監視・影響調査専門調査会(第13回)議事録

  • 日時: 平成18年9月13日(水) 13:00~15:30
  • 場所: 女性と仕事の未来館 第2セミナー室
  1. 出席委員:
    • 鹿嶋会長
    • 勝又委員
    • 神田委員
    • 袖井委員
    • 林委員
    • 山口委員
    • 横田委員
  2. 議題
    • (1) 開会
    • (2) 女性の能力開発に関する有識者ヒアリング及び質疑応答
      • 「看護職者における女性の能力開発」  筑後 幸恵氏(埼玉県立大学助教授)
      • 「HP社における人事評価制度ーHPパフォーマンス・マネジメントー」
        山田貫司氏(日本ヒューレット・パカード株式会社人事統括本部長)
        一守 靖氏(日本ヒューレット・パッカード株式会社人事統括本部人事企画・コミュニケーション本部 本部長)
    • (3) 多様な選択を可能にする能力開発・生涯学習施策に関する各府省書面調査結果について
    • (4) 閉会
鹿嶋会長
ただいまから、男女共同参画会議監視・影響調査専門調査会の第13回会合を開催させていただきます。今日はお忙しい中を御参加いただきましてありがとうございました。
 スケジュールで言うと、実は事務局の人事異動がございましたので、局長、審議官、調査課長、調査官の挨拶を頂く予定だったのですけれども、局長と審議官がまだ来ていませんので、今から始めてしまいますけれども、横田先生が今日は30分で退席されますので、1時半までに局長、審議官が来たら、そこで中座をして挨拶をしていただきます。そのときに筑後先生の話がぶつかるかもしれませんが、大変申し訳ないのですが、そのとき、ちょっと挨拶いたします。
 ということで、本日の審議を進めさせていただきます。
 あらかじめ事務局より御連絡させていただきましたとおり、本日は、「多様な選択を可能にする能力開発・生涯学習に関する施策」について、有識者の方々からヒアリングを行いたいと思います。
 まず、埼玉県立大学保健医療福祉学部看護学科・短期大学部看護学科助教授の筑後幸恵先生から「看護職者における女性の能力開発」についてお話をいただきます。続きまして、まだお見えになっていませんけれども、日本ヒューレット・パッカード株式会社の人事統括本部長 山田貫司さん及び人事統括部人事企画・コミュニケーション本部本部長 一守靖さんから「ヒューレット・パッカード社における人事評価制度」についてお話をお聴きすることにいたします。
 その後、「多様な選択を可能にする能力開発・生涯学習に関する施策」についての各府省庁書面調査結果について、事務局から説明をしていただきます。
 それでは、筑後先生どうぞよろしくお願いいたします。
筑後先生
筑後です。私は埼玉県立大学の看護学科で教員をしておりますけれども、もともとは看護職を長く現場で務めておりました。

(パワーポイント映写)


 今日は「看護職者における女性の能力開発」ということでまとめてみました。私が看護に就職したときは1975年で、ちょうど国際婦人年の年でした。その当時は、社会にも認められてなかったのか、高校の教員からは、割の合わない職というようなことを言われたくらいでした。
◎看護職とは 保健師、助産師、看護師
 ところが、ここ三十年という間に物すごく発展したと私は思っています。看護職者自身の意識も変わってきましたし、能力開発という意味では、非常に多様な能力を開発できるというような分野も広がってきまして、あっという間にいろんなことができるのだというように開発してきて、それが女性だけの力でここまでやってきたということを考えると、ここに何か皆様にもヒントになるようなことがあるのではないのかというふうに思ってまいりました。

(板東局長、飛田審議官着席)

鹿嶋会長
局長が参りましたので、大変申し訳ありませんが、中座しまして、先生もどうぞそちらにお座りください。
 事務局に人事異動がございました。その報告をしたいと思います。前回の会合で御案内しましたが、7月28日付で局長、審議官及び調査課長、調査官の異動が行われました。新しく来られた方々から簡単に御挨拶をお願いしたいと思います。
板東局長
遅れまして申し訳ございません。ただいま御紹介いただきましたように、28日付で名取前局長にかわり男女共同参画局長に就任させていただきました板東と申します。よろしくお願いいたします。
 前職は文部科学省の官房審議官をしておりましたけれども、男女共同参画関係につきましては、ちょうど北京の女性会議が行われましたときに文部省の婦人教育課長をしておりまして、ここにおいでになる山口みつ子委員なども含めまして様々な方々の御指導を頂いたということがございます。
 微力でございますけれども、男女共同参画社会の実現に向けての歩みを一歩でも二歩でも積極的に進めていきたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。
飛田審議官
同日付で男女局の審議官で参りました飛田と申します。よろしくお願いいたします。
 今まで私は経済財政部局におりましたものですから、率直に申し上げまして男女共同参画部門についてはまだよく分からないことが多くて、皆様に御指導いただくことが多いかと思います。就任以来、短い間でございますけど、いろいろと関係する皆様にお目にかかったり、お考えを伺っていて、やはり男女共同参画というのは、人と人の触れ合いが非常に重要であるということと同時に、しっかりとした分析をして、かつ、それをベースにして理詰めで物を言っていかなくてはいけないのだ、これからはむしろそういうことが重要なのだというふうに感じております。そういった意味でも調査会で御審議いただくことは非常に重要だと思っています。
 今後ともよろしくお願いしたいと思います。どうもありがとうございました。
池永調査課長
同じく7月28日に調査課長を拝命した池永でございます。もともとは経済企画庁に入りまして、経済調査や消費者行政等いろいろ経験してまいりました。男女共同参画につきましては、ちょうど省庁再編で総理府男女共同参画室から内閣府男女共同参画局に移行する時期に所属しておりまして、その頃から今日御参加いただいている先生方には大変お世話になりました。改めて御礼申し上げます。また、先生方には引き続き、御指導のほど、どうぞよろしくお願いいたします。
久津摩調査官
塚崎と交替で局内異動でこちらに参りました。これまでも男女共同参画局にはいた訳ですけれども、暴力を担当しておりまして、分野とか仕事のやり方とか大分違っておりますので、また、改めていろいろ勉強しなければいけないと思っております。
 よろしくお願いいたします。
鹿嶋会長
ありがとうございました。どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、筑後先生、中座して申し訳ありません。どうぞよろしくお願いします。
筑後先生

◎看護職とは 保健師、助産師、看護師
 看護職というのは保健師、助産師、看護師で三つの職種があります。保健師は健康増進というところで、助産師は出産にかかわる分野で、看護師が障害とか疾病を持って、あと死に至るまでの過程の支援というところで専門性を持っています。
 御存じの方はどれぐらいいらっしゃるか分かりませんけど、元々は看護師というのは男性看護人ということで男性の仕事でした。ところが戦争によってどんどん看護師が女性の職業として認められるようになってきたという歴史があって、そこには、戦う、傷ついた兵士を癒すという役割がありました。また戦争で食いぶちがなくなったというか、生活に困った女性を集めて看護に充てるというような側面もありました。大きな戦争の中では、看護師というのは戦う兵士と同じように讃えられるという反面、母をイメージするような役割を期待されていたのではないか、「白衣の天使」というのはとてもすばらしい言葉だとも思っていたのですけど、その意味は非常に細やかで、優しくて、温かくて、忍耐強く仕える、自己犠牲的な精神で仕えるという期待がこめられていたと思います。
◎女性職の特徴とは?
 看護職は女性の職業としては代表的なものとしてずっと認識されてきた訳ですけれども、女性の職業の特徴というのはこれまでに、いろいろな方々が発表されていますが、一つは優しさ、気配り、温かさというようなハートや態度などを期待されている。
 それから、元来女性が担ってきた家庭内の仕事なので、あまり専門職として期待されてはいないという面。
 それと、短期就労・賃金が安いということと、基礎教育期間が短いというような特徴が考えられています。
◎看護職としての課題ですから、看護職も専門職として発展するには、このような課題をクリアーしなければならないぞということを強く認識しました。資料2には、看護職としてのジェンダー的な課題ということで、私が取り組んできた研究の調査結果の一部載せております。一つは一番新しいナースの就労形態を年齢別に見た割合ですが、二十代、三十代が主流でして、あとはざっと辞めていくというようなM字型にもならない就労形態になっています。調査の結果でも、結婚・出産で退職する人が多くて、続けるぞと意思表示をしている人は3割近くしかいません。3割程度でした。これは1999年ですけれども、そういう状況です。
 そして意識の方も、家事・育児に差し障りのない程度に働く人が3割で、協力しながら続けたいというふうに思っている人は5割、あとは辞めてしまうというような結果でした。この意識は、看護師というのは代表的な女性の職業として認識されて来たので、非常に女らしい人が選ぶというか、良い奥さんになって、良い家庭のお母さんになってというようなものを十分に持っているような人が多いという可能性と、逆に、専門職業人を目指そうとしている人がいるようです。ですから、とても専門職意識の高い人と、さっささっさと辞めていってしまう女性がいるのではないかと思い、このような研究もしてきました。これまでの調査では女性の役割認識と仕事継続意識には有意差がありました。

