監視・影響調査専門調査会(第30回)議事録

  • 日時: 平成20年7月17日(木) 15:00~16:50
  • 場所: 永田町合同庁舎第1会議室
  1. 出席委員:
    • 鹿嶋会長
    • 植本委員
    • 神田委員
    • 神野委員
    • 袖井委員
    • 橘木委員
    • 畠中委員
    • 山口委員
    • 横田先生
  2. 議事
    • (1) 平成19年(度)男女共同参画社会の形成の促進に関する施策についての苦情内容等及び男女共同参画に関する人権侵害事案の被害者の救済制度等の把握について
    • (2) 新テーマ「新たな経済社会の潮流の中で生活困難を抱える男女について(仮題)」について
  3. 議事録
鹿嶋会長
今日はお暑い中、御参加いただきましてありがとうございます。
 ただいまから男女共同参画会議監視・影響調査専門調査会の第30回の会合を開かせていただきます。
 7月1日付で人事局の人事異動があったのですが、皆さん全員そろってから一言ずつあいさつをいただきたいと思いますので、それまで今日のテーマを少し処理していきたいと思っております。
 まず、前回のテーマでありました「高齢者の自立した生活に対する支援に関する報告」につきましては、6月13日の男女共同参画会議において報告しました。そして意見決定されましたことを御報告いたします。
 本日の審議でございますが、最初に「平成19年度の男女共同参画社会の形成の促進に対する施策についての苦情内容等及び男女共同参画に対する人権侵害事案の被害者の救済制度等の把握について」に関しまして事務局から説明し、その後、新しいテーマであります「新たな経済社会の潮流の中で生活困難を抱える男女について」に関しまして意見交換を行いたいというふうに思っております。
 それでは、まず男女共同参画に関する苦情の処理状況等について、事務局から説明をお願いします。
日原調査官
それでは、座ったまま失礼をさせていただきます。資料1に基づき、男女共同参画社会の形成の促進に関する施策の苦情の内容、それと男女共同参画に関する人権侵害事案の被害者の救済制度の状況につきまして、これは平成15年度以降毎年専門調査会に御報告させていただいているものですけれども、御報告をさせていただきたいと思います。
 資料1は幾つかに分かれておりますけれども、1枚目の資料1-1では今回御報告します内容と、それから把握した対象範囲をまとめてお示しをしております。それでIでございますけれども、これは施策についての苦情内容などについてなどでございまして、対象とする機関でございますけれども、まず、国レベルでは総務省の行政相談制度に寄せられたもの、それから各省の行政相談窓口で把握したもの、それから都道府県と政令指定都市については、その苦情処理機関などで把握したものを対象としております。 対象とする苦情は、法律、条例などに基づく制度はもちろんでございますが、施策の在り方、それから運用を含む業務運営といったものも含めておりまして、平成19年度中に受付または処理を行ったものを把握いたしております。
 それから、都道府県と政令指定都市については併せてどういう体制で苦情処理をしているかということについても調査を行っております。
 それから、次にIIの人権侵害事案の救済制度の方でございますけれども、こちらについてはまず数字の1でございますが、法務省の人権擁護機関における取組ということで、女性の人権ホットラインの利用状況、人権相談の件数、それから女性を被害者とします人権審判事案の状況を把握しております。
 それから、都道府県・政令指定都市につきましては先ほどの苦情の場合同じように、どういう体制で、こういう人権侵害事案に当たられているかといったことについても伺っております。
 続いて、それぞれの処理件数の状況などについて御説明をさせていただきたいと思います。資料1-2をごらんいただきたいと思います。こちらではまず国に寄せられました苦情処理の件数を挙げております。それで、処理件数、中ほどの合計のところにございますけれども、総計で441 件という状況となっておりまして、この表では基本計画の分野ごとにこの内容を分類しておりますけれども、今年度、平成19年度につきまして最も多かったのは10番の教育・学習に関するものでございました。このほとんど、そこの注にございますように、国立女性教育会館の存続要望、これが占めておりまして、これは独立行政法人の整理合理化に伴いまして上がってきたのでございますけれども、昨年12月の閣議決定におきまして、単独の法人としての存続が既に決定しております。
 その下の表でございますけれども、そちらには国に寄せられました苦情処理件数の推移を載せておりまして、平成17年度、平成18年度につきましては、国家公務員の育児などのための短時間勤務制度の創設、これに対する要望が大変多く、件数も多数に上ったわけでございますけれども、こちらは法改正が行われまして昨年施行されておりますので、平成19年度と比べると総件数が大分減っているという状況です。
 そのほか、件数が比較的多い分野としましては、2番目の男女共同参画の視点に立った社会制度・慣行の見直し、意識の改革がございます。49件となっております。こちらは広報活動の在り方ですとか、男性にもメリットがある公平な男女共同参画をといった御意見、それから夫婦別性に関わる御意見など、さまざまな御意見をいただいております。
 それから、これも毎年の傾向でございますけれども、7番の女性に対するあらゆる暴力の根絶ということで、配偶者からの暴力に関するものが多くなっております。
 1ページおめくりいただきまして、2ページ目は都道府県と政令指定都市に送られた苦情処理の件数をまとめております。こちらは全体で63件ということで、そこに推移を載せていますが、国のような大きな変動はなく、概ねここ数年並みの件数となっているということでございます。
 2枚目の下の方には苦情処理体制の整備状況を3として載せておりますが、都道府県・政令指定都市64の自治体すべてに体制を整備していただいておりまして、庁内で受け付けていらっしゃるという体制が一番多いわけですけれども、男女共同参画に限る形で第三者機関を設けていらっしゃるという地方公共団体も22あるということでございます。
 都道府県別の詳細は資料1-3にまとめておりまして、詳細の説明は省かせていただきますけれども、こうした体制の違いがありますので、例えば第三者機関をつくっておられるところは、そういう第三者機関に正式にかけたものだけを御報告いただいている場合もございまして、都道府県間の数字の多寡をそのまま比較できる状況にはないという状況でございます。
 続きまして、資料1-4に移っていただきまして、人権侵害、人権に関する相談、こちらに移らせていただきたいと思います。
 まず1でございますけれども、こちらは(1)で法務省の人権擁護機関が取り扱った女性に関する人権相談の件数を挙げております。それで、女性の人権ホットライン、それから人権相談件数、それから人権侵犯事件の数としまして、それぞれ2万3,000 件、1万3,000 件、約4,000 件ということで、合計しますと、そこに載せておりますけれども、大体4万件程度ということでございます。
 ちょっと先に資料1-5で、こちらの中身といいますか、最近の動きの方を御説明させていただきたいと思います。1ページ目、女性の人権ホットラインの状況でございます。このホットラインは、全国50の地方法務局の本局に専用の相談電話を設置して、平成12年度から相談に当たられているものでございますけれども、その増減、下のグラフの方にまとめてございますけれども、平成15年まで急増した後、近年はやや低下をする傾向でございます。これは後で見ていただきます人権相談事件ですとか、人権侵犯事件に共通する傾向でございまして、伺いますと、女性にかかるものだけではなくて、人権相談全体として、特定の分野ではかなり増えているものもあるんですけれども、そういった特定の分野を除きますと、全体として減少傾向であるということを伺っております。
 それから、私どもの方から申し上げますと、これも推定ではございますけれども、全国の配偶者暴力相談支援センターは、今年の4月で180 に達しておりまして、そういった別の相談窓口ができてきているということも、この件数には影響しているのではないかというふうに想像しております。
 その内訳でございます。そこの中ほどの表でございますが、この人権ホットラインではドメスティックバイオレンスという区分は設けられておりませんけれども、一番上の暴行虐待をはじめ次の強制・強要といった中にいわゆるDVに関する相談が含まれているというふうに聞いております。
 それから、次に2枚目に参りまして、そのおめくりいただきました裏面になりますけれども、見ていただきたいと思いますが、こちらは女性を被害者とする人権相談、それから人権侵犯の状況でございます。人権相談の方を見ますと、件数的にやはり一番多いのは夫の妻に対する暴行・虐待、それから夫の妻に対する強制・強要というものがその次に来ておりまして、やはり夫婦間の問題が多いということでございます。
 それから、セクシャルハラスメントですとかストーカーといったものもそれぞれ1,000 件前後に達しているということでございます。それから、人権侵犯事件の方に参りましても、やはり夫の妻に対する暴行・虐待、それから強制・強要が多くなっております。セクハラとストーカーについてそれなりの件数が上がっているということも同様でございます。
 それから、もう一度、恐縮ですけれども、資料1-4にお戻りいただきまして、その1-4の2でございますけれども、都道府県・政令指定都市の状況を御説明させていただきたいと思います。やはりこれは配偶者からの暴力に関するもの、これが平成19年度の件数で見ますと7万8,000 件ということで、平成18年度の件数と比べますと17%増ということで圧倒的に多くなっております。
