監視・影響調査専門調査会(第120回)議事録

  • 日時: 平成19年6月19日(火) 10:00~12:00
  • 場所: 永田町合同庁舎第一共用会議室
  1. 出席委員:
    • 鹿嶋会長
    • 植本委員
    • 勝又委員
    • 神田委員
    • 袖井委員
    • 畠中委員
    • 山口委員
    • 横田委員
  2. 議題
    • (1) 開会
    • (2) 「高齢者の自立した生活に対する支援(仮題)」に関する監視・影響調査の進め方について
    • (3) 袖井委員発表「高齢化社会と男女共同参画」
    • (4) 都道府県・政令指定都市における審議会等委員についての国の法令に基づく職務指定の実施状況について
    • (5) 閉会
  3. 議事録
鹿嶋会長
おはようございます。ただいまから、監視・影響調査専門調査会の第20回の会合を開催させていただきます。委員の皆様におかれましては、お忙しい中、御参集いただきましてありがとうございます。
 それでは、本日の審議をさせていただきます。あらかじめ事務局より御連絡させていただきましたとおり、本年5月24日に開催されました第26回男女共同参画会議におきまして、今後監視・影響調査を行う新しいテーマが、まだ仮称でございますが、「高齢者の自立した生活に対する支援」と決まりました。そこで本日からは、男女共同参画会議で決定されたこのテーマについて、監視・影響調査の審議を行っていきたいと思っております。
 初めに、今後の進め方について事務局に説明していただきます。続きまして、男女共同参画の視点から「高齢者の自立した生活に対する支援」というテーマにどう取り組むべきかについてオリエンテーションとして袖井委員からお話をしていただきます。その後、このテーマに関する進め方について質疑応答及び意見の交換を予定しております。
 それでは、事務局から説明をお願いいたします。
池永調査課長
それでは、資料1をご覧下さい。ただいま会長から御紹介がありましたように、5月24日の男女共同参画会議で次のテーマとして「高齢者の自立した生活に対する支援」ということを会長から御提案いただき了承されたところでございます。
 この背景について若干御説明させていただきますと、監視・影響調査専門調査会では、前回「女性の能力開発・生涯学習」を対象に御審議いただいたわけですが、それ以前には、監視のテーマとして、国の審議会等委員における女性の参画であるとか、女性国家公務員の採用・登用、仕事と子育ての両立支援策、統計情報、政府開発援助、地方公共団体の審議会等委員の職務指定等を扱っており、また、過去に影響調査と監視は分かれていたのですが、影響調査のテーマとして、ライフスタイルの選択と税制・社会保障制度・雇用システム、雇用就業制度・慣行といった様々な分野を扱っていただきました。
 次のテーマということでは、男女共同参画関連施策が男女のライフスタイルに幅広く関係しているということと、予算規模で見まして高齢者関連の施策が全体の約6割を占めるといったこともございまして、高齢者関連施策の分野は監視・影響調査の対象として高い優先度を持つことが考えられるのではないかということがありました。
 こうした背景の下に、次のテーマとして「高齢者の自立した生活に対する支援」ということが参画会議で了承されたわけでございます。
 資料1にございますように(1)問題意識としましては、高齢化が急速に進む中、男女で異なる形であらわれている高齢期の問題がございますので、それを踏まえて自立支援施策をきめ細かく展開していく必要があるということでございます。(2)調査内容としましては、経済面の自立支援と、生活・健康面の自立支援が考えられます。
 資料2-1をごらんください。今後の大まかなスケジュールを御提案させていただいております。次回以降、有識者からヒアリング、ここではひとまず経済面及び生活・健康面の自立支援ということでアレンジをさせていただいておりますが、こうした方々からのヒアリングをした上で、秋から年末にかけて関係府省からのヒアリングであるとか、事務局からデータ整理、各調査結果の分析について御提示したものを議論いただき、来年春頃目途に取りまとめをしていただければということで示させていただいております。
 この後、分析官より関連統計データに基づきまして、私が今一言触れました高齢期の問題についてより詳しく説明をしますとともに、調査内容につきましても、さらに掘り下げて調査の視点ということで御説明をさせていただきます。
山岡分析官
引き続きまして、私のほうから関連統計データを用いまして、高齢者の自立支援をめぐる高齢者の生活の実態や意識の簡単な概要について御説明させていただきます。資料2-2をごらんください。
 1ページ目をお開きいただきますと、まず「男女の平均寿命の推移」ということで図表1に示しております。ごらんいただきますと、過去から現在にかけて常に女性のほうが平均寿命が長く、女性が平均約7年長生きであるという中で、女性が一人残ってひとり暮らしになるという状況が多くなっております。
 図表2をごらんいただきますと、65歳以上高齢者の男性の約1割、女性の約2割がひとり暮らしとなっておりまして、また、うち75歳以上で見ますと、女性の23.8%が単独世帯になってございます。
 2ページ目をご覧ください。こちらでは「(2)老後不安の現状」を示しております。図表3は高齢者だけではない20歳以上について老後の生活設計について不安を感じる割合の推移を見ますと、年々その不安が高まるという中で、平成18年におきましては、半数を超える人が老後の生活に不安を抱えているという現状がございます。
 次の図表4でございますが、こちらは、60歳以上の高年者の現在の日常生活における悩みや不安でございますが、最も多く挙げられている不安の内容としましては、「老後の生活設計」、「自分の健康」ということになりまして、60歳代におきましては「老後の生活設計」に対する不安が高い。逆に70歳以上になりますと、「自分の健康」に対する不安が高いという、健康面と経済面の生活設計の部分というところで不安が高く出ております。
 続きまして3ページでございますが、ここから主に経済面の実態についてデータを見てございます。「(3)高齢期の所得状況」につきまして図表5でございますが、こちらは公的年金・恩給の受給額の構成比を見たものでございますが、左が男性、右が女性の図表となってございます。女性につきましては、100万円未満で半数を超えるという状況になっております。男性につきましては、もう少し受給額が高くなっております。
 下の図表6では、有所得高齢者(65歳以上)1人当たりの年間平均所得金額を見ておりますが、こちらでは男性が289.8万円に対して、女性が124.2万円と2倍以上の格差があります。こうしたことから主に女性につきましては、現役時の働き方との関連などから年金等の受給額も限られているという現状がございます。
 次に4ページにまいりまして、図表7で世帯単位の所得を見ております。夫婦のみの世帯では、こちらは夫婦の合算ですけれども年間408.6万円の所得がございますが、男の単独世帯、女の単独世帯となるにつれて下がります。女の単独世帯については166.2万円が平均額でございます。
 次に図表8では、有所得高齢者(65歳以上)1人当たりの年間平均所得金額の推移を見てございますが、女性につきましては、120万円~130万円の当たりで推移をしておりますが、男性につきましても徐々に下がってきているという状況で、男性のほうが経済的に安定してるかというと、今のこの情勢の下では男性のほうも経済的に厳しい状況になりつつあるし、今後もなる可能性があるのではないかということがわかります。
 続きまして、5ページにまいりまして、経済的な安定を確保するための一つの方策として高齢者の就業についての現状、希望を見てございます。図表9では高齢者の就業率を見ております。65~74歳の前期高齢者につきましては、男性の約4割、女性の約2割が就業しております。75歳以上の場合も、男性の17.7%が就業しているということで、特に前期の段階においては就業率が一定水準にあることがわかります。
 下の図表10で就業状況と就業希望を見ておりますが、そのうち折れ線が就業希望があるものの就業できていない割合を見てございます。こちらを見ますと、女性が39.1%ということで、男性29.8%に対して就業希望があるものの就業できていない人がより高いことがわかります。つまり女性については、本来は就業したいのだけれども、仕事に就けてない方が男性よりも多いという実態にあるということがいえます。
 続きまして6ページの図表は、高齢者の就業希望がどういう理由で成り立っているのかというものを見たものなのですが、よく高齢者といいますと、健康を維持したい、社会へ参加したいとか、そのあたりの理由が強いのかなというところで見たのですけれども、確かに「健康を維持したい」という理由が男女共に最も高いのですが、次いで女性の場合は「収入を得る必要が生じた」が2番目に高いということがわかります。女性の場合、先ほど就業希望があるけれども仕事に就けてない方が多いということも申し上げましたが、その中には収入を得る必要がある方も一定程度いらっしゃるのではないかということが推測できます。
 続きまして、「(5)地域・家庭における男女の生活実態とニーズ」ということで、地域参画、家庭生活の状況を見てございます。図表12ですが、こちらはNPOやボランティア、地域の活動などへの参加状況と参画意向ということで見ておりまして、凡例一番左が現在参加している」、その隣が「参加意向あり」ということで、参加している割合はどの年齢層も1~2割で、年齢層が高くなるほど参加率が高まっております。参加意向については、65~69歳では半数程度に迫る傾向にあり、こうした中で非常に参加意向はあるものの参加してない方が前期高齢者を中心にいらっしゃるということがわかります。