 女性は結婚したら辞めなければいけないというような意識も実は専門職の発展を阻んできたのではないかと考えて、性別役割意識が一つ問題だというふうに挙げています。
 それから、医師との関係というところでは、ナースが専門性を発揮しなければ、患者さんは言いたいことも言えないし、「先生そこおかしいですよ」と言えるのはナースしかいない訳ですね。だから医師に従順なナースばかりを演じては患者さんは救われない訳です。医師とナースは両輪であると私たちは学生にも教えますし、習いましたが、臨床現場では医師とは対等になれない状況もあります。資料3で専門性を質問した部分なのですけど、医師に疑問を感じても、「そうではないとはっきり言えますか」というところでは、はっきり言える人は3割ぐらいであるとか、看護の専門領域は、患者さんの身の回りの日常生活のケアなので、そこで裁量を発揮しなければいけないのですけれども、自分の裁量を発揮しなければならないと答える人も少ない状況がありました。
 だから、いくら基礎教育で教えても、現場に行くと自然に従順的になってしまうという現状もあって、私もそうでしたけど、途中で看護は何だろうと思えたりしました。医師の補助的な仕事が大部分を占めていて、非常にストレスがたまることもありました。
 それから、一般市民の人たちの調査の結果でも、看護師に何を期待しているかというのを1993年あたりに行った調査では、「医師の治療を正確にやってくれる看護婦さん」というのを多くの方が支持していました。
◎基礎教育機関の充実
 これらの課題をクリアーできないと、なかなか専門職としては確立できないぞという問題意識を持っていましたけれども、それが今ここ三十年くらいの間でどんどん理想に向かって行っているなということを私自身は実感している訳でして、今日どうしてこのように上手く発展してきたのかということを考えてみました。
 一つはたまたまだと思いますけれども、看護職としては基礎教育機関を高等教育にしてくれということは念願でしたが、それが超高齢化を迎えるに当たって看護師さんが足りないと。高学歴化や看護の質の向上のために監護教育の大学化が進んだことが挙げられます。
 大学の数が一気に増えているというのは、資料4のところに出ていますけれども、ずっと全国で12校ぐらいだったのです。短大も50校あったのでしょうか、全国でもほとんど9割が専門学校という構造でしたけれども、平成十七年までであっという間に大学が126校になりました。各県に一つ大学ができました。看護学部か、看護学科か、看護の大学ができたということで、学問的にも確立してきました。そのため教員の方もしっかり基礎教育で、看護を理論的に教えることができるようになりました。学生は入ったときに、「女性の特性をいかせる仕事ですか」と聞くと、7割ぐらいは「はい」と答えていますけれど、もう半年もすると、看護師に必要なものは、「判断力」と「観察力」という能力を挙げますね。「体力」とか「頼りがいがある」とかそういうキーワードをたくさん出します。だから最近はただ単に白衣の天使のイメージにあこがれてきたような学生は半年ぐらいで辞めてしまいます。よく専門職としてどういう職業かということが教員も伝えられるようになったし、学問的に理論的に伝えられるようになったということがあると思います。
 付録で、私が毎年やっている学生の、資料番号を書いてない資料を一つ入れているのですけれども、これは2004年のものです。最近入って来る学生は、「社会的評価が高い」というような意識で入って来る学生が増えてきました。それから、「性差で役割があると思いますか」というような質問をしても、「ある」という学生の方が減っているということで、看護職も女性に合った職業だという感覚よりも、専門職だという意識が結構浸透してきたのかなと思っています。
 もう一つ、大学が全国にできたということで、人材が東京だけではなく全国に散らばったということで、各県に一つ看護協会の職能団体の支部があるのですが、その支部と大学が連携をして卒後教育に当たるようになりました。そのために看護協会が後押しをして、うちの県にも看護大学というためには、卒後教育を大学教授に協力してもらうことで期待して建てたところもあります。三重県は地域研修センターとして初めから卒後教育のためのセンターを併設しています。大学に8校ぐらいはそういう卒後教育のための施設を持っています。私のいる埼玉県立大学も教育研修センターというのを持っていますけれど、今、卒後に向けての教育もしています。つまり、地域の看護師さんのレベルを上げようということで基礎教育機関と職能団体と連携が持てたということ。また、地域の病院からは大学に、研究指導をしてくださいというようなアプローチも来ていますし、実施しています。それで大学の先生たちが現場と密接にかかわれるようになったということが、また大きな要因だと思いました。
◎現任教育の充実
 現場の現任教育の充実ということで、普通の大きな病院は、卒後教育のプログラムはあったのですけれども、ない病院もありました。私はたまたま大きな病院に長いこと勤めていたので、教育委員という仕事もして一年目の目標などと取り組んでいましたけれども、最近はこれがとても充実してきました。一つは看護協会の方も国際的に活動するためにはジェネラリストナースというオールマイティなナースのレベル(水準)を外国と同じような水準で評価ができるようにしたいというようなことで、クリニカルラダーを示したので、臨床のナースとして、レベル1、2、3という3段階というふうにランクを付けて、レベル3までは臨床ナースとして必要な能力だということで、皆、卒業してから自分が目指す場所、目標はどこだということがはっきりした訳です。
 大学になって非常に理論的に教えられて良くなったのですけど、新卒一年目の実践能力はすごくなくなりました。昔、私が学生の頃はどんどん実習に行って早く覚えて、すぐに使えるナースということで仕込まれましたから、すぐにやれたのですけど、今は注射もできませんし、はっきり言って技術はできません。それで現場では、新人1人に1人のナースを付けて、一年間成長過程を見守るというようなシステムを作ったりしています。また、新人と二年目、三年目というところに目標をはっきりさせて、本人も自分の課題は何かということを担当の看護師さんですとか、主任さんとか師長さんたちと話し合いをして、定期的に自分を振り返るというような機会を持ったりして、臨床現場における教育がしっかりしてきたということがあります。
 現任教育の一例というのは、ほんの一部ですが、こんなふうにたくさんの病院が、ラダーを使って、実践を始めているようです。新人研修、二年目、三年目、四年目、五年目というところに目標を立てて、自分はどうなのだろうということを、ただ、働いて、ああ、くたびれたというよりも、いつもいつもお姉さんと一緒に評価をしながら、良くできたとか、自分のできたことを確認でき、どんどん伸びていくという教育がしっかりしてきました。
 ほかの企業のことはよく分からないのですけど、看護で良いなと思うのは、全員に機会が与えられていることです。全員が、一年生はできる人もできない人も、能力はいろいろです。ですが全員が新人研修に行けて、それはみんな平等です。師長をはじめみんなが学習を奨励しています。だから看護協会の方で新人研修プログラムや、中堅層のプログラム等いろいろ立てて専門の高いところのプログラム、管理者コース、専門学校の教員コース等たくさんプログラムを作っているのですけれど、それを自分で選択して、私はここで研修を受けたいのですと言うと、病棟では出張扱いにして、行っていらっしゃいということで、お金の方は自分で払っているようですけれども、出張で行かせてもらえることが多いようです。院内でも、看護協会のプログラムも利用して、やる気さえあればどんどん自分で勉強できるというメニューを作れたということは大きいのではないかと思います。
◎看護職の生涯学習の体系化
 大学が今度大学院を作りました。大学院もいくつか答えられないのですけど、大学院で有能な実践家、もっと専門性の高い実力のあるナースを作ろうということで、臨床経験五年以上のナースを対象に、大学院には今、9分野、がん看護、小児看護、老年看護学ですとか、ある領域の専門看護師を育てようという大学院が22あります。この資格は大学院で学ぶのですが、専門看護師というのは職能団体で認めた資格です。
 それから、認定看護師養成の研修機関も増えました。看護協会で作っている研修センターは、各支部の看護協会を併せて8施設ですが、財団や大学でも教育センターを作っています。私のところもそうですけど、去年から、認定看護師コースというのを作って、私もその中でホスピスケアコースを担当しているのですけれど、卒業した人たちが、あるカリキュラムをこなすと認定看護師の試験を受けられるのです。それを受けると、認定看護師としてより専門性の高いナースとして認められるということで、最近は認定看護師とか専門看護師がその病院にどれぐらいいるかということが看護の質を評価されるということで、病院を挙げて、応援をしてくれる背景もあるようです。
 その他の研修には、管理者育成のファーストレベル、セカンドレベル、サードレベルと研修コースがあります。ファーストレベルは師長。その次は副部長というようにレベルアップを目指す研修。また、看護教員の養成コースというのもあります。そういうコースを出ると今度専門学校の教員の免許が取れるというふうに、昔は婦長しかキャリアアップはなかったようなところが、今は看護の中で専門性を究める分野がたくさんできてきました。自分はどこを目指すのか選択肢が増えたのです。
 ジェネラリストナースというのは、海外、国際看護などでは専門看護師よりは一般にいろいろできる看護師さんの方が役に立つとは思うのですけれど、専門を作ったので、ジェネラリストナースという表現になっているのですけど、このジェネラリストナースの標準をある程度高めたいというのがラダーで示したところですが、このジェネラリストナースもいろんなところで、訪問看護ですとか介護とか病院以外にも活躍の場が広がりました。ですから、学生のうちから、私はこの道になりたいなんていうことで、自分のキャリアアップの道を考えられるというふうになってきたのも大きいと思います。行きなさいといって来るというよりも、自分でどんどん勉強できるといった感じですね。だから私のところに来ている認定コースのナースたちも、十年のベテランの人たちばかりです。ベテランのナースですけれど、特別大学を出てなければいけないとか、そういうことは一切なく、経験年数と実力があれば入れるということで、大学院の方も専門学校の単位を認めていますので、大学を出てないと大学院に入れないということはなくなりました。実践家が、また学習できる教育システムが体系化されたくさんの選択肢ができたということです。
◎生涯学習を支える制度
 学習を支える面ですけれども、お金がかかるのでどうかなということですけれども、生活の保障をしてあげる。長い六ヶ月とか一年の研修については、大体病院をすっかり辞めてくる人は少ないです。去年私のところでも20人のうちの1人か2人しかいませんでした。病院に戻って活躍してもらいたいという病院の意向があると思うのですね。せっかく勉強してきたものを病院でいかしていただきたいということで、基本給の例えば7割とか6割は保障する施設が多いようです。昨年、私のホスピスケアコースでは、母子家庭で子どもを育てながら来ているという人もいましたので、それでも生活ができるということですね。半年学習をしても生活の保障はしてもらえる。それから、帰ってきてからの職場が保障されているということで安心して学習できるという環境を多くのところがとっていると思います。
 それから、入学金が60万とか75万とか高いですね、家庭を持っている人たちにとっては。そのために病院独自の奨学金制度を作っているところもあります。五年で返済できるとか、十年で返済できるようなものを利用している方もあると聞きました。また、認定看護師教育には日本財団から助成金をいただいている分野もあって、そこは入学金が70万のところが30万になるとか、そういう分野もあります。
◎発展できた要因(1)
 大体まとめのところですけれど、看護職が能力開発の道を作ってこられた要因として、一つは職能団体と基礎教育の場と連携できたということがとても大きかったと思います。今学生がどのレベルで卒業して出て行くのか、あと現場でどの点をフォローしていけば良いのかということが見えるようになり、卒後教育がかなり基礎教育とつながった内容で出せるようになったということ、私たち教員も現場に行ったり来たりしますから、新人の状況を共有しながら教育できること。それと卒後教育が充実してきたこと。
 キャリアアップの道が具体的に可視化できるようになったということが大きいと思います。
 一人ひとりが自分に合った学習を選択できる環境が整いつつあると思っています。
 また看護職がやはり医局とか事務局と同等になってきたということも大きいと思いました。学習環境を整えるのは看護部長の力です。制度の実現も看護部長の努力と認められる関係があってこそ実現できるというふうに思っています。
◎就労環境の工夫(2)
 それからずっとついて回るのは就労環境の問題なのですけれど、これも女性が多い職場で産休や育休は当たり前なのですね。私が昔働いていた頃は、産休になると、外来へ行って、要は夜勤ができないので病棟は難しいというような見方をされていて、すごく優秀な人でも、結婚すると残念だなというような感じを私は思ったことがあるのですけれども、今はそういうことはなくなってきているようです。お腹が大きくても、みんな元気に病棟で働いています。
 それはなぜか、産休で1人休んでもだれも困らない、患者さんが困らない、看護の質を落とさないことをいつもいつも考えて看護体制を整えるという管理者の工夫があるのです。だから1人優秀な人材がいなくなったら回らないという環境にはしないということです。私がインタビューをした看護部長さんのお話では、いつもみんなで力を上げる工夫をしていて、産休は当たり前。看護休暇と育児休暇と介護休暇もしっかりあげると言っていました。介護休暇も「どうぞ6ヶ月とってください」と言うそうです。そうすると、たまたま三ヶ月でお父さんが亡くなられたというと、すぐに戻って来て、「やっぱり勤めます」と言ったりするというのですけれども、認められている権利は全部保証します、その代わり、その人たちは看護部付のメンバーにして、現場には代わりの人員を入れ、看護の質が落ちないように工夫していました。産休では、一ヶ月前に人員を補充するということでした。
 それから、もう一点、子育て中の人には、夜勤がネックなので難しいかと思っていましたけれども、三交替から二交替制にすることで問題が少し改善されることがあるようです。ちょっと皆さん分かりにくいと思いますが、三交替制は夕方から夜中あるいは、夜中から朝まで細切れに8時間ずつ切れるのですけど、前の日に日勤を、8時から4時まで働いて、夜中からというと、あまりそこの間に、休みがなく働くので、やっている本人はほとんど徹夜をする感じです。それから、夕方から夜中まで働いて、翌日少し遅く出て行くというのも、結局はちょっと寝て、すぐまた働くので、徹夜をやっているような感じなのです。二交替制は、それを夕方から朝までと一気につなげるので、月に8回夜勤をしなければならなかったところが4回で済むことになります。8回だと、8回も夜中お母さんがいなくて大変ですが、4回なら何とかお母さんやお父さんに見てもらえるということで、子どもを抱えている人たちが結構夜勤ができるようになったということを伺いました。まだ二交替制というのは勤務時間が長いということで、実践してないところもあると思うのですけれど、これも子育て中のナースには一つの良いやり方かなというふうに思いました。
◎女性の就労を支える背景
 就労を支える背景ということでは、ずっと家事・育児というのが女性にはついて回って、それがどんなふうに支援されれば良いのかということは考えなければいけないところだと思います。資料6は、99人のお母さんとだんなさんを対象に去年学生と一緒に調べたものです。家庭の中で夫がどのくらい手伝ってくれるかというと、家事は自然に支援してくれるのですけれども、内容は「ごみ捨て」が多いということでした。育児については、自然に支援してくれるのですけれども、中身は「入浴の世話」や「保育園の送り迎え」というようなことで、とても大きな力になっているのは両親の存在だというようなことが分かりました。
 夫の意見ですけれども、育児観というところを一緒に調べたのですが、お母さんの方が割にさばけていて、三歳まではお母さんが育てるのが良いのではないかというふうに6割くらいの人が思っていますけど、信頼できる人がいれば良いのでないかというような気持ちもかなりあるということで、夫の方は、お母さんがいた方が良いのではないか、と思っている人が多いようでした。ただ本人も積極的に参加したいという気持ちがあるのにできないということも感じられました。だから、一緒に育てるという意識が男性の方にも出てきているので、子育てはみんなでやるものだというような意識が一般的になると理想的だと思います。
◎今後の課題
 今後の課題としては、今、看護協会の方では24時間保育の体制の働きかけをしていますけれど、圧倒的にお母さんが呼び出されるのは子どもの熱が出たというところですごく呼び出されるのですよね。ちょっとしたことでもすぐ呼び出されて、私の職場でも来た途端にもう電話がかかってきてという、そういうことが一番大変そうです。
 私見ですが、保育園にも看護師さんを雇ったらどうかなと思っています。ちょっと熱が出たときの対応ぐらいはしてもらえるのではないかと思っています。24時間保育の体制ということや、男性の就労形態をもう少し見直したらどうなのだろうかと私は考えます。
 育児休暇も、私たちのところでは当たり前です。当たり前なので、「元気に子どもさんを産んでくださいね」なんて言って送り出して、「良かったわ」と言って終わりですね。そこで現場は全然困らない体制を管理職は考えてやっている訳です。だから男性の職場もそんなふうにならないのかなというふうに思うのです。女性の職場ばかりではなくて、男性の職場にも育児所があってもいいのではと思っています。
 子どもは、みんなで育てるという意識と体制が作られればいいと感じています。
 あとは男性看護師の活躍ということで、今回も男性看護師さんが大分出て活躍するようになりました。
 男性看護師さんが活躍するということで、看護職も女性に合った職業ということではなく、専門性のある職業として認識され、発展できるのではないかと考えて挙げました。