 それから、その体制の状況を次に、2の方に挙げてございますけれども、(1)にございますように、都道府県・政令指定都市のすべてでこちらも何らかの体制が整備されておりまして、具体的には男女共同参画に関する申立制度、配偶者暴力相談支援センター、女性相談所などさまざまな体制で受付がされております。
 それで機関別の類型で見ましたものが(2)でございまして、男女共同参画に関する第三者機関で受けているものも20機関を超えてあるという状況でございます。
 それから、これにつきましては、平成14年の専門調査会の御意見の中で、地域における連絡協議会の必要性という御指摘いただいておりますけども、これも数としては増えておりまして、61か所、大体35パーセントの処理機関で設けられているということでございます。
 残りの資料の説明の方は省略をさせていただきますけれども、こういった状況を詳しくまとめたものになっております。
 簡単でございますが、以上でございます。
鹿嶋会長
ありがとうございました。法務省関連の人権擁護機関は資料1-5などを見ますと、一巡感といいますか、やはり最近は少し減ってきているようです。それがいいと見た方がいいのか、あるいは都道府県の方がまだ18年度と単純に比較すると人権侵害で増えているという感じですが、これは都道府県と例えば法務省というのは相談者がダブるんですか、それともどちらか一方であるか、その辺はわかりませんよね。
日原調査官
両方に重ねて相談している方というのはちょっと取っておりませんので、ちょっとわかりません。申し訳ありません。
鹿嶋会長
総務省の行政相談も含めて、質問とか意見がありましたら、どうぞ。
山口委員
御説明があったかもしれませんが、法テラスができたので、そこで1に関しては相談があるのではないですか。どうなのでしょうか。
鹿嶋会長
どうですかね。答えられますか。
日原調査官
法テラスにおきます状況についても今お答えできる資料を手元に用意をしておりませんけれども、実際に相談を担当していらっしゃる方に伺いますと、やはり特に配偶者暴力支援センターで実務に当たっていらっしゃる方の状況なんかだと、相互の連携といいますか、連絡し合うといったような状況については伺っているところでございます。
神田委員
1-4の(4)の専従担当者数で、非常勤802 人と、非常勤が多い自治体が多数である。これは何かもう少し詳しくわかりませんか。
日原調査官
この調査で伺っておりますのは、常勤・非常勤の別だけでございまして、特に経験年数とかそういったことは伺っておりません。
鹿嶋会長
どういう人が非常勤をやるのですか。人権擁護委員とはまた別ですよね。
日原調査官
別でございます。
鹿嶋会長
資料1-5の2ページ目を見ると、やはりDVを含めた夫の妻に対する暴行・虐待件数はまだまだ多いのですが、これもやはりちょっと減り気味ですよね。評価していいのか、何か、法律が施行されて何年か経って一巡感が出ているような気がして仕方がないのです。それはポジティブアクションなどを見ていてもそうなんですよね。最近、あれも一巡感が出ちゃって減っているんですね。
 どうなのですかね。こういうケースをどういうふうに評価すればいいのか。これがどんどん増えるのはまた問題ですが、減ってきている傾向をよしとすればいいのか、そこに問題なしと見ればいいのか。苦情処理というのはやはりそういう数字の扱い方が非常に大事だと思うのですね。どういうふうに見ればいいのでしょうか。
 資料の1-5の棒グラフを見ていると、2万件台で推移はしていますけれども、どちらかというと多少右肩下がりのような気もしないではないわけで。これはこれで問題なしと見ておいていいですかね。
日原調査官
御参考に紹介させていただきますと、この人権相談の関係で大変多いのが配偶者からの暴力の関係なのですけれども、配偶者暴力相談支援センターに寄せられております相談件数を見ると、これは本当に右肩上がりでございまして、1回も凸凹なく、本当に右肩上がり。6万件を超えたという状況でございます。
 私どもで3年置きで行っております調査を見ましても、やはり大分御相談いただける認知度といいますか、そういう環境というものが進んできた面はあると思いますけれども、やはり潜在的な被害というのもまだあるのではないかなというふうに思っております。
植本委員
質問ですが、配偶者からの暴力という分類なんですが、そこの相談の中にはいわゆるデートDVと言われるようなそういう恋人からのもここに含まれていると考えていいんでしょうか。また、人権相談、こういう形で分類整理されるかどうかというのがわからないんですが、性的マイノリティの方々の相談などはここの中には数字として上がってこないんでしょうか。
日原調査官
1点目いただきました御質問ですけれども、これはやはり窓口によりまして、若干カウントの仕方で違う部分もあるのではないかと思いますけれども。
 それと2件目につきましては、これは限られた中での答えになるんですけれども、配偶者暴力防止法に基づく相談ということになりますと、やはり定義は厳密にございますので、今御指摘をいただいたような相談というのは、法律上の定義からは外れてくるということだと思います。
神田委員
意見でもあるのですが、先ほど伺いましたように、暴力支援センターでは6万件を超えるということでございますね。そうすると、この配偶者間のDVというのは、配偶者間の暴力というのは決して少なくなっているとは言えないわけで、何かそういうものが合体しているような統計資料というのはないんですか、実態を示すもの。
日原調査官
ちょっと勉強というか工夫をさせていただきたいと思います。
神田委員
知りたいのは全体の実態を示すものが知りたいので、そこら辺はよろしくお願いしたいと思います。
鹿嶋会長
多分これはいろんな問題があるのですよね。いわゆる人権擁護委員がきちっと機能しているかどうかという問題も入ってくるわけですよね。暴力相談支援センターの数字が急増していて、こちらがちょっと右肩下がり気味というのは、人権擁護委員というのは、今は女性が4割ですか。前からこれは苦情処理のところでずっと議論してきたテーマですけれども、その辺りの問題もあるのではないかという気がしないでもないですが。もう少し調査をしておいた方がいいかもしれませんね。
日原調査官
女性3割、31.5%です。
鹿嶋会長
3割程度ですか。
日原調査官
少し前の数字で申し訳ないです。13年当時で31%です。
鹿嶋会長
どうぞ。
板東局長
例えば、今、配偶者の暴力のこのパンフレットに相談件数が、こちらの19ページに、これは最新版は載っておりませんけれども、それを見ますと、やはり相談件数は全体として増えているようなことでございますけれども、御指摘のように今、専門の機関が、ここに挙げられているようなことでも割合専門の機関とか専門の相談窓口、あるいは専門的に対応する行政機関、警察とか、そういうものができてきているところはだんだんそういう専門のところに人が行くようになってきているということかなというふうに思いますので、こういう一般的な人権ホットラインのようなところだけを見ていては、先ほどのお話のように全体の件数はわかりにくくなっている。むしろ、専門機関をもう少し総合しながら全体の状況を見た方がいいのかなというのは御指摘のとおりかと思います。
植本委員
それとの関連で、先ほどの御報告で、都道府県の窓口のところで、第三者機関のところは集計として受付件数の場合と処理件数の場合とがあるということだったんですけれども、何かどちらかに統一されてる必要があります。これから比較対象をしていくのに、トータルの件数というのもあると思うので、是非、次に調査をされるときにどちらかで整理できるように、是非とも実態が浮き彫りになるような形でお願いしたいと思います。
鹿嶋会長
ほかにこの問題ではどなたか御質問・御意見ありませんか。
 もし、なければ次のテーマに移りたいと思います。続きまして、新テーマであります「新たな経済社会の潮流の中で生活国難を抱える男女について」に議事を移したいと思います。
 まず、事務局から配布資料について説明をお願いします。
酒巻調査課長
それでは、平成20年度の新しいテーマということで、資料2と3を用意しております。資料2につきまして、私から簡単に御紹介させていただきたいと思います。
 このペーパーは6月13日の第29回の男女共同参画会議に提出されまして了解されたものでございます。新しいテーマの案としましては「新たな経済社会の潮流の中で生活困難を抱える男女について」というテーマを設定しております。
 問題意識としましては、ここに書いてあるとおりでございますが、離婚や未婚者の増加、雇用・就業をめぐる状況の変化、グローバル化、情報化など、経済社会環境が大きく変化する中で、一人親家庭や不安定雇用者、外国人等、生活に困難を抱える人々の状況が多様化かつ深刻化しているということが懸念されるという問題意識がございます。こうした中で、こういう生活困難な背景に男女共同参画をめぐる問題を含む場合も少なくないということが指摘されておりますので、そうした問題の所在を探るとともに、生活困難者に即した支援の在り方について検討することが求められるのではないかということが問題意識でございます。
 こうした問題意識の下で、経済社会の変化がもたらす新たな生活困難者とはどのような層なのか。彼らの生活実態はどうなっているか。何故、そういう状況から抜け出せないのか。また、そういう生活困難者の自立を支援するための施策はどうあるべきか。こういったことを検討していきたいということがこの問題のテーマでございます。
