男女共同参画会議基本問題専門調査会

  • 日時: 平成16年2月25日(水) 13:00~15:00
  • 場所: 内閣府5階特別会議室

(開催要旨)

  • 出席者
    会長
    岩男 壽美子 武蔵工業大学教授
    委員
    北村 節子 読売新聞社調査研究本部主任研究員
    住田 裕子 弁護士
    高橋 和之 東京大学教授
    竹信 三恵子 朝日新聞企画報道部記者
    寺尾 美子 東京大学教授
    古橋 源六郎 (財)ソルトサイエンス研究財団理事長
    山口 みつ子 (財)市川房枝記念会常務理事

(議事次第)

  1. 開会
  2. 女性のチャレンジ支援策の実施状況について
  3. 男女共同参画と少子化問題について
  4. 「男女共同参画社会の将来像検討会」における検討状況について
  5. 閉会

(配布資料)

資料1-1
女性のチャレンジ支援策の推進について(男女共同参画推進本部決定) [PDF形式:14KB] 別ウインドウで開きます
資料1-2
国の審議会等における女性委員の参画状況について(参考) [PDF形式:14KB] 別ウインドウで開きます
資料1-3
ポジティブ・アクション研究会について  [PDF形式:5KB] 別ウインドウで開きます
資料1-4
チャレンジ支援ネットワーク検討会について [PDF形式:16KB] 別ウインドウで開きます
資料1-5
女性のチャレンジ支援ネットワーク環境整備に関するアンケート結果報告(第4回チャレンジ支援ネットワーク検討会配布資料)
資料1-6
チャレンジ支援ネットワーク検討会報告書骨子案及び具体的な論点 [PDF形式:357KB] 別ウインドウで開きます
資料1-7
チャレンジ・キャンペーン実施状況等
資料2-1
少子化に関する最近の動きについて [PDF形式:93KB] 別ウインドウで開きます
資料2-2
男女共同参画と少子化(最近の分析の動き)  [PDF形式:711KB] 別ウインドウで開きます
資料2-3
女性のチャレンジ支援策について(抜粋) [PDF形式:9KB] 別ウインドウで開きます
資料2-4-1
仕事と子育ての両立支援策の方針について [PDF形式:15KB] 別ウインドウで開きます
資料2-4-2
仕事と子育ての両立支援策について
資料2-5
政府が実施する男女共同参画社会の形成の促進に関する施策の実施状況の監視に関する調査検討結果について(平成13年度)
資料3-1
男女共同参画社会の将来像について(報告書骨子案)  [PDF形式:73KB] 別ウインドウで開きます
資料3-2
男女共同参画社会の将来像検討会について [PDF形式:10KB] 別ウインドウで開きます
岩男会長
ただいまから「男女共同参画会議基本問題専門調査会」の第23回会合を開催させていただきます。皆様大変お忙しい中御参集いただきましてありがとうございます。
 議事に入らせていただく前に、内閣府の森元政務官においでいただいておりますので、森本政務官、それから佐藤内閣府審議官から一言ごあいさつをいただくことにしたいと思います。また今年度初めての開催でございますので、名取局長を始め事務局からもごあいさつをお願いいたします。それでは、政務官、よろしくお願いいたします。
森元政務官
御紹介いただきました政務官の森元でございます。私も、旧自治省におりまして、地方に出ておりましたときには、男女共同参画の問題を直接担当させていただいたりして、地方での女性の登用にいろいろ頭を悩ませてきました。特に、地方では社会的に活動しておられる女性の方々が少ないものですから、登用するとしても、なかなか適任者がいないという悩みがございました。そういう経験をしてまいりましたけれども、今日は、折角の機会でございますので、先生方のいろいろな御意見をいただきまして、政策にいろいろな形で反映できるように一生懸命勉強させていただきたいという思いでまいりました。よろしくお願いいたします。
佐藤内閣府審議官
1月6日に内閣府審議官に着任しました佐藤でございます。男女共同参画の問題は、以前、法律制定のとき等にいろいろ担当いたしましたが、大分離れておりましたので、久しぶりでございますが、ひとつよろしくお願いいたします。
名取局長
昨年8月に着任いたしました男女共同参画局長の名取でございます。この基本問題専門調査会は初めてでございまして、どうぞよろしくお願いいたします。
土肥原審議官
官房審議官の土肥原でございます。昨年7月からこちらの局の担当ということになりました。どうぞよろしくお願いいたします。
山崎総務課長
総務課長の山崎でございます。昨年4月1日からこちらに参りました。よろしくお願いいたします。
久保推進課長
推進課長をしております久保でございます。昨年8月にこちらに参りました。よろしくお願いします。
岩男会長
ありがとうございました。本日は、最初の議題として、昨年4月の男女共同参画会議において意見決定がなされました「女性のチャレンジ支援策」について報告の後、報告後の進捗状況を御報告いただきたいと思います。それではまず、事務局から御報告をお願いいたします。
山崎総務課長
承知いたしました。お手元の資料1-1と1-2を中心に御説明申し上げます。
 昨年4月8日に「女性のチャレンジ支援策の推進に向けた意見」が決定されたわけでございますが、その後、政府といたしましても、この問題、しっかりやっていかないといけないということで、6月20日、男女共同参画推進本部を開催いたしまして、この「女性のチャレンジ支援策の推進について」の決定を行っております。
 意見でいただいた文言、1の4行目ぐらいでございますが、「社会のあらゆる分野において、2020年までに、指導的地位に女性が占める割合が、少なくとも30%程度になるよう期待する。そのため、政府は、民間に先行して積極的に女性の登用等に取り組むとともに、各分野においてそれぞれ目標数値と達成期限を定めた自主的な取組が進められることを奨励する。」。また、2といたしまして、「チャレンジ支援のためのネットワーク形成の重要性」について決定を行ったわけでございます。
 そしてその後、1枚おめくりいただきますと、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2003」いわゆる骨太の方針2003が6月27日に閣議決定されたわけでございますけれども、その中で、一番下でございますけれども、「男女共同参画社会の実現を目指して、指導的地位に女性が占める割合が2020年までに少なくとも30%程度になるよう期待し、平成15年度においては、関連情報のワンストップ・サービス化、ネットワーク化など女性のチャレンジ支援策に取り組む」ということで、このチャレンジ支援の推進が政府全体の決定ということになったわけでございます。
 また、この参画の1つの重要な分野で、昭和52年からやっております国の審議会等における女性委員の参画状況ですけれども、これはお手元の資料1-2をご覧いただきますと、2の調査結果ということで、平成15年9月30日の調査結果を書いてございますけれども、国の審議会等において女性委員が占める割合は26.8%、目標30%に対しまして26.8%まで来たということになっております。これを受けて、官房長官から、この30%の目標が間近に迫っているので、関係省庁それぞれ具体的な数値目標を立てさせてしっかりやるようにという御指示がございまして、そういうことで関係省庁とやっているところでございます。これ以外にも、官房長官は、この2020年までに30%という目標の重要性につきまして、いろいろな場で決意表明とPRをされているところです。
 また、その他の動きとして、日本経団連等の経済団体に対しましても、男女共同参画局長が訪問し、女性の登用の拡大について要請をしたところでございます。また、同じ女性のチャレンジ支援策の中に御提案がございました女性のチャレンジ賞につきましては、予算要求を行いまして、内示を得、来年度、全国大会に合わせて6月を目途にしておりますけれども、チャレンジ賞を与えようということで準備をしていくこととしております。私の方からは以上でございます。
岩男会長
ありがとうございました。次に、ポジティブ・アクション研究会座長でいらっしゃる高橋委員から検討状況の御報告をお願いいたします。
高橋委員
ただいまお話のありましたボジティブ・アクション研究会についてですが、この研究会は雇用以外の分野をも含めて我が国におけるボジティブ・アクションの具体的措置の導入について総合的に調査研究を行うために、男女共同参画局長の私的懇談会として設置されているものでございます。私が座長を務めておりますけれども、現在、資料1-3にちょっと書いてございますが、3回ほど研究会を開催いたしまして、諸外国におけるポジティブ・アクションについての取組を踏まえつつ行政分野を中心に我が国におけるボジティブ・アクションの実効性ある措置の具体化について検討しているところでございます。今後は、政治分野など、行政以外の分野におけるボジティブ・アクションを中心に議論を行っていき、平成16年度中にとりまとめを行いたいと思っております。以上でございます。
岩男会長
ありがとうございました。次に、チャレンジ・キャンペーン等について事務局から御報告をお願いいたします。
久保推進課長
それでは、チャレンジ・キャンペーンの実施状況につきまして、御説明させていただきます。資料の1-7を御覧いただければと思います。これは、女性のチャレンジ支援について御提言いただきましてから、平成15年度に、「チャレンジ支援キャラバン隊」として、大学生や就職指導の担当者を対象にするキャンペーン、それから男女共同参画フォーラム、知事リレーフォーラム、副知事サミット、それから地方公共団体独自のものといろいろなところで女性のチャレンジ支援という形でキャンペーンをしているところでございます。まだ、未集計ではございますけれども、ここに載っているものだけで大体1万人以上の参加者をいただいているところでございます。
 このほかに、男女共同参画宣言都市事業もございますし、それから、地方公共団体主催事業は、ある意味で私どもと連携して行った事業でございますけれども、地方公共団体単独の事業もございますので、それを合せますと、もう少し大きな広がりがあろうかと思っております。皆様方にも、講師などで随分と御協力いただきまして、本当にありがとうございました。この場を借りまして御礼申し上げたいと思います。
 それから、ここに資料は付けてございませんけれども、来年度でございます。来年度には、このようなイベントも勿論やってまいりたいと思っておりますけれども、併せまして、予算要求を行い、地方公共団体と連携して、実際にチャレンジ・ネットワークを各地域につくっていく事業をしたいと思っております。今のところ予定しておりますのが大体4件程度で、各都道府県・政令指定都市を単位としてネットワークづくりを進めていきたいと思っております。
 それから、参考を御覧いただければと思いますけれども、提言を受けましてから、内閣府でも、「チャレンジ・サイト」をつくっております。これは国のネットワークでございますので、具体的な事業を書いているというよりも、いろいろな機関を御紹介するようなネットワークでございます。これだけですと、なかなかイメージが湧かないという御指摘もございましたので、参考の3ページ目に少し事例を付けておりますけれども、このような形で事例を加えていきたいと思っています。さまざまな分野で女性がチャレンジをしていることを、こういった形で皆様にお知らせすることを続けていきたいと思っております。以上でございます。
