監視・影響調査専門調査会(第16回)議事録

  • 日時: 平成18年12月20日(水) 10:00~12:00
  • 場所: 内閣府5階特別会議室
  1. 出席委員:
    • 鹿嶋会長
    • 大沢委員
    • 勝又委員
    • 神田委員
    • 神野委員
    • 袖井委員
    • 橘木委員
    • 林委員
    • 古川委員
    • 山口委員
  2. 議題
    • (1) 開会
    • (2) 多様な選択を可能にする能力開発・生涯学習に係る監視・影響調査報告書の骨子及び盛り込むべき論点の整理
    • (3) 閉会
  3. 議事録
鹿嶋会長
ただいまから、男女共同参画会議監視・影響調査専門調査会の第17回会合を開催させていただきます。委員の皆様におかれましては、お忙しい中御参加いただきましてありがとうございます。
 それでは、本日の審議を進めますが、あらかじめ事務局より御連絡させていただきましたとおり、本日は「多様な選択を可能にする能力開発・生涯学習に関する施策」について、各府省のヒアリングの結果を踏まえまして、報告書の骨子並びに盛り込むべき論点などについて、審議を行っていきたいと思います。
 まず、事務局から報告書の論点整理案について説明を頂きます。よろしくお願いします。
栗田調査官
それでは、私の方から御説明させていただきます。本日御用意させていただいた資料1~3までを基に御説明させていただきますが、資料1が調査報告書の目次、全体の構成が分かるようなものを御用意させていただきまして、資料2は、その中身を少し図示しましてポンチ絵にしたものでございます。資料3が、今まであまり議論が深まっていないと思われました点につきまして少しピックアップしまして御用意したものでございます。この3種類の資料につきまして、私の方から説明させていただきます。
 まず、資料1の目次案というものを御覧いただけますでしょうか。今まで調査会で有識者の方からのヒアリング、関係府省からの書面調査、関係省庁からのヒアリング、先生方の御意見などを踏まえまして能力開発・生涯学習施策に関する報告書の全体の構成をどのようにした方がよろしいかということで事務局で取りまとめさせていただいたものでございます。なお、8日に開催されました第3回能力開発・生涯学習に関する監視・影響調査検討会でも御検討いただきまして、そちらの御議論の結果を少しブラッシュアップした形になってございます。
 まず、資料1の「はじめに」の部分を御覧いただきますが、こちらで調査全体の位置づけ等について整理をしてございます。最初の「・」から御覧いただきまして、平成16年にこの専門調査会が整理・統合され、監視・影響調査を一体的に行う「監視・影響調査専門調査会」、こちらの調査会を設置したということになってございます。
 二つ目の・社会経済を取り巻く環境が変化する中で、女性の働き方を含めた生涯を通じたいろいろな選択は多様化しているという状況にございます。昨今では再チャレンジのための取組の重要性も指摘されるなど多様な人材の能力開発が社会経済の発展にも寄与する重要な課題と認識されていますが、現状においては、能力開発機会に男女間で格差が存在しており、効果的な能力開発の実施により、更なる女性の能力開発が期待されているという状況にあります。こうした状況の下、今般、女性の多様な選択を可能にするような能力開発・生涯学習施策について監視・影響調査を実施することになったという経緯を御紹介しようということでございます。
 三つ目の・監視・影響調査において、基本的には国などが行う施策の実施状況を重点的に監視し、施策の今後の取組を提示するということですが、その際、留意点がいくつかあろうということで御議論いただいたわけですが、能力開発や生涯学習は、国や地方公共団体に加えNPOや民間企業など多様な主体により実施されているという実態がございますので、これらの多様な主体の連携が施策を考えるに当たり必要不可欠の視点であることに留意しなければいけない。また、雇用形態などによらず多様な選択を可能にするための施策を取り巻く制度・環境整備なども視野に入れて検討していくといったようなことを提示してございます。なお、前回の検討会でも御議論あったのですが、必要に応じまして、先進的な事例など紹介を交えられればということでございます。
 構成としまして、「はじめに」で、このような形の全体的な調査の方向をお示しした後で、その後、「Ⅰ 女性の多様な選択をめぐる現状と課題」、「Ⅱ 能力開発・生涯学習施策の現状と課題」、「Ⅲ 今後の取組に向けて」というような構成にしたらいかがと思っております。
 具体的な中身については、資料2を基に御説明させていただきます。
 資料2を御覧いただけますでしょうか。クリップどめをしてございまして、後ろに参考1というものがついてございますが、こちらの後ろについております参考1については、今まで専門調査会の中であった御意見を報告書の構成に合わせて整理し直したものです。こちらも必要に応じて御覧いただければと思います。基本的な御説明は資料2の1枚紙を基にさせていただきます。
 先ほど資料1の目次で御紹介しましたⅠ、Ⅱ、Ⅲという目次の項目がそのまま左上の薄いピンクの四角の箱、「女性の多様な選択をめぐる現状と課題」がⅠ、Ⅱの「能力開発・生涯学習施策の現状と課題」が右上のブルーの箱、真ん中から下の方に書いてございます「多様な選択を可能にする能力開発・生涯学習の在り方・課題」というのと、黄色の箱と一番下の緑の箱、「今後の取組」という部分が目次でいきますとⅢというところに該当するものでございます。
 左上の「女性の多様な選択をめぐる現状と課題」から簡単に御紹介させていただきます。
 現状と課題としてはまず3点ほどあろうかと思いまして、①多様なライフスタイルを選択することは困難である。
 女性の場合、ライフステージにおいて働き方が多様になってくるわけですが、そういった多様な働き方の変更が困難な状況にあることや家事・育児負担が大きくて仕事との両立が困難であるというような状況にございます。
 就労中断期間に対する企業の方ではあまり高い評価をしてもらえないといったような現状がございます。
 ②ニーズと能力開発機会、就労に対してミスマッチがあるというような状況がございます。
 女性は、資格取得や就労に高い意欲を持っているが、現状ではミスマッチがある。
 男性に比べ、辞める確率が高い女性起業家に対しては世間の現実は厳しいものがある。③不透明な将来展望。
 女性の場合、例えば夫の転勤ですとか、家庭の環境の変化に影響を受けやすいというような状況があることや、管理職の昇進に展望がなかなか描けないといったような実態もございます。
 こういったような女性の現状と課題があるということですが、これに対応し、右上の施策の方の現状と課題にお移りいただきますが、こちらの施策の現状と課題としてはどのような実態があるかということで、こちらは切り口を3点ほど分け整理してみました。
 まず①能力開発・生涯学習の内容ということで、こちらは施策の内容自体に関する問題意識です。
 ②施策の立案・評価・連携は、施策のどちらかというと進め方や手法に関する問題意識ということで整理をしてございます。
 ③制度・環境面、こちらは施策を取り巻くいろいろな制度、周辺的な制度や環境面についての問題意識。
 この三つの切り口から問題を整理しました。
 まず①については、今まで無意識的にいろいろ考えてきたかもしれないのですが、女性の多様な選択について明示的に考えてきた取組が不足していたのではないかというような現状があるということです。新規分野への参画、科学技術分野などへの積極的な取組がまだ不足しているのではないかというような状況がございます。
 ②施策の立案・評価・連携については、この施策分野ということだけにとどまらずいろいろな施策分野を横断的に共通に指摘される事項も含まれるかと思いますが、例えば男女別の実態ニーズ把握、施策実施結果の把握が不十分であるといったこと。人材育成に非常に時間がかかるということを前提とした評価手法が確立されていない。能力開発施策の評価がなかなか困難である。これはこの施策分野に特徴的な問題かと思います。関係機関・民間等の役割分担・連携があまり明瞭になっていないのではないかといったような視点がございます。
 ③については、検討会の御議論の中では、1年以上就業を中断した方に関する教育訓練給付金の利用がなかなか困難な状況にあるといったような御意見も出ておりました。
 このような施策の現状と課題といった実態を踏まえ、今後の取組をどうしたら良いかということで黄色の箱ですが、今、御紹介しました①、②、③の切り口それぞれに対応し、①に対応する部分として四角の一番上、「◇女性のライフステージごとのニーズに即した能力開発・生涯学習施策」を考える必要かあるのではないか。
 2番目の施策の進め方に関しては、二つ目の「◇施策をより効果的に実施していくための取組」が必要なのではないか。③の周辺的な制度・環境面に関しては、一番下の「◇施策を取り巻く制度・環境面の整備」が必要ではないかという形で整理をしてございます。
 具体的にどのような取組を求めていくかという緑色の一番下の箱のところで具体的な内容を御紹介させていただきます。
 まず、左上の部分、「◇女性のライフステージごとのニーズに即した能力開発・生涯学習施策」ですが、こちらは小項目を四つ立ててございます。
 まず最初の「◆就業・起業や地域活動への参画につながる能力開発・生涯学習の実施」といったことが必要ではないかということで「・」を順番に御紹介しますが、企業ニーズはなかなか把握されていないのではないか。そういったものを反映した能力開発プログラムを設定する必要があるのではないかといった御議論が今までもされてきたかと思います。
 就職後の資格取得・能力開発支援といったものも必要であろうという話、NPO等も含めた起業女性への継続的な支援の必要性といった御議論もございました。それから、ほかの分野、横へのチャレンジを促すような施策の充実といったものも御意見として出されていたかと思います。
 二つ目の小項目「◆就業中断期を前提とした能力開発・生涯学習(子育てと能力開発の両立)の実施」は、まず最初に、無業者については能力開発がなかなか進んでいないのではないか。ストック情報なども不足しているのではないかといったような御意見が出されておりました。就業中断者の能力開発機会支援、再就職後の能力発揮の一層の支援の必要性といった御議論もあったかと思います。その具体策の一つとして、Eラーニング等を活用した家庭での能力開発機会の提供支援、育児休業期間中などでも、例えば自宅からネットでアクセスをできるようなものをする必要があるのではないかといった御意見が出ていたかと思います。
 三つ目の小項目、真ん中の段になりますが、「◆家庭(子育て)・地域活動経験をいかした職業能力開発(培われた能力の評価)の実施」は、今まであまり子育て・地域活動経験に対して企業側が積極的な評価をしてくれなかったという実態がございます。そういったところについて積極的に評価をできる部分が何かないかというような視点があろうかと思います。それから、企業だけではなくて、本人、子育て・地域活動経験をキャリアにつなげるための本人の意識啓発といったものも重要になるのではないかといった御意見が前回の検討会でも出ておりました。それから女性に限らずということですが、コミュニケーション能力等基礎的な能力の開発・評価が重要であるという認識を企業側は強く持っているという御紹介もあったかと思います。