 このテーマに基づきまして、調査の内容を少し具体的に整理したものが資料3でございますので、そちらをごらんいただきまして、少し御意見をいただきたいと思っております。詳細については山岡分析官から御説明いたします。
山岡分析官
では、続きまして、資料3に基づきまして、具体的な調査の視点と今後の進め方について事務局の案ということで説明したいと思います。
 まず、調査の視点でございますが、新たな経済社会の潮流を踏まえた上で、対象層のとらえ方としては、経済的に自立が困難な層という切り口で対象層をとらえまして、その現状とその背景要因並びに経済困窮のもたらすさまざまな問題について男性・女性それぞれの置かれた状況の違いに着目し、男女共同参画の視点から把握分析する。こういう形で考えております。
 生活困窮の問題というのは男女共同参画局以外にさまざまなところでも検討されてきている問題でございますので、男女共同参画会議として御検討いただく際には、やはり男女共同参画をめぐる問題、例えば性別役割分業意識ですとか、性別に中立的な制度であることが、いかにそういう経済困難の問題と絡んでいるのか。そういう点から検討して進めていきたいと考えております。
 調査により2点ほど示唆を導き出したいと考えておりまして、1点は経済的な自立の困難を防ぐという意味合いにおける男女共同参画の推進の重要性ということについて、考え方を整理をしたい。性別役割分業意識を変えていくことがいかに女性の経済的な自立ということに影響を与えるのか。そういった点について考え方を整理していきたいと思っております。
 それから、2点目といたしまして、生活の困難の防止及び支援に関するいろんな施策が今推進されておりますけれども、そうした施策を推進する際に、男女それぞれの置かれた状況への配慮が必要である。どう必要であるのかということについて、指摘をしていきたいと考えております。
 下に具体的なイメージがつかめるような例ということで、幾つか挙げさせていただいております。1つの着目すべき変化といたしまして、家族形態の変化。具体的には母子家庭が増えたり、生涯未婚が増えている。こういった中で母子家庭の問題、その貧困が子どもの世代への格差に連鎖する。それから、また生涯未婚の方などで、安定した仕事に就けないという雇用の問題と絡んで経済的に自立できない同居の未婚男女。これはこの間の高齢者の調査の中でも出てきた問題でございますが、こういうところを視野に入れていこうと考えております。
 それから、2点目、雇用・就業の変化ということで、非正規雇用者、こちらが女性は今既に50%を大きく超えております。その中でも単身の非正規雇用者をどう考えるか。それから独身無業者(ニート)の問題というのも取り上げられておりますが、そこでまた女性の問題というのは何か男性と違った形で表れているのではないか。これらを視点の例として考えてございます。
 次の2ページ目に、「生活困難」をどのようにとらえるかということについて整理させていただいています。こちらについてはいろんな考え方があるかと思いますので、本日、是非、先生方の御意見をいただきたいと思っております。
 一義的に事務局の方で整理いたしましたのが、一番冒頭に書いております「自分の力だけでは乗り越えられない何らかの不利な状況(健康、教育、家庭の事情等)を抱えるために、個人あるいは世帯として経済的な自立の困難に直面している」、具体的には安定的な収入を得られずに生活に困っている状況ということでございます。ただし、現実にどのような対象層を設定するかにつきましては検討を要すると考えておりまして、今、事務局の方で考えております例を下に挙げております。
 この対象層の中には、今現在は経済的には何とかやれているけれども、例えばDV被害者で、逃げたいのだけれども経済的な自立が困難なので逃げられない、離婚できない。こういう方も潜在的には困難を抱える層であるというようなとらえ方で検討の対象にしていきたいと思っております。
 それから、やはり生活困窮層では高齢者、特に高齢単身女性が主要な層になってくるかと思いますが、これに関しましては、前回のテーマである程度実態把握もしてございますので、その結果を活用することを前提に、今回の調査ではあまり深堀りする対象としては設定しないと考えております。
 次の○でございますが、そういう困窮層の問題をどういう視点でとらえるか、困っているのが何故なのか、その背景の要因、それから、その経済的困難から派生して生じている派生的問題、それに着目しまして、そこに特に女性ならではの問題、状況の問題というものが絡んでいないのか。そういう点で見ていきたいと思っております。
 そういう視点で見ました背景要因としては、下に挙げておりますが、例として子育てや介護による就業の中断ですとか、教育・能力開発機会の少なさ、健康面の要因、ここには望まない妊娠・出産の問題なども入ってくるかと思っております。雇用機会の問題や外国籍の人の増加も大きな社会の変化として見ていきたいと思っております。
 それから、派生的問題といたしましては、実際、経済的に困ることで住まいが安定しない、社会保障制度の適用から外れる。また、次のページに参りまして、受診ができない、健康を害する、婚姻や家族関係をめぐる問題として離婚してしまう、DV、劣悪な就労環境に従事せざるを得ない。さらに、子どもへの影響がある、高齢期の生活の不安といったような視点も含めて、生活困難を抱える方々が持つ状況を多面的に探っていきたいと思っております。
 以上が、視点の置き方に関する案でございます。次に3.が調査の内容・方法(案)でございます。
 まず、(1)でございますが、今回の生活困難の問題に対して、まずは全体的に女性をめぐる状況はどうなっているのかというオーバービュー的な状況の把握を既存の統計や調査、相談経験、それらを踏まえてやっていきたいと思っております。
 分析の視点としては、やはり男女共同参画の視点で見まして、何か女性にとって特に厳しい状況変化が生じていないか。具体的には例えば非正規雇用が増えてきていて、その中でも単身非正規雇用が増えているといったことをはじめとして状況変化を捉えていきたいと考えています。
 それから女性の中でも特に厳しい状況にあるのはどのような層か。女性の賃金の分布をデータで見た場合、女性には専業主婦もあれば単身の方もありますがそれらが混じった状態で統計で把握していますが、そこを分解して分析ができないか。実際に厳しい層にあるのはどういう方々でどれぐらいいるのかということを、分析が実質的にどこまで可能かということはありますが、考えていきたい。また、問題の表われ方というのは男女でどう異なっているかという視点も含めて考えていきたいと思っております。
 (2)といたしまして、独自調査といいますか、既存の統計調査に頼らない形の新しい何か情報収集ということで、経済的自立の困難に直面している女性の生活実態や背景状況に関する調査・分析を行う。いろんな相談統計は出ておりますけれど、その方々の背景、どうしてそうなったのか。また、その方々がほかにどういう複合的な問題を抱えていて、何故抜け出せないのかといったようなことに関する情報がまだ不十分ではないかという問題意識で、まずは支援機関・団体が非常にそうした情報をお持ちである、状況を把握されていると考えられますので、そうした機関・団体等に対する調査という形で実態把握をしてまいりたいと思っております。こちらについては量的なアンケート調査のようなものができるかできないかということについても、実態をもう少し探っていかないとわかりませんので、ヒアリング調査を先行させながら進め、検討してまいりたいと思います。
 次に(3)が、そうした実態把握を行いました課題の整理・取組の在り方の検討ということでございます。
 4ページに参りまして、検討体制でございますが、今回こういう生活困難のテーマということになりますと、ひとり親の問題や若年無業者の問題などについて専門的に研究をされている方々の御意見も伺いたいと思っておりまして、実態把握等に関する基礎的な整理分析については検討会を組織して行っていきたいと考えております。
 また、専門調査会につきましては、その検討会から節目ごとに報告を受けて最終的な調査審議並びに報告の御検討をいただくことを予定しております。調査等の作業は調査会社に委託しております。
 当面のスケジュールといたしましては、本日、調査方針について確認・御意見をいただきまして、9月ごろを目途に検討会を立ち上げ、その後、有識者ヒアリング等具体的な調査を進めていきたいというふうに考えております。
 この検討体制の検討会メンバーにつきましては、事務局の方でいろんな情報収集をしておりますが、人選につきましては、鹿嶋会長に御一任をよろしければいただいて、決まりました段階で先生方にまた御報告・御了解いただきたいというふうに考えております。
 参考資料でございますが、参考資料1、参考資料2として、ごく概観的なデータ情報でございますが、御用意させていただいております。
 参考資料1につきましては、婚姻の状況ですとか、ひとり親の状況、非正規雇用の状況、若年無業者の状況、在留外国人の状況をデータをお示しさせていただいております。
 本日、経済的困窮をどのラインで見るかというようなことに関しましては、例えば3ページ上の図表5の下の表でございますが、母子世帯に関しましては、大体200 万ちょっとの収入であるということですとか、5ページの図表10でございますが、ここに雇用形態別の年収の所得の分布をお示ししております。こういったような実態を把握しながら対処法をどうとらえるかというところで本日参考にしていただきながら御意見を伺いたいと思います。
