男女共同参画会議基本問題専門調査会

  • 日時: 平成21年6月5日(金) 15:00~17:00
  • 場所: 内閣府庁舎3階特別会議室

(開催要領)

  • 出席者
    会長
    羽入 佐和子 お茶の水女子大学学長
    会長代理
    鹿嶋 敬 実践女子大学教授
    委員
    石川 哲也 神戸大学大学院教授
    伊藤 公雄 京都大学大学院文学研究科教授
    岩井 宜子 専修大学大学院教授・副院長
    大熊 由紀子 国際医療福祉大学大学院教授
    帯野 久美子 株式会社インターアクト・ジャパン代表取締役
    加藤 さゆり 全国地域婦人団体連絡協議会事務局長
    河野 真理子 株式会社キャリアネットワーク代表取締役会長
    坂本 純子 特定非営利活動法人新座子育てネットワーク代表理事
    桜井 陽子 財団法人横浜市男女共同参画推進協会理事
    辻村 みよ子 東北大学大学院教授
    林 陽子 弁護士
    松井 忠三 株式会社良品計画代表取締役会長(兼)執行役員

(議事次第)

  1. 答申の方向性について
  2. 2次計画のフォローアップについて
  3. 自由討議

(配布資料)

資料1
答申の構成について(案) [PDF形式:139KB] 別ウインドウで開きます
資料2
男女共同参画推進の方向性(案) [PDF形式:155KB] 別ウインドウで開きます
資料3-1
2次計画のフォローアップの進め方について(案)[PDF形式:84KB] 別ウインドウで開きます
資料3-2
フォローアップの様式(案) [PDF形式:90KB] 別ウインドウで開きます

(議事の概要)

事務局より資料に沿って男女共同参画推進の方向性とフォローアップの進め方についての説明後、答申の方向性、重点事項、推進体制等について議論を行った。

○意見交換の概要

【基本理念、視点について】

  • 方向性として貧困の問題、社会福祉の問題を取り入れるべき。
  • 基本理念の中で、男女共同参画は女性だけでなく男性の問題でもあるというジェンダーの問題として提案していくべき。男性高齢者の貧困問題、自殺者に男性が多いことや、先進国で問題になっている男児の学力低下など、男性や男児に目配りをしていくことが重要。
  • 基本理念として、男女共同参画には女性の指導的地位に占める割合を高めるという女性のための局面と、様々な役割分業を変革して、男女のための新しい社会改革をするという意味があると思うが、後者についても重視すべきと感じる。
  • 社会的に弱い立場にある女性に対する支援についても言及すべき。「女性」といってもそれぞれ違う問題を抱えており、それぞれの問題に対して異なった対処をする必要がある。ジェンダーの中での弱者である女性と、その中でもさらに弱い立場にある女性への支援という視点をもっとクリアにすべき。セクシュアル・マイノリティの問題もこの議論の中に含まれるのではないか。
  • 国際基準を日本の国内にどう取り込むかだけではなく、開発援助の問題をどうとらえるのか、世界の平和構築、経済発展の中で女性が果たす役割とは何かという視点も必要。
  • 男女共同参画を実現することで、どんな明るい未来があるのかを示さないと共感を得られない。夢が実現されたら会社や職場や家庭等社会がこう変わるという夢の部分を出すべき。
  • 男女共同参画社会の姿を示すことも重要で欠かせないが、基本的なこととして男女共同参画の推進は「セカンド・ステージ」に入ったということを念頭において議論していく必要がある。我々の身近な問題を解決していくツールとして共同参画があるということを認識してもらうためにも、「男女共同参画」というキーワード抜きには多くの問題が解決しないということを改めて基本計画の中で浮かび上がらせることが必要。
  • セカンド・ステージという観点と、国際社会が動く中で日本の男女共同参画をどう進めるかということを意識しながら検討していきたい。