岩男会長
ありがとうございました。それでは、次の議題の「男女共同参画と少子化問題について」に移らせていただきます。趣旨について、事務局から御説明をお願いいたします。
山崎総務課長
少子化に関しましては、さまざまな議論が行われておりまして、特に、最近では、少子化社会対策基本法が昨年9月に施行されております。男女共同参画とも関連する点があるものでございますので、この少子化と男女共同参画をめぐる論点等について自由に御議論していただければというのが趣旨でございます。
 最初に私の方から少子化に関する最近の動きについてということで資料の2-1に基づいて御説明いたしますと、今も申しましたように、15年9月、少子化社会対策基本法が施行されまして、少子化社会対策大綱の策定、少子化社会対策会議の設置等が定められたわけでございます。その後、同じく9月でございますが、少子化社会対策会議が開催されまして、「少子化社会対策大綱の基本方針等について」で、16年5月を目途に大綱の案の作成を行うこと、大綱案を作成するために会長が指名する委員及び有識者による検討会を開催することが決定されました。具体的なメンバーについては、この資料のとおりでございます。
 その後、15年11月、16年1月と、今まで2回、少子化社会対策大綱検討会が開催されまして、本年5月を目途に今、議論していると聞いております。
 その検討会で出されている論点でございますけれども、次の2に書いてございますように、実際はかなり膨大な議事録でございますけれども、関連する部分を抜き出してみますと、仕事と子育ての両立支援につきましては、保育サービス等の充実、待機児童を現実にゼロとする目標時期を明示すべきといった御意見、そして、職場環境の整備、男性を含めた働き方の見直しという観点からは、男女ともに仕事と家庭生活の両立を無理なくできる職場環境の整備が必要といった御意見とか、女性の就労継続支援、専業主婦の社会参画支援が必要、あるいは女性が職業的選択の不本意な変更がなく、出産・育児を選択できる社会の整備が必要、また、男性の子育て参加の促進、役割分担意識の改革が必要、パパクォーター制を設けるべき、といった御意見が出されております。その他、子育てを社会全体で応援すること、子育ての社会化への転換が必要ではないかといった御意見が出されているところでございます。
 資料2-2でございますが、これは男女共同参画局でとりまとめたものでございます。次に推進官の方からこれにつきまして御説明いたします。
高安推進官
推進官の高安でございます。よろしくお願いします。
 私から、男女共同参画と少子化ということで、男女共同参画の視点から、少子化に対して何をなすべきかという問いに対しまして、最近の分析結果から得られたインプリケーションを御説明したいと思います。得られたインプリケーションを先に示しておきますと、育児と仕事の両立支援を行えば、男女共同参画と少子化対策は、両立可能であるというインプリケーションを、資料の2-2を使いまして、御説明していきたいと思っております。
 まず第一部といたしまして、1ページをおめくりいただきたいのですが、「少子化の基本的知識」ということで、簡単に少子化がどのような形になっているかを御説明したいと思います。次の2ページ目をおめくりください。こちらに線グラフがあるわけですが、これは皆様いたるところで見ているかと思いますが、合計特殊出生率を示しておりまして、戦後直後は4を超えていたものが昭和20年代に急速に低下しまして、昭和50年代以降もゆるやかに低下したことで現在は1.3 まで落ち込んでいるというおなじみのグラフでございます。
 次のページをおめくりいただきたいのですが、1975年から2000年までの25年間に我が国の出生数は減っているのはどのような要因によるものかを、人口研で分析したものです。
 要因は、大きく3つに分かれまして、1つ目は年齢構造要因、2つ目は結婚変容効果、3つ目が夫婦出生ペース、と言われております。75年から現段階を比べますと、すべてがマイナスに働いています。年齢構造効果とは、出生する確率の高い女性の人口が減っている効果でございまして、この数が減っていることで出生数が減っているということでございます。これは一番上に3つほどグラフが重なっていると思うのですが、一番上のところでございます。次は、結婚変容効果と書いてあるところですが、これは晩婚化、特に最近は非婚化が進んでいることにより、大きくマイナスに寄与しているということでございます。一番下の部分ですが、夫婦出生ペース、これもマイナスに働いておりまして、これは出産を先送りすることで持つ子どもの数が最近減少していることで、こちらもマイナスに寄与しているわけでございます。
 少子化対策としましては、一番上の年齢構造効果のところはなかなか何も出来ないわけなのですが、下の2つの部分、つまり、非婚化・晩婚化、出生ペースに対して施策として何ができるかを考えることが少子化対策にほかならないということでございます。
 次のページから第2部に入ります。第2部といたしまして、女性の就業率と出生率の関係について説明したいと思います。第2部では、女性の就業率と出生率の相関関係を時系列で見ると、負から正の方向、昔は両立できないという結果も見られたのですが、最近のデータからは、きちんと両立できるという方向に向かっていること、それから、その負から正に転じている、両立できるようになった背景として、仕事と子育ての両立が可能になったことが大きかったこと、この2点を述べたいと思います。
 5ページ目を御覧ください。47都道府県のクロスセクション・データで、女性の労働力率と出生率の間にどのような相関関係があるかを調べたものでございまして、これはそういう論文がございます。その結果、2000年と1995年を見ましても、この相関関係は有意に正であると、ですから、女性労働力率と出生率との因果関係は別といたしまして、両方ともプラスの方向に行き得るというような結果が出ております。6ページ目を御覧いただきたいのですが、先ほどのものは単回帰と申しまして、説明変数を1つでやっている分析ですが、こちらは、過去の研究で少子化に関係が深いと想定された8つほどを選択いたしまして、その8つを説明変数として少子化、合計特殊出生率を説明するモデルでの分析を行った論文もございます。その結果を見ましても、一番下に女性の労働力率という項目があるわけですが、これは、正の相関関係を持っていまして、かつ統計的にも有意という結果が出ております。
 次にOECD諸国の例を見たいと思います。次の7ページ目でございます。2000年の数字ですが、OECD諸国20数か国でこのデータをプロットして、その相関関係を見ますと、出生率と女性の労働力率は、正の相関関係が見えるということでございます。
 ただし、この相関関係はOECD諸国で見ると、昔からあったわけではなく、1970年代はむしろマイナスの相関関係が見られたというのは、次の8ページ目にデータが載っております。ただし、このデータを見ていただきますと、図が3つ並んでいますが、左から右に向けて相関関係がマイナスからプラスに転じていることを読み取っていただけるかと思います。
 ということで、基本的にOECD諸国のクロスセクションデータで見ますと、年を経るごとに両者の関係は正の相関に転じていることが言えるかと思います。それを更に詳しく毎年のデータで見たのが、9ページ目でございます。これを見ましても、60、70年代は、明らかな負の相関が見られたのですが、80年代を境に大きく正の相関に転じたと言えます。90年代以降は、もう完全な正の相関ということで安定しておりまして、女性就業率と出生率は両方ともプラスの相関関係を持っていることが、このクロスセクションデータからも言えるかと思います。
 ただし、この9ページ目のデータには、1点反論がございまして、これは次の10ページ目でございますが、各国のデータを、このクロスセクションデータというのはある年を切りまして、その年における各国のデータ間で相関関係を取ったわけですが、この各国のデータを時系列で見ると、必ずしも正の相関に転じたとは言えないとした反論の論文もございます。しかし、その論文を見ましても、70年代の負の相関は90年代に弱く、または全く確認できなくなっていることを言っておりまして、結果的にこれまでのOECD諸国における分析を総合して見ますと、少なくとも昔は負の相関だったものが正の相関、あるいは負の相関がだんだん弱くなっているという方向に向かっていることは確かだと言えるかと思います。
 次のページですが、これがどうしてそういうことが起こったのかということでございます。これにつきましては、いろいろな論文が、この正の相関になった理由について論じておりまして、内容を御紹介しますと、やはり子育て支援サービスが導入されると、女性労働力率と出生率が正の相関になるということを言っている論文もございますし、あと同じことですが、子育てサービスの充実など制度面での変化を背景に仕事と子育ての両立が可能となったことを要因として、負の関係が弱くなったと。端的に申し上げますと、就業と子育ての両立ができるようになって初めて女性労働力率と出生率が正の相関になったという結論を導いている論文が多くあるということでございます。
 第3部では、仕事と子育ての両立支援により、男女共同参画と出生率の上昇と言いますか、下げ止まりと言いますか、これが両立可能である点につきまして、我が国のデータを利用して説明したいと思っております。
 13ページ目ですが、これからの議論の考え方の整理ということで、簡単に示しているわけですが、女性の労働力率の高まりや賃金の上昇というのは、理論的には出生率にプラスとマイナスの影響を与えるということでございます。
 第1の効果といたしましては、出生率を高める効果ことでございまして、これは端的に申し上げますと、女性が働きに出るまたは女性の賃金が高まる場合、世帯の可処分所得が増加するわけでございます。世帯の可処分所得が増加すれば、所得上の制約から理想の子ども数以下であきらめていた世帯で子どもが増加するということが考えられるわけでございまして、これは後ほど数字を使って御説明させていただきます。これが出生率を高める効果でございまして。便宜的にここでは所得効果とさせていただきます。
 次に出生率を低める効果もございまして、これは例えば出産によって、ここが非常に重要なのですが、退職あるいはキャリアの一時中断を余儀なくされるならば、継続就業した場合に得られると考えられる所得を失うこととなると。要は、出産するとかなり高い確率で、企業の雰囲気その他もろもろの要因で退職に追い込まれてしまう場合には、機会費用が高まることがあり得ると言えるということでございます。これは出産による機会費用と言われているものでございます。両立支援が十分でないと、女性が働きに出たり、賃金が上昇したりすると、出産による機会費用が高まり、子どもをあきらめるケースが増えてしまうことも考えられるということでございます。