(パワーポイント映写終了)


 こんなところです。
鹿嶋会長
どうもありがとうございました。
 白衣の天使の実態というのをいろいろお聞きしましたけれども、皆さんから質問があれば頂きたいと思うのですが、基礎的な数字、例えば平均勤続年数等はどこかにあるのですか。それから、もう既に辞めた看護師さんはどのぐらいいる等。
筑後先生
どれぐらいいるかはちょっと分からないのですけれど、毎年4万近くは卒業している。
鹿嶋会長
辞めていっている。
筑後先生
新人が。
鹿嶋会長
新人が4万人入って、辞める人はどのぐらいいるのですか。
筑後先生
辞める人はどのぐらいいるのでしょう。でも、いつも足りませんね。大学病院はもう二十代を中心に回すというような、経済的にその方が安い。すごくハードなのですね。仕事の内容がスピーディーに動かなければならない等、そういうことで、いつも100人、200人を大学病院は毎年、毎年募集しています。だから大学病院は毎年100人以上辞めているということですよね。というふうに思っています。
 地方の総合病院のようなところは100人ということはないです。だから地方ではそれなりの看護師さんを辞めないようにする努力をしていると思うのですけど、全国でどれぐらい辞めるか分かりませんけど、常にザルで、これを見ても、三十代を超えると大体辞めています。三十代の後半ですね。
 今は四十代になっても、訪問看護ステーションには、1人で自立したナースが行かなければならないので、二十代のナースは逆に難しい。だからベテランの1人で判断できるナースが求められるので、いったん三十五歳ぐらいで辞めた看護師さんたちが訪問ステーションなどにカムバックして入っているということが大分あると思うのですけれども。
鹿嶋会長
辞める関係は、この調査で見ると、6割ぐらいは三歳まではお母さんの手で育てた方が良いと考えているのでしょう。そういうことも影響しているのですか。
筑後先生
影響していると思いますが、看護師さん自身は絶対に三歳までは育てなければならないとあまり強くは思ってはいないとは思うのですね。分からないという意識もかなりあるので、でも現実そうせざるを得ないという現状はあると思います。
 親がいれば、大体続けて働けているような感じなのですけれども、もう少し男性側も一緒に育ててくださるようなかかわりがあればと思うのですが。
鹿嶋会長
ほかにどなたか、山口委員。
山口委員
どうもありがとうございました。びっくりしました。戦争の兵隊さんを看護するために始まったというのを私も今初めて聞きました。お話のように、大学の急増が十五年くらいのうちに11倍に増えたというのは驚きですね。これはどういうことが考えられるのか。それから准看護師課程というのは減っているのですね。そうすると看護師さんになるには、要するに短大、大学あるいは専門学校、この三つを通って行くのですか。どれかを選んで、どういう仕組みですか。
筑後先生
資料を出せば良かったですね。看護高校五年というのがあるのです。看護高校は、今までは三年だったのが、去年から五年になったので、三年だと准看が取れるのですが、五年になって、看護高校は正看護師の受験ができるようになりました。大学では保健師と助産師が取れるというメリットがあります。あとは三年の専門学校と准看学校もまだあります。准看学校も減らしたいという意向で看護協会の方で働きかけていますけど、医師会が力が強いのか、なくならないです。でも准看で出るとなかなか准看のために進学コースの二年制を短大に置いたりして正看護師がとれる体制も整えています。
山口委員
今のその話ですが、さっきなぜ大学が増えたのかなということと、もう一つは、准看護師と正看護師、今も階級というのか、あるのですか。これは医師会との関係ですか。
筑後先生
階級というよりも、仕事の中身は本当は違うのです。だから教育の中身も違うのです。看護師というのは、自分で判断してプランを作って実践して評価するという過程をやるのですけれど、准看護師は看護師の補助なのですよね。だから教育もすぐにやれる、一緒にベッドメイキングができることや、一緒に注射ができること等という技術をメインに入っていった教育だったのですけど、最近認識がちょっとごちゃごちゃになっているところもあるようです。なぜかというと、看護師が准看学校の先生になってしまう訳ですね。そうすると自分の看護を教えてしまうからでしょうか、ミニ版ですか、縮小版のような内容になってきてしまうようで、最近准看護師も正看護師の教育実習プログラムと似たようなミニチュア版を教える感じで、進学コースの教員から疑問の声を聞くことがあります。実際は仕事の内容は違うはずなのです。
山口委員
最近の新聞に看護師さんがとても減っているから、辞めた方たちを採用するというのが新聞の第一面に出ていましたけれども、今の需給関係というのはどうなのですか。さっきの大学卒のと一緒に併せて伺わせてください。
筑後先生
需給見通しというのが、私もそこはあまり詳しくないのですけれども、大体何年くらいで達成するという目標があったのですけど、今年になってから、看護の質を上げるということで、患者さんとナースの割合が、ランクが上がったのですね。今までの、例えば20人で運営していたところが30人入れないと、1.2対1、患者さん1.2人にナース1人のような割合ということで、またどこの病院もたくさん看護師さんを入れなければならない事情になってしまって、今年になってからはどこの病院も人員確保に大変な思いをしているようです。
鹿嶋会長
従来は1人の看護師が何人見ていたのですか。
筑後先生
2.5対1というところだったのです。
鹿嶋会長
2.5対1、今度は1.2対1。
筑後先生
だから、ますます足りない状況になってしまっていると思います。辞めなければ足りていると思うのですけど、私の同級生も数人しか働いていませんから、どうなのでしょうね。
山口委員
大学に入る人が増えているということですか。十五年間のときに11倍増えていますよね。
筑後先生
社会の高齢化に向けて需要が高まったことや、看護の質を上げるということと、看護師になる人たちも少子化の時代でますます人材の確保が難しくなっています。また、こういう大変な仕事を選ぶ子どもはますますいなくなるのではという危機感もあったようです。今は大切な一人っ子もたくさん来ています。だから、今は大変で割に合わないというような認識ではなく、親も教員も専門職として自立してやっていくにはいいという認識で選ばせているのだと思うのですけれど、看護の方では質を上げたいし良い教育をしたいので大学にしてほしいということをずっと前から要請していましたし、社会の要請と看護の希望がうまく合致したというところでしょうか。看護教育の大学かが進んだわけです。
神田委員
看護教育は大変複雑なシステムなのですね。そして、しかもこれが需給関係に大きく影響されているのですね。もちろん看護職の人たちの専門職としての質の向上ということはずっと悲願だった訳ですから、これはどんどん教育レベルが上がっていく訳ですけれども、しかし今お話のように、需給関係がもろに影響する部分なのですね。
 それで、私、お話聞いていて、ほかとは違う点として、大学と職能団体、教育研修センターというのは、これはどこがやっているのかよく分からないのですけれども、行政がやっているのですか。
筑後先生
教育研修センターは看護協会が二施設運営していますが、支部でも作り始めたようです。自分たちの県の看護師さんたちの質を上げたいということだと思います。それから、大学の方も、少子化と看護の、現場にいる看護師さんたちのレベルをもっと上げたいと、施設のそろった大学で勉強させてあげたいというようなことを考えて、研修施設やコースを作っています。埼玉では看護部長さんたちと意見交換しました。その結果、大学にはこういうことを担ってもらいたいという要望の中に認定看護師コースの要望があったのですね。それで埼玉県では、ホスピスと褥瘡・床ずれを治す、そういう専門ナースの育成コースを二つ作っています。去年から開講しているのですけれども、そういう大学がまたあっちもこっちもできまして、全部で認定コースが18ある中で、大学が五つでしょうか、広島や北海道等、いろんな大学が研修センターを作って卒後教育を始めています。
神田委員
話したかったのは、ほかの職業とやや違って、大学、職能団体等々が横に連携しながら再教育というのでしょうか、教育を行うところだと思うのですね。そのことが一つ大きな看護教育における特徴であって、この点はほかの職業の場合にこういう在り方というのが考えられるのだろうかというふうにちょっと思っています。看護協会という職能団体が積極的に教育に入り込んでいって、しかも、それが大学と連携するという、このやり方は非常に有効ではないかなと私は思いました。
鹿嶋会長
良いですね、意見として聞いておいて。
神田委員
はい。
鹿嶋会長
ありがとうございました。いろいろありがとうございました。更にお聞きしたいのですが、ちょっと時間的な都合もございまして、これで終わりにしたいと思います。
筑後先生
ありがとうございました。
鹿嶋会長
どうもありがとうございます。
 筑後先生にはここで御退席いただきます。どうも本当にありがとうございます。

(筑後先生退室)


(山田氏及び一守氏着席)