 また、参考資料2でございますが、こちらも関連する参考の情報ということで、御存じのことばかりかと思いますが、国際的にもこういう女性の経済困窮の女性の貧困の問題というのが国際会議等でのテーマになっていて、そこが女性のエンパワーメントの非常に重要な要因であると、そういう位置づけで語られております。それが1ページ目にございまして、あと2ページ目に(4)という形で、裏面のところですが、最近出てきましたOECDの雇用アウトルックの中でも、労働市場の正規・非正規の二極化の問題、それからそれが女性の雇用との障害とも絡んでいく、そうしたような課題が日本の状況に関して指摘されているという、これらを参考でお示しさせていただいております。
 本日は、参考情報は横にごらんいただきながら、資料3を中心に御議論をいただければと思いますので、よろしくお願いいたします。
鹿嶋会長
それでは、幾つか議論していただく上での論点として、まず、新たなテーマ設定ですね。「新たな経済社会の潮流の中で生活困難を抱える男女について」このテーマ設定について皆さんどう思うかということですね。
 それから生活困難者というとらえ方、2ページで書いてありますけれども、これをどういうふうに考えていくかですね。母子世帯とシングルでは条件がまた違うでしょうし、前回の高齢者の自立した生活に関する支援の調査で明らかになったいわゆる男性のシングルの中高年層ですね。更には中高年のパラサイトを抱えているいわゆる年金生活者等とどういうふうにするのか。個別に考えると、いろんなことが考えられますけれども、生活困難者をどういうふうにとらえるか。対象層をどの程度まで広げていくのかということがあると思います。 それから、一番大事な点は、この調査の中で男女共同参画の視点といいますか、それをどういうふうにポイントとして置きながら進めていくのかということもあると思いますが、皆さんの方から御自由に御意見を出していただきたいと思っております。よろしくお願いします。
坂橘木委員
この調査は非常にいいと思うのですが、これは実態把握が主な目的か、それとも実態はもうかなりわかっているので政策をどういうふうにやっていくかというので2つのやり方があると思うのですが、今日、お話を聞いた限りでは実態把握の方が中心と理解してよろしゅうございますか。
山岡分析官
やはり監視・影響調査ということで、各省の施策との関連を含めて調査としては進めていきたいと思っておりますので、最終的には施策との関係も含めて提言を出していきたいと思いますけれども、まずは実態が、特に女性の視点でこの問題がどういう状況になっているのかというところがまだわかっていないということについて、すべて新しい調査をするというわけではないと思いますけれども、既存の情報も使いながら実態をジェンダーの視点で整理してとらえていきたいと、まずはそこのところから入りたいと考えております。
鹿嶋会長
でも、資料の3の1番の○の3番は、「以下の示唆を導き出す」としても、ある程度仮説を立てているんですね。この辺りを導き出すような調査設計にするということ。
山岡分析官
そうですね。施策との絡みで、どこまで新しい対策として何が必要かということを言えるかということに関しましては、例えばひとり親施策は厚生労働省の方で様々な制約がある中で今検討を進めており、新しい財源が必要なもので何か新しいものを提言していくというのがどこまで可能かというのは、これから検討を進めていく中で考えていきたいと思います。ちょっと今の時点でどこまで深く政策の部分に踏み込めるかというのは、今は十分に整理、検討できていないので申し上げられません。しかし、論点として整理はまずはしていきたいと思っています。
袖井委員
概況は大体わかったんですけれども、例えば施策そのものの有効性とか、そういうことも検討の対象になるんでしょうか。例えば母子世帯についていろいろな施策はありますが、ほとんど効果がないんですよね。だから、その辺のところまでできれば調査はした方がいいかなと思います。
板東局長
今、御質問のように、その辺りの問題意識は非常に強く持っておりますので、今ある施策が有効なのかどうか、あるいは変化の中で従来有効であったものも不十分になっているとか、状況が変わっているという新たに考えていかなければいけない側面というのはないだろうかと、そういうことを合わせて考えていく必要があるのではないかと。例えば生活保護の在り方とか、いろいろな問題の御指摘はあろうかと思います。
鹿嶋会長
例えば一番問題になっているのは何ですか。政策の有効性という点で一番まず俎上に上げるとすれば。
袖井委員
そうですね。やはり、母子世帯などの就労支援とか、あるいは生活支援とか、結構あるんですよね。細かいのがいっぱいあるのでその辺のところを検討する。それから生活保護などの問題もそうです。今非常に締め付けが厳しくなっていて、餓死した母子世帯とかありましたね。。
鹿嶋会長
これは実際始まるとなると、やはり生活困難のとらえ方についてと、この辺りを一番まず議論をしておく必要があるのかなと思っているんですけれどね。対象層をどういうふうに設定していくのか。年収どれぐらいをもって生活困難ととらえているのかどうか。どうなんでしょうか。そのためのデータとしては、参考資料の1を出していただいて、参考資料の1には非正規雇用者の収入等々、特に5ページ、図表の10ですね。これはパート、アルバイト、非正規雇用者の年収ですね。所得分布部の調査を出していただいたんですが、何をもって生活困難ととらえるかというのは大きなテーマなんですね。
坂橘木委員
もう一つよろしいですか。貧困という言葉が出てこないのは何か意図的な、貧困と言ったら大体昔からわかっているところで、ここで経済的生活困難という言葉をあえて使っているのは、貧困を余り関心ないか、あるいは貧困とは違う生活困難というのをここの研究会で出したいという意図があるのかどうかもちょっとお聞きしたんですが。
板東局長
ここで経済的な自立の問題が中心になっているんですけれども、私がもともとこういった部分についても御検討いただけたらと思いましたのは、1つは貧困の問題というのはもちろんあると思います、もう一つは貧困と言う経済的な問題に限らないいろいろな生活困難という問題についても多少プラスアルファで考えていく必要があるのではないかということ。例えば、ここで単親家庭の問題が出ておりますけれども、父子家庭の場合ですと、経済的な問題だけではないむしろ生活面、子育て面の問題というものがあります。あるいは外国人などの問題もそうだと思います。そういったところで、経済的な問題だけでいいのかどうかというところは躊躇があるところでございます。
坂橘木委員
それは私も大賛成で、貧困という1年に何百万円所得があれば大丈夫かという話でないこともここの研究会でやるというのは非常にいい視点だと思ったんですが、ちょっと繰り返しになりますが、貧困ということもやはり長い歴史があるので、それと貧困以外の生活困難というものとの関係などというのもやはり調べた方がいいような感じがしたので、ちょっと御質問したんですけれどね。局長の言われるのは私も大賛成です。
鹿嶋会長
調査の設計で具体的にどういうふうにすればいいのかな。これはまだ後でいいんでしょうけれども、貧困プラスいわゆるそれ以外の生活困難、多々ありますよね。そういうのを織り込めるような調査設計というものをこれから考えなくてはいけないですね。それは後で検討会などを立ち上げてまた議論をいたしますが、その生活困難のとらえ方の問題で、ほかにどうでしょうか。要するに経済問題だけではないということが第1点ですね。
神田委員
よろしいでしょうか。まだ考えが固まらないんですけれども、これには親から子への継続の問題というのは多分出てくるんだと思うんですね。教育水準、教育というのがどう影響するか。特に親の教育レベルが結構関わっているので、そこら辺を考える必要がある。この問題をやっていくときに、家族全体の文化水準だとか、経済水準だとか、そういうものがかかわりそうな感じがするんですね。
 それからもう1つは、施策として多分、キャリア教育が出てくるのではないかと思っているんです。非常に直接的な施策と、少し時間を置いた施策と分けられていくのではないかと思っています。
鹿嶋会長
議論の発展性をどういうふうにするのかが難しくて、ついつい止まってしまうんですが、神野先生はどうですか、この生活困難の問題は。
神野委員
それほど識見があるわけではないんですけれども、橘木先生のおっしゃった言葉で言えば、あれですよね、困難と言う概念をどうつかまえるかという話と、それからあと新たな経済社会の潮流も引っ掛かってくると思うんですね。経済社会の新しい構造的な変化をいうような流れがある。これをどうつかまえるのかなんですが、このペーパーの趣旨から言うと、家族と雇用という2つの複眼で見ていくという、そういう話でしょうか。
 主として貧困というような問題は雇用の問題にかかわり、ただ実際には橘木先生のあの本の中からいっても家族の問題ともかかわるんですけれども、先ほど御指摘になられたような意味で、家族の持っている文化的資本、教育の能力に、関心が決定的な意味を持つというような意味で、貧困にかかわるかもしれないけれども、生活と言ったときには、そういうふうに言っていいのかどうかわからないけれども、家族固有の何か機能を認めるかということですよね。すると、家族をなしてない場合にどうするかという、非常に複雑な、つまり男女共同参画という視点からいうと、微妙な問題になりますよね。
 だから、多分、ここではこういう理解でいいんですよね、家族と雇用という問題を複眼的な視点にしながら、生活の困難を考えようとしているという理解でいいんですよね。違うんでしょうか。そういうことでいいんですよね。
山岡分析官
やはり世の中の変化の中で人々の生活に大きな影響を与えているものの一番大きなものとしては家族と雇用というものがあって、両者がまた絡み合って、例えば非正規雇用の問題も、こんなに生涯未婚が増えなければ、またその問題はもう少し違った形で顕われたかもしれない。その両者が非常に絡み合った問題で、そこで、女性にとっても何らかの皺寄せが来ているのではないかという仮説はあります。ただ、家族と雇用だけの変化だけを追っていくのかというと、それだけでもなくて、例えば外国人が国際結婚でたくさん入って来ているとか、そういう世の中の変化全般を踏まえてはいきたいと思いますけれども、大きな2つの柱であるとは考えています。
