男女共同参画会議基本問題専門調査会

  • 日時: 平成13年12月10日(月) 17:00~19:00
  • 場所: 内閣府3階特別会議室

(開催要旨)

  • 出席者
    会長
    岩男 壽美子 武蔵工業大学教授
    会長代理
    八代 尚宏 (社)日本経済研究センター理事長
    委員
    伊藤 公雄 大阪大学教授
    住田 裕子 弁護士
    高橋 和之 東京大学教授
    竹信 三恵子 朝日新聞企画報道室記者
    寺尾 美子 東京大学教授
    古橋 源六郎 (財)ソルトサイエンス研究財団理事長
    松田 保彦 帝京大学教授
    山口 みつ子 (財)市川房枝記念会常務理事

(議事次第)

  1. 開会
  2. 男女共同参画に関する基本的な問題について 
  3. その他
  4. 閉会

(配布資料)

資料1
選択的夫婦別氏制度に関する審議の中間まとめ
資料2
選択的夫婦別氏制度に関する審議の中間まとめ(概要)

(議事内容)

岩男会長
定刻になりましたので、ただいまから男女共同参画会議基本問題専門調査会の第6回会合を開催させてい ただきます。本日は、大変お忙しい中お集まりいただきましてありがとうございました。
 本日の議題はお手元の議事次第にございますとおり「男女共同参画に関する基本的な問題について」でございます。 議事に入ります前に、前回の中間まとめを取りまとめました選択的夫婦別氏制度に関して御報告をいたします。
 本件につきましては、10月11日の第5回専門調査会において御議論をいただいて取りまとめ、私と会長代理とで御相談 をいたしまして10月17日に資料の1のとおり公表をいたしました。また、概要につきましては資料の2のとおり作成しており ます。その後の選択的夫婦別氏制度に関する新聞報道等につきましては、お手元にお配りしてございます。
 また、選択的夫婦別氏制度の導入のための民法改正に関するその後の動向につきましては、本日法務省の方にお越 しをいただいておりますので簡単に御説明をお願いしたいと思います。
 それでは、どうぞよろしくお願いをいたします。
法務省(民事局付和波検事)
法務省民事局の和波と申します。本日はよろしくお願いいたします。
 本日は、選択的夫婦別氏制度に関する中間まとめ以降の民法改正の動きということで御報告の機会を与えていただき ましてどうもありがとうございます。
 まず、委員の皆様方の精力的な審議によりまして、本年10月11日付で選択的夫婦別氏制度を導入する民法改正が進 められることを心から期待するという旨の中間まとめをいただきました。非常に積極的な御提言をいただいておりまして、 我々としてもありがたく思っているわけでございますけれども、この中間まとめの公表を受けましてまず森山法務大臣が 翌12日の記者会見におきまして、「この中間まとめの提言について非常に心強く思っている。更に各方面の理解を得る努 力を続けた上で、できるだけ早期に審議していただく機会がくるように願っており、そのための努力を続けていきたい。」と いう旨を発言いたしております。
 また、翌週の17日には福田官房長官からも「この選択的夫婦別氏制度の問題については政府としても具体的な検討を 進める必要があり、法務省を中心に全力を挙げる。」と、このような発表をいただいております。
 このように中間まとめを公表していただきまして、政府としてこの問題についても積極的に取り組むべきであるというよう な形の流れができたわけでございますけれども、法務省としましても関係方面の御理解を得るべく努力を続けていたとい う状況でございます。
 そのような中で11月5日でございますけれども、選択的夫婦別氏制度導入に向けた議論を進めるよう、自由民主党の 議員の賛同者の方々、45名の方が党3役に申入れをしたというような状況がございます。
 こういった政府としても進めるべきだという動きとともに、自民党内部でもいろいろ議論がございまして、11月8日でござ いますが、自由民主党政務調査会法務部会司法制度調査会合同会議というものが開催されまして、そこで「婚姻制度等 に関する民法改正の検討の経緯について」というものが議題として取り上げられております。
 その会議におきましては、法務省より出席をいたしまして、法制審議会答申に至る経緯、それから法制審議会の答申全 体の内容、更に議員提案で民法の改正案というものが国会に提出されておりますけれども、その民法の一部改正法案と 法制審議会の答申との相違点といったものについて説明をさせていただいております。
 そうしまして、その法務部会で議論がされた結果、その後、選択的夫婦別氏制度の導入の問題に限定して議論を行うと いうことが決定されております。このように、自由民主党内部でもこの問題について議論がされるという状況になったわけ でございますけれども、その後、先日の臨時国会の閉会に至るまで、6回にわたりまして自民党の法務部会で議論が継 続されてございます。
 これまでの議論の状況によれば、結婚して氏を改めた場合の社会的な不便、不利益といったものがあるということにつ いては皆さん御認識されているとは考えておりますけれども、その解消の方策として別氏制度というものを導入するかど うかということに関しましては、いまだ多数の反対の方々がおられるという印象でございます。
 その反対派の方々の論拠の主なものでございますけれども、1つ目はまず児童虐待あるいは青少年犯罪が増加してい るといった家族、家庭の崩壊が進んでいる状況で、家族のきずなを弱める方向に更にひと押しするのではないか。このよ うに考えられる選択的夫婦別氏制度をなぜ今、導入する必要があるのかといったこと。あるいは、家族の在り方として同 氏、別氏を選択制にする、個々の家族の選択にゆだねるということは現行の法制と一致しない、あるいは我が国の家族 観、社会観、そういったものに影響を与えるのではないかといった考え方。更に、別氏を選択した夫婦はいいのかもしれな いけれども、その結果、子どもの氏と夫婦の一方の氏は必ず相違することになる。この親子が別氏になるということにつ いてもっと慎重な配慮をすべきではないか。更に新聞報道でもございましたように、現在は別氏に反対している子どもた ちが多いのではないか。そういった状況で、子どもたちの意見に耳を貸すことなく制度の導入を進めるというのは望ましく ないのではないか。こういった議論がされてございます。