 続きまして7ページにまいりまして、図表13でございますが、地域活動の内容を見ますと、男女とも「趣味」、「健康・スポーツ」というものが多くなってございます。男性と女性で若干違いがありまして、女性については、相対的に「趣味」の割合が高い。一方、男性は右のほうに19.7という凡例がございますが、「地域行事」に対する関心が相対的に高いというところがあります。
 下の図表14は、今後参加したい活動ですが、こちらも男性は「地域行事」が女性よりも高く、女性は「趣味」のほうが高い。こうした中で、それぞれの志向の違いといったようなものが見受けられます。
 また、8ページにまいりまして、図表15 最も力を入れた参加にしたきっかけですが、最も多いのが、男女とも「友人・仲間のすすめ」、次が「個人の意思で」、その次に「自治会、町内会の呼びかけ」となってございますが、女性の場合は「友人・仲間のすすめ」が相対的に多い。男性では「自治体、町内会の呼びかけ」が女性に比べて多いという中で、女性は友達関係の中での参加、男性の場合は組織としての働きかけの中での参加といったような、それぞれの生活スタイルの違い等から来ると考えられる違いがございます。
 あと、図表16でございますが、これは家事等の実施率を見たものでございます。こちらを見ますと、男性の場合は、家事等を1週間のうち一度でもやった方の割合が「家事」が28.9%、「買い物」が24.4%という中で、4分の1前後は1週間に一度もやってないという実態があります。これらの方につきましては、夫婦で暮らしていらっしゃるうちや家族と暮らしていらっしゃるうちはいいのですが、その後、ひとり暮らしになった後、家事能力、自立能力がどうなのかという問題がございます。
 最後に9ページにまいりまして「(6)健康に関する意識と行動」でございます。図表17が、「自分の健康について不安を感じる高年齢者の割合」ということで、60歳代では6割前後、70歳以上で7割以上にのぼるということで、健康不安が冒頭でも見ましたとおり高い状況にあります。
 そういった中で、図表18、「健康の維持・増進のために心がけていること」といたしましては、ひとり暮らし世帯の男性で、相対的に意識が低い実態が見られます。特に生活・健康面につきましては男性側の問題が大きい、逆に経済面については女性側の問題のほうが大きいかというようなところが見えてまいります。
 続きまして資料2-3をごらんください。今回のこの監視・影響調査におきまして、このテーマにどういう視点で取り組んでいけばいいかというところを、あくまで事務局のたたき台の案ということで調査の視点例をお示しさせていただいております。こちらも簡単に御説明させていただきます。
 大きく「経済面と生活・健康面」という観点から見たいということで考えております。経済面につきましては、まず高齢者の経済状況が、男女や個人のライフスタイルの違いとどのように関係しているかについて調査したいと考えております。男女でまず大きな違いがあるだろうと予測されるがその実態はどうか、また女性の中でも現役時の働き方による違いやひとり暮らしの女性の経済基盤の脆弱さが予想されるけれども、それらの実態を探り、関係する施策展開上の課題は何なのかということを探りたいということで考えております。
 加えて、そうした経済的な安定を確保するための高齢者の所得保障や就業支援に関わる施策が男女や個人のライフスタイルの違いに配慮して展開されているか。また、そうした施策が及ぼす影響は何かということを見ていきたいと考えております。
 大きなテーマとしましては「高齢期の所得保障」ということで、所得、資産の状況ですとか、現役時のライフスタイルと高齢期の所得の関係、また「高齢者の就業支援」ということで、就業ニーズと就業の実態、それらにかかわるような施策の状況ということについて調査していきたいと考えております。
 また、もう一面、「生活・健康面の自立支援」に関しましても、同じように、男女の生活実態、ニーズの違いをとらえながら、それにかかわる施策の現状、課題、影響について把握したいと考えておりますが、大きく3点、「高齢者の社会参画に対する支援」、「介護予防の充実」、「高齢期における健康の保持増進」、これらの分野の施策につきまして、現状と課題等を分析していってはどうかというふうに考えております。
 以上でございます。
鹿嶋会長
ありがとうございました。
 続きまして、袖井委員、どうぞよろしくお願いいたします。
袖井委員
 (パワーポイント資料を示して説明)
 なぜ、女性の高齢化問題、高齢女性の問題が重要かというと、女性が長生きをして高齢人口に占める女性の比率が高い、つまり女性は圧倒的に高齢者の多数を占めるということがあります。先ほどのデータでもお示ししてあったように、平均寿命が男女で比べると女性のほうが圧倒的に長生きということで、2005年の国勢調査では男が78.56歳で女が85.52歳だったのですが、それがどんどん進んで、2055年になると、男が83.67歳、女が90.34歳ということで、男女の差が年々拡大してきております。
 平均寿命は戦前などを見ると、一時期は女のほうが短いということがありまして、そんなに男女差がなかったのですけれども、経済が回復して以来、ずっと男女の差が開いてきて、今7年ぐらいになってきているということです。ただし、注意しなければいけないのは「平均寿命」という考え方のほかに「健康寿命」という考え方がございます。健康寿命というのは自立して暮らせる期間ということなのですが、そうしますと、平均寿命と健康寿命の差を見ると女のほうがどうも長いんですね。これは余りちゃんとしたデータはなくて、東北大学の辻一郎先生がなさった限定された地域での調査しかないのですけれども、健康寿命と平均寿命の差は女のほうが男よりもちょっと長いということで、女性は余り健康ではない状態で長生きしてしまうという問題があります。それから、100歳以上は2006年のデータで85.4%が女性で圧倒的に女性が多いということです。
 人口ピラミッドですけれども、1950年頃はきれいなピラミッドです。2005年になりますと、だんだんちょうちんのような形になっていって、上の膨れているところが団塊の世代ですね。2055年の人口ピラミッドは、上がどんどん開いてきて、特に男性に比べて女性のほうが右側に張り出しています。ノシイカみたいになっているのですが、ちょっと見にくいのですが、一番上の105歳というところにすごい横っちょに出ていますが、105歳以上の女性が非常に増えるという恐ろしいような数字が出ております。
 「女性はなぜ長生きなのか」ということなのですけれども、大きく分けて先天的な理由と後天的な理由がございまして、はっきりはわからないのですが、ロバート・バトラーさんというアメリカの老年学の大家で世界的に有名な方ですが、この方がインフォーマルにおっしゃったことで、書いたものではないですが、大体4割ぐらいが先天的理由、6割ぐらいが後天的理由だというふうにおっしゃっていました。先頃お亡くなりになった黒田俊夫先生もそんなことをおっしゃっていましたが、先天的にメスのほうが強いということですね。それはほかの人間以外の生物を見ましても、あるいは下等動物を見てもメスのほうが強いということで、例えばカマキリなんかも生殖行為の後でメスがオスを食べちゃうということがあります。ですからあらゆる生物でメスのほうが強い。これは次に子孫を残さなければならないということで先天的にそうなっていると思います。
 それよりも大きいのが後天的な理由で、一番大きいのは性別役割分業社会ということではないかと思います。男は仕事、女は家事(男は職場、女は家庭)というような分業で、女性が責任ある地位に就かせてもらえない。あるいは危険作業に就けないということで、ある意味では女性が保護されているということが結果として女性が長生きできる理由がと思います。アメリカなどでは、最近女性の経営者が増えまして、そういう人たちについて見ると、かなり男性に似ている。ストレスからお酒、タバコが増えているとか、男性に多いがん(肺がん、胃がん)が管理職女性に増えているというような記事も読んだことがあります。ですから女性の地位が向上してくると女性の平均寿命は縮むのかなという感じもしますが、責任ある地位に就かない、あるいは就けさせてもらえないおかげで、例えば仕事のストレスから来るお酒やタバコが女性の場合は余りないとか、それから過労とかストレスから来る病気。今現在の病気のほとんどはストレスからくると言われておりますが、そういうストレスからくる病気というのは余りない。それから、自殺もそうですが、中高年男性の自殺が非常に多い。年間自殺者が3万を超えていますが、とりわけ中高年の男性が多いのですが、そのかなりが仕事絡みなんですね。倒産したとかリストラされたとか、昇進して責任が重くてそのストレスで自殺しちゃうとか、仕事絡みで自殺するのはすべて男性だと思います。女性で仕事絡みで自殺するというのは余り聞いたことない。ですから男の方は、そういう仕事上の責任を全部負ってしまうために、ストレスを負って、そして過労死したり、自殺したり、病気になったりということで寿命を縮めているのではないかと思います。
 それから、男性のほうが冒険を求める傾向がある。これはレジャーの活動なんかにおいてそうですけれども、エベレストを滑り降りるとか、高い山に登るとか、高いところから飛び下りるとか、そういう危険なレジャーをするのは男性ですね。それからカーレースなんかもそうですね。だから、こういう面でも男性のほうが死にやすいというか、命が短くなる。
 それから、女性のライフスタイルや行動パターンがかなり長生きに影響しているのではないか。例えば弱音を吐いていても、あるいは助けを求めても許されるということですね。男の人の場合にはなかなか弱音を吐けないということでかなり無理してしまう。例えば身体に不調があっても訴えないで、そして気がついたときには手おくれという方が多いですね。それに対して女性は比較的早くから、もう私だめとかくたびれたとか、頭が痛いとか言ってすぐ休んだりすることも関係しているのではないか。
 それから、ライフスタイルについて申しますと、もう一つ、おもしろい指摘がありまして、中村丁次さんという栄養学の先生のお話を聞いたことがあって、『女性はなぜ長生きなのか』という本もありますが、その方の御指摘によると、女性の食習慣が長生きにつながるということをおっしゃっていました。多品種をおしゃべりしながら時間をかけてゆっくり食べる。それから、自分で買ってきて自分で調理する。これが女性の長生きにつながっているということで、男性も女性のような食習慣を身につけるべきだということをおっしゃっていまして、そうだろうなというふうに思いました。
