監視・影響調査専門調査会(第36回)議事録

  • 日時: 平成21年5月26日(火) 10:00~12:00
  • 場所: 永田町合同庁舎第1共用会議室
  1. 出席委員:
    • 監視・影響調査専門調査会:
    • 鹿嶋会長
    • 大沢委員
    • 岡本委員
    • 勝又委員
    • 神田委員
    • 住田委員
    • 袖井委員
    • 畠中委員
    • 横田委員
    • 生活困難を抱える男女に関する検討会:
    • 阿部委員
    • 小杉委員
    • 湯澤委員
    • ※生活困難を抱える男女に関する検討会と合同開催
  2. 議題
    • (1) 「新たな経済社会の潮流の中で生活困難を抱える男女」に関する施策の各府省庁等   ヒアリング(第2回)
      • 文部科学省
      • 内閣府
      • 社会福祉法人 東京都社会福祉協議会
  3. 議事録
鹿嶋会長
おはようございます。委員の皆さま、連日で大変ですが、どうも今日はありがとうございます。ただいまから、男女共同参画会議「監視・影響調査専門調査会」の第36回会合及び第10回の「生活困難を抱える男女に関する検討会」を開催させていただきます。
 それでは、本日の審議を進めさせていただきますが、事務局からあらかじめ御連絡させていただきましたとおり、「新たな経済社会の潮流の中で生活困難を抱える男女」について、昨日同様、関係府省の担当者の方々からのヒアリングを実施いたします。
 本日は、文部科学省並びに内閣府男女共同参画局の推進課及び東京都社会福祉協議会より説明においでいただいておりますので、お聞きした上で質疑応答を行いたいと思います。
 各府省には、対象施策等の説明をお願いいたします。質疑応答の時間がありますので、説明は大体、文部科学省の場合は30分、内閣府の説明は20分程度でございますが、時間内で説明をお願いできればと思います。
 はじめに、文部科学省生涯学習政策局男女共同参画学習課 髙口努課長から説明をお願いします。どうぞよろしくお願いします。
文部科学省(髙口課長)
おはようございます。文部科学省男女共同参画学習課長の髙口と申します。
 「新たな経済社会の潮流の中で生活困難を抱える男女」に関します文部科学省の取組ということで、本日は、主に4点の施策につきまして説明をさせていただきたいと思っております。資料につきましては、資料2を御覧いただければと考えております。どうぞよろしくお願いいたします。
 1ページを御覧ください。本日発表させていただきます文部科学省の施策は、まず、キャリア教育・職業教育、2点目は女性のライフプランニング支援総合推進事業、3点目は教育費負担の軽減に関する施策、4点目は外国人家庭の子どもに関する施策ということで、以上4点につきまして御説明をさせていただきます。
 それでは、まず、キャリア教育・職業教育についてでございます。
 これは2ページでございますが、現在、文部科学省では、各学校におけます各教科、道徳、特別活動、総合的な学習の時間等を通じて指導するとともに、小・中・高等学校、また、大学、専修学校等一連の各学校段階を通じた体系的なキャリア教育・職業教育を推進しております。
 特に2ページでは、平成21年度のキャリア教育・職業教育に係る事業を記載させていただいております。小・中・高等学校段階におきましては、まず、発達段階に応じたキャリア教育の支援事業として、小・中学校の特に発達段階に応じた組織的・系統的なキャリア教育プログラムの開発に係る調査研究を行っております。
 また、高等学校、特に普通科におけるキャリア教育や高卒者、中退者への支援の在り方等に関する調査研究を行っております。
 3番目に目指せスペシャリストとございますけれども、特色ある取組を行う専門高校への支援を行い、地域社会を担う専門的職業人を育成しております。
 また、地域産業の担い手育成プロジェクトとして、ものづくりや食・くらしを支え、地域産業を担う専門的職業人を育成するための取組みを関係省庁と共同で実施しております。
 大学、専修学校段階におきましては、専修学校・高等学校連携等職業教育推進プランとして、職業意識の涵養を図るために高等学校と連携した意識啓発のための職業教育を実施しております。
 また、産学連携による実践的人材育成事業として、大学等におきまして、産学連携による実践的な環境の下で教育プログラムの開発を通じた実践的な人材を育成しております。
 もう一つ、関連事業といたしまして、「学び直し」の機会の提供ということで、専修学校等を活用した就業能力向上支援事業、また、社会人の学び直しニーズ対応教育推進プログラムを実施させていただいております。勤労観・職業観の育成、技術・技能の習得、また、自立した人間としての成長を図り、真に自立した、社会に貢献する若者等を育成するため、今申し上げました事業を実施しているところでございます。以上が平成21年度の事業の概要でございます。
 更に3ページでございますけれども、現在の経済社会の状況が非常に変化していることや、終身雇用、年功型賃金、新卒一括採用の変化、非正規雇用の増加等、就業構造が変化していること、団塊世代の退職や国際競争の激化に伴い、ものづくり等の人材育成が課題となる一方で、企業内訓練が縮小していること、また、フリーター、若年無業者が非常に多くなっていることや、中卒で7割、高卒で5割、大学卒で4割が就職後3年以内に離職するという早期離職の問題、また、学生・生徒の興味・関心、進路の多様化という若者の現状がございます。
 この状況を受けまして、特に、後期中等教育から高等教育にかけまして、学校から社会・職業への円滑な移行に向けた対応が課題になっており、特に高等教育におきましては、職業に関するより実践的、高度な知識・技能の育成が課題になっております。
 教育基本法の改正、教育振興基本計画なども踏まえまして、キャリア教育・職業の在り方が今非常に喫緊の課題になっております。昨年の12月に文部科学大臣から中教審に諮問をいたしまして、本年1月に学識経験者、学校関係者、産業界、労働界などの関係者からなるキャリア教育・職業教育特別部会を設置し、現在、検討が行われているところでございます。
 特に、3ページにございますように、検討の柱は3つございます。1点目は、学校から社会・職業への円滑な移行に伴う基礎的・汎用的な能力の明確化と発達段階に応じた体系的なキャリア教育の在り方、2点目は、特に高校段階ですけれども、普通科・専門学科・総合学科といった学科を超えて多様化する生徒のニーズに応じた職業教育の在り方、3点目は、職業に関する知識・技能の高度化が求められる中での各高等教育機関における職業教育の在り方、これらを中心に幅広い観点から検討がなされているところでございます。
 この特別部会の中で、女性に関するキャリアについても、例えば、女性は特に早い段階からロールモデルを見せつつ、生涯を通したキャリア教育という観点から対応していくことが必要であるとの意見や、短期大学で女子学生の割合が多いけれども、女性は一生同じ職場ということが少ないので、職場が変わっても生き抜ける力をつけていく必要がある等の意見も出されているところでございます。この中教審の検討結果を踏まえて、キャリア教育・職業教育の充実を図っていくこととさせていただきたいているところでございます。
 キャリア教育・職業教育につきましては、以上でございます。
 次に、2点目でございます。女性のライフプランニング支援総合推進事業でございます。
 これは、今年度からの新規事業で、予算額約2,500万円の事業でございます。資料にございますように、出産を機に7割の女性が退職して、家庭の状況により就業を中断する女性が多いという状況がございます。また、女性の働き方の希望を見ますと、子どもが小さな時期は働きたくないという人もいますけれども、子どもが中学生以上では9割の人が働くことを希望しています。しかし、現状は働いていない人が多く、働き方もパート・アルバイトが多い等、希望と現実との間にギャップが見られます。
 そういった現状も踏まえまして、特に女性が長期的な視点に立ち、就職、結婚、妊娠、出産というライフイベントをきちっと視野に入れて、自らの人生設計を行うことができるような支援が課題になってくるのではないかと思います。
 また、あと、高校・大学など学生時代から、社会人になって老後を迎えるまで、人生の節目、節目ごとに必要な支援を受けることができるように、行政、大学、企業、NPO等による支援体制を整備するということが課題になっているのではないかという問題意識に基づきまして、女性のライフプランニングに関する支援総合事業を実施しております。全国9地域と書いておりますけれども、応募、審査、委託が終わりまして、現状では7地域において、試行的に各地域におきまして支援体制を整備していただいております。
 具体的な内容としましては、資料にございますように、各ライフステージごとにニーズを把握し、また、関係の行政、男女共同参画センター、大学、企業、NPO等で連携・協力を図っていきます。また、情報を必要とする女性の方々に情報提供を行い、各ライフステージごとに各種支援を行います。そういう体制を、特に男女共同参画センターが中心になって連絡協議会を設けていただき、行政、大学、企業、NPO等と連携していただいて、女性のライフプランニングの形成を支援する体制づくりを行っていただくという事業でございます。
 事業についてのもう少し具体的なイメージは、資料5ページに書かせていただいております。1つ目は、女性は、出生から高校、大学、あと、成人になりまして、就職、結婚、出産、育児、また、再就職して、介護、老後といったライフステージがあるわけですけれども、まず、就職をするときにきちっとこういったライフステージに応じたライフプランニングができるような支援をしていくことです。2つ目は、各段階におきまして、男女共同参画センター等が中心となって、大学、企業、NPO、自治体等と連携し、中心となる男女共同参画センターだけではなくて、ほかの大学、NPO、行政等で必要な支援が受けられるという情報を男女共同参画センターに集中させることです。そこに来れば、きちっと、どこでどういう支援が受けられるかがわかる体制を整備していくことを想定して、今、全国7地域の男女共同参画センターなどに委託して、モデル事業を実施しております。
