監視・影響調査専門調査会(第11回)議事要旨

  • 日時: 平成18年6月19日(月) 15:00~17:00
  • 場所: 永田町合同庁舎第一共用会議室

(開催要領)

  1. 出席委員:
    • 鹿嶋会長
    • 大沢委員
    • 勝又委員
    • 神田委員
    • 神野委員
    • 袖井委員
    • 林委員
  2. 議題
    • (1) 開会
    • (2) 都道府県・政令指定都市の審議会等における国の職務指定の報告書取りまとめに向けての審議
    • (3) 女性の能力開発に関する有識者ヒアリング及び質疑応答
      • 女性ユニオン東京 伊藤 みどり氏
        「パートタイム労働者の能力開発について考える」
    • (4) 閉会

【都道府県・政令指定都市の審議会等における国の職務指定の報告書取りまとめに向けての審議】

  • 事務局から報告書修正案について説明
  • 分かりやすくなって良くなったと思う。
  • 職務指定委員に占める女性の割合は、2.2%(平成13年)から3.8%(平成17年)に改善したが依然低いという説明を入れてはどうか。
  • このテーマについてあまり積極的でない地方自治体もあるが、このような表現で良いのか。
  • 確かに積極的な自治体ばかりではないが、地方自治体からの「法令を見直して女性を登用しやすいようにしてほしい」との要望を踏まえて地方に対する関与を最小限にするというつながりで受け止めると良いのではないか。
  • 本案については、専門調査会の案としてとりまとめ、次回の男女共同参画会議に報告することについて了承。

【女性の能力開発に関する有識者ヒアリング】

  • 10年前に比べ、働く人たちの状況が悪化してきている。
  • 日本のパートタイムはパートなのにフルタイム労働であったり残業や配転があるなど、どこがパートタイムか不明確なところがある。
  • 能力のある非正規雇用の実態をみると、労働相談を受けている限りでは、その就労環境はひどく、国外で日本の最低賃金をはるかに割る賃金で就労させる、社会保険加入を申し出たら給料を減額される、妊娠を告げたら雇い止めされる、請負なのに労働時間を拘束される偽装請負などの実態がある。その一方で、仕事の内容については管理や人事評価、企画立案等に携わり、語学、編集、交渉能力など非常に高いスキルが求められている。
  • 昨年1年の女性ユニオンに来る相談としては1/3ぐらいが非正規雇用の相談である。
  • 女性の65.1%が年収300万円以下となっており、格差は一目瞭然となっている。
  • 35時間以内のパートタイム労働者も使用者側の仕事があるから働け、無いから帰って良いというオンコールワークだったり、土曜・日曜出勤可能と書かないと契約更新してもらえないという実態がある。
  • 男性が就いていた職場に女性が進出することで、賃金水準が下がっていく「貧困の女性化現象」が起きている。
  • 職場内でのモラルハラスメントなどもあり、職場が荒れていて、ストレスが過重になっていて、自己尊重感が持てなくなってきている。例えば信用金庫での横領事件や、レジでお金があわないなどが起きるとパートがまず疑われるというようなこともある。また、パート社員同士のいじめやコミュニケーションの断絶といった問題も出てきている。精神疾患や自殺の問題も正社員だけの問題ではなくなってきている。
  • 再チャレンジ支援については、能力開発と就職が結びついていないのではないか。
  • 企業の人事管理に携わる人たちの人権教育が非常に遅れているのではないか。人権意識が低下しているような事態が多く見受けられる。また労働基準法等の周知を徹底させるべき。
  • エンパワメントは一人一人が持てる力を引き出していくことだと私は考えているが、力のない人に力をつけてあげるという一方通行の教育が多く、そのため資格を取得させてもいかせていないのではないか。自己肯定できるような教育の在り方が必要。
  • ILOには、職業トレーニングだけではなく、自信をつけて生きていくためのコミュニケーショントレーニングのマニュアルなど、様々なマニュアルがあるが、日本語には翻訳されていない。そういったものが必要なのではないか。
  • 女性ユニオンではアメリカの教育プログラムを輸入し、議論の仕方やボジティブな思考などの訓練を行い、訓練を受けた人が自信をつけていくのを目の当たりにしているが、そういう訓練が少ないように感じる。
  • 母子家庭や低賃金女性、育児・介護を抱える女性が受けられる職業訓練機関が少ない。
  • 多くの女性はパートタイムであっても仕事に生きがいを見い出し、仕事をしたいと思っているが、働かせてもらえない状況があるという実態を踏まえて考えていただきたい。

