監視・影響調査専門調査会(第15回)議事要旨

  • 日時: 平成18年10月23日(月)13:00~15:00
  • 場所: 内閣府3階特別会議室

(開催要領)

  1. 出席委員:
    • 鹿嶋会長
    • 勝又委員
    • 神田委員
    • 神野委員
    • 袖井委員
    • 林委員
    • 古川委員
    • 山口委員
    • 横田委員
  2. 議題
    • (1) 開会
    • (2) 多様な選択を可能にする能力開発・生涯学習施策に係る各府省ヒアリング
      • 文部科学省
      • 農林水産省
      • 総務省
    • (3) 閉会
  3. 議事概要

各府省からそれぞれ所管する施策及び以下のⅠ~Ⅴのヒアリング項目について説明後、質疑応答を行った。

  • Ⅰ.施策の立案及び評価に際して施策に関する男女別のニーズや効果に関するデータを把握し利用しているか
  • Ⅱ.施策の評価について、事業実施の実績などのアウトプットだけではなく、その後の就労への結びつきやマクロデータの変化などアウトカムでの評価を行っているか
  • Ⅲ.個別施策単位のみでなく、能力開発または生涯学習施策の事業全体として評価をしているか
  • Ⅳ.施策間の連携について、関連する分野・テーマの施策や、「能力開発についての動機付け」-「能力開発」-「就労支援」など、能力開発に関する一連の施策が連携して行われているか
  • Ⅴ.企業等(農業経営、NPO等も含む)の人材ニーズを能力開発プログラムに反映させているか

【文部科学省ヒアリング】

(施策についての説明)

  • 昭和62年に生涯学習局が設置、平成2年に生涯学習振興法が制定され、すべての都道府県で生涯学習担当部局を設置、多くの自治体で振興計画が作成されている。
    公民館における職業知識、技術関連講座、学習数、
    平成10年度4,780件、平成16年度1万8,690件。
    公民館の講座受講者、66.4%が女性
  • 大学等において大学公開講座、社会人特別選抜、科目等履修生制度、長期履修学生制度、サテライト教室の開設、昼夜開講制、夜間大学院の制度、法科大学院を含む専門職大学院の制度化など、柔軟な制度改革が進められており、生涯学習を支える基盤が整備されつつある。
    長期履修学生制度:平成16年度122大学導入、
    109学部、96人、大学院研究科235研究科756人履修。
    社会人の受け入れ数
    大学の公開講座 平成16年度667大学、大学の94.1%で2万873講座
    うち女性のみ対象282講座、全講座の1.3%。
    大学院の社会人入学者 平成11年8,094人、平成16年1万3,908人。
    科目等履修生制度:平成16年度669大学に制度有。利用学生1万8,921人。
  • 現在大学では社会貢献が重要視されており、地域活性化・地域づくりのための取組として、インターンシップの推進、産学連携による教育プログラムの開発実施を行っており、企業ニーズを取り入れた教育等が推進され始めているところであり、文科省としても支援している。
  • 家にいながら学習ができるということも重要であり、通信制大学・大学院、ICTの活用、学校や企業の提供する通信教育で社会教育として奨励すべきものの認定・普及、コンテンツの発信による学習機会の提供を行っている。
    通信制大学:平成18年度、学部 1万3,905人、うち女性7,961人57.3%、
    大学院1,226人 うち女性496人40.5%。

(博士課程の通信制は平成14年制度化)

社会通信教育利用者:平成16年度約13万人。

  • 放送大学は昭和60年から学生を受入れているが、平成14年から修士課程に学生受入れを開始している。平成18年1学期現在全学生数8万4,552人うち女性4万8,694名、57.6%
  • そのほか広く活動を通じた学びとしてボランティア活動を学校教育法・社会教育法を改正し促進している。
  • 中央教育審議会生涯学習分科会、国民の学習活動の促進に関する特別委員会において、国民一人ひとりの学習活動の促進の方策、職業能力の向上について調査等も踏まえながら幅広く検討中。
  • 男女の地域生活充実支援事業として、男性の家庭生活、地域活動両立支援事業、女性の社会参加支援促進事業も行っている。
  • 女性の多様なキャリアを支援するための懇談会の多様なキャリアが社会を変えるという報告書を踏まえ女性のキャリア形成支援プラン事業を実施。
  • 社会人キャリアアップ推進プランの中に女性の再チャレンジコースという女性枠を予算要求段階から設け、子育て中・子育て後の女性に配慮した内容を加えたカリキュラムを実施。
  • 国立女性教育会館は女性教育の我が国唯一のナショナルセンターとして国内外の女性関連施設・機関との連携を図りつつ、女性教育指導者の育成あるいは関係者に対する研修、交流機会の提供、調査研究、情報収集提供を行っている。