 このように、別氏制度の導入に反対している方々といいますのは、制度の内容について誤解をしている方もいらっしゃる のかもしれませんけれども、その内容については十分把握した上で御自分の考え方、倫理観、社会観、そういったものに 基づいて反対をされている方が多いといった印象を持っております。
 また、影響ということで一番大きく取り上げられておりますのがやはり子どもに対する影響で、別氏制度を導入した場合 に子どもにどういった影響があるのか、悪影響があるのではないか。こういったことを反対の根拠とされている方が非常 に多いということでございます。
 ただ、先ほども述べましたように、氏を改めることによる不便、不利益、これについての認識というのは共有されていると ころでございまして、この点については通称使用を公認することで十分解消できるのではないかといった議論もされてご ざいます。
 この通称使用ということに関連してでございますけれども、世論調査の結果の読み方についても賛成の方々と反対の 方々で若干ずれがあるのかなという気がしております。この世論調査につきましては、内容的には事前に十分内閣府とも 相談した上で実施をさせていただいたものではございますけれども、この中で通称使用を容認するかどうかといった選択 肢がございます。別氏制度導入に反対する方々といいますのは、この通称使用の容認というのは戸籍上の同氏が原則 である。ただし、同氏になったときの不便、不利益を解消するための方策として通称使用を認めるという意味では別氏制 度に反対としてカウントすべきではないか。これを反対としてカウントした場合には約52%強、世論の半数以上が別氏制 度の導入に反対しているといった議論をされる方もございます。
 自民党の法務部会ではこのように、賛成、反対ともにさまざまな議論がされてございます。むしろ印象としては反対派の 方々の意見の方が強いのかなという気もいたしますけれども、いろいろ議論が交わされた上で先日、12月7日、臨時国会 の最終日でございますが、直近の法務部会が開催されております。その法務部会におきましては、法務部会長の取りま とめというものが行われておりますけれども、その取りまとめの内容といたしましては、「現行制度により氏を改める者に とって社会生活上の不便等、さまざまな負担が強いられている場合もあるという認識については大方の意見の一致をみ ている。
 しかしながら、この問題に対してどのような制度的方策をとるべきかについては、なお意見が大きく分かれている状況に ある。このようにいたしまして、今後も党として真摯にこの問題を検討すべきである。」といった観点から、幅広く党内の意 見を聴取した上で法務部会での審議を継続するという形で取りまとめがされてございます。したがいまして、今後もさまざ まな方の議論、意見を聞きながら議論が深められていくことになるわけでございますけれども、来年以降も更に法務部会 等で検討が進められるのであろうと考えてございます。以上が選択的夫婦別氏制度をめぐる中間まとめ公表以後の大ま かな流れてございます。
 次に、先ほど申し上げました法務省が現在検討しております試案の内容について簡単に御説明をさせていただきたいと 思います。
 現在、法務省の方で検討をしております試案の内容でございますけれども、基本的には平成8年2月に答申がされてお りますが、その答申の内容と相違はございません。しかしながら、1点だけ法制審議会の答申との相違がございまして、 子が称すべき氏、子の氏の点について若干変更がございます。法制審議会の答申におきましては、別氏夫婦というのは 婚姻のときに子が称すべき氏を届け出なければならない。そして、子が生まれた場合にはすべてその子が称すべき氏を 称して、複数の子どもがいる場合にはその氏は統一される。その婚姻後には、子が称すべき氏の見直しは認めないとい う考え方を答申として行ってございます。
 しかしながら、この点につきましては婚姻時に子が称すべき氏を定めて、その後一切変更を認めないということについて 硬直的ではないかといったような意見も出されておりますし、実際に議員提案という形で国会にこれまで提出されておりま す法律案におきましても、子どもの出生時に子が称すべき氏を定めるという形のものがほとんどでございます。そこで、こ の点につきましては現在検討中の試案と答申とは内容が変わってございまして、子が称すべき氏はまず婚姻時に定めな ければいけないという点は同じでございますけれども、その後、第1子が生まれたときにその子が称すべき氏について夫 婦の協議で見直すことを認めるという形の考え方を提案させていただいております。
 しかしながら、その氏の見直しができるのは第1子の出生時だけでございまして、このときに違う氏を届け出るということ をしなければ、婚姻時に定めた氏がそのまま子が称すべき氏ということになります。そして子どもが複数いる場合、2人、 3人いる場合にはその子ども相互の氏というのは統一すべきものといった形で考えてございます。
 それ以外の点につきましては、法制審議会の答申と現在の試案というものは特に変更はございません。
 以上、現在の状況と法務省で現在検討している案について御説明をさせていただきました。
岩男会長
ありがとうございました。それでは、ただいまの御説明について何か御質問がございましたらどうぞ。
古橋委員
戸籍法の一部を改正する法律案というのがあると聞きましたけれども、その戸籍法の改正案というのはどう いう内容なんでしょうか。それから、この戸籍法の改正というものはほかの法律に対して強制力を持たせるような内容に なっているんでしょうか。
法務省
