監視・影響調査専門調査会(第12回)議事録

  • 日時: 平成18年7月25日(火) 10:00~12:00
  • 場所: 内閣府3階特別会議室
  1. 出席委員:
    • 鹿嶋会長
    • 大沢委員
    • 勝又委員
    • 神田委員
    • 林委員
    • 古川委員
    • 山口委員
  2. 議題
    • (1) 開会
    • (2) 女性の能力開発に関する有識者ヒアリング及び質疑応答
      • 脇坂明氏(学習院大学教授)
        「女性の能力開発」
    • (3) 施策についての苦情及び人権侵害事案の処理状況について
    • (4) 女性の能力開発に関する有識者ヒアリング及び質疑応答
      • 女性ユニオン東京 伊藤 みどり氏
        「パートタイム労働者の能力開発について考える」
    • (5) 閉会
鹿嶋会長
それでは、本日の審議を始めさせていただきます。おはようございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 あらかじめ事務局から連絡させていただいたとおり、本日は多様な選択を可能にする能力開発・生涯学習に関する施策について、有識者の方からヒアリングを行うことと致します。本日は学習院大学教授の脇坂明教授から、女性の能力開発についてお話をお聞きすることにしております。
 その後、男女共同参画施策についての苦情の処理状況について、事務局から説明をしていただきます。それでは、脇坂先生、どうぞよろしくお願いいたします。
脇坂教授
脇坂でございます。よろしくお願いいたします。
 私は、四半世紀にわたって、女性の労働の研究をしておりまして、現在女性の能力開発で重要だと思っていることをお話ししたいと思います。ただ、今日の資料やパワーポイントを準備する時間が余りなくてあちこち切り張りしたものですから、非常に分かりづらいものになっておりまして、資料があっちに飛んだりこっちに飛んだりすると思いますけれども、それは御容赦ください。
 私が今、女性の能力開発で大きいと思っているのは四つであります。
 1)ワーク・ライフ・バランス
 2)女性の再就職
 3)パートの能力開発
 4)職業能力評価制度
 この四つが重要だと思っております。
 時間の関係上、今日は3番目の「パートの能力開発」、これに少なくとも30分ぐらい使いたい。あとは一応資料を付けてきましたので、御質問があればお話ししますけれども、1番、2番、4番はポイントのようなものをお話ししたいと思っております。
 それでは、まず1番、2番、4番を簡単にお話ししたいと思います。資料1-1に「1)能力開発の一般論」というものが書いてありまして、この会議の佐藤委員も一度お話しされたと思いますけれども、能力開発には、実地方式、教室方式というOJT、OFF-JTがあって、それぞれインフォーマル、フォーマルのものがあり、それ以外に自己啓発があって、この能力開発をどう進めていくかは、従業員だけではなくて一国の競争力にも関わる重要な問題であります。
 ただ、女性の能力開発、女性特有のことが関係してくる局面というのを、幾つか思いつくままに並べてみました。
 能力開発は、OJTとOFF-JTで連携してやっていく訳ですけれども、基本的にはOJTが中心にあります。OJTというのは仕事キャリアそのものでありますから、配置、異動、昇進、その他いろいろ、女性と男性が同等か、均等か、差があるのか、いわゆる女性と男性の均等問題そのものに関わる古典的な課題がある訳でございます。均等法施行以降、育児休業法、その他どんどん出てきて均等になっていったとか、いやそうではないといういろいろな議論がある訳であります。
◎出産前後の妻の就業状況
 その中で一番大きいのは、よく使われるデータですけれども出生動向基本調査の「出産前後の妻の就業状況」ですけれども、均等法や育児休業法ができても、出産前後でずっと継続して働いている人の割合は、20%から25%と余り変わっていないというデータであります。私はいろいろなデータから均等が進み、職場が男女均等になっているのだと思っているのですけれども、出産をして勤め続ける女性が増えていない。
◎育児休業利用の有無
 これは「育児休業利用の有無」ですが、先ほど言いましたように、20%から25%ぐらい継続就業の人がいるのですが、育児休業を利用している人は増えているのです。増えているのですけれども、単に今まで育児休業を取ってなかった人が育児休業を利用したという形に置き換わっているという雰囲気です。これもいろいろな議論があり、これがあったからまだ継続就業者を維持しているので、もし育児休業制度や雇用保険がなかったら、もっと減っていたという議論もありまして、これは評価が難しいのですけれども、現在こういう状況にある訳であります。
 ですから、簡単に言いますとポイントは、古典的な課題でありますけれども、出産による就業継続が困難であるということが根本的にある訳であります。
◎図表 均等度とファミフレ度
 私はこういう議論をするときに、均等度とファミリーフレンドリー度、いろいろな企業、あるいは企業の施策、その実態を、均等度とファミフレ度という二つの軸に分けて考えている訳です。ですから、四つの象限があって、均等でファミフレ度も高い職場や、均等度は高いけれどもファミフレ度が低い職場など、こういうふうに分けて考えて、その中でどういった課題点があるのか。
 最近よく議論されますのは、均等とかファミフレの度合いを高めていって、本当に企業の業績にプラスに働くかどうかということが問題になる訳でして、ちょうど去年、ニッセイ基礎研究所の調査で、ここにおられます佐藤博樹さんが座長で、私もメンバーになり調査をした結果のポイントだけを紹介したいと思います。
◎均等度
 そのデータは、均等度やファミフレ度、そして企業の業績が測れます。最近『季刊家計経済研究』というところに載せましたので、そこに細かい結果や均等度、ファミリーフレンドリー度をどうやって点数化したかが載っております(資料1-2)。
◎業績指標
 業績は、同業他社に比べて生産性が高いかどうか等。それで、財務データを後からくっ付けまして、売上げや経常利益等、こういったものを付けてやってみたということです。
◎財務データ単体 ファミフレ度
 そうすると、一人当たり売上げはそんなに変わらないと言いますか、むしろ均等度もファミフレ度も低いところが一人当たり売上げは高くなっているのですが、この一人当たり経常利益は、均等度もファミフレ度も高いところで断然高くなっているという、私にとっては非常に好ましい結果が出ました。
 経常利益変化率という過去の変化率を見ても、ここの均等度、ファミフレ度が高いところで非常に良い結果が出ました。
 だから、いろいろな業績があるのですが、と言っても従業員増加率、売上げ、経常利益しかないのですけれども、少なくとも経常利益は均等とファミフレをセットとしてやっていけば業績が上がるということが示された結果です。
 ですから、場合によっては良い結果が出ることもあるのですが、ポイントは均等だけではなくて均等プラスファミリーフレンドリーな職場でないと、少なくとも経常利益、業績が上がらないということを示しました。