(ヒアリング項目に対する回答)

Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ個人対象の施策というよりもシステムの構築が主体であるため、データをとっていない。また、男女別のデータをとるために質問項目を増やして調査先に負担をかけることが難しい。
短期間で成果が出されないことから、評価になじまないという考えもあり、今までアウトカムは意識してこなかったが、平成14年に政策評価法が施行され、平成17年3月には政策評価の基本計画も策定されたことから、政策評価の取組が進みつつある。
Ⅳ・Ⅴ再チャレンジについては、企業と連携するが、知の探求が目的という施策もあり、必要に応じて実施している状況であるが、今まで視点が不足していた面もあり、生涯学習審議会で検討しているところである。

【質疑応答】

  • 50~60代のキャリアアップ教育・再チャレンジプログラム支援について、成果は分からないのか。
    →女性のコースとして位置づけたのは今年からなので、まだ分からない。
  • 何に結びついているかが分からないと予算を投じる意味が分かりにくくなるのではないか。放送大学について入学者数は男女別に把握しているということだが、卒業者数やその後の就職状況についての把握はどうか。
    →卒業者数について、把握の有無を確認する。
  • あらゆるものについても男女別データを把握した上で施策を実施するのが基本であり施策対象を男女別としていないからといって男女別データを把握せず分析できないというのでは困る。
    →省内担当課では、男女共同参画が直接の施策目的ではないため、調査項目の増加による回答者の負担増大に抵抗があるようであるが、引き続き依頼してまいりたい。
  • 地域や大学との連携についてはどうか。
    →教育委員会に委託し、そこから再委託しているものもあれば、直接に実施しているものもあるなど事業による。
  • 評価は大切なので外部に委託する際にも評価を組み込む努力が必要ではないか。
    →反省点として認識している。今後アウトカムでどういう指標をとっていくかを定め、委託する際にも組み込んで把握しなければと思う。
  • 男女別データの把握については以前からお願いしているが、是非省内に徹底をお願いする。

【総務省ヒアリング】

(施策についての説明)

  • 柔軟に働くことができる勤務形態の在り方として、テレワーク施策を推進しているところ。
  • 「『2010年までに適正な就業環境の下でのテレワーカーが就業者人口の2割』となることを目指す」(平成18年1月IT戦略本部決定「IT新改革戦略」)ことを目標としている。
  • テレワークの現状は、就業者人口比率で10.4%(平成17年度テレワーク実態調査)。
  • 大企業のテレワーク実施率について諸外国と比較すると、日本は14.7%、米国は68.9%、韓国21.2%で、諸外国よりも後れている状況。
  • 総務省におけるテレワーク推進施策は3点ある。
    • Ⅰ.総務省におけるテレワークの試行による具体的な課題と解決方法について検討し、「総務省テレワーク推進会議」において本格的にテレワークを行うことを決定し、育児・介護に携わる職員を対象にテレワークを可能とした(6名。うち、男性4名、女性2名)。
    • Ⅱ.民間企業でのテレワーク導入のため、セキュリティについては「テレワークセキュリティガイドライン」、労働条件等については「テレワーク導入のガイドブック」を作成・配布。
    • Ⅲ.産官学一体の組織である「テレワーク推進フォーラム」を総務省、厚生労働省、経済産業省、国土交通省で共同設立。先進事例紹介、セミナー等を開催。
  • テレワーク普及推進のため、中小企業者の方々をターゲットとしたセキュリティ・勤務管理・円滑なコミュニケーション等の課題等についての実証実験のための予算を要求している。
  • 企業がテレワークの設備整備を行う際に、固定資産税の軽減措置ができるようにするよう要求している。

