(開催要領)
- 日時:平成14年12月12日(木)9:30~11:57
- 場所:内閣府3階特別会議室
(出席者)
- 古橋
- 会長
- 庄司
- 委員
- 伊藤(陽)
- 委員
- 伊藤(る)
- 委員
- 鹿嶋
- 委員
- 神田
- 委員
- 深尾
- 委員
- 松下
- 委員
- 山口
- 委員
(議事次第)
- 開会
- 平成14年度監視「情報の収集・整備・提供」
- 利用者の立場からみた統計調査の在り方(有識者からのヒアリング)
- 安倍澄子氏(社団法人 農村生活総合研究センター主任研究員)
- 利用者の立場からみた統計調査の在り方(有識者からのヒアリング)
- 無償労働の数量的把握の推進について(関係府省からのヒアリング)
- <1>総務省「平成13年度社会生活基本調査の実施について」
- <2>内閣府「無償労働の貨幣評価、介護・保育サテライト勘定の研究について」
- その他
- 閉会
(概要)
「利用者の立場からみた統計調査の在り方」として、自営業(農業・農家)関連を中心に安倍澄子氏からの説明、「無償労働の数量的把握の推進」に関して総務省、内閣府から、そ れぞれ説明があった。これらに対する主な議論は以下のとおりである。
(1)安倍澄子氏からのヒアリング
- 神田委員
- 漁業については農業の傾向から捉えることができるのか。
- 安倍氏
- 漁業センサスの場合には農業よりもっと従業者として女性が見えない。漁業の場合は経営形態の沿岸漁業、遠洋漁業、養殖でそれぞれ違う。農林業者だけを見て漁家がわかる ということはないので、別個に把握することが大事。
- 鹿嶋委員
- 農業分野ではかなり構造的な問題があるが、どのように動かしていけばよいか。
- 安倍氏
- 世帯主義が根強いので、その辺を調査設計の時点でどのようにしていくか。例えば、家族経営協定を締結して、女性が経営に参画しているという実態があるが、既存の統計では なかなか出てこない。こういう問題は世帯主義、特に税制の問題があると思う。個人の動き、労働が統計にあらわれるようにしていただきたい。
- 古橋会長
- 農林水産省などでは、統計の重点化や人員の配置についてスクラップ・アンド・ビルドが必要ではないか。今や女性の問題が非常に大きくなってきたので、個人単位の農業統計 の整備が必要になってくるのではないか。
- 安倍氏
- 従来、生産面を主としてきたこともあり、その辺の関係の統計はほとんどない。世帯単位ではなく、経営の中でもいろいろ部門を分けてとることが必要と感じている。例えば女性起 業活動が7,000ぐらいあると言われているが、その実態が政府統計ではほとんど明らかになっていない。
- 古橋会長
- 今あるべき政策、重点的な政策に必要な統計と必要でない統計をクローズアップして、改革を迫っていくということだろうか。
- 伊藤(る)委員
- 開発途上国の場合は女性に注目した農村の調査などを重点的に行なっており、いわば個人の水準に注目したものがある。調査研究と統計とは一緒ではないが、この問題と農業 政策の問題を全く切り離して同じ政府が展開しているのは不思議である。国際的な横からの働きかけがないと、国内だけで議論しても難しい。
(2)総務省からのヒアリング
- 鹿嶋委員
- 調査票Bを新たに設定した目的と、社会生活基本調査での家事の中身はどうなっているか。
- 伊藤(陽)委員
- 関連して、調査票Bでは育児、家事、介護分野は何分類ぐらいに広がったのか。
- 総務省
-
調査票Bでは、行動分類がこれまでの20から62分類となり、より詳細に把握でき、国際比較も行いやすくなる。家事の中身は、食事の管理、住まいの手入れなど10分類にするこ とを考えている。
育児については、子どもの教育、乳幼児の付き添いなど4つに細分類する予定でいる。 - 庄司委員
- 生活時間(時間帯)について、男性と女性でこういうふうに時間を使うという関心からの分析はなされているか。
- 総務省
- 時間帯別の結果表もあり、この調査でわかるようになっている。
- 古橋会長
- 社会生活基本調査の原データを、個人情報に触れない範囲内において公表することについてはどのように考えているか。
- 総務省
- 個票データの問題は統計調査全体の問題であり、大変な予算をかけて作った統計の利活用と記入していただいた方の秘密保護とのバランスをどこでとるかということが問題にあ る。この問題については、統計行政の新たな展開方向として各省庁と有識者が集まり、今まさに議論している。
- 神田委員