 四つ目の小項目「◆能力開発・能力発揮の意欲向上の促進」ということで、こちらは上へのチャレンジの一環になりますが、ロールモデル、キャリアパスを示すことにより女性の意欲向上のための取組を推進していくべきである。メンター制度の導入といったことを検討すべきではないかといったような御議論もされていたかと思います。
 次に二つ目の「◇施策をより効果的に実施していくための取組」、緑色の箱の右上に書いてございますが、こちらについては、専門調査会でも何回か御指摘ございましたが、男女別データの整備の尽力とニーズ・評価への反映といったことが必要なのではないか。評価意識の向上や中長期的な施策評価システムを確立していくべきではないかといったような御意見も出ていました。人材育成に非常に時間がかかるということを前提とした評価手法を確立すべきである。関係府省・地方・民間との役割分担・連携の明確化、情報共有の推進。関係施設・機関の有効活用、情報化の進展への対応といった御意見が出ておりました。
 三つ目の部分、「◇施策を取り巻く制度・環境の整備」ですが、こちらは能力開発・生涯学習施策本体ということに関する御意見ということではないので、報告書を取りまとめる際に取り上げ方が難しい部分とは思いますが、今まで御意見が出たものを主に五つほど項目を立て整理させていただきました。
 まず最初に「◆効率的な能力開発のあり方の検討」ということで、ハローワークとの連携等、能力開発後の就労のマッチングの推進といったことが必要でないか。
 「◆教育機関との連携」ということですが、こちらは就業する前ということで、学生の進路選択に役立つ情報を提供すべきである。企業側がこういった能力を持っている学生を採りたいと思っているのであれば、その能力を身につけることで学生が進路選択に役立つ情報を得ることに対する支援が何かできないかということです。
 三つ目「◆雇用形態によらない能力開発機会の確保」ということで、これは非正規・正規間のOJT・OFF-JTによる能力開発機会格差の是正、キャリアパスが見える人事制度の推進といったものが必要ではないかといったような御意見が出されていたかと思います。
 四つ目「◆雇用保険の加入状況等によらない能力開発機会の確保」ということで、雇用保険加入の有無等による能力開発機会が失われてしまうこと。パートの方に多いようですが、就業調整をすることにより能力発揮する機会を喪失しまうといったような現状があろうかと思いますので、そういった問題の対応をどうするのかといったような御意見が出ておりました。
 最後の部分、「◆多様な選択を可能にする就労環境の整備」ということですが、こちらは幅広く論点を入れてございますが両立可能な働き方、再就職しやすい労働市場、個別の能力に応じた処遇、採用の際の年齢制限の緩和、人材活用に性差のある分野での人材活用・登用推進といったような幅広な御意見が出ていたかと思います。
 今まで先生方に御議論いただきました論点を幅広に取り込んだのがこの資料2ということですので、後ほど御議論いただきたいのですが、この整理した中であまり御議論が具体的にまだ深まっていなかったと思われた部分を特にピックアップしたのが次の資料3でございます。資料3を御覧いただけますでしょうか。
 1から順に御紹介させていただきますが、資料1の「はじめに」の部分で、民間で担っている部分も多いので、そちらとの連携も視野に入れなくてはいけないという御説明をさせていただきましたが、「能力開発・生涯学習に関する役割分担と連携をどう考えるか」という部分で、(1)官-民の役割分担と連携について御意見を伺えればと思っております。サービス提供の多くを民間が担っているという状況にあるわけですが、民間等との役割分担・連携はどのようにあるべきなのかということで、前回の検討会での御議論では、例えば官に期待されるのは就業困難の方、パート等正社員以外の方への提供というのが主になるのかなというような御意見も出されておりました。
 そういった中で、国がどのような役割を果たすべきかという部分についても御意見を伺えればと思います。
 産業界や教育界との連携をどのように考えるかといったような論点もあろうかと思います。
 次に(2)官-官の役割分担と連携ですが、まず①として、関係府省間の関係といったものは、府省間で施策実施に当たっての連携をどのように考えるかといったような論点があろうかと思います。例えば例としてジョブカフェなどでは、厚生労働省と経済産業省が連携して一体的に推進しているといった実態かあると聞いておりますが、そのような連携の仕方についてどのように考えていくべきか。
 府省間の役割分担を検討する必要はあるか。例えば施策が十分行われているのか、まだ不足しているという御認識なのか、それとも府省がそれぞれに行う施策にダブリ感と言いますか、重複感を感じていらっしゃる。どちらの御認識なのかといった先生方の御意見を伺えればと思います。前回の検討会では、そもそも府省内の連携にも問題があるのではないかというような御意見も出されていました。
 次の②国-都道府県-市町村の関係ですが、施策を主に実施するのは市町村で、それに対して国や都道府県は情報発信、例えば先進取組事例の紹介などを行うといったような役割を果たしてございますが、そういった役割分担や連携をどのように考えたら良いのか。例えば文科省ですと、生涯学習施策というのは、生涯学習推進センター等都道府県単位で推進されているという実態がある一方で、施策の主要な実施場の一つである公民館が市町村の所管であるといったような実態があると聞いてございます。
 都道府県と市町村の役割分担や連携をどのように考えるかという論点も一つあろうかと思います。その中でも自治体によって事情は様々であるというお話であったのですが、政令指定都市等大規模な基礎的自治体を抱える都道府県における役割分担や連携はなかなか考えるのが難しい部分があるというような御議論も出ていたかと思います。
 次に「2 企業における女性の能力開発機会」に移らせていただきますが、(1)女性の企業内での能力開発機会が少ないが、その原因はどういう要因があるのかと考えたらよろしいかということですが、そもそも能力開発の問題、提供の方法や内容、能力開発の機会が不十分なのかといったような、能力開発自体の問題が根本にあるのか。それとも女性の就労環境の問題、例えば女性は勤続年数が短いとか両立が困難であるといったような実態により統計的な差別が行われ、男性の方を優先して研修を受けさせ能力開発をさせた方が良いのではないかといった判断をされる実態があるのか。能力開発の問題と女性の就労環境の問題、どちらがより重要な問題と考えられるのかといったような点について御意見いただければと思います。
 (2)女性の能力開発機会の充実についてということで、裏面を御覧いただきたいと思います。そちらについて御議論いただきたいと思います。
 次に「3 再就業女性に必要とされる能力開発」といった論点があろうかと思います。
 (1)特に必要な能力開発は何かということで、例えば前職の経験で既に持っている能力があろうかと思うのですか、そちらを何らかの形で認定をして、再就業で必要な能力の関係をどのように考えるかといった頭の整理があろうかと思います。
 (2)子育て経験等の積極的評価についてでございますが、こちらにつきましては、従前あまり明示的に議論なされてこなかった部分かと思いますけれども、子育てや地域活動経験により培われる能力のうち、就業に必要な能力の一部と評価できるものは何かということで、前回の検討会での御議論ですとか、本日御欠席なのですが、検討会のメンバーの方から御紹介いただいた論文などから例をいくつか挙げてございますが、例えば複数業務の同時処理能力、管理職が日常行っているいろんな業務を同時的に処理していく能力と、例えば育児で赤ちゃんを世話するというのと、家事のいろいろなものを同時的にこなしていかなくてはいけないという能力には共通性があるのではないかというような御意見。家事・育児・介護関連商品やサービスの開発といったものに子育て経験が役立つのではないかといったような御意見も出ておりました。
 子育てなのでいろんな意味で人とのコミュニケーションをとるという能力がブラッシュアップされるのではないかというような点や、地域活動経験等ということから、地域に関する知識、地域に根ざした知識や人脈が取得されるのではないかといったようないくつか例示を挙げてございますが、評価をできるものは何なのかといったところを御議論いただければと思います。
 それから、二つ目ですが、子育てや地域活動経験をキャリアにつなげるためには、こういった経験により培われる能力を、まず企業に認識してもらいたいという以前に、御本人が認識・評価するというような本人の意識啓発が必要ではないか。前回の検討会のときには、マインドアップというような言葉で御紹介いただいたのですが、マインドアップが必要なのではないか。最終的な目標としてキャリアアップというのがあるけれども、キャリアアップにはマインドアップが必要というような御紹介がされていました。
 それから、子育て経験等により培われた能力をいかした能力開発とはそもそもどういうものがあるのかといったような論点もあろうかと思います。
 「4 無業者の能力開発」でございますが、こちらについては、そもそもストック情報が不足しているという現状があるわけですが、国がどのような役割を果たすべきかという点と、そもそも無業者のストック情報が不足しているが、何か把握する良い方法があるかといったことで、前回の検討会などでは、例えば子育ての主婦の方なども昨今インターネットなどもかなりよく利用しているので、そういったインターネットを活用するようなことは考えられないかというような御意見も出ておりました。
 「5 施策を取り巻く制度・環境整備」ということで、こちらは、今後の施策の取組状況の三つ目の柱になる部分ですが、こちらは、能力開発・生涯学習施策を取り巻く制度・環境整備の問題を報告書でどのような形で取り上げるのが適当なのか。なかなか取り上げづらい部分もあるのかなというのは、先ほど資料2の御説明のときにさせていただきましたが、そこに関する皆様の御意見を頂ければと思います。
 最後の論点「6 中長期的な施策の評価システムの確立」ということで、こちらは施策の進め方、手法の一環として論点として挙げさせていただいた部分ですけれども、ここは、四つほど「・」を挙げてございますが、施策の企画立案、実施、実施後それぞれの段階でどう評価をするのか。施策を評価する判断基準といったものはどういうものなのか。この施策分野に若干特有な事情としましては、NPOや民間企業といったような方もかなり実施の主体となっているということですので、そういった方々、実際に参加をした方なども含めた多面的な協働評価といったものが必要なのではないかという視点。能力開発プログラムの内容を評価する、プログラムの評価の判断基準は何かといったような、いろんな多面的な論点あろうかと思うんですが、こちらへ踏み込みますと議論もこの全体のボリュームからいきますと、なかなか御議論全体をしていただくのは難しい部分もあろうかと思いますけれども、この取り上げ方についても御意見いただければと思います。
 以上、大変雑駁ですが、私からの説明を終わらせていただきまして、民間の実態が、今までなかなか御紹介されていなかったかと思いますので、そちらにつきまして、矢島分析官から、参考資料を基に御説明をさせていただきたいと思います。
矢島分析官
お手元の参考2という資料を御覧ください。