 次に経済の問題で「貧しい女性の老後」ということですけれども、なぜ女性の老後が貧しいかということですが、世界的に見ても、どの国でも貧困層の中核をなすのは高齢のひとり暮らし女性です。性差別(SEXISM)と年齢差別(AGEISM)が重複して、これが高齢の女性の貧困につながっていると思っております。
 一番大きいのは、低賃金短期就労という賃金が低くて就労期間が短いためにどうしても収入が減ってしまうということで、先ほど説明がありましたように、大体高齢女性の収入は男性の半分です。それから年金もそうですね。収入が少ないからそれにスライドして年金も少なくなる。それから、自分で資産を蓄積できないので資産も少ないということになります。
 女性の資産につきましては余り研究している人はいないのですが、お茶の水女子大学の御船美智子先生が、女性の資産形成についてずっと調査をしていらっしゃって、先日、彼女に「どういうときに女性は資産ができるんですか」と聞いたら「夫が死んだときですね」と言われて、へえっと思ったんですが、確かにそうなんです。夫が死ぬと、遺産が入るとか、生命保険が入るとか、家の名義が自分のものになるとか。だから夫が死んで、初めて資産形成ができるという、何かちょっと変な感じするんですけれども、それが実態かなというふうに思います。もう大分前、30年くらい前ですが、私、配偶者のいない中高年女性の調査を老人総合研究所にいたときのメンバーと調査したことがあるのですが、そのとき、はっきり出てきたのが、経済的に一番いいのが死別女性ですね。その次が生涯未婚女性、その次が離別で、離別女性が一番大変だということですね。死別女性の場合には、ほとんどが自分の家を所有していました。ところが離別女性の場合は賃貸のアパートということで、その当時はまだ女性があまり離婚の場合に権利主張するとか、そういうことがなかったということもあると思いますけれども、どういう形で配偶者を亡くしたかによってかなり老後の生活が違ってくるということがはっきり出ておりました。
 2004年に年金改正が行われて、離婚時の年金分割がことしの4月から施行されているのですが、でもそんなにたくさんは受け取れないんですよね。女性たちが手ぐすね引いて待っていたというような感じもあるのですが、実際にどのぐらいもらえるかというと、基礎年金と夫の報酬比例部分の半分ですが、報酬比例部分といっても結婚している期間だけですので、基礎年金と合わせても満額でも、せいぜい月12~13万ですし、そんなにいかない人も多いので、10万ぐらいしかならないという感じなので、年金分割してもひとりでは暮らせないお金だと思います。ですから、それよりも夫の老齢年金の4分の3である遺族年金をもらったほうがやっぱり額が多いのかなという気もするのですが、それでも離婚時の年金分割が実施されるようになったということは一つの進歩かと思います。
 それから、遺族年金につきましても、今度の改正で、まず自分の年金の分をもらって、その差額、夫の老齢年金の4分の3との差を遺族年金としてもらうというふうになりましたので、ある程度、女性の年金権が明確になってきたという気がします。
 それから、育児期間中の年金の扱いについても、これも育児期間中保険料は払わなくてもいいというのが1年から1年半になりました。ただ、3年間まで育児休業をとれるのですが、3年間は全部保障してもらえないということで、まだまだ年金上の扱いがちょっと不備かなと思います。今度の年金改正は世帯単位から個人単位への第一歩かと思いますが、まだまだやはり世帯単位という色が残っておりますね。とりわけ第3号被保険者制度が残ったということで、まだまだ世帯単位かと思います。
 それから、少ない高齢女性の就労機会、これは先ほどの調査データの御紹介で、経済的な必要で働かなければならないという女性が多いという指摘がありましたが、実際2年ほど前、「高齢社会をよくする女性の会」で、特に会員だけで非常に小規模な調査だったのですけれども、60歳以上で月5万円以上所得のある人を対象に調査をしたのですが、一番多かったのが「経済的な必要性」という方なんですね。それはなぜかというと、「夫のリストラ」というのもありましたし、「子どもが自立してない」、子どもがフリーターという方も結構ありまして、働かざるを得ないということですね。余り所得は高くないというのが実情です。ごく一部にお医者さんとか自営業の経営者で高額の所得を得ていらっしゃる方がいますが、ほとんどは非常に低所得だということですね。シルバー人材センターというのが各自治体にありますが、先頃まで、私は全国シルバー人材センターの研究会の委員をやっておりました。委員とかいろんな管理職などについている方が男性だからだと思うのですが、どうしても男性の職業ばかり考えていて、委員の中で、女性は私ひとりだったので、女性のことも考えてくださいとしきりに言ったのですが、なかなか理解してもらえないんですね。女性の職業というと、家事、育児ぐらいでどうしても男性中心になってしまうということで、シルバー人材センターなども、もう少し女性の仕事を考えてほしいなというふうに思いました。男性については、それほどたくさんはないのですけれども、それでも公園の草むしりとか、放置自転車の整理とか、最近は自治体の委託事業などを受けたりして少しずつ増えているのですが、女性の就労機会か大変に少ないということです。
 「家族の中の中高年女性」ということで一つ注目しておきたいのは「サンドイッチ世代」ということで、子どもの自立の遅れと親の長寿で、中高年というか、あるいは高齢になっても子どもの養育と親の介護の両方の負担を背負わなければならないと、そういう実態がございます。子どもの自立の遅れということについて言いますと、今、未婚化が進んでいて、20代後半、いわゆる適齢期と言われた時期の男性の7割強、女性の5割強が未婚です。30代前半でも、たしか女性の4人に1人ぐらいが未婚です。先ほど御紹介した高齢社会をよく女性の会の調査などでも、子どもがまだ自立しないという方が何人かいらっしゃって、ですから子どもの自立の遅れのために、いつまでたっても親役割を解消できない。それに対して、親が非常に長寿で、定年のときに親がいるという方が今非常に増えていますね。ですから定年前後の方に老後の設計について質問をしますと、自分の親が生きているので、まだ、とても自分の老後なんか考えられないと、そういう方もいらっしゃって、そういう二つの負担を負わなければならないという深刻な問題がございます。
 先ほども御紹介しましたように、今、非常に長寿化が進んでおりますので、60代、70代の人が、90代、100歳代の方を介護しているという老老介護の問題もあって非常に大変です。
 もう一つ、女性の場合、夫と死別して子どもの同居とかひとり暮らしという問題があります。
 次の世帯構成ですが、三世代世帯がどんどん減ってきて今は高齢者世帯の4分の1ぐらいになってきて、夫婦のみ世帯が増えてきています。また、ひとり暮らしもどんどん増えてきて、2050年ぐらいになるとひとり暮らしが一番多いということになってきております。
 世帯構成について女性と男性と比べて何が違うかというと、「配偶者なし・子と同居」と「ひとり暮らし」が、女性では非常に増えてくるということで、世帯構成が男性と女性では非常に異なるということです。
 次が「女性と介護」の問題ですけれども、老老介護が増えてきているということで、三世代世帯が減って夫婦のみ世帯が増えてくれば、必然的に配偶者介護が非常に増えてきて、老老介護が増えてきます。
 もう一つは、男性の介護者が最近増えてきておりまして、夫介護とか息子介護が増えてきております。介護はなぜ女性の役割かということですが、在宅の家族介護者というのは、昔に比べると男性介護者が非常に増えてきております。20年くらい前は90%以上が女性だったのですが、今少しずつ男性が増えてきておりますが、それでも女性が中心ということです。これは一つは、性別役割分業規範ということで、周りからも女性に押しつけるというか、お願いしてしまう。それから、女性自身の役割アイデンティティということで、女性も介護は自分の役割だとか、私がしなくちゃだめだと思い込んでしまう。どうしても引き受けざるをえない状況に自分を追い込んでしまうということです。
 ただ、変わってきたのは、資料には示さなかったのですが、お嫁さん介護は最近減ってきて、妻とか娘が増えてきております。介護保険は介護から女性を開放するかということですが、2000年からの介護保険制度が施行されているのですが、一番大きいのは嫁介護の減少だろうと思います。介護保険以前は圧倒的に息子の嫁が介護者というのが多かったのですが、今はだんだんそれが減ってきておりますし、それから、意識調査を見ますと、「誰に介護してもらいたいですか」というと、「嫁」というのが非常に減りました。「配偶者」というのが増えて、それから「娘」というのが出てきて、嫁というのはいないわけではないんですけれども、この比率が非常に下がってきた。ですから介護保険が与えた一番大きい影響はお嫁さんを介護から開放したことではないかという気がするんですね。というのは、それ以前は在宅で外部サービスを入れるということに対して非常に抵抗がありましたし、周りからも変な目で見られたわけですね。あそこの嫁は介護もしないとかいろんなことを言われたのですが、介護保険で保険料を払って、利用料の1割を自己負担するということで、サービスを受けることが一つの権利として認められるようになったという意味では、これは非常に大きかったと思いますが、それに代わって妻、娘、それから男性介護が増えてきたということがございます。