(ヒアリング項目に対する回答)

  • Ⅰ.就業者人口の10.4%であるテレワーク人口(2005年時点)の男女内訳は男性8%521万人、女性153万人2.4%。
  • Ⅱ.アウトカム目標として、IT新改革戦略の「テレワーク人口を2010年までに2割にする」という目標の下に、3年ごとにテレワーク人口の調査を行い、全体的な状態を把握している。
  • Ⅲ.テレワークについては、自律的に働くということで、自己管理能力等の向上に資するものであるため、直接的な能力開発事業としての評価には結び付かない。
  • Ⅳ.テレワークは間接的な能力開発に資するものではあるが、施策の連携をして行ってはいない状況。
  • Ⅴ.「テレワーク推進フォーラム」で、企業、NPO、大学教授等の御指導等も頂きながら、施策を推進する上でニーズの把握等も行いつつ推進している状況。

【質疑応答】

  • テレワーク人口が男性に比べ女性が少ないことについて、また、テレワーカーの定義について、また米国でのテレワーク人口が7割近いことについてどう考えたらよいか。
    →ITを使って週8時間以上働いている者で、働き方としては在宅勤務、サテライトオフィス勤務者、モバイルで営業先などを回り本社に行かない働き方の三つの働き方と、自営型としてSOHO的な働き方を含めてテレワークとしている。
    テレワーク人口で男性が多いのは、営業でモバイル的な働き方をしている方が多いためではないかと思うが、最近では次世代育成支援対策推進法の企業の行動計画の対策の一つとしてテレワークの導入を挙げている企業もあり、今後改善されていくのではないか。なおSOHOの中には、業務だけではなく、育児や病院の情報交換等を推進しているものもあり、主婦には自営型テレワーカーが有効ではないかと思う。また現在女性が少ないことについては課題。
    米国との違いについては、テレワークは1970年代にアメリカで始められたということがあるのではないか。また米国では裁量労働制のようなものも導入されているが、日本の9~17時という労働時間帯では、なかなか労働を把握することが難しいといったこともあるのではないか。
  • テレワークの働き方について、低賃金、健康管理、孤独感、在宅を奨励する結果となり育児・介護がより女性にシフトしやすくなる危険性など、マイナス面についても検討しているか。
    →テレワークは既に就労している人がどこでも仕事をできるようにという観点からスタートしたため、低賃金という認識はしていない。アウトソーシングにおける低賃金は課題だが、それは労働問題全体の課題ではないか。健康管理については認識しており、テレワーク導入ガイドブックでも重視して書いている。
    孤独感、コミュニケーション不足については、例えばウェブ会議、テレビ会議システム等で一つの対応ができるのではないかと思うが、より良い方法について、今後の課題である。
    介護や育児で在宅を奨励してしまうのではないかについては、今回総務省で行うものは公務員で裁量労働制が認められておらず、基本的な労働時間は職務専念義務があり、在宅を奨励するものではない。目的としては、保育園の送迎、子どもと触れあえる時間の増加等を念頭に置いている。
  • テレワークについて今後、しっかりした調査をしてほしい。
    →国交省、厚労省、総務省、経産省の4省庁で連携した形で調査をやっていきたい。

【農林水産省ヒアリング】

(農産漁村女性をめぐる状況)

  • 就業人口に占める女性の割合: 農業53%、林業、漁業が約17%。農業と林・漁業には差がある。
  • 農業委員の数、農協、漁協役員に占める女性の割合、女性の認定農業者の数も非常に低い状況ではあるが、徐々に参画が進んできている。
  • 起業活動でも朝市の直売所、農産物加工といった女性の起業が年々活発化している。全体で約9,000、うち6割がグループ活動であり起業の年齢構成の中心は50~60代が約8割。売上高では約300万円未満が6割近い。
  • 農業経営に関し約4割の女性が経営全体、または特定の分野を仕切りたい意向を持っている。
  • 農林漁業では男女の置かれた環境に違いがある。農山漁村女性の特徴やニーズを踏まえた支援が必要ではないか。
  • 起業活動に関連する出荷販売、農産物加工や、簿記記帳といった経理管理部門を担いたいといった農村女性の意向もあり、女性の能力や感性がいかしやすい分野を重点とした取組も必要ではないか。
  • 女性の経営参画する上での課題は、家事、育児との両立を課題が最も大きいが、能力開発に対する支援の重要性もうかがえる。
  • 能力開発の施策を提供する際には、家族経営形態が大宗を占めること、結婚を機に就業する女性が多いこと、経営と家事・育児との両立のため、外出する機会が少ないことなど、農村漁村女性の特徴を踏まえたものとする必要がある。

