監視・影響調査専門調査会(第17回)議事要旨

  • 日時: 平成18年12月20日(水) 10:00~12:00
  • 場所: 内閣府5階特別会議室

(開催要領)

  1. 出席委員:
    • 鹿嶋会長
    • 大沢委員
    • 勝又委員
    • 神田委員
    • 神野委員
    • 袖井委員
    • 橘木委員
    • 林委員
    • 古川委員
    • 山口委員
  2. 議題
    • (1) 開会
    • (2) 多様な選択を可能にする能力開発・生涯学習に係る監視・影響調査報告書の骨子及び盛り込むべき論点の整理
    • (3) 閉会
  3. 議事録
  • ●事務局から「多様な選択を可能にする能力開発・生涯学習に係る監視・影響調査報告書の骨子案及び盛り込むべき論点」及び、国及び民間における『能力開発・生涯学習を行う教育訓練サービス』について説明。
  • ●報告書の構成、論点の整理、区分の仕方についての議論

【報告書の考え方、能力開発の在り方について】

  • 報告書の全体の方向性のようなものが読み取れる必要があると思う。例えば北欧では、いつでも、だれでも、どこでも、ただでという学校教育と成人教育が二本立てになっており、男性も女性もすべてやり直しがきくシステムができているが、まずどういう教育、職業訓練体系を想定するのか。また同時に、非正規や家事労働を担う人の参加が十分に保障されていないため、参加保障をセットで提案していくべき。訓練への参加保障は、中断した場合のやり直しを可能とする条件であるので、参加を保障する教育訓練体系が必要である。また教育訓練体系自体も、だれでもアクセスできる体系として整備するということが分かるようにしたほうが良いのではないか。日本は、教育と職業訓練の体系が分断されているなど、産業構造が極めて激しく動くときには、今までの日本の方法では限界が出てくる。今、そこを問われているのではないか。
  • 今後の労働市場をどういうふうに考えていくのかが、この報告書で非常に重要ではないか。女性だけでなく男性も労働市場が流動化し、企業も終身雇用制度で雇用を保障できなくなっている中て、能力開発をどう考えていくのか。企業のOJTや個人の学習時間などからも、日本全体として能力開発に割く時間やお金、企業のかかわりが減っているが、これからの日本の経済発展にとって人材育成が不可欠になっていくという問題意識で報告書を書くといった説明がはじめにあると良い。
  • 教育訓練は国ではなく民間が多いということだが、日本の国の支出する職業訓練費が、他の先進国と比べて非常に低い事実について国際比較の数字を出してはどうか。
  • 現在の労働市場が要求する職務能力に合わせて養成する訓練と、本人の内在する能力を発揮させるための人材育成は異なるが、後者の能力を高めることが思わぬ新しい革新を呼び起こすこともあり、企業内でも両方行う必要がある。
  • 非正規雇用等で社会保障に組み込まれない人がいるが、どのように働いても社会保障の仕組みの中に組み込まれていくこととの関係でシステムを考えるべきではないか。
  • 正規・非正規にかかわらず、同一労働・同一賃金という方向に向かう政策も多様な選択を保障するための一つの手段であるということを書いた方が良いのではないか。
  • 多様な選択と言いながら、就業を強調しすぎていないか。
  • 報告書では、働きたい時にスムーズに就業できるためにどのような装置を作れば良いかということが今回の大きな課題であり、就業に重点を置くことにはなるのではないか。
  • 政策の展開として考えた場合に、非正規職員の問題など、職業との結びつきは非常に大事であり、報告書が広まりすぎて提言したいことが薄まらないよう配慮いただきたい。

【女性の仕事の中断について】

  • 女性が仕事の中断後に技能をどう回復するかが前面に出ているようだが、その前に、辞めることによるハンディ、辞めないことによる利益を最初に書き、辞めないという選択肢もあることを示すということも良いのではないか。
  • 「就業中断期を前提とした……」という点について、確かに現状では中断している人が多いが、今は女性が子育てのため中断せざるを得ず中断しており、中断は前提ではなく過渡的な状況であるという見方をしたい。
  • 「辞めるな」というのは一つの示唆だとは思うが、安易に辞めているのか、本当に辞めたくて辞めているのか、巧妙に辞めさせられているのか、その辺がどうかということもあるので、少し慎重にすべきではないか。
  • 辞めることによる経済的ロスを客観的に並べてはどうか。

【「能力に応じた処遇」について】

  • 「個別の能力に応じた処遇」については能力ではなく職務に応じたというふうにすることで格差が是正できるのではないか。処遇は職務に応じるべきで、能力は固定化せず開発すべきだと思う。能力は持っていても、発揮しない場合や能力と違う仕事をする場合もあり、仕事上発揮しない能力を評価して処遇することは学歴別・年齢別の賃金のようなものをまた認めることにつながってしまうのではないか。

