第23回 苦情処理・監視専門調査会 議事要旨

(開催要領)

  • 日時:平成14年11月18日(木)午後2時00分~4時33分
  • 場所:内閣府 第3特別会議室

(出席者)

古橋
会長
伊藤(陽)
委員
鹿嶋
委員
桜井
委員
佐藤
委員
松下
委員
山口
委員
横田
委員

(議事次第)

  1. 開 会
  2. 平成14年度監視「情報の収集・整理・提供」
    • 利用者の立場からみた統計調査のあり方(有識者からのヒアリング)
      • 天野晴子氏(日本女子大学家政学部助教授)
      • 宮園久栄氏(東洋学園大学人文学部専任講師)
      • 大澤眞理氏(東京大学社会科学研究所教授)
  3. その他
  4. 閉 会

(概要)

利用者の立場からみた統計調査のあり方として、家計収支・貯蓄を中心に天野晴子氏、司法・犯罪を中心に宮園久栄氏、税・社会保障・雇用システムを中心に大澤眞理氏から、 それぞれ説明があり、これらに対する意見交換が行われた。また、佐藤委員から意見が提出され、これに対する意見交換が行われた。本審議での主な議論は以下のとおりであ る。

(1)天野晴子氏からのヒアリング

古橋会長
官庁統計の公表に望む点は何か。
天野氏
例えば「世帯主、配偶者、他の世帯員」の男女別区分というのは、原票では入っているので、公表していただきたい。
伊藤(陽)委員
「世帯主収入うち男」となっている場合、引き算をしたりして女性を取り出すことはできないのか。
天野氏
(「世帯主収入うち女」は引き算で取り出せるが、女世帯主の収入とは異なる)全世帯総数で割った値になる点に注意が必要。
山口委員
家計収支統計は、国連などの統計と合致するのか。
天野氏
日本の家計収支統計は、国際的に先進度をあらわせるデータだと思う。しかし、世帯主概念については、国連ではレファレンスパーソンにしようという動きが出ており、国 際的動向に照らしても、「世帯主」に固執する理由はないと思う。
松下委員
2002年から単身世帯の収支調査は家計調査に統合されるとなると、性区分等がわからなくなる可能性があるのではないか。
天野氏
調査が統合された結果、ジェンダー分析の統計表が貧しくならないと良いと思っている。

(2)宮園久栄氏からのヒアリング

桜井委員
アクセスの悪さ・制限の多さとはどういうことか。
宮園氏
例えば、DVなど暴力行為を行った加害者に対して刑務所内でどのような教育を行っているかどうか知りたくても、教えてもらえない。判決などにしても、調書などコピー ができない、大量に収集することには困難が伴うなどの制限がある。それらはプライバシーの観点からの制限とはいえ、一律に規制するのではなく目的やプライバシーに配慮した 公開方法などが検討されてもよいのではないか。白書などで性別の割合をもう少し出してもいいのではないかと思う。
古橋会長
国民の協力を得ないと、役所が意図する政策が実施できなくなってくる時代の中で、業務統計をもっと公表して、改善策を求め、予防的な措置についても皆で考えて いこうという姿勢が必要ではないか。この点は調査会の提言の材料になるという気がする。
宮園氏
犯罪を統制する側にとって都合のいい数字を用いて、例えば少年犯罪なども、取り締まる方向の論理に使うために数字が構築されてしまうという問題がある。全ての数 字が出ていないと、それを批判することがむずかしい。
鹿嶋委員
調査結果の報道が一種の国民への啓発になると思う。ただ、例えばDV被害が、夫によるものが傷害致死で、妻によるものは殺人となるケースが多いということにつ いては、単に調査結果の数字をそのまま受けとめて処理しているケースが多く、改めてジェンダー統計の観点が必要だと思った。
また、例えば、白書をつくる側も、毎年何かアクセントをつけていかないと、なかなか見てもらえないと思う。元データの開示というのは非常に大事だと思うし、研究者はそこから加 工すればいいが、一般国民を相手にすると、やはり元データの開示だけではなく、アクセントをつけることになる。しかし、調査の有益性には継続性というのがあり、それが途切れる というのはいかがなものかという感じがする。