内容につきましては、議員の方が提案されておりますので細かいところについてまでは御説明が難しいんです けれども、基本的には旧姓を通称として使用するというものを戸籍面上記載をする。例えば免許証でありますとかパス ポート等、そういったものについて旧姓を通称として認めるかどうかというのは個々の法律にゆだねるというような考え方 ではないかと思います。
古橋委員
戸籍法で書いても強制力はないということですね。
法務省
ただ、戸籍で公証できるという意味で、他の法律である程度その通称を使いやすくするといったことは言える のかと思います。
古橋委員
戸籍法の書き方について、いろいろな代案とか、そういうようなものは自民党の中では議論されなかったん ですか。
法務省
代案という形で議論があるとは承知しておりません。
寺尾委員
法務部会に、法務省の方から御提案の趣旨で法改正を行ったときの戸籍のイメージもお出しになったという ことでしたが、それは私たちが戸籍謄本として受け取るときの書類がどういうような形になるかというのをイメージなさった ものをお出しになったということだと思うんですけれども、どういうものなのですか。
法務省
基本的には、これまでの戸籍ですと一番最初の冒頭のところに氏というものが記載されておりまして、それ以 外の個々の家族のところには名前だけが記載されておったわけですけれども、そこのところにも別氏の場合にはそれぞ れ氏を付けていく。個人の名欄のところにそれぞれ氏と名前という形ですべて書き込んでいくといった形の戸籍になろうか と思います。
寺尾委員
今は氏欄のところに家族の氏が書かれているわけですけれども、別姓にする場合にはどちらの氏が氏欄に 書かれることになるのでしょうか。夫婦別姓を選択した場合、子供の氏とすることにした氏が書かれるんですか。
法務省
そこのところは戸籍法の組み方次第ではございますけれども、現在は婚姻のときに一応子が称すべき氏とい うのを届けていただくことにしておりますので、その氏をまず最初に書いてインデックスとしての機能を持たせるということ を考えております。
寺尾委員
その場合に、この御提案では子が称すべき氏として届けた氏と異なる氏を第1子の出生時に選べることに なっていますね。そうすると、例えば田中というお父さんの氏にすることにしてあった場合には田中というのがインデックス になるわけですが、その後、太田という妻の氏があった場合には太田花子とかという記載になるわけですね。その後に、 例えば初めは父親の方の田中と名乗ろうとしていたんですが、出生時にそれをやめて太田にすることになると、インデッ クスのところには田中と出て、あとは太田花子、太田太郎、太田何とかというふうになるわけですか。
法務省
はい、そういう形になります。
竹信委員
自民党でしたか、不便を強いられていることでは認識が一致とおっしゃっていましたね。ただし、それでもだ めだということなんでしたでしょうか。
法務省
そこは大きく分けますと3つの考え方があろうかと思うんですが、1つは現状のままでよいという考え方、それ からもう一方はこちらでも御議論いただきましたように選択的夫婦別氏制度を導入するという考え方。それで、その中間と いいますか、不便については解消すべきだ、ただし、同氏原則は残すべきだとお考えの方々が通称使用という形で不便 は解消できるのではないかといったことをおっしゃっております。
竹信委員
解消できないというのがこちらの意見だったわけですけれども、それについては特に何か意見は出たんで すか。
法務省
そこは恐らく認識の相違というところもあるのかと思うんですけれども、まだこういう場合に通称が困るとか、そ ういった議論は一応しておりますが、通称で足りないというところで御納得はいただいていないということであろうと思いま す。
住田委員
戸籍法やその施行規則改正案というのが出てきまして、私もじかにある会合のときにその意見をおっしゃる 方のお話を聞いたわけなんですが、その方々としては要するに民法にだけは絶対触ってくださるなというような気持ちが 非常に強いわけでして、戸籍法などの改正による通称で足りるはずだとおっしゃるのです。しかし、これは民法改正の反 対の理由とマッチしないというか、非常に食い違うという気がしてならないんです。
 そもそも、夫婦別姓を反対する理由として、子どもの氏とばらばら、それから夫婦も氏がばらばらということにあるので しょうが、それは実質的に容認することになるわけですね。そうすると、民法改正に反対の理由があるとおっしゃりながら、 戸籍法改正でいいということ自体が非常に筋として一貫しない、それに対して筋が通るんですかということをお尋ねしたい ぐらいのものがございます。
松田委員
戦後の日本の法律の改正で一番大きく、一番インパクトがあったのは民法による家族制度ですね。非常に 基本的な国の制度の在り方だから、それをいじるのはよくよく慎重でなければならぬ。それ以外の法律で処理ができるこ とならばそれで済ませるべきだという考え方があります。ただ、法律は人間のためにあるんですから、もう少し簡単に変え てもいいんじゃないでしょうか。
山口委員
将来とにかく少子化で人手不足になっていく。女性が自分の仕事を持っていくというときに、八代先生が規制 緩和論をお書きになって、説得力があるなと思っていたんですが、今度の自民党の部会では八代先生の規制緩和論は 余り触れられなかったみたいですね。この議論はなかったんですか。
法務省
それについての議論はなかったというふうに承知しております。
岩男会長
それでは、別氏制度の問題はここまでにしたいと思います。どうもありがとうございました。
 次に、本専門調査会の今後の検討課題についてですけれども、次回以降につきましては男女共同参画を進めていく上 での重要な課題の一つである政策・方針決定過程への女性の参画の促進のための積極的改善措置を今後取り上げて いく方向で事務局にひとつ検討していただきたいと考えておりますので、これにつきまして事務局から御説明をお願いをし たいと思います。
内閣府
(男女共同参画局村上推進課長) 基本問題専門調査会における今後の検討課題について御提案をさせてい ただきます。