【質疑応答】

  • パートタイムの中でかなり能力開発されているような人はまだあまりいない。パートタイムの能力開発は難しい現状なのか。
    →均衡処遇については、人事活用の仕組みが正社員と比べて同等なものを均衡処遇にするということだったが、労働時間の長短や配置転換などが一緒であればパートではない。男性の働き方をモデルにして同一にというのは見直すべきではないか。大部分の女性は高い能力を求められ、かつ厳しい条件に置かれている。
  • 能力開発と就業を結びつけるには何をしたらよいか。
    →能力開発で得た資格は履歴書を飾っているだけという感じである。企業としては履歴書に書かれた資格より職務経歴を重視して採用しているのではないかと思う。就職後に企業が必要なスキルを磨くために学校等に行かせているが、それは役に立っている。そこを援助した方が良い。
    →しかし正社員は訓練できても非正規はそういう訓練から切り離されているのではないか。
    →派遣会社で有料の職業訓練をしているところもある。正社員より仕事ができる非正規社員もいる。
  • 能力開発も重要だが、より不安定で過重労働の中に労働者が入ってしまわないよう、雇用の枠組み自体を考えないと問題が解決できないということかと思うが、どのような枠組みや規制が必要か。
    →パートタイム・派遣等の雇用管理によって区分して能力管理するのではなく、仕事に対して必要なスキルがどういうもので、それに見合う賃金がいくらになるかはっきりするような仕組みになれば良いのではないか。ILOの同一価値労働同一報酬を実行することだと思う。企業を超えた賃金相場が作られれば、一人一人の持っている力を引き出す方向での能力開発になるのではないか。
  • 今まで終身雇用や日本的経営を前提にして身分制の労務管理がなされてきたが、それが崩れた後をバックアップする社会的なシステムができていない。教育も学校教育と成人教育と2本立てになっていない、雇用も試験雇用や職業紹介行政がきちんと行われていない、欠勤の権利が使えないのも代替要員が手当てできないなど、日本的労務管理を前提にしてでき上がってきた行政ないし社会的システムをやめるのであれば作り上げておくべきシステムができていないのが問題ではないか。身分制管理が教育とリンクしていてOff-JTが体系立っていたし、それと処遇が結びついていた。しかし、それを崩していくのであれば、今までのOff-JTに代わるものをつくらなければいけないのでは。
  • 非正規社員が増加し、そこに女性が入ってきている。身分制の身分を変えながらも社会的な教育訓練を確立するように変化させていかなければいけないのではないか。
  • 同一労働同一賃金にすれば、職務分析で資格の格付けができる。
  • 職業にあった資格の仕事を紹介される、そして、スウェーデンでは試用期間6ヶ月の給料は政府が払い、企業が試用期間後雇用しない場合は不足した能力を示し、その能力があれば雇うと言わなければいけない。必要な訓練は無料で受けられ、その間は前の賃金の75%が保証され、再チャレンジできる。そういうやり直しのきくシステムがあれば良いのではないか。積極的労働市場政策に日本はもっとお金を使うべき。
  • 徐々に年功序列制度が崩されていくときに次の仕組みをある程度体系立てて準備しておくべき。
  • 労働市場のミスマッチについても、国が給料を支払う臨時雇用制度を入れれば良いのではないか。
  • 臨時雇用で能力開発をしながら正社員の資格がこうだからこの仕事に就くという形で連関させなければいけない。
  • 日本の経営者は能力を労働時間の長短や残業の可否や企業に対する忠誠心や協調性で評価し、何かできるかという評価になっていないのが問題ではないか。むしろ経営者側の教育をすべき。
  • 試し雇用をするときにどの能力が不足か明確にし、その能力があれば雇うという約束事をきっちりしておけば、違う理由で雇わないというわけにはいかないという責任が生じてくるのではないか。一般的なニーズではなく、極めて具体的な企業ニーズと、本人の訓練と、企業の責任という問題と明確にした能力開発の在り方をつくっていくことで、無駄なことにならない仕組みをつくっていけるのではないか。そのことで、その人の仕事の価値が明確になり、年功型ではない賃金に結び付く要素を能力開発の中でつくっていくことができるのではないか。

(以上)