(開催要領)
- 日時:平成15年9月30日(火)10:00~12:00
- 場所:内閣府3階特別会議室
(出席者)
- 古橋
- 会長
- 伊藤(る)
- 委員
- 桜井
- 委員
- 田中
- 委員
- 深尾
- 委員
- 山口
- 委員
(議事次第)
- 開 会
- 有識者ヒアリング「NGOからみたODA政策における男女共同参画の視点の重要性について」
- 原ひろ子氏(放送大学教授、お茶の水女子大学名誉教授)
- 平成14年度監視「地球社会の『平等・開発・平和』への貢献」に掲げる施策
(外務省からのヒアリング) - その他
- 閉 会
(概要)
原ひろ子氏から、NGOからみたODA政策における男女共同参画の視点の重要性について、外務省から政府開発援助 政策におけるWID・ジェンダー、WIDイニシアティブに関する政策評価、OECD/DACによるピュアレビュー、国際機関へ のWID・ジェンダー関連の拠出金について説明があり、意見交換が行われた。審議の概要は以下のとおり。
<1>原教授からのヒアリング
- 古橋会長
- 例えば、円借款でダム等を建設する際、被援助国の政府と日本のコンサルタント会社が直結してプロジェクトを作成してし まうと思うが、NGOは、プロジェクトにどういう形で関与できると考えているか。
- 原教授
- JICAでは、一定規模のNGOであれば、JICAにプロジェクトを申請することができる制度もでき始めている。JBICによるプ ロジェクトでは、男女共同参画の視点をどのように入れるかについては遅れているといえる。また、プロジェクト形成のプ ロセスにおいて、相手国の了解のもとにいかにして事前調査を行うかが大事である。
- 古橋会長
- 事前調査は、援助国が行うのか、被援助国が行うのか。
- 原教授
- 被援助国政府の了解を得て、援助国が行うが、日本は他の先進国よりも調査期間が短い。
- 古橋会長
- 事前調査を行うのは、大規模コンサルタントではないかと思うが、事前調査の段階で、NGOが活躍する余地はどこにある のか。
- 原教授
- コンサルタント会社が、NGOをコンサルタント会社職員として雇用することも可能である。
- 古橋会長
- しかし、そのコンサルタント会社は、要請主義に基づいて被援助国の要請でプロジェクトを作っている。援助国側もアドバ イスを行うシステムを作る必要があるのではないか。
- 山口委員
- GII/IDIに関する外務省・NGO定期懇談会の団体名簿に46の団体が掲載されているが、アドボカシー専門ではなく、実際 に現地での活動を行っている団体はどのくらいか。
- 原教授
- 5分の4くらいの団体は、現地で活動しており、アドボカシー専門の団体は少ない。
- 伊藤(る)委員
- 人材の確保と育成については、具体的にどのような方向性と手段を考えているか。また、人材育成のための日本の大学 教育等について、諸外国の事例と比較すると、日本の現状はどのように考えているか。
- 原教授
- 例えば、JICAには、ジュニア専門員がいるが、一定期間勤務するとその後の保障はないのが現状である。育成した人材 のキャリア形成の道筋を、国の中のシステムとして考える必要がある。NGOでそれを行うためには、税制も含め、国として 制度を作っていくことが重要である。また、大学教育、特に「国際協力と男女共同参画」という観点では、そのような視点で 教育を行う大学は、諸外国に比べ非常に少ない。これも強化していく必要がある。
- 田中委員
- 大型のインフラ関係の案件が、ジェンダーの視点からみてどういうプラスマイナスのインパクトを及ぼし得るかという事例 がほとんどない。部分的にマイナスの影響があるという事例は報告されているようだが。
- 古橋会長
- そういう反省材料と模範例を集めて、そこからある程度の留意すべき事項を抽出する必要がある。
<2>外務省からのヒアリング
- 古橋会長
- JICAの基本方針の中に男女共同参画の視点が含まれているのか。また、新ODA大綱には、公正性の観点から男女共同 参画の視点が重要であるとされているが、それだけでなく、予算の効率性や目的に対する有効性という観点からも男女共 同参画の視点が重要と考えるが、それについては、どのように考えているか。
- 外務省
- JICAについては、確認したい。効率性や有効性の観点からも男女共同参画の視点が重要であることについては、正当な 御指摘と思うが、新ODA大綱の中で、そういった趣旨が盛り込まれているかどうかについては、検討してみたい。
- 山口委員
- 日本でも、ジェンダーの視点による経済協力という考え方は弱いが、被援助国においては、そのような視点は日本よりも 強いのか。また、ジェンダーの視点が援助にいかされているかどうかについては、評価を行っているのか。