 「政策・方針決定過程への女性の参画の促進のための積極的改善措置」についてですが、この政策・方針決定過程へ の女性の参画の拡大というのは男女共同参画基本計画の第2部の最初に挙がっておりまして、そこの一番初めの文章 で、男女共同参画社会の形成を図っていく上で、政策方針決定過程への男女共同参画はその基盤をなすものであると述 べています。男女共同参画社会基本法でも、男女共同参画の形成についての基本理念の一つとして政策等の立案及び 決定への共同参画を掲げておりますし、更に男女共同参画社会基本法に定める責務として、国は基本理念にのっとり、 施策を総合的に策定し、実施する責務を有することが規定されており、その施策の中には積極的改措置、ポジティブ・ア クションが含まれるということが書かれております。
 また、皆様よく御存じのとおり、男女共同参画社会基本法の第2条のところで定義が規定されております。まず男女共同 参画社会の形成の定義がありまして、男女が社会の対等な構成員として、自らの意思によって社会のあらゆる分野にお ける活動に参画する機会が確保され、云々とあります。積極的改善措置はこの「参画する機会が確保され」の機会に係 る男女間の格差を改善するため必要な範囲内において男女のいずれか一方に対し、当該機会を積極的に提供すること をいうと定義されているわけですが、極めて重要な概念であります。
 また、男女共同参画基本計画の中には、「実効性を担保する仕組み等につき総合的に検討する」と明記されておりま す。
 それで、政府においてもこれまで国の審議会等委員の登用や、女性国家公務員の採用や登用など、様々な措置を講じ てまいりました。しかしながら、国や地方公共団体、または民間、具体的には企業ですとか各種機関や団体ですが、そこ におきましても積極的改善措置が必要とされる分野はいまだ多く残されております。また、地域社会において住民と密着し た様々な団体で女性の参画を進めることも、これを地域に根づかせるという意味で重要な意義を有すると考えられます。 このため、基本問題専門調査会では、政策・方針決定過程への女性の参画の現状について調査、分析した上で、積極的 改善措置について、実効性が担保されるための仕組み等の検討を行うということでいかがでしょうかということです。
 ただ、基本問題専門調査会の検討方針で、以前御説明したものはどうしてきたのかということですが、まず基本的考え 方に関するものについてですが、男女共同参画社会の形成に向けての施策を講じていく上での基盤となる基本的な考え 方、概念等について検討していく必要があるということで、まず男女共同参画と男女平等概念というのが挙げられておりま す。これにつきましては、第2回の基本問題専門調査会において男女平等概念について検討をいたしました。それから、こ の積極的改善措置につきましても男女平等概念と非常に関連があるテーマでございます。
 次に、経済の構造変化と男女共同参画についてですが、これは影響調査の専門調査会で女性のライフスタイルの選択 に影響が大きい税制や社会保障制度、雇用システムなどの諸制度等について、現在、精力的に検討がなされているとこ ろでございますので、それを踏まえる必要があるのではということであります。
 また、男女共同参画達成のための指標でございますが、これにつきましては基礎データがまず必要でございますので、 平成14年度の概算要求の事項としまして男女共同参画総合指標作成のための調査研究と銘打ちまして、国の内外の各 種指標や統計を収集分析するという経費を要求いたしております。そういう方向で対応を今、検討しているところでござい ます。
 更に、男女共同参画と家族のあり方につきましては、これは大きなテーマでございますが、選択的夫婦別氏制度に関す る審議の過程で御議論いただきましたし、今日もそういう御議論が今あったわけでありまして、一応これについては概括 的ではあるにしましても触れていただいているのではということでございます。
 それから、個別課題に関するものとしましては、最初に御説明したときに例として選択的夫婦別氏制度というものを掲げ て、これにつきましては精力的な御議論をいただいたわけでございます。
 そういうわけで、当初と一致はしていないにしましても、新しいテーマとして政策・方針決定過程への女性の参画の促進 のための積極的改善措置を取り上げるということも一つの有力な案ではないかということで御説明させていただきました。
岩男会長
ありがとうございました。次にこの専門調査会でどういうテーマを取り上げるかということなんですけれども、 ほかの専門調査会との調整といいますか、ほかの専門調査会が既に手を付けておられることはそちらへお任せをすると いうようなことではないかと思います。
 ただいまの件につきまして何か御意見、御提案がございましたら、どうぞお願いをいたします。
八代会長代理
政策・方針決定過程への女性の参画比率を高めるというのは確かに北欧でも非常に重要なことだと思 うんですけれども、そういうことをしたら男女共同参画が実現するという暗黙の前提には、<1>男性の考え方と女性の考え 方は基本的に違う。<2>今は男性の考え方だけが政策決定に反映されているから共同参画ができない。したがって、<3>そ の比率を変えれば共同参画ができるという三段論法だと思います。しかし、今の夫婦別姓の問題を考えても必ずしもそう ではないわけで、男女の考え方の差よりも世代別の考え方の差とかの要素が非常に強いわけですね。
 むしろ今、大事なのは男女にかかわらず男性の間、女性の間の考え方の多様性をいかにして実現させていくかというこ とだと私は思うんです。
 むしろせっかく女性が企業で採用され、公務員として採用されても続けられないことに実は問題がありますが、それは働 く環境とか社会保障制度の問題であって、今の別姓問題もその一つであろうと思います。したがって、他の会議で税制、 社会保障制度、雇用システムなどの制度を幅広く検討しておられるから、これらは我々はタッチしてはいけないと言った ら、大事なものは残っていないと言えないでしょうか。
古橋委員