◎経常利益変化率 ファミフレ度
 私はこういう業績の計量分析よりも、もっと細かい職場のことをずっとヒアリング調査でやっているのですが、そのファミリーフレンドリー度を高めていくといったときに、単に制度だけではなくて、それぞれの職場で育児休業にしろ、短時間勤務にしろ、どういうふうにうまく職場が回っているか。それを現在も進行形でやっているのですが、能力開発ということに関しますと、育児休業、短時間勤務を取得したときに、その期間の能力開発というのが問題になる訳であります。日本の育児休業というのは、アメリカやイギリスと違って、非常に長い育児休業の期間があり、育児短時間勤務も最近は非常に長期間にわたって取れるようになっている訳であります。その期間の能力開発をどうするかという問題が、これはある意味で古典的なものでありまして、休業中は無理なのか、休業しているのだから能力開発はその期間あきらめるべきか、いろいろあるのですが、たまたま先月に休業経験者の話を聞くと、その期間に中小企業診断士を取得したという例を聞きまして、どうして取得したのですかと言うと、それは大企業で雇用も安定しているのですけれども、いつ自分の仕事がなくなるか分からない。「参考?」と書いてあるのですが、確かにそういうタイプを一つのモデルケースにすれば、休業中にいろいろ資格を取るということもできるのですが、ちょっときついかなというふうに思っておりまして、まだクエスチョンマークです。
 今度は短時間勤務なのですが、育児短時間勤務はかなり利用者がいて、基本的には育児短時間勤務というのはほとんどがフルタイム勤務者と時間均等比例で給料が支払われております。ですから、収入は減るのですけれども、どういった仕事でも仕事はそんなにレベルの質を落とすような仕事にはなってない訳です。
 ただ、本当にフルタイム勤務者と同等にできるかどうかという問題がかぎになっておりまして、取引先や社内での問題があって、例えば4時半とか5時で帰ってしまうと、それ以降の会社にとって重要な仕事、特にその職場が一人で完結する仕事ではなくて、社内の取引先、あるいは社外の取引先が関係する。そこが皆さん苦労されておりまして、現状は分かっていてもなかなかできない。
 今まで伝統的には、短時間勤務だから大した仕事ができないだろうということで、仕事のレベルを落としてほかのところへ行くというものでしたが、それはだんだん減りつつあります。そういうふうにすると、本当に給料の払い過ぎになってしまいますから、まだ残っている会社もありますけれども少数派です。ただ、本当にそういうふうに同じレベルの質をやっても、実際上は本当の意味で同じ仕事ができるかどうかというのは、今、各職場で試行錯誤中であるというふうに思っております。
 あと重要な、OFF-JTや自己啓発に参加できないということ。あるいは家事、育児で中断期間があるものですから、それが中途採用において評価されないということが女性特有のことが関係してくる話であるのではないかと思っております。
 こういった育児休業や、短時間勤務中の能力開発や、あるいはそれに対する処遇がそれほど問題なく付いてくれば、私は男性の意識がそれほど変わらなくても男性でも休暇が取得できる。ここがポイントだと個人的には思っておりまして、能力開発、処遇、昇進、そこが一番大きな問題で、これを解決できるかどうか。
 先ほども言いましたように、私は四半世紀女性のことを研究しておりますけれども、女性そのものに興味があるというよりも、こういったところが非常に面白いと言いますか、ここを突破すれば男性を含めた全体が変わるのではないかと思って、今ちょうどそういう事例が非常に多く、日本のいろいろな職場で増えてきましたので、非常に興味を持って研究を続けております。
 以上が、このワーク・ライフ・バランスに関係するところであります。
 次に女性の再就職なのですが、これはパワーポイントがなくて、資料1-1の2ページからになります。図表1が女性の学歴別年齢別雇用者比率です。御存じのように大卒女性が、若いときは労働力率が高いのですが、いったん辞めてしまうとM字にならない。最近、大学卒でも少し上がってきているのですが、中高年で働かないと言いますか、そういった状況が見られる訳であります。これは前々から重要な問題だと言われていて、大学、高等教育というのは非常に進学率も高くなって、親の金にしろ、税金にしろ、多く使われているのに、あるところまで働いて、あと中高年になってから働かない。一般的には大卒女性に限らず、女性全体の再就職の問題、特に大卒女性の再就職市場が非常に問題になっている。これは本人たちの問題なのか、あるいは企業の方の問題なのかと絶えず言われて、企業がなかなか再就職の市場を広げていないところに問題があるのか。あるいは大卒女性というのは、例えばパートタイマーのような仕事を嫌うなど、ぜいたくを言ってしないのか、そういうことが絶えず議論になる訳であります。
 そういったことで、大卒女性の再就職について、3年前ぐらいに分析したことがあります。データが二つありまして、日本労働研究機構、今は名前が変わりましたけれども、そこで5,000 人ぐらいの大卒女性を調査したことがありまして、それは供給側のデータです。あと会社側、需要側のデータがなかなかなかったのですが、女性と仕事の未来館というところで、実際に大卒女性を中途採用した企業に対して調査したことがあります。その需要側と供給側のデータを使って分析したことがあります。ただ、なかなか思ったとおりの結果が出ずに、今日も参考になるお話はできないのですが、少し見ますと、例えば資料1-1の5ページ目は大卒の何千人という女性を調査したときに、再就職に成功した人、希望だけしている人、あるいは現在働いている人の労働時間の希望と実際、年収の希望と実際が出ている訳であります。今、働いていなくて再就職を希望している人、実際に再就職した人、あるいはずっと働いている人も含めた全有業者ということです。
 そうしますと、労働時間は短い時間で働きたいという人が多いのですが、実際再就職した人とか働いている人は長いとか、年収もギャップがあるというような姿が、この図表5と図表6から見て取れる訳であります。
 次の6ページ目は、先ほど言いました企業側のデータでして、大卒女性を実際に採用した企業への調査であります。そうすると、上の方に図表7「大卒女性の評価」がありますが、実際に大卒女性の再就職、中途採用をやっている訳ですから、当然だと言えば当然なのですけれども、大体大卒女性を中途採用で採ったところの評判は高い。
 その下に分析したものが載っておりまして、ちょっと分かりにくいかもしれませんけれども、変数の方に年齢制限ダミーや、学歴重視ダミーというのが載っておりますけれども、これは三つを比較しておりまして、大卒を中途採用した場合でも、正社員のみ採用した企業、正社員・非正社員の両方を採用した企業、非正社員のみ採用した企業の三つを比較した形のものになっておりまして、そういう採用した企業のデータで、その中に年齢制限ダミー変数というところがあって、非正社員のみ採用というところがマイナスで有意になっております。これはどういうことかと言いますと、比較しているのが正社員のみの採用なので、大卒の正社員のみ採用した企業は、簡単に言うと年齢制限をやっている。年齢制限した企業の方が、正社員を採用する確率が高まるという結果が出てきている訳であります。