 以上が女性のライフプランニング支援総合推進事業でございます。
 3点目でございますが、教育費の負担の軽減に関する施策でございます。
 特に教育というのは、社会の活力増進の原動力、将来の先行投資であるとともに、国民一人ひとりの生活を支える基盤です。就学の機会をきちっと確保して、教育の機会均等が保障されることで、経済的な状況に関わらず、国民一人ひとりが等しく一定レベルの教育を受けることができるというのが教育の、特に義務教育の趣旨でございますので、特に雇用状況が悪化している中、親の所得等の家庭の経済状況によって就学の機会が奪われることがないように支援していくことが、一層今重要になってきていると私どもは考えております。
 そういうことで、教育費の負担の軽減というのは非常に重要だと考えておりまして、資料6ページの内閣府などの調査にもありますように、特に、子育てにおける経済的な負担が、国民の方もそういう意識が非常に高くなっていることもありますので、特に子育てに対する不安を解消するという意味での教育費の負担の軽減というのは重要ではないかと考えているところでございます。
 7ページには、参考まででございますけれども、教育費の国際的な比較の資料を掲載しております。例えば、教育算出の政府支出に占める割合が日本は9.5%ということで、OECD加盟の28カ国中27位というかなり低いところにあるということや、就学前教育段階と特に高等教育段階では、政府支出が、教育投資における1人当たりの公財政支出が低いということで、私費の負担の割合が高いというデータも出ております。 国際比較でいっても、日本の教育支出が十分な状況になっていないという現状があるということでございます。
 続いて、8ページでございますけれども、特に、現在の家計の負担の状況を見ますと、低所得者層において教育費負担が重くのしかかっています。左上のグラフを見ていただきますと、年収ごとの教育費、世帯に対する教育費の割合が出ておりますけれども、特に年収が200万以上400万未満の世帯におきましては、教育費の負担割合が55.6%、半分以上になっているという状況がございます。
 また、その下でございますけれども、大学の授業料が過去30年間で物価指数と比べて大きく上昇しているということで、消費者物価指数は過去30年間で2倍にしかなっていないのにかかわらず、私立大学では4.5倍、特に国立大学では15倍になっているという状況がございます。こういうことで、高等教育を受けることにとりましても、非常に負担が重くなっています。
 あと、右側の表でございますけれども、格差固定化への懸念ということで、今、義務教育段階での就学援助の受給人数が増えています。、就学援助を受けている児童生徒にはは要保護児童生徒と準要保護児童生徒がおり、要保護児童生徒というのは、生活保護を受けている世帯の児童生徒、準要保護というのはまだ生活保護には至らないけれども、それに準じる世帯の児童生徒を指します。要保護と準用保護の基準は自治体によりまして若干異なりますけれども、要保護児童生徒及び要保護児童生徒を合わせた児童生徒数はここ10年で倍ぐらいに増えており、平成9年では78万人が、19年度には142万人になっているという状況が出てきております。
 また、下の表でございますけれども、親の収入が多いほど大学進学率が高い傾向だという研究結果も出ておりまして、例えば、年収が1,000万円超の家庭では、その62.4%が四年制大学に行っていますが、400万円以下ですと31.4%、逆に就職をしている割合については、400万円以下ですと30.1%なのが、1,000万円超が5.6%というデータも出ているところでございまして、特に親の所得など家庭の状況によって就学機会に差が出るということが懸念されるというところでございます。
 こういう状況も踏まえまして、現在の実施している教育費負担の軽減につきましては10ページを御覧いただきたいと思います。現在の年齢層別の教育費の主な負担軽減策を掲載しております。
 まず、幼稚園段階におきましては、幼稚園就園奨励費補助がございます。あと、小・中学校は義務教育でありますので、これは義務教育の無償ということと、教科書の無償給与ということがございます。あと、先ほど申しましたように、非常に経済的に困難な家庭に対しましては就学援助をしておりまして、これは要保護・準要保護の平均として小・中学校の9年間で58万円の費用が出ているということで、これは主に学用品とか学校給食、修学旅行費等やされます。
 高校・大学におきましては、主に授業料の減免や奨学金事業を実施しております。授業料の減免について、平成19年度を申し上げますと、高等学校におきましては、私立学校では総額258億円で17.1万人が減免を受けており、公立学校では総額225億円で22.4万人の生徒が授業料の減免を受けています。高校生に対する奨学金事業につきましては、平成19年度は15.2万人の生徒に対して440億円の費用が費やされているところでございます。
 奨学金につきましては、特に大学におきまして、日本学生支援機構が奨学金事業を実施しておりまして、対応人員としては無利子が34.4万人、有利子が80.4万人となっております。
 これが教育費負担の軽減策の現状でございます。
 それに加えまして、9ページに戻っていただきたいのでございますけれども、先ほどデータでも御覧いただきましたように、特に高等教育段階での教育費負担が重くなっていることや、アンケート調査においても、幼稚園費の補助に対する要望も高いこと、また、幼児教育は生涯にわたる人格形成の基礎となるという部分もあることを踏まえ、文部科学省としましては、今後、特に幼児教育の無償化と、高等教育段階の教育費の負担の軽減を図っていく必要があるのではないかと考えているところでございます。
 あと、今回の補正予算案で、当面の経済状況への対応として格差の固定化の解消に向けた教育費負担の軽減として、特に、授業料減免に関する緊急的な支援、奨学金事業の拡充などをさせていただいております。現在行っているところに加えまして、幼児教育から高等教育における教育費負担の軽減のための施策も更に充実が必要であると考えているところでございます。
 以上が教育費負担の軽減でございます。
 最後でございますが、外国人の子どもへの就学支援についてでございます。11ページを御覧いただきたいと思います。
 11ページはデータでございまして、もう皆様方御案内のように、今、我が国に在住する外国人は、日系ブラジル人を中心に定住化傾向が強まって、平成18年以降、増加の一途をたどっております。平成20年5月1日現在におきまして、公立学校に在籍している外国人児童生徒数が約7万5,000人、対前年度比3.2%増となっております。
 平成19年9月1日現在におきまして、公立小・中・高等学校、中等教育学校、特別支援学校に在籍する日本語指導が必要な外国人児童生徒数は2万5,000人、対前年度13.4%増という状況になっており、日本語指導の必要な外国人児童生徒が急速に増大しているという現状でございます。
 それに対し、現在文部科学省が行っている事業については、12ページを御覧ください。
 まず、今年度の事業でございますけれども、帰国・外国人児童生徒受入促進事業を実施しております。これは、帰国・外国人児童生徒の学校における受入体制の在り方、また、不就学の外国人の子どもに対する就学促進に関するモデル事業として、就学促進員の活用や、教育委員会と関係機関との連携による就学支援を実施するものです。その他、初期指導教室(プレクラス)を実施、域内の学校への日本語指導の際の補助、また学校と保護者との連絡調整等を行う際に必要な外国語が使える支援員の配置や、地域・学校での受入体制の整備等のモデル事業を主に教育委員会に委託し、大学、企業、NPO、ボランティア団体の関係者に参加を依頼して、事業の企画改善に携わっていただいているものでございます。予算としては3億円、19地域47市町村で実施しております。
 あと、13ページでございますけれども、親も含めた外国人住民が地域社会で孤立することなく生活していくための日本語指導能力を習得できるように、「生活者としての外国人」に対する日本語教育事業を実施しており、今年度1億7,700万円の予算で実施しております。
 この事業の内容といたしましては、資料にございますように、「生活者としての外国人」のための日本語教室の設置運営、日本語能力を有する外国人等を対象とした日本語指導者の養成、ボランティアを対象とした実践的研修、その他、日本語の上級指導者研修も実施しています。こういった取組みを支援することによりまして、地域における日本語教育の充実を図っておるところでございます。
 以上、雑駁ではございましたけれども、文部科学省の施策を説明させていただきました。今御説明申し上げました施策につきましては、すべてが生活困難を抱える男女に対応した施策とは必ずしも言えない部分もあるわけでございますけれども、それに関連するものとして御説明をさせていただきました。
 文部科学省としましては、今後とも新たな経済社会の潮流に対応した学習教育機会の充実、また、生活困難を抱える人たちに対する支援に引き続き努めてまいりたいと考えているところでございます。
 文部科学省からの説明は以上でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
鹿嶋会長
どうもありがとうございました。
 文科省から4つのテーマで話していただきました。まず、キャリア教育については、中央教育審議会に諮問中でありまして、現在答申を待っている段階だそうです。
 それから、ライフプランニングについては、今の話を聞いていると、やはり男女共同参画センターが拠点になっているようです。今、7地域に委託してモデル事業。7地域というのはどこですか。
文部科学省(髙口課長)