 ただ、この機会費用が発生するか否かにつきましては、先ほどから再三申し上げていますように、職場環境に大きく依存していることが非常に重要でございます。出産したら仕事を継続できない、職場にいれば出産イコール退職という環境にあれば、出産は高い確率で機会費用を発生せしめることになります。他方、出産しても仕事を継続しやすい環境にあれば、出産は機会費用を発生させないということで、子どもをあきらめることにはつながらないことが言えるかと思います。このような効果があり得ることをまず頭に入れていただきまして、次の14ページ目からの説明に入りたいと思います。
 まず、我が国の機会費用がどのようなものかを少し定量的に示したものが14ページ目でございます。我が国の機会費用は、平成15年度版「経済財政白書」の試算によりますと、出産や育児によって退職した場合、運よく正社員として再就職した場合でも、退職しない場合に比べて8,000 万円の生涯所得が失われるという結果が出ております。グラフを見ていただきますと、一番上にある太いぎざぎざの線が、就業を継続した場合の日本における平均的な賃金カーブでございまして、次に一旦少し落ちて、また途中から少しずつ上がっているのが、今申し上げました途中で正社員として再就職した場合の賃金カーブでございます。この太い部分と細い部分の差の面積、これを全部足し上げると8,000 万円になるということでございます。
 ただ、日本の場合、正社員として働きたくても働けないという場合がございまして、例えばパートで再就職した場合はどうかを試算したところ、2億4,000 万円という差、機会費用が発生することが示されております。34歳のところでがくっと落ちて点線で横にフラットになっているカーブがパートタイマーとして働いた場合の平均的な賃金カーブでございまして、この一番上の太線との間を全部足し上げると2億円という結果になっているわけでございます。
 次のページは、これは実は経済財政白書だけではなくて、影響調査専門調査会でも試算しているということでお付けしたのですが、この専門調査会で出した試算でも経済財政白書とほぼ同じ、退職後パートになると格差はおおむね2億円であるという結果が出ております。
 次に、実際我が国のM字カーブにおいて、右側がパート比率が多いということがよく言われておりますが、これを示している図が16ページ目のグラフでございます。この白い部分が役員を除く雇用者に占めるパート・アルバイトの比率でございまして、40代辺りから40%の後半ということで、相当高いウェートを占めているということでございます。
 次のページを御覧ください。実際仕事を辞めて再就職する場合には、パートが多いということですが、女性のパートタイム労働者が非正社員を希望した理由として、アンケート調査によりますと、各年齢で大体2割から3割、正社員としての職が見つからなかったからということがございます。ただ、これ以外はみんな本当に希望してパートを選んだのかというとそうではなくて、左から2番目の「自ら進んで非正社員になった」の内数のところで、育児・家事・介護がなかったら正社員を希望していたという人の割合が、4~5割とかなり占めていることが言えます。ということで、育児・家事が大変だから仕方なくパートを選んだという方もございまして、結局そういったものを足しますと、大体7割から8割が、何らかの形でパートを選ばざるを得なかったということが言えるかと思います。
 次に18ページ目です。これは、出産によって女性はどうなるのを統計資料で見たものですが、大体7割の方が出産を機に仕事を辞めている状況が分かります。以上から勘案しますと、現在の日本におきましては、出産後仕事を継続することが何らかの形で難しく、再就職のパートという形でしか実現しないことが、これまでの統計でわかったかと思います。
 次に、女性の労働力の高まりや賃金上昇によって、世帯全体の賃金が高まれば、子どもを持ちやすくなり、結果として出生率が高まる可能性がある点を、19ページ目以下で説明したいと思います。これは所得効果が出生率にプラスに働き得ることを言いたいということでございます。
 まず始めに、子どもを持つための費用は、現在高まりつつありまして、子どもを持ちたくても持てない現状に陥っているということでございます。ここのグラフでは、子どもを私立大学に入れて下宿までさせると、大体2,000 万ぐらいかかりまして、公立の自宅でも1,000 万ぐらいかかるというデータであります。ここで時系列のデータを示していないのですが、時系列のデータを見ても、今年度の経済財政白書の記述によりますと、子育てにかかる直接的なコストである教育関係費を見ても、消費支出に占める割合は、ここ30年で2倍に高まっているというデータも出ております。
 次に20ページ目で、希望する子どもの数と現実の子どもの数を見てみたいと思います。もし希望する子どもの数と現実の子どもの数が一致していれば、政策が出てくる幕は余りないわけでございますが、このデータを見ますと平均理想子ども数を上の方にプロットしているのですが、これと平均出生率児数の間にギャップがあるわけです。ということは、実際の数というのは下回っていると。つまり産みたくても産めない人がいることを物語っているということでございます。では、なぜ希望する数の子どもが産めないのかが、21ページ目に書いてあるわけなのですが、これは子どもを育てるのに圧倒的にお金がかかり過ぎるからという回答が、これは旧経企庁のアンケートの結果ですけれども出ております。更に、この結果をフルタイム、パートタイム、その他もろもろで分割しているのですが、やはりどちらかというと配偶者の収入に主に依存していると考えられる専業主婦やパートタイムの半数以上が、金銭面が問題となって子どもを希望する数を持てないと考えていることがわかるかと思います。
 次に22ページ目の下のグラフを見ていただきますと、左から4番目の「管理職」というところで一番棒が高くなっていますが、これは「母の職業別標準化出生率」ということですべて年齢調整をしており、母集団の年齢が同じと考えた上で人口1,000 人当たり何人ぐらい産むのかを見た結果、これは管理職が一番子どもを産んでいることがわかります。これはやはり収入が高いと考えられる管理職の出生率が高いということで、所得効果の存在を示唆するものと考えられるということでございます。
 最後に結論でございますが、これは23ページ目でございます。仕事と子育ての両立支援を十分に行った上で、女性の労働への参加が高まったり、賃金が上昇したりすると、出生率にプラスの効果を与えることも考えられるということが今までの説明の結論でございまして、1つは所得効果を通じた影響ということで、女性の労働力が高まる、女性の賃金が上昇する場合、世帯の生涯所得は増加しまして、所得制約上の理由から子どもをあきらめるケースが減少するということで、マクロで見まして実際の出生児数が平均理想子ども数に近づくことが考えられることが1つありまして、これは大きく書いた「所得効果により出生率が高まることも考えられる」ということが1つでございます。
 2つ目といたしましては、機会費用の発生率が低くなることを通じた影響があります。出産=退職=生涯所得の減少という場合が減りまして、出産のインセンティブが生まれることが第1点ございまして、退職という究極の選択以外にも、例えば短時間正社員等の多様な働き方によって、生涯所得の減少を最小限に抑えられる可能性も出てくることにより、出産による機会費用の発生が低くなって、機会費用が高くなったので出産をあきらめようということがなくなってくるのではないかと考えられるということでございます。
 以上を勘案いたしまして、女性の労働市場への参画や賃金上昇は、出生率にプラスの影響を与え得ることが考えられるのですが、その大前提として子育てと育児の両立支援を行うことが重要だと、この必要性がこのような最近の分析結果からも導けるということでございます。
 最後に、この資料と別に資料2-3をお付けしたのですが、昨年本専門調査会で報告していただきました「女性のチャレンジ支援策」にある少子化への基本的な考え方ということですが、これとも整合的な結論であると言えるかと思います。私からの説明は以上で終わります。
岩男会長
ありがとうございました。それでは、現在検討中とされている大綱に反映していただくことも考えながら、御自由に御発言をいただければと思います。私たちの立場と言いますか、男女共同参画会議の専門調査会としては、男女共同参画が少子化問題解決の鍵であるというか、男女共同参画社会の実現によって、出生率の回復が可能になると考えているということだと思います。ですから、特に男女共同参画との絡みで御意見がございましたら、御発言いただきたいと思います。
古橋委員
今回のこの分析は非常に結構だと思いますけれども、2点あって1点目は、この前提として、共働きになったときにネットとして所得が増えることがなければいけないわけですね。そこのところについては本当に大丈夫かということです。
 2点目は、子どもの教育費のコストが高くなってきており、この問題について国として考えなければ少子高齢化になりますよということを是非分析していただきたい。そのための方策はどうあるべきか、政府全体として考えなければいけないということを一言だけ付け加えておきます。
岩男会長
特に年金に対する不安感が、特に若い人の間に強くなっているときに、2,000 万とか1,800 万とかというようなお金を1人の子どもにかけるということはちょっと現実的ではなくなってきていると思います。
 私がもう一つ申し上げたいのは、国民会議でも同じことを申し上げていますけれども、育児休業はもとより、法律でちゃんと保証されているはずの産休さえ取れないという現実があります。ですから、そういうことに対する指導あるいは罰則を大綱の中にきちんと書き込んでいただく。昨今、就業規則に働く人に不利になるような条項をどんどん付け加えていく動きもありますので、絶対にそういう状況が起こらないようにしていただきたいと思います。ほかにいかがでしょうか。北村委員、それから住田委員、お願いします。
北村委員
今、見せていただいた生涯の可処分所得についての折れ線グラフについて、これは直近のデータを基にされていると思いますけれども、今、男性でさえ生涯雇用、しかも年功序列は危ないという時期になってきて、おそらくこの先男性も、勿論女性も右肩上がりということは余り期待できないのではないか言われています。
 だからといって辞めてもいいよという話にはならないと思いますけれども、おそらくこのパターンだけで機会費用を言うと、ちょっとこれから先、説得力に欠けてくるのではないかという気持ちがありまして、女性が就業を続けることによって可処分所得を担保しようという言い方のときに、もうちょっと新しい視点が必要ではないかという気がしたのですが、そこのところをお考え願いたいと思います。
岩男会長
住田委員、どうぞ。
住田委員
2つあります。まず1点目ですが、少子化では常に数が問題にされますが、これによると男女共同参画が進むと少子化の減少につながることについて、説得力あるものになったと思います。それがクリアされると、常に次に出てくるのは質の問題です。多くなっても非行が増えたり、子どもがきちっとした形で育たない。これは統計で見えないとよく言われます。そこら辺についてもその次の問題として説得力あるものを提示する必要があるのではないかという気がしております。