 そうすると、やはり全体としてこのデータは大卒女性を実際に採用した企業ですけれども、特にそこで正社員を採用した企業が年齢制限をやっている企業だということになってくると、やはり年齢制限が再就職を狭めているということが推測できる訳であります。 7ページ目に、日本労働研究機構の「求人の年齢制限に関する実態調査結果」というものが載っております。これは、1999年で、いわゆる法律、年齢の差別をしてはいけませんという努力義務ができたのが2001年ですから、それより前ですが、これは三千数社の非常に多くの企業に配っているのですけれども、ただ法律施行の2年前ということもあるのですが、9割の企業が上限年齢を設けている。ほとんどの企業が何らかの職種で年齢の上限は設けている訳であります。
 その中で、年齢制限撤廃の可能性のある職種を尋ねている訳で、私はこれが非常に面白かったのですけれども、上の営業職ぐらいの三つ、四つ、こういうのが年齢制限を撤廃する可能性はある。ただ、その割合が2割ということで、数字としては非常に小さい数字になっているのですが、こういったことが1999年の段階でもあり、2001年に法律ができても努力義務ということでなかなか年齢制限というのは、実際上仕事の中で外せないという問題が残されている。
 ただ、この年齢制限の話は別に大卒だけの話ではなくて、すべての学歴に共通のことなので、なぜ大卒だけが、他の先進国並みに仕事を継続しないとか、働けないとか、なかなか分かりにくいところであります。
 以上が、女性の再就職に関するポイントであります。
◎基幹パート
 今日一番お話ししたいのが、次のパートの話でありまして、資料1-1で言いますと8ページ目に「パートの基幹化」というのが書いてあります。パートタイマーに関して、いろいろタイプ分けの議論がありまして、神戸学院大学の中村恵さんいう人が、18年前ぐらいに大阪の20社ぐらいの職場を調査して、基幹型パートと補完パートの二つに分けて、その後パートの戦力化、基幹化の研究は、非常に進んでおります。
 パートが、単なる正社員の補助的な仕事や、バッファのような仕事ではなくて基幹的な仕事を行うようになってきたということが、ずっと言われております。
 8ページ目の第2段落で、去年実施された「パートタイム労働者実態調査」が載っておりまして、基幹パートの定義は、職務が正社員と同じパートで、この職務というのは通常従事する業務内容だけではなく、作業レベル、求められる能力、責任や権限の範囲を含んだ職務であります。そうすると、あなたの職場に基幹パートはいますかと聞くと、42.5%存在する。そういうパートがもう半分近くいるのです。私は3割ぐらいだろうと思っていたのですが、ここまで進んでいるということが分かります。その42.5%の事業所に基幹パートが存在して、それは一部のパートかと言いますと、そうではありませんで、存在する事業所のうちパートの中の5割以上が基幹型パートである。単に一部のパートではなくて、本当に多くのパートがいるということです。
 この基幹パートというのは、先ほど言いました、中村君の調査や、あるいは私の調査からも大体明らかですが、最初から難しい仕事をやっている訳ではなくて、最初は補完型パートという簡単な仕事から入ってスキルアップしてこういうふうになっていくというのが普通なのです。この基幹パートと補完パートでは、意欲や責任感もかなり異なりまして、同じパートと言っても全然違うということなのです。
 基幹パートがこのように増えているのですが、ただ本当にきちんとした能力開発の体系があって、あるいは処遇が伴って戦力化されている訳ではないのです。今日紹介しますような例はそういうふうになってきているのですが、大体においてそうではない。そのデータは、10ページ目の文章の第2段落目に、日本労働研究機構が2003年にやった調査で、非正社員を雇用している企業で、能力開発の対象者を、正社員も非正社員も全般とするのは26.8%です。正社員と非正社員の一部が22.9%です。半数の企業は入れているけれども、全体としてはまだ半分程度なのです。
 その下に、平成17年度の「能力開発基本調査」の結果が載っておりますけれども、OFF-JTは正社員の6割、でも非正社員は17.4%。計画的OJTというのは、もう最初に入ったときのマンツーマン的なもので、それほど高度なことをするのではないのですが、でも計画的OJTであっても正社員が48.9%で、非正社員が18.3%ということであります。このように、一方で基幹型パートというのが職場に多く見られるのですが、能力開発の面では対象にきちっとなってない。ただ、何となく基幹型パートの人たちは仕事が面白くて、それなりに上司や同僚が教えながらこういうふうになってきているというのが、現在の状況です。
 では、パートタイマーの人にそういう能力開発を受けたいという意欲がないのかというと、そうではありませんで、10ページ目の第4段落目なのですが、あなたは今後自分の知識・技能を高めたいと思いますかと聞くと、そう思うと答える割合が非常に高い。その下の就業形態に関する多様化調査であっても、職業能力を高めたいという希望は多い訳です。そうすると、今のパートの職場の問題点というのは、かなり進んでいるのだけれども、きっちりした形の制度に乗ってパートタイマーが能力開発をしている訳ではない。確かに正社員と同じような仕事を責任まで含めてやっており、ある段階までは昇格していくのですが、それ以上はなかなかいけないというのが、おおざっぱに見るとそういう状況があるのではないかと思います。
 こういったパートの基幹化に関する研究がかなり進んでおりますので、何とかもう少し基幹化の内容を詳しく知りたいということで、私が絡んだもので東京都の飲食店の調査と、アビリティ・ガーデンというところで小売業の調査をしましたので、それを少し紹介したいと思います。
◎調査2001
 これは東京都の調査です。人事の人に聞いても細かいことは分かりませんから、それぞれ店長とパートタイマーに配って調査しました。
 どういう調査をしたかと言いますと、その前にヒアリングをやりまして、飲食店に共通する29の業務を取り出しました。飲み物の準備・提供から始まって、トレーニングや、調理実習や、最後に人事考課、募集・採用まで、飲食店と言っても喫茶店からいろいろな業態があるので、この29をそろえるのも大変だったのです。そろえて、それぞれの仕事をだれがやっていますかというふうに聞いて、新人のパートがやっている、ある程度一人前にできるパートさんがやっている、パートナーの人がやっている、店長を除く正社員がやっている、店長がやっている、主にだれがやっていますかということを書いてもらったのです。
◎飲食店内のパートタイマーの業務
 その結果がここなのです。だから、点数が低いのが、より新人パートに近い人がやっていて、5に近いところは店長さんがしている仕事です。大体平均点でも、ある程度思った通りの結果が出て、飲み物、接客、清掃作業は新人パートや普通のパートがやっていて、パートリーダーぐらいになってくると、トレーニング、開閉店対応等をやって、あとは管理的な苦情処理対応や、従業員勤務割当の作成等、こういったものをやっている訳でありまして、これを一応定型業務と判断業務と管理業務と大体分けている。
