監視・影響調査専門調査会(第27回)議事録

  • 日時: 平成20年3月24日(月) 13:00~15:30
  • 場所: 内閣府3階特別会議室
  1. 出席委員:
    • 鹿島会長
    • 植本委員
    • 勝又委員
    • 神田委員
    • 神野委員
    • 袖井委員
    • 橘木委員
    • 畠中委員
    • 山口委員
    • 山谷委員
  2. 議題
    • (1) 検討会における検討状況について
    • (2) 最終報告へ向けた論点について
  3. 議事録
鹿嶋会長
それでは、ただいまから「男女共同参画会議監視・影響専門調査会」の第27回の会合を開催させていただきます。
 本日は議題がかなりありますので、30分延長しましたので、どうぞ御了解いただければと思います。
 それでは、本日の審議を進めさせていただきます。あらかじめ事務局より御連絡させていただきましたとおり、「高齢者の自立した生活に対する支援に関する監視・影響調査」につきまして、最終報告に向けての審議を行っていきたいと思っております。
 まず、事務局から、監視・影響調査検討会における検討状況について説明していただきます。
山岡分析官
それでは、御説明させていただきます。
 その前に、机の上に配付資料として、「今後の検討課題」と、その1枚下の「最終報告に向けた論点のとりまとめポイント」がありますが、この一式を3月4日の男女共同参画会議に御報告させていただいております。先生方にもメール等で御案内させていただきました。
 では、議題に戻らせていただきます。資料1を御用意ください。ただいま高齢者の自立支援に関係し、監視・影響調査検討会において実態調査を実施しております。1月から2月にかけて調査し、その結果の速報がとりまとまっておりますので、そちらについて御報告したいと思います。
 検討会は、この後、もう一度開催して最終的な報告書をとりまとめる予定でございますので、現時点では途中経過の御報告、若干数字もこれから動き得るという前提で御理解いただければと思いますので、よろしくお願いいたします。
 では、資料1の1ページから順を追って御説明いたします。まず、調査の概要でございます。今回の調査は、この専門調査会における調査審議の基礎資料とするために実施しております。特に、経済不安と生活自立、日常生活における自立に焦点を当てて行っております。ライフスタイルと高齢期の経済状況との関係性について、それから、高齢期における家族や地域とのかかわりと生活自立をめぐる課題について、こういった点について特に把握することを目的としております。
 回収結果でございますが、有効回収数が2,505件、62.6%の回収を得ました。若干単身世帯の回収率が低くなってございますが、世帯類型ごとの分析には耐え得る程度のサンプル数が確保できたと考えております。
 では、2ページから結果を御報告いたします。2ページの上のグラフでございますが、こちらは単身世帯の婚姻状況を見ております。着目すべきは、男性の55~59歳では、56.9%が「未婚」となっております。女性については、年齢が上がるほど「死別」が増えております。
 ポイントだけ御説明していきますが、3ページにまいりまして、ここからは経済状況を見ております。図2では、世帯の年間収入を個人単位に換算した形で比較しております。丸で囲んでおりますところですが、特に55~64歳の単身男性、女性の単身世帯、こちらでほかの世帯類型の同年代の層と比べて、個人単位の収入が低い状況があります。したがって、経済的にも厳しい状況にあるのではないかと推察されます。
 次に、4ページにまいりまして、上の図3が、今度は本人自身の年間収入を見たものですが、全体的に単身世帯で男女ともに2割前後が「120万円未満」という収入レベルになっております。あと、夫婦世帯、その他の世帯で、女性の約1割が「自分の名義での収入がない」と回答しています。
 そして、図4が今の暮らしの経済的な状況を主観的にどう感じているかという結果でございますが、やはり単身世帯で「苦しい」と感じている割合が高くなっております。全体的には男性の方が女性よりも「苦しい」と感じている割合が高く、それは主観的なとらえ方の違いによるものではないかと推測されます。
 次に、5ページにまいりまして、高齢期における経済状況はそれまでの就労経歴にかなり左右されるのではないかという仮説を立てておりましたので、調査でも就労経歴を見ております。図5がこれまでの就労経歴を見たものですが、まず、男性と女性を大きく比較しますと、女性では正規雇用の割合が男性に比べて半分、あるいはそれ以下であり、非正規雇用の割合が高い。または「仕事をしていない期間が最も長い」という方が多くなっています。また、男性の中では、単身世帯で「非正規雇用が最も長い」とする割合が8.7%と、ほかの世帯類型に比べて多くなっています。女性では、単身世帯が、働いて自ら生計を立てなければいけないという中で、正規雇用の割合がほかの世帯類型に比べて多くなってございます。
 下の図6が、就業パターン別に本人の年間収入を平均額で見たものです。これは世帯類型ごとの結果を加重平均して統合したものです。これで見ますと、「主に正規雇用」に対して「非正規雇用が最も長い」という場合には収入の額が低くなっていますし、同じパターンであっても、男性に比べて女性の方が収入が非常に低いという結果になっています。ここも、「非正規雇用が最も長い」男性につきましては、サンプル数が余り多くないため要注意の数字でございまして、この辺りは最終報告までにもう少し精査したいと思っております。
 6ページにまいりまして、就業経歴がどう影響しているかという点で、もう少し細かく、正規雇用年数と収入の関係を見たものが図7でございます。こちらをごらんいただきますと、特に女性についてきれいな関係が見られていまして、正規雇用年数が高くなるほど収入が高くなるという結果になっております。男性は、特に夫婦世帯、その他の世帯で5~15年未満などはサンプル数が少ない影響があって明確には見られませんが、全体としてはやはり右上がりの関係に見えます。
 下のグラフが就業年数を見たものですが、男性は40年弱、女性は25~30年と、正規雇用就業年数の男女格差が非常に大きいといえます。単身の女性でも21.53年となっています。
 折れ線のグラフが正規雇用年数25年未満の割合でございますが、この割合は女性で高いですし、また、男性の中でも単身世帯に関しましては、2割が正規雇用年数25年未満でございます。ということで、男性の単身者に関しましては、比較的雇用が不安定な状況で働いてきたということが考えられるかと思います。
 7ページにまいりまして、今まで見てきた中で、単身者が厳しい状況にあるということがわかったのですが、更に「未婚」「離別」「死別」で見ていった場合にどうなるかということを見ています。結論を先に申し上げますと、男性は未婚男性、女性は離別女性で経済的に厳しいのではないかと推察される結果が出ております。
 まず、図9でございますが、本人自身の年間収入の分布で見ますと、60万円未満が一番多いのが男性の「未婚」、女性の「離別」ということになっております。
 下の図10もごらんいただきますと、男性は「主に正規雇用」が7割前後になっておりますが、「非正規雇用の期間が最も長い」とするのが、未婚、離別で比較的多くなっております。
 女性に関しましては、未婚は「正規雇用」が約7割ですが、離別、死別で4割前後となりまして、逆に離別では「非正規雇用が最も長い」が3割を占める結果になっております。
 8ページにまいりまして、仕事を辞めたり中断した理由を見ますと、そうした経験があるとする割合が単身世帯で最も高くなってございます。特に単身世帯では、「自分の健康上の理由」「リストラ・勤務先の都合」「廃業・倒産」による離職や中断がほかの世帯類型に比べて高くなっております。
 その下の図12をごらんいただきましても、未婚、離別、死別で見た場合に、未婚で「リストラ・勤務先の都合」といったものが多くなっています。「廃業・倒産」は未婚、離別で比較的高い結果が見られます。
 9ページにまいりまして、現在の就労状況と就労意向を見ております。図13でございますが、有職率と就労意向を比べますと、かなり有職の割合も高くて、55~64歳の男性で7~8割、女性は6割前後となっております。就労意向も、比較的高く見られています。
 折れ線が就労意向率と有職率とのギャップを見ておりますが、男性の夫婦世帯、その他の世帯ではそのギャップが低く出ておりますが、女性、男性の単身世帯でギャップが若干高く出ているということで、就労意向が満たされにくい傾向もあるのかと感じられます。
 その下の、何歳まで働きたいかということでは、70歳前後が多くなっております。
 次に、10ページにまいりまして、住宅の状況でございますが、持ち家以外の割合を見ますと、単身世帯が3~4割、持ち家以外の借家住まいが多くなっております。したがって、家賃を支払っている割合も高くなりますが、その家賃の状況を下の図16で見ております。やはり大都市になると若干家賃のレベルが高くなり、5万円前後がピークに見えます。
 次に、11ページでございますが、地域や社会とのかかわりがどうなっているかということを見ております。図17が子どもとの同別居状況でございますが、夫婦世帯は半数強が30分以内に行き来できる子どもがいる状況ですが、単身世帯は子どもがいない場合も少なくないため、子どもとの関係も希薄になっております。
 その下の地域とのかかわりでございますが、地域活動への参加意向、参加状況ということで見ますと、やはり単身世帯において、現在も参加している割合が低いですし、今後の参加意向も低い。とりわけ単身の男性で参加意向が低い傾向がございます。
 12ページで、同居の家族以外との交流状況を見ています。X軸に○の数を書いておりますが、○の数が多いというのは交流している対象者が多いということなのですが、女性は世帯類型であまり違いがありませんが、男性は単身世帯で○が1、○が2のところにピークが来ていますので、ネットワークの広がりがないことがわかります。
 下の図20で、話し相手や相談相手がいるという割合を見ましても、「そう思わない」とする割合が男性単身世帯で多く、男性の単身世帯での孤立が見られてございます。
 13ページでございますが、ICTの関係では男女で若干格差が見られておりまして、現在利用しているという割合で見ますと、「携帯電話で話す」「パソコンの電子メールで連絡をとる」「インターネットで情報を集めたり、ショッピングをする」、こういうパソコン関係と、いわゆる携帯電話で話すということに関しては男性の方が高くなっております。逆に「携帯電話のメールで連絡をとる」という割合は女性の方が高いです。加えて、年齢による差異が非常に大きいということがわかります。
 また、今後の利用意向ということでは、余り高くありません。比較的若いこれからの高齢者に関してはICTも可能性があるかと考えられますが、今の高齢者に関しては過剰な期待はできないのではないかということが言えます。
 次に、14ページでございますが、図22で、情報機器の利用度と話したり連絡をとる相手の数の関連をみると、ICTを使うほど連絡をとる相手が増えているという相関関係があることがわかります。これは、ICTを利用したから人間関係が広がったというよりも、人間関係が広い人の方がICTを使う必要性もあるので使っている、あるいは両方に積極的な方がそういう行動に出ているということが言えると考えられます。
 下の図23が老後の生活への不安で、6割前後が不安を感じているという結果でございます。その不安の内容を見ますと、やはり病気や介護といった問題が不安としては一番大きくなっております。この不安の中で、老親の介護と子どもの経済的自立といった問題にどれぐらいの方が不安を感じているのかということを推計しております。下の図25が未婚の子どもと同居している割合を推計したものですが、55~74歳の男女全体で見ますと、未婚の子どもとの同居が34.7%、老親との同居が11.1%となっております。