(3)大澤眞理氏からのヒアリング

伊藤(陽)委員
統計局のアンペイドワーク統計研究会についてだが、貨幣評価をした経済企画庁の作業をどう受け止め、どう連携して動いているのか。
大澤氏
研究会としては、経済企画庁でおこなった無償労働の貨幣評価の結果や、その手法について、常時参照したのは確かである。社会生活基本調査に使うということで、あ くまで時間について無償労働の議論をしたが、基準としては第三者基準というのがあり、他人に代わってもらえることはアンペイドワークであるとした。しかし、それを機械的に当て はめると奇妙なことにもなるというような議論もあった。
古橋会長
アンペイドワークについて、外国での基準例はないのか。
大澤氏
第三者基準に関する英語論文が配られた。サービスとは何かに関して、一応国際的に認められた基準であるということだ。
古橋会長
北京行動綱領でも言われている以上、国連でも統一的な基準はないのか。
伊藤(陽)委員
国連統計部が生活時間に関して行動分類については基準案を出ている。特にEUが進んでいて、生活時間調査は国際的に広がりを見せている。しかし、これをど う貨幣評価していくかについては基準はないと思う。無償労働評価の作業で進んでいる国はカナダ、フインランド、オーストラリアで、国によってばらつきがある。

(4)佐藤委員からの意見に関する意見交換

古橋会長
業務統計に関する個票については、情報公開法と個人情報の保護に関する法律の2つを組み合わせて考えていけば、その開示をある程度求められるのではない か。
佐藤委員
個人を特定できない形で個票を出して欲しいとすれば良いのではないか。
古橋会長
情報を共有すれば、いろいろなところで政策提言ができるようになる。そういう意味において、統計データの一般の利用というのは非常に大きな時代的意義を持って いるのではないか。統計法上の制約はあるが、もう少し法令上の制約を分析して、必要なものについては規制緩和をするということが必要なのではないか。
佐藤委員
統計法を変えていくには相当時間がかかり、一歩一歩いろいろなところでやる必要がある。例えば、男女共同参画という観点での政策評価が課題であれば、そういう ことを提言していく。もう一つは、公開できるものが既にあるとすれば、例えば日本国民のジェンダー意識、男女における分業意識みたいなものがどう変わってきて、どこに問題が あるのかというのは分析できる。統計法でカバーされていない世論調査の個票データを公開することによって、有益な政策提言を積み重ねていくことで、統計法でカバーされてい る個票データについても提供することが有益だという議論もより主張できるのではないか。世論調査などはすぐにでも公開できるのではないか。
また、公開の事務手続がかかるということであれば、例えば外部のデータアーカイブに寄託すれば良いのではないか。アメリカなどは、基本的にはデータアーカイブに国のデータ が寄託されている。大学の研究者はそこにアクセスして入手する仕組みがある。
古橋会長
統計の公開、それを利用して政策提言をしていくことの意義は非常に大きいと思う。ここは1つの主題として考えていきたい。統計法と情報公開法との関係、個人情報 保護法案との関係をどういうふうに考えるか詰めていく必要がある。
伊藤(陽)委員
匿名化個票データの利用については、活用を推進する方向で問題提起して構わないと思う。しかし、総務省統計局は慎重である。それは、プライバシー保護意識 が社会全体に強く、匿名化個票データの利用によって国の統計調査への協力自体が崩れるのではないかという危惧を持っているからだと思う。この利用に向けての動きは部分的 にはあるが、全体的にみてガードが固い。
佐藤委員
一つは、個票公開とプライバシー保護とは両立し得るということの理解を進めることが大事である。もう一つは、特定の人しか集計できないとデータは歪曲される、つ まり、特定目的に見合った形で集計されるだけより、いろいろな形で集計されるほうが、実は国民一人ひとりが調査に答えた意味というのが生かされてくるということの理解を進め るということがすごく大事だと思う。
伊藤(陽)委員
外国では、手書きのメモでも公文書として確保されている。日本では、省庁再編等やある期間の後、資料類は廃棄処分となる。税金を使って調べた重要な資料類 がなくなるというのは問題である。