 次に「高齢者虐待」ということですけれども、これは特に注目したいのは、「息子に虐待される後期高齢女性」という問題があります。これはアメリカの調査でも同じで、虐待されるのは75歳とか80歳以上の高齢の女性で認知症のある人が圧倒的に多いです。それから、虐待するのは成人の息子、こういうケースが多くて、大体これは世界的に共通の現象かなと思うのですけれども、どうしても認知症になると、自分で意見も言えないということでそういう弱者の立場に置かれるということですね。虐待の種類には身体的虐待、心理的虐待、介護・世話の放棄、性的虐待、経済的剥奪というこのぐらいの種類があるのですけれども、厚生労働省が委託して2003年に初めて「在宅介護における高齢者虐待の実態調査」という全国調査を初めて行ったんですね。その結果によりますと、介護者と要介護者との関係によって虐待の種類が違うというのが出ておりました。一番被害を受けているのは高齢の女性ということは同じですけれども、身体的虐待というのは配偶者間が多かったです。虐待者には夫が多いが、妻も皆無ではない。
 心理的虐待は、無視するとか、嫌がらせを言うというのが多いのですが、これはお嫁さんが圧倒的に多い。暴力を振るうというお嫁さんは余りいないのですけれども、むしろ存在を否定するというのが多い。
 それから、介護とか世話の放棄、これもお嫁さんに多い。これはおむつをかえないとか、水分を十分とらせないとか、そういうことですね。
 性的な虐待は夫が妻にというのが比較的多い。
 経済的剥奪は財産を奪うとか、年金とか貯金をとっちゃう。これは息子が多い。ですから、どういう関係かによって虐待の種類が違うということと、虐待する人とされる人との人間関係がかなり大きな影響を持っているという結果になりました。つまり介護が始まる前の人間関係がいい場合にはそれほど虐待につながらないのですけど、それ以前から人間関係が悪い場合に虐待につながるということです。
 次に「地域の中の中高年女性」ということですが、今、地域活動の担い手は中高年女性というか高齢女性です。中年女性は働いている方が非常に多いので、高齢女性がかなり地域で活躍していますけれども、どうもリーダーは男になってしまう。「男は頭、女は手足」といわれるように、女性はどうしても縁の下の力持ちというか、下働きになってしまうということです。例えば老人会(老人クラブ)ですが、会員は圧倒的に女性が多いし、いろんな行事に参加するのも女性のほうが多いのですけれども、会長はほとんどが男性です。副会長とか書記とか、そういうところに女性をいれる。しかも副会長が複数いるわけですが、そのうちのひとりを女性にしておくとか、そういう形です。それから、市町村レベルですと、女性の会長も出てきていますが、県レベルになるとほとんど男性ということです。
 民生委員なんかもそうで、女性をリーダーにするようにと、全社協などで一生懸命研修会などを開いていますけれども、下働きをするのは女で、リーダーになると男性ということになります。
 それから地域のボランティア団体とかNPO団体などを見ていても、女性が実際に動いて会を立ち上げても、男の人がひょいと来てそれを乗っ取っちゃうというのも結構あって、これは女性自身にも問題があるのかなと思います。特に今の高齢の女性の方がそうで、これからは変わるかもしれませんけれども、どうしても男性が出てくると譲ってしまうというところがあって、女性が実際に活躍しているのにリーダーが男になってしまうということがございます。第二次男女共同参画基本計画で、まちづくり、地域おこしにおける女性の役割というのが新しい項目に入っておりますので、今後は女性の活躍の場になると思います。どういうところができるかというと、伝統の継承とか、子育て支援、高齢者への支援などいろんなことができるかと思います。伝統の継承について言いますと、最近地域でいろいろ昔の生活の見直しがはやっていて、伝統料理とか、梅干しとか漬け物とか、そういうのを教えるとか、そういうことなども行われております。
 「おばあさんの知恵とパワー」というのは、高齢女性が今非常に元気ですし、特に団塊の世代の女性が非常に元気だと思います。団塊というと、どうも定年男性の問題のようにとらえられていて、田舎暮らししましょうとか、海外に移住しましょうという話だけですが、同じ数だけあるいはそれ以上に女性のほうが多いので、団塊女性の今後というのはかなり注目していいと思います。団塊女性の中には、学生運動に参加した方もいらっしゃって、実際に最近政治に出て行く方、地域のレベル、国のレベルなど、団塊の女性が増えてきておりますね。今度の参議院選挙にも立候補なさる方が何人かいるようなので、この辺、団塊女性の動向にも注目すべきと思います。
 それから「祖母力の活用」、これは樋口恵子さんが最近『祖母力』という本をお書きになりましたけれども、家族・親族の結節点というか、まとめ役としてのおばあちゃんパワーとか、地域の中のおばあちゃんパワー、社会の中のおばあちゃんパワーというのをもっと生かせるのではないかと思います。例えば、台湾とか韓国とか、中国もそうですけれども、ああいう儒教文化のある地域では、親族の中のおばあちゃんの地位がとても高くて非常に力を持っているんですね。私が大分前に台北に行ったときに聞いた話ですが、80過ぎのおばあさんですが、4人息子がいて、そこのうちを転々と回るんです。「そういうのは日本では『たらい回し』と言うのですよ」と言ったら、「そうじゃない、自分が行ってやるんだ」とすごく威張っておりまして、例えば長男のうちに行って、長男の扱いが悪いと「おまえの扱いが悪いと次男のところへ行っちゃうよ」とか「三男のところへ行っちゃうよ」と脅すんだそうです。そうするとにわかに待遇がよくなるということで、おばあちゃんがすごく威張っています。韓国で結婚式に参加したことがあるんですが、おばあちゃんが上座で一番大切にされていて、もう少し日本も高齢女性パワーを生かすべきかなと思います。
 最後になりますが、「男も女も自立と共生の老後」ということで、これは女性は経済的な自立、男性は生活自立ということですが、配偶者と死別した男性は再婚しないと3年ぐらいで死んじゃう、女性は11年ぐらい生きるというデータを見たことがあるのですが、特に男性の場合は生活習慣がめちゃくちゃになってしまうんですね。食生活が乱れるとか、それからアル中になる人も多いですね。やはりこれは男性は自分で料理ができない、自分で買い物ができない。自分で生活設計ができないというか、自分で身の回りのことができないということが老後の不安定を導いていると思います。女性は経済的な自立ができないということですね。最近は定年後の男性のための料理教室なんていうのもはやってきておりまして、少しずつ男性も自立をしていくのかなと思います。
 最後は老若男女共同参画社会ということで、男女共同参画も必要ですけれども、世代間の共生、交流ということも必要ではないかと思います。
 大変駆け足になりましたけど、一応私の報告というか、お話はこれで終わらせていただきます。
鹿嶋会長
どうもありがとうございました。袖井委員の話、あるいは内閣府のデータの説明などを見ていますと、やはり現役時代の男女間の格差といいますか、それが高齢期になってもずっと引っ張られていくというふうなこと。そこに大きな矛盾の多分原点のようなものがあると思うということと、今、袖井委員のお話の中で、私は個人的には、特に子どもの自立の遅れと、親の長寿、特に格差社会の中で自立できない子どもたち、息子・娘がかなり出てきて、特に35歳以上の壮年期フリーターというのですか、この人たちが150~160万人まできている。そうなってくると、袖井委員のお話の中にも出ていましたが、特に息子が親の年金等を当てにした経済的虐待が今後出る。
 そういう意味で、私たちが今から監視・影響調査のテーマに掲げようとするものは、現在の矛盾と同時に、これからかなり深刻化するような矛盾も内蔵しているのかなという感じがいたします。
 今、袖井委員の話と同時に内閣府の説明も含めて、改めて資料1、資料2-1を見ていただきたいのですが、こういうような形で調査等々をやっていくわけです。それから、資料2-3にも具体的に少し書いてあります。そのあたりも皆さんのほうから、今の説明等々も踏まえて、今後どういった問題意識の下に、この監視・影響調査を進めればいいかという御意見を自由にお伺いしたいと思いますが、どうぞ、どなたでも結構ですが、御発言をお願いしたい。
横田委員
お二人の御報告いろいろと考えさせられるものがありました。ところで山岡分析官の御報告の中の資料2-3の下のほうに三つ、これからの施策について書いてあります。その2番目に書いてある「介護予防」というのは具体的にどういうことを意味しているのかをちょっと説明していただけますか。
 それから、もう一つ、非常に大きい問題ですので、山岡分析官、それから袖井先生にも関係するのですが、もしできましたらお教え下さい。ただ今の御報告は、日本の一般的な傾向で、それはそれで一つ参考になるのですが、私の印象では、これは印象ですから科学的な基礎はないのですが、地方と都会によって状況が大きく違うのではないかということです。それから、地方と都会となりますと、いわゆるサラリーマンがたくさん住んでいて定年でやめてというパターンと、それから、農漁村の場合には人口は減ってきていますけれども、定年というものはないわけで、そういうところにちょっと問題の在り方に違いがあるのではないかということです。
 私たちが前に研究調査したときには、農山漁村の状況が、都会では見られないいろんな負担が女性にはかかっているという問題があるということを知りました。一つは職種といいますか、生活スタイル、都会と農山漁村の生活の在り方に違いがあるのではないか、またそれによって問題の性格も違うのではないかということです。もう一つは、北海道、東北、関西、九州、四国、余り細かく分ける必要はないのですけれども、地域により何となく状況の違いがあるのではないかという印象を持っています。状況にもよりますけれども、高齢者だけといっていいぐらい極端に高齢化している村や町があって、それが北と南で深刻さの在り方がすごく違うという気がします。北の場合、特に雪国となると、全く違った問題があるということをこの前の上越地震とか台風の被害のときにもわかったわけですけれども、そういうところをもうちょっと細かく調べていく必要があるのではないかと思います。そういうデータがどのくらいあるのかもわかりませんが、多分正確なものはないので、それをある程度調べていくことになるのだと思いますが、この点についてどういうふうに考えられるのか。今の時点で全部わかるわけはないので、ちょっとお考えだけをお聞きしたいと思います。