神野委員
大体この手の話は見ればわかるんですよね、多分。それを定量化するときに、どういうファクターを相互に関連づけながら見ていくのかということが大変だということでいいんですよね、橘木先生。大体見ればわかりますよね。生活困難というのを大体描いておいて。
坂橘木委員
実態を、家族をどうやって見るんですか。
神野委員
いや、だからそれは、本当はこの家族は生活が困難だと、ある程度生活はこっちの家族よりも収入はよくても、こちらの方が生活が困難だというのは多分見ればわかるんだけれども、それをどういう指標で見ていくのかというのは、難しいでしょうということを聞いているんです。
坂橘木委員
それはなかなか難しいですよね。父子家庭の例を挙げて一番わかりやすいと思うんですが、男は収入が多いからお金はある。300 万円か400 万円もらっているけれども子育てになれていない。それで非常に困っているというのは、まさに生活困窮と考えていいわけでしょう、局長のお話によるとね。そういう人たちというのはなかなか定量化できないよね。母子家庭の場合は子育てはうまくやれるんだけれども、全体的に経済的収入が少ないというのが逆のあれで、好対照ですよね。
神野委員
つまり質ではからなければいけないものをどうやって量でつかまえるのか。結構難しい問題なんですね。私は、だから生活困難ということを掲げながら、それだけじゃないかもしれませんが、家族・雇用みたいな複眼的な視点で見ていって、ある程度数量化してみるんだけれども、埋め切れない質的なものをまたフィードバックしながら考えていくと言う繰り返しをやるしかないかなと思うんですね。私の今、周りでやっている都道府県別不幸度の研究というのも、でも、不幸度とどうかかわるかというのは難しいわけですよね。
坂橘木委員
どこが一番不幸なんですか。
神野委員
いや、だから、それは今代理変数で自殺率をつかまえながら、それにかかわる要因を全部挙げて置いて、総合観点をどうするかということでやっているんですけれども、それでいいのかと言われれば、それはどうかわからないというふうに言わざるを得ないんだけれども、何か量と質との行きつ戻りつということになるので、設定はこれでいいのではないかと思います。
 それで、要因は2つではないというんだけれども、結局、要因分析を、要因をある程度分けて考えて、そこで数量化をしてみて、また、それを質の問題がどうしても抜け落ちるので、フィードバックする。ほかの視点が何か入るかというようなこをやらざるを得ないんですよね。自殺率でもだあっと並べておいて、何が引っ掛かってくるのかというのを見つけ出すというのはなかなか難しい作業なので。ということで、とりあえず、こんなことを進めながら、何というのか、始めるときには曖昧模糊とした概念なんだけれども、進めていくうちに精緻にしていくというやり方でやるしかないのではないかと思いますが。差し当たっては2つぐらいで見ていくしかないような気がしますけれどもね。
植本委員
その何となくもやもやとした気持ちがまだ拭えないんですけども、すごく類型的に分類された父子家庭と母子家庭の生活困難というこの例示そのものが本当にそうなのかということを確かめるということだと私は腑に落ちるんです。要するに、例えば母子家庭と、それから専業主婦の家庭を比べれば、子育て支援を求めているのは専業主婦家庭の方が求めているという、母子家庭というよりは子どもを働いて保育所に預けている人たちとの比較でいけばと。そういう意味で言えば、必ずしも経済的に困難ではないが生活困難というのは、いわゆる専業主婦の中にもかなりあるという、子育てというところの切り口でいけば。ですから、父子家庭、母子家庭ということでの生活困難というのを逆に私たちが入口をそういうことにするということが男女共同参画の視点でやる当調査の切り口としてはどうなのかというのが少しもやもやとすることがありまして、そういう意味での生活困難という意味は何なのかというところが私の中には整理ができにくいんです。それはもちろん、子育てもそうでしょうし、それ以外のこともあるんだろうと思うんですが、その辺の生活困難というのは一体何なのかというのを整理していただけたらとてもありがたいなと。
坂橘木委員
いい質問でね、ちょっと私から質問したいんですが、夫の年収1,000 万、1,500 万、経済は全然困難ない、専業主婦、そのかわり子育てに非常に困っている、どうやって子育てしていいかわからないという専業主婦は生活困難者ですか。
植本委員
子育てに困っているということの切り口で、それが生活困難だというふうに言えば、そういう視点においては困難なわけですよね。だから、生活困難のところの要素をどういうふうに複合的に整理をするのかということだと思う。子育てに困っている人というところでイコールそうだというふうになかなかならないのではないかという思いでお伺いをしたんですけれど。
鹿嶋会長
それはやはりどこかで経済面で線を引かざるを得ないでしょう。年収1,000 万で、育児でノイローゼになっているから生活困難かといったら、それは生活困難かもしれませんけれども、だから、どこかで線を引かざるを得ない。この問題の難しさは生活困難のいわゆるバックボーンが非常に複雑なんですよね。母子、父子だけではないんですよね。いろんなファクターがあるから、その辺りをどういうふうに整理してこの中に入れていくかということでしょうね。外国人も入るわけでしょう。
神野委員
私のイメージでちょっと質問させていただきたいのは、最終的に政策面で結びつけるとすると、この手の概念でわりと、ちょっと違うんだけれども、アンデルセンが言っている脱市場化と脱家族化というのがありますね。それはそういう意味では裏から表現するか表から表現するかの話なんだけれども、市場に頼らざるを得ない、つまり主として経済的というか労働市場からどのぐらい所得を得られるか、あるいは所得を得なくても政策的にそれをサポートしてあげられるのかというので脱市場化で、それだけでは、つまりジェンダー問題が隠れてしまうのでと批判されたものだから、脱家族化と言ってきているわけですよね。
 あれはちょっと逆な見方なんですけれども、それに近いような問題でいくのかなと思ったんですね。最終的に政策ということでいけば、アンデルセンの考えていることで、要素を脱家族化、脱市場化の要素とどうリンクするのかというのは、それは見方が全然というか、陰画法でとらえているのか、陽画法でとらえているのかが違うので全く違いますけれども、発想はそういうところなのではないかというふうに誤解したのかもしれませんが、理解したので、ちょっとそういう発言をしたということです。
山口委員
やはりここで言う貧困というのはどういう層で、どういう数字でつかんだらいいかということを出さないと、議論がばらばらになると私は思いました。
 それからもう一つ、私は仕事の関係で車で出勤するんですけれども、新宿の公園にさすらい人が大勢いますよ。多分、家族からも解放されて、荷物も大変なものですよ。貧しさというのは何なのかなと。あの方たちが一番怖いのは病気ではないかなと私は思いました。まず、それがあると思いました。
 それからもう一つ、先ほど出された中で、男女共同参画の視点、これを入れなくてはならない。ジェンダーバジェットです。これは国連の女性の地位委員会でも議題にするといっているし、今年の総会にも問題になるかもしれません。そのときに、私は国の女性関係予算を案の段階で、女性の困難な問題に対して施策はどう手を打っているかということ、それからもう一つ、より向上するために取り組んでいる。この2つの内容だと思うんですが、これをきちんと整理しておくことも必要ではないかなと。
 毎年男女共同参画関連予算案のヒアリングをお願いし、内閣と文科省と厚生労働省と農林水産省と、女性に関係するところ4つやっているんですよ。ここでジェンダーバジェットを分析して、きちんと整理しておくことも、これから多分、内閣の方も国連にいろいろ報告するときにこれは問題になると思うんですよ。ただ、お金が何兆円あるからということでいいわけではない。やはり、ジェンダーの視点で、実際にどのような影響を与えているか、現予算で。その分析も必要ではないかと私は思いましたけれど。それはデータがはっきりあるわけですから。
 それに対してあとは貧困感覚。先ほど橘木先生おっしゃいましたけれども、本当にかつて経済企画庁の調査で、日本人の中流意識というのは最低が100 万円から1,000 万円まであるというんですよ。そのぐらい違うんですね。だから、貧困に対する感覚を出しておかないと話が進まないかなと思います。
神田委員
生活困難というのがあって、それで基本的に経済的自立が困難な層というふうに持ってきているわけですね。生活困難というのはいろんな要因が入ってきて大変分析が難しいだろうと思うんです。そこで、大きな要因として経済的に自立が困難というのを置くという手法は明確になるのではないかと思います。その上で、生活困難というのをどういうふうにとらえるかというのを入れていったらいいではないかと思います。経済的自立が困難であるけれど、生活的に豊かなのはどういうことかとか、何かそういう分析の仕方ではないかなと思っています。
 特に女性の場合には固定的役割分業観との関連で、経済的自立というのが必ずしも確立しておりませんので、かえってこういうきっちりしたものでやった方がいいかなと思っております。
山岡分析官