鹿嶋会長
おいでいただきましてどうもありがとうございます。
 次に、日本ヒューレット・パッカード社の山田様、一守様からお話をいただきます。
 日本ヒューレット・パッカード社は、日本経済新聞社が主要企業を対象に実施した2006年「働きやすい会社」調査のランキングで二位に選ばれました。特に「納得できる評価制度」の項目ではトップに選ばれております。能力開発の施策が効果を発揮するためには、企業における評価の在り方が大変重要であるという指摘がこれまでこの委員会でも委員の先生方から出されておりますので、本日お招きいたしました。
 それではどうぞお願いいたします。
山田氏
ご紹介に預かりました日本HPの山田でございます。よろしくお願いいたします。こういった会に呼ばれるのは初めてですのでちょっと緊張していますが、よろしくお願いいたします。
 (パワーポイント映写)
◎本日お聞きいただく内容
 今日お話ししたいということで、私と一守の方で分担しまして、日本HPワールドワイドの紹介も若干させていただいて、企業の規模やバックグランドの評価制度等、そういったのが若干違うので、文化的なことも御理解いただきたいと思って、少しお時間とらさせていただきます。その後、一守が企画をやっておりますので、グローバルの人事評価制度等の中から、弊社が日本でどうやっているかという具体例を御説明させていただければ幸いかと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
◎HEWLETT-PACKARD COMPANY
 会社紹介ということで、HP社はワールドワイドでMBAのプログラムで紹介されたのを御存じの方も多いですし、シリコンバレーの発祥の地のパロアルトというところで、サンフランシスコの南にあります町でスタンフォード大学の卒業生が2人で作った会社です。1939年創立ということで、もうすぐ七十年になる会社でございまして、売上規模でいきますと867億ドル、純利益は書いてあるとおりで、社員数は全世界で約15万人おります。
◎日本ヒューレット・パッカード株式会社概要
 日本の支社であります日本ヒューレット・パッカードは、登記簿上で見ますと1999年の設立になっておりますけれども、実態は横河ヒューレット・パッカード、横河電機さんとの合弁で始めましたのが1963年で、これも四十年以上日本で続いている会社でございます。当社は合弁でしたので社内は日本的な雰囲気だというふうに外から見られているかと思っています。
 1999年に何が起こったかと言いますと、それまでありました電子計測機器の会社と2社に分かれまして、分社したときに、日本での登記簿上の存続会社がアジレントさんということで、我々の方は新しく登記をし直しまして1999年の設立となっております。
 本社は品川にございます。
 売上高は昨年の期末で4,100億を超えました。
 正社員数は、5,600名です。女性社員は約800名ということで、15%の方が女性です。5,600名のうち約4,000名がエンジニアということで、フィールドに出てサービスをする者、コンサルティング、これらを合わせて約4,000名のエンジニアを抱えているというのが特徴かと思っています。あと営業が1,000名弱ということで、あと、マーケティングや本社部門の者がおるということでございます。
 セールスサポート拠点が全国で今51ヶ所ございます。
◎HPの歩み
 HPの歩みということで、次のページに行きたいと思いますけれども、先ほど御紹介させていただきましたとおり、ビル・ヒューレットとパッカードさんが1938年に2人で始めた会社が1939年に会社形式になって進んでおりますけれども、近年で言いますと、2002年にIT市場最大の合併ということで、コンバック・コンピュータと合併しました。コンバック・コンピュータの方はその前年にタンデム・コンピュータズとディジタル・イクイップメントと非常に大きな合併を通ってきた会社で、社内的に言いますと、四つの違った流れが合わさっております。合併当時はワールドワイドで7万5,000名同士ぐらいの会社ということで、ほぼ同じ規模の会社を日本でも3,500名ぐらい同士の会社がくっつきましてやりましたので、人事制度的にも文化的にも全く違う歩みをしてきた会社がそこへドーンとくっついたといったことで、これから一守の方で御紹介させていただきます人事評価制度も合併に際しまして、ベストのものを作りましょうということで作って、この四年間走らせているものです。
◎HPのビジネス
 HPのビジネス、パソコンやプリンタの事業というのは割と知られているかと思いますが、先ほどいった4,000人のエンジニア抱えて何をやっているかと言いますと、エンタープライズのストレージ・サーバ事業ということで、実は皆さんがお使いになっています携帯電話のキャリアさんというのは今4社おりますけれども、すべて4社のキャリアさんHPのインフラストラクチャーの上で動いております。最近携帯電話の中で決済のシステム等がありますけれども、ソニーさんがお作りになったフェリカという会社のサーバの仕組みをHP社の上で動いているということで、表にあまり見えませんけれども、皆さんの生活を支える大事な基盤を支えているサービスを提供させていただいております。
◎世界のIT企業 業績推移
 規模観ですけれども、このブルーのバーがHP社の売上の過去六年間の歩みでございます。薄いグレーがIBM社ということで、昨年度の期末の段階でほぼグローバルではIBMさんの背中が見えたということで、実は今年の第二四半期の決算を見ますと、HP社がIBMの売上を上回っているといったことで、IBMさんは今後メディアの中で、世界一大きいIT企業というのをやめたという背景がございます。
◎日本HP VISION実現に向けて
 ここに日本HP VISION実現に向けてということが書いてありますけれども、先ほど御説明したように、2002年に合併をしまして、非常に大きい合併を通りますとどうしても業績が一遍落ちるということがございます。かなり重なった機能がございましたし、合併当時7,000名を超える社員が日本におりましたけれども、今5,600名ということで重複部門の併合ですとか、インドや中国に持っていけますオフシャンフを減らしましたので、今5,600名ということで、その間、人の評価や給与面で非常に苦労しました。それで最近は4,100億を超えるという売上になりまして、昨年度の売上を見ますと、対前年比12%増ということで、日本のIT市場が約2%、3%の増ということで、今どちらかというと、今後の成長を支えるための人事制度をどうやっていくかというのが人事側からの課題かというふうに思っております。
◎THE HP WAY
 文化的な背景ということで、古いMBAのプログラムによく出てきます"HP WAY"ということがよく言われています。HP WAYはいろんな言葉がございまして、一冊の本になっておりますので、なかなか一口に言えないのですけど、人事の者が"HP WAY"とは何だと言われましたら、多分ここにあることが非常にベースになっていて人事制度もこれに基づいて作られているというふうに私は説明しております。
 "人間は男女を問わず、良い仕事、創造的な仕事をやりたいと願っていて、それにふさわしい環境に置かれれば、誰でもそうするものだという信念に基づいた方針であり、行動規範だといえます。"
 これは共同創設者のビル・ヒューレットが1960年にハーバードビジネススクールで講演されたときの言葉で、我々はこれに基づいて、今人事制度のもとになっていますのが、CAREER OWNED BY EMPLOYEE SUPPORTED BY MANAGERという言い方をしていますけれども、個人のキャリアというのは個人一人一人で考えてください。自律した社員になってくださいと。そのかわり、会社の方はマネージャーを通してそれを支えていきますというのが一つの考え方の元になっておりまして、すべての人事制度はそこに根差した人事制度を作って展開しております。
◎日本HP VISION
 ちょっとHP WAYというのはグローバルの話で、なかなか日本人の心に伝わりづらいこともあり、日本HP VISIONということがここに書いてありますスローガンのようなものを昨年策定いたしました。これは三つのワークショップを通しまして、ブランディング委員会から執行役員クラス、若手の社員を集めまして、今後三年間、五年間見たときに日本HPがどうなりたいかということを考えて、こういった傾向ツールも作りまして、社員の目指す一つのベクトルを示して展開しております。これも自律して誠実にやっていく社員を作りたいという話でございます。
◎BEST PLACE TO WORKの実現に向けて
 といったことで、人事の説明に入ります前にどういったことを目指していくかというと、BEST PLACE TO WORKといったことを掲げまして、その中でいくつかの基本方針を出しております。
 まず基本の徹底、人重視のマネジメントの継続ということで、これから一守の方で詳しくお話しさせていただきますハイパフォーマンスシステムの徹底。ODAという名前のEメールアドレスを別に設けまして、目安箱という形で、社員が誰でも、いつでも意見を集められるメールシステムとそれに対する回答のシステムを作っております。
 それから、MANAGEMENT BY WALKING AROUND(MBWA)という言葉もHP WAYの中に出てきますけれども、実際社長にコーヒートークといって、全社員を大きな会場に集めて年2回ミーティングをやったり、社長に地方オフィス51ヶ所ございますので、何年かにかけてわたって歩いていただいて会社の方針を伝えていくということをやっております。
 二番目は、先ほど申し上げたようにキャリア自律ということで、これをマネージャー教育を通して今言った制度の運用を図っていきたいというふうに思っております。
 実は今日の話題だと思ったので、DIVERSITYの推進ということで、私の年度の重要課題ということで、一つは女性登用、障害者雇用という二つのことを進めております。障害者雇用についてはリストラの中で苦しい中でしたけれども、合併当時、障害者採用1%強、1.01%まで落ちたのですけれども、この三ヶ年計画を済みまして、ようやく1.75%ということで、法定の1.8%、あと2人雇えれば良いというところまで戻っていくことができました。
 それから、全社レベルのWORKFORCE PLANNINGということで、特にIT産業は非常に変化も激しいですし、組織もしょっちゅう変わりまして競合も激しいということで、社員一人一人のスキルを磨いたり、マルチタスクができるようになったりするということを目指した人材開発活動をしております。
 こういったことを通しまして運用をしておる訳ですけれども、ここで人事企画の一守に代わりまして、具体的な、皆さん今日御興味の人事評価制度をどうやっているかというのを御説明させていただければというふうに思います。
 どうもありがとうございました。
一守氏
人事企画の一守でございます。本日はこのような場を与えていただきましてありがとうございます。これからは私が引き継ぎまして、今日のテーマとお伺いしております人事評価制度について御説明をさせていただきます。
◎HPパフォーマンス・マネジメント
 人事評価制度につきましては、私どもパフォーマンス・マネジメント・システムという名前で呼んでおります。まず、その概要からお話しをいたします。
 パフォーマンス・マネジメントと私どもが呼んでいるのは、御覧のとおり四つのステップから構成されておりまして、会社のビジョンや戦略と個人の目標をまず合わせまして、それを日々マネージャーがコーチングをしながら業務を遂行していき、業績と行動に基づいてそれを評価する。ここが特に核心の人事考課の部分でございます。その考課に基づいて報酬を決定するという、この一連のサイクルを総称してパフォーマンス・マネジメント・システムというふうに呼んでおります。
 このパフォーマンス・マネジメントは、会社が一方的に与えるものではなくて、会社と社員が協働して作り上げ、やっていくものでございますし、また、このサイクルを通して、これは単に仕事をいかにするかということだけでなくて、本人のキャリアや能力開発に強く結び付けていく。または会社がこれの活動を通して働く環境を整備していくというところに密接につながっていく一連の活動だというふうに捉えております。
 以下、この四つのステップにつきまして順にお話を申し上げます。
◎STEP1:ゴール設定と計画
 まず、第1のステップは、ゴール設定のフェーズがございます。今申し上げましたように、ゴールはただ会社が与えるものではなくて、ここには上司の責任とともに社員個人の責任が生じてまいります。マネージャーに言っておりますのは、まず、部門の目標と個人の目標、これをきちんと連動させるということ、チャレンジブルな目標を与えるということ、そして部下と共に共有する。この点が重要であると伝えております。
 ここの部分でパフォーマンスの期待値を明確にすることによって、この後の一連のマネジメントが動きだすというふうに考えております。
 また、ここのところでは、部下のキャリア、能力開発について、今後その目標に対してどうしていったら良いかといことが生じますので、こういった話し合い、気づきの機会もここで生じることになります。
 また、一方で社員の側の責任と致しましても、やはり自分の期待値、まず何を目指すか、そして、そのために何をしていかなければいけないという期待値をこの時点で明確にして、自分の仕事目標、能力開発目標を設定するというふうにスタートの非常に大切なフェーズになります。
◎個人目標設定の考え方こちらに御覧いただいておりますのが個人目標設定の考え方で、今ほど触れましたように、企業としてはいかに個人からパフォーマンスを引き出し、企業のパフォーマンスとして連動させていくかというところがかぎになりますので、会社の戦略、ゴール、目標、これをきちんと個人のパフォーマンス目標と連動させるような展開が必要になってきます。日本企業でもやられているような方針の展開に近い概念だと思いますが、ここに個人の能力開発やキャリアの開発などが組み込まれているという点が特徴であると思っております。
◎キャリア形成の基本的な考え方
 ここで私どものキャリア形成の基本的な考え方を少し御紹介させていただきますと、私どもが社員のキャリアを語るときにEMPLOYEE OWNED MANAGER SUPPORTEDという言葉のもとにキャリア開発してまいります。非常に大きい組織または複雑なビジネスの中では、顧客の近くにいる社員が自分で考えて、自分で最適な意思決定をしていくということが物事をスピーディーに、しかもお客様のためにやる上では欠かせないことですので、やはり会社が目指す姿としては、社員が主体性を持って自律的に働くという姿を追い求めていく、こういうことをしたいと考えておりますが、このキャリア形成においても同じ考えで、社員が自分自身のキャリア形成に責任を持ち、考え、マネージャーがそれをサポートする環境やその機会をサポートする、そういう考えでキャリア形成をしております。
◎ディベロップメント・プランの作成
 また、次のスライドにございますのは、ディベロップメント・プラン(能力開発プラン)を立てるときの考えとして社内に示しているものですが、こちらも現状をきちんと見て、一人一人の強化すべき長所、克服すべき弱点をきちんと見立てて、HPのコンピテンシーモデル、これは後でパフォーマンス・ビヘイビアという行動基準の話を申し上げますが、HPがビジネスを成功させるためにあるべき行動基準というものがございまして、そうしたものと照らしながら自分の長所を伸ばし短所を改善する、こういう着眼点をここのフェーズでしていきます。 そして、二つから三つの重点項目を選んで、短期または中長期にわたる能力開発の目標を立てていくということになります。
 一般に能力開発というとトレーニングということがすぐに思い浮かびますが、必ずしも能力開発のためにはトレーニングだけとは限りませんので、ある大きな仕事をする機会、またはプロジェクトへの参画や、少しチャレンジすれば届くような目標などを組み合わせてマネージャーに考えるような指導をしています。