(具体的な施策の取組)

  • 配布資料にそって説明。
  • 今後の課題としては、担い手の育成・確保の観点からの女性の能力開発支援、若い世代の女性も対象とした能力開発支援、起業活動の一層の高度化などである。

【質疑応答】

  • 家庭内での無償労働を行いつつ労働市場に参加する人と家庭内での無償労働から解放されて労働市場に参加される人とでは、分断された労働市場が形成される危険性があるが、農山漁村における男女の意向の差異は、農業経営に同じ立場で参加できる条件で生じているのか、条件が整わないため生じているのか。参加を保証するサービスを提供しないまま、幾ら教育を行っても無理なのではないか。
    →確かに農繁期には、家事・育児の分女性の労働時間が長くなるため、両立支援の施策も必要だと思うが、それが障害となって本当は参画したいができないのではなく、むしろ家を相続した男性と、結婚で就農した女性の意識の差の方が大きいのではないか。
  • 農業者大学校等の研修教育への男女別参加比率はどのぐらいか。
    →都道府県の農業大学校では女性が18.7%。
  • こういうところに参加することが、能力発揮・開発にとって非常に重要だが女性の参加比率は低い。この背景に参加し得ないような構造的なものがあるのではないかと思うが、どうか。逆に言えば、参加比率を引き上げるときに、どういうことが必要なのか。
    →現実的には、男女に限らず、なかなか新規で入ることが難しいので、女性の問題というよりも、新規就農の難しさを解決しなければいけないのではないか。
    現在新規就農者は年間39歳以下が1万2,000人程度、うち全く後継者以外の新規参入者は530人、うち女性は7%。家業を継ぐという産業の性格もあると思うが、門戸は開いていくべきと考える。
    法人協会等で、高校生、大学生を対象に行っているインターンシップでの参加率は男女半々くらいだが、実際に就業するのは男性となる。職業選択の段階に男女差があるのではないか。
  • 起業の売り上げ300万未満というのは法人経営が多いのか、グループ経営が多いのか、それはどんな傾向があるのか。
    →グループの方が売り上げは大きいがメンバー1人当たりではかなり小さいものが多いと思う。
  • 起業と夫が経営している農業の規模との関係の有無について、例えば地域的に企業経営が成功している地域、夫の大規模経営の上に女性の起業が成り立つといった特徴があるか。
    →グループ起業は、恐らく地域としてのまとまりで行っているのではないか。個人起業の場合は、夫の経営内容も影響してくるのかと思う。
  • 農村自体の起業をしたいという意向についての調査はあるか。女性に対する起業資金融資等を農林水産省では奨励したことがあるか。
    →起業の意向に対する直接的な調査はない。起業支援として、国で農業改良資金という無利子のチャレンジ資金を用意している。その中で申込みが定員に達した場合女性を優先する優先枠を設けているが、そもそも利用者が少ない状況。恐らく小規模で始めたり、グループメンバーで少しずつ出資して行っているのではないか。施設整備などは国の補助金を利用している方もいるのではないか。ほかに、昨年から一部の予算で、農協や都道府県市町村が実施主体になるものについては、女性の参画目標を作ることが条件という形で出しているものがあり、農協では当面の目標として、農業の数と同程度の女性役員を増やす決議をしたところである。
  • 50代、60代、70代での起業者は、雇用労働者とは違う状況があると思うがどうか。
    →産業自体が非常に高齢化しており、女性として特別なものではないのではないか。しかし、男女では、男の方が若干早くから始められる環境にあるかもしれない。
  • 調査が女性に限定されて行われているので、男性と比べてどうなのかが分からない。
    →起業調査では、女性に限定をしているが農業の中で男性の起業するケースが少なく、農林水産業の起業活動は大体女性の起業ではないかと思う。

(以上)