男女共同参画会議基本問題専門調査会

  • 日時: 平成13年6月29日(金) 17:00~19:00
  • 場所: 内閣府3階特別会議室

(開催要旨)

  • 出席者
    会長
    岩男 壽美子 武蔵工業大学教授
    会長代理
    八代 尚宏 (社)日本経済研究センター理事長
    委員
    伊藤 公雄 大阪大学教授
    住田 裕子 弁護士
    高橋 和之 東京大学教授
    竹信 三恵子 朝日新聞企画報道室記者
    寺尾 美子 東京大学教授
    樋口 恵子 東京家政大学教授
    古橋 源六郎 (財)ソルトサイエンス研究財団理事長
    松田 保彦 帝京大学教授
    山口 みつ子 (財)市川房枝記念会常務理事

(議事次第)

  1. 開会
  2. 男女共同参画と男女平等概念について(内閣府) 
  3. 自由討議
  4. 選択的夫婦別氏制について(内閣府、総務省)
  5. 自由討議
  6. その他
  7. 閉会

(配布資料)

資料1-1
男女共同参画と男女平等概念について
資料1-2
男女共同参画と男女平等概念について(資料編)
資料2
選択的夫婦別氏制について
資料3
参考資料(法務省作成)
  • 民法の一部を改正する法律案要綱(平成8年2月26日法制審議会総会決定)
  • 選択的夫婦別氏制度の導入に対する賛否の概要
資料4
住民票の運用状況、旧姓使用について(総務省作成)

○「男女共同参画と男女平等概念について」

内閣府から「男女共同参画と男女平等概念について」説明が行われ、質疑応答、自由討議が行われた。

高橋委員
法の下の平等について一番重要なのは、機会の平等の問題だと思う。ポジティブ・アクションとの関連では、機会の平等の実質化というコンテキストでとらえていくことになると思われる。結果の平等というのは憲法上認められていないから、諸外国の議論をみていると、ポジティブ・アクションが結果の平等につながるような場合には、恐らくそこに限界があるのだろうと思っている。そこの線引きをつきつめていくと、結果の平等になる場合はだめということになるのだろうが、結果の不平等が存在している場合は、機会の不平等が存在するのではないかということを推知させる、そういう根拠として使うこと自体は否定されていない。結果の不平等が現に存在する場合には機会の平等の実質化をやらなければいけないという議論になるというのが、基本的な考え方であろうと思う。
松田委員
実質的にこれが平等であるというのはないと思われる。2人の人間が全く同じということはないので、平等というのは一種のベクトルみたいなもので、そちらに向けて努力するものである。差別をしないという方からアプローチすべきだ。結果の平等というのは現実になり得ない概念ということなので、機会の平等が現実性を持ったということだと思う。
伊藤委員
実質的な平等というのは何かというのを女子差別撤廃条約を踏まえて定義した上で、これを使っていくのが一番すっきりした方法ではないかと思う。
樋口委員
平成8年7月に出された男女共同参画ビジョンで「真の平等」という言葉を使っているが、「真の平等」というのは、主観的な価値判断が出てくるので、概念定義ができるような形で整理して「真の平等」という言葉を使わずに説明するようにした方がよいのではないか。
寺尾委員
男性と女性は生物学的に違うところがあるので、それを同じように扱うには実質的な平等を考えなければいけないといわれてきたが、しかし実際はニュートラルに機能しなかったりして、問題になっている。「真の平等」というのは、理想的という意味であり、実質的平等とは違う概念であると思う。
古橋委員
実質的平等と事実上の平等と法令上の平等と形式的な平等というの概念の違いを説明しやすいように文書にしていただけたらよいと思う。