 もう一つは、北村委員の先ほどのお話につながることですが、恐らく終身雇用、年功序列賃金といった右肩上がりの給与体系は、今後崩れていくことは間違いないかと思いますが、今すぐに必要なことは、パート、非正社員の所得の低さへの対策です。その所得効果が22ページの職業別標準化出生率のところでも現れているのではないかという気がします。
 管理職と無職は、それなりに世帯収入が高いことによって、子どもの数も多いのです。問題なのはこのサービス業とか販売職とかでしょう。こういうところの子どもの数が少ないというのは、それほど高い所得ではないからだろうと。働き方の多様化を言われておりますが、その中で同一価値労働同一賃金の原則を更に現場においても徹底していくこと、そのためにいろいろな規制が必要ではないかという気がしています。それをどこで言うかは難しいですけれども、この表から少なくともそういう方向づけ、提言することは可能ではないかと思っています。
岩男会長
ほかにいかがでしょうか。よろしゅうございますか。それでは、男女共同参画と少子化のテーマはここまでにさせていただきまして、チャレンジ支援ネットワークの検討会につきまして、座長の北村委員から御報告をお願いしたいと思います。
北村委員
チャレンジ支援ネットワークについて、簡単に報告させていただきます。昨年4月の段階から、女性がチャレンジを全うしていくためには、適切な支援とネットワークが必要ではないかということで、実際にそういった方面に携わっている方、各地の女性会館の運営者ですとか、NPOの関係者ですとか、実業の方々にお集まりいただきまして、経験、御提案等をいろいろといただいてまいりました。その結果、どうしても今、どういうニーズが実際にあるのかを調べようということになりまして、事務局の力でいろいろアンケート調査などもしていただきまして、今月に最終的にまとめる段階に来ております。アンケート結果を簡単に申し上げますと、現在は生活全般についてのニーズが多いですけれども、だんだん就業に関する情報が欲しいというふうに移ってきていることがありまして、それにどう対応していくかが大きなテーマになると思います。
 それから、情報のコンビニ化と言いますか、1箇所でたくさんのニーズに応じられるような組織をつくっていく、今、インターネットの時代ですから、それは比較的ソフトができれば形は整うと思いますけれども、いろいろ調べてみますと実は女性の支援のための情報は結構たくさんある。それがなかなか有機的に結び付いていないことがわかってまいりまして、1つのネットグループをゲットすると、それが1つの情報アイランドになっているわけですから、1つのアイランドに連結するとそこでわっと情報量がお互いに増えるというようなことがはっきり見えてまいりました。必要なことは、そういった既にでき上がっているアイランド同士を結び付けると。そのためには、同一の事業に今までのような縦割り的感覚ではなくて、横断的にいくつかの組織が関わっていく姿勢が必要である。そういうときに実際に力を発揮するのはだれかというと、結局女性センターのような拠点であるということです。拠点には、非常にコーディネーターとしての役割が求められて、なおかつそういったところでコーディネーションに優れた人材を育てていくことが一番重要ではないかということになっています。
 それから、支援方法ですが、一律に個人のニーズに応える、その後それっきりではなくて継続していくこと、つまり個人もだんだん就業した、転業する、ひとつグレードアップしてみたいと時系列で変わっていくわけですが、そういったものを丁寧にフォローしていく姿勢が必要ではないかと考えております。
 それから、既存の全国的な組織、例えば地域連絡協議会のようなものですが、そういったところの役割は、勿論既に実績があるわけですけれども、広域を巻き込んでいく上では、改めてその力を借りていくことは必要であろうと結論いたしました。3月の段階で、今まで集まったことを系統的なものにまとめて発表するところまできています。
岩男会長
ありがとうございました。議事が行ったり来たりして恐縮でございますけれども、私、先ほど皆様にお諮りしなければいけないことを忘れておりまして、この大綱に私どもの意見を反映させていただくということでございますけれども、それは大体御説明、幾つかの御指摘で御意見は出尽くしたのかと思いますので、私にお任せをいただくということでよろしゅうございますか。
 

(「異議なし」と声あり)

岩男会長
先ほどの御説明に入っていたかどうか、私が聞き落としたのかもしれないのですけれども、私自身が行った調査を見まして、働く女性の方が専業主婦よりも子どもの数が多い。それから、理想の子どもの数も多い。また、長く産み続ける。ですから女性が働くと少子化が進むというような意見は正しくないことがはっきり示されていると思いますので、そういう意味でも男女共同参画と少子化という問題は非常に密接に結び付いているということだと考えます。よろしいでしょうか。
寺尾委員
1点御質問させていただいてよろしいでしょうか。先ほどの統計的な分析について質問したいのですけれども、初めは諸外国でも負の相関が見られたのが正の相関に変わったところが多いとおっしゃったのですが、その理由と言うか、背景と言うか。
高安推進官
その背景につきましては、いろいろと分析している論文がありまして、11ページ目にございます。まさに、この時期に諸外国におきまして子育てサービスの充実が進みまして、それで育児と仕事の両立支援ができるようになっているということでございまして、それまでは諸外国においても機会費用がかなり高かったのだと思います。辞めざるを得なくなるか、産まないで頑張り続けるしかないといった二者択一だったものが、80年代を経てかなり状況が改善されて、両立が可能になった。そうすると、所得効果がかなり強くなりまして、それで両立できるようになったこともあろうかということで、背景としてはやはり両立支援が鍵であったことが指摘されております。
寺尾委員
その中にあって、日本も正の相関が出てきていると現状認識してよろしいのでしょうか。
高安推進官
そうですね。日本におきましても、各県データで見るとそうなっているので、やはり少しずつ変わりつつあるのではないかと、統計的には思われます。
岩男会長
意識の問題というのがあるかもしれませんね。つまり私が子どもを育てながら仕事をしていた頃というのは、私の女性の同僚は大体、結婚しない方がたくさんいらして、それから結婚しても子どもは産まないと、仕事か家庭の一方しか取れないという状況でした。働く人たちの意識も違うし、周りの社会の認識も違いますし、保育園・保育所といったものも利用可能ではありませんでした。状況が大きく違っていることも一応踏まえて理解しないといけない相関だと思います。
古橋委員
今のその点で、相関が負から正になり両立できるようになった要因は何かを検討する必要があります。女性が政治に参画する割合が増えたのか、あるいは女性の意思決定の参画が増えたのか、両立が可能になった要因について、諸外国別にもう少し分析してもらった方が、我が方にとっていいのではないかという気がします。両立支援がなぜ起こったのかという原因です。経済的にそのときにもう男性の労働力不足が将来見込まれて、女性を活用せざるを得ないと考えられる機運が、スウェーデンのようにあったのか、いろんな複合的な要因があると思いますけれども、どういうことが相関関係を負から正にすることに寄与したかをちょっと分析してもらいたいと思います。
高安推進官
それに直接答えているかどうかわからないのですが、25ページに資料を付けておりまして、保育所の入所率と出生率の間にどういう関係があるかを最初の2000年のデータでプロットしたものでございますが、縦軸にあるTFRが出生率です。横軸が保育施設入所率で、0-2歳と3-6歳に分かれてグラフが出ているのですが、これを見ましても、保育所入所率と、保育所がいかに整備されているかが両立の1つの鍵でもあるのではないかという分析結果でございます。
古橋委員
私が言いたいのは、保育所入所率が増えたのは、なぜそうなったのかということです。要するに、女性が仕事に出るようになり保育所が増えたということもあるかもしれませんが、しかしそれだけだったら、女性の力が弱かったら保育所なんかできっこないと思います。だから、女性の意思決定への参画がそのときに増えることによって、かつ労働力率が増えて、かつ意思決定への参画がその必要性を持ったという要件が2つあって、初めて保育所ができたのではないかと思います。保育所が増えたことを本当はもう少し分析してもらうと、男女共同参画に関する施策についての他の点への示唆が得られるのではないかという気がいたします。
岩男会長
私は、そんなにクリアに出てくるとは考えにくいのですが、そうであれば嬉しいと思います。
竹信委員
確かに、スウェーデンなどの場合は、女性の職場進出と政治参加とが両立して進み、保育所づくりや介護施設づくりを押し上げながら、労働分野に進出していったという状況がありますので、おっしゃるとおりだと思います。それと関連して、北村委員もおっしゃっていたように、やはり働き方の中味を、もう少し検討した方がきっとよいと思います。つまり職場に出て行きさえすればいいかというと、この14ページの経済財政白書の表でもあるように、パートは何年勤め続けても横ばいの低賃金です。このような働き方の人ばかりが増えていったときに、スウェーデンやOECD諸国とは違うパターンが出てきてしまう可能性があります。女性も働けといっても、現実は低賃金の仕事と家事・介護・育児負担ではないかという反論が出てきて、「男女平等」への反発が強まることはしばしばあるので、それこそどういう働き方で両立して出ていったのかも併せて少し加えていただけると、もっと説得力が増すと思います。
岩男会長
なかなか大変な宿題ですけれども。
竹信委員
日本だけでもいいと思います。そんなにものすごく広く見なくても。
住田委員
今の古橋委員のお話に絡めてなのですが、先ほど制度とか環境のハードの問題をおっしゃったと思います。保育所もそうですが、実際はその裏腹として、ソフトとしての意識の問題は非常に大きいと思います。母性神話が強い国、保育施設入所率の低い国、出生率の低い国といつも言われるのが、イタリア、スペイン、ドイツ、日本だと。ここら辺ももし何か統計的なものがあるなら出していただいた方がいいと思います。そこをクリアしないと、質の問題として大丈夫ですと言いにくいところがありますね。
岩男会長
意識の調査は。
住田委員
例えば、性別役割分業意識が結局つながってくるのではないかと思います。
山口委員
スウェーデンでも確かに環境が整ったら子どもを産むようになったと言うけれども、やはりある程度頭打ちですね。それは、子どもを何人産むか産まないかは、それぞれの人の選択権にあるわけですけれども、例えば日本の場合も非常に少子化で、国力を支えていかれないと、現状のままだとこうだということで、年金だとかいろいろ計算の根拠が出ていると思いますが、大体人口研なんかではどのぐらいを目指しているのか、そういう試算があるのかどうか。仮にそういう試算があったとしても、産むか産まないかはそれぞれの問題ですけれども、やはりある程度あるでしょうね。そういう計算はあるのでしょうか。