私は苦情処理・監視専門調査会の方の会長をやっているのですが、そちらの方では公務員に関する積極 的改善措置という問題を、人事院の調査を通じて検討することにしています。
 しかし、この間も議論が出たんですけれども、全体についての積極的改善措置についての指標をつくれとか、あるいは ファミリーフレンドリー企業というものを指導するときにどういう考え方で指導をするんですか、その指標というものはある んですかというようなことが議論になりました。それで、私としては、ゴール・アンド・タイムテーブル方式を各企業なり、あ るいは役所がつくるときにどういう考え方で実施しなければいけないのか検討する必要があると思います。ただ、これが 基本問題であるのかどうか。私は基本問題専門調査会というのは男女共同参画社会の実現に関するもっと基本的なこと を基本的問題として解決すべきであると思うんですね。そういう問題も私はやっていただきたいと思います。
伊藤委員
今の村上課長さんのお話は、影響調査専門調査会の検討を待って、何かあれば、こちらでその問題を引き 受けるということもあり得るというふうに私はお聞きしました。基本問題を考えるときに経済構造の変化と男女共同参画社 会というテーマは考えざるを得ないからです。ただ、基本問題専門調査会としては、影響調査専門調査会とは違う観点で の発想が必要なんじゃないかなという思いもございます。
 またもう一つ、積極的改善措置です。先ほどの別姓の問題もそうなんですが、少なくとも私は基本法の精神を実現する ということが我々の任務であると思っています。そのための、理念的な枠づけをするというのが我々の仕事だと思うんで す。積極的改善措置の問題についても基本法で定義づけられているわけです。しかし、自治体の動きなどを見てみても、 あるいは企業の動きを見てみても、この積極的改善措置そのものについての理解が十分ではない。何をしたらいいのか わからないという声も多い。そういう意味で、積極的改善措置の位置づけというようなものを基本問題専門調査会で明ら かにしておくということは我々の仕事の一つなのではないかなと思います。
高橋委員
どういうふうに問題を考えたらいいかという点で2つ区別した方がいいと思うんですけれども、1つはどういう ところに差別が存在しているかということを認識することがまず前提であるわけですね。それで、差別が存在するというこ とが認識できて、次の問題としてそれをどう改善するかというふうに展開するんだろうと思うんですけれども、ここで調査 の経費を要求されているのはどちらかなという疑問を持ったんですが、そういう差別の存在は今まで大分調査されている からもう必要ないということなのか。それとも、それもやるんだと、その上でこの指標というのが第1段階で何%ぐらいまで にしておこう、ということをお考えなのか。その点がちょっとわかりませんでした。
 それから、差別が存在するということが認識されて、その改善を考えていく場合、ここでも2つ問題を区別した方がいいと 思うんです。1つは、差別をなくすために制度を変える。現に存在する制度が差別を生み出している、あるいは差別の誘 因になっている。その制度を改善するというものですね。例えば2のところの税制、社会保障制度、こういったものは現実 に制度が差別を助長しているということで、それをどう変えましょうかという問題だと思うんです。広い意味ではそれも積極 的改善措置ということになるかもしれませんけれども、恐らく積極的改善措置として最も難しい問題になるのはもう一つの 方で、その改善をしていく場合にそういった現行の制度をいじるというよりはもう一歩積極的に新しい制度をつくるなりして やっていきましょうということですね。
 その場合に一番問題になるのは逆差別にならないかで、憲法の方の理論としても一番難しいのがそのジャスティフィ ケーションをどのようにするかということだと思うんです。基本問題専門調査会では、そういった理論面をかなり時間を 使ってやった方がいいのではないかなというのが私の印象です。従来の、例えば女性国家公務員の採用をもっとやって いきましょうという場合についても、日本の場合は男女平等社会をつくるんだというのがこの政府の大きな政策課題として 決められているわけですから、そういう課題を遂行していくための人材というのはどういう人材かという前向き指向で正当 化した方がいいのではないかという感じを持っているんです。つまり、男女共同参画が実現するような社会を求めていく場 合に、どういう人材が必要か。男女参画社会の形成という、そのための人材を求めるという未来指向で考えた方がいいん じゃないか。
 最近ではできる限り未来指向で考えた方がいいんじゃないかという議論が、私の印象では諸外国の議論を見ていると強 くなってきているのではないかと思うんですけれども、それでもどうしても過去との関連でしか説明できない問題もあるに はあるんですが、できる限りそういう未来指向で問題をとらえて説明していくというようなことを考えていく必要があるんだ ろうと思うんです。
坂東局長
今この基本問題専門調査会においてどういうテーマを今後取り上げるか、いろいろ御意見をいただきまし た。その御意見を踏まえて事務局の方で検討させていただきたいと思いますが、私どもがこの政策・方針決定過程への 女性の参画のための積極的改善措置について取り上げたらどうかというふうに御提案申し上げましたのは、基本問題専 門調査会は確かに基本的な理念について議論していただくというのが第一義ではありますけれども、恐らく全く白紙の状 態で自由に議論を戦わせていただくよりも、例えば選択的夫婦別氏制度というテーマがあったことによって家族に対する 議論が深まったというように考えております。
 そういうようなことを考えますと、我々としては、是非政府として、行政としてインパクトのある課題を取り上げたいと願っ ております。それで、例えば指標づくり調査研究は来年度予算要求しておりますけれども、かなりこれはワーキングチー ムの作業的なものになるかと思いますので、折々御意見はお伺いしますけれども、先生方の貴重な時間でディスカッショ ンをしていただくにはちょっとなじまないのではないかと今は考えております。当初はそうは考えていなかったのに申し訳 ございません。