 次に、16ページにまいりまして、そういった世帯も含めまして、親の介護、子どもの経済自立にどれぐらいの方が不安を感じているのかということを母集団の中での推計値で出しましたところ、全体としましては、親の介護が13.4%、子どもの経済自立が4.8%の割合で不安が感じられていると推計されました。
 実際、同居の未婚の子どもの職業を見ますと、非正規雇用が1割強、また無職が1割弱でして、今の高齢者は自分の問題だけではなく、自分たちの親、子どもの問題も一緒に抱えているということがわかると思います。
 駆け足でしたが、以上で御説明を終わります。
鹿嶋会長
ありがとうございました。続いて、袖井先生はこの検討会の座長をなさっていますので、補足のコメントがあればお願いいたします。
袖井委員
特にございませんが、ちょっと気になったのは、3ページ辺りの年間収入ですが、国民生活基礎調査の結果などよりもちょっと高めに出ているかなという気がして、等価弾力性値というのがよくわからないのですが、どうなんでしょうね。神野先生は経済専門ですけれども、これはどういうふうに見たらいいのでしょうか。例えば、291.07とか、単身世帯278.74とか出ていますね。国民生活基礎調査などの高齢社会白書に載っているのだと、もっと低い数字が出ていたので、この辺をどう解釈したらいいのかということです。
鹿嶋会長
事務局が説明できますか。
山岡分析官
国民生活基礎生活など、ほかの統計との水準比較まで詰めていないので、それはこちらでまた確認させていただきます。
 等価弾力性値での世帯単位化というのは、要は1人の世帯よりも2人の世帯の方が、1人当たりで言うと生活費はスケールメリットがあるので少なく生活できるでしょうという考え方で、単純に単身世帯200万と夫婦世帯400万を、夫婦世帯を割る2で200万で同じでしょうという判断ができないだろうとして換算する方法で、全国消費実態調査においても所得を世帯単位で比較するときに用いている方法です。ただし、先ほど袖井先生がおっしゃった単身世帯に関しては、世帯人員は1人なので、そのままの数字です。したがって、それが国民生活基礎調査の数字と比較して高く出ているということでしょうか。
袖井委員
そうですね。
山岡分析官
一度、統計の方ともまた突き合わせて確認させていただきます。
袖井委員
それは、ちょっと思ったのは、この対象者が、そういう人が回答したのかなというイメージもあったのです。単身世帯、回答率低いですからね。だから、解釈するときに、その辺のところもちょっと考えて、余り額面だけで見ない方がいいかなという気がいたしました。
鹿嶋会長
それでは、今、全体の説明をしていただいたのですが、単身者の生活、特に男性の場合は未婚単身、女性は離別単身が、大変経済状況が厳しく、単身者全体に非常に厳しい状況になっています。一方で50代から70代の家庭で、老親以外に、未婚の子どもと同居している、そして経済的な不安も抱えているということは、経済的に厳しい単身者を再生産していくような可能性も現代家族の中になきにしもあらずというふうなことになって、この調査全体を見れば、大変面白い結果が出ていると思います。質問や御意見などがあれば、少し議論したいと思います。どなたかございますか。
 男性の単身者には、やはり非正規が長くて、いろんなひずみみたいなものが集約されているでしょう。この人たちは、やはり経済的要因があって、それが単身でいる大きな要因になっているのですかね。非正規が長いですしね。
山岡分析官
事務局の中で話をしているときに、今の高齢者の単身者と、今の例えば、30代、40代の単身者というのはまた状況が違うのではないかという理解はあります。この調査結果を見る限り、今の高齢者での単身者に関しては、なかなか安定した仕事につけなかった方々が、結果的に結婚もしにくかったという傾向があったのではないかなという推測はしています。
 それから、この間の厚生労働省の成年縦断調査の調査結果の中で、今の若い方の方々ですけれども、雇用が安定しない人の方が結婚がしにくいという結果も出ていたりしますので、生涯未婚だから雇用が不安定というよりも、雇用が不安定なので生涯未婚になってしまっている層というものも一定層あるのではないか。ちょっと踏み込んで解釈するには、そういうところもあるかと考えています。
鹿嶋会長
ほかにどなたかおられますか。神野委員、この調査結果等々、全体を見て、単身者問題はどうですか。
神野委員
結局、ジェンダーバイアスがあるので、男性の場合には所得がないと結婚ができないということです。女性の場合には、所得があるとか、雇用が安定していないというものがあまり婚姻の結果とつながっていないという解釈ですかね。精緻に見てみないとわかないのですが、そういうことですね。それは現在の若い人たちにも引き継がれている。
鹿嶋会長
ジェンダーバイアスについては共通していますね。ありがとうございました。
 これについては、そんなに難しい議論はないと思いますので、大体このぐらいにして、次に行ってしまいます。最後に残しているのが皆さんといろいろ議論するようなテーマです。ありがとうございました。
 続いて、高齢者の自立した生活に対する支援に関する監視・影響調査最終報告に向けた論点について、事務局から説明していただきます。最初に、ICTと住宅についてをお願いします。
山岡分析官
資料を机の上に置かせていただいております。高齢社会白書等があるものの一番上に1枚紙で、右肩に「第26回専門調査会資料 資料5」と書いておりますが、これが前回の専門調査会で、今後、中間論点整理、それから論点とりまとめしましたけれども、その後、最終報告に向けて深めなければいけない課題ということで5つほど挙げさせていただいたものです。貧困の問題、就業、ICT、住宅、地域参加といった5つの課題があるのではないかということでございましたが、このうち、本日は、1点目の経済的な問題、3点目のICT、住宅、この3つについて、事務局の方で論点検討ペーパーを整理してございますので、それに基づいて、最終報告にどのような今後の取組を盛り込んでいくのかといったような点について御議論いただきたいと考えております。
 まず、ICTと住宅の関係につきまして御説明させていただきたいと思います。資料は右肩に「資料2-1-1」「資料2-1-2」と書いておりますものを2枚お手元にお持ちいただきまして、資料2-1-1に沿って御説明いたします。
 ICTでございますが、先ほどの調査結果でも、男女間の情報の格差ということで、PC関係は高齢女性の方が利用率が低い、逆に携帯メールは男性よりもよく利用しているといったような結果がございました。
 また、現状でございますが、先ほどの調査の中で、就労経験のある人の方が利用度は高い。また、収入が高い人の方が利用度が高いという結果も出ております。資料2-1-2の図表1で就業経験をグラフ化しておりますが、就業経験年数が30年以上の場合に利用度が高い結果が出ています。また、交友関係の広さとICTの利用度というものは比例関係にあるということです。
 それから、既存の調査で見ますと、ICT機器への高齢者の意向が余り高くない。利用しない理由ということで見ますと、「必要がない」「操作しづらい」「よく知らない」、こういったような結果が出ております。
 そういった中で、今、施策としては、「U-JAPAN政策」というものを総務省中心に進めておりまして、高齢者もICTを利用できるようにということで各種政策が推進されておりますが、現状ではまだ調査研究段階といえます。
 そうしたことを踏まえまして、課題と取組(案)ということで書いておりますが、高齢者の状況に配慮したICTの普及・活用の必要性を挙げております。
 1点目としまして、高齢者に使いやすいICT機器の開発推進、インターフェースの部分でタッチパネル式などの開発推進が必要なのではないかということです。
 2点目といたしまして、利用の支援をするための体制の整備ということで、地方自治体やNPOと連携した講座開催、相談対応、支援といった支援の体制の整備が必要であろう。
 3点目は、今回の調査でわかりましたが、女性ではやはり格差があるということも踏まえまして、講座開催等においては、高齢女性を多く呼び込めるような配慮が必要なのではないか。また、逆に携帯メールは高齢女性にも今後可能性が高いということもありますので、その有効活用ということも考えてはどうかと挙げております。
 裏面にまいりまして、項目で立てるかどうかというところはあるのですが、ICTの利用度が低い高齢者に対する配慮です。先ほど見ましたように、今の高齢者はさほどICTを利用はしていないですし、今後の利用意向も高くないということがございますので、そういった点への配慮が必要ではないかということでございます。
 次に、ICT活用の可能性の拡大として、安心・安全を確保するためのICTの仕組み、すなわち遠隔医療ですとか、見守りといったような安心・安全の暮らしを確保するための仕組みの研究開発の必要性を示しています。
 それから、今まではどちらかというと安心とか安全というところでのICTが言われていましたけれども、もう少し踏み込んで、就業領域におけるICT。高齢者もこれからは元気なうちは働きましょうと、そういう流れでございますので、そういうことも含めまして、職業訓練や就業環境整備における有効活用、E-ラーニングですとかテレワーク、こういったようなことについても求められるのではないかとして挙げさせていただいております。
 以上がICTの関係でございます。
 続きまして、住宅の関係を、資料2-2-1と資料2-2-2で挙げております。まず、資料2-2-1に基づきまして御説明いたします。
 現状の整理でございますが、住まいは、先ほどの調査結果でもございましたが、持ち家率は高齢者全体としては高いですけれども、単独世帯で借家住まいも多い、住居費の負担もあるということで、特に大都市部でその負担が大きいのではないかということがございます。
 資料2-2-2の方で持ち家の状況等を、ほかの統計の結果も含めて整理しておりますので、ごらんください。
 それから、資料2-2-2の2ページで、日常生活の不自由を感じる高齢者の割合を今回のこの調査でも見ております。単身世帯で日常生活の不自由を感じる、手助けをしてくれる人がいないという方が多くなっておりまして、住宅も単に住む、その場にいるというだけではなくて、そこで安心して日々の生活を送れるかということが問題になりますが、ひとり暮らしの中で不自由を感じている単身者がやはりいるということがあります。
 それから、どこまで自宅にいるのかという問題には介護の問題がかかわってきます。資料2-2-2の3ページの図表7でございますが、介護の場所の希望でございます。自宅での介護希望は高いですけれども、単身者に関しましては、自宅で最後まで介護を受けながらというのが現状なかなか難しいところもあることから、施設入所に対するニーズも比較的高く見られています。
 施策の現状でございますが、前回は国土交通省にヒアリングをし、足りない部分を厚生労働省から情報収集して整理をしております。資料2-2-2の4ページに、住宅関係施策の位置付けをプロットをして整理しております。本日、厚生労働省にも来てもらっていますので、もし何か不明な点がございましたら、後で御質問いただければと思います。
 このプロットですが、大体上に行くほど費用が高くて、中高所得者向け、下が低所得者向け。横軸は、左側が自立、ちょうど真ん中辺りが要支援でございます。もう少し右に行くと、要介護があって、もっと介護施設がいろいろ入ってくる状況になります。