高安推進官
人口研では、どれだけいたらというのは出してないと思います。このままの状況であればどうなるかを、2050年まで試算したものを出しています。要は目標値というものは、いろいろセンシティブな問題もたくさんありますので、産みたい人、産みたくない人、それは本人の自由というのが前提であります。あくまでも、現状でもこれだけ持ちたいのに持てない人、そのギャップを埋めるための施策であるということもありまして、国家としてどれだけ必要だということは余り出しておりません。
寺尾委員
関係ある形でそういうことが言えるのがどうかわからないのですが、両立ということを考えたときには、保育所の整備等も大事ですけれども、日本の働く場所の問題と言いますか、地方の小都市に行けば別なのかもしれませんけれども、とにかく通勤時間に非常に時間がかかるようになっていて、だからいくら残業なんかをなくしても、通勤時間分のロスはすごく大きいものがありますね。だから、職住接近の形で暮らしていけるような空間と言いますか、まちづくりに関わってくる話なので勝手に行政だけでできることでもないですが、今、分権改革の動きを受けて、いろいろな形でまちづくりが盛んになっている中に、男女共同参画型のまちづくりのためのハードの整備ということでうち出していくことがやはり大事だと思います。これだけインターネット等が発達しましたから、やる気になれば別に大手町に行かなくても仕事ができる時代になってきたわけですから、そういう視点も大事かと思います。
高橋委員
意識の点で、私はもっとずっと遅れたところにとどまっているのが、最大の原因ではないかという感じを持っています。やはり男女共同参画に反対する人は、女性が働きに出るのがいけないと考えているわけです。だから、それこそパートが多いというのも、家事・育児をきちっとやってからでないといけないとの意識があるからだと思います。
 むしろまず強調することは、女性が働きに出たいというのは正当な要求なのだと。それに応えていくことが必要なのだという前提ですね。そこをもっと強調しておく必要があるのではないかと。その前提の下に、ではどうしていくかという話であって、そこのところをきちっとしておかないと、出ていくからいけないので、元に戻れば出生率だって上がるのであって、負の相関だって本当は正しという議論になってしまうのだと思います。そうではない、まず出発点は女性が働きたいというのは極めて正当な要求であって、これからの社会というのはそれにきちっと応えていくことが前提なのだということです。それを強調しておきたいと思いました。
岩男会長
要求だけではなくて、基本法にあるように責任でもあるということだと思うのですけれども。北村委員、どうぞ。
北村委員
高橋委員の御指摘とそこのところでつながると思いますけれども、やはり意識の問題で、自分が、つまり母親が家を留守にすると家族によくないというギルティーな感じというのは、どこにもあるわけですね。最近、そういうのは乳幼児期に限って言われてきたと思うのですが、思春期以降についてもそういったことがそろそろ言われるようになってきて、引きこもりでありますとか、過度の親依存であるとかというのは、むしろ専業主婦のべったり育児の結果ではないかという指摘も出てきたわけです。
 これは説得力のあるデータだと思いますが、保育園の整備の有無みたいなことで、割に短期的な、小さい子どもを持った母親ということで考えるのですが、長期的に見れば本当に母親というのは子どもに社会性を与えられるというところでは、思春期以後の子どもの振舞もある程度材料として調べることがあってもいいのではないかと思いますが、これが下手して母親たちに対する脅しになってはいけないですけれども、お母さんもちゃんと働いていると、子どもも比較的すんなりと社会化するというような傾向が出てくれば、新たな説得力を持つのではないかと思います。
岩男会長
政務官、どうぞ。
森元政務官
番外ですみません。自民党の中でも、男女共同参画も盛んに議論していますし、少子化問題も歴代総理が全部メンバーに入って、本部までつくって議論しています。その中で出ている議論で、まだなるほどという答えがない点をいくつか御紹介したいのですが。
 1つは、この資料の21ページ、なぜ子どもを理想の数だけ持たないのかというときに、子育てにお金がかかるというのが圧倒的に多いわけです。これは、我々も一見なるほどと思いますけれども、党内で議論があったのは、ちょっと待てよと、よくよく考えると昔は「貧乏人の子だくさん」と言ったではないかと、お金持ちほどそんなに子どもをつくらないで、明日の生活をどうするのというのに5人、10人の子どもを産み育ててきたではないかと、それはわずか数十年前の話ですね。そんなに急に日本人というか、人間としてのメンタリティーが変わったのかねと。これは必ずしもお金がかかるからではなくて、質問する項目がこういうふうにしかないからここに○を付けているので、子どもが1人、2人増えてくると、自分に使っているお金を子どもに回さないといけないと、自分の時間を子どもに取られてしまうと。要するに、自分本位の意識を子どもに転嫁しているのではないかという意見があるのです。事の真偽はわからないですけれども、その辺について何かお考えがあればお聞きしたいと思うのが1点です。
 もう一つは、育児休業制度をもっと拡充していくべきではないかという意見は一般的にありますね。それに対しては、先ほどもちょっと御意見がありましたけれども、仮にそういう制度を充実しても、果たしてそれをどれだけ女性の方がお取りになるかどうか。それはなぜかというと、2、3年職場を離れていると、その間の生活がある程度できて復帰できたとしても、同期の人と比べて最後までハンディを負ってしまうと。差が付くわけですね。ですから、そちらの方を拡充するよりは、働き続けられる環境を整備する。今のお話のような、保育所をできるだけ充実した形にしていく方が効果があるのではないかという話もあるのですが、このことについてどうお考えでしょうかと。
 それから、ヨーロッパ諸国に比べて、日本は極端に少子化が進みつつあります。その要因の一つとして、西洋社会の場合には、結婚はしないけれども子どもを産み育てるシングルマザーの方が相当いらっしゃるのではないかと。日本は、結婚しない人は子どももつくらないと。これは社会の風潮というか環境が、そういうものに対する寛大さが足りない面があるのではないかと思いますけれども、そういう点についてどうお考えでしょうか。
 それから、先ほどの北村先生の話に関連してですが、私、最近新書判を読んでなるほどと思ったのですけれども、「ケータイを持ったサル」という本が出ているのですね。一言で言うと、日本人は退化してサル化していると、書いている方はサルを研究している方です。要するに、今も話がありましたが、母親に限らず父親もそうですけれども、非常に大事に甘やかして育てているものだから、家庭と社会との境目の意識がなくなってしまっていて、甘えたまま育った人は社会に出てもそのままだと。だから、人前でお化粧したり、地べたに座ってものを食べたりしても、恥かしいとも、みっともないとも、いけないことだとも思わないと。もう一極端は、社会に出られなくなって引きこもりになってしまうと、要するに、根っこは同じであり、たまたま別の形で現象が現れているだけですね。ですから、親の教育そのものがどうあるべきか、そこがやはり根本だということに共通するのだと思います。要するに家庭で親がしっかりと教育しているからいい子が育つ、そうでないから育たないということとは別である、それは育て方によっているのだということなのだろうと思います。そういうことについて、今も意見がありましたけれども、また何かあれば教えていただければと思います。
岩男会長
大変たくさん問題を御指摘いただき、いろいろな御意見があるだろうと思うのですけれども、幾つか私の考えを申し上げますと、お金がかかるというのは、昔は確かに清潔にしておいて、おなかいっぱいにさせておいて、その辺で遊ばせておけば、それでよかったのです。昔はそれこそぼろになる前の布切れでおむつをつくって、それを使っていたわけですけれども、今はもうそうではなくて、おむつ一つにしても、かなり便利にはなりましたけれどもお金がかかるなど、誰の責任ということではないですけれども、お金が間違いなくかかるような仕組みをつくってしまったと。ぜいたくしているからお金がかかるというよりも、やはり基本的なところでかなりお金がかかるということが事実だと思います。
 それから、先ほどの学校の授業料にしても、奨学金でもない限りお金がかかる。ですから、お金をかけずに育てられるはずだというのは、私はちょっと無理ではないかと思います。
 育児休業の問題も、制度そのものがもっと柔軟でなければいけない。そうしないと仕事との両立が非常に難しい。それから、シングルマザーを奨励するような考え方は、やはり私は子どもにとって両親がいる方が望ましいと思います。
森元政務官
奨励はしないですよ。原因を言っているだけです。
岩男会長
それから、日本の場合にそれだけ増えるかというと、確かに10代の中絶は増えておりますけれども、もう少し複雑な問題があるように思います。
寺尾委員
今の「貧乏人の子だくさん」ですけれども、今でも発展途上国の貧しい人たちの家庭は子どもが多いわけですね。なぜそうなるかというと、結局、そういう国の低所得者層は子どもしか財産がないという状況だから、やはり「貧乏人の子だくさん」になるわけで、子どもが自分の年老いたときの年金なわけです。
 ところが、今の日本社会は、子どもに自分の老後を見てもらおうということで子どもを育てる人は少なくなってきていて、子どもの方も実際それを期待してもなかなか応えてくれない。今の介護保険等の流れを見てもおわかりのように、親は子どもに面倒を見てもらいたいと思ってないし、子どもも親のことが好きであっても、一緒に住みたいとは思ってないわけですね。
 そうすると、ドライな言い方になりますが、昔は、経済学的に親は自分のために子どもを産んで育てたのです。自分の老後のために。でも、日本の社会はそういうメカニズムで動かなくなってきているわけですから、子どもを産むことが持っている社会性という部分を、社会が何らかの形で負担をしないと、子どもを産むことは割に合わないふうになってきているのだと私は思っています。
竹信委員
お金がかかるという話ですけれども、カナダの研究者へのインタビューでは、先進国は全般にその傾向にあるのですね。なぜかというと安く育てて、余りちゃんと教育しない子どもにも就けるような仕事があるような社会ではもうなくなっている。そういう低レベルの仕事はどんどん海外の安いところに出てしまいますから、そうなるとやはり長期間、しかもちゃんとお金をかけて高い技能の人を育てないと、仕事がないわけです。
 それから、婚外子、シングルマザーの話、これはよく出てくるのですけれども、民法改正のときも日本の民法は、婚外子の相続分の差別があったり、社会に差別意識が強いわけです。子どもに罪はないので、そういった差別をなくすというふうになれば、確かに子どもをつくりやすくなり、自然な環境ができるだろうなというのは、おっしゃるとおりかもしれません。
住田委員