【重点事項について】

  • 男性の問題は、理念としてはあらゆる分野に関わるものであるが、国民に重点項目の最重要課題であると明確にするためにも、特出しすべきでは。
  • 男性にとっての男女共同参画は付け足しのように示されるものではなく、もっと重要なものとして位置づけられるべき。
  • 企業においても海外では女性が活躍しており、店の幹部も女性がほとんどだが、日本では女性の幹部が少なく特殊な状況。終身雇用や年功序列などの制度の中で、男性を中心に教育してきたためではないかと思う。働き方を変革し、男性の意識を改革して会社を改善していくためにも、男性を特出しすることには賛成。
  • 男女共同参画の視点からの防災の取組は面としての広がりはまだまだで、3次でも特出しすべき。子どもの相対的な貧困率が上がっているという現状や、男女共同参画を進める中で子どもが置いてきぼりになるのではという不安を持つ人もいるのではいか。総合的な視点から子どもの問題にも焦点をあてるべき。
  • 「女性のライフコースに沿ったエンパワーメント」は重要。女性のニートをふやさないためにも、子どもの問題を取り上げることが必要。また高齢女性の問題も、「生活困難」よりは「ライフコース」の枠組みに入れる方が積極的で前向きなイメージになる。
  • 現計画策定後の社会情勢の変化として、地域格差がますます大きくなっている。重点事項の中に女性による産業、地域経済の活性化という視点が必要。観光の分野では、その消費者、提供者には女性が増えているにもかかわらず観光の戦略を書くのは男性であるという状況。観光含め第三次産業の分野や新たな産業分野で、女性がもっと活躍していけるようにしていかなければいけないし、そうしなければ日本経済の活性化、持続ある日本の活力は維持できない。
  • 「2020年までに30%」は第1分野の話だけではなく、すべてに関係するもの。また、行政分野だけでなく企業における方針決定過程の問題も当然含まれる。同様に、ポジティブ・アクションの概念は、政策・方針決定過程における女性の参画割合を増やすことだけではなく、ワーク・ライフ・バランスや教育、社会保障などとも関わるものである。現在の組み方では誤解を与えるかもしれない。
  • 新たな分野(12分野)で防災や観光などを取り上げたのは、地方自治体にも刺激になってよかった。しかし、防災や観光分野はまだ動きが遅く、重点分野としてそのまま残したほうがいいのか、それとも意思決定などの各分野に入れ込んだほうがいいのかは、構成の問題として議論すべき。
  • 政策・方針決定過程とエンパワーメントで一つ、それから、男性にとっての男女共同参画とワーク・ライフ・バランスで一つのまとまりにできそうだが、まとめるとアピール力が低くなる。
  • 女性の学術分野への進出に焦点をあてるべき。女性が研究者になる機会を増やし、能力のある人が海外に流出するのを回避することが日本の学術分野の発展のためにも必要。
  • スポーツの分野では、女性選手は活躍しているが、指導者や、組織を動かしているのは男性という現状がある。女性の健康やスポーツの分野含め、様々な分野への進出を確保するためにも、学術分野における女性のポストの確保を課題の一つに掲げるべき。
  • WHOでも取り組まれているように、健康のための個人の行動を重視し、行政がそれをサポートするシステムが有用。計画にも健康に向けた個人の行動指針や方向性等を書き込むことが望ましい。
  • メディアの問題、男女共同参画についての情報の周知の問題についても特出ししては。
  • 考えるプロセスとしてどういう体系化をするかということと、訴えるためにどういうキーワードを使うかという両方で考えていく必要がある。
  • 報告、答申の取りまとめに当たっては、一般の人に誤解されないようなわかりやすい形にしていくべき。

【推進体制について】

  • 国と地方との連携だけではなく、国の各省庁間の連携が遅れているのではないか。
  • 「国と地方の推進体制の整備充実」には、まちづくりと地域おこしを入れておくべき。
  • 推進体制の「地方公共団体、企業、大学、NPO、男女共同参画センター等との連携・強化」について、企業や政党、政治団体、大学等における社会的責任をもっと具体的に記載すべき。自らが男女共同参画に主体的な責任を感じてもらえるようにすべきではないか。
  • 企業推進体制についてCSRでとどめるのではなく、企業がイノベーションをおこすための手段としてのダイバーシティで、そのうちの一つに女性がいるというビジョンを示す必要がある。
  • 企業等の責務としての男女共同参画の推進、連携の強化という視点も重要だが、男女共同参画をツールとしてどういう新しい創造ができるのかと広げて考えることも可能なのではないか。「多様な主体によるネットワーク化」だけでなく、議論や情報交換、グッドプラクティスの共有などによりフィードバックできるような推進体制づくりが必要。
  • 近年、企業に生産性という概念が入ってきて、効率性を追及するようになってから、限られた時間の中で効率よく仕事を済ませる女性の働き方に注目する動きが出てきている。「実態が意識を変えていく」という構造に今なってきており、経済団体などに、こういった視点でアプローチを行っていくことが重要。
  • 今の監視・影響システムが十分に機能しているのか。十分でなければ見直していくべき。起きている問題にリアルタイムで調査会が対応していくべき。内閣府の中の連携や各省の連携について、検証していくことが重要である。
  • 苦情処理のあり方及び体制を検討すべき。自治体ではほとんど機能していないという状況。大学や高校などでセクハラ相談室などを作っても機能していない。苦情処理を訴えた人が救われないという現状を打破するためにも、苦情処理や監視・影響調査の強化をすべき。
  • 女子差別撤廃委員会からの勧告は、計画に活かされるべきだと思う。7月に行われる報告審査結果などは、マスコミに積極的に取り上げてもらえるよう対応すべき。
  • 国連では全体としてジェンダー主流化(ジェンダー・メインストリーミング)の考えが浸透しており、男女共同参画の問題は女子差別撤廃委員会だけのテーマではなくなりつつある。選択議定書についての動きがより現実的なものになっていければよいと思う。
  • ポジティブ・アクション、アファーマティブ・アクションという言葉を使用すべきかどうか。国連ではそうした言葉はあまり使われなくなってきている。テンポラリー・スペシャル・メジャーズ(暫定的特別措置)という言葉を使うべきかどうか検討すべきである。
  • メディアとのコミュニケーションが不足している。日常的にメディアとのコミュニケーションを実現させていくべき。

【フォローアップについて】

  • フォローアップの際には、各省庁横並びで設定するのではなく、厚労省や文科省で時間を割くなど強弱をつけてやってほしい。
  • フォローアップで検証した後に、改めて12分野に含まれている事項を特出すべきかどうか考えてはどうか。
  • フォローアップの仕方について、国だけのヒアリングではなく、地方公共団体や企業、大学などの取組についても、状況の確認やヒアリングの機会を設けるなどしてどの程度、男女共同参画が浸透しているかを把握する必要があるのではないか。

(以上)