東京、名古屋、青森、神奈川。神奈川は横浜でございます。あと、京都府の宇治、大阪。東京は2カ所委託をしております。それで7地域となります。○鹿嶋会長 ありがとうございました。
 教育費負担の軽減については、保護者の所得に左右されない教育の機会の保障ということで、これは、授業料減免、奨学金の事業の拡充といったようなことだと思います。
 それから、外国人の子どもについての受入促進事業についても実施しているということを伺いましたが、どの項目でも結構ですので、御意見とか質問があればいただきたいと思いますが、どうでしょうか。阿部さん。
阿部委員
それでは、先頭を行かせていただきたいと思います。
 私が一番関心があるところは教育負担のところなんですけれども、特に幼児教育の無償化というのは、私自身も提唱しているところで、評価できるとは思うんですが、もちろんこれは文科省さんということで、厚労省との縦割り行政があるということはあるかと思うんですけれども、幼児教育の無償化で幼稚園の無償化ですとか幼稚園の費用軽減というだけでは、貧困対策にはとてもならないんですね。というのは、親の所得を比べてみても、幼稚園のお子さんの所得の方が圧倒的に高いですし、私たちが今この専門調査会で問題としている、例えば母子世帯のお母さんですとか、ワーキングプアの二親世帯という方々は、幼稚園には入れられないわけですよね。保育園になります。是非この会議のリコメンデーションとしてするのであれば、幼稚園というよりもむしろ保育園の方の軽減というのを一層考えていけないかな。文科省さんの方の管轄で言えば、例えば母子世帯のお母さんでも幼稚園に入れられるように、より時間を延長するですとか、そのような方向にというのも是非考えていただきたいなと思います。幼保一元化のような方向性も出ておりますけれども、今、実際には明らかに分断されてしまっているわけですよね。ですので、今もしここで幼稚園の無償化だけが起こってしまうと、ますます格差を広げてしまうのではないかという懸念が私はすごくありますので、方向性としてはいいんですけれども、是非保育園の方も、又は幼稚園にもより広い門戸をあけるようにというようなことも考えていただきたいと思います。
 あと、就学援助なんですけれども、就学援助も確かに一般財源化されて、それは文科省さんの意図するところではなかったのかもしれませんけれども、実際問題として文科省さんがなさっている義務教育時代に必要な経費というよりも、実際に給付される額というのは、1人当たりにしますと大分少ないですよね。それを考えますと、例えば学校給食ですとか修学旅行というのは、修学旅行はレクリエーションとして行くのではなくて、学習の一環として行くわけですよね。その前後に、行く地域についてのいろいろな授業とかもするわけですよね。ですので、そういうものをなぜ義務教育の中のコアの方の予算に組み込めないのかと。それは今までの経緯で無理だということなんでしょうか。そこは検討なされているんでしょうか。そこのところをお聞きしたいと思います。
鹿嶋会長
どうですか。特に幼稚園の無償化、それは格差を広げるんじゃないかという指摘ですが。
文部科学省(髙口課長)
ただいまの幼児教育の無償化につきましての御質問でございますけれども、すみませんが、少々御説明が不足していた部分がございます。
 今、私ども文部科学省の中で、今後の幼児教育の振興方策に関する研究会という、専門家の方の有識者の会議をさせていただいておりまして、先日、中間報告が出たところでございますけれども、そこで、3歳から5歳の幼児で、これは幼稚園と保育所両方合わせまして全体で無償化する費用としては7,900億必要との試算を出していただいております。この研究会の提言といたしましては、保育所も含めて幼児教育を無償化する必要がある御提言を、今はまだ中間報告の段階でございますけれども、出されているところでございます。
 あと、文部科学省では認定こども園制度を進めておりまして、現状といたしましては、御指摘のように、平成20年の段階では229件ですけれども、これから財政支援の充実や、厚生労働省と文科省の二重行政の解消等も進め、平成23年度には認定件数が2,000件以上になることを目指しております。
 こちらも今年度出されました認定こども園制度の在り方に関する検討会の報告において提言をいただいているところでございますので、私どもとしてはそういう方向で対応してまいりたいと考えています。
 就学援助につきまして、御指摘のように、三位一体改革で一般財源化されたということもございます。ただ、今回の緊急経済対策におきましても、地域活性化経済危機対策臨時交付金、これは約250億円の中でございますが、これはその自治体の判断で就学援助の方に使えるよう予算措置もされておるところでございます。文部科学省としてということではありませんけれども、就学援助に関しても一定の支援がされているという状況でございます。
 以上でございます。
鹿嶋会長
いろいろ意見はあると思うんですが、更に深く議論する時間がありませんので、申しわけありません。
 畠中委員が先に手を挙げていましたので、その次にしてください。
畠中委員
1点質問があります。4ページの女性のライフプランニング支援総合推進事業、21年度予定額2,500万弱となっていますけれども、このお金は何のためのお金で、どこで使われるのか、教えてください。
文部科学省(髙口課長)
女性のライフプランニング支援事業でございますが、先ほども申しましたように、男女共同参画センターが連絡協議会を設けまして、そこで女性の方がライフプランニングの意識を形成できるような講座を開催したり、各ライフステージに応じて適切な支援を受けることができるよう体制を整備したりするための事業でございます。ですから、例えば講座を男女共同参画センターで設ける場合の講師の方に対する謝金の経費とすることもありますし、ライフプランニング支援のためのカリキュラム、プログラム策定のための研究の経費とするところもあります。また有識者の方を集めた検討会議も設けられると思いますので、出席者に対する謝金等がこの事業の経費に充てられると考えております。
鹿嶋会長
湯澤先生。
湯澤委員
やはり教育費のところなんですけれども、簡単に3点ふれます。まず1つは、大学生のところですけれども、今、新聞等で報道されております、いわゆるブラックリスト化の問題です。奨学金の返済を滞納した場合に名前が挙がってしまうということです。今、大学生もかなりアルバイトをしておりまして、借金を背負って世の中に出ていくという状態の中で、このような動向が進学を抑制するようなものにもなっていかないかという懸念がございますので、その点が1点です。
 2点目は、ここで御説明いただきました授業料減免等の緊急支援、本当に必要な支援で、とても貴重だと思っておりますが、この対象をどのようにしていくかということです。現行では、生活保護世帯ですとか、リストラ・倒産による失業ということが対象になっているかと思いますが、もともと期間工やパートで期限があって、雇い止めになってしまった方が対象になるのかとか、あるいはそういう状態にはないけれども、急激に生活費が落ちたという場合に対象となっていくのかということが2点目です。
 3点目に、もっとも苦しい状況にあるかと思われる定時制高校の状況です。統廃合とともに、自治体によって違いがあるとは思いますが、教科書、夜食費補助制度といったものが全日制高校生との均衡を逸するということで廃止をするというような自治体が出てきております。やはり定時制高校生が卒業まで就学を保障されるかといったことは、かなり緊急度が高いものです。就学奨励費というのも使いにくいといった声もございます。このあたりの御検討を是非お願いしたいところです。
鹿嶋会長
答えられないものは、後でメモでいただければ結構です。答えられるものについて。今、3点。
文部科学省(髙口課長)
まず、第1点目の、今、学生支援機構が行っております奨学金事業で、非常に返済率が低いということに対し、返済率を上げていくための方策としまして、未返済の方のリスト化も検討されているということでございます。もちろん返済をしていだたくまで、ある程度段階を踏んで行っていくということもありますし、先ほどご指摘いただきました懸念にも配慮をしていかなければいけないと考えております。その点については学生支援機構において適切に対応をしているところと認識しておりますけれども、具体的な手続につきましては、後日御報告を申し上げたいと思っております。
 また、今回の緊急経済対策における緊急支援において、奨学金につきましては、家計急変学生に対する緊急採用奨学金の対応人員を倍増するということで15億円の予算を計上しておりますし、返還困難者に対し10万人まで返還猶予が可能になるような対応として10億円の予算を計上しているところでございます。
 その他先ほども申しましたように、就学援助につきましては、自治体の判断で使える交付金として措置しておりますし、同じ地域活性化経済危機対策臨時交付金の中で50億ではございますけれども幼稚園の就園奨励に関して、経済悪化に伴う対応人員の増ということで対応しているところでございます。
 あともう1点、高等学校の授業料減免及び奨学金、これは、各都道府県で実施しておりますけれども、今後3年間で家計急変等により修学困難になると見込まれる高校生、これはのべ約21万人ということで試算をしておりますけれども、経済支援をするために、新たに都道府県に基金を設置していただくための国の交付金として486億円を措置しているというのが今回の経済危機対策の状況でございます。
 定時制高校については、まず現状でございますけれども、平成20年5月時点で定時制課程を設けている高等学校が754校存在し、11万人の生徒が在籍しているということでございます。
 現状につきましては以上でございます。
鹿嶋会長
教科書とか夜食費の排除の動きですね。それは後でもしわかれば教えてください。1番の具体的手続のものと、3番目の質問の排除の動きの全日制との均衡の問題で排除の動きがあるという指摘がありましたので。
文部科学省(髙口課長)
わかりました。
鹿嶋会長
住田委員。
住田委員