 それからまた経済の問題も、これは全く八代先生がおっしゃったとおりなんですけれども、我々としましては積極的改善 措置というのはクォーター、それこそ高橋先生がおっしゃったように過去のハンディを取り戻すためのというふうな考え方 ではなしに、なぜ女性が各分野への政策決定に参画したらいいのかという部分を言わなければいけないだろうと思うんで すが、それは恐らく経済の活性化に向けても女性、新しい人材、ニューチャレンジャーが必要としているんだというふうな ことで是非理論づけていただけるのではないかと考えております。
 そういうことで積極的改善措置は、特に基本法の中でも非常に大事な概念とされておりますし、今、本当に高橋先生か らいい言葉をいただきましたが、未来指向で考えていく切り口としてこれを考えたらどうかなと。今のところ事務局の方では もう少し今の先生方の御意見を踏まえまして、ソフィスティケートされた段階でもう一度提案させていただきたいと思ってお りますが、そういった事務局のスタンスに御理解をいただければ幸いです。
竹信委員
私も今のお話で割合いいと思います。というのは、これだけ皆さんからいろいろな意見があって、ポジティブ・ アクションの見方が全く皆さん違っていることは今日わかった。私の解釈しているのは、ポジティブ・アクションというのは アファーマティブ・アクションとは違っていて、なぜ女性がそこに少ないのかという理由を突き止め、その理由を改善する のがポジティブ・アクションだというふうに定義されていると取材で聞いたことがあったんです。そうだとすると、それは八代 先生のおっしゃっていることと非常に相通ずるものが出てくる。だから、そういった形でこれだけいろいろな解釈があるとす るとやってもいいかなとちょっと思ったということを付け加えさせていただきます。
坂東局長
均等法にカバーされていないような分野、例えば各種団体ですとか、あるいは私的ないろいろな分野でも女性の参画が非常に少ないことをどう考えるのか。いろいろ御議論いただかなければならないことは多いと考えております。
伊藤委員
ポジティブ・アクションに関してはヨーロッパではかなりいろいろな動きがあるわけですね。そういうものを事 務局の方で一通りまとめて提示していただくことも必要なんじゃないか。日本のポジティブ・アクションの議論というのは ヨーロッパの動きと比べると慎重になっているのは事実だと思います。慎重になるならばどの点で、また、なぜ慎重にしな ければいけないのかを明らかにする必要がある。あるいは、大胆にできるところがあるなら大胆にやってもいいじゃないか とも思います。これもやはり議論の対象になるのかなと思います。
寺尾委員
私は家族の問題というのはやはり重要な問題であって、裾野の広い問題として存在していると思います。
 それはアファーマティブ・アクションなどとちょっと違うかもしれないけれども、先ほどの女性が機会を与えられて出て いっても続けていけないという問題は実はこの家庭の問題とすごくリンクしていて、子どもが生まれて続けていけなくなる 人がすごく多いわけですよね。だから、そこが私は究極のアファーマティブ・アクションといいますか、ポジティブ・アクショ ンの分野ではないかと思います。
八代会長代理
私は、先ほど高橋委員がおっしゃった点は大事だと思います。男女差別の定義をやはりきちんとしない と意見がすれ違うと思います。
 ただ、それは抽象的なことを言っていても仕方がないので、具体的な制度と絡めてこれは差別に当たるか当たらないか ということを言わなければいけないので、そのときに私は今の税制とか社会保険制度とか働き方というのが、実は差別を 意図していないんだけれども実質的に差別になる。なぜならば、その制度ができた当初と現在とで経済社会環境が変化 しているのにそれを認識しないからです。何が差別かという思想的な問題は当然ここで議論するんですけれども、それが 具体的な制度と結び付かなければ空論に終わってしまうと思います。
古橋委員
その点で、ずっと議論が残っているいわゆる間接差別の概念、国会の附帯決議において、これは雇用面で すけれども、ちゃんと基準をつくれという附帯決議があるんですけれども、これらの問題について差別ということを定義す るならば、いわゆる間接差別的なものについてどう考えるかという問題も私は基本的な問題として議論しておかなければ いけないなという気がいたします。
山口委員
それでは、ここがやるべきことについて経済だとか社会だとか、そういう面がありますけれども、立法府に関 することで、例えば選挙制度などというのはすごい影響がある。この間の参議院選挙も非拘束名簿式比例代表制になる と女性議員はがたんと減るとか、いろいろ問題はあるんですよ。やはりそういうものを恐れずに検討しないと、そういう政 策決定過程の課題に加える必要があるのではないかということを申し上げたいと思います。
岩男会長
それでは、ただいまいろいろ御意見を伺いましたので、これを踏まえてもう一遍事務局の方で検討をすると いうことにさせていただきたいと思います。
 次の議題に移らせていただきます。男女共同参画に関する基本的考え方に関するポイントについてですが、まず事務 局の方で御説明くださいませんか。
内閣府(男女共同参画局村上推進課長)
男女共同参画社会の形成に向けたさまざまな取組で、男女共同参画という 考え方は多くの方々に理解と共感を得つつあります。男女共同参画社会基本法の成立や男女共同参画基本計画の閣議 決定、そして、国内本部機構の強化というように、近年ますます取組が推進されておりますが、また他方、男女共同参画 に関する疑問や誤解も聞かれるところでございます。そういうことにわかりやすく答えていく必要があるのではないかとい うのが委員の先生方からも御指摘いただいているところです。