鹿嶋会長
まず、分析官のほうで、介護予防の充実の部分だけ説明いただけますか。
山岡分析官
介護予防の充実の部分でございますが、こちらは、まず要介護状態になった場合は、通常平成12年から介護給付ということでされておりましたが、昨年度から介護予防制度というものが国の中でも制度化されてございます。
 そうした中で介護予防は、要介護の状態にならずにできる限り高齢の方が自立した生活を継続できるようにするために行う支援ということで、例えば具体的には、閉じこもり予防ですとか、外出支援とか、転倒予防という意味で筋力向上をするとか、それから自立した日常生活を送れるように、食の部分で、例えば配食の支援をするとか、そういう部分が介護予防の国全体の統一したサービスに加えて各自治体の実情に応じて実施される地域支援事業によって実施されています。
 介護予防の中には単純に身体的な能力が低下しないというだけではなくて、生活自立という点で、例えば自分で家事をして自立した生活を続けられるといったようなところも含めて考えますので、そのあたりで男女の違いなども含めて、今後どういったような施策が必要なのか、またニーズはどこにあるのかといったようなことを探っていければよいなというふうに考えております。
 以上でございます。
鹿嶋会長
これは今回の調査の中で、そんなに詳しくデータ出るのか。それともかなり既存のデータに頼るのか。
山岡分析官
まず厚生労働省などでいろんな分析等をしているかと思いますので、そうしたような統計、それから、行政資料をもとにまずは分析をしていきたいと思っておりますが、必要に応じましては、プラスアルファの調査等も考えていきたいと思っております。
鹿嶋会長
横田委員いいですか。
横田委員
はい。
鹿嶋会長
それから、もう一つの質問ですけれども、地域による状況の違いですけれども、これもどう浮かび上がらせるかは、多分既存データをかなり活用せざるを得ないということですね。あとはどういうふうな、今の横田委員の指摘なようなものは、どうですか、考えていますか。地域間、東北、北海道とかかなり規模が大きいので難しいなと思うんですが。
池永調査課長
今の横田先生の御指摘、職種だとか地域差をどう見ていくかについては、まずデータがどれだけとれるかというのがございます。また、本日色々いただきました視点をもとに、既存のデータで対応できるもの、また、新たに何か意識調査的なものが必要になるか、それはまた考えさせていただきたいと思います。本日はまず色々御指摘をいただければと思います。
横田委員
多分都道府県、市町村別に画一化はしてないのですが、それぞれのところの問題をデータで出しているということはあるんですね。ある程度サンプリングでもいいと思うのですが、そういうものを例示的に出して、こういう問題に国全体の政策を考える場合に目が行っているのだということは我々の報告書に出したほうがいいかなと。そういうことは考えておりますので、都道府県、市町村のデータの中にそういうものがあるかどうかを調査していただけるとありがたいと思います。
鹿嶋会長
それは最大限努力したいと思うんですが、どうぞ。
板東局長
私も以前秋田県のほうに赴任しておりましたけれども、横田先生御指摘のように、非常に高齢化率が高く、特に女性が圧倒的な割合を占めるというような状況でした。それから、先ほど御指摘のように、北国・雪国の場合の非常に困難な状況というのもございますので、かなりいろんな意味で生活上の困難は出てきているというのは事実だと思います。高齢化率などは全国的なデータも集められ、そういうところから間接的に類推できる部分もいろいろあろうかと思います。確かに先生御指摘のように、かなり突っ込んだことを考えていくと、サンプリングによって調べたり、あるいは個々の地域で調査とか分析をしているところをとりあえず調査をする、集めるということになろうかと思いますけれども、全体的な傾向のところは既存のデータの中からもいろんな課題が浮かび上がってくるのではないかと思いますので、そのあたりは努めて分析をしていきたいと思っております。
袖井委員
今のことで、地域差の余り細かいデータはないのですけれども、県別で、例えば老人施設がどのぐらいあるかとか、介護サービス事業者はどのぐらいあるか、そういうデータはかなりありますよね。北海道なんかはかなり施設に入れちゃう。多分メンタリティーもあるかと思うんですけれども、東北なんかはかなりおうちでやるというのはあるので、どのぐらい施設があるかとか、サービスがあるかというようなデータはとれるかなという気がします。地域によって人々の考え方もかなり違っていることも事実なので、その辺、なるべく入れたほうがいいかなと思っております。
鹿嶋会長
それに関連して、例えば家業自体が破綻してきているでしょう。農業、自営業自体が。そうなってくると、おおらかに高齢者もかつてのように一緒に生活できるという経済的な枠組み自体が地方自体でかなり先細りになってきているので、従来とはまた年代的にも違っているかもしれませんね。
山口委員
分析官と袖井先生のお話、日頃考えていることが統計的にも数字的にもはっきりして、自分自身も整理できたと思うのです。問題は、今団塊の世代が60歳になろうとしている。それで、あの人たちが生まれた世代というのは、これから競争社会で大変だぞと言ったけれども、結局その大変さは経済成長を担ったということになりましたね。今、団塊世代の人たちがどういう高齢期を迎えるかというのは次の団塊世代にとって大変なモデルになると思うんですね。例えば団地の多摩ニュータウンを一つのモデルにして、年寄りだけの地域にしないように、次の世代にどう転換していくのか。そういうモデル地域を選んで調べていくのもいいのではないか。高層マンションに住む高齢者問題もあります。
 第2点としては、今みんな我々の世代というのは、PPKとかいうそうですが、ぴんぴんころりと、元気に過ごしてころっと死ねればラッキーよみたいな話があるんですが、いろいろな人生の体験、経験を生かして社会的に貢献したい。この統計を見ていて、働いてきたから趣味は結構なんだけれども、やっぱり能力提供は男性だけでなくて、女性も持っているので、それをどう生かしていくのか。私は元気で働ける時代は働いて次の世代につないでいくような、ぴんぴんころり社会を期待しているんです。
鹿嶋会長
前期高齢者はおっしゃるとおり元気な老後でいいと思うし、我々も第二次男女共同参画基本計画はそういう考え方で進めたんですが、後期高齢者はどうでしょう。労働の担い手として本当に位置付けられるのかどうか、75歳以上を。要介護者がかなり出てきますから。前期高齢者は私は山口委員と同じ考えですが。
神田委員
今の話と直接関連しますけれども、実態を見るときに、必ず前期と後期ときっちり分けるということが必要だと思っております。それで、この調査を見ますと、大体65~74歳、75歳以上となっているのですが、例えば、先ほど2ページを見ると、これは60~69歳、70歳以上という分け方になっております。ここら辺をある程度統一していく必要があるのではないか。それによって課題も内容も異なってくると思いますので。
 大体前期というのは65~74歳のところで大丈夫なんでしょうか。国民生活に対する世論調査は平成18年の調査でも、これは60~69歳、70歳以上という区分けになっておりますけれども、そこら辺が問題です。
山岡分析官
おっしゃるとおり、やはり前期の高齢者と後期の高齢者というところでは全く生活実態が違いますので、できる限り、そこは分けてデータを見ていきたいと考えております。今、御指摘ございました資料2-2の図表4につきましては、これは既に統計資料として公表されているものを活用しておりまして、そこで公表されているデータとしては60~69歳、70歳以上という区切りですので、ここを改めてまた65歳からという形で区切り直すとなりますと、また再集計などが必要になる場合があります。そこは公表されているデータをまず基本としながら、本当にどうしても必要な場合には、プラスしてこの統計を出しているところに照会をかける等して再集計も検討するという形で、基本は65~75歳、75歳以上ということで、できる限りデータを見ていきたいと考えます。よろしくお願いいたします。
神田委員
袖井先生にちょっとお伺いしたいのですけど、この前期・後期の年齢の分け方は大体これで一般化されているのでしょうか。
袖井委員
この分け方を決めたのは大分昔なので、本当は80歳ぐらいで切ったほうがいいかもしれません。前期・後期と言い出したのはアメリカの老年学者が、60年代くらいから言っているんですね。最近は超高齢の人が増えているので、もう一つ区切って85歳以上とか、そういう分け方もやっています。というのは、80歳とか85歳以上になると、物すごい深刻な問題が出てくるんですね。特に健康なんかについて言うと、もうちょっと細かく分けたほうがいいかなと思いますね。前期はまだ元気で社会活動できますけれども、後期になってくるとだんだん体力弱ってきていますが、それでも最近は後期高齢層でも社会的に活躍する人も増えているので、もうワンランク上げた細かい見方も必要かなと。85歳を過ぎるとほとんどが要介護になってしまうということがございます。
鹿嶋会長
その議論は、私自身は参考意見として聞いておいていいですね。
袖井委員
さらに分類して分析してもらえれば一番いいんですということです。
鹿嶋会長
前期・後期だけのものしか私想定しなかったんですけど、さらに我々の専門調査会で細分化していくと、それだけでかなり時間とられそうな気もするので。
袖井委員
提言だけでもいいと思うんです。今後こうしていくと。
鹿嶋会長
提言としてね。
袖井委員
特に健康関係については。
鹿嶋会長
なるほど。
神田委員
健康関係などについては、いくつで切るかは私わからないのですけれども、健康問題が深刻になるような年齢を少しモデル的に出すというようなやり方で課題を出していくことが必要ではないでしょうか。
鹿嶋会長