 横軸のちょっと上にあります高齢者専用賃貸住宅というものは、国土交通省の施策として、前回説明があったものです。民間市場向けの賃貸住宅、民間市場の賃貸住宅を各県で登録をして高齢者が入りやすくしている仕組みでございます。また、その中に高齢者向け優良賃貸住宅というものがございます。こちらが、更にそこにバリアフリーとか、緊急時対応サービスを備えた住宅ということで、要件が課されていまして、そうしたような住宅を、建築費等の補助も含めて整備していると、そういう政策でございます。
 あと、この間、国土交通省から説明があったのが一番下のシルバーハウジング・プロジェクトで、こちらは主に公営住宅等の地方公共団体などによる賃貸住宅につきまして、高齢者に配慮した設計を進めて整備していく。生活援助による相談ですとか、安否確認、緊急時対応サービスなどを提供している施設で、主に低所得者向けの住まいということになります。
 これに加えまして、厚生労働省の方で今進めているのが、ケア付きの生活施設の整備です。その対象になりますのが、一番上の有料老人ホーム、真ん中の辺りに小さく入っています適合高齢者専用賃貸住宅、その下のケアハウスということになります。これらは、介護保険の特定施設入居者生活介護という仕組みの対象となっております。一定の条件を満たした場合、都道府県知事の指定を受けた者が介護サービスを行う介護保険給付の対象となります。
 有料老人ホームにつきましては、比較的高所得層が対象になりますが、居住機能と生活支援機能、食事、健康管理、介護などもする施設です。
 一方、適合高齢者専用賃貸住宅につきましては、高齢者専用賃貸住宅のうち、一定条件を満たす場合に特定施設の対象になり、25平米以上ですとか、台所、便所等の設備、介護、食事の提供等の生活支援サービスを行う賃貸住宅について、特定施設の対象になります。
 ケアハウスにつきましては、若干低目の所得の方が対象でございますが、身体機能の低下などで自立生活に不安がある方を対象にしています。居住機能と福祉機能を合わせ持っているということで、自立していることが入居の条件になります。こういった施設が今、自立から要支援のレベルにある方を対象とした住まいとして、行われている施策でございます。
 5ページは、自宅での生活を支える生活支援施策について書いております。日常生活自立支援事業ということで、主に判断能力が低下した高齢者等に対して、日常生活での福祉サービスの利用援助等をしている。それから、その下に生活援助員という仕組みもございまして、先ほど申し上げたシルバーハウジングや優良賃貸住宅等に居住している高齢者に対して安否確認等のサービスを行うといったような仕組みもございまして、こういったような施策も地域で高齢者が安心して暮らすということを支える施策ということで、重要な役割を果たしている状況でございます。
 資料2-2-1にお戻りいただきまして、では、そういった現状を踏まえまして、裏面の課題と取組(案)でございます。
 まず1点目が、単身高齢者が安心して暮らせる住居の整備ということで、先ほどから単身者が非常に増加すると言っておりましたが、本日、資料の最後に参考資料3ということで、「高齢単独世帯数等の将来推計」を挙げさせていただいております。国立社会保障・人口問題研究所の方で、つい先日、世帯数の将来推計が出ました。上のグラフが高齢単独世帯数の将来推計でございますが、非常に数も割合伸びていきますが、特に男性の単独世帯が割合が急上昇していくということがございます。このように高齢単身者が今後増加し続ける傾向がある中、ひとり暮らしでも安心して住める住居へのニーズが非常に高まるのではないかということがございます。
 そこで、1つは生活支援サービス付きの住居の整備が必要なのではないか。今、既にシルバーハウジング等で進めておりますが、そういったような取組を進める必要があるのではないかということ。
 もう一点が、低所得者向けの住宅施策の充実。単身者の中では低所得者も比較的多かったことが実態調査結果からもわかっていますが、低所得者向けの住宅施策ということに関しては、経済的支援策の一環に位置づけて推進すべきではないかということで、シルバーハウジングということもございますが、民間市場の活用について指摘しています。それから、低所得の高齢者向け住宅手当も挙げています。ただし、これはかなり財源が必要なので議論もあるところからペンディングの扱いにさせていただいています。
 次に、単身高齢者の自宅生活をサポートする生活支援体制の整備といたしまして、介護保険の認定を受けるまででも、いざ病気になった、入院しなければいけないといったようなときに、代理をして手続してくれる人もいないといったこともございます。そこでサポート体制があれば、もう少し自宅で頑張れるのにという高齢者の方に対して、周りをサポートする体制が必要なのはないかということでございます。
 その1点目が、高齢者の日常生活支援施策の推進で、先ほど申し上げたような日常生活支援員等の施策の一層の推進ということです。
 もう一点が、高齢者生活支援サポーターの仕組みの構築と書きましたが、単身高齢者を地域で見守り、必要な日常生活支援を行う仕組みというものも考える必要があるということで挙げております。今、実際には地方公共団体等でかなり進んでいるところかと思いますが、これについて、更に取組みを、ということでございます。
 次に、高齢者の住み替えや住宅資産活用への支援ということでございます。高齢者も、先ほど見たように、夫婦世帯等はかなり持ち家を持っておりますが、要介護状態になった、死別をしたといったような場合に、住替えを希望するという場合もございますので、住替えの相談窓口の整備ですとか、住宅資産の有効活用、リバースモーゲージとか持ち家賃貸といったような仕組みも一部ございますが、そういったような効果的な仕組みの検討と推進を挙げております。リバースモーゲージ等につきましては、先ほどの資料2-2-2に参考情報を載せておりますので、ごらんいただければと思います。
 以上でございます。
鹿嶋会長
今からただいまの説明に対する御質問、御意見をいただきますが、本日は厚生労働省から来ていただいております。在席時間が限られているようなので、まず、住宅問題から議論をしたいと思っております。資料2-2-2の4ページです。この間、国土交通省から来ていただいて、高専賃とか、器についての説明をいただいたのですけれども、ソフトについての質問が我々委員の中でも大分ありましたので、皆さんから質問があればいただきたいと思うのですが、まず私から質問したいんですけれども、この住宅の中で、男女ということでいくと、高費用の方に男性、あるいは夫婦も入っているのかどうかとか、その辺りはどうなのですか。そういう区分けはないのかどうか。
 もう一つ、そのほかに、この人たちの人数といいますか、収容者数です。まだ歴史的に新しければ、特に高専賃などはそんなに多くはないのでしょうけれども、数のようなものは大体わかるのですか。
厚生労働省
厚生労働省老健局でございます。まず、1点目の御質問の男女という区分けみたいなものがあるのかということなのですけれども、私どもの知っている限り、特に男女ということに関する、入居とかの条件にしているものは余りないと思っております。ただ、実態として、この統計データにもございますが、長生きするというか、最終的に単身でおられる方は女性の方が多いので、結果的に入居している方の割合とかを聞いていると、2対8とか、3対7とか、そういう感じで女性の方が多いというふうな実態があるようには聞いております。
 2点目の御質問の、どのくらいのボリューム感という話だと思うのですけれども、うろ覚えで恐縮ですが、今、要介護の認定を受けている方は大体450万人おられます。お配りしている参考資料1の3枚目の裏に「介護サービスの種類」という図があるのですが、そちらで簡単に御説明いたしますと、大体450万人と申し上げましたが、「都道府県が指定・監督」という右上の四角の右下の方に「施設サービス」と書いてある範疇がございます。それが介護保険のいわゆる3施設、施設サービスと言っているものでございまして、例えば、一番上の介護老人福祉施設というのは特別養護老人ホームのことを指しております。これのストックが約40万人分、介護老人保健施設が約30万人、介護療養型医療施設は12~13万というような状況です。
 今回の話題になっております特定施設入居者生活介護というものは、扱い上、介護保険の中では、居宅サービス、在宅と同じという範疇の中に入れています。「居宅サービス」の上から6つ目ぐらいにありますが、特定施設入居者生活介護を使っている方は大体10万人というような状況でございまして、端的に言いますと、大半の方は在宅というか、御家族とか、御自身たちで、御自宅とか、一般の借家に住みながら、訪問サービスなどを受けてやっている方がほとんどであるというような現状でございます。
鹿嶋会長
ありがとうございました。御意見ありましたら、御自由にどうぞ。
 今後、施設の提供としては、今のままで、例えば、特定施設入居者生活介護は10万人と、この辺りの数字でいいのかどうか、ここが相当増えていくのかどうかなどという辺りはどうなのですか。
厚生労働省
確かにこれからも高齢者の数が増えていきますし、また、要介護の方とか、また、世帯構成が変わりますので単身の方などが増えていくとは想定されております。施設に行きたいというニーズもありますが、一方で、先ほどの統計でも、できるだけ自宅で住み続けたいという方もおられますので、ただその人数を比例関係として伸ばしていくことが必ずしも妥当なことかということは考えていかなければいけないと思っています。また、どんどん施設をつくっていって維持できるかというような財政的な問題もありますので、その辺りは地域によっても多分、差が出てくるだろう。既に施設が充足しているところは新たにつくらなくてもいいけれども、例えば、都市部とかで、まだ施設が総体的に足りないところはつくっていくということもありまして、その辺りは、我々として絶対意向というよりは、やはり地域のニーズを踏まえながら、つくるべきところはつくり、ある程度在宅で支えるところは在宅で支えるというふうな、多面的な方向で考えていくべきではないかなと思っております。
山口委員
有料老人ホームも相当高額なところから、いろいろありますが、平均値というのは大体どのくらいなのか。それから、いろんな方たちに聞いてみますと、自分の全財産を投入して有料老人ホームに入っても、万が一それが倒れてしまった場合には一体自分たちはどうなるのだろうかという話をよく聞きます。それで、厚生労働省としては、有料老人ホームの危険負担に対して、行政指導だとか、そういうことはなさっていらっしゃるのでしょうか。これは全く私企業と考えて、自由に価格を設定し、そういう随意契約をしているのかどうか、その辺の実情をお聞かせください。
厚生労働省
まず、高額とかの平均値といったお話は、恐らく入居時に払う一時金のイメージでおっしゃっているのだと思います。
山口委員
できれば月額の平均値。
厚生労働省
それがなかなか難しい形があります。なぜかと申しますと、いろんなパターンがあるわけです。一時金をまとめて徴収する代わり、月額はほとんどありませんというところもあります。最近のパターンとしては、一時金が高いというイメージがございましたので、一時金をゼロにするところもあって、月額もそこそこで、トータルでも15万から20万ぐらいでいけるところもあるので、本当にいろんなパターンがございます。今でも最高級と言われるものはありますが、単純に平均という表現が難しいというか、いろいろありますということしかここでは申し上げにくくて、何万円ぐらいですというのはなかなか出しにくい現状にございます。