 こちらは、「国及び民間における『能力開発・生涯学習を行う教育訓練サービス』について」ということで取りまとめさせていただいております。今まで監視・影響調査ということで、主に施策について説明しておりましたけれども、そういったものを含めて広い意味での教育訓練サービス全体がどういった形になっているのかというところをざっと御紹介させていただきます。
 こちらの資料については、主に労働政策研究・研修機構の「職業能力開発に関する労働市場の基盤整備の在り方に関する研究」で、数年間にわたっていくつかの調査が行われておりまして、そちらの中からデータを紹介させていただいております。
 <まとめ>のところですが、全体的にこの資料から分かることとしては、
 ・教育訓練サービスの多くは民間が担っている。
 ・公共部門においては、長期の訓練コースの実施を重点的に担っている。
 ・一方民間企業では短期間で受講料の高い教育訓練を提供しており、教育訓練事業の成長性が高い。
 ・非正社員などは、正社員・自営業者に比較して公共職業訓練機関の利用割合が高い。というようなことです。
 具体的な説明ですが、まず「1 教育訓練サービスの分類」でございます。
 こちらの定義としては、企業等が自社内で行うものと、その他教育訓練主体が提供するものということでありまして、教育訓練主体が提供するものとしては、民間部門、公共部門、学校法人などがあるということです。ここで「教育訓練サービス」という言い方をしているわけですが、その市場と考えられるのは、自社内で訓練を行うもの以外、外部で、自社内以外で行われている市場に流通している教育訓練費を総合させて教育訓練サービス市場と見ております。
 この調査における教育訓練サービスの範囲は、2にありますように社会人に対する教育訓練サービス、この中には、主婦や定年退職者等も含まれております。それから、学校教育を除くということ。講習会やセミナー、通信教育、社会人を対象にした大学院教育ということで、今回、私どもの調査で対象としているところと範囲としては近い考え方になっております。
 次のページにまいりまして、「2 費用支出からみた教育訓練サービスの構造」でございます。
 図表1にございますように、政府の職業能力開発予算は、えんじ色の四角で囲っておりますが、約1,632億円ということで、これは2004年の報告書での数字ですけれども、1,632億ということで、全体の約18%を占めております。ここで教育訓練サービス市場総支出が9,032億円と書いてありますが、先ほど申しました定義で言いますと、自社内で行われている上の方にあります自家消費というのがそのうち2,500億円ありますので、一番右側の方のグレーに塗ったところにある外部流失教育訓練費約5,817億円が先ほど申し上げた教育訓練サービス市場というところに当てはまる数字になります。
 それから、下の方のグラフ、公共と民間の割合、これは企業が外部に出している、企業がアウトソーシングしている支出の支出先ですけれども、こちらは民間が9割、公共が1割となっております。民間では株式会社がそのうちおよそ6割を占める。経営者団体等が約3割を占めるといった状況になっております。
 次のページにまいりまして、「3 教育訓練サービス提供主体別にみた特徴」でございます。
 こちらは、左の方で、公共、学校法人、民間と大きく分け、その中で更に提供主体を細かく見ておりますが、どの分野で見ても比較的多いのはブルーに塗ってある管理・サービス系というところですが、それ以外に地方自治体では、例えば機械系、第三セクターでは情報・通信系、そういった提供主体によりやや提供される分野が異なっております。
 図表4では、研修期間から見た分類ですが、上の方の短期の講習会の割合で見ると、株式会社の割合が高くなっているという状況が見られます。
 次のページにまいりまして、今度は<サービスの提供方法>を講習会・セミナーといった形と、通信教育に分けて見てございます。講習会・セミナー、通信教育という形で分けますと、講習会・セミナー形式で提供している主体が多くなっています。
 応募状況ですが、こちらで見ますと、定員を下回るところが多く厳しい状況になっております。特に通信教育で厳しい状況になっております。
 <提供される研修内容>は、研修コース数で見てみますと、「資格取得研修」、資格取得研修というのは、この表の左側の方で研修コース特性とありますが、下から3段目に「資格取得研修」というのがございます。それから、その上に「OA・コンピュータ研修」というのがございます。下から2番目に「趣味・教養研修」とございますが、このあたりのコースが多くなっております。それから、「資格取得研修」では公益法人や民間企業が多くなっているというような状況があります。また、大学等では「趣味・教養研修」というところがコース数としては多くなっている状況です。
 次の5ページにまいりますが、<サービス提供の主な想定対象者>というのを見てございます。こちらは雇用就業特性から見ると、大企業、中小企業のサラリーマンや公務員や団体職員を想定対象者としているところが多くなっております。どの主体もパート・アルバイトを特に想定主体とは対象しているところはないという状況がありますが、ただ、大学等は想定対象を特定しておりませんので、幅広く対象となっているというところがございます。
 また、職務階層から見ますと、中堅社員レベルを対象としたものが多く、課長、部長、次長ですとか、幹部職員を対象としたようなものはあまりないということでございます。
 それから<セミナーの受講料・開催規模でみた特徴>ですが、こちらは研修1時間当たり受講料と研修時間とコース1回当たりの受講者数で見ております。これで見ますと、民間企業は受講料が比較的高く少人数研修のコースを提供している。職業訓練法人等は時間当たりの受講料が安く、研修時間の長いコースを提供している。公益法人は平均的な受講料で多い人数研修の方法で訓練するコースを提供している。経営者団体は平均的な受講料で研修時間の短いコースを提供しているといった特徴が見られます。
 次のページにまいりまして<教育訓練サービス提供主体の経営の特徴>でございます。
 図表9では、教育訓練事業の成長性、3年前を100としたときの現在の指数を見ておりますが、こちらは大学等、民間企業、専修学校等が110を超えて比較的高い指数を示しております。大学等では成長性が高いのと同時に、収入から見た特徴として、「超」と書いてありますか、かなり大規模であるということ。それから民間や専修学校も大規模であるといった特徴がございます。ただ、民間企業においては、こういった教育訓練サービスを専業でやっているところが多いのですが、大学では非専業、専修学校でも準と書いてありますが、専業ではないといった形が特徴となっております。
 次のページにまいりまして、能力開発の教育訓練プロバイダー別構成、今までと少し違った見方で見ておりまして、これは社内と社外を合わせた形で見ております。図表10は、研修の時間構成と自己啓発の時間構成ということで見ておりますが、こちらは社外教育訓練機関、設備機器メーカー等とありますが、こちらはどちらも社外という考え方で、それから、会社等自社内で行うもの、自学自習というものを合わせたものを社内と見ると、大体、研修という形で行うものについては、ほぼその割合が拮抗しているけれども、自己啓発に関していうと、社内や自学自習が多いというような実態を示しております。
 枠内で「被雇用者・自営業者の受講した研修時間は」とありますが、図表10の上の方の図に関しては、被雇用者・自営業者に限ったものではありません。全体の状況を示しております。
 その下のグラフになりますと、正社員、自営業、非正社員の区別がつくように見ております。ここでは自営業と非正社員の状況を特に見るためにこのグラフを御紹介してございますが、自営業の場合は、社外プロバイダーの構成割合を見ますと、薄い紫色のところ、比較的経営者団体等の割合が高い。非正社員になりますと、比較的公共職業訓練機関、オレンジ色のところの割合、専修学校の割合、これは濃いブルー(藍色)の割合が比較的高いといった特徴がございます。
 <教育訓練機関先のニーズ>ということで、個人の側から見た教育訓練先に対するニーズというところですが、これも社内訓練と社外訓練、自学自習に分けて見ておりますと、こちらは自学自習の割合が高いのですが、あとはそれほど変わらないといった割合になっております。そして社外訓練の場合、外部機関の利用希望を一応聞いているのですが、これも主体間にあまり大きな差はありません。ただ、公益法人、民間教育訓練機関、公共職業訓練の機関の希望がやや高いというような状況になっておりまして、個人の側から見ると、訓練機関のどこが特にという特定はあまりされていないというような状況になっております。
 以上です。
鹿嶋会長
ありがとうございました。今から、ただいまの説明について御質問・御意見を頂きますが、議論の進め方ですが、まず報告書の構成や論点の整理、区分の仕方について議論をして、その後に資料3の論点を含めた議論をしたいと思っていますが、非正規の用語使用の問題は。
栗田調査官
途中で御紹介いただければ、論点の方で。
鹿嶋会長
それでは、報告書の構成について質問を含めて御発言をお願いしたいと思います。論点整理、資料3の方がかなり難しい問題が含まれているような感じもしますが、資料2、構成についてはどうでしょうか。
 資料1については、報告書の大まかな粗筋が書いてあります。資料3に重なるところもありますので、論点を含めて全体の議論に入って良いですか。
栗田調査官
はい。
鹿嶋会長
構成も含めて議論をしたいと思っています。さっき私が調査官に聞いたのは、委員のお1人から、「非正規」という言葉について使用しない方が良いのではないかという趣旨の提案があったということですけれども、私としては使用すべきであると思います。趣旨としては、職業に貴賤がないわけで、働き方にも正規、正規にあらずといったような区別はないと私は思うんですけれども、特に非正規に働く人たちはあまりにも身分制度といわれるくらい格差が大きい中では、その言葉を使わないことによってかえって論点が隠蔽されるのではないかという考え方です。ヨーロッパは「典型」、「非典型労働」という言葉を一般的に使いますけれども、あちらと日本は賃金の形態も違っていますし、向こうのようないわゆる外部市場、横断的な職業別組合がある中では典型・非典型が良いと思うんですけれども、私は日本では無理であろうということです。
 行動計画の中間報告で、「非正規」という言葉を使わずに報告書を出した自治体もあるのですけれども、非正規という一語に代わる言葉としてパート・アルバイトとかたくさん言葉を並べなくてはなりませんので、ちょっと厄介かなという感じがいたします。
 本格的に議論するとすれば、厚生労働省が、今、「非正社員」とか「非正規」という言葉を使っていますけれども、それに代わるような言葉を使うということになれば、この調査会でも議論して良いと思うんですが、ここの調査会が率先して「非正規」という言葉を外すことについては私は反対していますが、皆さん、その辺も含めて議論があれば御意見をお聞きしたいと思っております。
 資料3ですけれども、今から議論していただきたいのですが、表ページの方は、官-民、あるいは官-官、国-都道府県-市町村の役割なんですが、その後ろの方、大分難しい問題があるんですね。資料3の4「無業者の能力開発」をどういうようにすべきかとか、子育ての経験、これをどう評価してもらうのか、その辺のあらましは、資料2を見るとざっと書いてあるのですが、そういう問題も含めて、皆さんから御意見を頂きたいと思います。質問ももちろん発言していただいて結構ですので、どうでしょうか。