もう一つ、最初に「貧乏品の子だくさん」の話ですが、職場と生活の場が分離されたことによって、子どもというのは、今までは生産財であったのが消費財に変わったという、先進国の構造上の変化としてやむを得えないものであるということです。
 それから、問題は子どもに時間やお金を取られる、母親のわがまま説、これが今、一番克服すべき問題だと思っています。それに対しては女性が働きたいのは当然の要求だという、高橋委員のお話もありましたけれども、そういうところも一つの正当化する理由にはなるかと思いますけれども、子どもにとってどういう在り方が幸せかという視点から言えば、集団保育にも社会性を持たせる長所がある、ときには核家族の家庭よりも社会性を持たせるメリットは大きいといえるとともに、今、保育園は全体としてレベルは上がっていると思います。そのため、菅原ますみさんの研究とかをもっと大きく取り上げるべきであろうと思います。育児休業のことは、長くなりますので、あとは全部割愛します。
北村委員
婚外子のことですけれども、ヨーロッパが多い、それが人口増加に結構寄与しているという言い方はあるのですけれども、ヨーロッパの婚外子というのは結構ステディな間で、しかもある程度の年齢が行ってからの人です。日本のできちゃった婚は、ティーンエージャーがあることが多いので、ちょっとそれは一緒にできないと。むしろ私は日本での性教育をきちんとすることによって、この問題はかなりカップルにとってコントロール可能なことになるのではないかと思っております。
住田委員
済みません、1つだけ。シングルマザーをやるほど元気があればいいのですけれども、今の女性には、ブランド志向で豊かな専業主婦を狙っている層がかなりある。そういう方向には、今の日本の女性は向かっていないことは事実だと思います。
山口委員
スウェーデンは、結婚しなくても準婚姻法があるのですね。そうやって国が子どもを支援する。
古橋委員
北村さんにちょっと要望だけしておきますけれども、ネットワークの中で農村のネットワークづくりが非常に難しいことを、ずっと私もやって感じておりますので、事例紹介に必ず農村において成功した事例、それはなぜ農村において成功したかを是非一つ入れておいていただきたいと思います。農村における非常に難しい状況の中で、都市近郊の農村はいいけれども、そうではない農山村におけるチャレンジ・ネットワークです。結構いろいろなところで出てきてはいる。道の駅を出したりしていろいろなことをしていますけれども、それのネットワークについては特に言及しておいていただきたいと思います。
北村委員
承知いたしました。事務局とも、具体的にわかっていただくためには事例が大事だということで、たくさん事例を集めておりますので、その点も留意いたします。
竹信委員
チャレンジ支援の話で若干よろしいですか。
岩男会長
では、どうぞ。
竹信委員
最近地方を回る機会があって、取材等で非常に失業率が高いところも回っていますけれども、そのときに女性のための新しい仕事をつくり出そうと思ってもコーディネーターなりが全くいない。起業して何とか事業を起こそうと思っても、音頭をとる女性がいない。こうした人材をどう育ててよいかわからない。育て方についてもどこに質問してよいかわからない。だから、まずコーディネーター養成と、担当者向けの情報提供システムをもっときちんとすることをどこかに入れていただけると、すごく助かります。
北村委員
アンケートでも、末端のユーザーのニーズと、コーディネーターレベルの人たちのニーズを調べているのですけれども、コーディネーターレベルの人たちは、コーディネーターのコーディネーターが要るということを言っているわけです。それは重要なことだと私も認識していて、報告書の中に入れさせていただきます。
岩男会長
農水省のホームページは、利用してみると非常にいいですね。非常に具体的にいろいろ教えてくれる。それでは、次の議題に移らせていただきます。昨年7月から官房長官の私的懇談会として将来像検討会が設置されて、今年度内に報告をとりまとめる予定になっております。それでは、この将来像につきまして、事務局より御説明をお願いいたします。
竹内企画官
男女共同参画社会の「将来像検討会」の検討状況について説明させていただきます。男女共同参画社会の実現についていろいろな政策が行われていますが、成果はまだ不十分であり、これは、理念として男女共同参画を理解しているけれども、自らの家庭とか職場がどのようになっていくかという具体的な将来像が明確ではないことも大きな原因の1つではないかということ。また、いろいろな批判や誤解に応えるためにも、目指している男女共同参画社会はそういうことではないことを、具体的に示すことが必要ではないか。ただ、そういう中で、単なる理想的なものだけではなくて、現実的な課題なども示す必要があるのではないかということがございまして、これらを踏まえてお手元の資料3-2に書いてあります、2020年ごろまでの男女共同参画社会の状況について具体的なイメージを示すことにより、男女共同参画社会の形成についての国民の理解を得ること等を目的とする検討会が設置されております。
 ここで示そうとする内容でございますけれども、当初局内で検討していた段階では、こうした広報、啓発という観点以外に、今後見込まれます男女共同参画基本計画の見直しの基礎資料ということも考えてはどうかという意見もありましたが、しかし具体的な施策を検討して、それで将来がどのように変わっていくかといった施策の積み上げによる将来像ではなくて、基本法で示されている男女共同参画社会は具体的にどのような姿であるのか、国民はどのような姿を期待しているのかという点を、わかりやすくイメージで提供しようという当初の趣旨で検討することとしております。政策を大上段に議論するものではなく、男女共同参画とはどういうものか、どうなっているのかを具体的なイメージや国民の期待を示すということで検討を進めました。
 検討分野としましては、政策・方針決定過程への男女共同参画ですとか、雇用、就労・家庭両立、コミュニティー等のその他の分野、男女共同参画社会の形成を支える技術とかサービスを主な分野といたしまして、今までいろいろな分野で将来のことを検討されています。例えば、未来生活懇談会とか、そういった検討結果を基に検討会で議論をするということが一つ。それから、有識者や雇用機会均等法ができてから企業に入られた方々、5年ぐらいのスパンで入られた方、そういった方々へのアンケートをまとめていこうということにしておりました。
 なお、まとめ方としましては、Aさんの家庭、Bさんの家庭というような働き場を描くというやり方もありますけれども、そういった形は未来生活懇談会ですとか、2025年の日本の姿というのが最近出されているので、そういった形ではないようにということでやってきました。
 資料3-2の一番後ろに書いてございますが、これまで5回検討しまして、家庭、生活、政策・方針決定、働く場といった分野で検討しまして、第5回の本年1月に事務局が初めて骨子案を提示して報告書のとりまとめ作業を開始したところでございます。報告書の骨子が、資料3-1でございます。1月の検討会で御説明した際には、手堅いけれども夢がないという御意見ですとか、非常に楽観的で本当にそうなっているのかと思う人もいるのではないか、2020年頃の社会状況を前提としても政策によって大きく変わるのではないかという御意見ですとか、細か過ぎて全体としてのイメージが湧かないという御意見、2020年頃になると寿命も延びて個人の価値観も多様化してくるので、家庭や社会の中でリスクが増大していくし、一人一人の人生の中でも多様性を経験せざるを得なくなっていくと、そういうような社会になっていけば男女共同参画社会でないとやっていけなくなるというような視点でもまとめられるのではないかといった御意見をいただきました。
 1ページ開けたところからが骨子案でございます。まず第1章としまして「2020年頃の社会状況」をいろいろな報告書等からまとめております。主な数値指標として、世代、人口、世帯、労働力のようなことを考える。次に数値としてではないけれども、定性的に今後どのようになっていくのだろうということをまとめようかということで、1つは個人の行動様式等の変化といったものを書いております。骨子案の中でも、先ほどのアンケート結果等も踏まえて、報告書をまとめていこうと思っております。アンケート項目として出しているのは、ここの中で括弧として書いております。
 定性的な方向で、個人として多様化に向かっていくのではないかという流れ、それから、そうした変化の中で、制度や慣行も変化していくのではないかという流れが、いろんなところで書かれている。例えば、未来生活懇談会や経団連のビジョンとかにそういうことを書かれています。社会全体として、いろいろな改革が進められていくような流れがあることを前提条件として書いております。
 こうした大きな流れの中で、男女共同参画社会の形成の方向性は、どういったものかということを、第2章として書いてみようということでここに書いてあります。ここに書いてありますのは、男女共同参画社会基本法をもう少しわかりやすくということで書いてございます。
 その次の章といたしまして、4ページ目になりますが、男女共同参画社会の方向性について、現在の男女共同参画社会の状況は、どういうものかを例示しております。社会全体にとっても、女性にとっても、男性にとっても、能力が発揮できないと、不幸な状況であるということではないかと考えております。
 5ページ目にあります、男女共同参画の視点からの2020年の姿が、今回の検討でまとめた具体的なイメージでございます。これを考える上で、いろいろな政策が今後も十分なされていくことを当然の前提としております。また、男女共同参画社会は多様性を認め合う社会ということで、ここに書いてあること以外にも、いろいろなこともあるだろうと思ってはおります。
 具体的な姿として、先ほど申しました政策・方針決定、家庭、雇用といった切り口で書いています。最初は、政策・方針決定の場ということでございまして、全般として政策がどういうふうに変わっていくのか、それから政策・方針決定の場に女性の参画が増えることで、どのような変化が生じるのか。例えば、企業、組織で男女共同参画が進むとか、人材が豊富になっていくといったような社会の変化があるだろうということを書いております。
 6ページ目が、働く場での変化ということでまとめております。ここでは、アとして働く場の制度等が変わるのではないかということを一つまとめておりまして、終身雇用制度とか、再就職時の年齢制限、そういったところが変わるのではないか。それから、能力評価が進んでいくのではないか。それらによって、賃金格差が縮小していくだろうといったことをまず書いています。
 それから、さまざまな活動と両立しやすい働く場になっていくのではないかということで、育児休業制度とか看護休暇といったものが取りやすくなっていくことを書いております。
 7ページ目になりますけれども、その他働く場の変化として、起業、NPO、SOHO等の変化といったもの。それから、働く場での人権尊重という変化といったものを働く場での具体的なイメージとして書いております。
 4番目が家庭における変化でございます。家庭全般の重要性は今後も変わらないだろうという前提で、ただ今後は更に近所とかとの関わりが重要になっていくのではないかといったことを考えております。