 2点目の御質問で、民間企業中心で経営しているので、倒産した場合のリスクヘッジはどうなっているかということなのですけれども、この点につきましては、確かに今まで幾つかそういう事例がございました。介護保険が平成18年に変わりましたけれども、そのときに併せまして、老人福祉法というものが有料老人ホームの規制する法律なのですけれども、そちらの方を改正いたしまして、入居一時金、それは、取る取らない、額にもよりますが、最大500万でありますけれども、一時金の保全措置、要するに、分別管理をするようにしておきまして、万が一倒産とかした場合には、最低返還債務として残っているうちの最大500万でしかないのですけれども、それまではちゃんと入居者の方に戻すということを義務づけするような制度改正をさせていただきました。
鹿嶋会長
また話が違うのですけれども、先ほどの調査結果ですと、男子の未婚単身者、女子の離別単身者、非常に生活が厳しいわけですけれども、シルバーハウジング・プロジェクトは、現在規模としてどのぐらいの人数をカバーできるぐらいになっているのかということと、低所得者向けと想定していると書いてありますが、単に高専賃よりも低いだけの話なのか、高専賃は大体どの程度を想定しているのか、その辺りを教えてください。
厚生労働省
まず、シルバーハウジング・プロジェクトの普及状況ということですが、これにつきましては、18年度末なのですが、821の団地の中の約2万2,000戸がシルバーハウジングのプロジェクトを行っているところです。
 入居階層につきましては、これは国土交通省の話になってきますが、要は公営住宅とかの入居階層だということなので、公営住宅は、もともとは、自力で住宅取得が難しい、どちらかというと収入の低い方を対象にしておりますので、総体的に低い方が入居の前提になります。その中で見守りが必要な方、そういう感じになるかと思います。
 あと、高専賃との比較なのですが、高専賃というのは、制度的には、専ら高齢者を入居させる住宅というだけの制約条件しかございませんので、いろんなものがあります。ですから、極端に言えば、もしかしたら2~3万ぐらいの公営住宅と変わらないものもあるかもしれませんし、一方で12~13万というものもあります。その中で、高専賃は階層とかをあまり限定せずに、御自身が自分の払える家賃の中でそれなりの住宅を選んでいただける、そういう選択を与えている制度だということなので、一概に上下というのは、ここの部分は言うことは難しいのではないかと思っています。
袖井委員
高専賃のことがどうしてもよくわからないので、お聞きしたいのですが、有料老人ホームはいろいろトラブルがあって、事前届出になっていますが、この高専賃というのは全くの民間ですね。こういうところに特定施設入居者生活介護というのをつけるということは、ちょっと私は不安があるんです。特定施設に認めた場合の監査とか、チェックとか、それはどのようになるのか教えていただきたい。
厚生労働省
それは、2つの制度があるという形になります。まずは、高齢者専用賃貸住宅というものは、あくまで住宅のいろんな制度の中で動いているもの。つまり、入居者との契約に関しては、いわゆる借地借家法等に基づくもので保護されている。有料老人ホームの入居者よりは強く、もともとそういう前提に立っています。そこについては、高専賃の法律の制度である、まさに高齢者の居住安定確保に関する法律に基づいた登録制度がされている。その上で、今、お話がありました特定施設というのは、これは介護保険の制度の話で、いわゆるケアの部分を担保していく部分だということでございます。そのケアの部分に対しての、いわゆる監査、指導とかというのは、介護保険法に基づいて、都道府県、または市町村が監査をするという、それぞれ2つの法律に基づくチェック体制というふうになっております。
袖井委員
ちゃんと監査するということですね。
厚生労働省
視点がそれぞれありまして、介護保険で見る部分というのは、基本的に介護保険に基づく基準とか、ちゃんとケアするスタッフがいるかとか、変な虐待のようなことをしないかとか、そういう部分は介護保険の方で見るということです。
鹿嶋会長
今、我々がまとめようとしている報告書は、単身高齢者の住環境として、ここに描かれている図のようなものでいいのかどうか。後期高齢者では見守りが必要ですし、単身者の経済的問題を考えれば、安い低所得者向けの住宅施設の充実が必要ですし、そういうような要求は報告書の中に盛り込んでいくことが必要だと思うのですが、この図のような住宅関係施策でいいのかどうか、御意見があれば伺っておきたいと思います。
勝又委員
4ページの図ですけれども、右側の上の方が高費用で、下の方が低費用というふうになっているのですが、これはだれにとっての高費用、低費用なのか。例えば、自分で支払うのであれば、有料老人ホームは高いところも低いところもある。公的な機関が財政支出としてお金がかかるのか、かからないのかということになれば、民間にやれば安い。高費用、低費用と言うのですが、ちょっとよくわからないのです。
山岡分析官
4ページは、あくまでイメージ図という位置づけで御理解いただきたい思っております。専用賃貸住宅につきましても、特に収入基準は設けておりません。ここで言う高費用、低費用につきましては、主に入居者の側の収入レベル、低所得か中高所得かという立場で見た場合に、費用負担がどこまでできるかということで見た場合に、比較的有料老人ホームは中高所得層の方向けの施設ではないかということで位置づけさせていただいているものでございます。
鹿嶋会長
大体、住居問題はよろしいでしょうか。もしほかに御意見があれば、また後ほどペーパーでもらって、それを厚労省に投げ返すということにします。厚生労働省さん、今日はどうもありがとうございました。
 続いて、ICTの議論に入りたいと思います。先ほど山岡分析官の方で説明したICTに関する説明についての質問があれば伺いたいのですが、どうでしょうか。これは私どもの行った調査結果ともかなりリンクしているものです。資料2-1-1の中の「課題と取組(案)」にずらずらとたくさん書いてあるのですが、それで異論はないかどうか、新たな提案をするべきなのかどうかということです。
植本委員
この課題と取組みの裏面の一番上に、ICT利用度が低い高齢者に対する配慮というのがあるのですが、これは是非とも必要だということはすごく思うのですが、高齢者に情報格差が発生しないような配慮が必要とされるという場合の、どういうものをすることが配慮なのかということのイメージがないので、どういう状況を想定してやるのか。配慮というよりは、具体的な措置とか施策とか、そういうところまで踏み込まないと、一番情報砂漠に追いやられる方々に必要な情報がきちんと届くようにするという、そこのところを逆に強調しないと、ICTから取り残されたら、存在そのものが否定されるような、そんなことに地域生活の中でならないような、そんな工夫をもう少し言葉を強く表現した方がいいのではないかというふうに思います。
鹿嶋会長
どうですか。そこを強く出しますか。今、なるほどと思ったのは、取り残されるような、次の議論をする生活保護世帯のスティグマ論と似たような議論がICTにもあるのですかね。取り残されるというのはやはり今、出ていますかね。だとすれば、もう少しきめ細かく書く必要があるのかもしれません。その辺りは私もちょっとぴんと来ない、わからないんですけれども、あるかもしれないです。
山岡分析官
この項目に関しては、施策になり得るのかどうなのかというところも実はあって、留意事項的な書き方になっています。何を配慮としてやるのかとなると、インターネット等ではない形での従来型の、広報誌ですとか、そういったようなものでの情報提供、紙媒体だけではなくて、人のネットワークでいかに情報を伝えていくのか。今まででしたら、民生委員ですとか、そういったような役割の方が果たされていたものですが、そういった人的なネットワークをどう強めていくかということになるのかなというふうには思っております。ただ、その問題をここに施策として書くのか、先ほどの生活サポーターと書いていましたけれども、そういったような中に織り込んでいくのか、その辺りはもう少し検討させていただきたいと考えております。
鹿嶋会長
今の話はそういう形でいいですか。では、ICTも大体出尽くしたと見てよろしいですか。
 それでは、次に、高齢者の経済的な困窮に関する論点について、事務局から説明をお願いしたいと思います。
山岡分析官
それでは、資料2-3-1と資料2-3-2でございます。経済的な困窮についてとして整理しておりますので、御説明させていただきます。
 そもそもの問題意識といたしましては、今までの論点とりまとめの段階も、高齢者の、特に高齢単身女性について、経済的に厳しい状況があるのではないかということを整理しておりましたが、もう少しきめ細かに、どの層に問題があるのかということを分析して課題を探りたいというものでございます。
 まず、現状でございますが、厳しい状況にある高齢者とはどのような層かということで、先ほどの調査結果でも見ましたように、主に高齢単身女性、特には離別女性で経済状況が厳しいのではないかということが言えます。
 資料2-3-2をごらんください。こちらは生活保護の統計で見ております。被保護人員数を見ますと、女性単身世帯のボリュームが23万人と多くなっております。先ほど調査でもありましたように、その中でも離別の女性が厳しい状況にあるといえます。
 資料2-3-2で、何をもって経済的に厳しいと言うかということですが、3ページの所得・資産の状況を見ましても、女の単独世帯につきましては、100万円未満が3割です。今まで論点とりまとめでは余り資産の方を見ていなかったので、貯蓄も見たのですけれども、4ページの下が高齢単身世帯の女性ですが、貯蓄も100万円未満が約1割、300万円未満までで25%程度ということで、資産を持っているのかというと、そういうわけでもないといえます。
 もう一つ、今回、調査結果などでも出てきました高齢単身男性、特には未婚男性で厳しい状況があるということにも今後は着目したいなと思っております。
 また統計資料の1ページにお戻りいただきまして、生活保護の被保護人員数の発生率を見ています。男性単身世帯に関しましては、人口に対して15.12%が被保護になっており、ボリュームはまだ女性に比べて少ないのですけれども、リスクとしては大きいということが言えます。
 統計資料の2ページ目に行きましても、図表3が被保護人員総数に占める高齢単身者の割合を折れ線で書いているものですが、被保護人員総数に占める高齢単身男性の割合がどんどん伸びていっています。下の図表4で保護率を見ても、男性の保護率が伸びています。これらのリスクが高く、またボリュームも増えつつあるという状況です。先ほど参考資料3でも見ましたが、高齢単身男性は世帯数としても非常に増えますので、その辺り、将来的な問題にもなり得るかと思います。
 また、経済的に厳しい状況に陥りやすいという意味で言いますと、農林漁業、自営業における家族従業者も挙げられます。こちらは、資料でいいますと5ページに報酬の有無を見ておりますが、報酬を受け取っていないとするのが、図表7で言いますと5割になります。家族従業者、女性が多いですけれども、なかなか金銭的には評価されない中で、高齢期に向けて、年金権の充実ですとか、資産形成につながりにくいということがあるのではないかと考えられます。
 資料2-3-1にお戻りいただきまして、その他、経済基盤が脆弱と考えられる層として、年金なく家族に引き取られている高齢者。これは、以前に永瀬伸子教授にヒアリングしたときに指摘されたものです。それから、無年金者は65歳以上人口の2.5%になります。無年金、または低年金の方といいますと、女性では正規雇用が25年に満たない者が多いということから、女性で多いのではないかと考えられます。