大きくは2点お願いします。
 まず、先ほどの8ページの教育費負担の話にまた戻って恐縮なんですが、格差の固定化への懸念ということで、私、最近生活保護世帯となった一家に関わっているんですけれども、まず、私立の幼稚園は無理であるということで保育園に行きましょう。それから、今、都立高校に行っておりますが、これもぎりぎりで、大学の進学の希望を実は持っているんですけれども、これはかなり難しいだろう。経済的な問題として、現実を受け入れざるということを今話をしている最中です。
 しかし、これであってよろしいとは全く思いませんので、できれば専門学校とか、それなりの高等教育機関を探したいと思っているんですけれども、そういう意味で、固定化への懸念というより、まさに現実はそういうものであるということを実感しております。
 それと、在学費用というのはどういう費用であるのかちょっとわからないんですけれども、実際に高等教育を受けようとするときには、塾や家庭教師と、本来の教育費用以外のものがかかっているのが現実です。そういうところには生活保護世帯は全く出せないというものであります。ですから、自分でやるしかないんですけれども、たしか東京都かどこかで、課外授業とか補習をやろうとするときに、いや、本来の教育機関でそういうことをやってはならないという話があったようなんですが、生活保護世帯とか貧困家庭においては、お金ももちろん大事なんですけれども、教えていただく機会というか、ソフトですね。お父さんお母さんから教えてもらえない。何らかの形でケアができないものかなという気がしております。これが1つ目です。
 2つ目は、3ページの方のキャリア教育のお話なんですが、実は私自身、キャリア教育とか法教育とかを弁護士として関わって、いろんな学校に行っているわけでして、また過去にも大学で教えていたんですが、当時は就職後3年以内の離職率が7・5・3だったのが、今回、7・5・4になっているというこの数字を見ました。大学生の職業の定着率が非常に低い、石の上にも三年というのが果たされていないということが非常に残念であります。
 ここからちょっと、非常に微妙な話なんですけれども、率直にこの場で申し上げたいと思います。
 キャリア教育・職業教育というと、何か具体的な職業に結び付いてのこういう仕事がありますよという職業紹介的な話が多いんですが、現実に社会の中で一番大事なのは、社会となじむ、集団となじむ対人関係能力があるかどうかということ。学校の成績はいいんだけれども、社会に入ったら、人との関係がうまく築けないでドロップアウトしている場合もあるのです。ワーキングプアの原因について、こればかり言うと絶対に問題なのですけれども、一部目につく事件についてはやはりそういうものがあるということです。そういうところに少し焦点を当てていただかないと、人材について非常に大きな損失をしているんじゃないかなという気がします。
 以上です。
鹿嶋会長
2番目はキャリア教育の中身まで含めた質問だと思いますね。2つの質問についての回答をお願いします。
文部科学省(髙口課長)
まず、塾に行けないような児童・生徒に対し、ソフト、人手、要は教えるような支援ができないかどうかという御指摘が第1点ございました。これにつきましては、関連する施策ということでお聞きいただきたいと思いますが、文部科学省では学校だけではなくて、学校以外の社会全体で子育て支援をしていくという環境づくりが必要だということから、まず1つは、地域ぐるみで学校を支援していく学校支援地域本部事業を実施しております。地域の方々が学校を支援して、学習を助けていくことをしておりまして、これは現在、平成20年度で2,145カ所・地域で実施しております。
 2つ目としては、放課後での子どもたちの体験活動や学習活動を支援する放課後子ども教室推進事業を厚生労働省ともタイアップして実施しております。これは平成20年度では7,919カ所・地域で実施をしております。これらの事業はすべて、今、住田委員がおっしゃったことに対応できているとは考えておりませんけれども、こういった事業を活用又は充実しながら対応していくことが必要ではないかと考えております。
 あと、2点目として、住田委員から対人能力も重要との御指摘をいただきましたけれども、先ほど御説明申し上げました、現在、中教審で検討しておりますキャリア教育・職業教育の在り方につきまして、特に、キャリア教育・職業教育を行う上での基礎的・汎用的能力の明確化、その育成の在り方が一つの論点となっております。そこでは、コミュニケーション能力、粘り強さ、自ら課題を発見して解決を図る力、経験から学ぶ力、仲よくする能力、協調性や社会力、段取りを組む力、そういったことも含めて、どういう基礎的・汎用的能力が必要かということを明確化して、発達段階に応じた育成の在り方を検討しているところでございます。そういった中で住田委員御指摘の課題についても検討をしていくことになると考えております。
鹿嶋会長
対人教育能力というのは、キャリア教育だけでやる問題ではなくて、その他の科目でもやるとなってくると、教員の質といいますか、問題意識のあるなし等もも関係するのかなと思っていますが。
住田委員
今回、学習指導要領に少しは含まれてきたんですけれども、もっといろいろな多方面の形でやっていかなきゃいけないなという感じがします。
鹿嶋会長
塾については、私もヒアリングに出かけたのですが、中学に行くと塾推薦というのがあって、その推薦をもらうため母子家庭では、お母さんがダブルジョブにして塾の費用を捻出しているという話を聞きました。ですから、塾に行けない困難といいますか、これはやはり大きな問題ですよね。行けなければ高校に入れないという問題も現実にあるわけですから。
 どうぞ。
大沢委員
8ページの格差固定化への懸念という図表なんですが、ここで、要保護児童生徒数と準保護生徒数とありますが、どういう生徒がカバーされているのですか。97年バブル崩壊後、急速に増えている背後の要因について教えていただけたらと思います。
文部科学省(髙口課長)
8ページの義務教育段階での就学援助の受給人数、要保護生徒数も準要保護生徒数も増えている状況でございます。これは、正確に要因を分析しているわけではありませんけれども、やはり今、経済状況が厳しくなってきていることが、要保護・準要保護児童生徒数が増えてきている一つの要因ではないかと考えているところでございます。
大沢委員
準要保護というのはどういう。
文部科学省(髙口課長)
要保護は、先ほども申しましたように、生活保護を受けている世帯の子どもですが、それに準ずるような、家計が厳しい家庭に対して、自治体、特に市町村ごとに実施されておりますので基準が異なりますけれども、年収の基準以下の世帯であれば、就学援助が受けられる制度であり、生活保護に準じるような世帯に対して経済的に支援するものでございます。
大沢委員
具体的な年収というのは大体どれぐらい。もちろん地域によって違うということですので、アバウトで結構ですが。
文部科学省(髙口課長)
すみません。データにつきましては、後ほど回答いたします。
大沢委員
背後の要因として、例えば母子世帯が非常に増えたとか、そういうことなのか、急速に増えているということで、ここら辺の背景を知りたいなと思ったところです。よろしくお願いします。
文部科学省(髙口課長)
承知いたしました。
住田委員
東京で親子3人で20万ちょっとですね。
大沢委員
月で20万。
住田委員
はい。千葉とか茨城とか、周辺になると、それより2~3割落ちますね。
阿部委員
大体生活保護基準の1.1~1.3倍ぐらいですよね。と決められています。
住田委員
生活保護として受けられる月のあれですよね。受給。
大沢委員
準保護世帯というのは。
阿部委員
1.1~1.3倍ぐらいの間と決められている。
大沢委員
本人が直接市町村に行って申請して。
阿部委員
申請書を配られるという自治体もあるようですけれども、全員に配って、後で別々に教育委員会に出すみたいな形にしているようなところもありますし、実際に学校に持ってくるという形のところもあると聞いておりますけれども。
大沢委員
ありがとうございました。
鹿嶋会長
いずれにしても、数字等々でわかれば、後でメモで結構ですので、よろしくお願いします。
 髙口さん、どうもありがとうございました。
 それでは、続きまして、内閣府男女共同参画局推進課の中程調整官から、「配偶者からの暴力被害者自立支援モデル事業」等につきまして説明をお願いします。
 それから、今の質問につきましては、後でペーパーで出してください。後で向こうに渡しますので。
 ではお願いします。
内閣府(仲程調整官)
内閣府男女共同参画局推進課調整官の仲程でございます。
 私の方からは、内閣府で実施しておりますDV被害者に対する支援事業について、御説明させていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
 まず、事業の説明に入る前に、配偶者からの暴力の現状について、簡単に見ていきたいと思います。お手元に、冊子になってございますが、内閣府がこの3月に発表いたしました、「男女間における暴力に関する調査」の概要をお配りいたしておりますので、見ていただければと思います。
 この調査は、昨年10月から11月にかけまして、全国の20歳以上の男女5,000人を対象に無作為にアンケートいたしまして、女性1,675名、男性1,454名、計3,129名から回答があったものの分析でございます。
 具体的な被害状況でございますが、3ページの図2を見ていただきたいと思いますが、配偶者から身体的暴力、心理的攻撃、あるいは性的強要のいずれかを受けたことが何度もあると回答した方は、女性の10.8%、男性の2.9%になっているところでございます。
 次に、8ページを開いていただきたいと思いますが、図9でございますが、更に、何らかの暴力を受けたことがある方に、その行為によって命の危険を感じたことがあるかどうかを聞いたところ、女性の13.3%については、命の危険を感じたと回答しております。
 また、9ページでございますが、図11になりますが、その行為によって、けがをしたり、精神的不調を来したと回答した女性が34.8%になっているところでございます。