 それから、何よりも行政関係者、特に地方公共団体で男女共同参画を担っておられる方々からも、「男女共同参画に関 する基本的な考え方」に関する基礎的な疑問が、住民のサイドからも寄せられる、そういうときに、簡潔明瞭にわかりや すく行政の内外に説明することが必要だという声もございます。男女共同参画社会の実現は地方自治体関係者や住民 一人ひとりの意識等に負うところが大きいだけに、このような説明は極めて重要な意義を有するのではないかと思われま す。
 また、政府による様々な分野における構造改革の取組、失業率が上昇してきたというような背景、それから青少年の犯 罪とか児童虐待などの子どもをめぐる環境など、我が国社会をめぐる状況は急速に変化しております。こういう状況の下 で、考え方を整理しておくべき新たな論点も生じてきております。このようなことから、事務局におきましてよく聞かれる質 問を選びまして男女共同参画に関する基本的な考え方に関する事項について考えてみました。
 まず、21世紀の最重要課題としての男女共同参画と言われておりますが、なぜ最重要課題なのか。男女共同参画の必 要性についても聞かれます。
 それからジェンダーの内容に関する質問もあろうかと思います。
 次は就業関係で、女性が社会進出することの重要性や仕事と子育ての意義についての議論もあると思います。
 さらに、家族や子育てのあり方についてもよく話題になります。
岩男会長
ただいま、村上課長が挙げたもの以外にも是非こういうものを考えるべきだというものがあれば、それも含め て伺いたいと思います。
山口委員
本当にそのような質問は地方へ行くとしばしば出るんですよ。男女平等と男女共同参画についてどちらが 上位概念ですかとか、男女共同参画というのはどういうことなのかというのをしょっちゅう聞かれます。
 それで、定義のところなんですが、男女の人権が尊重され、経済社会の変動に対応していくために緊要な課題であり、 21世紀の最重要課題と書いてあるけれども、あの定義がまた長ったらしくてわかりにくい。わかりやすく説明していかなけ ればならないことはいっぱいあるんですね。
 先ほど高橋先生が未来指向とおっしゃって、男女共同参画社会というのはどういうふうな世の中なのかということを明記 する必要があると思うんです。経済社会の変動が男女共同参画社会形成を促進するいい方向に転換する機会ととらえ たい。今、小泉総理は構造改革の中で男女共同参画は重要なんだということを直接私も伺っているし、ではそれとの関係 を強調することもここの役割としてあるだろうなと。
 私は今、地域の基本計画づくりに参画していますが、どういうふうに男女共同参画社会基本法が地域に生かされている かという関心もあったので引き受けたんですよ。女性の起業に援助をすると言ったら、男性の中小企業の方が、すごい大 変な時だから男にもしてくれと言われたんです。その辺になると、男女共同参画との関係から、なぜ女性の起業にお金を 出さなければならないのか。そういうことも説明しなきゃいけない。
古橋委員
女らしさ、男らしさが強調されていい分野があってなぜ悪いのか。しかし、職業選択であるとか進路選択と か、そういう分野の場合においてはそういうことでやってはいけないので、やはり個性、能力に合ったもの、自分らしさを求 める必要があると思います。
 それでは、男らしさ、女らしさがあっていいのはどういう場合なのかなというようなことを具体的に詰めていかないといけ ないんじゃないか。例えば、ある大学の先生が言っているのは、ゴリラだって幼児期にはメスのゴリラがずっと抱えてい る。ある程度一人立ちになるとき、今度は男親がいろいろ指導をする。それこそまさに家庭内におけるジェンダーの役割 分担じゃないのと、こういうことを言っているわけですね。したがって、ジェンダーフリーと言った場合においてもジェンダー ですべてフリー、今までの伝統の中においてもいいものと悪いものがある。そこら辺のところの区別をもう少し具体的に見 た方がいいのではないかという気がするんです。とりあえず都道府県等の男女共同参画担当にとって参考となるような質 問の他、本当に基本的な問題として学問的にも検討しておかなければいけないようなクエスチョンについて委員から伺 い、議論する必要があると思います。
伊藤委員
今のゴリラの話というのはどうでしょう。サルの中にも雄が子育てをしているサルもいますので、余り生物学 的なメタファーで考えない方がいいんじゃないかと思います。生物を見るときに、現代の人間のジェンダー関係を生物に投 射してしまっていくような場合もしばしばある。というわけで、個人的には生物学的なメタファーというのは余り使わない方 がいいんじゃないかという思いがあります。
 それはともかくとして、私も来年の1月ぐらいに出る本でジェンダーフリー社会の見取り図という章を1項入れています。 そこでもこのような内容について議論しています。こうしたことについていろいろな問いかけに答えられるよう、具体的に考 え方を述べていくようなことが必要です。
 他に考えていただきたいのは、例えば女性が働くと少子化が進むんじゃないかというような意見もふれる必要があるの ではないか。少子化の問題というのは行政にたずさわる方たちも、今、敏感になっているテーマだと思います。
 基本法に反対されている方たちの議論には、男女共同参画の定義について、結果の平等を押し付けるものだという議 論がしばしばある。しかし、基本法をよく読めばそんなことはない。むしろ機会に関わるレベルで、機会の積極的な提供に ついて言っているわけです。ジェンダーフリーは左翼の隠れ蓑だというような声もありますが、今、男女平等を進めている のは旧社会主義国じゃなくてヨーロッパ諸国であるとか、アメリカであるとか、いわゆる民主主義国が進めているわけで す。その辺のところをきちんと押さえなければいけないんじゃないか。
 国際社会は大きな流れとしてジェンダー平等の方向に向かっている。女性の人権に対してきちんと対応できない国は成 熟度が低い国だと思われている。このことに関して、きちんと日本社会に向かって知らせていくことが必要なんじゃない か。