坂橘木委員
橘木です。あまりこの会に出てなくて誠に申し訳ないです。どういう議論がされているか、あまり知らないところに生意気なことを言うことになるかもしれませんが、1番目に、これは一応女性が途中で仕事を中断した後のことをどうするか。技能が陳腐化したときにその技能をどうやって回復するかというようなことが前面に出ているように理解しているんですが。
鹿嶋会長
それは資料2を、今、中心に御発言ですか。
坂橘木委員
はい。その前に、一つの主張としては、女性に辞めるなと。辞めたら物すごくハンディを背負って、あなたの将来はいろんな点でハンディを背負うから、とにかく結婚・子育てということの問題はあるけど、辞めないことによるベネフィットが非常に大きいので、技能も陳腐化しないし、そういうようなことを最初に書くということも、それは社会として、じゃあ、辞めないための施策はどうやってやるかということを考えるのはまた別の問題になるかもしれませんが、あたかも最初から、これは多様な選択ということで、最初から辞める人のことをどうするかというようなニュアンスが出ていると思うので、辞めないということのベネフィットは最初に出して、そういう選択肢もあると。辞めることによるマイナスが大きいから、辞めないという選択肢をとってくれと。辞めないという選択肢に対して社会がどうやって支援するかということを書いていくのも一つの、この報告書になじまないかもしれないけど、そういうことを最初に言っていただきたいというのが私の第1点の希望です。
 第2点の希望は、鹿嶋先生が、正規・非正規のことを言われて、私も正規・非正規の言葉は残した方が良いと思います。ざっと見た限りにおいては、正規と非正規の、例えば同一労働・同一賃金というような原則を達成すべきだということがどこかにありましたか。あまり目立たなかったので、そういう方向に同一労働・同一賃金という方向に向かうような政策というのも多様な選択を保障するための一つの手段であるということを書かれた方が良いような印象を持ちました。
 ちょっと長くなって申し訳ございませんが、3番目に言いたいことは、参考資料2のところで、矢島さんの話された資料のページ2のところで、教育訓練費、国と民間とでどういう費用分担をしているかというので、国が18%、民間が、パーセントは出ていませんが、非常に多いというのが日本の特徴、これは日本の特徴としてみんなが知っていることなんですが、外国を見たらどうかというような情報を入れれば、日本の国家の支出している職業訓練費というのは、他の先進国と比べて非常に低いというような事実がありますので、これは日本の国内だけの比較ではなくて、外国との比較を出せば、国はあまり職業訓練費を出していませんよというような証拠になると思いますので、もし図表1を使われたのであれば、国際比較をやる数字を出せばもっと明確に出てくるのではないかなという気が致しました。でも、これは結構反対意見もあるでしょうから、御審議をお任せします。
 以上です。
鹿嶋会長
ありがとうございました。今、橘木先生の方の、特に最初の指摘、機会費用が大変高いですから、辞めるなと。その辺はどうですか、皆さん。
林委員
私も何回かここでそのようなトーンの話をしたと思うんです。再チャレンジ、要するに女の人はいったん辞めて、それからチャレンジするのが普通の状態だというように定着させてしまうことになりはしないかということが心配だということを申し上げたことがあると思うんですね。それで、まずは、資料2の緑の四角のところに「就業中断期を前提とした……」、中断期だからまだ良いのかもしれないけれども、中断するのが大前提にあるようにならない方が良いというのが私の考えです。中断している人が多いのは過渡的な状況なんだという見方をしていきたいと思います。確かに中断している人が今多いんですね。でも、これからも中断する人がずっと多いという前提の施策を考えるべきではないというのが私の考えの一つです。
 それから、もう一つ、均等とも関係するのですが、同じ緑の四角の方の「政策を取り巻く制度・環境の整備」の中で、一番最後の「◆」に就労環境の整備というのがありまして、「再就職しやすい労働市場」とか「個別の能力に応じた処遇」という文言が出てくるんですね。これはたびたび能力ではなく職務に応じたというふうにすることで格差というのか、不当なというんですか、そういうものが是正できるのではないかということを、他の課題でもこの影響調査会ではずっと多様な就労形態の問題を議論したりするときに議論してきたように記憶していますので、「能力」という言葉ではない方が考え方としては良いのではないかと思います。
 それから、最初に座長から提起があって正規・非正規と、非正規を使うべきかどうなのかということについては、連合も5年ぐらい前に「非典型」という言葉を使うと。非正規というのは、非正規と言われている人たちの立場から見たら、自分たちはまともな労働をしてないように位置づけられているようだといった意見もあったりしたように、過去の経過は、私も知らないところありますけれど、そういうふうに「非典型」と使ってきた経過はあるんですね。だけど、私はこの数年間、そのように自分で使ってきていながら、また、この1~2年はちょっと違うなと。「非正規」というふうに位置づけることによって大きな格差を生むことを当然視するような状況があったのだからこそ、これが非正規とされている事実を率直にそのままあらわしていかなければ、おっしゃったように曖昧な、まるでまともにあるように見えさせながら、実は大きな格差を前提としてしまうということを、我々自身が是認することになるかなと。したがって「非正規」という言葉を私は個人的には残した方がむしろ問題が鮮明になるという気がしています。
山口委員
私は橘木先生の御発言に注目をしたんです。しかし、その前提として、私はここの専門調査会でも申し上げましたが、一体女性は仕事を持つべきだと、そういう方向を奨励しているのかどうか、その辺がはっきりしてないというような趣旨のことを私申し上げたと思います。それで第2次基本計画を見ていますと、「多様な選択を可能」にするという言葉を使っているのは、第10番目の分野の教育、主として文科省が所管するところなんですね。
 そうしますと、この基本計画の中で、今日専門調査会で議論しています雇用の分野の3のところと5の職業生活、地域生活、両立、そのあたりだというふうに私は思うんですが、辞めるなという前に、実際にこの社会が労働不足になってきて、女性の手が必要なんだということはだれもが理解していると思うんですが、そこがはっきりしてない。多様な選択ということになりますと、この10のところも書いてありますが、学習だとか、いろいろな項目を挙げていて、その中で御自由に選びなさいよということで、この辺が完全にミスマッチだと私は思うんです。ここで新たな方向を出さなければいけない。それは女性も仕事を持ち、自分の生活をしていく、その自立、これこそ奨励すべきであって、そのために子育てなどで仕事を中断するということ、そのものが問題で、これは社会で責任を持たなければいけないという風潮ではあると思うんですね。この辺をこの専門調査会で明確にすることはできないのか、この基本計画にしばられてだめなのか、その関係が私は大変気になります。それで自立ということは、女性問題をやっているうちでは、最初の元の議論ですから、その辺を上手にしていかなければいけない。結果として中断をせざるを得ない、ここが大きな問題であったので、橘木先生がおっしゃるように、中断するなと。でも、しない環境を作らなければならないと思っているので、そこを私は、この「はじめに」のあたりに出たら良いというふうに思っております。
古川委員
簡単に申し上げますが、会長がおっしゃった正規・非正規についてはそのとおりだと思います。と申しますのは、国とか公という立場から、政策を展開する場合でも曖昧だとなかなか充実できない。正規の場合は民間とかそれぞれに任せても良いけれども、非正規こそ国とか公がどんどん力入れていかなければいかん。そのためには明確でないと力の入れ方が非常に難しい。そういう意味では全くおっしゃるとおりだと思います。
 それから、辞めるなというお言葉、これは一つの示唆だとは思うんですけれども、その前提には安易に辞めているのか、本当に辞めたくて辞めているのか、あるいは巧妙に辞めさせられているのか、その辺がどうなのかということもありますので、辞めるなというふうなことをまず言うということについては、その辺を少し考えないと、少し慎重にならないといけないかなと。一つの御示唆だとは思いますけど、そんな印象があります。
鹿嶋会長
橘木先生のは私は面白いと思うんですが、ただ、私どものこの報告書の中で、多様な生き方をとにかく選択するという男女共同参画社会の基本的な理念の中で、辞めるなというのはもちろん大事なんですけれども、そこで強く言って良いのかどうかというのは私も疑問持っているんですね。もし、やるとすれば、とにかく機会費用が高いですから、辞めることによる経済的ロスといったようなものを客観的に並べるのは良いと思うんですけれども、辞めるなという強いメッセージまではどうかなというのが私の判断なんですけれども、どうでしょうか。ほかの先生方の意見もちょっと聞きたいのですけれども。
神野委員
私、早めに失礼することもあって、また、あまり参加しておりませんでしたので、抽象的になるかもしれませんが、私たちが物事を改革していくときには、やれることというのは現状を部分的に否定するということですので、突拍子もなく現状を否定して、白地に絵を描くということはできないとは思うのですけれども、少なくとも方向性みたいなものは、そこの行間から読み取れる必要があるだろうと思いますね。
 私は教育や訓練の問題をやる場合に、まず、どういう教育訓練体系を想定しているのか。つまり、例えば北欧でいけば、いつでも、だれでも、どこでも、ただでという学校教育と成人教育が二本立てになってからまっているわけですよね。そこの中で男性も女性もすべて、どこにいようと、ただでもう一回やり直しがきくというシステムができていると。これは二本立てになっていてできていて、そういうシステムをまず体系的に、つまりどういう教育、職業訓練体系を想定するのかというのが一つですね。
 それから、もう一つは、そういう体系を組んだとしても、それに参加できる条件を保障してあげる。これはセットで提案していかないと、労働市場に対しても、先ほどの非正規・正規じゃありませんけれど、参加できる条件が保障されてないわけですね。片一方で家事や、つまりアンペイドワークに引っ張られながら労働市場に参加しなければならない人と、全くフリーになって参加している人がいるから、労働市場が二極化するので、その条件を保障してあげると。教育制度を作っても、そこに参加できる状況を保障してあげなくてはいけなくて、これは割と私の見ている方向などではきめ細かにできているわけですね。ごく、例えば短時間、母親が再訓練に参加するための時間だけきちんと預かってくれるシステムとか、それはセットになってできているわけですね。