 そして、もう一つ大切なのは、その状況を年間を通してマネージャーがきちんと見て、また部下の方がそれマネージャーに伝えて、そのフォローまたは強化をしていくということが非常に大切で、ここの話し合いのプロセスも、先ほど申し上げたパフォーマンス・マネジメントのサイクルの一環に組み込むということをしております。
◎STEP2:モニタリングとフィードバック
 これはモニタリングとフィードバック、これが第2フェーズです。このフェーズにおきましてマネージャーの責任というのは、個々の社員またはチームの状況をきっちりと追いかけていくことと、フォーマル/インフォーマルな場でフィードバックを与えて、そのまま行けば良いのか、または改善が必要なのか、こういったフィードバックをする。ここが非常に大きなマネージャーの責任です。
 それとともに、部下が仕事を遂行するに当たっての障害を取り除くというのもマネージャーの大きな責任であります。恐らくここに入ってくるものといえば、働く環境というのが非常に大きく影響してくることになります。
 社員の側にとっての責任も、常に自分に与えられた目標の進捗、または障害があれば、その障害をきちんと見て必要な手を打っていくというのは社員側の責任ということになります。
◎社員がより優れた結果を出すための環境を作る
 このスライドは、社員がこうした日々の活動を通してより優れた結果を出すための環境づくり、これは今申し上げましたように、まずはマネージャーの責任、そしてこれを言うのは社員側の責任でありますが、期待値を明確にし、能力向上の機会を与えること。適切な都度の評価を与えて必要な場合には方向の修正をすること。それと障害を取り除く、または働く環境の選択肢を整備し与えて、最終的にはより優れたパフォーマンスを上げるために会社は何をしなければいけないか、どうサポートするべきかということを考えることがこのフェーズのキーだというふうに考えております。
◎STEP3:パフォーマンス評価
 ここでパフォーマンスの評価というフェーズに入ります。ここでのマネージャーの責任としては、基本的には半期毎、また公式的には一年毎にパフォーマンスを評価する機会がありまして、そこで社員にフィードバックを与えます。その際には、そのパフォーマンスに対してより多くの情報を得る必要があります。私どもの場合、日本だけでチームができている場合もありますけれども、そうではなくて、アジアの各国またはアメリカその他の国々の人たちと一緒に仕事をする機会が多いものですから、上司が日本人とは必ずしも限らないということになっています。特にそういう状態がふだんの状況なので、パフォーマンスを評価する際には、自分が見た目だけではなくて、ふだんその国でその人と働いている人の意見を求めるというのが習慣になっております。
 社員の責任についても、まずパフォーマンスの自己評価を行い、自分でまず考えるということ。その上でマネージャーと話し合いをして、この先、どういうアクションをしたら良いかということをきちんと明確にすることが必要になります。パフォーマンス評価というのは、行動からすればA、B、Cのような標語を付けるというのがこのフェーズでございますが、ただ、標語を付け、伝えるということが目的ではなくて、それを今後どうその人の成長にいかしていくかという視点が大切であると考えております。
◎STEP4:パフォーマンスに対するリワードとリコグニション
 そこでパフォーマンスの評価、いわゆる人事考課の評価が決まる訳ですが、最後のフェーズとしまして、そのパフォーマンスを報酬につなげていくというのがパフォーマンス・マネジメントの第4ステップになります。私どもはいわゆる結果、成果、その期間を通して出てきた成果とその期間の中で見せられたその人の行動をもとにして評価をし、報酬を決定することにしております。
 ここで少し御説明を加えるべきなのは、一般の日本企業さんの場合ですと、評価をつけた段階で、例えばA、B、C、D、E評価をつけた段階で、あらかじめ人事考課制度という規定の中に、例えばAだと職能給表の5段階進む、Bだと3段階というふうに決められている。すなわち昇給は仕組みに従って自動的に決められるケースが非常に多い。それを人事が決めるというふうな表現をされている方もいらっしゃると思いますが、私どもはそうではなくて、評価を決めるとその評価の中で、マネージャーは、例えばAだったら昇給が2%から5%の間でつけなさいというように、そこでもマネージャーの判断が出る、そういう仕組みになっております。
 したがいまして、ここでもマネージャーは、常に私どもは差をつけるということが良いと考えて、そういう立場に立って、個々を見つめれば当然差が出てくるので、良い場合にきちんと報奨し、そうでない場合はそうでない状態を伝えていかに改善していくか、ここでマネージャーが自分に与えられた範囲の中で評価を選択して伝えるというのが責任になってきます。
 社員の側の責任においても、パフォーマンスとそれがどのように自分に報酬としてはね返ってくるか、これをきちんと理解することが求められます。そして自分が残念ながらあまり良いパフォーマンス及び報酬がなかった場合には、それはなぜで、どうすれば良いかというところを考える。という点で、STEP4の重要性があると考えています。
◎PERFORMANCE BEHAVIORSとは
 今ほど触れました私どもは成果いわゆる結果と行動によって評価をするという部分ですが、その行動の部分を、当社ではPERFORMANCE BEHAVIORSというふうに呼んでおります。これは目標を達成するときにどのようにその目標を達成したかということ。逆に言えば、どのようにすれば目標に達成しやすいかとも言えるかもしれませんが、HPの社員として行動すべき基準がまとめられたコンピテンシーに近い概念のものでございます。これは15万人のHP社員全員に共通するものでございまして、自分がビジネスの結果をどう達成するか、それを達成するためにどういう行動をすべきかという視点が一つと、お客様のニーズに応えるためにどう行動すべきかという視点が二つ目。それから、自分の知識をどう広げ、どういかしていくかという視点が三つ目。そして部下、同僚とどう共に働き、パフォーマンスを出していくかという視点が四つ目。この四つの基準でこの行動基準が設定されております。
◎HP PERFORMANCE BEHAVIORS FOR LEADERS AND PROFESSIONALS
 お付けした図は非常に小さくて恐縮でございますが、一つの例示として御提示させていただいております。今ほどお話をした四つの大きな括りの中で、もう少し具体的な短文によって、それが何を意味しているかを社員がイメージできるような形にしております。実際にはこの四つがまず基本となって、一般社員、専門職系の社員、部下を持つマネージャー、それと役員レベルの人というような、マトリックス上で、それぞれの人の立場によりフィットするような短文に加工されているものがございます。その中から、上司との話し合いの中で、特にあなたはこの行動基準の中で、強いからここを伸ばそうとか、この点が少し改善をすべきなので、この点は今期は目標にしようとか、そういうふうな一部ピックアップしてきて本人とのやりとりに使うというような、あくまでガイドライン的な使い方をしております。
◎パフォーマンスに対するリワードの考え方
 こちらはTOTAL REWARDSという家の形をした絵が載っておりますが、第4のステップで、評価を報酬に結び付けるといったときに、このTOTAL REWARDSというのが私どもの会社の報酬についての考え方を現したものです。
 報酬というと、いわゆる月例の給与や賞与といったようないわゆる現金収入、ここで言いますところのBASE PAYという決まってもらえる部分に着目をしがちですけれども、私どもはそういった月例の部分とともにVARIABLE PAYと呼んでおりますいわゆる業績に連動した賞与、これはここでいう業績というのはHPワールドワイドの業績に連動した賞与。それから、ここの中には営業の方が営業活動を通して達成した達成度に応じて払われるインセンティブも含まれております。
 それから、REWARDS & RECOGNITIONというちょうど真ん中にあります層は、これは私どものユニークな仕組みだと思いますが、E-AWARDSといいまして、ウェブ上にポイントを持っておりまして、マネージャーは自分の部下がちょっとした成功とかちょっとした達成をしたときに、例えば50ポイントあげる、100ポイントあげる、200ポイントあげる、そういうふうに活用する仕組みでございまして、これもグローバル共通の仕組みです。例えば日本ですと、1ポイントは120円というふうに決めます。インドですと、1ポイント何とかルピーとか、その国々によって経済価値のレベリングがされていますので、ある1人のマネージャーが日本人とインド人と中国人の部下を持っていても、1ポイントはその国に行けば同じ価値になりますから、それをちょっとしたアワォードとしてあげますと、ウェブの中にためておきましていつでも現金に引き換えることができる、そういう仕組みなので、ここでもマネージャーの裁量のもとに、ちょっとしたお褒めの言葉と共にお小遣い的にといいますか、そういう使い方をする機会を提供しております。
 それから、TOTAL REWARDS の一つの要素としては株式を使った報奨があります。
 また、健康保険や年金といった福利厚生制度もこのフレームの中に入り、月の給与や賞与だけではなくて、こうした全体の処遇制度をトータルで考えて、これを市場、日本であれば日本のマーケットの中で競合的な状況に保つことが優秀な人材を会社に惹きつけて、また優秀な人材を獲得できるキーであるといった考えを持っております。
 パフォーマンス・マネジメント・ツール
 今ほど申し上げたのが、私どもの人事考課制度の全体像及び各ステップでございますが、この後は、それを実際にどのように運営していくか、どのように社員と共有し、どのようにそれを伝えていくか、そういうお話を少し申し上げたいと思います。
◎目標設定と評価 ツール
 私どもがパフォーマンス・マネジメントということを行うに当たりまして、ワールドワイドで全社員が同じツールの上でマネージされるような仕組みになっております。こちらに例として御覧いただいておりますのは目標設定と評価のツールです。ちょうど画面の真ん中にPERFORMANCE PLANと書かれたゾーンがありますが、ここが目標を設定し、その目標の結果をレビューするために使うゾーンで、やや真ん中、やや左にACTIONと書いたところがありますが、そこを操作しますと、自分の部下に対して立てた目標設定シートが出てきて、そこに部下と相談をしながら書き込み、また、ダウンロードして書き込み、アップロードするとこのデータベースにまた戻るというような仕組みになっております。
 それから、画面の右側の方のPERFORMANCE RATINGと書いてあるところが、人事考課の結果を入力するゾーンで、この三角の部分を押しますと、標語がプルダウンされてきますので、マネージャーはその部下に対して、A、B、C、Dのような、どういう評価を与えるかというのもこの画面上で操作をすることになっております。
◎ASSESSMENT FORM(目標設定シート)
 このシートは、目標設定シートの例です。タイトルは英語になっておりますが、実際は日本語で書くようになっております。ワードのファイルなので、先ほど御覧いただいたシステムでダウンロードしますとワードのファイルがダウンロードされてきますので、そこに対して部下の役割、目標、または前年、今期のレビューなどを書いて、それを保存しますと、またシステムで参照できる、そういう形になります。
◎ASSESSMENT FORM(目標設定シート)(続き)
 これは続きですけれども、今年の目標に対した結果を見て、どのように評価をするか。または来期はどういったことをやっていくかというようなことをワードファイルに書いていく、そういう評価シートで、以前はかなり細かいことまで書く評価シートでありましたが、ここ近年はここに書くことに時間を費やすよりも、実際に伝えることに時間を費やす、そういう方針がグローバルに出ておりまして、日本でもその方針に基づいてやっております。
◎今期の成果および来期の目標の確認
 今、御覧いただいた評価のシートを部下とともに作成しまして、先ほど初めに見ていただいたところでリリースというボタンがございますので、リリースをしますと、部下に対して、あなたの目標シートがすべて埋まりましたと。ついてはあるURLをクリックしてそこに対してコメントを入れてください、そういうメールが部下に自動的に飛ぶようになっております。したがいまして、この通知を受けた方は、そのシートを参照し、これまでマネージャーと言ってきたことがきちんと合っているかどうかというのを確認して、そこに必要であればコメントを入れる、そういう流れができております。
◎昇給・ストック ツール
 同様でございますが、これは昇給とストックのツールで、マネージャーは部下の一覧が同じ画面上に出てきますので、ここで現在の部下の報酬がどのくらいであるのか。それは報酬で定められた枠の中のどういった位置にいるのか。そして今後自分に与えられたガイドラインの中で、その部下に対してどれだけの昇給を与えるのかということをマネージャーは考えてこのツール上でインプットをして、また同様に、そこが固まれば部下に結果が通知が行くという流れになっております。
◎人事考課の時期と種類
 先ほども申し上げましたように、私どもの特徴としましては、評価が決まれば自動的に給与がいくら上がるという仕組みにはなっていないために、現在の制度では3回、人事考課に関連して面接をする機会があります。
 まず一つは、前期のフィードバックと今期の目標設定をどうするかというところの機会があります。これは今期の目標等が分からなければなかなか動きにくい部分もありますので、私ども会計期が11月から始まって翌年の10月までですので、11月の初めにこれが行われます。
 それから、評価がスタートとして、先ほどの標語、人事考課の結果が決まりますと、それのフィードバックが1月にあります。人事考課は当然会社の予算ともかかわってきますので、会社の予算の中でそれが最終的に確定しますと社員に伝えていいというフェーズが大体1月頃になりますので、その段階で社員は自分がどういう評価を受けたかを知ることになります。
 更にその評価の結果を受けて、昇給率が決まりますので、社員はその後にまた昇給率を知るという機会が生じてまいります。こういったように三度あるというのも一つの特徴であると考えております。
◎今後の課題
 最後、今後の課題について申し上げたいと思いますが、このような制度を運用しておりましても、多々改善する点はありまして、その中で二つ御紹介をいたしますが、まずFACE TO FACEの2WAYコミュニケーション、これはもっとやっていかなければならないというふうに考えています。先ほど来、お話をしましたように、システム上で強制的にすべて通知が行くので、社員は全員が自分の目標または考課の結果、昇給率ということが通知をされますが、更にその後でそれをフォローして、なぜそうなったか、どこを伸ばしていかなければいけないかというところを伝えるのが実はより重要な訳ですが、私ども労働組合が、組合員にとったアンケート結果によりますと、顔を合わせて対面できちんと面接を行っていない人が回答者の7%いたということはかなり改善余地があります。
 それから、人事考課の結果、A、B、Cといった、その結果についても必ず伝えないと先に進まない仕組みになっておりますので、全員知っておりますが、それについて面と向かってきちんと伝えてないというふうに回答した人が19%います。もちろん良い評価をした人にはすぐにでも伝えたいというマネージャーの気持ちは分かりますが、そうじゃない人をいかにフォローして次の改善に結び付けていくというのは人をマネジメントしていく上では大切ですので、これも非常に大きな会社の課題であると考えています。
 また、同様の組合のアンケートで、人事処遇制度に対しての理解が不十分、というふうに答えた方は20%。これも同様で、いかに会社が良い仕組みを入れても、それをきちんと理解していないことには、会社が思った意図どおりの働きができませんので、これは私どもいろんな人事の情報を伝えるツールがまだありますので、今後も引き続き改善をしていくポイントであるというふうに考えております。