 そうすると、パートの能力開発と言いましても、この辺はもう明らかにクリアーしているのです。2番のところも、リーダーパートは勿論クリアーしておりますけれども、リーダーにならなくてもできるようになっているのです。
 そうすると第2段階、判断業務から管理業務、この辺のところに行けるかどうかというところが、一番大きな課題です。能力開発の面でも処遇の面でもそうです。飲食店と小売業というのが、一番パートタイマーが人数も多いし活用が進んでいる業界なのですが、ここら辺が一番今、争点になってきているということであります。
◎調査結果
 「パートタイマーから正社員への登用制度があったら正社員を希望するか?」ということで、正社員登用制度というのは、今、3割ぐらいの企業に登用制度があるのですが、それでもいろいろな調査があるのですが、例えばこの東京都の調査でも、正社員になりたくないというのが7割ぐらいある訳です。正社員というのは、短時間正社員ではないですから、ここが一つの課題です。
 権限や責任の問題等もあります。
◎求められる能力開発とは
 これは、アビリティ・ガーデンで小売業に絞ってパート、アルバイトの能力開発のプログラムを作るというプロジェクトで、私が座長で、小売業の実態がどうなっているかを調べ、先ほどの29の業務と同じようなことを小売業でやりました。結果は省略します。
◎提言として
 最終的に提言として、例えば求められる能力開発の方向性としては、パート・アルバイトの活用に経営者、管理職の意識改革や、正社員と同様の能力開発機会を付与することや、上位職へのキャリアパスを展望できる仕組み作り、これが一番重要だと思っておりまして、展望できる仕組み作りなのです。それが見えてこないとだめです。確かに必ずそこに行きなさいと言ってもいろいろな事情で、例えば店長さんになってくると少なくとも1日6時間ではなかなか苦しいということなので、全員がそういったところに行く訳ではない。しかし、上位職へのキャリアパスを展望できる仕組み作りというのが重要ではないかという提言をして、このときは小売業の中で管理職パートや、リーダーパート、専門職パート、いろいろコースを作ったりしました。その後続けてやっていないようなので、これ1回限りかもしれないのですが、ここら辺が、非常に重要ではないかと思っております。
 小売業や飲食店で非常にパート・アルバイトが多いのですが、資料1-1の9ページ目の真ん中辺に、「パートの能力開発」というのがあって、店長さん等に聞くと、とにかくパートさんの能力開発が不十分であるという回答なのです。もっともっとパートの能力開発をしたいけれども、どうしてできないのかと言うと、そこに図表が載っておりますけれども、業務が忙しくて時間がないというところが一番の大きな問題、これは小売業です。それから、東京都の飲食店の調査であっても時間がない。確かにそうなのです。特に飲食店や小売業というのは、6時間パート、5時間パートというのが多いですから、その中でどういうふうにOFF-JT、OJTにもっていくかというのが大変です。
 ですから、小売業でも非常に苦しんでいてなかなかできないのか、進んでないのかと思っていましたが、たまたま私のところに中国の留学生が来ておりまして、小売業のパートの問題をやりたいということで、いろいろ日本の文献を探っていったら、私が強く言った訳ではないのですが能力開発が一番重要だということに本人が気づいてくれまして、3社ぐらいの総合スーパーの教育訓練体系をつい最近調査しました。そのうち1社に私がついていきまして、それもつい最近なのですけれども、11ページ目に「あるスーパーの資格とOFF-JT」というのが載っております。ずっとスーパーの調査をやってきたものですから、小さな感動を覚えましたので紹介したいと思います。
 このスーパーだけではなくて、中国人の留学生が調べたスーパーは大体同じような体系に変わってきている。大体このような形だということです。まず上にありますのが、グレードと言いまして、最近グレード資格とかグレード給というふうになっているのですが、資格と考えてください。それが職能資格だったり、いろいろなものが変わってくるのですが、このスーパーでは2年前か3年前から、いわゆる処遇をそろえた。メイト社員というのが、いわゆるパートさんのことでした。社員もメイト社員も入ったときはグレード1に格付けされる。
 売場の業務がある程度きちんとできるようになってくるのがグレード2でありまして、正社員の担当者とか、パートさんの場合はリーダーというふうに言われております。
 グレード3が係、係というのは売場の中のあるジャンルの責任者です。そこにパートさんでなっている人は、メイト係マネージャーに処遇をそろえたのです。当然そういうふうに処遇をそろえますから、教育訓練体系も同じようにします。それが11ページの下の方に研修プログラムがあって、真ん中辺にステージ1~5というのがあります。
 ステージ1~3までは、社員もパートも全く同じようにするのです。その隣にCBL、(コンピュータ・ベースド・ラーニング)というのがあるのですが、これはすべてのパートさん、すべての社員が勤務の合間に、それぞれの売場にコンピュータのようなものがあって、何々売場であれば必要なものの画面を見ていくという訓練を受ける。それ以外にも、それぞれの売場にとって必要な訓練を受けていく。
 先ほど言いました、係を担当するようになってくると、係運営スキルとか、ステージ4とかステージ5、この辺がパートさんの一つの大きな壁になっている。3万人ぐらいパートがいるのですけれども、圧倒的にグレード1が多くて、グレード2が800 人か900 人、グレード3はまだ数十人しかいない。ただ、制度が変わったのが3年前ぐらいなのです。ですから、新しい制度になれば、パートさんが入ってくるときここまで行けますと。同じような教育訓練を受けられてグレード3まで行ける。グレード3になるときに、勤務時間が一応その売場の責任者ですから週40時間になるのです。グレード2だと週30時間で、グレード1の場合は自分の希望する時間、週20時間~週40時間の間でできるのです。
 企業としては、もっとグレード3、グレード2を増やしたいと言っておりました。と言いますのは、ほとんど売場というのは社員の人が余りいないのです。ですから、このパートさんがグレード2とかグレード3ぐらいに上がってこないと、売場がきちんとお客さんに対して対応できないということなのです。
 だから、一つの壁はグレード1からグレード2なのです。その大きな壁になっていますのが、130 万円の壁なのです。グレード2になると130 万を超えてしまいます。週30時間なのですけれども、やはりグレード2ですから、それなりの正社員と同等の給与をもらっていますから130 万円を超えてしまう。だから、グレード1からグレード2に上がるときに130万円の問題があるので、何とかスーパーの担当者は早く解決してほしいと、その人は言っていました。
 グレード2からグレード3というのは、今度はまた労働時間が延びる。労働時間が延びても大概の人は、子どもが小さいころにグレード1で入って、グレード2とかグレード3になるころは、子どもが手を離れますので、週40時間でも大丈夫なのですけれども、やはりグレード2からグレード3に上がるのは責任の問題等、やはりかなり違ってきますから、そこが一つの壁だというふうに言っておりました。