 どうも日本の場合には、教育と職業訓練の体系が、さっきの最初の方からいうと、分断されることがあって、全体を読むときにどういう方向を目指しているのか。それから、民と官の問題も、産業構造が極めて激しく動くときには、今までの日本のような企業内職業訓練とか、企業内の訓練によって労働市場の能力に対応させていくというのは限界があって、しかも売買で買うというのにもかなり限界が出てきて、そこを突かれているのではないかという気がするんです、産業構造がうまく転換できている国と比べると、そこは考慮していかなくてはいけないのではないかと思います。
 あともう一つ心配なのは、今、北欧でコンサーバティブが強くなった。向こうのコンサーバティブは日本のようなコンサーバティブではなくて、市場原理を否定してニューレーバーだといってどんどんやっているコンサーバティブですから、政策的には福祉は充実する方向に動くのですけれども、一つだけ、私が見習わなければならないと思っているところを今手をつけようとしていて、職業訓練と学校とか体系立てられていて、成人学校というのは地方自治体に義務づけられています。義務づけられているというのは、高校まで出てその上で労働市場に参加しなさいというふうに政府は要請しているので、高校出ても就職ができなかったときには、成人職業訓練校の方にただで行けることになっているわけです。今、コンサーバティブが政権とって、まず最初に着手したいと言っているのは、御存じだと思いますが、成人学校を減らすと言っているんですね。これはなぜかというと予備校化してしまっている。予備校化してしまっているというのは、医学部などに行くのに高校で一定の成績を上げてないと取れないものだから、その成績のない人が、本来は高校出ても就職がないときにできるという施設が悪用されているというので減らすと言っているんですね。
 そんなことやったらだめだというふうに、割と彼らは理知的に行動する国民なので、揺り寄り戻しが必ず来るから心配ないというふうに私の知人なんか言っているのですけれども、私たちがかなり遅れている教育と職業訓練の組み合わせのところが多分一つの参考になるモデルが揺れ始めると。ただ、その参考になるモデルは、かなりこの激しい重化学工業化から大きな構造にうまく対応できたシステムであると。そういうユニバーサルにアクセスできるシステムが、つまり女性だからどうこうということではなくてすべての人に保障できるシステムがちゃんと女性をも救っていくということになるということと、もう一つは、参加を、そこに保障制度を少し組み合わせてメッセージを入れておかないと、こういう訓練体系が必要だといっても、忙しくてそこには参加できない人がたくさんいるわけですね。24時間パートしないと子ども育てられないという人は再訓練とか何とかと言われても、とてもじゃないけど、余裕がないし、そういう参加保障こそが逆に労働市場の分断化なども救っていくということになるのではないかと思いますので、これを見ると割と全体像の図柄が見えにくくなっていて、一つの提案としては良いと思いますので、ここから少し将来の目指している方向性がメッセージとして伝わるような書き方が合意できれば、方向はこうなんだけど、とりあえず私たちは現状の仕組みや何かを前提にして、ここをこう変えていくべきだということが分かるような提案になっていると良いのではないか。あえて、これは反対するものではありませんが、メッセージが伝わればということです。
鹿嶋会長
確かに将来目指すべき方向性という大枠での議論は希薄だったような気もしますし、今、先生おっしゃったような企業内訓練に限界があるのではないかというのは、矢島さんが用意してくれたこの暫定版、参考2ですけれども、5ページなどを見ますと、パート・アルバイトの教育訓練市場「○」が全然ついてないんですね。ですから、こういう人たちが増える中で、企業内訓練は一つのOJT、OFF-JT等々は限界が来ているのかもしれません。そういうところを多少強調しておく必要があると思います。
 橘木先生とお二人から出た大変大きなテーマなのですが、ほかの方々の御意見も、時間の関係で、まず橘木先生の中断を前提としない働き方、これについて、皆さんの御意見、この短い時間の中では必ずしもまとめまではいきませんが、御意見だけお聞きしたいと思います。
袖井委員
大変重要な御提案で、私も個人的には橘木先生の御意見に賛成なんですけれども、ただ、非常にこの辺は慎重でなければいけないのは、男女共同参画会議へのそういう強い反対意見を出していらっしゃる方の本などを見ると、働けイデオロギーとか、専業主婦蔑視だとか、そういうのがすごく強く出ているんですね。有名な大学の教授がそういうことを言っていらっしゃったりするので、辞めない方がメリットがあるということは良いですけれども、その辺の書きぶりは慎重にした方が良いと思います。
神田委員
私はこれは職業に重点を置いたというメッセージが物すごく強いと思います。というのは、例えば言葉として「無業者」という言葉を使いますよね。この無業者というのは職業を持ってない主婦なんかが入ってくるわけですね。そういう言葉遣いなどを見ると、能力開発といっても、職業能力の開発に非常に重点を置いている内容だと思っております。例えば市民活動なんていうのは出てくるのですけれども、資料2の一番下の緑のところですけれども、「就業・起業や地域活動への参画」。それからその次の横は、「家庭(子育て)・地域活動経験をいかした職業能力開発」、こう来るんです。だから、「職業」というのが物すごく強い報告書に多分なるだろうと思っています。
 私自身の考え方は別としまして、現実地域で活動している人たちというのは大変大きな力を持っているわけですね。男女共同参画の地域を作るという、その層についてどういうふうにとらえるかというのはここからはあまり出てこないで、「無業者」というような形で位置づけているということは私は問題だと思っています。これは、今、袖井先生がおっしゃったような意味だけではなくて、現実にその活動をしている層の力は大きいわけですし、きちんとそこのところは位置づけるようなやり方が必要だろうと。
 そこで、もう一つ、私考えているのは、これは市民活動か、地域活動か、職業かという二者択一的な感じがするんですよ。私は職業持っている人も地域活動をちゃんとやらなければならないと。そういう両方やるという観点からの能力開発、あるいは条件整備というのをここに入れていく必要は私はあると思っています。
鹿嶋会長
再チャレンジという定義にはNPO活動、社会貢献活動が当然入っていますので、おっしゃるように、確かに職業がちょっと強いというイメージありますかね。あと、「無業者」という言葉についても、まだ、これはあらあらですので、この言葉について再検討する必要あると思っています。
神田委員
現実に地域で力を持っているのは、仕事をパートで働いている人とか、非正規雇用だったりする人たち、主婦だってするわけです、専業主婦だったり、その層のことがここの中ではちょっと入ってない。また、評価もされてないというふうに思います。
鹿嶋会長
神野先生、今日途中で退席なさるので、神野先生から問題提起あった教育訓練の方向性、それについて皆さんから御意見があれば御指摘いただきたいのですが。
神野委員
今の神田先生のお話に関連して言うと、これは企業内訓練でも同じことなんですけれども、社会的に言えば、現在の労働市場が要求している職務能力に合わせて人間を育成し訓練するという養成と、本人が内在する能力をいかに発揮していくのかというのは似ているようで違うんですね。こちらの企業内で、私が教育をやったことからいっても、しょっちゅう養成が短時間のうちにくるくる、くるくる変わりますので、むしろ企業内でも両方やっておく必要があって、というのは、人間的に能力を高めるということが思わぬ新しい革新を呼び起こしたりするわけで、不必要だと思われることでもやっておいて、その本人の、人に着目してその人を伸ばすのと、職の能力を伸ばすのと二つあると。
 それから、お話のように、人間として社会に貢献するということを考えただけでも、それは労働市場を通しただけではないはずですので、労働市場以外、労働市場を通さなくても他者のために大きな貢献するというようなことの方がむしろ大きいのかもしれませんので、労働市場の能力に限ってやる必要はないと。
 それから、橘木先生のも分かるような気もするんですが、私の考えでは、いつでもやり直しがきけば良いのではないかと。中断をすると。それはしょっちゅう男性や学生でも中断しますよね。割と日本のシステムだけが中断禁止みたいなところが多くて、普通の学校教育などでもバイパスしてから大学へ行くというのが普通のような国も多いので、ただ、おっしゃっているのは、そこでの能力が持続した方が高まるという意味なのか。そうでなければですね……
坂橘木委員
私の言いたかったことは、辞めるなというのはこの報告書で書く必要はないんですが、辞めたときに、これだけのハンディがあるのだということは示すと、それで十分だと思うんですよ。それに対して、ここでどんな再チャレンジの方法があるか、訓練をどうしたら良いかということをじゃんじゃん促進しているということは現実を見れば、そういう再訓練がうまくいってないということを我々が認めているということじゃないですか。だから辞めないという選択肢もありますよと。辞めない方が、あなたの熟練が陳腐化する可能性は低いですよということぐらいは言っても良いのではないかというのが私の言いたかったことで、辞めるなとまでは言いません。
神野委員
私、職務分析士の資格持っているんですが、職務分析というのは、その職務が最高度に達成したときに必要な能力を基準に分析するんですね。圧倒的に育児の方が高いです。大会社とか、大きな組織の管理職なんて高くないでしょう。つまり書類などの整理、パソコンで打って、職務分析したって、そんなに大した仕事じゃないわけですよ。そこへいくと、人間を例えば育てる。これはだれがやるかにしても、最高度に達成しようと思ったら、えらい職務評価高いですよ。
坂橘木委員
でも、それが子育てで得た知識が社会で、企業で、どれだけ役立つか、また別の問題が出てくる。
神野委員
いや、だから労働市場の話と、私たち社会にとって、どういう労働が必要かという話とまた別問題で……。
鹿嶋会長
今の話の延長で、この資料3の後ろページの3の(2)子育ての経験等の積極的評価という実は項目がありまして、皆さんからもこれはぜひ御意見いただきたいのですけれども、再就職を目指す専業主婦260万いるわけですね。この人たちは実は仕事を持つ以前の問題として、何をしていいか分からないというふうな、そういう状況もあると。そこに「マインドアップ」という言葉が出てくるのですけれども、キャリアアップに対してマインドアップという言葉。これは国立女性教育会館等々でこういう言葉をお使いになっているということで、この中に入れたのですけれども、その中で複数業務の同時処理能力、これは本当にここまで書いていいのか、今の橘木先生、神野先生のお二人の意見の延長線上でここにありますので、この趣旨に沿った御発言をお聞きしたいと思います。
 どうなんでしょうか、これが積極的に評価されれば、中断があっても、かなり就職しやすくなってくるんですが、実はそこがないということがあるわけですね。現役時代の能力がさび付いてしまうと、専業主婦経験というのは、非常にマイナスに評価があって、ポジティブな評価が果たして本当に出る可能性はあるのだろうか。
神野委員