ありがとうございます。さっきの山口委員の多摩ニュータウンの話も意見として聞いておきますので、いろんな団地が高齢化していますしね。
山口委員
都市圏に関していえばね。
鹿嶋会長
そうですね。
袖井委員
最近というか、大分前から注目されているのは島ですね。奄美なんかは、私も昔一度行ったきりですけど、非常に出生率が上がっているといわれております。それから大分前に沖縄の離島の認知症のことを調べたお医者さんの話を聞いたことがあるのですが、東京とそういう沖縄の島なんか比べると、認知症の発生率は違わないんですけれども、あらわれ方が違うというんですね。つまり、我々は認知症になると、みんなウンチ壁塗りしたり、徘徊したり、暴力振るったり、叫んだり変なことすると思うんですけれども、沖縄の離島なんかへ行くとあまりそういう行動がないんだそうですね。だから認知症であっても、地域で受けとめていて、割と穏やかに暮らしているという。今日新聞でベトナムに認知症のお母さんを連れて行った人の記事が載っていましたが、非常にシビアなというか、変な状況になってくるというのは都会のストレスが原因だと思うんですね。
 先ほど山口委員から高層マンションに住む高齢者のお話がありましたが、高層に住んでいると高齢者を外に出さないし、閉じこめてしまう結果、ますますおかしくなるという、そういう状況もあって、それも一種の地域差だと思いますね。都会的なライフスタイルが非常におかしい行動につながっているという面もあるかなと思います。
鹿嶋会長
一方で離島の中には、深刻なDV問題を抱えているところもあるようです。島なので、DV被害者が逃げるにしても限界がある。だから必ずしも島とか地方とかという問題、我々が一つの理想形として考えられないような側面というのもあるわけです。ほかに御意見あればどうぞ。
畠中委員
年齢区分、「後期高齢者」というのはちょっと日本語として余りいい言葉ではないなという感じはしますね。私も多摩ニュータウンに住んでいるんですけれど、高齢化していることは確かですね。今都心回帰ということで、都心のほうが小学校が不足しているというような感じになっているという報道も見ました。確かに御指摘のとおりだと思います。
 それから、袖井先生にちょっと御質問していいですか。大変勉強になりました。ちょっとお聞きしたいんですけど、女性はなぜ長生きするかというところで、男は戦争するからだという説を聞いたことあるんですけれど、これは俗論ですか。それから「恐怖のわしも族」というのがあったんですけれども、「わしも族」というのが私よくわからないんですけれども。それから、介護保険の在宅介護で他人の方が気を使わなくていいという人もいるんじゃないか。私なんかも、もしそうなれば、他人の方がいいなと思うんですけれども、そういう人は普通かどうか。ちょっとわかれば教えていただきたいんですけれど。
袖井委員
男は戦争するからって、確かにそうだと思いますけど、最近は女性も随分軍隊に行くようになっていますからね。だから男と女でどっちが攻撃的かというのは必ずしもいえないかなと思いますが、とりあえず今のところは男性が戦争に参加する割合が高いので、どうしても戦争で死ぬのは男になりますね。
 「恐怖のわしも族」というのは、「濡れ落ち葉」と同じようなことですけど、定年退職して、奥さんが出歩くときに、「わしもついていく、わしもついていく」いうのを「恐怖のわしも族」という、そういうものなんだそうです。濡れ落ち葉と同じですね。奥さんの後にペタペタついていく。
 介護保険ですが、他人のほうが気を使わなくてよいというのは、最近そうだと思いますね。余り統計的なデータはないんですけれども、調査なんかすると、子どもに迷惑かけたくない、子どもの負担になりたくないという人がものすごく多いですね。例えば子どもの近くに住みたいけれども、経済的、介護の面で負担になりたくないと。それで介護については外部サービスを使いたいという人が多いです。これは特に都会ですけれども、地方はわかりませんけれども、調査などをするとそういう結果が出てきております。
畠中委員
どうもありがとうございました。
神田委員
確かに都市と農村とか漁村とかによって問題のあらわれ方は違うと思うんですけれども、都市とか農村という地域による違いというのは何なのかということだと思うんですね。それが生活慣習なのか何なのかということではないかと思うんです。一般的に都市、農村ということではなくて、私は高齢期の問題で一番基本はどういう人間関係なのかということなんだと思うんです。関係の密度、関係の質、そういうものが地域の何かの中身をなしているのではないかと思っておりまして、もし地域による違いを出そうとしたら、人間の関係がその地域がどうかということを中身としてとって問題のあらわれ方を明らかにすべきだと考えております。
鹿嶋会長
そういうのがデータでちゃんとあらわれるといいですけど、難しいかな。どうですか。
山岡分析官
人間関係の質的な部分というのはどうしても事例で見ていかないと難しいというところで、まずは統計データで見るということになりますと、どういう人間関係を持っているかという記述レベルでまずはとらえる形になるかと思います。そこから入らせていただいて、検討を進める中で、何が必要なのかを検討させていただければと思います。
鹿嶋会長
これは事例はどういうふうに考えているか、事例調査は想定していましたか。
山岡分析官
まだそこまでは想定してございませんでした。事務局内でもまだ検討中でございますがアンケート調査的な実態調査は検討しようか考えておりました。今、多摩ニュータウンのお話などもありましたが、そういう事例調査的なものをどうするかということはまた改めて検討させていただきたいと思います。
鹿嶋会長
山口委員のリクエストもそういう形だと少し応えられる可能性はあるのかなと。
池永調査課長
今、分析官が申しましたように、事例についても、今皆さんおっしゃっているようなエピソードというのか、既にいろいろなところで紹介されているのもあると思いますので、新たに調査するのか、あるいは既に出ているもので使えるものはないかというのを含めて検討させていただきたいと思います。
鹿嶋会長
そのほかに、どうぞ。
植本委員
袖井先生のお話を聞いていて、そのとおりと思いました。私も組合の中の講座などで、ライフスタイルの差がいわば老後を規定しますよという意味の警鐘をいつも言います。ただ、これは割と感覚的なというか、経験則みたいなところがまだまだ多いのではないかと。誰もがそうだなと実感するんですが、女性はなぜ長生きなのかというのも、家事をやるということは、冷たいものは冷たいまま、熱いものは熱いまま出すということの段取りを考える、手先を使う、そういうことが随分と影響しているから、長生きしたければ、男性はしっかり家事労働しなさいということをよく言います。ただ、そのことが実証的になかなか出てこないが、私自身もすごく実感として思います。例えば女性、男性のライフスタイルの差が本当に寿命に影響しているのかどうか実証的に見ていけるデータがあれば教えていただきたいですし、なければ、どういうものをデータとしてそろえていけることができるのかというのをぜひお願いをしたいと思います。
 その上で、団塊の世代のこれからの生き方、ちょうど私たちがどのようにこれから過ごしていくのかということへの影響がありますので、御提起ありました労働との関係、働くということは、今までは食べるために働くということが非常に多かったわけですが、生きがいのために働くという発想をしていったときのライフスタイル、選択肢、それが多分、横田先生が御提起になった地域によって選択肢が随分と違うだろうということではないか。それをどれぐらいニーズに合わせた展開の仕方ができるのかによって偏りをなくしていくということもできると思うので、生きがいのある働き方をどのように、いわば施策的に選択肢として増やしていくのか、その辺の観点もほしいと思います。
鹿嶋会長
最初の生活スタイルと平均余命は、国立社会保障・人口問題研究所にあったような気がしますが、ただ、離婚とか死別とか、家事をやったかどうかによる違いに関する調査はないですか。
勝又委員
そこまでは調査してないと思います。現在どのくらい家事をしているかというのはありますけれど、その方を追跡して、例えば老後にその方がどういうふうになったか、そこまでの調査はやっておりません。ただ、非常にいい視点だと思いますし、今、パネル調査でやっと、2000年から始まったパネル調査が女性を中心としたものですけれども、やられているように、例えばこれから長期にわたった人を追いかけていくような調査というのをやっていくという中で、例えばその方が若いときにどういうような働き方をして、どういうような健康状態にあった人が、老後はこういうふうになったとか、そういう形での長い視点のパネル調査のようなものを国でやっていくとか、そういうものも提言していくことが、一つの長い視点ではございますけれども考えられると思います。
鹿嶋会長
理屈としては、女性の場合、自分が食事ができるからバランスよく食べられますけれども、男は妻と死別、離別したら、例えば毎日インスタントラーメンばっかりだとどうしたって寿命に格差が出ますものね。
袖井委員
データですけれども、公衆衛生の方がいくつかそういうのをやっていらっしゃるので探すことができるかと思います。一つは、老人総合研究所で、前に小金井でずっと継続してやっていた調査で、今は予算がカットされて終結してしまいましたが、多分あれは15年か、結構長く同じ対象者にずっと継続してやっていまして、特に女性にウエイト置いてなかったんですけれども、ぴんぴんころりというのが提唱されていたので、そういうデータもあります。限られた対象、全国データではないです。
 それから、事例調査ですと、例えばケアマネージャーさんなんかは比較的いろんなことを知っているので、農村の場合、漁村の場合という風にわけてヒアリングしてみたらどうかなと思います。
鹿嶋会長
ありがとうございました。
横田委員