(パワーポイント映写終了)


 いろいろまた御質問をお受けしたいと思いますので、以上で私どもの発表は終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
鹿嶋会長
どうもありがとうございました。
 ちょっと時間が押していまして、質問に対する時間があまりございません。どなたか1人ありますか。
袖井委員
今回、働きやすい会社で評価されて、納得できる評価制度ということだったのですけど、これを拝見していると、マネージャーの責任はすごく大変だと思うのですが、この方たちは何人ぐらい評価なさるのかということと、マネージャー自身の評価もされるシステムになっているのですか。
一守氏
今、大体マネージャー1人が見る社員が10人を一つの基準としております。プロジェクトその他によってもっと多い社員を抱えている人もおりますが、10人は大体持っているような感じになります。
 マネージャーの評価と今おっしゃったのは、マネージャーが自分のという意味でしょうか。
袖井委員
マネージャーが、例えば部下が非常に業績悪いと。そうするとマネージャーの評価が低くなるのですかという、その辺のところ。評価する人の評価はどうやってやるのか。
一守氏
必ずそのマネージャーの上、二つ上が評価をしますので、A、B、C三つの部署があれば、当然その中でパフォーマンスによって、またその比重といいますか、重みづけが変わってきますので、それなりの評価をされることになります。
山田氏
組織図の各階層で評価をやっておりますので。
袖井委員
段階的に。
山田氏
段階的に全部。
矢島分析官
今、お伺いしたキャリアアップのシステムと処遇ということが関係して、社内で人材が育成されてきている感じは分かったのですけれども、そのことと最初におっしゃったダイバーシティ、多様な人材を活用したり、あるいはキャリアで人を採用したり、そういうことにおいてこのシステムというもののメリットというのはあるのでしょうか。
一守氏
まず、部門の目標というのは、会社の目標なりビジョンがあって部門におりてきますが、当然部門の上のレベルの長としては、会社からおりてきたものをその部門でどう活用していくか、どういかしていくかというのを考える必要がありますので、そこで自分の現在のリソースと見比べて、現行リソースにはこれだけやってもらいたいと。一方、それで補えないところは当然社外から人を採用してそこに就かせるというのが一つあります。
 それから、ダイバーシティといってもいくつか観点があると思うのですが、まずは純粋にいろんな考えを持った人をいかにマネジメントするかという点は、現状多くの方々が既に多様化しておりますので、そこをいかに目標を与えてマネジメントするかという視点が一つ。例えば障害者の方々は会社として目標を得て、なるべく採用を意識してやらないと難しい場合もありますので、そこは会社、例えば人事等がサポートをして、適切な部署に送り込んで、そういう人が部門に行ったときにきちんとパフォーマンスが発揮できるような勤務制度の柔軟性ですとか、働く場ですとか、そういった整備を行うのもパフォーマンスマネジメントでカバーできる領域だと思います。
山田氏
ちょっと補足させていただきますが、我々年間採用しているのは、新卒が150名ぐらいで経験者は300名から400名採用しております。新卒の場合はエントリーレベルといって、同じレベルからスタートしますけれども、経験者採用の場合には、実はポジションの空きができると各マネージャーが公募制のシステムを入れなければいけないのですね。実はグローバルに全部見れるようになっているのですけど、公募システムの中に候補者が社内だけに限る場合と、社内の欲しいケースと分けますと、社内のケースが出てきますと、採用部に情報が回ってきてそこで即採用活動に入ります。
 そのときに、あるジョブレベルと言っているのですけれども、職位レベルと職務内容が非常に明確に記述されたものが出ますので、その中で一番合う人を市場なり社内から採ってくるというような仕組みになっております。
池永調査課長
2つ質問があります。資料の23ページで、「社員がより優れた結果を出すための環境を作る」とありますが、2でディベロップメント(能力向上)の機会を提供する-必要なトレーニングを与えると記されていますが、必要なトレーニングというのは、チャレンジングな仕事の機会を多く与えるということなのでしょうか。それともトレーニングということで何か特別にやるのでしょうか。もう一つの質問は、6で働く環境の選択肢を与えるとありますが、それは先ほどおっしゃっていた柔軟な就業のことだと思いますが、具体的には時間なのでしょうか、それとも例えば転勤や配属だとか、具体的にどういったところが柔軟なのかお伺いしたいと思います。
一守氏
まず2番目のディベロップメントの機会につきましては二つありまして、トレーニングに参加をさせて、よりスキルをアップさせるという点が一つですが、やはりOJT等を通しての能力向上という、その機会を与え、例えばプロジェクトに参加をさせる、よりストレッチの仕事を与えると、その二つが重要であると思っています。ディベロップメントというとトレーニングに目が行きがちですけれども、むしろ後者の方でいかに能力開発の場を与えるかという方がむしろ重要なのではないかと思います。
山田氏
比率で言いますと、多分座学の部分と上司のコーチングの部分と、今、一守が非常に強調していますいろんな仕事として与える部分で、人材がどこで開発されるかという時間的な配分であると、恐らく座学の部分が10%ぐらい。上司からのコーチングとか、周りからのインプットが大体二割ぐらいかなと。人が一番成長するのは実際に使っているということで、一守が先ほどから強調していますけど、新しい仕事とか、クロスファンクションのプロジェクトに入るとか、例えば新しい会社を作るプロジェクトに入るとか、アクエーションなんかもありますので、そういうところの方がむしろ7割ぐらいは多分影響しているのではないか。7に1なんていう言い方しているのですけど、そういう考え方です。座学の部分は結構ありますけど、人材開発の比率はそういうふうに考えています。
一守氏
もう一点の働く環境の選択肢でございますが、これは日本の法律とも絡みますので、その中で何ができるかということを考える必要もありますが、これまで主に時間の選択肢、短時間勤務でも、短時間の、例えば1日4時間、5時間、6時間の中から選択しなさいというよりも、1日4時間以上だったら良いというような、例えばお子さんを育てている方に対して、そういう提示をしてなるべく選択肢を広げてきました。今後はより仕事の進め方の自由度ですとか、仕事の密度を自分でコントロールできるとか、そういうような、より自律性をもとに自分の判断で働けるような環境をもっと作っていきたい。まだまだ不十分だと思います。
鹿嶋会長
ありがとうございました。
山口委員
決定的な成果評価制度ですよね。それでやはり将来性だとか、できるだけ主観を入れて客観的にということは分かるのですけど、人によっては、今はそうだけれども、将来性がある、そういうような評価というのは全然ないのですか、今後の課題の中に。営業成績が今良ければ将来上がるとは限らないと思うのですけれども。
山田氏
これはあくまでも今年度の一年間に与えられた課題とそれに対する評価です。このほかに実はタレント・マネジメントということをやっておりまして、二つの軸で考えているのですね。現在の評価はどういう軸がありますかと、この人のポテンシャルはどうですかと、二つの軸に合わせて、いろんな会社さんではナイングリッドとかフォーグリッドとかやっているのですけど、そういうレビューを合わせて、実際に個々の当該年度の評価+各個人の持っているポテンシャルを見て、この人は次にプロモーションをかけましょうとか、例えば次のローテーションかけましょうとか、いや、この人は仕事が合わないのでミスマッチが違うところへやったらどうか、彼は再教育したらどうかということは別の軸で回っています。
山口委員
あるのですね。ここは今年度ですね。
山田氏
今年度の業績評価のシステムです。ポテンシャルには別の軸、二つ目の軸でこうやる。
山口委員
それはとても大事だと私は思ったものですから。
山田氏
ありがとうございます。
鹿嶋会長
いずれにしてもマネージャー大変ですよね、差をつけるというのだから、なかなか一般社員よりマネージャーの方が大変じゃないですか。客観性をどう確保するのか、それから、2%から5%で昇給範囲決めるのでしょう。それも大変ですよね。
山口委員
細かい人事制度もあるのですか。
一守氏
基準のピッチではなくて、こういうレンジを持って、その中でどう、何段階というよりもパーセントで考える。
山田氏
やっていきますと、真ん中へ寄ってしまうのです。日本人は真ん中に寄りやすいのです。
鹿嶋会長
質問もたくさんあると思うのですけど、質問がある方はペーパーで出してください。それはヒューレット・パッカードさんの方に送りますので、すいません、よろしくお願いします。
 お2人にはこの場で退席いただくことになります。どうもありがとうございました。