私は、橘木先生とそんなに変わってないと思うんですが、そのときでも育児みたいな質の高いサービスをだれかが担わなくてはいけない。それを社会的に担うのであれば、ちゃんとそこのサービスを提供しないと、そういう保障してあげましょうという参加保障と言ったのはそういう意味ですので、同じことなのかもしれませんが、中断しない方が良いというよりも、中断しなくてもいい参加保障というのは、常にこういう再訓練とか、中断してもやり直しをしていけるということをも可能にする条件である。その整備を整えるということと、そういう意味で参加保障などの政策と結びついた教育訓練体系だし、教育訓練体系そのものもすべてユニバーサルにアクセスできるような体系として整備されているというメッセージがどこかで伝わった方が良いかなということを申し上げただけです。
林委員
中断云々の問題で、私も先ほど発言したのは、中断すべきであるとか、ないとかというよりも、中断しても損しない仕組みがちゃんとできていたら、いくら中断しても良いんだけれども、今は中断するのは、女が子育てをしなくてはいけないから中断せざるを得ないというふうな大前提があってそうなっているんですね。そこのところは、したことが損をしない仕組みというものを作っていけば、私もそれはそれで何の問題もなく、スウェーデンやデンマークなどでの経験によると、いつ中断しても、私であっても夫であっても、だれでももう一度チャレンジできるようになっているわけですから、保障されますから、それはそれで良いというふうに思うんですね。
 もう一つ、先ほどの子育て経験とかがちゃんと評価されているか、されていないかということについて言うならば、されていないんです。というのは、それを担っている保育労働者の価値がどのように評価されているかというと、それもまたとても低く評価されている。現実にそれを職業として担っている人の価値も低く評価されているわけですから、それを職業としていない同じようなことが高く評価されているはずがないので、ここのところは現職の低過ぎる評価や処遇についてということが前提になるとなかなか高い評価などできない状況に今あるなというのが一つあります。
 もう一つ、神田先生がおっしゃったことで、地域のいろいろな男女共同参画にかかわる運動なども専業主婦やパートの女性たちがたくさん担って運動になってきていたのじゃないのとおっしゃることは私すごくよく分かるんですね。私自身がずっと職業をして生きて40年来て、地域にほとんど、それが無意味だと思ったこともないし、かかわりたいという思いがずっとありながら、そのことにかかわれなかったということと、ここにかかわってきた人たちも働きたくないからとかということではなく、そこが勝手に分断されてしまったという悲しい状況が私はあると思うんですね。そこはやっぱり認めて書いておかないと、どちらかが大事でどちらかだけになっていけば良いようなことをもし私たちが目指しているような印象を与えるとしたら、それは私自身も本意ではないというふうに思うんですね。
 具体的なところに書けるかどうかは別としてメッセージとしてはどこかに分断されてきた悲しさみたいなものは書いておかないと、目指すものが見えにくくなるかもしれないし、誤解されるかもしれないという気がします。
鹿嶋会長
林委員の言われた前段の部分ですけれども、その議論は育児休業の取得者への評価の問題とも絡んでいまして、最近は育児休業取得者のマイナス評価の問題があって、そこをどう展開していくかというのが大きな課題でして、ここで書かれているのと似たようなことの議論があるわけですね。要するに子育て体験が企業の例えば商品開発にいかせるとか、子育て経験の積極的評価についても、そういうことで文章を変えてもらって、これは企業に意識改革を促すとか発想の転換を促すとか、そういうようなことで処理するしかないのかなと思っているんですけれども、もうちょっと具体的に、例えばキャリアパスのような制度が今後できる可能性があるのか、そういうことで何か我々提言できるのか、そこまで具体的なものがあれば良いのですけれども、林委員はどうですか。中断した場合のキャリアパス、組合として何かアイディアあるんですか、そこのあたり。中断を無理しないと。そこでどういったシステムづくりが必要だとか、そういうのはありますか。
林委員
システムづくりというのは、賃金制度のあり方とも関係してくると思うんですね。あとはまさに非正規という再雇用とか、再就職という形態しか道があまりないということで、結局年金制度とか様々な社会制度に組み込まれない人間として生きていかなければいけないということになっているわけですから、一つだけの解決策というのは私は言えませんけれども、どのように働いても社会保障の仕組みの中に組み込まれていくことが一つ、賃金制度も今のように、見えない能力に対して、あるいは何年働いてきたからということに対する賃金の在り方みたいなことではなくて、まさに職務ということで評価していくというふうにすれば、もう一度仕事に就いていっても、それはどのような場所であっても、同じ場所であっても、別の場所であっても低く評価されることはないわけですから、そういうものとの関係であると思います。
 ここでは教育とか、職業訓練とかということで言っているわけですから、今、私が言ったようなことがぴったり当てはまりませんけれども、訓練とかというならば、神野先生がおっしゃったような、いつでも、どこでも、だれでもが受けられるような再教育、再訓練というものが仕組みとして成り立っていれば良いわけで、今は厚生労働省がやっているのも、あまり近くにはないんですよね。北欧のところなんかは本当に住んでいるすぐ近くにあるんですね。もう一度勉強し直したいことがある。それから、そこで紹介されたところに行って、だめですと言われたら、何の力が足りないのかというふうにきちんと言われたら、もう一回そこで訓練を受けて、その力を持ったら雇ってくれるんだねというふうにして、もう一回差し向けていくという保障もあったりして、そういうことにつながっていくのかと思うんですけれども。
坂橘木委員
北欧でそういう訓練をやるとき、だれが費用負担しているんですか。
神野委員
税金です。地方自治体ですけど。
坂橘木委員
税金ですか。ということは企業は関与してない。
神野委員
していません。それどころか、例えば職業訓練手当のように、失業して訓練を受けているときの生活費は今75%ですが、それは政府が支払いますので、OECDはそれは失業者だと言って、OECDの失業率とスウェーデン政府が発表する失業率の差が3%あるわけですが、それは雇用している会社が賃金を支払っているのではなくて、政府が支払っているからだというのがOECDの見解で、これは定義上失業者だというと、いや、そうじゃないと、スウェーデン政府は言っているので、今、OECDで二つ出していますか、両方併記して出しています。
鹿嶋会長
今回は論点がかなり多くていろいろ中断しがちなんですけれども、すいません。もう一度、お聞きしておきたいのは、資料3の4にかなりこだわっているんですけれども、「無業者」、これは表現は変えるとして、佐藤博樹委員が今日はお休みなんですけれども、このあたりの実態、国はどんな役割を果たすべきか。そもそも無業者のストック情報が不足している。把握する良い方法があるか。これはないんですよね、調査官、目下。ここで知恵があれば、ひとつ皆さんからいただきたいのですが、出なければ、また佐藤先生にここはもう少し聞いてみようと思っているんですけれども。
山口委員
当然無業者のストック情報、無業者がどのくらいいるかということなんですか。
鹿嶋会長
無業者どのくらいいるかということは大体分かっていますよね。
山口委員
数年前に出ましたね、統計で。
鹿嶋会長
どういう状況かということですね。それがなかなか実態把握ないんですね。
栗田調査官
現状におきましては、例えばハローワーク等に求職に行くという段階で、前職の状況ですとか、そういった情報を御自分で申告すると。そこで把握されるということなんですが、求職活動をしない方については、どういう状況にあるかということが分からず、そういった状況が分からないがゆえに、職を持ってない方に対してどういう対策を練らなくてはいけないかといったところがなかなか考えづらい状況にあるという問題意識でございます。
鹿嶋会長
このあたりの文章もとにかく少子化がかなり深刻だというのは目に見えているわけですから、女性をきちんと位置づけるという文脈の中で企業にも訴えていく必要性あるかもしれませんね。そして同時に能力開発をどこがやるか。
神田委員
その点に関して、私、学習への参加保障ということは非常に重要な論点だと思うんですね。そして参加保障という観点から、国・都道府県・市町村の関係というのは位置づけられなければいけないと。都市は非常に良いんです、どこへでも行けるんです。だけど、地方になると、さっきお話があったようになかなか近くにない。だからないところでは、どこがやるかというと、公民館がやるとかハローワークがやるとかいろいろあると思うんですが、その観点からこの関係が位置づけられるべきだと思っております。
 それから、ついでに言ってしまいますけど、官-官……
鹿嶋会長
今、先生が言っておられるのはて資料3の1の②のところですか。
神田委員
そうです。それが今の参加保障と結びつけてここのところはとらえるべきだ。もう一つ、官-官というので、いろいろダブるんですけれども、私は政策の推進とか、政策の具体的な実施というのと、例えば具体的に研修を行うとかというのは分けるべきだと思っているんです。だから、私どものところなんかは、政策を具体的に実施していく、研修を具体的にやるんですね。同じように内閣府でもやるわけですけど、その場合に、私はあくまでも政策をどれだけ説明し浸透させるかということではないか。そこら辺をきっちり分けないと、同じことをやっていても効果が上がらないと思っています。分けて連携するというやり方は必要だと思っています。
鹿嶋会長
ジョブカフェは厚労省と経産省どこか違いあるんですか。同じことをやっているわけでもないんだろうと思うけれども、例えばジョブカフェは。これは後でも。
 今、おっしゃるとおりですよね、そういう趣旨は大事ですよね。
神田委員
はい。
勝又委員
無業者の把握の仕方で、ちゃんと数値が出てくるかどうか分からないですが、厚生労働省がやっている国民生活基礎調査は世帯を把握するという形の調査になっていますので、例えば世帯の世帯員が就業しているかどうかとか、収入があるかどうかで見ていくと、無業者をどういうふうに位置づけるかということもありますけれども、就業しているか、していないか、収入を得ているか、得ていないかということによって類型化ができます。例えば国民生活基礎調査の中で最近行われているのは、高齢者世帯とか、2人の世帯とか、夫婦だけの世帯とか、そういう世帯類型をして無業者が世帯員に含まれる生活実態を出していく方法が考えられます。
 いろいろな政策において、個人を見ていくというよりも、世帯において個人がどういう働き方や働いていない形になっているかということを見ていくことが非常に重要になっていると思います。私が今やっている「障害者生活実態調査」というのがあるのですが、それも障害者がいる世帯をとらえて、障害者がいる世帯で、もし障害者が働いているとすれば、どういうような類型なのかとか、障害者がいたとしても、働いていない人はどういう状況かを見ていく上で非常に有効なのです。そういう意味で無業者を把握するというのは、世帯をとらえた調査を労働の方からだけではなく見ていく必要があります。今ある調査を利用して、必要があれば新しい問いを調査票に入れさせていくと毎年やっているわけなので、よいと思います。できれば世帯の実態を把握していくための特別調査みたいなものをそれに加えていく努力はできると思います。