もう一つ、大きな問題であると同時に、ポリティカルですからどうやっていいのかわからないのですけれども、今問題になっている年金、これをどういうふうに私たちの報告書で触れるのか、あるいは全く触れないのか、考えておく必要があると思います。実際今の時期に、例えばヒアリングとか調査をしますと必ずこの問題は出てくると思うのです。自分の年金がどうなっているのかわからないし、不安だし、これまで思っていたのと違ってきているという心配がありますから、それに触れないと何となくこの調査が実態をあらわさないように思われます。ただ、余り触れると同じ政府の報告書の中に、政府の施策に対する批判的なことが書かれることになり問題かもしれません。建設的な批判はいいですけれど、年金の問題は、我々のこの専門調査会で答えを出せないですよね。
 ですから、ちょっと問題提起だけさせていただきます。恐らく何らかの形で触れなくてはいけないのでしょうけれども、我々の専門調査会の仕事は、今起こっている問題を政府がどう取り組むかということは、一応そちらのほうに任せるとして、長いトレンドの中で今の状況を位置付けるという形にするというふうにどこかに書かないと全く触れないわけにいかないだろうと思うのです。
 それから、細かい問題ですが、今まで出てきたお話との関連で、私のこれも個人的な経験ですが、結構一般的にあるなと思われることとして、高齢者になると、自分の住んでいた場所とか、住んでいた家を離れたがらない傾向が強いのですね。これは私の祖父・祖母もそうだったのです。京都に住んでいて、最後は祖父が住める立派な部屋を用意して、いつでも来てくださいと言ったのですけれど、東京に来て私たちとは一緒に住もうとはせず、結局不便ではあっても住み慣れた京都にひとりで住んで、通いで来てくださるお手伝いの方にお願いしてという形になってしまったのですね。やむを得ませんので、父が行ったり来たりということをやっていたのですけれども、本当はこちらに来ればもっと親身にケアもできるし、負担も少ないしと思うのですけれども、それができないのが実情でした。この前、地震の被害者とか、火山の噴火で避難した人たちが、危ないし、ひとりでは心配だから、都会に住んでいる私たちのところに来なさいよと子どもが言っても、親が行こうとしないのですね。そういう問題というのは、決してそれがいけないのではなくて、そういうものを踏まえた改善策とか対策にしないと、現実に合わないのではないかと思います。高齢者の場合、どうしてもそういう傾向が強いという印象を一つ持っているのです。それを念頭に置きながら考えていく必要があるのかなということですね。
 それから、最後になりますが、自治体がいろんな試みをやっていますね。現場に近いということで、高齢者からのニーズがあって、それに対応せざるを得ないということもあると思うのですが、そういう中にいろんな、ほかのところでやってない新しい試みをやっているところがあります。例えば1つの例ですけれども、武蔵野市ですか、ほかのところでも始めたかもしれませんが、資産の信託、高齢者で資産はあるのだけれども、子どもに頼るわけにはいかないし、頼りたくもないというときに、市が代わって世話をするのですが、そのかわり亡くなったときにその資産を市が引き継ぐというような仕組みだと思います。詳しいこと知らないですが、そういう例は模範例としてピックアップして、ほかのところでも参考になるかもしれないという形で一応取り上げておくことはこういう調査の場合、必要かなと思いました。
 以上です。
鹿嶋会長
ありがとうございました。年金については御意見としてお伺いするということでよろしいですか。そのほか、二つについては、特に高齢者、自分の場所を離れない、そういうものがあれば、報告書も極めて人間くさい報告書になるかなという気もしますので、おっしゃるとおりだと思います。
板東局長
一方では、先ほど御指摘の例えば雪の多い地方ですと、一軒家に住んでいる。人里離れているというのは大変というようなこともありまして、今東北なんか見ていますと、かなり中核市の中にマンションが増えてきているのですね。ふるさとに隣接しているところではあるけれども、ちょっと生活上の便利なところにという傾向、これは東京近辺でも郊外の一軒家に住まれていた方々が都心に出てきているというような傾向ありますので、住居などの話もちょっと変化しつつあるのかなという感じはいたします。確かに全然関係のないところに、都会にというのは、先生おっしゃるように、それは少ないのだろうと思います。
鹿嶋会長
遠距離介護のいろいろなノウハウというか、そういうものを整備する必要は出てくるんですね。
横田委員
そうなんですね。
鹿嶋会長
例えば横田委員のようにぜひ来てほしいというところだけでなくて、嫁、姑の関係で来てほしくないなんていう。
横田委員
逆のこともあり得ますね。
鹿嶋会長
非常に難しさはありますよね。ありがとうございました。そのほか、あとおひとりぐらいどうでしょうか。御意見があれば。
勝又委員
高齢者の場合、自立といったときに、自己決定とか自分で選択するとか、障害者の問題やっておりますと、本人が自分で選択したり、決定することを自立というか、オートノミー(自律)といいますか、単に経済的な自立であったり、健康的な身体的な自立だけでなくて、先ほど居住地とかライフスタイルとかいろいろございましたけれども、御本人の意思というものがしっかり反映できていくというような形になりませんと、そこに幸せというか、自分自身の自己実現が行われているということもありませんので、今、お話を聞いておりますと、もちろん社会がどうしていくかということもあるのですけれども、高齢者、御本人たちはどういうふうに生活をしたいのかというような、本人の視点というのも必要かなと私は思います。
鹿嶋会長
ありがとうございました。大変大きなテーマですし、皆さんの意見を聞いていると、変な言い方ですが、おもしろい報告書になるかなと思いますので、いい調査、報告をよろしくお願いします。いろいろありがとうございました。
 続きまして、政府が実施する男女共同参画の形成の促進に関する施策の実施状況、これは職務指定の問題ですが、それについて事務局から説明をお願いいたします。よろしくお願いします。
栗田調査官
それでは御説明させていただきます。この職務指定の監視の意見決定につきましては、一昨年の12月に男女共同参画会議におきまして、こういったテーマでやってくださいということで、こちらの専門調査会のほうに検討の依頼がありまして、昨年の10月に意見決定をしたものでございます。その意見決定の中身に基づきまして、関係の各府省におきましてどのような対応が現時点においてとられたかということを御説明させていただきます。
 この職務指定に関しましては、そもそもの問題意識としましては、地方公共団体におきましても非常に重要な政策方針決定過程である審議会等におきまして男女共同参画を一層積極的に推進することが重要だという問題意識に立ちまして、地方公共団体の審議会等の委員につきまして、国の法令等の中に、例えば「○○機関の長とする」といったような職務を指定する規定がある場合がございますけれども、現状におきましては、機関、団体、施設の長の多くは男性でいらっしゃることが多いということで女性の委員の登用を困難にしているという声が地方公共団体等からも寄せられておりました。
 そこで職務指定の状況につきまして調べましたところ、法令等に基づく職務指定を行っている審議会につきましては、女性の登用が法令等による職務指定がない審議会と比べましてかなり低いという結果が得られましたので、そういった法令等による職務指定を行っている審議会等につきまして、こういった職務指定の規定の見直しをしてほしい、また、見直しがなかなか難しいということであれば、現行の規定の中でも女性の登用を図るように指導・助言を行ってほしいという内容の意見決定を去年の10月にしております。
 それで、資料4-1をごらんいただきたいのですが、こちらに関係の各府省の対応状況が整理してございますけれども、まず法令による職務指定がある都道府県・政令指定都市の審議会等、こちらは調査時点では全部で26審議会等あったのですが、きょう現在では、そのうちの一つが整理・統合になって数が減っておりますので、全部で25審議会等になっております。
 こちらの審議会等についての対応状況としまして、まず1.で法律を改正して対応いただいたものが一つございます。こちらは総務省のもので、監査委員でございますが、こちらにつきましては、地方自治法の一部を改正し、地方自治体の事情に応じまして、条例で監査委員の人数を増やすことができるという規定を追加をするという改正が行われてございます。人数も追加になる中で、特に女性の方で御適任の方がいらっしゃれば登用が進むのではないかということが期待されるところです。
 それから、2.都道府県・政令指定都市に対する助言・支援を行った審議会等、こちらが全部で22審議会等がございますが、助言・支援の具体的な中身としましては、公文での通知ですとか事務連絡を発出していただいたという形になっています。こちらにつきましては、私ども内閣府の男女共同参画局から都道府県・政令指定都市の男女共同参画を所管する課にも当然御連絡の文書を差し上げましたが、それと並行して、法令を所管している関係の府省から都道府県・政令指定都市の実際に審議会等を所管している課に対しまして通知等を発出していただきました。特に直接所管をしている課からご連絡が来ますと、都道府県・政令指定都市のほうでも取組がしやすいという事情もあろうかと思いますので、そこは二重に通知を行いました。
 対応としましては、そこに一覧がずらっと書いてございますけれども、都道府県医療審議会から、一番下の民生委員推薦会まで通知を発出していただいたということでございます。並んでいるところの上から三つ目に「※」で、「結核の審査に関する協議会」と書いてございますが、こちらが本年の4月1日に法律が改正されまして、上から二つ目「感染症の審査に関する協議会」のほうに統合されております。「感染症の審査に関する協議会」のほうでまとめて通知を出していただいたという形になっております。
 それから、3.でございますが、都道府県・政令指定都市に対する助言・支援を準備中の審議会等とございますが、助言・支援、通知等の発出はまだ現時点において準備をしている段階であるという審議会等が2か所ほど残っております。都道府県建築士審査会につきましては、国土交通省のほうで現在通知の発出を準備していただいているというふうに聞いておりまして、6月中には通知を発出していただけると聞いております。