 結婚後パート等をせずに、一生涯専業主婦でいる女性が減少していくような状況になっているのではないかということを書いております。その中で、あと1つ大きな変化としては、8ページ目でございますが、今、男性が家事、育児にもっと参加するということで進めておりますけれども、それだけではなくて技術、サービスの進展により、両立が進んでいくのではないかというような視点も入れております。
 家庭を取り巻く環境、制度の変化で、先ほどもちょっとお話がありましたように、職住近接したまちづくりなどが考えられるのではないかといった視点を入れております。
 家庭の中で、更に細かく高齢者ですとか、子ども、家庭の男女といったことで具体的なイメージを書いておりまして、まず高齢者につきましては、余暇時間が延びる中での活動といった視点。それから、介護対象者としての高齢者といった視点でまとめております。子どもにとりましては、養育の対象としての子どもということと、将来の男女共同参画を担う教育の対象としての子ども、実際家庭の中で男女共同参画社会の一翼を担っている子どもという3つの視点でまとめておりまして、子どもにとっても幸福な方向で男女共同参画社会の形成が進められていくのではないかというふうにまとめております。10ページ目が、家庭における男女の姿ということで、男女の姿、それから男性の姿、女性の姿、単身者、独身者ということで、具体的にどうなっているのかを入れております。
 11ページ目が、重点的に検討した以外のところとして、コミュニティーの話ですとか、健康の問題、教育の問題を若干記載しております。
 最後に「5.留意事項」で、男女共同参画を進めていくことで、男女共同参画以外にも、もう少し幅広い視点でいろいろな留意事項があるのではないか。例えば、少子化対策としての両立支援に係る先ほどのような話ですとか、多様化する生き方の中では自己責任が求められる話ですとか、競争が激しくなる社会では、セーフティーネットも必要になってくる話ですとか。また、個人が能力を発揮する社会になるならば、公平性の問題がより重視されてくるといったことを留意事項として書いております。
 最後が「6.まとめ」で、2020年にこういった姿を達成するには、いろいろな努力が必要であるようなことでとりあえずまとめております。
 ただし、これは検討を始めた最初の骨子案でございますので、いろいろと御意見をいただいているのを反映して、報告書のとりまとめ作業を進めていく予定です。本日御欠席ですけれども、八代先生には事前に資料をお送りしておりまして、コメントをいただいております。今、お配りしますけれども、全体として単なる願望であるのか、根拠に基づく展望なのかよくわからないのではないかといった、全体のコメント。それから、65歳まで雇用が継続されることについて、単純にプラスと考えていいのかどうかといった視点。それから、規制改革、構造改革で、格差が拡大する方向ということだけで短絡的に見ていいのかという話とか、熟年離婚の選択的夫婦別氏制度のようなコメントをいただいております。
 御説明に伺えず、メールにて御意見をいただいております。単なる願望か、根拠に基づく展望かにつきましては、これ自体として、政策を議論し、積み上げて将来を予測するような立場は取っていないので、どちらかというと将来の希望予測といった方向になっております。
岩男会長
いろいろ御意見がおありだと思いますし、内容の議論に入る前に、確認させていただきたいのですが、ただいまの御説明でこれはファーストドラフトだからいろいろな意見をこれから反映させてというお話でしたけれども、その検討会というのがあるわけです。検討会でいろいろと御議論いただき、この専門調査会に御報告していただくことはお願いしてあり、本日御報告があったわけですが、ここで私たちがいろいろな意見を出しますと、検討会との関係でどういうふうに意見が反映されていくのか、自由にいろいろなことを申し上げてよろしいのか、何回かお集まりになって検討されたものは当然尊重しなければいけないということもあると思います。ですから、その辺を。
名取局長
今、パブリック・コメントをしておりまして、先週の金曜日にも「えがりて聞く会」で、多くの方々から御意見をいただいたところです。したがいまして、これはまさに骨子でございますので、自由に御意見をいただきまして、御意見に対しましては、私どもで先に事務局案をつくってお示ししようと思っております。今日いただきました御意見もそういうわけで事務局案に反映させていただきたいと思いますので、是非御自由に御意見いただければと思っております。
岩男会長
それでは、まず古橋委員からお願いします。
古橋委員
現在、こういう将来像について出すことの重要性について、よく認識していただきたいということが第1点です。基本計画についてそろそろ基本問題専門調査会で検討しなければいけない時期になりました。基本問題専門調査会で我々が計画を検討するときには、過去にビジョンを出したときのいろいろな前提条件がその後8年経ってどういうふうに変わってきたかを客観的に分析しなければいけない。そのような時期にあるということが一つです。
 したがって、私はこの懇談会ができるという話を聞いたものですから、それは基本問題専門調査会でやるべきだということを有識者会議のときに申し上げたけれども、既にもう発表しておりますということでできなかったですけれども、しかしそれならばその検討途中で、この基本問題専門調査会にちゃんと報告しなければいけませんよということだけ念を押したのですけれども、残念ながら今回その報告の前にパブリック・コメントを求めるという事態になってしまって、大変私は残念であると考えています。
 官房長官がおっしゃった趣旨というのは、男女共同参画社会の問題について、皆さんいろいろ努力していただいているけれども、これについていろいろ批判もあると、そういう批判に対してちゃんと応えると。男女共同参画社会になったら、こういうふうになるのだよと、今はいろいろ辛いことがあるかもしれないけれども、こういうふうになるのだから皆さん御協力くださいという意味において、男女共同参画社会の将来像を検討してくださいという趣旨だと思っておりました。単にこういうふうになりますよというのを出しても、それは何も意味がないと思います。
 そして、それは現在反対論がある程度ある、誤解に基づく反対論があるのに、これを出すことによって、我々が反論を出す絶好のチャンスだと思っております。そういうような意味において、この将来像が与える意義は非常に大きいということを考えた上で、重く受け止めて、慎重に検討しなければいけないというのが第1点であります。第2点目として、私は他の懇談会などについて余り言いたくはないですけれども、言うことも失礼だと思いますけれども、しかし今まで我々が努力してきた男女共同参画に対する理念とか、そういう問題意識が余りにも少な過ぎる方向ではないかというふうに思います。
 私が40年前にイギリスにいたときに、マクミランからウィルソンへというまさに保守党から労働党に政権が移るときの政党のマニフェストを見たときに、今、日本でもマニフェストが出ておりますけれども、そのマニフェストのときの議論は、今の保守党の政策をそのままやっておれば、経済成長率はこうなりますと。これに対して、労働党はこういう政策をやることになって、具体的に成長率をいくらにしますと。それに対して保守党は、そうは言っても、今のままではこうなるけれども、我々はこういう政策をやってこの成長率を維持するのですというようなことによって、今のまま放っておいたらこうなるけれども、我々の政策によってこういうふうにするのですということなのです。
 だから、こういうものを官房長官が依頼されたということは、今のままでいったならば、今はある程度よくはなってきましたが、こういう問題があることを明らかにすることです。ここで男女共同参画社会形成推進の政策を止めてしまったら、こういうふうに現状はなりますよということを、人権の問題であるとかあるいは経済社会の情勢の中においても、少子高齢化についての問題を明らかにする必要があります。それについてももう少し経済的な分析をして、少子高齢化によって、生産年齢人口が減るというGNPに対する供給面、あるいはまた高齢化による消費支出に伴って需要面から、経済成長率がどうなるのかというような問題。
 また、これからのビジョンでは、内容について余り皆さんよく理解されていなかったと思いますけれども、工業化社会からポスト工業化社会、情報化社会に移る過程における経済の成熟化の問題を、これからどういうふうに捉えるのかという問題です。そしてそれが経済成長にどのように影響を与えるか、あるいは我々の生活にどのように影響を与えるか、そういう経済的な問題を捉えなければいけないし、そして成熟化の中にはサービス化が入ってくる。サービス化は、男女共同参画の問題にとってそれぞれメリット、デメリットになる面があるでしょう。そういう問題についてどういうふうに分析するか。
 あるいは、成熟化の中に価値観の多様化という問題があるでしょう。その価値観の多様化が、どのように過去に起こってきて、これからどのようになっていくのでしょうか。多様化が進むとするならば、それは男性・女性にとってどういうふうに作用するのかを考えることが2点目です。
 それから、国際化にしても、競争につながったときに、それは個性の能力を発揮しなければいけないのだから、女性の能力を拡大しなければいけませんよ、多様性ということでメリットがある面もあるかもしれませんけれども、国際化により競争が激化して、逆に厳しい状態が出てきますよというメリット、デメリットを分析する。あるいは、高度情報化が進展したときに、それが女性にとって逆にSOHO化とかによってメリットになる部分もあるけれども、逆にデジタル・ディバイドという問題もある。そういうメリット、デメリットをちゃんと分析して、男女共同参画社会形成推進の政策を止めた場合にはどうなるかという問題点を決めて、そしてそれに対する対応策を考えることによって初めて、先ほど申し上げたような官房長官の希望に応えるのではないか。それでないと、わからないのではないかと思います。
 ここで具体的に余り言いたくはないのですけれども、「2020年頃の社会状況」の中に、ビジョンというものが書いてある。それがもうこの中に極めて安易な、男女共同参画推進施策をこのまま放っておいてもこういうふうになるよというようなことがいっぱい入っている。今の状況から考えると、そんなことはあり得ないのでありまして、そこが非常に問題であると思います。それと後の方に書いてある「男女共同参画の視点からの2020年の姿」と、前の方の「2020年頃の社会状況」との関係が全くわからない。前の方で私がわかることは、世代構成とか人口とか世帯とか、労働力について非常に問題がまだある。それから、国際的動向はある程度わかるかもしれないけれども、定性的な変化については、これはもっとさっき言った価値観の多様化という問題をもう少し分析しなければできない話だと思う。