 次に、2ページ目にまいりまして、将来的に高齢期になって経済困窮に陥りやすい層ということで言いますと、母子世帯、非正規雇用、生涯未婚者等があるのではないかといえます。データを資料の方に載せておりますので、ごらんいただければと思いますが、母子世帯、非正規雇用者とも収入レベルも低いですし、厚生年金への加入も少ないという状況がございます。生涯未婚者につきましては、生涯未婚自体が問題ではなくて、非正規雇用など、雇用が安定しない場合に問題なのではないかというところもありますが、先ほども議論がありましたように、経済的に不安定なために結婚したくてもできない層がいるということも考え得るので、その辺りも問題としてあるのではないかということを示しています。
 一方、施策といたしましては、やはり社会保障制度が一番大きな問題になってきます。国民年金、厚生年金に関しましては、第3号被保険者制度、遺族年金といった世帯に配慮した仕組みがありますので、女性の年金権の向上という意味では寄与した反面、女性の就業調整、短時間労働者の賃金抑制に結びつきやすくなっている問題がある。それから、16年の年金制度改正で離婚時の年金分割等について改正が行われております。しかし、パートタイム労働者の厚生年金の適用拡大については検討にとどまっています。現状、法案の継続審議中で、その効果も限定的になっているという考え方もあります。また、年金制度の中で、標準世帯が片働き世帯となっていることの問題ですとか、老齢年金が最低25年間の加入が必要であるという問題、それから、育児休業の際の保険料の免除などにつきましては、基本的には雇用者が対象ですので、自営業、農林漁業者等の1号被保険者については対象外になるという問題点がございます。
 他方、農業者年金制度につきましては、まだまだ加入も低いですし、女性加入者の割合は低いといえます。
 税制につきましては、配偶者特別控除は廃止されましたが、配偶者控除の仕組みが第3号被保険者制度と同様に就業調整を誘引していると、こういう問題がございます。
 そういう中で、3ページから「課題と取組(案)」を整理してございます。この部分につきましては、社会保障の仕組みをどうするかということにかかわる大きな問題ですので、この専門調査会として最終報告にどこまで盛り込むかということに関しては、最後の報告の段階で御相談させていただきたいなと思っておりますが、少なくともこの議論を一旦はさせていただきたいということで、課題と取組(案)として整理させていただきました。
 第1に考えられるのは、女性の就労環境の整備による年金受給権ですとか、資産形成能力の向上ということがございまして、これはワーク・ライフ・バランス、両立支援、均等政策の推進といったような、いろんな取組が考えられます。これについては既に書いているものでございます。
 次に、2点目が、一番難しいところでございますが、性別や家族の持ち方、働き方に中立的な社会保障の仕組みの構築ということを挙げております。女性の就労が増加して、非正規雇用者など、働き方が多様化している。単身世帯も増加している。そういった中で、制度はどうあるべきかということで書いております。
 基本的な考え方としましては、個人単位化を原則としながら、育児等の家族責任を伴う事情を斟酌する仕組み、性別や家族の持ち方、働き方に対する中立性の確保、こういったようなところが基本的な考え方になるというふうに思っております。
 ちなみに、以前、この専門調査会の前身になります影響調査専門調査会で、平成14年12月に「ライフスタイルの選択と税制・社会保障制度・雇用システム」に関する報告を出しておりまして、その中で、社会保障制度につきましても方向性を示しております。この報告の中でも、中立性とか個人単位化という方向で書いております。資料2-3-2の7ページからは、そういう流れも踏まえまして、課題、取組(案)を整理させていただきました。
 元の3ページにお戻りいただきまして、まず、高齢単身女性向けということで考えました場合に、パートタイム労働者への厚生年金の適用拡大、第3号被保険者制度の見直し、そして遺族厚生年金の仕組みの見直し、これにつきましては、主に共働きと片働きの受益の不均衡の解消という点で必要性があるのではないかということです。それから、配偶者控除の見直しも挙げております。
 次に、高齢単身者、男女双方にかかわる取組といたしましては、モデル世帯の見直しということで、単身世帯や共働き世帯というものを新たにモデル世帯として着目すべきではないかということ。それから、老齢年金の加入期間の見直し。今は老齢年金の受給資格が最低25年ですので、その見直しも議論すべきではないか。
 4ページにまいりまして、低所得者向けの住宅施策の充実。先ほども挙げましたが、経済的支援策の一環ということで住宅政策も位置づけて考えていくべきではないかということでございます。
 それから、最低生活保障、主に低所得者に対する生活保障をどうするかといったような場合に、最低生活保障というものをどう考えるかという問題がございます。これにつきましては、どこまで書けるかというのもあって、5ページに別扱いで考え方を整理させていただいています。
 問題意識としては、無年金とか低年金の方というのが、先ほども見ましたように一定割合いるという現状がございますので、そういう状況も踏まえて、最低生活保障をどのように図るのか。例えば、スウェーデンのような税財源の最低保障年金の仕組みが必要なのかといったような、今、いろんな議論もありますが、そういったようなことについてどう考えるかということでございます。
 考え方としては、あくまで参考ですが、1つ、国民年金とか生活保護では不十分なのだろうかという問題があります。国民年金は実際、強制加入で、保険料免除の措置もあります。生活保護も、最後のセーフティーネットということで、そこが措置制度であることで、就業や年金加入を促進するという効果もあるのではないかということがございます。
 ただし、こういったようなところが最低生活保障の機能を十分に果たしているかということについては議論があります。年金と生活保護の水準が逆転をしてしまうという問題。それから、年金について、保険料の免除規定はあるけれども、その規定は使えないが生活に余裕がないので払えない方が無年金、低年金になってしまっているという問題。免除規定を使うと、また低年金になるという問題。それから、生活保護を受給するということのスティグマだとか、自立につながらない問題。スティグマがあることがいいのか悪いのかという議論もあるのですが、そういう点があるのではないかということでございます。
 他方、年金制度について、税方式化なども今、議論されていますけれども、それに関しては、非常に負担が巨額であることですとか、保険方式による就労インセンティブが削がれるといったような問題がある。また、スウェーデン方式の最低保障部分のみ税で補てんするという形に関しては、効率的な低所得者対策にはなるけれども、中高所得層の保険料負担増を招くという意味で合意形成が課題ではないかということがございます。
 税や社会保険料の負担ということで言いますと、最低生活保障ですとか、格差の問題に関しては、年金だけの問題ではなくて、税の問題、いろんな問題がかかわってきますが、所得税に関して累進度が高い、国民年金などの社会保険料が応益負担などの場合は逆進性があるということで、再配分政策そのものが不十分ではないかと、そういう見方もあります。そういった中で、様々な制度がかかわってくる難しい問題であるというふうに思っております。
 そういう前提を踏まえまして、最低限言えることが何かということで、「基本的な方向性」と整理させていただいておりますが、今、いろいろ統計を見てきましたように、非正規雇用者ですとか単身者が非常に増加しているという中で、今までのような片働きで、また、終身雇用でという前提が成り立たなくなってきていますから、人生で生じ得るいろんなリスクが大きくなっているということがあります。しかも、それを個人で受けとめなければいけない。そういう中で、働けない期間があっても、老後の安心が保障されるような仕組みが必要なのではないかということで、中立性に配慮しながら、税制、年金、生活保護制度など、既存の制度の見直しを含めて、多様な観点から最低生活保障の仕組みを考えるべきではないか。大きな方向性に関しては、こういったことが言えるのではないかということで整理させていただいております。これにつきましては、先生方の御意見を伺いたいと思っております。
 4ページにお戻りいただきまして、最低生活保障の次に「その他」ということで、誰向けという事ではないのですけれども、社会保障制度に関して、介護の期間への配慮につきまして、保険料免除等のことも考えてよいのではないかということを挙げさせていただきました。
 次に、また視点を変えまして、自営業や農林漁業における家族従業者の経済的地位の向上ということで言いますと、その下の第1号被保険者制度における育児期間等への配慮は、以前の影響調査の報告書にも特に入ってはいないものなのですが、今の育休の保険料免除が第2号被保険者に限定されてしまうという問題も踏まえ、何らかの育児期への配慮をする仕組みというものを考えていいのではないかという方向性を挙げています。それから、農業者年金制度の普及促進、家族経営協定の締結促進等を挙げております。
 最後の点として、これからの高齢期における潜在貧困層への対策ということで、母子世帯の自立支援施策の推進、非正規雇用者に対する公正な処遇の促進ということを挙げております。細かな政策はそれぞれの所管官庁で進めているところですが、特に母子世帯については、実際の就労に結びつくような支援の推進が必要なのではないかということで挙げさせていただきました。
 以上、非常に大きな問題で、取扱いが難しいところではございますが、男女共同参画会議の専門調査会としての論点出し、方向性出しということで御議論いただければありがたいと考えております。以上です。
鹿嶋会長
いよいよ残してきたテーマの議論を始めたいと思うのですけれども、今、分析官が言ったように、私どもは監視・影響調査専門調査会ですので、国の施策について監視し、何かあれば提言していくという役割を果たさなくてはならないわけです。今日提議したICTと住宅については、常識的な範囲でとさっき言ってしまいましたけれども、今から議論する高齢者の経済的な困窮については、例えば、社会保障国民会議のような専門的な機関でも議論しているわけです。そういう中で、私たちの監視・影響調査専門調査会としては、何が提言できるのかということを頭に置きながら議論をしていただきたい。
 私は、個人的な考えとしては、特に女性の離別、死別、あるいはシングルの女性、それから母子、その辺りを念頭に置いて、その中でこの専門調査会として、格差があれば是正していく必要がありますので、どういうふうな提言ができるのかということ。調査結果は、その中にシングルの男性も入ってきたということが今までの説明の中でわかったわけですが、そういうことを前提に置きながら、今の2-3-1のペーパーですと、3ページ以降に「課題と取組(案)」としてまとめられているわけです。特に社会保障の問題が大きなものとして掲げられておりますし、第3号被保険者、パート、遺族年金の仕組み、これはずっと継続されて、議論してきたことなのですが、どこまで私たちがこの会議として踏み込んで提言できるかということを頭に置きながら、皆さんの御意見を是非お聞きしたいと思います。どなたでも結構です。どうぞ。
坂橘木委員
遅れてきてすみません。ここは高齢者に関して経済的な困窮を言っているのに、母子家庭というのは、これは別に高齢者だけではなくて、20代、30代、40代の母子家庭はいっぱいいるわけです。母子家庭のことを入れると、高齢者だけではないということが当然出てきますので、これをどう理解したらいいかをお教えいただきたい。
 それと、個人的な関心で言えば、今の御発表で、高齢男子の貧困が増えたというのは新しい動きでして、比率で見ると、高齢男子の方が貧困になっている率が高齢女子よりも高いのです。そういう人たちは主に無年金の人が多いのですか。高齢女性の場合は、例えば遺族年金が少ないとか、1人になってというのはよくわかるのだけれども、高齢男子の場合は、主な原因は無年金か、年金の額が低過ぎるということが原因なのでしょうか。ちょっとお教えいただきたい。以上2点です。