 ただ、こういうスーパーのように、(少なくとも三社。私はもっと多いと思っていますけれども)、能力開発を基本的には社員と全く同じにして、処遇のことは余り詳しく聞いておりませんけれども、ほぼ同じにするような形になって来ている。8割とか9割ぐらいのパート比率になってくると、そうせざるを得ない状況まで来ている。いろいろ話を聞いてみますと、こういう制度の前はスーパーでもパートと社員の身分差別のようになってしまう。力関係のようになってしまっていろいろな問題が生じるので、やはり同じ方が良い。
 先ほど触れましたように、実際はこれになる前から、パートさんがかなり重要な仕事をやっている人が幾らでもいる訳です。それが能力開発の体系と処遇がきちんと追い付いてなかったのが問題だということなのです。それでこういうふうに変えて、私はやっとここまで変えてくれたかといふうに思っておりまして、私なんかはグレード3でも週40時間未満の人でも可能ではないかと思っているのですが、ここまで来ればかなりの問題は解決する。
 パート問題、フリーター問題でも一緒ですけれども、私はそれほど深刻な問題だと思っておりませんで、この能力開発やグレードが上がっていくところのキャリアパスというか、そこだけが見えるような形の仕組みさえ作れば良い。それを全部正社員になりなさいというような、正社員が何人になったとか、それは余り意味がないと前々からそう思っておりまして、例えばメイト社員の中にも、若年者もいるのです、いわゆるフリーターです。かなりのスーパーが今、24時間営業なのです。ここもたまたま24時間営業だったのですけれども、24時間営業ではなくても12時まで営業するのが少なくとも当然だと言われて、そうするとどうしても男性も入ってきますし、最初がそういうパートタイマーという形で入ってくる人が多いのです。問題はそこだけをとらえてしまうと、非常に単純な仕事で、能力開発もなくずっとフリーターだと。ところが、こういう仕組みさえ作っておけば、完全ではないですけれども、問題の8割方は解決すると思っておりまして、能力開発にしても処遇にしても、展望があるかどうかなんです。主婦パートの場合であると、130 万円の問題を解決さえすれば、グレード1~グレード2に上がろうとする人は幾らでもいる訳ですから、そこの仕組みを企業で作ってもらう。それから、社会保険の年収や労働時間の変な制限をなくしていくということで、私は8割方問題は解決するのではないかと思っております。
 結局、パートの一番の不満というのは基幹型パートなのです。全く補助的な仕事しかやってない人は、そんなに不満を持っている訳ではない。同じような仕事をやっているのに、何であるところまで行くと能力開発が全然違って、賃金で6割しかもらえないとか、ここなのです。A社の能力開発体系でも完全ではないですけれども、完全でないというのは私の目から見てであって、A社の人は完全だと言い切っておりましたけれども、これで良い制度だと思っているので当分変える気はない。これを各売場・職場できっちりと根付かせることが一番重要な課題だというふうに言われておりました。
 だから、少なくとも大手スーパーの幾つかがこういう形になってきておりますので、こういったものが広がって、先ほど言いましたような社会保険の制限等がなくなっていけば、そんなにフリーターの問題や、パートタイマーの問題は心配する必要はないのではないかと私個人的には思っております。
 以上が、今日一番お話ししたかったパートの能力開発に関しての問題であります。
 最後に、職業能力評価制度についてあと10~15分お話ししたいと思います。職業能力評価制度そのものは、女性の能力開発に直接関係ないのですが、レジュメの1ページ目の一番最後にも書いてありますように、自分がどんな能力を高めれば良いかという評価されるものがはっきり分かれば、キャリアアップや再就職のときでも非常に明確になってくる。そうすると、間接的に女性の能力開発に寄与するのではないかと思っております。
 これも、東京都の職業能力評価制度を作るプロジェクトに携わりましたので、それを紹介したいと思います。
 「ホワイトカラー・キャリア評価制度について」です。
◎なぜ評価制度をつくるのか
 なぜ評価制度を作る必要があるのかと言いますと、今までの資格というのは、簡単に言いますとペーパーテストで、その職場に必要なスキルではなくて、別の標準みたいなものを作って、その試験に通った人という形で、入ってからはずっとその資格を持っている。こういう評価制度だったのです。
 ところが、世界的な流れは大きく変わっておりまして、そういうスキルではなくて、ワーク・プレース・ベースド、職場をベースに置いたスキルを評価しなければいけないというふうに大きく変わってきております。ただ、それを全国レベル、国全体のレベルでやっているのは、イギリスだけでして、アメリカではスーパー業界の一部等です。なかなか作るのは大変なのですけれども、私はこれが一番良いと思っておりまして、それは実務経験に基づく能力評価というのが非常に重要である。単に研修歴やペーパーテストで作る評価の限界がいろいろなところで感じられてきている。そうすると、求人求職のミスマッチも緩和できる。実務経験に基づく評価基準の表を作らなければいけないということです。
◎実務評価は重要
 イギリスでは、NVQ(NATIONAL VOCATIONAL QUALIFICATION )を1987年から導入しております。最初のうちは評判が悪かったのですけれども、それなりに定着していって、これが雇用分野の9割以上をカバーして、1~5級まである訳であります。実務評価は重要だということです。
◎なぜNVQを参考モデルとするのか
 「なぜNVQを参考モデルとするのか」ですけれども、NVQは主に在職者が取得します。でも、失業者のような離職者も取得可能であります。職場で訓練し、職場で評価するところがポイントです。これが、これまでの職業能力開発と全く違うところです。こういうふうに世の中の流れはなってきております。ただ作るのは大変です。使い道は多いということで、一応イギリスで最初のうちは評判悪かったのですけれども、大分評判は良くなって、一応有効性は実証済みであるということで、東京都で作ろうという話がありました。営業職に絞って、営業でも調べてみたら分かったのですけれども、いろいろなタイプの営業がありまして、一口に営業といっても業界によって全然違う。でも何か共通のものを作ってやろうということです。
◎なぜ営業職なのか
 なぜ営業職というか、少なくとも東京都の場合ものすごくニーズが多い、特に中小企業のニーズが多いということで、ここに取り組んで、営業職がうまくいったら、どんどん経理とかに広めていく計画だったのです。
◎営業職の仕事能力
 どういうふうにやったかと言いますと、これはイギリスのNVQとほぼ同じやり方だったのですが、いわゆる営業のベテランの人に営業で重要なものは何かということを具体的に書いてもらったのです。
◎営業の1次能力(10大能力)
 10の能力に対して内容を記述してもらいました。10の能力というのは、商品知識から始まって、これに関してそれぞれベテランの営業の人に、どういう商品知識が必要か具体的に書いてもらいました。