 二つ目の地方青少年問題協議会、こちらは同じ内閣府で担当している協議会でございますが、こちらにつきましては、来月7月の中旬に都道府県・政令指定都市の担当者が一堂に会する会議が予定されていると聞いておりまして、単に文書で通知を発出するということではなくて、その会議の場で、関係の資料を配布して、担当の参事官から御説明をしていただけると聞いております。そういった形で準備中という形のものがまだ2か所残ってございます。
 それから、その下に法令ではないのですけれども、法令によらず、実質上職務指定がなされている都道府県・政令指定都市の審議会等、こちらは調査をしましたところが全部で6審議会等ございましたが、こちらにつきましては、既にすべて6審議会等通知等を既に発出していただいたという状況になってございます。
 このような形で意見決定の内容に基づきまして少なくとも通知を発出する、もしくは会議等で御説明をいただく対応を既にほとんどのところがとっている。もしくは現在準備中であるという状況でございます。
 一つ、各省との関係でいろいろやりとりをした中で御紹介させていただきますと、こういった審議会等の中には、女性の登用率が昨年の11月に専門調査会で調査をしましたときに、平均して3割を超えていたところもございました。そういったところにつきましては、女性の登用がそれなりに進んでいるのであるから、あえて今回通知を発出しなくてもいいのではないかというような声も聞かれたところではあるのですけれども、そこにつきましては、自治体によっていろいろ事情が様々であると。自治体のほうでどういったところを目標にするかというところを決めまして、それで対応していくような問題であるということで、3割を超えていても通知の発出をお願いしますということで御理解を求めまして、すべての審議会につきましてご対応をお願いしたところです。
 以上です。
鹿嶋会長
ありがとうございました。各府省の通知、どういう内容の通知を出しているかというのはちょっと気になっていたのですけれども、実は男女共同参画局で発出通知の文案を、サンプル例を各府省に出してもらいまして、大体それに沿ったような形で文案を各府省ともつくっておりますので、その意味では非常にきちんと対応していただいているという印象を受けております。すぐに職務指定の女性の委員の登用率が上がるとは思いませんけれども、ああいう通知出してもらったので、今後徐々に上がっていくのかなという感じがいたします。御質問、御意見があればどうぞ。
畠中委員
ちなみにどういう内容の要請をされているのですか、例でいいですから、教えてください。
鹿嶋会長
厚生労働省だけ、文案を。
栗田調査官
一つのサンプルとしまして、私どものほうでもひな形をつくって、こういった形で要請をお願いしたいということで、各府省に対して御連絡したというふうに会長のほうから御紹介いただきましたが、例えば厚生労働省さんですと、審議会等に「女性の登用の促進について」ということで、男女共同参画社会の実現が非常に重要であるという旨と、男女共同参画会議におきまして、職務指定の関係で意見決定がなされましたという内容と、その意見決定を踏まえまして担当において審議会等における女性の登用を促進すべく、別に紙も配布しているのですけれども、項目としましては、職務指定に対する柔軟な対応、慣例等の見直し、人材の掘り起こし、育成に努めていく等の対応を図ることによって男女共同参画を今後も進めていくよう特段の御配慮をお願いいたしますということでご連絡していただきました。その際、別紙としまして、意見決定の内容ですとか、具体的に職務指定に対する重要な対応としてはどういったことが考えられるかというようなものを例示したペーパーを一緒に付けて送付していただいたという形になっております。
山口委員
まだ出たばかりですから、ちょうど任期切れのときに調べておいて、実際登用されているかどうかということを結果を知りたいと思うんですね。それが一つです。もう一つ、私びっくりしちゃったのですが、「見直しの予定なし」というのはどういうことですか。これはこのまま放置しておいていいのかどうか、どうなんでしょう。「見直しの予定なし」というのはすごいですね。「努力中」とかというのかと思ったら、「予定なし」と言い切られちゃうと困っちゃう。
横田委員
指定内容を見直す予定はないということでしょう。
栗田調査官
整理して御説明させていただきます。資料4-2の表現を御覧になっての御質問かと思うんですけれども、真ん中のところに書いております職務指定の在り方の検討についてということで、職務指定につきましては、例えば審議会等で関連する機関の長の方にはどうしても御参画いただかなくてはいけないとか、専門的に知識を持っている方には参加してもらわなくてはいけないという趣旨で職務指定の規定をしている部分があるので、そういった規定につきましてはなかなか変更の余地はないよという回答をしてきたというものが真ん中の表の「見直しの予定なし」という回答をしてきたという例になっております。職務指定の必要性自体というのは全て否定できるということではないかと思いますので、そういった場合につきましては、最低限、表の右側を御覧いただきたいのですが、都道府県・政令指定都市に対する助言・支援はしてくださいということで、具体的には通知等を発出してもらうという形になってございます。
 通知等を発出しました場合には、職務指定の規定はそのままでありましても、例えば、専門的な知識を持っている方で女性の適任の方がいらっしゃれば、積極的に登用してくださいとか、そういったような柔軟な対応が都道府県のほうでとられるのではないかというようなことを期待してという対応になっております。
山口委員
公衆浴場入浴料金諮問機関なんて、当然女性入れていいと思うんですけれども、いないとは驚きました。
鹿嶋会長
運用を柔軟にやってもらうということで通知出していますので。
山口委員
それは最初はそうですね。
鹿嶋会長
我々も今後の推移を見守るしか今のところはないんですけれども、どうぞ。
神田委員
趣旨は、今の山口委員と大体同じことなんですけれども、特にこの中でも、女性の割合が低く、かつ女性が実際に現場を担っている、あるいはどうしても女性を入れないと、その仕事自体がうまくいかないと思われるところとして、7、交通安全対策会議です。交通安全の現場の活動というのは女性が非常にたくさんやっているところです。
 それから21です。これはまちづくりと関係していて、女性の声が反映されないと私は十分な計画はできないと思っております。
 24と25、これは災害でございまして、この災害関係には女性の専門家というより、女性の生活に基づく意見というのが非常に重要であることは既にわかっているところでございます、阪神でも新潟でも。いずれもこれは低いですね。3%とか5%。こういう点は特に重点を置いて何らかの方法をとっていただきたいと思っております。
鹿嶋会長
フォローアップする中で余り変わらなければ、今おっしゃったようなことを私どもももう一回、この委員会の中で言っていってもいいと思いますけれども。
神田委員
そう思います。
栗田調査官
本日、委員の御意見があったということは関係の府省にも連絡させていただきまして、また必要に応じまして、この職務指定のある審議会全体ですけれども、女性の登用率がどのように変化していくのかということを中長期的なスパンで見守っていきたいと思っております。
畠中委員
この問題は事務局もよく御存じだと思いますけど、神野先生がおられた地方分権の推進委員会で、たしか必置規制の問題で職務指定も言っているはずなんですね。今度の第二次の分権推進委員会で、これを取り上げるかどうかですね。私よく知りませんけれども、もし何か聞く機会があったら、この職務指定の問題も取り上げるのかどうか、ちょっと聞いておいていただければありがたいと思います。
栗田調査官
確認いたします。
鹿嶋会長
いろいろありがとうございました。本日の審議はここまでとさせていただきます。次回の専門調査会については、有識者ヒアリングを引き続き行うこととしております。ほかに事務局からの連絡事項がありましたらお願いします。
池永調査課長
冒頭に申し上げればよかったのですが、5月24日の参画会議で、前回のテーマの能力開発・生涯学習について提言部分を参画会議において意見として決定していただきまして、それにつきましても、各府省に対して、参画会議の意見を発出させていただきました。御報告いたします。
 高齢者に対する自立支援につきましては、本日、事務局として当初思っていなかったような様々な貴重な御指摘をいただきましたので、整理をいたします。次回はお二人のヒアリングを予定しておりますが、御指摘いただいたような分野についても、その後も必要に応じて追加的なヒアリングを考えてまいりたいと思います。ありがとうございました。
山岡分析官
事務的な御連絡ですが、次回の専門調査会につきましては、7月25日(水曜日)15時から、場所は本日と同じこちらの永田町合同庁舎第一会議室を予定しております。議題につきましては、有識者ヒアリング及び男女共同参画施策についての苦情の処理状況について等を予定してございます。
 それから、本日資料5として、第18回の議事録をお配りさせていただいておりますが、こちらはこの形で確定といたしまして公表させていただきたいと考えております。また、ちょっと時間があいてしまって誠に申し訳ないのですが、第19回の議事録を机の上に置かせていただいております。こちらは1週間後、6月26日(火曜日)までに修正等ございましたら、事務局まで御連絡いただきますようお願いいたします。
 次回7月25日(水曜日)ですが、係の者からも御連絡いたしましたが、議題が多い関係で、大変恐縮ですが2時間半お時間をいただきたいと考えております。15時~17時半までお時間をいただきますようよろしくお願いいたします。
 以上でございます。
鹿嶋会長
それでは、これで第20回の監視・影響調査専門調査会を終わります。どうもありがとうございました。

(以上)