山岡分析官
まず、前者の母子世帯に関しましては、先生がおっしゃるように、どこまで若い時代にさかのぼって物を考えるのかという問題がございます。では、なぜ入れたかと言いますと、この分析の中でも離別女性が高齢期において非常に厳しい状況にあるという現状がございまして、離別女性がなぜ厳しい状況にあるかというと、その前の母子世帯として働いてきた状況が厳しい状況にあるのではないかという推測も成り立ち得る。もう少し細かい分析が必要になるかと思うのですが、そういうことで考えた場合に、高齢期の離別女性が経済的に厳しい状況にならないようにするためには、若年期からの対策として母子世帯の自立支援施策が必要であろうということで入れているものです。ただ、そうやっていくと、現役世代の問題がすべてかかわってきてしまうので、どこまで入れるかというのは、今の先生の御意見も踏まえまして、もう一度検討させていただきたいと思います。
鹿嶋会長
要するに、高齢女性の問題というのは、現役時代の矛盾の問題だというふうな前提で議論してきたのです。だから、母子世帯は確かに高齢問題ではないのですけれども、そういう問題についても何らかの形で提言しておく必要があるんではないかなと私は理解しているのです。
坂橘木委員
わかりました。
山岡分析官
もう一点の高齢単身世帯が実際無年金かどうかというのは、正直申し上げると、そこまでの数字がまだ確認できていないです。参考までに、資料2-3-2の5ページに生活保護の被保護者における年金受給状況がございますが、これをみると65歳以上の被保護人員のうち、年金を受給している方は5割弱でございます。年金額は、受給者の平均で見ますと4万6,000円ぐらいという状況で、この男女別のデータに関しましては、公表できるデータが今はなく、これ以上のことはわからない。あとは、いわゆる国民生活基礎調査などで、高齢者、男女の単身世帯の中での無年金者の割合は出てくるのですけれども、そういう方々が生活保護を受給しているかどうかというところまでをクロスして見られる情報はないのです。なぜ高齢単身男性の受給率がこんなに上がってきているのかというところが、これ以上まだわかっていない状況でございます。
鹿嶋会長
私は個人的には、年金制度設計のモデルの世帯の見直しとそこに書いてありますけれども、今はサラリーマンの夫と専業主婦の妻という世帯ベースで年金を提示しているわけです。40年間年金保険料を払って、夫婦で大体23万ぐらいというようなモデルを出しています。それは袖井先生がお詳しいと思うのですが、2004年の改正のときに、モデル世帯を1つだけにしなかったですね。もう一つぐらい、共働き世帯なども出したような記憶があります。ただ、議論の中心は相変わらず、いわゆる片働き世帯を中心にしているので、ライフスタイルが非常に多様化しているんですから、あの辺りを私どもできちっと提言していっていいのではないかという感じがするのです。袖井先生の意見を是非お聞きしたいと思います。
袖井委員
あのとき、たしか単身者も出ています。共働きも、2人とも正規の場合と、片方が途中で辞めて非正規の場合と、一応出してはいるのですけれども、どうしても議論するときになるとモデル世帯になってしまうのです。ですから、もっとその辺のところを、議論するときにいろんなパターンを出すべきだというふうに思います。
 それから、単身世帯についても一応モデル的に出しているのですが、その結果によると、所得代替率がものすごく悪くなる。そういうことは多分、発表したくないのだと思うんです。だから、マスコミなどにも言わないのです。ですから、50%は確保するというふうに言っていますけれども、50%確保するというのはモデル世帯だけであって、単身者の場合は30何%しかないというようなひどいことになっています。だから、これから単身者が増えるということを考えると、多様な世帯についての議論をもっと広げていくというか、深めていく必要があるかと思います。
鹿嶋会長
社会保障だけにこだわりませんので、どなたでも御自由にどうぞ。
神野委員
失礼しなければいけないので、ちょっとよろしいですか。住宅のときも、ICTのときも感じたのですが、とりあえずどういう手を打つかということだけではなくて、最終的に、ここの議論をユニバーサルに保証していくという視点が、男女共同参画会議なので重要ではないかと思います。この貧困対策も、高齢者の困窮者、仮に女性の問題を考えるとしても、年金とか生活保護のような高齢者の困窮にさしあたり効く政策だけではなくて、ユニバーサルに医療とか、先ほどの住宅もそうですが、サービスが出ていくということとセットでないといけない。最低生活を保障するにはどうしたらいいかといっても、医療とか住宅とか、そうしたものが別の政策で打たれていて、生活保護では口にするものと身にまとうものだけをもらえばいいという状況ではない。生活保護の6割が医療費です。ということは、生活保護をあげるから、これで国保の負担を払ってらっしゃいというお金になってしまっているわけです。しかも、高齢者の場合も、年金の問題を含めて、今度の後期高齢者医療制度を見ても、年額18万から2分の1まで保険料を取れるわけです。そうしたら、年金をあげるから、これで医療も介護もみんなやってらっしゃいという世界です。それよりも、まず前提にユニバーサルにデザインしていくことをセットで考えていかないと、特に男性と女性の問題を含めていけば、そのことがお年寄りだけではなくて、女性の社会参画なども保障するので、差し当たっての貧困者に対する手当ての問題だけではなくて、全体の構造の中で、特に困窮の問題に関して言えば、今、アンケートを見ても、国民が恐れているのは、病気になったりしたときに、リスクに陥ったときにどうするかという問題です。そこがちょっと伝わるような書き方にしていただければと思います。
鹿嶋会長
わかりました。大変いい御指摘をありがとうございました。
山谷委員
今のユニバーサルということで、別な視点でアイデアをいただいてちょっと思いついたのですけれども、先ほども生活補助員制度などで、国が40.5、県が20.25、市町村が20.25、こういうふうに断片化していくわけです。それから、農業者の場合は、たしか独立行政法人農業者何とか機構というのがやっているのです。つまり、役所の中で水平か垂直かわかりませんけれども、いろいろ断片化して、非常に制度としてわかりにくいし、それぞれお金の出どころもポケットが違っていたり、非常にやりにくい、わかりにくい、使い勝手が悪いシステムになっているので、そこのところを何かうまく改善できないのか、あるいはそういうことを少し提言で言っていただければよろしいのかなと思います。個人的な意見です。
鹿嶋会長
ありがとうございます。断片化したものを、少しまとまりのあるものとして、いわゆるユニバーサルなサービスとして、受け取る側もそういうように受け取ってほしいというようなメッセージを我々が発信するということだと思うのですが、ほかはどうでしょうか。
勝又委員
今のお話にちょっと関連するのですが、受け取る側から見て、どういう資源が社会にあるかということがあると思うんです。さまざまな役所がやっているさまざまな制度があるかもしれないけれども、受け取る側のニーズから言えば、重複しているものもあるし、欲しいけれども、そこのところにアクセスできないものもある。例えば、生活保護における単給の問題があります。住宅だけ必要というときに、住宅費用だけを生活保護制度から受給することはできないのです。生活扶助として、全体。単給が認められているのは医療だけということになっております。そういう意味では、個人、その人が何が必要であるかという視点に立って、その人の生活を基準としたバジェットといいますか、予算を立てるという考え方もあってもいいのではないか。
 イギリスのパーソナルアシスタントとか、コミュニティーケアの中で始まっているインディビジュアルバジェットという考え方があるということを最近読んだのです。それはNHSのような単に社会サービスだけではなくて、医療、教育、訓練、すべての社会サービスの中から、その人に必要なものを列挙して、それをケースワーカーのような人たちがコーディネートして資源を使っていく。初めにその人たちにどういうものが利用できるかということを説明して、その中で利用できるものについて供給していく。ですから、ユニバーサルという考え方にちょっと通じるのではないかと思うのですが、受ける側の方から、どういうものが必要であるかということでコーディネートしていくというようなことも視点としてあっていいのではないかなと思います。
鹿嶋会長
ありがとうございます。山岡さん、今のイギリスのインディビジュアルバジェットは、詳しい資料をもらった方がいいですか。
山岡分析官
是非いただきたいです。資料をいただいて、また検討したいと思います。それは個人ごとの予算上限みたいなものがあって、言ってみればバウチャーみたいな仕組みなのですか。
勝又委員
今、勉強し始めたところなのですけれども、まだパイロットスタディーで行われているようなもので、そもそもは障害者の施策の中にダイレクトペイメント、現金給付でやるという制度があるのですが、それを大きくソーシャルインクルージョン、いわゆる社会的包摂の中で考えようという考え方が出てきていまして、コーディネートするのは地方自治体のケースワーカーがやるのですけれども、その人に対してアセスメントをして、そのアセスメントは、障害であったり、生活ニーズであったり、教育であったりということで、別に上限ということではなくて、どういうものが必要で、既存の制度の中でどこまで支援ができるかということを、まずはその個人に対してあらわす。個人がそこで選択をして、制度に重複しない形で、かつその人が自立に対して一番必要としているものに集中して予算を使うという考え方です。
神田調査課長
今、おっしゃった点は非常に重要な点だと思いました。高齢者のこういう政策をしていますと、それぞれの分断で見ていくと、住宅にしても、ICTにしても、すべての施策があるにこしたことはないのですが、そういう議論をしていると、予算が限られた中でパイの奪い合いをしてしまって、みんな不十分なものになっている。高齢者といっても非常に多様性があるんで、それぞれの高齢者が何を必要としているかということを、ケース・バイ・ケース、個人、個人で、働ける人はもっと働いてほしい、住宅だけの問題であれば、その分稼げるような就業があればいいし、介護が必要だったら介護が必要なサポートをする程度に応じてそういう体制を整えるというのは非常に重要な視点だと思いました。
 ただ、日本でも、介護のソーシャルワーカーだとか、地域包括支援センター、民生委員とか、人はたくさんいらっしゃるようなのですけれども、そこがどうも縦割りで分断されていて、その人が、一体生活はどうしたらいいんだというときに、無料で相談ができるような体制になっていないということもあるので、既存の行政委員も含めて、いろんな相談員をもうちょっと束ねながら、包括的な相談ができるような体制を1つはつくれないかなどと、思ったりもしております。
 イギリスの場合、どのような予算的手当てがあるのか。あるいは、ICTを通じて就業促進につながれば、その部分は収益として社会に還元される部分があるのだから、そういう部分はコストがかかっても積極的にやっていくとか、将来の収益を見た上での予算的な配分が行われているのかどうかというようなことも、考え方としてもしあれば教えていただきたいなと思います。要するに、予算に限りがある中で、どういうことであれば予算を重点的に配分できるかという思想のようなものです。高齢者に予算配分するときの思想のようなものがあれば、議論をブレークスルーするための材料になるかなと思いまして、何かアドバイスいただければなというふうに思います。