 また、この調査は、配偶者間の暴力とは別に、交際相手からの暴力の被害についても調査しておりますが、10歳代から20歳代のころに交際相手からの被害経験につきましては、10ページの図14にございますが、女性の13.6%、男性の4.3%が暴力の経験があったと回答しております。
 また、13ページになりますが、図18でございますが、その行為によって命の危険を感じた経験があるという女性は21.9%になってございます。
 更に、次の14ページの図20でございますが、女性の48.4%は、その行為によって、けがや精神的不調を来したことがあると回答しているところでございます。
 また、15ページの図22になりますが、交際相手からの暴力によりまして、女性につきましては、仕事を辞めたり、変えたりとか、転居をしたという方がそれぞれ約1割ほどございまして、暴力により女性が生活上の変化を受けることが多いという結果になってございます。
 この調査は3年ごとに実施いたしておりますが、前回平成17年度の調査と比較いたしましても、調査を行った男女間の暴力のいずれにつきましても、被害状況に大きな変化は見られないところでございました。依然として男女間における暴力の被害が深刻な状況にあるということが調査で確認されたところでございます。
 それでは、内閣府で実施しております事業につきまして、簡単に御説明していきたいと思います。
 まず、資料3-1でございますが、配偶者からの暴力被害者自立支援モデル事業でございます。この事業につきましては、平成20年度からの事業になります。配偶者からの暴力の被害者の自立を支援するプログラム案をモデル事業といたしまして実施し、それを全国に普及させることを目的にして実施いたしているものでございます。
 平成18年度に内閣府が配偶者からの暴力被害者の方を対象に実施いたしました「配偶者からの暴力被害者の自立支援等に関する調査」というものがございますが、それによりますと、被害者の方は、加害者から離れて生活を始めるに当たって、いろいろな問題を抱えていますが、例えば当面の生活をするために必要なお金がないとか、自分の体調や気持ちが回復していない、あるいは住所を知られないようにするために住民票を移せない、また、適当な就職が見つからないなどの多くの課題を抱えているところでございました。このようなさまざまな困難を抱えております被害者の自立を手助けすることができないかということで、この事業を始めさせていただいたところでございます。
 平成20年度につきましては、地域において生活をしておられます被害者及びそのお子さんに対して、いろいろな人と交流し、情報交換などを行う居場所をつくることによって、被害者の自立を支援しようということを目的として事業を実施したところでございます。20年度につきまして、「居場所」づくりというものをテーマに事業を実施いたしたところでございますが、なぜ被害者にとっていろいろな人と交流し、情報交換を行う居場所が必要かと申しますと、加害者から離れて地域で生活を始められた方々というのは、当面、緊急を要する問題はある程度解決していると。例えば、今すぐにどうにかして被害者から離れなければならないとか、今すぐにどこか住む場所を探さないといけないというような、そういったすぐにどうにかしなければというようなところは、まず落ち着いたという方々になろうかと思います。そうしますと、今、本当に生活が大変だとか、苦しいと思っても、なかなか相談につながりにくくなるということがございまして、新しい土地で生活を始めるに当たって、そういう方々というのはいろいろなことで孤立しがちであるという声もよく聞いているところでございまして、そういう孤立を防ぐというためにも居場所が必要ということで、このモデル事業を20年度に実施したところでございます。
 具体的な事業の実施につきましては、被害者支援を行っているNPO法人に委託いたしまして事業を実施したところでございます。それぞれの地域の特性を生かしまして、工夫を凝らしたモデル事業を全国の6カ所で実施したところでございます。
 その具体的なモデル事業の中身といたしましては、例えばふらっとルームの開設ということで、被害者の方がふらっと立ち寄って、スタッフの方とおしゃべりができる場所を開設するとか、手芸や手編み、あるいは陶芸などの趣味を行いながら、被害者同士、あるいはスタッフと語り合う場を作るとか、あるいは心理療法士への心の相談、あと、母と子の美容師の開設、これについては、被害者の方に美容師の方がおられましたので、その方にお願いして行ったということでございました。あと、クリスマス料理教室でありますとか、親子バーベキュー大会などなど、いろいろな事業を実施したところでございます。
 この事業を実施するに当たりまして、一番に気を付けたところでございますが、それは安全の確保ということでございまして、会場に加害者があらわれるということも想定されますので、まず、最寄りの警察署にパトロールをお願いするとともに、実際に加害者があらわれた場合の対応を事前に確認しておくなどの対応をとったところでございます。
 また、参加者の募集につきましても、加害者に事業の内容を知られるという懸念もございますので、市町村の広報紙などで広く募集するということはなかなかできないものでございますから、行政の被害者対応をやっている部署でありますとか、民間シェルターなどから直接被害者の方に案内をするという対応も必要だったところでございます。
 また、事業を実施していく上でもう一つ大きな課題といたしまして、被害者の方々というのは、所得が少ない方が多いということから、いかに負担を軽減、参加についての費用をいかに負担を軽くしていくかということが挙げられたところでございます。
 このように、一般の事業に比べまして、実施するに当たっていろいろ難しいということも多い事業になってございますが、幸い、今回の事業につきましては、20年度につきましては、加害者があらわれるようなトラブルもなく、参加していただいた方々からは、他の被害者の方と話すことができて、自分を見つめ直すことができたとか、久しぶりにゆっくりとリフレッシュすることができたとか、あるいは何年ぶりに旅行することができたとか、あと、お子さんに対して、子どもが優しいボランティアのお兄さん、お姉さんと遊んで、久しぶりに表情が生き生きとしていたなどの感想も寄せられているところでございまして、総じて事業に対して期待が大きいところでございまして、今後も続けてほしいという要望が多かったと聞いているところでございます。
 なお、この事業の成果につきましては、内閣府におきましては、スタートアップマニュアルというものを作りたいと思っておりまして、これから被害者の自立支援に取り組もうとする自治体等の方々に対して役に立つマニュアルを作りまして、広く配布していきたいと考えているところでございます。
 今年度でございますが、今年度はまたテーマを変えまして、地域において生活をしている被害者の方の社会参加を促進し、ひいては就労に結び付いていくような自立を支援する社会参加促進モデルというものを実施していきたいと考えてございます。
 具体的には、社会生活での人間関係の築き方とかマナー、身だしなみの習得、あるいは基本的なITスキルの習得など、生活社会や職場環境に適応していくための基本的なことを学びつつ、更に職場体験などを通じて被害者が社会生活に参加し、自己肯定感等を取り戻していけるようなメニューを組み合わせたものにして、また、被害者の方が継続して参加できるような、精神的に負担にならないような工夫もして事業を実施していきたいと考えているところでございます。
 続きまして、DV相談ナビの開設について説明させていただきます。資料3-2になります。
 配偶者からの暴力につきましては、家庭内という閉ざされた空間で行われるということから、外部から発見されにくく、周囲も気付かないうちに暴力がエスカレートし、被害が深刻化しやすいという特殊性があり、また、被害者の方も暴力により支配され、心身ともに傷つけられ、自己決定権も侵害される場合も少なくないと言われているところでございます。
 そこで、こうした配偶者からの暴力の特殊性に配慮いたしまして、配偶者暴力防止法におきましては、DV被害者に特化した相談機関といたしまして、配偶者暴力相談支援センターを設置いたしまして、DV被害者のさまざまな相談への対応、医学的・心理学的観点からの支援などを行っているところでございますが、先ほどの内閣府の男女間における暴力に関する調査によりますと、配偶者からの暴力について、相談できる窓口がわからないという方が約7割ほどおりました。こういう現状を踏まえまして、内閣府におきまして、最寄りの相談窓口を案内する、全国統一のダイアルを設定いたしまして、どこに相談したらよいかわからないという被害者を支援センターなどの相談機関につなげまして、被害者が支援等に関する情報を入手しやすくする、通称「DV相談ナビ」と言ってございますが、それをこの1月11日から開設したところでございます。
 具体的には、全国統一のダイアルを設けまして、自動音声によりまして、特定の地域の相談窓口を案内するものでございます。音声に従いまして操作を行っていけば、簡単に最寄りの相談機関にたどり着くことができまして、相談機関の電話番号、相談の受付時間について案内を受けることができるシステムになってございます。
 現在、DV相談ナビにつきましては、被害者に相談機関の電話番号等を案内するだけになっていますが、システムを改良いたしまして、案内された相談機関の中から相談者の希望する相談機関に転送し、直接相談できるようなものにする予定にしています。
 それにつきまして、資料3-2の2枚目を見ていただければと思いますが、現在のDV相談ナビは左の方でございまして、被害者の方が電話いたしまして、それで相談機関の電話番号等をお伝えして、被害者が再度相談機関に電話するというシステムになってございますが、被害者の方が相談ナビに電話いたしまして、それをそのまま相談機関に転送できるというシステムに改修していきたいと考えておるところでございます。