 それから、もう一つ、子育て経験の積極的評価は、評価する者を育成する必要がある。つまり、そういう子育て評価、子育て経験というものを大変積極的に評価する、そういう評価者が増えれば、それらの経験が評価されていくことがあると思うんですが、恐らく頭で分かっていても、子育て経験や地域活動を本当に評価するような価値観が、例えば上司であったりとか、評価する人間の側に、(本当にそれはすばらしいことなんだ、必要なんだという気持ちが)あるかどうかは分からないです。子育て経験というものを積極的に評価する立場の者を育成すること、評価する人たちにそういう視点を与えるという働きかけが必要だと思います。
 評価されれば、それ自体がいろいろな形での、例えば企業においては、昇格とか昇進に関係するかもしれないし、地域社会においては、その人を何とかの長にしてみようとか何とかのリーダーにしてみようとかという形につながっていくかもしれないのです。私は評価する者の育成も重要ではないかと思います。
袖井委員
先ほどの鹿嶋さんのおっしゃったところにちょっと戻るのですけど、「無業者」のところですが、先ほどの矢島さんの御説明にあったように、パート・アルバイトは就業訓練が全然ないわけですね。ですからここは無業者だけでなくて、不安定就労の人も入ると思うので、あまり無業者だけにしない方が良いと思います。パート・アルバイト・派遣の人たち全部含めないとここはまずいと思うんですね。
 それから、先ほどからいろんなデータ、無業者のストック情報とかいろんなこと出ていますが、どうしてもよく分からないんですよね。私、大分前に女性の年金検討会の座長をやっていたときに、いわゆる第3号被保険者の実態というのが分からないんですよね。第3号被保険者というのは、103万の壁とか、130万の壁で働いているのですが、その人たちどういう状況で働いているのか。一体どのぐらい稼いでいるのか、厚労省にデータはないんですよね。この辺で統計の整備とか、何かそういうことをちゃんと提言しておかないといけないなと思いますけれども、本当に闇の中なんですね。
鹿嶋会長
統計の整備については、この審査会で特に男女別データについても全くとっていませんので、文科省なんてほとんどないんですね。ほとんどというのは失礼かな、かなりなかったので、少なくとも発表していただいた限りでは、それは改めてこの中で言っていくつもりです。
 資料3で、まだ議論してないところが多々ありまして、5と6について、あるいは官-官、官-民、これは神田先生から指摘もありました官-都道府県-市町村との関係、このあたりも含めて皆さんから御意見をお聞きしておきたいと思いますが、どうでしょうか。5、6がなかなか難しいんですよね。この中で意見あるかと言っても、なかなか難しいテーマですが。
神田委員
ストレートにここではないんですけど、今まで話し合われたことでちょっと意見があります。子育てやなんかの評価するときに、今、子育てだから評価するのでなくて、子育てがどういう力を育成したかというふうに中身を分解しないと、これは企業の評価には入っていかないんですね。それをきちんとやらないといけないと思います。だから単に子育てをやった、地域活動やったから評価しますというのではないと思います。それがはっきりしないと、能力開発で何が必要かということが出てこないんですよ。特に地域の活動でどういう能力を育てなければならないかなんていうのは、その分析がなかったら出てこないです。私はそう思います。
 それから、先ほど来の職業キャリアに非常によっていることの一つの証明として、(2)の子育てや地域活動経験をキャリアにつなげるというときに、これは職業キャリアなんですよね、はっきり言うと。そこら辺、丁寧にやらないと、これは職業万能みたいな報告書になってしまうと思います。
山口委員
そこが私も問題にしているわけです。どういう方向性を選ぶかということで言っているわけです。ちょっと関連して、私も先ほどから(2)のことは言いたかったのですが、子育てや地域活動経験、大体子育て終わった女性ですけれども、今までの調査で言えば、本当は教育、消費者運動だとか福祉だとかということが子育て最中ないしは子育て後の人たちがやってきた。今、一番統計でいうと環境問題なんですね。それであと福祉、教育というふうに順番が変わってきているのではないか。
 それで、どういうことをやってきたかというと、こういう経験は、職業的だとやはりパートタイムが多いです。その場合、能力をいかすというよりも、ちょっと働けるという感覚でやってきたと思うんですけど、ここはもう少しグレードの高いものを要求されているというふうに思うんですが、結局子育ての経験をいかすということになると、企業の方としては、非常に価値が出てこなければやらない。結局何を女の人たちがやるかというと、起こし業ですよね、起業。その起業というので数人の人たちでいろいろ開発していく。本当に小さな小さな仕事ですよ。
 これは前にも鹿嶋さんともお話したことなんですが、この女たちが結局大企業とかそういうところに就職できない場合、自分たちでやるときには起業をすると。しかし、私は大きく見ればすき間産業だと思うんですよ。すき間産業というのは、本当に成功するということはまず難しいですよね。しかし、行政としてやれることは何かというと、この起業で女の人たちのいろいろな経験がいかされる様々な可能性があるというならば、そこで公共がどういったサポーターをしていくか。起業としてこういう分野があるよと。これに対しては助成金がこのくらいありますとか、こういう活用がある。こういう女性を育てていくというやり方があると思うので、今後、大企業だけでなくて、いわゆる起業を奨励するならば、行政としてその辺をもっと情報提供していく必要があるというふうに思います。
 それで、女の人の地域活動はどうかといったら、PTAで育つと一時期言われましたね。その人たちがボランティア活動をやる。最近はパートタイムで働くためにボランティアがいないんですよ。私の市川記念館なんかもいろいろ政治とかいろんな講座やっていましたけれども、専業主婦がいないから講座数が減ってきましたよ。成立することすら難しい。じゃあ、働いている人はどうかといったら、土日まで、当時から比べたら休めるのに来ないですよ、働いている人たち。夜間も来ない。つまり講座やなんかで人を育成するのはとても大変です。NWECの方でおっしゃっているマインドアップ。本当に難しい状況に社会は変わってきています。
 それで、今、家庭の女性の人たちに何が一番技術的にできるかといったら、ITですよ。パソコンをどうやって在宅でできるかということだと思いますし、そういう奨励事例なんかも相当出していったら良いと私は思います。特に私は起業に関しては、奨励する一方で、すき間産業でアップアップしている女性の姿を思い出して仕方がないんです。
鹿嶋会長
職業万能のようなイメージとか、厳しい指摘もあったのですけれども、その辺はバランスよく書きますので、それは御心配なくと思っているんですが、ただ、仕事のウエイトが高まることは確かですので、それだけは御了解いただきたいと思うんですね。再就職260万人、この人たちもいわゆる潜在有業率を見てもどこか仕事したいわけですね。そのときのスムーズな装置をどう作れば良いのかというのが今回の大きな課題ですので、そこにウエイトがかかることは確かです。
 もう一つ、固定的な性別役割分担を是認するような女性がNPO、女性が地域活動というふうなことも、また、これは男女共同参画社会の形成という点から非常にゆゆしきことですので、それも感じさせないような地域のかかわり方、そうだとすれば、男性も当然かかわる必要があるわけで、ですから、そのあたりをバランスをとりながら書きたいと思っていますので、そのあたりは御了解いただきたいと思っています。
 と同時に、もう一つ、皆さんの方で御意見があった場合に、ペーパーをこのあたりは、こういうふうなものが良いのではないかというペーパーもぜひいただきたいと思うんですね。文章としてきちんと体裁調ってなくても良いですが、例えば勝又委員のさっきの指摘などもペーパーとして出していただければ大変ありがたいし、神田先生もぜひそのあたりでペーパーを頂ければと思っていますので、よろしくお願いします。
 まだ、御意見もう少し伺えればと思いますので、もし指摘があればどうぞ。
大沢委員
2点なんですが、皆さんが御指摘された点と同じなんですけれども、今後の労働市場をどういうふうに考えていくのかということが、この報告書で非常に重要になってくるのかなというふうに思いました。今、中途採用が非常に増えていて、パートの求人もかなり増えてきてパート賃金も上がってきているという、だから問題が解決されているというわけでは全然なくて、実態としては男性の方も非常に流動化した労働市場になってきているということを認識することも必要かと思いました。
 そういう中で、労働市場が流動化して構造変化に対応していく。また、企業の方も終身雇用制度で雇用を保障できない、全員に対して雇用が保障できなくなっている中て、能力開発をどう考えていくのかというところをイントロの部分で書いていったら良いのではないかと思います。
 ヒアリングで、黒澤さんのヒアリングだったか、ちょっと覚えていないのですが、全体的に企業のOJTがかなり減っているということ、それから個人が学習する時間も減っているというようなことがあって、全体的に日本として今能力開発に割く時間とかお金とか、企業のかかわりが減っている中で、人材がこれからの日本の経済発展にとって不可欠になっていくという、そういう問題意識の中でこの報告書を書くのだというようなところのイントロがあったら良いのかなと思った点が一つです。
 もう一つの点は、林委員がおっしゃった職務に対しての給与体系というお話だったと思うんですが、能力ではなくて職務。多分ここら辺が今後の焦点になっていくのではないかなと私は思っていて、日本の場合、職能給と職務給が混在しているというところに労働市場の分断とか、いろんな問題があったわけで、それをどちらの方向に向いていくのかというのはまだ全く見えない状況ですけれども、雇用が流動化していく中で、最終的には職務給の方向に行くのではないかと私は個人的には思っています。
 最後の点で、二つと言ったんですけど、三つ目ですけれども、無業者の能力開発ということで、佐藤先生のおっしゃったこととちょっと違うのかもしれないけれども、ここは非常に重要な点ではないかと思います。例えば、無業者の人の中で、今は子育てをしているけれども、条件によっては働きたい。どういう条件かというと、両立可能な環境があれば働きたいという人がいるんですね。これが6割ぐらい。多分ここら辺の、両立可能性というのは一体何を言っているのかということが分かると、その環境が調えば、能力開発にもっと参加したいということですので、それが非常に重要かなと思った点と、勝又委員がおっしゃったように、最終的には日本社会そのものが仕事に対するウエイトというのは非常に高く、無償労働に対して評価を低くした価値観を持った社会なのだということが皆さんの御指摘の中にあって、だから会社の中でも、そういう無償労働に対する時間とか価値に対して低く考えられているのだけれども、実際にサービス経済化になってきたので、そういう人たちを辞めさせてしまっているんだけれども、実はそういうところで能力が形成されているので、そういう人を活用した企業が伸びているという、そういう状況があるわけなんですね。
 そういう背後にある私たちの価値観みたいなものがここに問われてきているような気がしますので、それを報告書の中でどのように表現して良いか分からないのですか、もう少し砕いていくと良いのかなと思いました。3点です。
林委員