- 外務省
- 被援助国の状況は、国によって様々で、経済発展に関心が多く寄せられてしまうため、男女共同参画の視点は、相当十 分ではないだろうと思われる。評価については、国別援助計画が妥当であるかについて外務省が評価し、個々の技術プ ロジェクトや、無償資金協力などの案件については、JBICやJICAで評価している。案件が所期の目的を達成しているか、 有効に機能しているかについて主に評価しており、被援助国のジェンダーメインストリーム化がどこまで進んだかについて の評価は、まだ行われていないようだ。
- 原教授
-
被援助国と現地で協議する際に、被援助国側と日本政府の両方のメンバーに女性が入る、ないしは男女共同参画に理 解がある男性が入るのが望ましい。被援助国側にもそのような条件を付ける努力が必要だ。また、男女共同参画を後回 しにして経済発展を優先するのではなく、経済発展を行う上で、男女共同参画の視点を初めから入れておくことが重要で ある。
それぞれのプロジェクトについてデータベースを作成しているそうだが、男女共同参画の視点をチェックできるような項目 がデータベース上にあるのか。 - 外務省
- 各案件ごとに、保健や教育など分類項目ごとに整理できるようなデータベースを作成中であり、ジェンダー関連のプロジェ クトの一覧表を作成することは可能となる予定。
- 深尾委員
- 新ODA大綱の男女共同参画部分の記述について、最初はもっと弱かったとのことだが、どのような表現だったのか。ま た、強調されるに当たって、外務大臣から何か一言あったのか。
- 外務省
- 当初は、「ジェンダーの視点に配慮する」ということだった。外務大臣から直接の指示があったということは聞いていない。
- 田中委員
- UNDPのWID基金について、パートナーシップ基金に統合する話は伺っているが、その際、WID基金については、イヤー マークすると聞いていた。イヤーマーク分はどうなっているのか。また、IFADに対するWID基金の拠出が全廃になってい るが、なぜ、全廃にしたのか教えてほしい。また、今後のWID関連基金について、どのようにするのか。
- 外務省
-
それぞれの基金を統合したパートナーシップ基金の中においては、WID関連を最も重視して進めていくが、事前に枠を決 めてはいない。また、拠出金全般について、年度内に使い切れない滞留金が問題となっており、しばらくはその滞留金を使 用するということで、予算をゼロにしているという背景がある。IFADについても、そのような経緯からゼロになっているが、 今後は、予算全体の状況と基金の活動状況などを総合的に判断して決めていくことになるだろう。
さらに、拠出金については、減少しているように見える部分もあるが、日本円では減少でも外貨では同額を維持している。 また、草の根無償資金協力やNGO無償支援などは着実に増やしていくつもりである。 - 桜井委員
- ODA大綱では、非常に抽象度が高い基本方針が示されているが、JICAやJBICなどの実施機関に具体的な取組について の指示をどのように出しているのか。指示にWIDの視点を入れた事前調査や事後評価を義務付けるような文言を入れる ことはないのか。
- 外務省
- ODA大綱の実施状況を毎年ODA白書で報告し、不十分な点について改善策を考えていきたい。WIDの視点を事前調査、 事後評価において義務付けるということについては、WIDに限らず環境などすべてのケースに対応した評価を行う上で改 善の余地があることや、予算やコストの関係からも、まだ現実的ではないと思う。
- 古橋会長
- ODAは、形式的には被援助国政府の要請が必ず必要と考えるのか。日本のNGOが被援助国の住民と直接議論をして大 切だと考えたものを日本政府が無償資金協力なりで援助をすることは可能か。
- 外務省
- 被援助国において、国やNGOのように事業を実施する者からの要請がなければ援助は難しいが、被援助国のNGOに対し て直接日本側が援助を行う草の根無償資金協力のようなスキームはある。
- 古橋会長
- 草の根無償資金協力は、まだ額は大きくないのではないか。もっと増やしていくべきと思う。
- 外務省
- 草の根無償資金協力は着実に伸びており、効果についても非常に評価が高い。
- 古橋会長
- 草の根無償資金協力を行う場合には、被援助国側の政府には何も許可をとらずに日本政府が直接援助するのか。
- 外務省
- 国によっては、必ず教えてほしいと要請するところもある。最近は、多くの国で自由にできるケースが増えている。
- 古橋会長
- 草の根無償資金協力のような援助形態を増やし、男女共同参画の視点が入ったNGOに実施主体として入ってもらうことを 調査会で提言すべきと思う。
(以上)