【「無業者」について】

  • 現実実際に地域で活動している人たちは大変大きな力を持っているのに、彼らを「無業者」という形で位置づけるのは問題なのではないか。
  • 無業者の把握について、例えば厚生労働省の国民生活基礎調査は世帯を把握する調査で、世帯員の就業や収入を見ている。個別ではなく世帯においてどういう状況かを見ていくことは重要であり、無業者の把握には、更に世帯をとらえた調査の実施を検討する必要があるのではないか。
  • 「無業者」のところは、職業訓練機会があまりないパート・アルバイト・派遣の人たちなど不安定就労の人も入れて考えるべき。統計の整備を提言する必要がある。
  • 関連して、男女別データについてもかなりとっていなかったので、提言するべき。
  • 無業者の能力開発については、例えば、無業者の中で、今は子育て中だが、両立可能な環境といった条件があれば働きたいという人が6割ぐらいいる。環境が調えば、能力開発にもっと参加したいということが非常に重要ではないか。
  • 「無業者」という言葉については、再検討する必要がある。

【子育て経験の評価について】

  • 育児休業取得者がマイナス評価を受けがちな問題について今後どうしていくかは大きな課題である。
  • 保育労働者の価値がとても低く評価されていることからも、子育て経験は評価されていないことが分かる。このような低過ぎる評価・処遇が前提になるとなかなか高い評価などできない状況にあるのではないか。
  • 子育て経験の積極的評価のためには、評価する者の育成の必要があるのではないか。
  • 評価にあたっては、その経験自体がすばらしいことだからという評価ではなく、その経験により育成された能力を分析して評価しなければ企業としては評価する価値がない。
  • 無償労働の価値が低く考えられているが、実際は無償労働で能力形成されており、そういう人を活用した企業が伸びているという状況がある。日本全体の、仕事に対する評価が非常に高く無償労働に対する評価が低いという価値観そのものが問われてきているのではないか。

【地域活動と就業について】

  • 市民活動・地域活動か職業かは、二者択一ではなく両方やるという観点からの能力開発、条件整備をする必要があるのではないか。
  • 現実に地域で力を持っているのは、非正規雇用労働者や専業主婦だが、その層について考慮されておらず、評価もされてないのではないか。
  • 地域の男女共同参画にかかわる運動などを担って運動してきた専業主婦やパートの女性たちが働きたくなくて働かなかったということではなく、また、働いている人が地域にかかわりたくてもかかわれなかったというように、地域と仕事が勝手に分断されてしまったのであり、どちらか一方だけが大事であるといった印象を与えないようにすべき。

【「非正規」という用語の使用等について】

  • 「非正規」という用語の使用について、正規-非正規間の格差が大きい中では、「非正規」という言葉を使用した方が問題点が鮮明になるため、使用すべき。
  • この言葉を使わないことによってかえって論点が隠蔽されるのではないか。

【起業女性への支援について】

  • 起業で苦労している女性に対して、行政として起業の分野や助成金などについてもっと情報提供していく必要がある。

【資格制度について】

  • 無業の女性や主婦が何かしようというとき、資格があれば有利になると思い資格取得をすることもあると思うが、取得した資格がいかされていないことがあり、資格制度についても一言触れるべき。
    →統計データの分析の資料に加えて検討していきたい。

【能力開発を必要としないような職業分野について】

  • あまり訓練や再教育を必要としない分野が増えていて、そういう職の非正規は多く、仕事の内容を問わなければ仕事そのものはある。この問題をどう扱ったらいいのか。
    →官の役割の一つとして、地方公共団体などによる能力開発によってステップアップをしていく道筋を作るということになるのではないか。ヨーロッパでも非正規労働の増加抑制よりは、むしろそこにいつまでもいないでステップアップするということを強調しているように思う。

【講座の参加率の低下について】

  • 最近は専業主婦が少ないので講座参加者が減り、働いている人たちも土日や夜間講座にあまり来ないため、講座で人を育成するのが大変な状況になっている。

【ITの活用について】

  • 家庭の女性たちに対する支援として、ITの活用や在宅の取組について奨励すべき事例などを情報提供すると良いのではないか。

【官の役割について】

  • 学習への参加保障は非常に重要な論点である。地方では学習の場が近くにないため、公民館やハローワークが実施するといったように、参加保障の観点から、国・都道府県・市町村の関係が位置づけられなければいけない。また実施にあたっては、政策の推進や実施を担う主体と具体的な研修を担う主体は別であることが望ましく、その上で連携することが必要だと思う。

(以上)