 次に、その他の事業について簡単に御説明させていただきたいと思います。
 まず、研修でございますが、被害者と直接接する相談担当者の質の向上等を図る目的で研修を行っておりまして、今日紹介するのは2つほどでございますが、被害者支援セミナーでございますが、地方公共団体等の相談業務等に携わる方を対象にした研修でございまして、基礎、応用、管理職セミナー等、業務経験に応じてそれぞれを対象としたプログラムを実施しているところでございます。
 講師の方々につきましては、DVに知見のある弁護士の方であるとか、大学の先生、さらには民間支援団体の代表の方々などにお願いして実施をしておるところでございます。
 次に、3-4の支援アドバイザー派遣事業でございますが、それにつきましても、被害者に対する相談業務を行っている配偶者暴力相談支援センター等に対しまして、専門的な知識や経験を有するアドバイザーを派遣いたしまして、相談業務等の充実を支援するものでございまして、昨年度は160件ほど派遣をしたところでございます。
 次に、「配偶者からの暴力防止と被害者支援に関する全国会議」でございますが、それにつきましては、通称「DV全国会議」と言っておりますが、配偶者からの暴力の防止、あるいは被害者の保護・支援につきましては、NPOなどの民間団体も大きな役割を担っておるところでございまして、被害者のいろいろな問題にきめ細やかに、そして継続的に対応していくというためには、民間団体と関係機関が連携を図りながら対応していくことが重要であること、また、DVにつきましては、地域によって取組に差が見られ、先駆的な取組を行っている地域の取組を好事例、好ましい事例として広く普及をしていくことが重要であるということから、官民の関係者が一堂に会し、必要な情報を共有するということで、昨年からDV全国会議を実施しているものでございます。本年度も引き続き実施をしたいと考えております。
 最後になりますが、外国籍被害者の支援でございますが、一般的な支援制度のほかに、在留期間の更新、在留資格の変更などを内容とする外国人向けの広報資料を8カ国語で作成いたしまして、都道府県でありますとか支援センターに配布いたしまして、外国籍の被害者からの相談について活用していただいているところでございます。
 ちょっと駆け足になりましたが、内閣府の事業につきまして、私からの説明を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
鹿嶋会長
ありがとうございました。
 かなり広範囲に話していただきましたが、特に、資料3-1のいわゆる自立支援モデル、配偶者からの暴力被害者は、これまでの自立支援でいいのかどうかといったあたりをポイントに意見、質問をいただければと思います。もちろんほかにどうしても聞いておきたいというテーマがあれば結構ですが、どうでしょうか。
袖井委員
1の資料ではないんですが、1つは、DV相談ナビができたというのは大変すばらしいことだと思うんですが、0570というのは無料で、記録は残らないわけですか。
 それから、もう一つは、DVについて私どもの間でも議論していたのは、加害者に対する矯正というか教育、それができないものだろうかと随分前から言っていて、アメリカなんかではやっているようですけれども、実際に被害者を幾ら支援しても、加害者が繰り返しちゃうんですね。実際に加害者自身に大変問題のある方が多いので、そういうプログラムを作るということは考えていらっしゃらないでしょうか。
 それから、もう一つ、3番目ですが、私は高齢者問題が専門なんですが、高齢者の虐待と配偶者虐待と見分けがつかないところがあるので、その辺の切り分けをどう考えるか。高齢者虐待は地域包括支援センターで扱うのですが、例えば、私は大分前、台湾に行って調べたことがあるんですが、台湾は、家庭暴力というのは全部一括して引き受けて、そこで受けてから分けるんですね。児童虐待も配偶者暴力も高齢者虐待も。日本の場合、完全に縦割りになっていて、それで、実際に高齢の夫婦で虐待が起こった場合に、どうしたらいいのかという問題もあるので、将来的には家庭暴力の統合ということを考えられないのかなと、これは希望でございます。
 以上でございます。
内閣府(仲程調整官)
DV相談ナビでございますが、残念ながら無料にはなっておりません。
袖井委員
そうすると、電話の記録は残っちゃいますね。そこでトラブルが起こるという可能性もあるんですよね。おまえ、どこへかけたんだというような。その辺、どうなんでしょう。
内閣府(仲程調整官)
今のところは、問合せをするということになっていまして、実際の相談について、再度かけ直していただくという形のシステムになってございますが、それを今回、補正で若干予算がつくことになりましたので、DV相談ナビから直接つなげるという形になりますので、そこで記録がどうなるということはあるかと思います。それはちょっと検討させていただきたいと思います。
鹿嶋会長
後で回答をください。
内閣府(仲程調整官)
はい。
 それから、加害者更正のお話だと思いますが、我々も非常に大事なテーマだとは考えておりますが、それは非常に難しい案件でもあるということで、今まで内閣府の方では、外国の先進事例等を調査してきたところでございますが、外国の調査でも、きちっと効果が検証されているということでもないということもございまして、あと、例えば法律で加害者の方に更正プログラムを強制的にということにもなってございませんので、例えば、任意でやった場合に、加害者が逆に暴力について学ぶということとか、更に、被害者の方も加害者の方がプログラムを受けることによって完全に更正したというような理解をしてしまって、加害者の元に戻るなどして更に暴力を受けるという問題等もございまして、非常に重大なテーマではあるんですが、そういう状況でございます。
 それで、今まで外国の調査等をやってきたんですが、加害者更正ということではございませんが、加害者の方が相談支援センターとか、被害者を相談とか保護する場所に押しかけたり、いろいろな嫌がらせをするということも聞いておりますので、今年度から2カ年かけて、加害者対応という若干視点は変わりますが、そういう研究をしていきたいと考えているところでございます。
 3番目の高齢者虐待につきましては、ちょっと難しい案件で、すぐに答えられないんですが、高齢者であっても、配偶者暴力防止法というのは適用できますし、高齢者虐待の法律も適用できると思いますので、適用しやすいようなものを適用できればと。そこはちょっと勉強させていただければと思います。
塚崎推進課長
1点だけ。高齢者の虐待等の関係ですけれども、配偶者暴力の基本方針の中でも、地域で高齢者の虐待防止のネットワークと、配偶者暴力、DVの方の会議と連携や総合して効果的に進めてくださいということも言っていまして、できるだけ、重なる部分も先生が言われるように多いので、連携して取り組むようにということを示しているところでございます。
鹿嶋会長
どうぞ。
神田委員
資料3-6に関わることでございますが、「外国人向け広報資料の作成・配布」ということで、ここに具体的な施策名が挙がっているんですが、外国人関係の対策というのは具体的にどういう方向でやろうとしているのか。そして、特にこの施策につきましては、平成20年度は四百二十三万幾ら付いていて、21年度は棒線が引いているんですが、ここら辺の方向性、どういうやり方を考えているのか。
内閣府(仲程調整官)
8カ国語の広報資料を作成いたしましたのは、各地の被害者から相談を受ける支援センター等につきまして、外国からの方も多く相談に来られるというようなことから、その方々に対応できるような資料ということで、通常の国内向けの広報資料ですと、一般的な国内で受けられる支援制度を御紹介しているところでございますが、それに加えまして、外国籍の方々の問題であります在留期間の更新とか、そういうものについても紹介するというような形のパンフレットを作って、それに基づいて支援センター等で対応していただくということにして、具体的には支援センターで外国籍の方々にも対応していただくと。そちらの方から、例えば在留期間の更新とか在留資格の更新につきましては、例えば法務省の入管の方につないでいただくとか、そういう対応をしていただくということに、パンフレットの中にもそういう形で記述されています。
 予算額でございますが、21年度につきましては計上してございませんが、20年度に大分作りまして、それで予算的には対応できるということで、21年度には特段の予算の計上をしていないということでございます。
鹿嶋会長
いいですか。
 どうぞ。
湯澤委員
御説明をありがとうございました。
 まず最初、1ページの自立支援モデル事業ですが、独自な企画がいろいろ推進されているわけですが、例えば、平成20年度の「居場所」づくりをマニュアルで作成して配布していただくということで、更にそれを定着させていくために、自治体への補助などが検討されているのかどうかということが1点です。
 それから、2点目で、DV相談ナビも、これも新しい企画が始まったと思うのですが、今でも、個人的に相談を受けた場合に電話番号をお教えすると、つながらないということがたびたびございます。そういった場合に、このナビを活用して、転送してつながらないということが、話し中とか、そういうことが起こるかどうかということもございます。是非そのあたりについては、もしつながらなかった場合は、その件数をカウントし、そこからニーズをどういうふうにしていったらいいかといったことが御検討いただけるかどうかということです。
 それから、最後ですが、自立支援モデル事業で、社会参加促進モデルということが予定されているということで、社会参加の基盤となります住宅の確保ですとか、精神面でのエンパワーメントというところも必要です。自治体によっては、公営住宅の優先枠がありますが、それでも足りないということで、民間の住宅を借りるときの家賃補助をしていたりします。また、配偶者暴力相談支援センターで継続的な相談はしていただいているわけですが、専門的なカウンセリングにつなぐ場合に、カウンセリング費用の補助をしているというような取組みもあるかと思います。そのあたりで、社会参加の基盤となる部分も是非御検討を進めていただければと思っております。