鹿嶋会長
では、できる範囲で結構ですので、資料を渡しておいてください。
 そのほかに御意見があれば、お聞きしたいと思います。どうぞ。
畠中委員
私はこの分野について余り専門的でないので、単なる質問ですけれども、3ページの基本的な考え方のところで、個人単位化とか中立性の確保、と書いてありますが、社会保障とか税制などは、ある程度、家族とか夫婦、世帯を前提に組み立てられている部分が多いと思うのです。例えば、税制で言えば、配偶者控除、社会保障で言えば、第3号被保険者制度などもそうだと思います。この基本的な考え方の個人単位化を原則とするとか、中立性を確保するということは、今までの家族制度とか夫婦世帯を、将来的には、否定はしないけれども、余り重要性を認めないというのか、個人単位でやっていくべきだという考え方なのかどうか、ということをお教えいただきたいのです。
鹿嶋会長
説明してくれますか。これは後で袖井先生にも少し説明してもらいましょう。
山岡分析官
恐らくいろんな論点、考え方があるかと思うのですが、今のペーパーでの案といたしましては、基本的には個人単位化を原則としていいのではないか。世帯に対する配慮というのは、ここで書いておりますように、育児等の家族責任に伴う事情に関しては斟酌できるという仕組みを組み込む範囲で見ていく。ですから、例えば、配偶者控除の見直しでも書いておりますけれども、育児期における税制上の優遇措置の必要性は認めつつも、配偶者だからということだけでの控除については縮小・廃止の方向も含めて検討すべきではないかという、やや思い切った方向で書かせていただいております。
鹿嶋会長
ここはものすごく難しいですね。要するに、突き詰めて言えば、個人単位というのは、自分の年金は自分で払えということです。ただ、今の制度は第3号被保険者制度がありますから、これに人数として1,100万ぐらいいる。年金の基本的な考え方というのは、特に今の制度の中では世代間の助け合いですから、個人単位化ということになってきますと、それが少し薄れていくことは確かでしょうね。あと、年金制度自体が世帯ベースになっていて、ただし、夫が死ぬと、遺族老齢年金で4分の3ぐらいですか、そういうふうに出たり、その辺が多少入り交じっているようなところがあります。個人単位化を原則として打ち出すということについて、袖井委員の御意見を是非お聞きしたい。
袖井委員
なかなか難しいのですが、個人単位化というのは別に家族を壊すということではなくて、かなり以前から出ている問題でして、先ほど山岡さんからも紹介があった前の影響調査の報告書にも個人単位化というのは出ております。それから、最近、厚生労働省もそういう方針を取っておりまして、2004年の年金改革の前に年金に対する基本方針みたいなものを厚労省が発表していますが、そこも個人単位化ということを打ち出していて、別に危険思想ではないのです。ただ、表現の仕方に非常に注意しなければいけない。
 要するに、現在、家族であっても、収入も個別しているし、支出も個別化していし、そういう意味で、家族といっても全部融合しているわけではないということと、それから、女性の視点から言って一番問題になるのは、被扶養配偶者という地位にとどまりたいために就労調整して所得を抑えてしまうとか、そういう形で、むしろ女性の経済的な地位を低めているということが問題ではないかということなのです。ですから、個人単位化するということは別に家族を壊すということではないし、一番問題になってくるのは、第3号さんは、夫がいる間はいいのですけれども、夫がいなくなったときにいろいろ困るという面もありまして、ですから、基本的に個人で、働いたら、それに見合って税も社会保険料も払いましょうという考え方なのです。ですから、第3号のような専業主婦を優遇する制度があるために、かえって女性が働けないような状況をつくっているのを直していかなくてはいけないというのが基本的な考えでございます。
神野委員
誤解がないように解説をしておきたいと思うんですが、社会保障というか、年金その他については、これはもともと家族が機能しなくなったときにどうするかという保障なので、当然個人単位でやらないと意味がないわけです。家族単位でやっても全く意味がない。
 税金の方はどういうことでやっているかというと、その人の担税力、税金を払う力がどのぐらいあるかということを測るわけです。そのときに個人単位で測った方がいいか、それとも世帯単位で測った方がいいか、どちらが経済力を計測するのに公平でしょうかという観点なのです。日本は、世界に先駆けてシャウプ勧告を入れて、全部個人単位ですから、今の日本の所得税は個人単位になっています。これほど徹底した個人単位はないんです。
 シャウプ勧告はむしろこれを危惧して、個人単位でやるのは、貧しい人、勤労所得にだけ限定しなさい、資産所得は個人単位をやったら、お金持ち同士の男女が結婚して名義の書き換えなどによって高い累進税率を逃れてしまう危険性があるので、夫婦合算制度といって、これは厳しく合算していたのです。ところが、消費税を入れるときに、だれも議論しないうちに、ここだけ廃止されてしまって、今、全部個人単位になってしまっているのです。
 ただ、問題なのは、日本は個人単位で課税しているのだけれども、家族・世帯政策を控除でやっている。つまり、ギリシャと同じだと書いてあったかな、個人単位で課税しているのだけれども、手当主義ではなくて、控除主義でさまざまな施策を打っている国なのです。そちらが多分、問題だと思います。
 個人単位か世帯単位かという議論から言えば、もともと日本の税制は個人単位なので、そこはコンサバティブな人と議論する必要は全くない。配偶者控除ができたのは、もともと扶養控除しかなくて、それは配偶者であろうと子どもであろうと、扶養されていれば扶養控除という話だったのが、配偶者控除と扶養控除との額を変えたときに、別の名前が必要になってつけたんです。今は同じなので、余り意味がないんです。ないですが、子どもの扶養控除について言えば、本当は手当に変えた方が貧しい人々にフレンドリーなわけです。
 そういう政策とセットでやるためには、廃止と同時に手当主義も見直せとか、ちょっと書いておいていただかないと、税調で言っていると、万歳になってしまうわけです。基礎控除をその分、上げてくれるというのだったらいいのですけれども、配偶者控除だけやめていいのねと、その分を基礎控除上げろというのか、あるいはその部分を児童手当なり何なりで、普遍的に、ユニバーサルに、子どもが生まれたら幾ら出せというふうに言うのか、セットでないと、ちょっと危険だと思いますので、御考慮いただければと思います。
鹿嶋会長
ちょっとお聞きしたいのですけれども、基本的な考え方として、個人単位を原則としながら云々と書いてあるでしょう。これはもう書く必要はないですか。
神野委員
税制の方について言えばそうです。だけれども、今の段階ではむしろ社会保険の方が問題です。労働市場に出ていかない重要な原因は、税制よりも社会保険ですね。そこは書いた方がいいと思います。
鹿嶋会長
そうすると、ここは改めてきちっと書く。それと、配偶者控除の見直しについては、ほかとセットでですね。
神野委員
配偶者控除もやめた方がいいというふうに書かないとだめだと思うのです。
鹿嶋会長
ただし、手当の問題としてセットにする。
神野委員
ただ、取られっ放しになってしまう、単に貧しい人の増税だけに終わってしまうということでは困ってしまうので、手当でいくのか、あるいは基礎控除を上げろというのか、わかりませんけれども、このままでいけば、財政当局から言えば願ったりかなったりの御意見なのだけれども、国民の立場からいけば、普遍的に保障できる制度とセットで考えて廃止する。つまり、ゆがみを是正するので、国民の最低限の生活を保障するという趣旨は何らかの形で考えないとだめです。
鹿嶋会長
ありがとうございました。そういう戦略をたくさん出していただきたいと思います。どうぞ。
植本委員
今、神野先生がおっしゃったところの続きでいけば、「育児期における税制上の優遇措置の必要性は認めつつも」という、ここのところを、もっと踏み込んだ、積極的にオンするようなものに表現をしていただいたらいいのではないかと私も実感をしています。先ほどのユニバーサルなものにという神野先生の御指摘の中で、医療の問題も御指摘がありましたが、とりわけ、高齢だけではないのですけれども、貧困層で今、やはり問題になっているのは、保険料が払えず健康保険証を持っていない人がもう40万人を超えている。こういう状況の中で、特に高齢者が、結局、実費をまずは払わざるを得ない状況の中で医療から遠のいていっている人の実態が社会問題化しつつある。このことを考えても、今後の医療保障として、だれでもが安心して医療にかかれる状況をどうつくっていくのか、とりわけ高齢女性、貧困女性のところに焦点を当てた提言のようなものが、ここに書いてあることにプラスをしてほしいなと思います。
坂橘木委員
皆様のお話を聞いていて、みんなもっともな話なのですが、ちょっと繰り返すことになるかもしれませんが、この研究会は高齢者の貧困をどうするかというのをやっているわけでしょう。20代、30代の人の配偶者控除をどうするかとか、母子家庭を働いてもらわなければいけないとか、それはそのとおりなのだけれども、そういう話は20~30年先の高齢者の貧困を阻止する政策ではないですか。これは部会長にお聞きしたいのですが、ここ2~3年の高齢貧困者について我々は提言するのか、あるいは30年後の高齢者の貧困者の数を少なくすることまで含めて提言するのかはっきりしないと、私は提言がぼけるような気がして、繰り返しで申し訳ないですが、いかがでしょうか。
鹿嶋会長
私の方もさっきの繰り返しになるんですが、基本的には高齢者、その高齢者のとらえ方はいつかというと、やはり現時点の高齢者、あと、将来、数年先から含めてどうなるかということを提言するのですけれども、ずっとこの高齢者の報告書のストーリー、シナリオを頭で描いている限りは、今の高齢者の貧困問題、困窮問題は、やはり現役時代を引きずってきている。現役時代の男女間の格差が現在の高齢者の格差につながっているということなので、今の高齢者を主語にしつつ、現時点の、例えば、母子の問題とか、配偶者控除の問題も少し書いていきたいということなのです。だから、全般的な男女間の格差の問題ではあるんですが、ポイントを置くのは先生がおっしゃったように高齢者です。高齢者が主語ですからね。
坂橘木委員
でしたら、高齢者は働くことはほとんど不可能ではないですか。働けない高齢者をどうするかというのがまず前面に出てくるのが一番大事なのではないでしょうかというのが私の印象です。母子家庭の人が働かなければいけないとか、配偶者控除をどうするかというのは当然日本にとって非常に大事な問題だけれども、今の高齢者の女性を考えたら、65の人に働けと言っても、ほとんど無理ではないですか。だから、そっちの方をどうしたらいいかというのが、私はプライオリティーが高いというふうに思っていたのですが、でも、部会長の意見に従います。
鹿嶋会長
基本的に一緒なのです。高齢者の施策はプライオリティーは非常に高いんです。そのほかにも、母子家庭の問題とか何かも触れておくということで理解してもらえますか。プライオリティーはそちらです。それがなければ高齢者の報告書になりません。
神田調査課長
今日お示しした提言は、いろんな方の政策が一緒になってしまったので、そういう御印象になってしまって申し訳ないのですけれども、私たちの頭の中では、後期高齢者の人にはこういう政策、働けない人です。前面に出るのは住宅問題かもしれない。でも、前期高齢者で健康な人たちには更に就業促進も含めたもの。更に現役世代には、母子家庭のときから働けるような、更に若年層から就業というように、年齢別に区切ったときに、幾つかの重要な政策が出てくる。それが、現在も含め、将来も含めた高齢者の自立のための政策だと思っています。勿論先生がおっしゃっている後期高齢者、もう働けない人たちに対してどういうことをやるかというのも、この中に分散されているのですけれども、一応、念頭には出ていますし、勿論そういうことをもうちょっと前面に出すということは十分可能だと思いますので、その辺は整理をしながら議論を、次回とか、ちょっとさせていただければと思います。