いろいろ御意見いただきました生活困難をどうとらえるかというのは実は事務局でもかなり議論をしまして、ちょうど神田先生がおっしゃったような形で整理をしようという考えに到りました。生活困難といった場合に、先ほど植本先生かおっしゃったような経済的には恵まれているけれど、例えば子育てで孤立しているとかそういう問題というのをどうとらえるのか、そういうのも生活困難に入るのではないかという確かに議論がそれこそありまして、そうすると、もう線引きが全くできなくなってしまうというところで、先ほど局長が申し上げましたように、背景や状況の分析にはできるだけ多様なものを含めていきますけれども、対象層をまず一義的に定めていく視点としては、経済的な困窮、経済的に自立が困難ということを基軸に対象層を見定めていって、その方々を中心に、その方が抱える問題を、ここに派生的な問題ということで挙げておりますけれども、さまざまな側面で見ていきたいと考えております。
鹿嶋会長
多分、テーマの最初に書いてある「新たな経済社会の潮流の中で」という、これが付いているので、これにやはりこだわらないと、生活困難というのが、従来型と余り変わらないようになると思うんですね。新たな経済潮流の中でというのは、私は事務局とそんなに議論したことはないけれども、多分、非正規雇用の流れとか、そういうものが新たな経済潮流の流れだと思う。それから外国人労働力の問題とかですね。だから、そういう新しいトピック的な経済の流れの中で、生活困難というのが新たに発生しているわけで、ではどうするかというふうに単純に考えていかないと、非常に難しくなってくると思うんですね。
袖井委員
1つは主観的なものをどう考えるかということもあって、先ほど山口さんが中流意識とおっしゃったけれど、昨年の高齢者の自立の調査をしたときも、一人暮らしの男性よりも女性の方が収入が低いけれど、男性の方が生活が苦しいと言っているんですよね。だから、多分、そういう収入だけではなくて支出のパターンみたいなものも見た方がいいのかもしれないですね。例えば家計調査みたいなものとか。円さんのところなどはずっと母子世帯の家計簿を公開していますけれども、父子世帯について余りそういうデータがないから困ってしまうんです。家計支出がどういうふうになっているか、非常にアンバランスか、それがバランス取れているかというのを見る必要があるし、あと主観的なものをどう考えるかということですね。
 母子世帯のお母さんを対象に、私も幾つか面接調査などをしたんですが、経済的には苦しいけれど今はとても幸せだと皆さんおっしゃる。ああいうとんでもない亭主から自由になって幸せだと、そこは生活困難が解消されているのではないか。そういうのをどう考えるかですよね。それはちょっと難しいかと思うんですが。
山口委員
育った世代もありますよね。貧しい、貧困観というのはね、違いがね。
鹿嶋会長
円さんのところの調査というのは私もかつて分析したことがあるんですけれども、やはり母子家庭の基本は親への依存なんですよね。妻が実家に帰ってきて依存するということがあったんですが、ただ、それは中流のときはできたんですけれど、今はもうできないでしょうね、実家依存というのはね。だから、かつて分析したものは、その当時のものしか私は見てないんですけれども、実家への依存度がやたら高かったですね。
袖井委員
多分、これからは親への依存は難しいでしょうね。
鹿嶋会長
だとすれば、そういうのも新たな潮流として付加していくのかどうかですよね。
神野委員
今、生活保護規定はあれを入れているんですよね。ストックも入れているんですよね。フローだけじゃないですよね。資産とかそれも入れているんですよね。
山岡分析官
生活保護の対象になるかどうかということでしょうか。
神野委員
そうです。
山岡分析官
資産の判定も入っています。
神野委員
だから、フローだけでやっているわけじゃないてすよね。
山岡分析官
ええ。
畠中委員
私は役人を長くやっていたものですから、役人の習性で言いますと、まず答えから考える習性がありまして、その点からいいますと、このテーマは大変意欲的なテーマと思いますが、何が言えるのかなと、特に男女共同参画の観点から何が言えるのかなということを考えますとなかなかまだ勉強不足で想像がつかないんです。何か何点か想像がつけば、何を調べるか、どういう対象を調べるか、どうやって調べるかというのも想像がついてくるのかと思うんですよね。ただ、それはやってみなければわからないということならばそれはそれでも結構なんですけれども、何かこういうことが言えるということがあればちょっと教えていただければいいんですけれど。
鹿嶋会長
どうですか。事務局。何か答えられる。
山岡分析官
大変難しい御質問で、まだ正直なところ細かいところは考えが詰まっていないのですが、資料3の1.の調査の視点の3点目の○に書いているようなものが1つのイメージです。1つ目は経済的な自立の困難を防ぐという意味合いにおける男女共同参加の推進の重要性。というのは先ほども申し上げましたけれども、男女共同参画の中でわりと女性の登用だとか参加促進ということでやってきましたけれども、例えば女性が働くということが、働き続けるということが、例えば離婚したときにその後の経済困窮に陥らないためにも重要であるというようなところの、男女共同参画を進めることが女性の能力発揮というだけではなくて、ある意味、貧困を防ぐという意味でも意味合いがあるというようなメッセージをが出したいというのが1つ。
 2点目は、先ほど来、施策の有効性に関する示唆が出ないかという御意見が先生方からございましたけれども、現状では、非正規雇用の対策にせよ、ニートの対策にせよ、どうしても男女ひとまとめでいろんな対策が行われているところに関して、より効果的な施策とするために男女それぞれの状況、特に女性の状況はどう違うか、だから、こういう政策が必要なのではないかというようなプラスアルファの示唆、その配慮の必要性というものを出せるようなところでございます。
 しかし、もっと具体的に何かと問われますと、正直なところ、まだこれから少し検討させていただきたいと思っております。
鹿嶋会長
多分、今までの議論を聞いていますと、生活困難には経済的な困難と精神的な困難、あるいは経済的充実、精神的充実というのですか、そういうのが多分あって、その2つの絡みが生活困難を決定してくるのかなという感じがしているんですよね。そうすると、今度は両者をうまくとらえつつ調査を設計していくというふうなことになってくるんだと思うんです。
 男女共同参画の視点というのは多分、精神的な困難ですか、そちらがかなり微妙に影響してくるわけでしょう、それは夫との関係だとですね。それからDVの問題を含めてね。そういうのをどこかで意識しながら、この問題を考えていかざるを得ないのかなという感じがしますけれどね。
 更に議論を進めますが、御自由にどうぞ。
神野委員
ちょっと抽象的に、いかに定量化するかということで考えれば、1つは生活を支えているものは市場から買えるものというのがあるわけですよね。これは主として経済的困窮とか何とかにかかわってきているものですね。市場から買えないもの、これは家族の中でアンペイドワークやコミュニティの中でつくってきたもので、これで2つ支えられている。DVとかはマイナスで精算してしまった負の精算と考えれば、2つ、つまり市場と買えるものと買えないもので生活を支えていたものの条件は何かということで詰めていかないと、なかなか定量化しにくいのではないかと、こう思いますが、もちろん、それは今度は負の、我々でいうと、外部経済、外部負経済の負の方も含めてですよね。家族をなくしちゃったための。それがうまく機能していないために、産業廃棄物みたいなものが生産されているという問題ですよね。何かそういうことで整理しないと、どうやって、全体を把握するのかというのはなかなか難しいような気がするんですが。
鹿嶋会長
視点を変えてくださっても結構ですが、ほかに、いろんな意見をランダムに出していただきたいと思っていますが、どうでしょうか。
 今、神野先生のおっしゃったのは、市場で買えないものの例としてはアンペイドワーク等々を入れていたと。その辺りをどういうふうに絡ませるということなんですかね。市場の買えるものと買えないもの。
神野委員
そうですね。買えないもののうち、ここで教育とか子育てとか、主として家庭内で担ってきたものの条件というのが必要ですよね。それから、そのために逆の条件も出てきているということですね。何か一つの概念で説明しようと思うんですが。つまり、本来、人間が生活していく上で必要なもので、市場から買えるものばかりではない。当たり前の話ですよね。それが結局、何らかの形でつくられていた。これは家庭内でつくられていたし、家庭内でできない場合にはコミュニティとか何かでいろいろつくっていたと思うんですけれども、その条件が欠落すると生活は困難になる。ただ、逆に家族やコミュニティを形成したがゆえに、何というのかな、出てきている問題点があるということですよね。つまり、何と言ったらいいのかわかりませんが、生活を困難にするようなものまでもつくっちゃっているということですよね。そういうことをある程度要素としてピックアップするんですよね、何らかの形で。
鹿島会長
いかにも家族を構成することを勧めるような話になりませんか。大丈夫ですか。
神野委員
いえ。マイナス部分もあるので、それがちょっと難しいところに。家族を勧めるというよりも、あれですよね。子育てとか介護とかというのは家族を形成しようが、形成しまいが、市場で買わなければ違うことでやらなければいけないという問題があり、ちょっと表現がいい加減になりますが、本来、質を高くしようとすると、愛情や何かで、今問題になっている精神的なものでくるめて生産しないと困難だったものも必要だということですよね、生活していくには。