- 介護している人の時間配分が平成8年に比べて25分減少しているが、それをどのように解釈しているか。
- 総務省
- 「ふだん家族を介護している人の割合」は上昇している。家族を介護している1人1人の時間が減っているということである。平成8年と13年の間には介護保険の導入があり、こ の導入前後で介護支援サービスの利用が格段に増えたというデータがある。
- 山口委員
- この調査の対象は、農業従事者、漁業、サラリーマンなど全部を平均した生活時間か。それを分類したものも出てくるのか。
- 総務省
- 職業別の生活時間の結果表がある。
- 安倍氏
- サンプルはどのようにしているか。
- 総務省
- 難しい技術的な話はあるが、基本的に無作為抽出、日本全国の縮図となるような20万人というとり方をしている。
- 安倍氏
- 調査時期が10月13~21日ということだが、農業の場合は農繁期と農閑期の差が激しい。この時期で一般化されると問題があると思う。
- 総務省
- このデータを見るときは、10月の中・下旬の生活時間ということを頭に置いて見ていただくということになる。
(3)内閣府からのヒアリング
- 伊藤委員
- 介護・保育のサテライト勘定の研究では、代替費用法のスペシャリストアプローチを使っているが、これが良いという判断か。
- 内閣府
- ここは分野が限られているので、平均賃金を使うのではなく職種ごとのデータをとった方が適当であろうということで使ったと理解している。3つの手法の中でこれが良いと判断し た訳ではないと思う。
- 古橋会長
- 推計手法を改善していくには、広く学者などの意見を聞いた方がいいと思う。当面、この推計の精度を上げるために大切な一次統計の充実というとどの部分か。
- 内閣府
- 介護・保育については、例えば投資額などはほとんどデータが存在しない。かなり幅広くいろいろなデータが欠けているので、特にここを改善すればという状況には遠い。
- 古橋会長
- 今後は、いつ推計する予定か。
- 内閣府
- 無償労働の貨幣評価に関しては、いろいろ問題があることと、集計手法としては単純に賃金に換算するだけなので、このような単純な形での換算の推計は現在のところ計画して いない。介護・保育は一度取り上げてみたもので、これを継続するというわけではない。サテライト勘定の研究の一環として研究を続けていく可能性はあるが、単純な換算値という 形では考えていない。
- 神田委員
- 70歳以上の人が介護をすると、機会費用法では下がってくるわけです。それは個人によって違うが、その辺りはどう考えているか。
- 内閣府
- もしその年代で低くなっているということであれば、そのまま評価額に反映される。
- 鹿嶋委員
- 無償労働に対する評価をどのようにするのが望ましいのか。どのように利用するかという結果の利用の仕方が大事だと思うが、その辺りはどう考えているか。
- 内閣府
- 我々は統計をつくる立場として、数字をできるだけ正確につくり、使い方はユーザーに考えていただきたいというのが基本的な考え方である。
- 伊藤(陽)委員
- カナダ、オーストラリア、イギリスあたりでは女性の就労や経済的自立を促進することを大前提に計算をして、保育支援とか企業がどうあるべきかという方向にいっている。これに 対して、日本社会はその辺についてあいまいなので、計算する側もはっきりしたスタンスをとれないのではないか。
- 安倍氏
- 労働の質が同じであれば報酬は同じであるという賃金体系を実施していくときに、日本の場合はいろいろな形で世帯主義の中で組み込まれているために、同じ労働をしたときも同 じに評価されないという部分がある。その関連でこの評価をきちんと出していかないと同一労働・同一報酬が実現しないのではないか。カナダやイギリス、オランダなどではそういう 取組がされている。
- 伊藤(陽)委員
- 貨幣評価は、やがていろいろ支援するための予算措置などにつながっていく可能性がある。女性が就労した場合に何がこれを代替するかという計算の中では、予算措置や自治 体・中央のバックアップをどうするかという議論がやがて出てこよう。そこでは時間だけではなく金銭換算が必要になってくるだろう。いろいろ批判もあろうが、継続していただきた い。
- 古橋会長
- 私どもとしてはこの推計は、男女共同参画の観点から大切だと思う。本当にできないのか、委託でできるのか、あるいは将来もう少しやれば非常にいい統計ができるという認識な のか、そのあたりの問題点が非常に重要になってくると思う。いろいろ議論してほしい。