◎能力評価基準表の作成方法
 書いてもらった2万のデータをコード化して共通のものを集めて、2次能力を作って、それを度数集計して、A、B、Cの3段階を設定した。
◎営業職の仕事能力の総括表(能力評価基準表)
 例えば、商品知識が1次能力だとすれば、書いてもらったのは、商品の機能・特性・用途・品質についての詳細な知識がある等、実際はもっと詳しいことを書いてもらったのですが、書いてもらったものをまとめて2次能力にして、そのまとめたものを商品知識とする。それを10でやってもらった。この作業を、国学院大学の本田君と学習院の院生を使って、私自身はアドバイスしただけですけれども、こういうことをやりました。基本的には、NVQの作り方と一緒です。
 ただ、イギリスの作り方というのは、それぞれの地域の労使の業界の代表者が来てこういうものをします。何が本当に必要かということをやって、日本ではそういうものがありませんから、先ほど言いましたベテランの営業の人に書いてもらったという作業をしました。
◎得点化による1次能力の重要度順位
 それで、重要度で点数化しまして、営業交渉力が一番トップに来たのですが、ずらずらと点数があります。
◎評価対象となる1次能力一覧
 必修能力と選択能力に分けて、評価するときにはこの四つが必要ですと、これは六つのうち四つ、それぞれ同じ営業と言っても違うから一番合うものを取ってくださいということです。
◎営業タイプ別にみた1次能力(10能力)の重要度
 それぞれ、産業別や地域別になっております。
◎評価制度の手順
 結局、どういうふうにやるかと言いますと、例えば在職者の営業の場合は、上司が必修能力と選択能力を選択して、評価して、点数を付けて、その点数の基準が1級は何点以上、2級は何点以上としますから、その評価結果を使って東京都営業1級というものを作ろうとしたのです。これは手続的にはかなりきっちりやったと思っています。
◎資格の導入見送り
 最後は「資格の導入見送り」ということになってしまいました。これは今までの資格制度の根本的な欠陥は、職場と直結してないということなのです。これは手間暇かかるのです。それぞれの企業のベテランの人が部下を評価しなければいけませんが、内容が非常に明らかですから、3次能力まできちんと分かっていますから、どこが自分に足りないということがはっきりするのです。評価制度は、今、国の方でもいろいろ作ろうとしているのですが、なかなかこういう発想ではないのです。基本的に重要なのは実務能力なのです。それをOJTでやっていることが一番重要で、それにOFF-JTが絡んでくるということですから、外部の資格を幾ら持ってきても限界があります。それは今までイギリスでもやっております。ドイツはまだ作ろうとしてないのですけれども、ドイツでも今までの制度のいろいろな問題点が言われているのです。
 こういったものができてくれば、先ほどの女性の再就職の問題等、キャリアアップするときの問題も、当然全部解決する訳ではありませんが、半分ぐらいは解決するのではないか。ただ、非常に手間暇はかかります。手間暇はかかるけれども、今、言いましたようにうちの大学院生と本田君で作ろうと思えば作れるぐらいですから、国でも東京都でも全力を挙げればそんなに難しくはないのではないかと思っております。
 以上、四つのテーマのうち特に「3)パートの能力開発」に焦点を絞って、あとのところが非常にはしょった形で説明しましたので、もし御質問があればお答えいたします。
 以上で報告を終わりたいと思います。どうもありがとうございました。
鹿嶋会長
ありがとうございました。大変膨大な量を圧縮して話していただいたので、なかなか理解が難しかったかもしれませんが、御質問、御意見がありましたらお聞きしたいと思います。
 私から一つ質問したいのですけれども、A社のグレード3になってくると、週40時間ですね。この辺りで転換の問題や、正社員との処遇の格差の問題、能力と処遇の問題は大変重要だと思うのですけれども、グレード3辺りで何か出てないのかどうか。
脇坂教授
これは私がやった訳ではなくて、中国の留学生の研究について行っただけです。特に聞きに行ったのは、能力開発、教育訓練制度が主眼でしたので、あえて聞いていませんので、ここで本当は紹介すべきものではないのですけれども、私の調査であれば全部聞いたと思うのですけれども、簡単に言うと詳しくは聞いておりません。
 ただ、ほかのスーパーで同じような制度をやっておりまして、それは別の委員会で聞いたことがありまして、やはり今おっしゃったことが一つの課題です。このA社でもそうですけれども、グレード3でメイト係マネージャーになれば、一応ここまでもパートの賃金体系なのです。それで社員のがあって、ここは分かれているのです。でもほぼ同じなのですけれども、上司の推薦と試験があればここに移れるのです。ですから、社員の方も40時間なのですけれども、40時間プラス残業というふうになってきますから、やはり残業できるマネージャーの方が店長さんにとってみれば良いですから、本人が希望すれば移れるような形になっておりますから、むしろそこがポイントだと思います。移るかどうか、転換するかどうかというところが大きな問題です。処遇のことは余り聞いてないですが、福利厚生の方で大きな違いがあると思います。
 あと基本給では、ほかのスーパーだと90%とか95%でほぼ一緒ぐらいなのです。それでも数%の違いがある。でも、賞与の算定の仕方とかは福利厚生を入れると差が出てくるのです。そこはA社さんもまだ踏み込めないと言っていましたけれども、そうすると同じマネージャーをやっていても福利厚生など全体を入れると差が付いてくるということです。
鹿嶋会長
ありがとうございました。ほかに御意見、御質問ありますでしょうか。
 どうぞ。
神田委員
これは、東京都の営業職ということですね。そうすると、今のようなやり方をすると、それぞれの職場で評価の中身が変わってくるのですか。全部それぞれ作らなければならないということですね。
脇坂教授
そういうことです。勿論それに関心のある企業が、そういう評価制度のフォーマットをもらって、自分のところでやって、東京都に営業職1級とか認定してもらう、イギリスでもそうだったのです。最初はそれほど参加企業も多くなかったのですが、だんだん広まっていったということなのです。
神田委員
そうしますと、再就職の際に、その企業の中での再就職に対する客観的な基準ができる。横関係の、もう少し広い市場では使えないのですか。
脇坂教授
東京都の場合はですね。東京都の営業1級職を取れば、その評価を持って東京都内の企業へ行けるという話です。
神田委員
共通部分というのは、何か見えないのですか。例えば、東京都とこういうところだったら、大体共通部分はこういう中身だとか。
脇坂教授
それをかなり意識しまして、本当に営業でもいろいろありまして、例えばセールス型とか、比較提案型とか、サービス型とか、消費者向けとか、具体的な内容は全部違うのです。でも、全部違うから違うと言ったら評価は作れないので、それでさっき言いました、3次能力の細かいものを書いてもらって、また投げたということですから、それは現場の人たちが絶えず、普段の仕事から重要なものを書いてもらってやっていますから、私はこれは十分有効性があると思っております。