鹿嶋会長
もう一つは、さっき言いましたように、どこまで書けるかだと思うのです。我々は議論すると、いろんな思いがたくさんあるから、母子世帯もそうだ、配偶者控除もそうだと、個人単位だといろいろ言うのですけれども、ほかの専門調査会でも専門的な会議をたくさんやっているわけです。だから、この監視・影響調査専門調査会というところのスタンスでどういうものが言えるのかということを常に考えておかなければならないのと同時に、今、先生がおっしゃったように高齢者だということが常にありますので、それは別に混同はしていません。
神田委員
さっき勝又委員がおっしゃられたインディビジュアルバジェットという考え方は非常に重要なのではないか。自分が高齢者の立場に立つと、今、何が必要で、何が足りないか、それを相談なら相談で引き受けて、コーディネートしてくれて、必要なものが得られるというような方向は、これから大変重要だと思っております。そうしないと、身近なものに結びついていかないという感じがいたします。
山岡分析官
今の橘木先生の御発言に関して逆に御質問させていただきたいのですが、働けない高齢者をどうするかというのは確かにすごく重要な問題だとは思っています。特に短期的に考えなければいけない問題です。ただ、そこの部分での打ち手というのが何になるのだろうかというのがまだ十分に見えていないというところが正直なところです。今、低所得者向けの住宅施策というものを挙げたりしておりますが、もし先生の方で何か具体的に、こういう施策が、特に働けない高齢者対策として重要性が高いとお考えのものがありましたら、お教えいただければと思います。
坂橘木委員
例えば、年金をどうするとか、生活保護をどうするかとか、今や社会的問題になりつつある後期高齢者医療保険制度をどうするか、これをここの研究会でひとつどんと出しても、結構インパクトはあるのではないかなという気はいたします。働けない高齢者の生活保障をどうするかというのは、いろんな問題を抱えているわけで、これは皆様と部会長の御意見によるのですが、どうも今日のお話を聞いていると、高齢で貧困者になる人の数を減らすにはどうしたらいいかというのが前面に出てきたような気がしたので、ちょっと印象だけ述べた次第です。
鹿嶋会長
ほかに御意見ありますか。どうぞ。
山口委員
最初に鹿嶋さんが、高齢者の問題は女性の問題、ジェンダーの問題なのだと言われたことは、まさにそうだと思うのです。それがなかったら、一般的な高齢者対策ということになってしまうと思うんです。資料2-3-1のところで、高齢単身女性と高齢単身男性ということで出ております。女性は離別、男性は未婚、こういうことなのですが、この両者を考えますときに、ジェンダーという視点でいったならば、この調査結果から、男性と女性はどこがどうか違うのかということは出ているように思うのですけれども、高齢単身男性に関しては余り説得力がないというふうに思えたんです。主観的なことと、さっき分析官はおっしゃっていました。主観的なことというのは、調査結果から出たものを読み取った、こちら側の問題なのですか。それとも回答した単身男性がそういう見方をしていると、こういうことなのですか。どちらなのですか。
山岡分析官
後者です。経済的な不安を感じているかどうかという調査結果でございます。回答された御本人の主観では苦しいと感じていらっしゃるということで、決して読み取り側というわけではありません。
山口委員
そうですか。そうしますと、確かに男の人の貧困層が増えてきたということは大きな問題であるのだけれども、これを一緒に書いてしまうと、何だかわからなくなってしまいませんか。どういう特色がありますか。男の人の貧困感が増えている、これは新たな問題だとおっしゃったけれども、その先は何ですか。
鹿嶋会長
何ですかというのは具体的にはどういうことですか。
山口委員
報告書に両方を書くわけでしょう。
鹿嶋会長
私の頭の中にあるのは、男女共同参画局の監視・影響調査専門調査会の報告書ですから、高齢者の老後についていろいろ書くわけですけれども、その中でも、女性についての厳しい状況の分析は大きなページを割かざるを得ないだろうと思っているのですが、今回の調査等々を含めると、男性の問題も出てきているわけです。特に高齢男性の問題がね。この問題についてもやはりきちっと書いておく必要はあるだろう。別に女性だけということで女性の焦点がぼけるとは私は思っていないんです。むしろ、男女共同参画社会ということで引きずるわけではありませんけれども、男性についても新たな問題が老後社会の中で出てきているんであれば、ちゃんとコメントしておく必要があると思うんです。山口委員は、男性まで入れると焦点がぼけると考えているんですか。
山口委員
全体の男女共同参画予算の中で、8兆幾らという予算を持っていた。そのときに年金問題も含まれていた。今度整理されて、2兆くらいになりましたね。
総務課長
いえ、もうちょっとあります。
板東局長
4兆です。
山口委員
4兆ですか。では、これは、男の人にもこういう問題があるよということを若干書くということですか。
鹿嶋会長
若干ということもないです。
山口委員
私、表現を、どうお伺いしたらいいのかなと考えているのです。若干ではない。
鹿嶋会長
若干ではないですね。事務局の方でどういう素案をつくってくるかまだわかりませんが、若干ではないでしょう。大きな問題です。
山口委員
中途半端な発言でごめんなさい。さっきからずっと、どうしたらいいものだろうかなと考えています。
山岡分析官
十分にお答えできるかわからないのですが、現状分析をして将来推計をしてみると、例えば、高齢単身男性の貧困に陥るリスクの問題というのがだんだん大きくなってきて、将来的にも大きくなるんではないかという問題提起をした方がよかろうと思っていまして、若干というわけではないでしょうが指摘する。ただ、それに対する政策的な対応として何をするのかといった場合に、高齢単身男性だけを取り出した施策が何かあるかというと恐らくなくて、雇用の不安定、低所得といったような方が今、生じている、あるいは今後生じるという問題に対してどう対応するのかという、男女共通の施策ということで書いていきながら、かつ、先ほどの第3号被保険者ですとか、女性特有の問題というのはまた別途ありますから、その問題はまた書いていくという形ですので、高齢単身男性の問題については、貧困が生じているのが決して今までのような高齢単身女性だけではなくて、高齢単身男性にもそういう問題は広がりつつあるのだという対象層を明らかにするという中で指摘するイメージで今は考えております。
植本委員
先ほど袖井先生が、この調査結果に補足しておっしゃったコメントのところで、高齢単身男性が未婚の男性で貧困率が高い、女性の場合は離別のところでという御説明をいただいたときに、あっ、なるほどと思ったのです。要するに、所得が低くても女性は結婚している。それで離別をした後の高齢の率の問題で、男性の場合は、所得が低いと結婚できないという高齢に至るまでの生活の違い、それはまさに男性、女性、働き方や生活の違いや社会意識の違いというのが反映されているのではないか。だから、傾向として未婚男性、それから離別女性という、なぜこういうのに逆に出てきているのか、そして男性の側にリスクが増えてきているということの背景分析のようなものを整理して示していただいたら、わかりやすいのではないかと思います。
鹿嶋会長
ジェンダーの問題であることは確かで、山口委員のおっしゃることもよくわかるのです。わかりますが、ただし、やはりこの問題は書いておきたいと思う。ただ、記者発表などをしますと、女性の問題はまずすっ飛ばして、完全に男性の問題を書きます。こちらの方がニュースバリューがありますからね。
山口委員
書き込み過ぎてしまうと高齢者問題になってしまう。
鹿嶋会長
新たな男性高齢者問題をまず書きます。間違いないです。そこだけは自信持って言えます。
坂橘木委員
ちょっと補足しますと、我々の一般常識は、高齢の貧困は女性であるという通念にとらわれていたわけです。そこに新しい視点が出たというのは、これは大変ないいことなわけで、しかも我々の会は男女共同参画ですから、女性だけを扱うのが我々の仕事ではないと理解しているんです。男性も問題があるなら同じように指摘しなければいけないと思います。
鹿嶋会長
こういうものも出して、注目度を高めてもらった方がいいです。そして、専門調査会がやっていること自体を注目された方がいいのではないですか。
山口委員
すべての施策にジェンダーという視点だけは通さなければならないから、ちょっとこだわっていたのです。
鹿嶋会長
橘木先生がおっしゃったような指摘も大変大事なことですので、これはやはりまとめ方の問題なので、その辺りは十分に配慮しながらまとめていきたいと思います。
 それから、5ページの最低生活保障についての考え方にしても、多分、この考え方全体を出せないと思いますので、この辺についても●のついている辺りで少し出していくとか、そういうことです。
 それから、今日、家族経営協定とか、農業者年金制度については余り議論がなかったのですけれども、これも常識の範囲内で事務局の方で分析してもらって文章化してもらうか、でも、家族経営協定は高齢男性の問題でもありますから、これはそれほど年齢を意識しなくて書けると思うんです。軟着陸ができるかどうかについては非常にいろんな課題があります。
 だんだん時間が迫ってきましたが、どなたでも、一言言っておきたいというふうな指摘がありましたら、どうぞ。
袖井委員
橘木先生にお伺いしたいんですが、確かに喫緊の課題というか、最重要なものは何と何か、ちょっと教えていただけますか。是非これに入れたいと思います。
坂橘木委員
突然の御指名で、先ほどもちょっと言ったけれども、後期高齢者の医療保険、これは内閣、与野党含めた問題ですから、これに対して何か1つ言えば、相当なインパクトはありそうな気はします。
袖井委員
山岡さん、よろしくお願いします。
鹿嶋会長
だんだん事務局に宿題が増えていくようです。
 では、議論を大変ありがとうございました。本日議論いただいた意見については、次回の審議会、最終報告の素案に反映していきたいと思っております。
 事務局の方で最後に連絡はありますか。
山岡分析官
本日はありがとうございました。急に30分延長させていただきまして申し訳ございませんでした。本日いただきました御意見につきましては、最終報告の方に反映していきたいと思っております。
 次回でございますが、4月18日金曜日の9時半から12時までを予定しております。場所はここと同じ3階の特別会議室を予定しております。議題につきましては、本日、3つ論点をしましたが、あと2つ、就業促進と男性の地域参加ということの論点に関することとをご議論いただき、加えて最終報告の素案を出したいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。また、実態調査の結果につきましても、最終的な御報告をしたいと考えております。
 また、本日の資料でございますが、参考資料を除きましては非公表扱いとさせていただきたいと思いますので、お取扱いに御注意くださいますようお願いいたします。
 以上でございます。
鹿嶋会長
山口さん、資料の5を見ると、また男性の自立問題を4月に議論しますのでね。
山口委員
男性の自立問題は重要だと思います。
鹿嶋会長
地域参加の問題もあります。よろしくお願いします。
 それでは、これで第27回の会合を終わります。本日はどうもありがとうございました。

(以上)