私、これをどこでどのように考えていけば良いか分からないことなんですけれども、今、職業能力、再教育とか生涯学習施策、そんなことをどうしていけば良いかという話をしているとき、私たちの周りにある労働の質というのでしょうか、その分野があまり訓練とか、再教育をしなくても済むような分野というのが物すごく増えているというのがありますよね。だから、非典型とか非正規といわれるような人たち、人はどんどんいるし、そこにどんな形でも良いと言われれば、仕事そのものはいっぱいあるんですね。そういう何もあまり訓練は大して要らないという分野と非常に強い専門性であったり、大きなマネジメント能力であったりという、本当に仕事だといって、そこを積み上げていくことに値打ちのあるようなものと両方私の周りにあるように、すごく強く感じているんですね。それはそれで、これからそういうものだとしていくのかどうなのか、そこが私には、この報告書がどういうところにターゲットを当てるのか、ちょっと私の中で分からなくなっている部分があるんですね。
鹿嶋会長
そこは物すごく悩ましい問題で、半日の教育訓練でも現場に出される人たち、請負者の中に随分いるわけですね。ですから非常に悩ましい問題なんですが、経済学の教科書読むと技術革新によってカバーしていくのと、機械化によってそういう労働を機械に任せるというのがあるのですが、これは実際はなかなか難しくて、そういうところに従事する人たちも当然出るわけですよ。
 この報告書は、そこまできめ細かに書きませんが、要するにステップアップする。より良い生活、より良い職業に就くための、充実度が得られる職業に就くためのステップアップということを前提にしながら、そのためにどう能力開発訓練すればということを、そういうような書き方にもっていけば良いと思うんですね。今の事細かな現状までとても書けないと思うし、それをもし書くとすれば、非常に周囲の状況も書き込まなければなりませんので、そこまでは無理ですので、そういう前提に置きながら報告書を作った方が良いのではないかと私は思っているんですけれども。
大沢委員
神野先生がおっしゃった地方公共団体などで能力開発をすることによってステップアップをしていく道筋を作るということになっていくのではないかと思うんですね。ですから能力開発の一つの官の役割としては、そこをもう一歩踏み込めるかということでしょうか。ヨーロッパの議論見ても非正規が増えることに対しての抑制よりは、むしろそこにいつまでもいないということに対して強調しているように思いますので、その点は非常に重要かもしれないですね、ステップアップということが。
鹿嶋会長
これは「キャリアアップ」という言葉を使っていますが、これは別に企業内でのキャリアアップだけではなくて、いわゆる非正規で働いている人たちのキャリアアップも当然だろうし、一方で「マインドアップ」という言葉も使っていますので、この言葉あたりに、今、林委員がおっしゃったようなことが代弁されるのかなと思っていますので。
山口委員
矢島分析官のこの報告面白かったのですが、この訓練の方ですが、もう一つ、資格ということが一つも書いてないんですが、一般的には資格を取りなさいと。そうすると職業上有利ですよと言われますが、私はどうも資格試験というのが、せっかくお金払って専門学校でやってもいかされていない場面がいっぱいある。夕べも、私テレビ見ていてぞっとしたんですが、やりたいことをやめて、調理師を取ったと。朝の朝食の配給の仕事に働いているけれども、何とそれを取ったために57銭きり上がらないと。ですから、私は資格制度もそれが有効に役に立つような資格制度が、女性の場合、無業でとか、主婦で何かしようというとき、資格があったら有利になると思えば、自分の学習自体にそういうこともやると思いますので、資格制度についても一言触れたいなと思います。
鹿嶋会長
難しい表現、これは需要と供給のバランスにかかわりますから、なかなか難しさがあるかもしれませんね。
矢島分析官
統計データの分析の資料では、女性の多い仕事ということで保育とか、介護とか、そのあたりの有資格者数と実際に働いている人の分析をしていまして、そのあたりは、また、加えて検討していきたいと思います。
鹿嶋会長
再就職条件で一番書くのは運転免許なんですよ、資格で。運転免許ではとても……
山口委員
仕事としていかされてないですよ。最近は女性の運転手多くなりましたけれども、本当に。
古川委員
神田先生がおっしゃった非常に職業に傾斜し過ぎているという御指摘はもっともだと思うんですが、ただ、政策の展開ということで考えた場合に、職業との結びつき、非正規職員とかいろいろ、職業との結びつきというのは非常に大事だと思うんですね。ですから私もさっきから、どういうふうな形で全体を整理するか非常に難しいなと思っているんですよ。だから全体を対応するのは非常に良いことなんだけれど、そのことよって、我々が提言したいことが薄まってしまうと何を言っているか分からんと。非常に立派なこと書いてあるけれども、あまり具体的になかなか難しいということにならないような点だけはちょっと御配慮いただきたい。非常に御指摘は正しいのだけど、具体的になかなか分散してしまったりするといけないと。職業との結びつきというのは非常に大事なこと、そこは忘れない方が良いのではないかという感じが致しますけれども。
池永調査課長
先ほど神野先生から御提言があった参加保障ということで、神田先生や皆様から、どこでも身近にあることが重要という御指摘がなされたり、訓練に出る際の生活保障や訓練に参加するための月謝といった費用が課題というような御指摘も出たと思います。、そういった参加保障の重要な要素として、何か御提案がありますでしょうか。神野先生からは、訓練所自体あるいは訓練機関の近くに託児所があることが大変重要だという御指摘もありました。参加保障にとって重要な要素は何か、というのが一つの御質問と、先ほど大沢先生と林先生がおっしゃったように、能力じゃなくて職務ということですが、それは能力というと、主観的になってしまうのに対して、職務といってこの仕事でこういうことが求められていることを客観的にすることによって、達成度などが評価しやすくなるという御趣旨でしょうか。能力じゃなくて職務とおっしゃった御趣旨を教えていただければと思います。
鹿嶋会長
私はさっき聞いていて、職務というのもちょっと悩ましいなということで考えていたんですね。職務の固定化によって非常に難しい問題がある。そこを突き破るには能力ですから、こういうことはどうなのか、個別の職務に応じてで良いんですかね。個別の職務に応じた処遇というと、身分の固定化というか、そういうのにつながりませんか。
林委員
処遇は職務に応じるべきだと思うんです。能力は固定化せずに伸ばすべき、開発すべきだというふうに思うんです。だから能力開発というのだと私は思っているんですよね。
鹿嶋会長
この場合、能力開発がテーマですので、そこはやっぱり職務ですか。
林委員
処遇を書くならば能力と書かない方が良いんです。能力は持っていても、発揮しない人もいるし、その能力とは違う仕事をする人もいるわけだから、持っているだけで、仕事上発揮しないものを高く評価して、それに処遇をしてしまったら、それこそ学歴別の賃金であったり、年齢別の賃金であったりみたいなものをまた認めていくということになってしまうわけですよね。本当にそうであれば、パートであっても、いろんな専門的な能力を蓄積した人であれば、もっとつけても良いものを、そこはそこでまた違う物差しを持ってきたりしているわけですよね。
鹿嶋会長
職務から職能への移動がないとキャリアアップできないわけですが、その前提になるのは能力なので、意欲、能力ですよね。となってくると能力でも良いのではないかと、まずいですか。
林委員
非常に潜在的な能力に対する処遇というふうな形になってしまうと、見えないから、どうも不公平感を感じてしまう若い人たちもいっぱいいたり、学んだ人たちの中にもいっぱいいるのはそういうようなところにあるような気がするんですね。
鹿嶋会長
調査課長いいですか、今の説明で。
池永調査課長
見えないものなので、そういう恣意性が入るということの御趣旨ですね。分かりました。参加保障で何か。
神田委員
場所ぐらいしか思いつかない。
大沢委員
参加保障は税金払っている人はみんな参加できるということですか。
神田委員
具体的にどういうふうに保障するか。
池永調査課長
費用の問題、また、場所の問題、託児の場などとの御指摘がありましたが、そういったところなのでしょうか。それとも何かほかにも指摘すべきことがあるのでしょうか。
勝又委員
結局知らなかったみたいですね。そんなことあったのみたいな、例えばインターネットだけでやったりすると、そこにアクセスする人しか知らないことになります。広くだれにでも伝わるような方法で知る機会を増やすということが大切じゃないでしょうか。
鹿嶋会長
大変いろいろな視点から意見が出ましたけれども、ありがとうございました。それで皆さんの御意見を会長預かりということでさせていただきます。更に御指摘があれば何日までにもらいますか。いつ頃までに。
栗田調査官
今週末までにいただけますと大変ありがたいんですが。
鹿嶋会長
今週末までに事務局の方にメールで入れておいてください。年内を目途に確定版を皆様方にお送りします。同時にこれはホームページでも公開するということを考えております。
 本日の審議はここまでとさせていただきます。事務局の方から連絡はありますか。
栗田調査官
お手元の資料6で日程を書いてございますけれども、次回の専門調査会につきましては、来年の2月14日(水曜日)の10時からこの内閣府の本府の5階の特別会議室において、本日御議論いただきました報告書の骨子を盛り込むべき論点などに基づきまして報告書案をお示しし御審議いただきたいと思います。
 その次の回、次々回の専門調査会につきましても、その資料に書いてございますが、3月16日(金)13時から開催を予定しておりますのでよろしくお願いします。
 本日、皆様の席上に次回と次々回のお知らせと出欠の御確認のペーパーを配付させていただいております。もしこの場で御出欠確定ということでお分かりになる方いらっしゃいましたら、事務局の私どもの方にお渡しいただければと思います。
 それから、本日の資料の取扱いでございますけれども、年末に皆様の方に確定版をお渡しするとともにホームページに公表というその議論のためのものということですので、内取扱いには御留意いただければと思います。
 それから、議事録についてでございますが、前々回15回の議論につきまして、資料4というふうにお配りしておりますが、こちらの皆様のチェックをしていただいたものでございますので、この形で公表させていただきたいと存じます。
 それから、前回16回の議事録につきましては、参考3ということでお配りしておりますので、こちらの方、お気づきの点がありましたら御連絡いただければと思います。
 そのほかに、本日資料としては御紹介しなかったのですが、議事要旨につきまして、資料5で前回の専門調査会の議事要旨を作ってお配りしてございます。それから参考4として、今月の8日に開催されました第3回検討会の方の議事要旨を配付してございます。今日いろんな御意見いただいたのですが、そちらの方も御覧になって、また、なお追加で御意見等ございましたら、事務局の方にお知らせいただければと思います。大変時間的にタイトなお願いで恐縮ですが、よろしくお願いいたします。
鹿嶋会長
それでは、これで第17回の会合を終わります。本日はどうもありがとうございました。

(以上)