(山田氏及び一守氏退室)

鹿嶋会長
さて、次は「多様な選択を可能にする能力開発・生涯学習に関する施策」についての各府省書面調査結果について、事務局から説明をお願いいたします。よろしくお願いします。
久津摩調査官
調査結果の説明の前に、資料4の方でスケジュールがありますので、まずこちらから御説明を申し上げたいと思います。
 左の方に書いてありますとおり、これまで専門調査会では有識者ヒアリングを実施してきたところでございます。この有識者のヒアリングにつきましては、次回の10月2日で農林水産分野の川手日大助教授から御説明いただきまして、それが最後ということになります。次々回の10月23日からは各府省のヒアリングを予定しております。ヒアリングの内容等については後でまた御説明いたします。そのヒアリングを終わりました後に年内に論点整理をしまして、年度内目途に報告書の取りまとめをするということを考えております。
 一方、検討会の方ですけれども、これはこれまで2回開催をしてまいりまして、これも今後も必要に応じて随時開催してまいりたいと考えております。
 本日は、今後、各府省のヒアリングを実施する前に、既に実施いたしました書面調査の結果について御説明をしたいと思います。資料3-1から3-3を御覧いただければと思います。
 まず、この調査なのですが、各府省に対しまして4月から5月にかけて書面で実施をいたしまして、これはそれをまとめたものでございます。この結果につきましては、7月21日の第2回の検討会の方では既に御説明をしております。
 この資料3-1の1枚目を御覧いただければと思うのですが、これは第1回の検討会でもお配りしておりますけれども、今回の調査の対象は能力開発・生涯学習のすべてではなくて、社会参加のための能力開発・生涯学習に限定するということで、それから多様な選択としては雇用だけに限らず非雇用も含めるということでございます。一番下のところに書いてありますが、対象は社会人とするということで、学生のみを対象とするものは除かれているということでございます。
 まず、資料3-3に基づいて調査の結果を御説明したいと思います。非常にたくさん、67ありましてちょっとややこしいのですが、まず左端の方を御覧いただきますと、計画の記述が載っております。これは第2次と、明朝体で第1次も若干入っておりますが、計画の記述が載っておりまして、この計画の記述に当てはまる施策を各府省に挙げていただいたということでございます。したがって、この資料3-3では各府省の施策が基本計画の順番に整理をされているということでございます。
 調査をしました内容は一番上の欄に書いてあります施策の目的、平成16年、17年度の具体的実施状況など1から8までの項目について聴きました。ほぼ上に書いてあるとおりで、調査用紙には注意書きとか入っておりますが、大体上に書いてあるとおり聴いております。そして各府省の回答をほぼ書かれたとおりにここに記しているということでございます。
 個別に説明してまいりますけれども、膨大ですので、個別の施策についての詳しい説明は省略いたします。
 全部で67回答があったのですが、大きく分けると三つになりまして、まずは雇用の分野における能力開発が非常に多く、計画の3のところがそれに当たります。これは厚生労働省の施策が多くて、20ばかり施策の回答がありました。次に農業分野ということで、5ページ以下に計画の第4分野として農林水産省から七つばかりの施策が上がっております。それから、7ページ以下ですけれども、10のところで、教育・学習ということで、これは文部科学省などから30ばかりの回答がありました。その三つに大きく分かれております。
 簡単に見ていきますと、最初に厚生労働省から三つ挙がっておりますが、これは計画に書いてありますのが、在職中の女性に対する能力開発ということですので、それについての情報提供、相談などの業務が1から3まで挙がっております。それから、4のところで女性と仕事の未来館、ここですけれども、こちらの運営事業のことが書かれております。それから、5については、在職中の労働者に対する、これは公共職業訓練の実施が載っております。6については、企業の取組に対する支援、企業内の教育訓練についての支援が挙がっておりまして、キャリア形成促進助成金のことが書かれております。
 次に、2ページで、労働者の自発的な職業能力開発の支援ということで、ここでは厚生労働省のキャリア形成促進助成金と併せて教育訓練給付制度のこの二つの制度のことが書かれております。
 次に経産省の調査研究のことが載っておりまして、9以下は、これは再就職に向けた支援です。それより上が在職中の支援だったのですが、これは再就職に向けた支援でございます。そして、ここには、まずは育児・介護等で辞めた女性等の再就職支援のための施策がいくつか挙がっておりまして、9は、職業訓練を育児時間等に配慮したものとすることといったことが挙がっております。10については、21世紀職業財団における相談事業と「フレーフレーネット」のことが挙がっております。
 次のページに行きまして、3ページ、12から14までは、内閣府の再チャレンジ支援等の施策が挙がっております。次に15がポジティブ・アクションとしての再就職モデル開発事業が挙がっておりまして、16が再チャレンジサポートプログラムの拡充等が挙がっております。次に17から21は再就職を希望する女性に対する職業能力開発ということで、17から21までは先ほどの1から7までの施策が再就職支援の観点から再び掲げられているということでございます。
 次に4ページでは、多様な就業ニーズを踏まえた雇用環境の整備ということで、これはパートタイム労働などのことについて、パートタイム労働対策の総合的な推進のことなどが載っております。
 (5)の23ですけれども、この23と24は女性の起業支援で厚労省と経産省の施策が載っております。次に25に行きますと、今度は雇用と起業以外の就業環境整備ということで、厚労省の施策、これは在宅就業のことが載っておりまして、26では総務省のテレワーク・SOHO推進のための施策が載っております。
 それから、4のところは、農林水産分野ということで、27は地域の方針決定や農林漁業経営の女性の参画推進のための情報提供等の施策が載っておりまして、28はそれに関する調査研究が載っております。29は先進事例の研究でございます。30は男女共同参画に関する研修の話が載っておりまして、農林水産業分野のリーダー的な女性に対する男女共同参画の研修を実施するということが載っております。31は女性の農林漁業経営の法人化等に当たっての女性の相談とか、女性に対する情報提供、こういったものが載っております。32は、技術・経営管理能力向上のための研修の実施が掲載されております。33については新規就農者に対する情報提供と農業大学校における研修などが記述されております。
 それから、次に、34から67までは文部科学省等が実施しております教育・学習の充実でございます。35から37までは専修学校や放送大学で実施しておる生涯学習の施策が載っております。39は学校施設の開放促進のことが載っております。40から53については、「青少年の体験活動等の充実」ということで、この中には小中高生を対象とするものもありますので今回のテーマと関連性の薄いものも含まれております。40の地域ボランティア活動推進事業、42のボランティアの活動についての普及・啓発、こういったものは関連があるかと思います。
 飛ばしまして、54については、生涯学習フェスティバルを全国各地で開催するというものでございます。55は経済産業省が実施しておりますジョブカフェの事業でございます。56から59は、高度情報通信ネットワーク社会、IT化に対応した教育の推進に関する施策がいくつか掲載をされております。60は、現代的課題に関する学習機会の充実ございます。あと、いろいろ大学における単位認定の話でありますとか、NWECの方で実施されている施策などが掲載をされているということでございます。以上でございます。
 文部科学省の施策につきましては、今御説明しましたのは生涯学習の担当からの回答が中心でございまして、ほかの局の分が抜けているのではないかという指摘もありましたので、そういったことも今文部科学省の方に投げかけております。
 資料3-2を御覧いただければと思うのですが、今いろんなたくさんのがあった訳ですけれども、それぞれが「上へのチャレンジ」、「横へのチャレンジ」、「再チャレンジ」、「その他」ということで、これは調査項目にもありましたので、先方の回答も踏まえて分類をしております。それから、国が直接実施している事業、教育訓練機関、企業も含めまして、企業、大学等への支援を行っている施策、自己啓発への支援、その他、このようにA~D、A~Eまでの施策ということで一応分類をしております。
 また、この表については、四角で囲んだのが第3分野、黒いのを付けているのが第10分野で、それ以外が第4分野ということでございます。そして平成18年度からの施策を青字にしておりまして、赤の「※」を付けたのが終了した事業、そういう分類にしております。
 これについては、今後、報告書をまとめていくことになりますけれども、このとおり、この分類で見ていくのが良いかどうかというのはまた改めて議論いただければと思います。ほかにもいろいろ切り口はあろうかと思います。
 次に資料5を御覧いただければと思うのですが、この回答につきまして、第2回の検討会で御説明しました折にいろいろ御意見がございまして、こういったことを追加して聴いてもらいたいという話がありましたので、ここの4の(1)、(2)でございますが、これをヒアリングの際に各府省に答えていただこうということで、これは既に、時間もございませんので、鹿嶋先生にも御了解いただきまして、各府省の方に送っております。もし、今日御覧いただきまして、ほかにもお聴きされたいことがあるということであれば、今日おっしゃっていただいても構いませんし、ヒアリングの際に直接お尋ねいただいても構いません。
 ここに(1)、(2)とありますけれども、まず(1)の①としまして、男女別のニーズや効果に関するデータを把握し利用しているかということで、これは例えば2ページにありました職業訓練などについて、人数とか、アンケート調査の結果が評価する、しない、いろんなのが載っているのですが、それが必ずしも男女別のものがその場で聴いても回答がなかったということでございまして、要するに情報として書面調査の結果来ていなかったということで、その情報を下さいということでございます。そして、それを把握していて利用していれば、把握し利用している状況を教えてくださいということでございます。
 それから、その次につきましては、アウトプット、単に何人研修に参加したとかそういうことだけではなく、それがその後の就労に結び付いているかどうかとか、マクロデータ上の変化に結び付いているか、そういった評価を行っているか、これもいくつかを見ると非常に欠けているところがあったということで、こういった意見が出たのでこれを求めることにしているものであります。
 ④と⑤については、まず⑤のところからいきますと、企業のニーズなどをきちんと把握して、それを研修の内容などに反映させているか、こういった疑問も出されましたので、そういったことについて聴くということでございます。④については、これは事前の能力開発に参加することについてのPRなどによる動機付けや、事後の就労の支援、マッチングをさせて、適切なところに行かせたり、研修が終わった人をきちんと企業の方に紹介したりいろいろ就労支援をしているかどうか、こういったことをやっているかということを聴くということでございます。
 ③につきましては、事業全体として、個別の施策だけでなく全体として評価しているかということについても聴くということで、この五点。
 それから、厚労省に対しては、最近非正規社員が増えており、能力開発から外れやすい傾向にあると考えられますけれども、現在の制度、例えば訓練給付金制度は、雇用保険への加入が条件なのですけれども、正社員が中心でありますので、こういったことについて対応されているのかどうか、これも聴くということにしております。
