地域や家庭に参画するためのヒントとなるお話が出てくるように進めたいと思う。
会場の皆さまにもご参加いただくため、「○」と「×」の札をお配りしている。進行の中で、この札を挙げていただいて、皆さんも一緒に考えてほしい。
浜田:
夫も同じ会社で働き、二人して長時間労働の夫婦だった。管理職で出産するのは私が初めて。上司からは育児休業を取る際に「復帰したら元どおり働いてくれるよね」と言われたので、夫婦で話し合った結果、私の復職直後から3ヶ月間夫が育休を取ってくれた。
私が育休中は、夫は毎晩遅くまで働いていたので、一人での育児は大変だった、それで、いざ夫が育休を取ったときは、ここぞとばかりに私も初日から遅くまで仕事をした。夫は自分では育児をやっているつもりだったと思うが、いざ全面的に育児を任された時は授乳もできないし、かなり戸惑っていたと思う。
よく育児にむく、むかないは男女の本能的な違いと言われるが、私は意識の違いだと思う。私が育休中は、子どもが夜泣きをしようが私が助けを求めようが、一切起きなかった夫が、自分が主体的に育児をするようになると、夜泣きの前のちょっとした声でパッと目が覚めるようになった。そのとき、「育児は男性でもできる」と思い、色々な人にその話をしている。夫にとってもその3カ月があったからこそ、それまで母親べったりだった娘も「パパがいればいい」と言うようになった。
萩原:
当事者になる、関わることが大事だと思う。夫も私が妊娠した時、「今年は妊婦が多い」と言い出した。もちろん周りに妊婦が増えたのではなく、単に妊婦に目が行くようになったということ。人は、自分の意識していないものにはなかなか気づかない。
安藤:
家族は15歳、12歳、4歳の子どもと妻が一人です(笑)。今でこそファザーリング・ジャパン(FJ)というNPOをやっているが、自分も当初は「やってるつもり」の父親だったと思う。専業主婦の家族に育ったため、「男は仕事」などの自分の意識を変えようとした。自分はそういう意識の変革を、コンピューターのバージョンアップに例えて「OSの入れ替え」などと言っているが、その頃は、少し家事をやるようになると妻に自慢したりしていた。彼女からすれば「何言ってるの」という感じだったと思う。当時は大企業に勤めて残業続きだったが、ある朝起きたら、妻が家出をしていた。3歳と1歳の2人の子どもを一人で見ることになり、なんて大変なことかと思い知った。自立とは、自分で考えて主体的に動けるようになること。生活者の視点が大事だと思った。家でも優先順位を考えて、自分で動けるようになれば、少しは妻に認められるかもしれないと考えた。それがきっかけで、「OSがレベルアップ」したと思う。
そんな経験を経て管理職になったとき、働く母親の気持ちが分かるようになっていた。子どもが熱を出しているという電話を保育園から受けた女性社員に、「それは手足口病だよ。4日間、こちらは何とかするからすぐ帰りなよ」と言えるようになった。最近は若い父親から相談を受けることもあり、「自分はやっているのに妻の評価が伸びない」などの話をよくされる。「同じ船の乗組員としてやるべきことをやっているかが大事だ」と伝えている。
萩原:
「生活者としての視点」という言葉があった。
安藤:
男性は生活者としての訓練を受けていないことが多い。「OSの古い」男性に対しては、「これは課題解決だ」とビジネスの言い方で伝えると有効だと思っている。
浜田:
今の話を聞いて少し反省している。女性も「やってよ」ではなく、同じ船の運命共同体として接することが大事だと思う。夫が育児をすると、やってないことばかりが目について文句を言ってしまう。夫は凝り性で、鯛のアラから出汁を取って離乳食を作る一方で、保育園との連絡帳を書いていなかったり。こちらは優先順位を踏まえてやるべきことをこなして欲しいのに(笑)。でも本当は、やったことをほめないといけない。
安藤:
それは仕事でも同じかもしれない。ほめて伸ばすことが大事と言われる。
浜田:
仕事だとそれはできる(笑)。部下に気を遣ったりとかもできるのだが・・
安藤:
それは、愛情の問題かもしれません(笑)。
萩原:
脳科学の専門家によると、女性は複数のことが同時にできるが男性はなかなか出来ないと言う。でも一つのことができるなら、それをほめることも大事かもしれない。