 以上です。
内閣府(仲程調整官)
「居場所」づくりにつきましては、事業が終わりまして、今、マニュアルを作成しているところでございます。それにつきましては、広く被害者の自立支援につきましては、被害者の方に一番近い行政機関として市町村の役割が非常に重要だと考えておりますので、自治体等の方が「居場所」づくり事業を行う際の参考になるということで、お配りしたいと思います。
 それについて補助でございますが、残念ながら内閣府ではそういう補助金的なものを持っておりませので、実際に事業をするに当たっての補助というのは今のところないところでございます。
 次に、ナビにつきましては、結局、相談機関につきましては、都道府県の支援センターが中心になりますので、そちらの方々をお願いするという形になると思いますが、なかなか地域、地域によってレベルといいますか、それが変わったりするということもございますので、できるだけ、また新しくシステムを改修するときに、都道府県とも調整いたしますので、そういうことがあったということで、できるだけつながらないというケースがないような形にできればと思います。
 あと、21年度の自立支援モデル事業のテーマである社会参加型の関係でございますが、被害者の方々の住宅の確保ということでございますが、それについては国土交通省でいろいろ御配慮していただいているところでございますが、まだ十分じゃないということもありまして、実は今日、総務省の方でDVの関係の施策について政策評価がございまして、その中でも住宅の確保について勧告がございましたので、引き続き努めていきたいと思います。
塚崎推進課長
1点だけ補足させていただきます。
 初めの1点目なんですけれども、自立支援モデル事業そのものではないのですが、市町村が民間団体に財政的援助をするときに、特別地方交付税で措置できるという制度がありますので、その部分で利用できるものもあるかもしれません。
鹿嶋会長
では、小杉委員の質問を最後にします。
小杉委員
ありがとうございます。
 私、この調査は大変いい調査だと思うんですが、23ページには必要なこととして、窓口による相談と並んで、あるいはそれ以上に、教育とか、暴力を助長するおそれのある情報に対してどう対応するのかというような問題が出ているんですが、教育と、教育に実に関係あると思いますが、情報の提供に対する何らかの影響力を与えるような政策とか、その辺については何らかの政策は考えられていらっしゃるんでしょうか。
内閣府(仲程調整官)
配偶者からの暴力を防止するに当たって、教育、啓発というのが重要であるということで、実は、先ほども紹介したんですが、交際相手からの暴力というのも非常に多くあるということもございまして、今、内閣府の方で、若い方々、高校生、大学生を対象に、暴力のない、平等な、お互い尊重し合うような啓発ができないかということで、文科省とかいろいろな方々の知恵を拝借しながら、そういう教材作りを実際やっているところでございまして、できれば今年度に若い人たちに対する暴力の啓発教材を作成いたしまして、配布できればということで取り組んでいるところでございます。
鹿嶋会長
ありがとうございました。
 質問だけ。これは今答えてくださらなくて結構ですけれども、命の危険を感じた経験というのが、調査で見ると十数パーセントにはね上がっていますね。過去の調査結果で言うと、5%前後だったと思うんですが、13.3%、10%を超えたというのは何かあったのかどうか。後で結構ですので、是非教えてください。
 どうも今日はありがとうございました。
 それでは、次に、東京都社会福祉協議会の柴田統括主任から、福祉関係施設の連携に向けた取組みについての説明をお願いします。説明時間は10分程度ですが、どうぞよろしくお願いします。
東京都社会福祉協議会(柴田統括主任)
東京都社会福祉協議会の柴田と申します。
 分析官に申し上げたんですが、私ども、着手し始めの事業ということと、民間レベルの小さいお話ですので、余り先生方の御参考にはならないかなと思っていますが、そこは御了承いただければと思います。
 最初に、東京都社会福祉協議会でございますけれども、資料の4-3を見ていただきますと、いろいろな社会福祉施設ですとか、あるいは福祉団体ですとか支援団体だとか、市民活動の推進機関だとか、そういったところが会員となって組織されている会員組織になっております。古くから施設種別ごとに高齢者福祉施設の部会だとか、病院の部会だとか、更生福祉施設の部会だとか、救護施設の部会だとかというふうに分かれて、その種別の中で研修をしたり、あるいは予算を要望したり、政策提言をしたりとかということをしておったのでございますが、資料4-1に戻っていただきますと、平成17年度から「養護児童・女性関連連絡会」というのを持たさせていただきました。その背景については、実はこの連絡会のメンバーなんですが、児童養護施設の部会、乳児院の部会、母子生活支援施設の部会、婦人保護施設の部会、それから、更生施設、宿所提供施設の単身女子の施設の方々の集まりで構成しているんですが、近年、利用者のニーズといいますか、急速に変化をしてきていると感じています。
 それはどういうことかというと、まず、今お話にも出ました、例えば乳児院で言いますと、かなりの部分、虐待を受けてきて入院している子どもたちがいると。児童養護についても同じ。母子生活支援施設については、今もお話にあったような、配偶者からの虐待ということで、離婚をして入ってくる。そういうところが多い。婦人保護施設も、後でもう一本お話をしますが、性的な虐待なり何なりを受けて入ってきていると。10代で妊娠して出産する人も多くて、その子どもたちがまた乳児院とかに預けられるというような、そんな形が見えるというので、これは少し部会間で集まって話をしなければいけないんじゃないかということが言われて始めたわけです。
 それで、話してみると、科学的にはまだ分析はしていませんが、精神疾患の方が結構多いと。それから、発達障害の方がグーンと増えてきている。数字が取れていないので何とも言えないんですけれども、あと、ボーダーと言われているような方々が利用者に増えてきているということで、この施設群は全部通過施設なので、今、保護から自立というふうに言われて、必ず施設を出て就労したりとかということになっているんですが、なかなかそういうことができなくて、また帰ってきたりとか、今言ったように、婦人保護施設に入っている子どもたちが乳児院に入ったり、児童養護に入ったりとか、そういうことになっていると。児童養護の子はまた、母子生活支援施設の利用者なり、婦人保護施設の利用者なりを見ていると、児童養護施設の卒業生が結構多いということで、こういうマイナスの要素が連鎖していて、何世代も何世代も続いているんじゃないかということがわかってまいりましたというか、実感としてわかってきたというところです。
 ところが、今までは種別ごとで、こういう感じでやってきたものですから、ほかの施設のことが全くわからないという状況で、ここ2~3年ですか、事例検討だとか、お互いのケース事例を話し合うだとか、そういったことをやってきておりました。ここへきて少し、具体的に利用者を中心に施設が動けるようにしていきたいという施設側の思いがありまして、ただ、これ、どれも制度に縛られてと言っては変ですけれども、法律も違いますので、措置の決定機関も違いますので、なかなかうまく連携というのはとれないというか、難しいというので、モデルケース等々の実施にはまだ至っていないところなんですね。
 昨年、そのきっかけということで、5つの部会の職員を含めてシンポジウムということでやらせていただきました。その模様が、資料の3ページ以降のところに書いております。後でお読みいただければと思いますが、そんなことで、少しこれをきっかけにして、わりあいと情報共有ができたということで、これをきっかけにして、具体的な事業を始めてみようということで、今年動き始めております。
 1つは調査研究ということで、今言ったような利用者の実態、虐待とか精神障害だとか、知的障害、発達障害、重複している各施設の利用者の実態を把握しようと。その背景にはどんなものがあるのかというのを調べてみましょうと。
 もう一つ、さっき申し上げました世代間の連鎖というところで、各局面といいますか、場面、場面では、子ども家庭支援センターだとか児童相談所だとか、あるいは婦人情報相談センターだとか、そういう支援機関は結構あるんですが、またそこの連携もなかなか見えないということで、そこの実態をこの連絡会として把握をしてみましょうということでございます。そんなことが一つ。
 それから、昨年度実施しましたシンポジウム的なものを今度は広く一般と、あるいは行政の皆様を含めてやらせていただいて、こういった情報を共有させていただきたいという事業でございます。
 それともう一点ですが、資料4-2にいっていただいて、この5つの部会の議論から派生したものなんですけれども、虐待の問題、特に性暴力の問題が非常に増加してきているということと、この目的の中にもありますように、全国シェルターネットという民間のシェルターのネットワークですけれども、そこの調査で言いますと、「DV家庭における性虐待児童・性暴力当事者調査」というのをやっているんですが、その中で被害者の67%が実父、25%が継父ということで、被害者の51%までが10歳までに被害に遭っているということで、本当に小さいころから被害を受ける。特に女性ですけれども。そういうことで、そういう子どもたちがまた性を強要されて、あるいはそういった産業に取り込まれていって、また婦人保護施設に来てしまうとか、そういういろいろな悪循環があって、それをどうしましょうかということで、今回は特に性暴力についての被害を抽出して、できればいろいろな専門機関、今、子どもの虐待防止センターだとか、あるいはそういった医療機関だとか、そんなところも含めて、もしできれば、構想なんですけれども、性暴力の防止センターみたいなものがつくれないかというのが部会の皆さんのお考えです。