 イスラム原理主義の問題についてもいろいろなことが議論されていますけれども、女性の人権に対する配慮のなさとい うのはいわゆるイスラム原理主義に対する国際的な非難の一つのテーマだと思うんですね。この問題に対してきちんと 日本の社会が答えられるかどうかというのは、今の国際社会の中で日本の社会が名誉ある地位を占められるのかどう かという、かなり根本的な問題だと思う。こうした位置付けをどこかで示しておく必要があるんじゃないか。
住田委員
私自身もこういう事項について考えることは大賛成です。どこかでお話ししたり、書いたりするときこういうこ とをまずはざ-っと言わないと絶対に理解していただけないわけです。
 今回、30数ページの小冊子ができましたね。あそこに出ている表は私もかなり使っております。外国との対比で日本は 女性の活躍度が低い、この面では先進国ではないという意味でのgemの表です。次に、実際の日常生活においても遅 れていますということで、役割分担意識についての表です。男性はまだ過半数に達していません。
 また、これからの理想像としては男女ともにそれぞれの能力に応じた働き方ができることだと思います。これまでの専業 主婦について私はそれなりの評価はする。けれども、これからは両立がふさわしいんだと樋口恵子先生がこの間おっ しゃっていたような、そういうふうな意味合いで、これからの専業主婦はどうなるかということをきちんと言っておく必要があ ります。一方、今いらっしゃる専業主婦に対して危機感をあおるような言い方は、私たちの女性の問題をとらえる上におい ても問題だろうと思っています。
寺尾委員
啓蒙的発想、gemとか、そういった国際的な指標を出して説明するというのは私はやはり古い手だと思うん です。若い人たちにはこれは余り受けないと思うのです。これをやるなとは言わないんですけれども、私はやはり今、国民 一人ひとりが特に若い人たちも含めて自分たちの問題としてこういうことを考えるようになってほしいと思うのです。それを 引き出すような方向で、つまり私たちがやっていることに国民のサポートがあるんだとだれもが感じられるような方向での 何か展開が必要なような気がするんです。
 それで、先ほど未来社会についての絵をかくという話がありましたが、私はそういうことを動かしていくためにも、例えば 50年前の日本はどんな社会だったのか、男女共同参画社会という視点から見たときに、こういうところとこういうところが 変わってきて、これはよかったのではないですかということを国民に尋ねてみる。そしてある程度のコンセンサスを形成し て、そこに立って将来私たちはこういう社会にしたいんだという社会像を平明な言葉で示していくみたいなこともまた必要 なのではないかという気がいたします。
岩男会長
私も寺尾委員がおっしゃったことと全く同じことを考えていました。先ほど高橋先生が未来指向でとおっしゃっ たんですけれども、あるいは山口委員が出された点でもありますが、この男女共同参画社会を実現した暁にはどういう社 会ができ上がるのか。それをやはりわかりやすく、みんながこういう社会ならば是非その方向に向かっていきたいという説 得力があり、アピールする、そういう像を具体的に描いてみせる必要があると思います。
竹信委員
基本的に寺尾さんのと似ているんですけれども、つまり基本姿勢は海外がこうしているからということも資料 としてちょっとは入れてもいいと思うんですが、私たちが楽になるためにどういうことが必要なのかということだと思うんで す。それで、考えてほしいと思っていたのは、働けなければいけないんでしょうかという質問がものすごく多いんです。
住田委員
今の専業主婦に、私たちどうしたらいいんですかとよく言われます。
伊藤委員
男性にとってのメリットという点も重要です。つまり男女共同参画社会は、男性も家庭生活や地域生活や趣 味の時間が確保できる社会だというメッセージを流していかないと、男性の側にはぴんとこないだろう。
 また、今のお話の中で世代別の対応というのが要るのかなとも思うんです。例えば労働の問題に関しても中高年は別 に労働は当たり前だと思っている。男性などは家庭生活がむしろあるのが不思議だと思っているような人たちが多いわけ です。そういう人たちにどう語りかけていくのか。一方で、若い人たちのように、お父さんのところに自然に補助金のように お金が入ってきているみたいに思っている人たちに、例えば労働の問題を含めて今後の社会の問題をどう問い掛けるの か。世代によって語りかけるべき理念のレベルが違うと思う。あるいは専業主婦向けとか、職業別でも考えていく必要があ るのではないかと思います。
竹信委員
働かなければいけないんでしょうかというのは是非考えた方がいいと思います。
伊藤委員
最近、韓国の動きに注目しています。韓国は国際社会の動きの中で、この問題を考えていると思う。そうい う他の国の動きというのもきちんと日本の政治や経済に携っている方たちにメッセージとして伝えていくということも大切な んじゃないか。そうでないと社会全体として動かないんじゃないかという思いもあります。
 ちなみに、韓国は教科書もジェンダーフリーの方向に変えたという話を聞いています。お隣りの国の動きみたいなものを 調べていただくというようなこともお願いしたいと思います。
松田委員
私が今、余生の仕事としたいと思っているのは、これまでの終身雇用や年功賃金に代わるものとして同一 価値労働同一賃金を実現することなのです。要するに、男であれ女であれ、若者であれ年寄りであれ、個人という単位に 絞っていって、本当にみんなが納得するような価値観というものを打ち出して、それを寄せ集めていけばこれになるので はないかと思っているのです。
岩男会長
ありがとうございました。
 次回の専門調査会につきましては今後の検討課題及びこの基本的問題について検討をするということにしたいと考えて おります。日程等につきましては事務局で調整して改めて御連絡をさせていただきたいと思います。
 それから、1月に男女共同参画会議の親会議の方が予定されておりますけれども、ここでは別氏制度に関する中間ま とめについて御報告をするとともに、今後の検討課題につきましても今日幾つか出ておりますものを検討中であるというこ とを御報告をしたいと思っております。
 今日はどうもありがとうございました。

(以上)