 以上の六点について、既に各府省に対して文書で流しております。
 ということで、次々回10月23日以降、今回の書面調査結果と併せてこのことについても、各府省からまず答えていただいて、その後、質疑応答ということでヒアリングを実施することを予定しているということでございます。
 以上でございます。
鹿嶋会長
資料3-3について、調査官の方は、この資料の見方について説明したということでありまして、施策が67もあるから、なかなか難しいのですが、皆さんは基本的にこれを読んでください。
 それから、もう一つ、この報告書をまとめるときに、このままではつらいと思う。だから、これを少しあなたの方で読み込んで、全部は書き込む必要ないから、少しポイント、ポイントを挙げておいて、それは我々も出してもらうし、少しまとめておかないと、報告書をまとめるときに大変つらくなると思う。それは四つか、五つポイントを挙げて、サマリーを特徴的なものを出してもらいたいと思います。
袖井委員
青少年とか直接関係ないような施策があるけど、これは全部入れなければいけないのですか。
板東局長
私も文部科学省が前職でございますので、これをざっと見ると、このテーマにあまり関係ないものがたくさん入っているのと、本来なら入れなければいけない話が大分入ってないなという感じがしておりますので、これは少なくとも学習に関する部分は不十分あるいは少し差しかえなければいけないなという感じがしております。
袖井委員
どこの年代とっても全部男と女がいるに決まっているのですから、ちょっとずるいなという感じですよ。
林委員
今、たくさんの3-3について、ほかの方も言われましたように、3-1の説明のとき、能力開発、生涯学習にかかわる施策の対象の範囲は社会人とするという説明が最初にありましたので、その観点からこの資料の整理をやり直すというか、省くとか、それはお願いしたいなと思ったところが一点。
 もう一つは、最後の資料5のペーパーの中で、各省共通のヒアリング項目というのが①~⑤まである訳ですが、私がここから読み取れてないのか、説明を聞き取れてないのかなと思うのですが、よく能力開発、そういうことをやったときに、企業が求めているものと一致しているか、一致してないかということをよく言いますよね。そのときに一般的に一致しているか、一致してないかではなくて、前、神野先生がこの研究会でおっしゃったように、職業安定所からこういう仕事の人を求めているというのを企業が求めると。それに対して職業安定所は、あなたはここに行ってみてはどうですかという紹介をする。そしたら、そこの受け手の企業は、あなたにはこういう能力が足りないから、今回はあなたでは困りますと言って受け入れられないというときに、じゃあ、その能力をつけたらあなたのところは採るのかということで、それにマッチした職業能力開発あるいは職業訓練というものをして、再び送り込んで、責任を持ってそこで雇用させるというふうな仕組みをきちんと確立しなければ、ミスマッチというのが一般論で終わってしまうのではないかというような話があったと思うのですね。そういうことがこのヒアリング項目のどこから明らかになるだろうかというのがちょっと私は分かりにくかったものですから、ぜひともそこが⑤だけではちょっと違うような気がするので。
鹿嶋会長
その項目が各府省に共通して投げかけるような項目を五つ選んでいまして、今までこういうことはなかったのですよね。ただ、府省に来てもらって説明してもらったのですが、そうではなくて、一応この五つはカバーしてもらうということで投げかけてありますので、これについてはきちんとした答え返ってくるのですが、ただ、今、林委員が言ったような、そういう個別のものは、これは当日でも良いですね。
久津摩調査官
当日でも結構です。
鹿嶋会長
当日でも良いか、もう1回、投げ返しますか。
矢島分析官
今おっしゃったようなことで、基本的には今のシステムの中にないということが前提でして、5番の質問がありますけれども、ここを足掛かりにもう少し踏み込んで聴いていただけたらと思っております。ただ、全部の施策が該当するようなことでもないと思いますので、5のところをとりあえず共通の質問としておいて、そこからもう少し踏み込んで質問していただけたらと思います。
林委員
厚生労働省の中の問題ということになると思うのですね、具体的な施策のところで言うならば。だから5番のところで、すべての省庁に共通するというよりも、今言ったきちんとミスマッチをなくして、責任の問題、雇う側の責任の問題、教育をする側の問題としてきちんと効果的にしていくという意味で、厚生労働省に関してはここのところは特に共通ということではないけど、仕組みを作っていく訳ですから、ぜひ何とか独立させてでも、効果的なものを生み出していけるようなヒアリングができたら良いなと思うのです。
鹿嶋会長
例えば事前に厚労省にそういうものだけをちょっと流しておきますか。
久津摩調査官
書面を出すかどうかは別にしまして、お伝えをしたいと思います。
鹿嶋会長
林委員が言ったことは大変大きなテーマですから、一応それは流してください。
久津摩調査官
分かりました。
鹿嶋会長
ほかに何かありますか。要するに、この3-3については多少取捨選択が必要だろうというふうなことで、ただ、漏れているものについては無理ですので、それはこれからの課題として聞いておくしかありません。これは67施策、どのぐらいだろう。ざっと見て、67施策の3分の2ぐらいか。
矢島分析官
補足させていただきますと、資料3-3の中には、おっしゃったように青少年だけを対象にしたものが挙がってきてしまっていたのですけれども、3-2に整理するときに、そういったものを除いております。ただ、青少年を含んで全世代を対象とするものは今3-2の中に含まれておりますので、そのあたりも今後もう少し妥当性を整理する必要があるかと思いますが、3-3の方で入っている青少年だけを対象としたようなものは3-2からは外れております。
鹿嶋会長
3-2は入っていないですね。
矢島分析官
はい。それから補足として、挙がってきた施策についての特徴をいくつか申し上げさせていただきますと、チャレンジが分類によって3分野ありますけれども、その中では、再チャレンジに関する施策が多くなっておりまして、特に新規の施策で再チャレンジのものが多く出てきているということ。それから、農林の分野では、上へのチャレンジ、女性経営者の育成というものがかなり出ているというような特徴がございます。
 それから、分野による整理でございますけれども、厚生労働省の関係施策では対象者をきめ細かに設定しておりまして、例えば在職者、再就職者、在宅者など対象を設定した施策が多くなっておりますが、一方、文部科学省の関連施策では、誰でも、いつでも、どこでもというような生涯学習の考え方から、特に男女とかそういったことを分けないというような考え方の施策が多くなっております。
 それから、施策の中でCの自己啓発への支援という部分では、情報提供や相談がメインとなっているのですが、教育訓練給付制度というもののみが助成事業を行っておりまして、これだけがちょっと特異な存在になっているというようなことがございます。
 それから、評価方法というのがあるのですが、大きく3段階ぐらいございまして、単純に利用者、施策の対象になった利用者のカウントだけをしているレベルのものから、利用者アンケートの評価などを参考にしているものですとか、あるいはアウトカム的な数値目標を立てて、例えば再就職支援などでは就職率をきちんと見るとか、それから女性向けの創業などでは起業者の割合を見るとか、あるいは統計的な数値を指標にしたりという施策も出てきておりますので、評価の仕方ということも、今度のヒアリングのときにもう少し具体的なデータを示していただきながら聴いていけたらと思っています。
鹿嶋会長
良いですか、林委員。
林委員
はい。
鹿嶋会長
これは報告書のことを考えると、3-2と3-3はこのまま付ける予定でいるのですか。3-3は多少今から取捨選択するにしても。
久津摩調査官
多少取捨選択して、一応対象としては載せるけれども、主にメインとして文章に書く対象にはしないとか、そういうこともあるかと思います。
鹿嶋会長
まだ文章の構成というか、多分まとまってないですよね。今回やたら調査科目が多いでしょう。どういうストーリーを作っておくか。府省のヒアリングが終わらないとちょっと分からないですね。
久津摩調査官
そうですね。
池永調査課長
資料5で主なヒアリング項目を示していますが、一つの考え方としては、各省共通のヒアリング項目が、報告書の柱のたたき台になるのではないかと思います。柱につきましては、今、林先生の御指摘もありましたように、若干この形よりもう少し膨らませることになると思うのですが、どういう視点や切り口で報告書をまとめるのかを念頭に置いて、このヒアリング項目を考えています。このヒアリング項目で示したようなことを報告書の柱的なものの候補にできたら良いなと思っています。
鹿嶋会長
ほかに御意見ありますか。アウトカムの評価についてはどうなのだろう。予想される答えは期待できるのか。
久津摩調査官
今後ヒアリングしまして、回答が、あまりきちんとやってないということであれば、それを書くということになると思います。
矢島分析官
いくつかの施策でアウトカム的な評価をしていますという回答は来ているのですが、具体的にそれの結果の数値のようなものまでいただいてない部分もあるので、そういったものをできるだけ出してくださいというふうに今お願いしていますので、そういったものが出てくるとイメージがつかめると思いますし、あるいはそういったところでの課題も見えてくるかと思いますけれど。
鹿嶋会長
勝又委員、何かございますか。
勝又委員
私は、費用統計を仕事でやっている者ですから、インプットつまり予算上どのくらいを、その施策に費やしているかによって随分その施策自体の評価が変わるという気がしております。ここで、省庁が挙げている施策のひとつひとつについて予算額がいくらかとたずねたとしたら、個別に金額を出すのは困難だとの回答が返ってくることは容易に想像できます。しかし、結局、省庁が特定の施策にどれほど力を入れているかを知るには、例えば人員配置にどれほどを割いているかという見方もあるかとおもいますが、やはり人件費を含めて予算をどの程度確保しているかで分かる面があると思います。予算が主に建設費の場合は額としても大きくでてくる可能性がありますが、個別の費用の性質の違いを考慮しても、施策の評価にあたって、予算額で濃淡をつけて、各施策を評価するということはできないものかと考えるのですが、いかがでしょう。
矢島分析官
今までの考え方で、男女の影響調査的な考え方では、費用対効果的なところは今までの検討では踏み込んでいなかったのですけれども、男女のそれぞれのニーズや実際の就業状況とか、そういった課題にきちんと施策は応えているかということで、確かにボリューム的な問題になれば、おっしゃるような問題あると思うのですが。そのあたり、費用対効果という形で見られるかどうか、枠組みとして今そういう形にできていないように思うので、少し中でも検討させていただけたらと思います。
鹿嶋会長
よろしいですか。
勝又委員
はい。
鹿嶋会長
ほかにございますか。今日は大分急がせてすいません。
 それでは、大変御議論ありがとうございました。各府省の施策については、次々回以降、各府省庁からヒアリングを予定しておりますので、今後、引き続き調査・検討を進めていきたいと思います。
 次回の専門調査会は10月2日(月曜日)10時より内閣府5階特別会議室において開催いたします。事務局の方でほかに付け加えることありますか。
久津摩調査官
議事録のことなのですけれども、お手元に第12回の議事録があると思います。こちらについて御意見等ございましたらお知らせください。
鹿嶋会長
それでは、これで本日の会合は終わります。どうもありがとうございました。

(以上)