 こういうふうに作らないとだめだということです。普通ある資格というのは、それなりに看護婦の資格を作るときとか問題を作ったりしますけれども、やはり現場から離れているのです。これは古いタイプ、19世紀型の資格なので、現場に密着したタイプの職業能力評価をすべきだと思っておりまして、東京都がすごく熱心そうだったから一所懸命やったのです。
 都知事は国とは違うものを作れという雰囲気だったのですけれども、最後は壁があるということが分かって、でも一応どういう手続で作れば良いかは示してありますので、私はこれさえ気づいてくれれば、どこでもできるのではないかというふうには思います。手間暇はかかります。
林委員
簡単な質問なのですが、丸数字がありますけれども、これは件数という意味ですか。
脇坂教授
これは重要度です。それぞれの業界で、例えば建設業を書いた人は、建設業のベテラン営業マンが書いた順位で営業交渉力がトップであると。
林委員
順位ですか。
脇坂教授
順位です。それぞれ書いてもらって、いろいろな人がいたのだけれども、建設業の営業マンが書いたものの中で重要度の点数化をしてもらって、こういうふうになったということです。建設業の営業だと営業交渉力がトップに来ているという感じです。
 一応報告書がありますので、是非皆さん御覧ください。私にしてみれば、大学院生も使ってやった思い入れのある、世界的な傾向でもあるし、これはもう是非作らなければいけないと思ってやったものなのですが、なかなか東京都では取り上げてくれないので。
矢島分析官
離職者も取得可能と書いてあるのは、離職する前の職場で評価してもらったものを持ってということですか。
脇坂教授
そこが難しくて、少し工夫が必要だというのは、そのときからも議論されまして、もともとのきっけかが失業が非常に多いときに作りましょうという案だったのです。いろいろ議論を重ねていくと、失業者用だけのものを作っても意味がないということから議論が深まっていって、今どうなっているかということでここまで来ました。
 でも、実際上離職者は難しいのです。前の職場の人の評価でも良いし、それがもし無理なケースの場合、今度中途採用される職場で、もしその職場がこのシステムに参加していれば、うちではこの評価ですと。それだけでも随分違うと思います。中途採用される先が、どの能力とどの能力を一番重要視しているかということを明らかにします。
 離職する場合は、当然前の上司が嫌がったり出さなかったりするケースがありますが、でも取得してしまえば良いのですけれども。営業職2級とか、それはそれなりに普通の資格と同じ形になってきます。一応東京都が認定しますから、ちゃんとその上司がこの基準に従って全部クリアーして、最終的に東京都が認定する。
 イギリスで最初人気がなかったというのは、そこで若干の問題があったようなのです。つまりそれをやっても慣れ合いだと、でもそこは3層ぐらいあって、そこで最初の評価を本当に評価しているかどうか調べて、NVQ1級とか2級という形にして、そこのシステムをある程度きちっとやっておけば、そんなに心配要らないと思います。確かにペーパーテストの方が、そういう意味では客観性がありますけれども、ペーパーテストはどうしても能力を測れませんからね。
大沢委員
とても面白く聞かせていただきました。パートと正社員問題とか、フリーター問題というのは、解決できると。その道筋を教えていただいたような気がするのですが、一つは能力開発の機会を増やす。もう一つは、上位に行けるキャリアパスというのを明確にする。三つ目が、制度の問題で、やはりもう少しボーナスや、福利厚生なども平等にするような方向に持っていくことで流動的になると。処遇の問題というのは、時間給の差よりも、むしろそういった福利厚生やボーナス等、現状の問題はそこら辺を徹底させることが重要ではないかというようなことでお話を伺いました。
脇坂教授
こういう進んでいる職場はそうです。進んでない職場は、基本給から全然違いますからね。
大沢委員
分かりました。能力開発、ここでは業務が忙しく時間が取れないためということが1番ですが、具体的にパートさんの能力開発を進めるのに、何か御助言がございましたら教えていただきたいと思います。
脇坂教授
前にそういう調査があったものですから、先ほど言いましたコンピュータ・ベースド・ラーニングというのは、各売場に画面があるのです。空いた時間にみんなやっているのです。できるのだと思いました。
 それを必ず3か月以内に受けないといけません。ただ、生鮮売場に行ったら、魚の基本的なさばき方からやらなければいけない。それはCBLというものでやるのですけれども、それぞれ年に2回ぐらい、ちゃんとOFF-JTの機会がグレード別にあるのですが、やはりグレード1とか2の人は、ほとんどパートさんなのです。そんな労働時間が短い人も同じようにOFF-JTをやっても大丈夫なのですかと聞いたのですけれども、しようがないと言っていました。そこを戦力化しないと意味がない訳です。
 最初はこの会社でもパートタイマーを昔から雇ってきて、本格的にやろうと思ったらきっちりそこの部分はここまでやるためには、あるところは思い切ってやらないといけない。
 特にスーパーの場合は、お客さんから見たら相手が社員かパートが分からない訳です。任せるのだったら、同じ教育訓練を受けておかないと、最終的には競争に負けてしまうということなのだと思います。確かに今、おっしゃったように、そこはきついのです。まだパートがそれほど戦力化されてないときはですね。社員と同じような形の研修や、企業で言えば新入社員研修と同じようなことをパートにできるのかどうかというとですね。それはやはりパートの活用の発展段階によっていくのだと思います。最初からというのは、確かになかなかきついですね。
大沢委員
例えばパートの戦力化をする等、労使関係の中で組合が果たす役割みたいなものは可能なのでしょうか。
脇坂教授
まず組合は組織化しないとだめですね。
大沢委員
今、増えているのですか。デンマークなどでは、かなり組合が能力開発に関わっていることが非常に大きいので、何かそういう形で関わることで全体の能力開発が進むのかなと思っただけです。
脇坂教授
でも、このケースに関しては、労働組合は余り関係ないような気もします。○大沢委員 分かりました。
鹿嶋会長
今、このA社のような、パートと正社員が同じような賃金テーブルで仕事をするというのもあるのですが、もう一つ問題が出ていましたように、やはりグレード3辺りがマージナル領域なのですね。これは何かというと、正社員なのです。正社員でパートよりも能力が落ちる場合があるのです。だから、そちらをどうするかという問題が今度出てくるのですが、ところがあるところで聞いたらやはり正社員はいじれないのです。要するにパートの処遇は正社員のマージナル領域をどうするかという問題にも関わってきますから、そのときにパートの方が能力が上で、正社員が仮に低い場合に、どういうふうに処遇するのかというと、一つの理由は配転するのです。転居を伴うほどまでいきませんけれども、転勤で処遇に差を付けていると言っていましたが、多分これからその問題が出てくるかなと。パートを能力開発していくということは、正社員でその能力に追い付かないというのが完全にいる訳です。