 ただ、人間の関係の中で生産されるので、人間の関係がうまくいかなくなっているときには、むしろ生活に困難にしてしまうようなものも生産されてしまうということですよね。そうした、政策的に言えば、そうした人間関係を後でどうやって調整してくるかということが政策になるわけですよね。母子家庭に対する支援といった場合にも、単に経済的に支援するだけではなくて、そういうマイナス面をつくられてしまったということまで生産しなくてはいけないということになるわけですね。家族になってしまうのかどうかわかりませんけれども。多分、2つ、生産物を市場で売却するものではない生産物が存在していて、それを何らかの形で生活を支えるものとしてピックアップしてくるということにならざるを得ないのではないかと思いますが。
 それは質的にいろいろと違うわけですよね。さっきの神田先生のあれでいくと、文化資本ということですよね。家族の、子どもに対する教育に対していかに関心を持っているようなことが学校の教育よりも能力を決定してしまうというふうに文化資本論者は言うわけですが、そういうような要素も入ってくるでしょうというようなことだとすれば、そう表現せざるを得ませんよね。微妙な人間関係の中で生産されているものを、定量化するなり、定性分析をするのか、ちょっと定量分析するのか微妙だけれども、対象とする現象はそういうことではないかなと思いますが。
 精神的なものを何らかの形で翻訳して、何というのかな、しないことには、ちょっと政策には結びつきにくいので、どうやってその現象を翻訳するかということだと思うんですよね。
鹿嶋会長
ありがとうございます。
 まだ第1回ですので、いろんな意見を是非出していただきたいと思っています。ほかにどうでしょうか。
神田委員
今のと関係するかよくわからないんですけれど、経済的自立が困難という問題と、人間関係、家族も含めて、人間関係の状況というんでしょうかね。それがかなり大きく影響するんだろうと思うんですよね。それをどういうふうな形でこの中に入れ込んでいくかということなんではないでしょうか。ある場合には経済的には非常に貧しいけれども、豊かな人間関係を持っている層とか、その関係を調査の中でどのようにしたら取れるかというのは、課題になると思います。
鹿嶋会長
今日は余り議論がなければ早く終わりにしようと思っていたんですけれども、なかなか難しいということはわかってきました。
船木政策企画調査官
済みません。事務局で政策調査官をさせていただいている船木ともうします。初めましてという方も多いかもしれません。よろしくお願いいたします。
 事務局の中で文言を詰めるところに私はいたわけではないのですか、貧困というテーマが実は古くて新しいというのが今の状況だと思っております。ホワイトバンドみたいなキャンペーンがあったりして、貧困という言葉に改めて触れて、実は貧困は海外にあると思ったりしている人たちも多くいる中で、このテーマに対してちゃんと真摯に向き合って何らかのメッセージが出るというのはすごく重要なことなのではないかというふうに感じて、貧困は当然わかり切っていることで、これまでずっと議論してきたことなんだという人たちも一部でいつつも、貧困という言葉に改めて今の時代に発見して、ようやく、どなたでしたか、ちくま新書かどこかで、貧困のことをまた文庫で書かれている方がいらっしゃったりして、社会学的にというのも乱暴な言い方ですが、社会的な情報として、ジャーナリズムの世界でももう一度発見をしているというところでもあるというふうに思います。
 その意味の中で、貧困というのはそもそも改めてなんだということを問い直すことと、それを含めた上で、今回、ここで規定をした生活困難者というのはどういうものなんだという2点をやはり当然、定性と定量の狭間であったり、ソーシャルキャピタルという一時あったコンセプトになかなか定着しなかった分析の仕方であったりとか、関係をいかに数量化して見える形にして、関係性の社会課題をどういうふうに見えるかするかみたいな、実はとらえなければいけないことに、なかなかとらえ切れていない現状の問題に図らずもこのテーマは野心的に取り組む分、実は触れなければいけないんだろうというだろうというのを、済みません、今日の議論をずっと聞きながら、このテーマは重いよなというふうに思いながら、先ほどの政策にどれだけ結びつくかとか、アウトプットの最終ゴールはどこにあるんだということも当然国の政府としてやるという内容での重いテーマではありつつも、トライアルの部分もあるのかなと。走りながら考える部分も持たないと、これは設計、調査を、基本的には仮説があって、設計があって、基本的なフレームをつくってとしないと実は調査に走れないというのは皆さんおわかりのことだろうというふうに思うんですけれども、今回ばかりは、もしこのテーマがよしと、これに本気で取り組むんだということになると、若干見切り発車をしなければいけない部分も出てくるのかなというのは、済みません、議論の途中の合いの手のような話なんですが、少し思ったところということでお伝えをしたいというふうに思いました。
 以上です。
鹿嶋会長
ありがとうございました。私自身はわりと意外と単純に考えていまして、最終的にはね。要するに貧困だとか、蟹工船だとか、そんな言葉が流行語になっているようなそういう時代状況下の中で、新たな貧困層が出ているわけすよね。それは1つはライフスタイルの変化もあるわけですよ。
 では、どうするかという話で、もう単純に最後は割り切ってしまいますけれども、ただ、まだ前段階ですので、いろんな議論をしておくことが大事だと思うんですね。だから、そのためのいろんな議論を今日は出していただいているんですが、ほかに是非。
山口委員
この中では全然格差社会という言葉は出てこないんですか。やはり格差社会が出てくれば、貧しい人、豊かな人、そういう新たな発生がありますよね。それは全然言葉として出てこない。新たな経済社会の潮流という形で出てきて、私はこれは格差社会のことかなと思うんですが、この辺はどう考えたらいいんでしょうか。
鹿嶋会長
格差という言葉はどうなんでしょうか。こういうのは使わない方がむしろいいんじゃないんですか。生活困難という中に格差社会の現実を表わしているのではないかと私は思っているんですけれど、どうでしょうか。使った方がいいですかね。
山口委員
いや、私は平気なんですよ。しかし、いろいろあるでしょうから。かもしれません。それともう一つ、局長さんに伺いますが、これは第2次基本計画、これからも見直しもあるわけですね。そうなりますと、この第2次基本計画の中の、基本的には重要な項目がありますね。高齢者をやりましたよね。そうすると、今やっているのは全体にかかわる問題というふうにとらえていいんですか。
板東局長
資料-2のところに、一応参考ということで、本テーマに関連する主な施策ということで、一応、第2次の計画との関係ではこういうテーマが特に関係するのではないかということは書かせていただきましたけれども、それだけでもたくさん、いろんなテーマに横断的にかかわってくるということだろうと思っています。
山口委員
これよりも全体にかかわるベーシックなものということでの議論ですか、今回のこのテーマは。
板東局長
そうですね。計画の中のいろんな分野にかかわってくるだろうということでございます。
鹿嶋会長
よろしいですか。それでは、今回、皆さんに是非一言ずつ最後に、この調査の「新たな経済潮流の中での生活困難と男女について」の中で、調査の視点から生活困難のとらえ方等々含めて、一言ずつコメントをいただけますか。それで、それを基にもう少し事務局と私の方でも詰めたいと思っていますので、植本委員から一言ずつお願いできますか。私はこういうふうに考えているんだということを。
山岡分析官
いろいろ今御意見を伺いまして、まず前提といたしましては、タイトル「新たな経済社会の潮流の中で生活困難を抱える男女について」は、これは仮の題という整理でございます。先ほど来、貧困、格差といった言葉はどうか、という御意見もありました。格差の問題については相対的な比較としてこの問題をとらえるのではなくて、やはり絶対的に生活が厳しいという問題をとらえた方がいいのではないかというところで格差という言葉は使わないというように事務局内部的で考えた経緯もございました。
山口委員
議論はされたんですね。
山岡分析官
そうですね。明示的にきちんと議論を尽くしたわけではないですけれども、調査のタイトルをどうしようかという議論の中でそのような議論も確かにあったことはございます。それから、貧困という言葉を使う使わないということに関しても、いろんな御意見があるかと思いますので、このタイトルに関してはもう少し内容が見定まったところでまた考えたいと思いますので、それらも含めて今後御意見を伺いたいと思っております。
鹿嶋会長
では、植本委員からどうぞ。
植本委員
先ほど来の御意見を聞いていて、やはり1つは貧困という言葉そのものも例えば60年前の貧困という実感と今とはずいぶんと違うだろうということも含めて考えれば、生活困難ということをやはりわかりやすく明示をするという、その中で生活困難、そこが共通認識にならないと具体的なイメージは次の段階に入れないと思いますので、是非、生活困難、私はこれでなければならないというものを持っているわけではないですが、この例示されている例えば経済のところでは200 万という線が母子家庭で70%ということでいけば、それを生活困難の中の経済というところの線にするのかどうかというところも、その辺の視点のところで幾つか複合的な要素が出てくると思いますので、そこを明示がされれば、あと、次の政策の展開のところで具体的にアウトプットのところで、この調査の視点の2つ目の○にあるような具体的な、これは多分アウトプットを意識した具体的な内容の一番最たるものかなと思うんですが、その辺のところが一番クリアに出てくるのではないかと思うので、是非、そういうアウトプットがクリアになるような入口の整理を是非ともお願いをしたいと思います。
鹿嶋会長