 それから、地域社会の変化もある程度、私は予測できるのはないか。しかし、このままにしておいたら、他の要件を一定にしたときに、国際化とか少子高齢化とか情報の高度化とかがどういうふうに影響していくか。他の要件を除いてどうなるかを予測して、そして男女共同参画社会の形成がなかったときにはどうなるかを指摘して、それに対して、それだからこそこういう対応策を講じますよ。その対応策を講じた結果、我々が目指す男女共同参画社会はこうですということを言わなければ、もう棚からぼたもちみたいに男女共同参画ができるようなことを発表したら、国民に対して極めて悪影響があるし、官房長官の御趣旨と異なるのではないかという気がいたします。個別的なことについては、既にもう事務局に言ってありますので、ここでは非難的なことになるので余り言いませんけれども、個別的な問題でも非常に問題点があるというふうに指摘だけしておきたいと思います。
岩田会長
山口委員、それから寺尾委員、どうぞ。
山口委員
皆さんに発言していただかなければいけないから簡単に。この将来像について、パブリック・コメントを求めるということで、女性団体の方でも議論していますが、正直言ってみんなお手上げの状態です。と言いますのは、女性全体の意見の要約というのは到底できない。今どういう状況にあるかと言いますと、男女平等と言っていても、なかなか実現しないと、やっと基本法ができたと、それで推進体制もできたと、そして基本計画もできたと。ほとんどの人たちは自治体で生活しているわけです。そこで予算は少ない、条例もなかなかできない、もう本当に悪戦苦闘しているわけです。そして毎日の生活があると。そのときにこれを見て、夢のまた夢と言っているのです。例えば、先ほど高橋先生のところで、これから女性議員の選挙制度なんかの検討をなさるというふうに確かおっしゃったと思うのですが、例えば地方議会というのは、進んだと言っても、4年に1度の選挙では2%ぐらいしかやってない。あと毎年各地で行われる選挙では0.1 %ぐらいしか女性議員は増えない、とてもじゃないけれども、2020年にはここで言うチャレンジの30%なんていうのは夢のまた夢、15%行けばいい方だというぐらいみんな現実的な計算をしているわけです。
 将来像を書くのはいいけれども、書き方についてもまず21世紀の最重要課題といっているのだから、やはり100 年を5分の1に分けて、そして21世紀の最重要課題の第一ステップとしてはここまでと、そういう書き方。それからやはり理念がどう今、あれがスタートしてから20年後はどうなるか、やはりある程度そういう基本法に照らして書いていただく、それから現実的にこういう問題があり、こういう進展もあると。その中で男女共同参画なしには日本の社会の活力はないというふうに書いていただかないと、これは思い付きだというような批判があるのです。
 大きくは、今、割と暗い気持ちがあります。戦争はあるし、憲法の問題もあるし、何と言いますか暮らしの圧迫感がある。とてもじゃないけど将来像を書く前に、一体世の中の経済や社会の状況はどうなるのかと、みんな不安に思っている。男女共同参画社会をつくるという方向で、女性たちもより積極的に考えるようになったといういい面もありますけれども、現実が厳しいからこの状況の中でどうも将来像のこれに飛び付いていけないと。
 私が思うに、少し急ぎ過ぎるなと思いました。やはり1年間ぐらいかけて、各地で基本法と施策と今後について、みんなに聞いて回るということを時間をかけてやるべきだと思います。しかし、せっかく将来像をここまで検討会がつくられたならば、ある程度のところまでまとめてもいいけれども、余り具体的に書かれてしまうと、ずれや格差が大きいと私は思います。
岩田会長
寺尾委員、どうぞ。
寺尾委員
大きなことを1つと各論的なことを1つ申し上げたいと思います。大きなところについては、私も古橋委員と全く同意見で、こういう将来像という話は、我々が言っている男女共同参画社会というのは、どういう社会なのかいま一つよくわからないから絵を描こうという話になっているわけですが、絵を無責任に描くのは問題ですね。ですから、これをしないとこうなるというのがないと、ただ放っておいてこうなるというふうに言うと、全く無責任でしかないと思うのです。ですから、しないとこうなり、するとこうなると、こういうふうにならないためには、これとこれがこういう順番で必要だというものがないと、もう全く意味がないのではないかと思います。
 もう1つ各論的なことですけれども、ちょっと気になったのは、例えば、8ページのところの、技術・サービスの進展により、家庭における家事時間は減少している云々とありますけれども、私は先ほどの「ケータイを持ったサル」の話とも関係ありますけれども、今、日本の社会の基盤になっている2つのものが、非常に大きな変化と危機に直面していると思っています。それは家庭と地域社会だと思っています。これにしっかりてこ入れをしない限り、もう悲惨なことになるのは目に見えています。
 前に樋口委員がおっしゃっていましたけれども、日本の高度経済成長は、ある意味で戦時の在り方、つまり夫はずっと軍隊じゃない会社に出たきりで、妻はうちにいて銃後を守るということでやってきて、その体制のまま、そこは変えずにバブルの崩壊に突入しました。だから今、働いている人はリストラされないために前以上に働いているわけです。ところが若い人たちには仕事がない。こんなにやっているのに先が見えない、よくならない、若い人には仕事がないという、将来が見えなくてものすごく不安という、そういう非常に悪い状況があるわけです。やはりそのときに大事になってくるのが地域や家庭なのです。しかしそれも危機に瀕している。
 ですから、私は家庭が新しい将来社会の中でどういう役割を果たすべきか。さっきの社会性という話で、保育園の話も出ましたけれども、私は家というのは子どもの社会性の原点であり、公の原点はやはり家庭にあると思います。だから家に家族が一緒にいて料理をつくったり、何か人間が生物として、人間として必要なことをやる原体験を共有する時間というのは、とても大事だと思うのです。しかし、それは今の日本社会では十分許されていないのです。それをしないでおいて、妻だけ家に戻れと言ってもこれは絶対無理です。その家庭の問題があってそれから今度地域社会、学校の問題も出てきていますね。地域と学校をもっとオープンにしていこうという動きもありますけれども、そういう中から再生の道を探っていかないと、やはりどうしようもない状況に追い込まれていくのではないかと私は思っていますので、そういう危機感を持ったものも書いていただきたいです。よろしくお願いいたします。
岩男会長
竹信委員、それから住田委員、お願いいたします。
竹信委員
様々な女性たちからも全く同じ意見が出ています。男女平等と唱えていれば自然になるような、バラ色のものを突然出されても困るという声です。
 具体的に言いますと、自分が好きな働き方を選択できるとか、一生専業主婦でいられる女性の数が減少している。それから技術的な進歩で家事が楽になるとありますが、家庭にいて家事ができる時間をつくるような労働時間をどう設計できるかの方が大事です。家事や介護・育児は技術進歩とかロボットで解決できる問題ではないのです。こういうふうにすべきだと、こういうものを入れるのだというものを具体的に打ち出していかないといけないのです。
岩田会長
住田委員、どうぞ。
住田委員
私も大きな方で言いますと、こういうものを出すときにはいろんなねらいがあると思います。1つは、予告的効果として将来的にはこういう根拠があるとこうなるのだから、そういうふうな備えをしましょうということ。それともう1つはやはり夢とか理想を述べた上で、それに向かっての政策的な道のりを書くということ。そこら辺がどうもあいまいになっているのではないかと。
 3つ目は、古橋委員もおっしゃったように、男女共同参画会社の批判に対する対応策、それに対してはこういう問題があるという厳しい現状認識に欠けていると。多分、寺尾委員とも同じ考え方だと思います。
 その1つとして、私は書いてないのが非常に気になったのは、治安の悪化への対策です。女性が働きに行くことによって、家庭が留守になって、家庭としての防犯機能が落ちている。
 それから、女性が働くことによって、子どもの教育がおざなりになって、特に今、規範教育が緩んでいて、将来的に治安の悪化とあわせて基盤が緩むのではないかと言われている。それに対してどう考えるかという視点は入らないのでしょうか。実際に検挙率が低下しているということと、率としての少年犯罪の増加が問題で。そういうものを見据えた上で、どうあるべきかということをきちっと言わなければいけないのではないか。
 最後に、平均年齢が上がるとともに、社会全体一人ずつの育ちが遅くなっていて、未熟化傾向が広がっている。それに対して自立する教育という視点が必要ではないか。今までのパラサイトできるような経済的に豊かな父親、生活面を全部見てくれる母親はいなくなるということをはっきり書く。自立支援をきちんと位置づけておかないと、ますます子ども化した幼稚な社会になってしまうという心配を持っています。
岩男会長
北村委員、どうぞ。
北村委員
本当にこのとおりいけば、なかなか悪くない世の中だなという気もするのですけれども、実際には男女共同参画に関していろんな施策がある。それが必ずしもうまくいってない。あるいは、法的措置として足りない部分もある。例えば、我々がこういった2020年を考えたときにすぐ出てくるのは、別氏制はどうなるのとか、年金どうなるのとか、あるわけですね。こういう仕組みがあるので、こういう結果になるという、各社の社会的なシステムと、その結果の因果関係がこれだとはっきりしないと思うのです。その因果関係で、仕掛けの方がうまく機能してない部分について言及することがないと、放っておけばこうなるという無責任につながるような気がするのです。ちょっとそこのところを留意したいと思います。
岩男会長
委員の皆様同じ御意見だと思いますが、やはりこういうものを読んで一般の人が、頑張って男女共同参画社会を一日も早く実現する必要があるという気持ちになるようなものでないといけないと思います。そこでこれまでの御意見を踏まえて、やはり構成からもう一遍検討し直していただいて、そしてお示しいただくということをお願いしたいと思います。
 それから、併せて私が気になったことは、男女共同参画社会であろうがどういう社会であろうが、とにかく社会は続いており、そこで私たちは生活していくわけで、ありとあらゆるものが関係あると言えば関係があるのですけれども、一般刑法犯検挙人数の男性の多さというのがぽんと出てくると、やはり男女共同参画社会というところにもう少し絞って書かないと、拡散してしまって、あれもこれもで、男女共同参画社会の将来像が見えてこないです。関係のないところはもっとそぎ落としていただいていいと思います。
名取局長
まだ、御遠慮されている向きもあるかもしれませんので、また個別にいろいろと伺って拝聴していきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
岩田会長
何か御発言ございますか、今のようなことでお願いをしておくということにさせていただきたいと思います。それでは、余り時間を超過せずに一応本日の議題は終了させていただけたと思います。
 それでは、特に御発言がなければ、第23回基本問題専門調査会を終了させていただきたいと思います。本日は大変お忙しいところをありがとうございました。また是非おいでいただきたいと思います。

(以上)