 事務局といたしましては、民間の活動といいましても、制度としては公的なサービスですので、なかなか自由には動けないところがあるというのはわかっています。そういう意味では、施策の提案ということをさせていただくとともに、もう一本は、我々の社会福祉協議会は、一方で民間の活動、内閣府の国民生活局でもいろいろ推進していただいていますNPOだとか市民活動の方ですね。この分野で活動している団体は結構いますので、今のシェルターもそうですけれども、そういったところといずれは部会というか、施設が拠点になって、何とか支援のネットワークができればいいかなと。今、そういうのはほとんどございませんので、つくればいいのかなという思いが事務局にはございます。
 ちょっと長くなりまして済みません。
鹿嶋会長
ありがとうございました。
 今、話を聞いていると、支援の在り方が経済支援から自立支援へと大きく流れが変わったんですけれども、やはりその流れの中では、どうしてもはみ出してしまう。セーフティネットをかけてもこぼれてしまう人が一定数出るのかなという感じで聞いておりましたが、質問、御意見があればどうぞ。勝又委員。
勝又委員
さまざまな民間の窓口に問題を抱えた方がおいでになるのですが、まず初めは、例えば地域の福祉事務所などから来るわけですよね。ですから、地域の福祉事務所で相談窓口の振り分けをするとか、この相談者についてはこの施設にお願いしたいとかというルートで来るわけなので、各市区町村の福祉事務所の担当者の問題ということはないですか。
東京都社会福祉協議会(柴田統括主任)
もちろんそれもありますし、ただ、今、東京ではほとんどが福祉事務所は市町村ですので、実は市町村で福祉事務所が措置をしているのは、東京では母子なんですね。児童養護とか乳児院は児童相談所というところが措置を決める。婦人保護施設は女性相談センターというところが措置を決めるんですが、そこのところの連携じゃないですけれども、連絡も余りないんですよね。だから、そういったことも少し呼びかけの中でしていきたいという思いはございます。
勝又委員
そうしますと、例えば民間の機関でこういう問題の解決を連携して話し合っても、民間の機関の間だけではどうにもならない問題が多々あるということでよろしいんでしょうか。
東京都社会福祉協議会(柴田統括主任)
そうだと思います。ですので、これは昔からやっていることなんですけれども、行政の皆さんにお願いをするというか、御提案をするというか、もう少し柔軟にやってほしいだとか、そういったことをずっと長年やってきているわけですけれども、今度、種別を超えてそれができないかという動きをしたいという。
勝又委員
ありがとうございます。
鹿嶋会長
住田委員ありますか。
住田委員
昨日もバーンアウトの話をしたんですけれども、相談員の方々の御苦労というのは本当に大変だろうと思うんですね。制度の中の難しさと、御相談されている方のそれぞれの個別の難しさが大いにあると思います。
 今、この2~3年の変化とおっしゃったんですが、私自身もカウンセリング室や精神医学者の方とお話ししていたら、質的、量的にかなり変化をしてきたということをよくお聞きします。その背景に何だろうかということですが、新聞報道されているああいうような特異な事件、昔もあったわけですが、それも近年ある程度増えているんじゃないかなという気がします。
 さきほどの現場からの本当に率直なすばらしい御提案だと思いますので、大きなところでつなげていっていただきたいです。基本的に考えていく場というのは、ここだけじゃなくもっとあってよいと思っています。
 対応という難しさで言いますと、弁護士も相談者から逆切れされる場合があるんですね。相談の場でのその困難さというのは、現場限りじゃなく、きちっとした場で話し合う必要があるのではないかなと。
 以上です。
鹿嶋会長
ほかにあとお一人ぐらいどうですか。
神田委員
今お聞きしていて、事業の中で調査研究と提言活動というのは、これは非常に重要なところだと思うんです。ここではシンポジウムというふうに出ておりますけれども、具体的に提言活動としてどういうような中身をお考えになっておられて、実際やっていらっしゃるか、お聞きしたいんです。
東京都社会福祉協議会(柴田統括主任)
そういう意味では、社会福祉協議会というところは、長年、行政に対して提言をするというのが役割でございましたので、1点は、まず、現場の状況を行政の皆さんに御理解いただくというか、それをしていただきながら、少しずつでも施策をそっちの方にシフトさせていただけるように。要は、先ほど住田先生からもいただきましたけれども、最低基準という施設の基準が、そういう利用者がいるということを前提になっていないんですね。戦後できた法律ですので。ですから、今言ったように、職員はかなりバーンアウト状態で、若い人はすぐ辞めちゃうみたいな感じになっていますね。そんなところも含めて、今、福祉の人材云々という話もございますので、こういう実態を含めて、行政に対して御提案をさせていただきたいなと考えております。
大沢委員
同じような関連なんですけれども、行政だけの働きかけではなくて、例えばマスメディアとの共同によって、この問題が見えるか、見えないかで全然社会の反応が違って、社会の反応が変わると、ここに対しての支援の手が伸びるということで、そこら辺、お考えなのか、是非そういった形でマスメディアの関心を呼ぶということが非常に重要かなと思った点だけです。
大沢委員
その点に関してなんですが、やはり見せ方があると思うんですね。この問題がどういう形で見せれば社会が関心を持つかということで、その点で、いただいたレポートの子どもということが書いてあって、子どもの貧困ということになれば、社会全体で関心が高まると思いますので、そこら辺のところはいかがでしょうか。
東京都社会福祉協議会(柴田統括主任)
もちろん貧困という問題がここの利用者たちにもあって、そこも対応ということなんですけれども、もともと、例えば更生施設というのは生活保護施設なんですよね。だから、それがどの点まで、生活保護を受けて入っている人もいるんですけれども、今、生活保護もああいう状態ですので、なかなか厳しいというところがあって、今、どう手を出すかというのはちょっと見えていないところです。済みません。
神田委員
提言活動で私が重要視しているのは、社会参画を進めるというのが大きな課題なんですね。どのようにして社会参画を進めるかという一つの、いろいろな方法があると思うんです。例えば、こういうところの委員になるというのもそうでしょうし。そうすると、地域でいろいろ活動している方とかなんかが具体的に参画していくときの方法として提言活動があり、この表現はとてもいいと思うのです。社会福祉協議会の場合には行政に対する提言ということですけれども、これを何らかの形で少し整理してすると、非常に有効なんじゃないか。社会参画を進めていくという点で有効なんじゃないかと思っております。
東京都社会福祉協議会(柴田統括主任)
わかりました。
鹿嶋会長
柴田さん、どうもありがとうございました。事務局の方から質問がペーパーでいくかもしれませんので、その節はどうぞよろしくお願いします。
 皆さん、2日間ありがとうございました。どうしても時間が足りないので、皆さんの質問を遮ったことが多々ありましたが、それは改めておわびいたします。意見、質問があれば、事務局の方にペーパーで出してください。それを関係府省にそれを投げ返しますので、そういうことで回答をもらいたいと思っております。
 この2日間でヒアリングした項目のほかに、関係府省に対しては関連の施策、皆さんから質問がたくさんありましたけれども、それで質問等をまた出しますので、その回答は、次回の専門調査会で報告するようにいたします。
 それから、男女別の論点整理、いわゆる男女別にきちっと統計をとっているかといったようなことについても、どのように対応しようとしているのかという点についても関係府省に投げ返し、回答を得たい。そして情報を整理して、6月の専門調査会・検討会合同会議の中で皆さんにお示ししたいと思っております。
 どうぞ。
袖井委員
ヒアリングをした対象の役所だけですか。それ以外のところはだめなわけですか。
鹿嶋会長
ヒアリングをしたところだけです。
袖井委員
先ほど住宅の話が出ましたが、それは国交省ですとおっしゃって、結局そうなっちゃうのです。基本的にヒアリングしたところだけですね。
鹿嶋会長
基本的にはそうですね。先生、今おっしゃったので、検討はしますが。
袖井委員
わかりました。
鹿嶋会長
ということで、本日の審議はこれまでにいたします。次回が6月22日でございます。事務局の方から連絡がありますか。
分析官
2日間にわたりまして、長時間御議論いただきまして、大変ありがとうございました。
 私どもから次回の専門調査会と検討会の御案内、今、会長おっしゃってくださいましたとおり、6月22日(月)を予定しております。午後3時から午後5時の予定でございまして、場所は、本日と同じくここ永田町合同庁舎の第一共用会議室を予定しておりますので、よろしくお願いいたします。
 それから、7月につきまして、7月以降、最終報告の取りまとめということで、短い期間に何度か調査会の開催の方をお願いすることになると思います。それで、日程調整の方、昨日も申し上げましたとおり、追ってさせていただきたいと思いますので、御多用中ではございますが、どうぞよろしくお願いいたします。
 あともう一点、次回は、追加的なヒアリングと併せまして、今後の最終報告に向けた論点の整理なども行いたいと思っております。御質問と併せまして、御意見等を是非事務局の方まで御連絡いただけたらと存じております。よろしくお願いいたします。
鹿嶋会長
そうですね。どの程度まで追加ヒアリングをやるか、まだ未定ですけれども、論点整理も今度のテーマですので、どうぞよろしくお願いします。
 それでは、これで「監視・影響調査専門調査会」の第36回会合及び第10回の「生活困難抱える男女に関する検討会」を終わります。本日はどうもありがとうございました。

(以上)