○「選択的夫婦別氏制について」

内閣府及び総務省から「選択的夫婦別氏制について」説明が行われ、質疑応答、自由討議が行われた。

竹信委員
旧姓がどこまで使えるのかというのを確定して、それによってどこまで解決できるのかをはっきりさせる必要がある。旧姓使用では解決できず、選択的夫婦別氏制も導入できないとなると、困っている人は事実婚を選んで、その場合子供は婚外子になるので婚外子差別を撤廃する必要がある。それでも救われない人がでてくるのであれば、選択的夫婦別氏制をするしかない。
旧姓使用を拡大していくという方向で進むのであれば、スケジュールを決めて必ず何年から選択的夫婦別氏制をやるので、そのための試運転期間としてやるという形で説得し、不備がでてきたらそれに対応して考えていくという解決案しかないと思う。
山口委員
法制審議会の選択的夫婦別氏制を含む答申が出たときの女性団体の反応は、選択的ということなので、賛成だという意見がほとんどで、日本では個人が確立されていないというところに問題があるという理解が一般的な女性団体側の考え方である。
民法改正の選択的夫婦別氏制の方向性を出すということは、基本問題専門調査会の目玉になると思う。なぜ選択的夫婦別氏制が必要なのかということを明確にうちだして、説得的な理論付けをしていけばよい。
八代会長代理
選択的夫婦別氏制の問題を世論調査の結果と結びつけるのは危険なことであり、そもそもこれは規制緩和の問題だと考えている。大部分の人には影響がない、一部の困っている人の問題であって、それを他の人が容認するかしないかの問題である。
寺尾委員
前回の世論調査では選択的ということが徹底されておらず、誤解があった。
今の若い女性の多くは、結婚後は夫の姓を名乗ると言っていることから、選択的夫婦別氏制の導入を危惧している人達にも、大丈夫であることを伝えてはどうか。また、少子化は困るので、同氏制が婚姻の阻害要因となっておりその対策として選択的夫婦別氏制の導入があるという、アプローチで攻めていくのはよいのではないか。
樋口委員
選択的夫婦別氏制というのは、規制緩和の一つであるということを徹底する方向性を出すことと、旧姓使用については、国家資格等においては実際にどのような状況でどんな不便・不利益を被っているかという事実を洗い出して積み重ねる必要がある。
古橋委員
この会議では、選択的夫婦別氏制についてどの程度議論をしてどのようなタイミングで結論を出すかということとを決めることと、選択的夫婦別氏制についてのあるべき考え方を出すための説得的な資料として、外国で選択的夫婦別氏制が導入されるに至った社会的な背景、動きを調べると同時に、それと同じような動きが日本の社会においても家族の中においてもあるということを証明することが必要である。また、規制緩和ということも一つである。これらをもって、あるべき方向を言っていくのであろう。また、選択的夫婦別氏制と家族のきずなというのは全く関係ないというところをはっきり言っていく必要がある。
一方で、具体的戦略論として、民法改正でいくのか、戸籍法の中に呼称を書かせるという戸籍法だけの改正でいくのかというようなことも考えていく必要がある。
住田委員
とりあえず、民法改正による選択的夫婦別氏制導入までの経過措置としての不便の解消として通称とか戸籍法だけの改正というような案もあり、それについては否定はしないが、どこかで無理が生じるということは間違いないと思う。 選択的夫婦別氏制については、この専門調査会での目玉とはなると思うが、女性が家の中に従属する意識を持たせるというのが夫婦同氏制度の中に包含されており、この観点からの反発を克服していくのはなかなか難しい。
世論調査については、若い層では選択的夫婦別氏制に賛成する方が多くなっていることから、若い層の数字に重きを置くことによって、大きな後押しとなると思う。
伊藤委員
選択的夫婦別氏制については、以前であれば出た段階で激しい反論があったが、今は比較的反応が弱い。世論調査については、選択的であるということをきちんとした形でアピールしていくことや、調査の仕方について公正を期す形で調査するということを徹底すれば、選択的夫婦別氏制に賛成する方は多いと思う。また、この問題は、家族というのは何なのかというのを考えてもらうという意味合いでもアピールしていくことが必要ではないか。
岩男会長
マスコミの方の関心も、選択的夫婦別氏制にあるようである。また、森山法務大臣からも、男女共同参画会議の場で、男女共同参画会議の専門調査会として、自由に関心の高い問題について議論ができる場であるから、もっと積極的に自由に議論をもっと早いペースでなさったらどうかという御意見があった。

(以上)