神田先生、お願いします。
神田委員
私は大変期待できる調査と思いますけれども、ただ、難しいものを持っていると。先ほどからお話を聞いていて、基本のところにやはり経済の問題ですね。経済的自立、経済水準の問題と、それからもう一つ新たに人間関係の問題、これをどういうふうにクリアーにできるかというのが基本だろうと思っております。そしてこれを家族の中に持っていっちゃうと、家族のこれからと引っ掛かってくるし、それから地域の人間関係とか何かに持ってくると新たな展開が見えるというように思いますので、人間関係仕様みたいなものまでできるといいなと思う。
 やはりここから出てくる経済的自立の重要性というのは今までもずっと言ってきたことですけれども、こういう生活実態を基本にしては十分に言ってきたとは言えないと思っています。ある意味ではイデオロギーが勝っていたようなところがあったわけです。だから、今回、こういう生活に根差して、しかも非常に困難な層を踏まえた経済的自立の重要性ということが出てきたら、これは大きな意味を持つと私は思っております。そして、それは先ほど申しましたように、教育・学習などでの基本の線をつくる資料にもなるかなと思っております。期待しております。
鹿嶋会長
神野先生、お願いします。
神野委員
私は生活困難というテーマを掲げてやるということは意義のあることだと思うんですね。それで、ここの定義というか、今のペーパーだと、経済的な困難はイコール経済的自立の困難だと言っておくんですね、ひとまずね。言っておいた上で、それをもたらしている背景と、それから派生的な問題を分析していくことによって、政策を、メッセージを引き出せればというような形だと思うんですが、生活的な困難と言ったときに、今まで出ている問題だと、経済的な自立ということだけでいいのか、これは関係とか何とかとややこしくなると思うんだけれども、言葉のあやから言えば、経済的というと、それに対立する社会的自立ということになるのかちょっとわかりませんが、2つの要素で生活と困難というものを見ておいた方が、ここで一応新しい経済の流れということはいろいろ産業構造の変化とかいろいろあるだろうけれども、結局は家族と雇用でつかまえようとしているわけですよ。それに合わせるような形で少し、生活困難というのを、これもいい保険がありませんけれども、社会的というか人間関係的な、そういう自立みたいなものを、さっき言った言葉で使うとちょっと違うんだけれども、脱市場と家族という同じような話で、家族というのを社会と考えていいかどうかわからないけれど。それを少しやってみた上で、雇用因分析とかしていく中で、問題や何かが明らかにしてくるというふうに進めていくと、かなり面白い分析になるのではないかというふうに思います。
鹿嶋会長
ありがとうございました。袖井先生、どうぞ。
袖井委員
ますます何かわからなくなっちゃったんですが、貧困というのと、貧困観というのとあるんですよね。例えば社会学というのはどちらかというと観の方をやっていると思うので、例えば相対的剥奪観などという理論があるんですが、だれかと比べて自分は貧乏だと思うというのね。それとやはり全く生活保護みたいな絶対的なものがあって、この場合、どちらを取るかということがなかなか難しいかなと思うんですね。
 それからもう一つ、地域差というのをどう考えるかということで、例えば同じ所得であっても東京で暮らすのと、例えば秋田とか沖縄というのでは違うのではないかと思うんですね。特に私など感じるのは、沖縄は余りたびたび行ったことはないんですが、あそこの生活保護受給率すごく高いし、失業率は高いし、でもすごく楽しそうに暮らしているんですね。それで、何かというと、お酒飲んで歌ったり踊ったりしちゃうんですよね。だから、ああいうところの例えば母子家庭と、東京のど真ん中で暮らす母子家庭と、すごく違うかなと思うので、地域差みたいなものもできれば入れたいと思うんですね。余り抽象論では行かれない問題もあるかなと思うので、それは例えば社会関係とか人間関係とか、そっちなども絡んでくるかと思うので、その辺のところもできれば入れてほしいなというふうに思います。
鹿嶋会長
橘木先生。
坂橘木委員
はい。私は経済学者として貧困のことなどはかなりやってきた身としては、例えば年金だとか生活保護だとか最低賃金とか、そういうような制度が一体どれだけ貧困の削減に役立っているかというのが非常にあるんですが、今日お聞きした限りにおいては余りそういう政策には踏み込まない。むしろ実態を調べたいと。
 私が一番興味があったのは、実態も経済だけではない、経済以外のことで何かみんな苦しんでいるのではないかということを調べたいというのが私が今日お聞きした範囲では一番面白い貢献かなと思いまして、私もいいプロジェクトだと思いますので、私も検討会に一兵卒で入れていただきたいというふうに希望します。
鹿嶋会長
畠中先生。
畠中委員
はい。先ほどの続きで、答えから考えているんですけれども、要するに何が言えるかということから考えて見ますと、これは制度の問題なのか運用の問題なのかということですね。例えば、母子家庭の貧困を考えて見ますと、これは制度を変えると母子家庭の貧困がなくなるかといったら、そうは言えないのではないかなという感じがする。そうすると運用の問題か。そうすると、福祉を充実すればある程度は改善はするでしょうけれども、これは一方でまたお金の問題もかかってきますからね。だから、言えるかということから考えると、なかなか難しいなというふうに考えているんですけれど、やって見なければわからないということもありますので、テーマ自体は大変意欲的なテーマと思っておりますので、私も勉強していきたいと思っております。
鹿嶋会長
山口先生。
山口委員
今まで割合中流社会という議論がよくしてたんですが、やはり大きなテーマは今流に言う貧困。それはやはりきちんとやらなければいけないと思います。男女共同参画社会基本法の制定のときに、前文の方に「民主主義の成熟だとか国内経済活動の成熟化とわが国社会経済情勢の急速な変化に」と、もうかつてのような高度経済成長10%なんていう時代ないと。だんだん悪くなっていく、閉塞社会なんだというんだけれども、これはそう書かないですよね。そういう含みがあった言葉だったと私は思うんです。私はやはり今のように、言葉をどう使おうと中身を見ると、やはりこういう中で格差社会の拡大ということについて、言葉は使わなくても中身はちゃんと明確にしておきたいということと、やはり、神野先生の御本じゃないけれど希望が持てる社会を描いてほしいわけですよ、男女共同参画社会というのは。ですから、社会福祉につながると思います。それと国際比較というか、この国の豊かさと、そうでない今日の食べ物さえもないところもある。この国の豊かさの豊か度というのは何とか出てこないかなというふうに思うんです。
鹿嶋会長
ありがとうございました。それでは、一応、本日の審議はここまでにさせていただきます。先ほど山岡分析官からも説明がありましたが、資料の3の4ページのところにこれからの検討会の立ち上げとか、当面のスケジュール等々が書いてあります。今、御議論いただきました本件についての検討会のメンバーの人選につきましては、先ほど指摘がありましたように会長の私に御一任いただいて、後ほど皆様に御報告の上、進めていきたいと思いますので、よろしくお願いします。
 最後の事務局の方から連絡あればどうぞ。
山岡分析官
次回以降の予定につきましては9月以降ということで予定をしておりますが、具体的な日程につきましては、後日、日程調整をさせていただいた上で御連絡させていただきますので、よろしくお願いします。
 本日の資料でございますが、参考資料につきましては非公開でお願いいたします。
 以上でございます。
鹿嶋会長
それでは、これで。
鹿嶋会長
最後に、 7月1日付で事務局の人事異動がありましたので、御報告いたします。あとで一言ずつごあいさついただきますが、概略を申し上げます。
 竹林審議官が日本学術会議に転出いたしました。後任に齋藤審議官が着任いたしました。
 長谷川総務課長は国交省に転出いたしまして、後任が久保田課長でございます。
 神田調査課長はNIRAに転出いたしまして、後任が酒巻課長でございます。
 栗田調査官は内閣府賞勲局に転出いたしまして、後任が日原調査菅でございます。
 皆様に一言ずつあいさつをお願いしたいと思います。よろしくお願いします。よろしくお願いします。
斎藤審議官
担当の大臣官房審議官を拝命いたしました斎藤でございます。今日はお忙しいところ、大変的確で、かつ深い御議論をいただきありがとうございました。事務局の方といたしましては、今日いただきました先生方の御指摘を十分勉強させていただいて、是非いい調査研究に仕上げていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
久保田総務課長
7月1日付で総務課長を拝命しました久保田でございます。私もこの分野は全くの門外漢できておりますので、本日の議論を聞いて大変興味深く感じました。引き続き勉強していきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
酒巻調査課長
7月の4日付で調査課長に着任いたしました酒巻と申します。どうぞよろしくお願いいたします。本日、いろいろ新しい視点をいただきまして、私も大変勉強になりました。是非成果を上げられるように頑張りたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
日原調査官
7月1日に調査課に参りました日原と申します。どうぞよろしくお願いたします。
鹿嶋会長
ありがとうございました。それでは、これで第30回会合の監視・影響調査専門調査会を終わりにいたします。本日はどうもありがとうございました。

(以上)