脇坂教授
おっしゃるケースは、これまでもたくさんありまして、明らかにパートタイマーの方が能力が上なのに、むしろ賃金が低いケースがあって、それは正社員をそのパート並みに下げるといったらものすごい抵抗がある訳です。
 ただ、人間はこれまでの労働経済学の研究でも、やはり実質賃金ではなくて名目賃金に反応しており、賃金が下がると抵抗するのですけれども、だんだんインフレ基調になってきましたから、インフレになれば大丈夫なのです。企業がこちらだけ上げれば良い訳ですから、こちらを抑えていけば良い。今までデフレ基調だとなかなかできなかったことが、インフレ基調だとパートの方だけを上げていく。そこはいじらないというふうにすれば、インフレ基調だと一番合わせやすいのです。こういう全く違っていたものをそろえていく場合は、実務的に言うとインフレ基調の方がしやすいので、それでも根本的には、それに正社員が気づけば問題は残ります。
鹿嶋会長
ありがとうございました。
 それでは、この多様な選択を可能にする能力開発・生涯学習に関する施策については、今後引き続き調査・検討を進めていくことにしたいと思います。
 先生、どうもありがとうございました。
 続きまして、次の議題の男女共同参画施策についての苦情処理状況について、事務局から説明をお願いします。
塚崎調査官
それでは、苦情処理などの状況につきまして御報告申し上げます。
 これは、苦情の内容などの情報を定期的に把握すべきであるという参画会議の決定を踏まえて、例年御報告をさせていただいているものでございます。
 まず、資料2-1を御覧ください。「男女共同参画社会の形成の促進に関する施策についての苦情内容等及び男女共同参画に関する人権侵害事案の被害者の救済制度等の把握について」という1枚紙でございます。これが全体を総括した資料でございます。今回調査した内容は、大きく二つに分かれております。
 まず第1は「I 男女共同参画社会の形成の促進に関する施策についての苦情内容等について」でございます。これは、全国の相談窓口に男女共同参画の施策につきまして、どのような苦情が寄せられているのかというのを調べたものでございます。
 調査した機関でございますが、1のところに書いてありますけれども、総務省の行政相談制度、各府省行政相談窓口等、都道府県・政令指定都市の苦情処理機関等でございます。 対象とする苦情ですけれども、男女共同参画に関する施策についての苦情でございまして、詳細に言いますと、2の(1)のところに書いてございますが、国や地方公共団体が実施する法律、条例等に基づく制度や公費を投入する施策の在り方、これらの制度・政策の運用を含む業務運営の在り方についての国民・住民からの苦情(不平・不満・提案・要望・意見等)のうち、いわゆる男女共同参画に関する施策についての苦情でございます。
 2の(2)に書いてございますが、対象となる苦情の受付期間ですけれども、基本的には平成17年度中に受け付けて処理を行ったものでございます。そのほか、平成16年度以前に受け付けて平成17年度中に処理を行ったもの。平成16年度以前または平成17年度中に受け付けたが未処理のものも対象としておりますが、基本としましては17年度中に受け付けて処理したものです。
 具体的な把握内容でございますけれども、申出内容や処理結果などでございまして、3のところに具体的な把握内容を書いてございます。
 4の「その他」のところにありますが、都道府県・政令指定都市が苦情処理について、どういう体制を取って対応しているのかということにつきましても、併せて調査を致しました。
 次に、今回御報告する第2点目でございますけれども「II 男女共同参画に関する人権侵害事案の被害者の救済制度等の把握について」調査しております。この人権侵害事案につきましての把握は、昨年度まではやってこなかったものなのですけれども、人権侵害事案についてもちゃんと把握することが重要だということで、今年度から調査を実施したものでございます。
 その中で、まず法務省人権擁護局の人権相談につきまして、女性を被害者とする相談件数がどのぐらいあるのかについて把握しております。具体的な把握内容は、IIの1のところに書いてございます。
 IIの2の「都道府県・政令指定都市における人権侵害被害者救済体制等」でございますけれども、(1)のとおり、まず人権侵害につきまして、都道府県や政令指定都市がどのような救済体制を取っているのかについて調べています。
 そして2の(2)に書いてございますとおり、人権侵害事案に係る申し出、または相談件数を把握しております。受付期間も先ほどと同じものを対象としております。「III その他」でございますが、参考までに厚生労働省と人事院から関連する公表資料を頂いております。
 以上が今回の調査で把握しました全体像でございます。それぞれについての結果を、資料2-2以下でまとめておりますので、各資料につきまして御説明をさせていただきます。
 まず資料2-2でございますけれども「男女共同参画施策についての苦情内容別件数」というものでございますが、こちらの方で苦情の内容別に件数を上げてございます。一番上の表は国に対するものと都道府県・政令指定都市に対するものに分けております。それぞれにつきまして、基本計画の分野に沿っていますが、1~14までの分野ごとに内訳を出しております。
 国と都道府県政令都市を比べてみますと、件数としましては、国の方が圧倒的に多くなっています。
 分野別に見てみますと、1の「政策・方針決定過程への女性の参画の拡大」のところで、3万7,000 件余りということで突出しているのですけれども、これは国家公務員の育児や介護を行う職員についての短時間勤務制の導入の要望というのが、膨大に出されているということで、これだけ多くなっております。
 それ以外の分野につきましては、第2分野の男女共同参画の視点に立った社会制度、慣行の見直し。第7分野の女性に対するあらゆる暴力の根絶。第10分野の男女共同参画を推進し、多様な選択を可能にする教育・学習の充実が多い状況です。それから、国についてですが、昨年度は計画改定の年度に当たるということで、計画の策定関係の苦情も多くなっております。
 資料番号が前後しますが、資料4-1、4-2、具体的な苦情の内容をまとめてございます。資料4-1が国に対する苦情でございまして、資料4-2が都道府県・政令指定都市に対する苦情になっております。
 時間が限られておりますので、大まかな傾向を申し上げますと、まず第1は男性に関する施策も取り組んでほしいという要望が多く出されておりまして、例えば男性差別についても取り組んでほしいとか、母子手当につきまして、父子家庭にも支給してほしい、父子家庭に支給されないのは差別だといったもの。あるいは暴力の関係なのですけれども、男性に対する暴力をなくすという視点も盛り込んでほしいといった苦情が出ております。
 計画の改定の関係の要望や意見としまして、ジェンダーに関するもの、それからジェンダー学や女性学に関するものなどが多く出されております。
 昨年に引き続いての傾向ですが、選択的夫婦別氏制に関する要望について、選択的夫婦別氏制を採ってほしいというものと反対だというものとどちらもあります。それから、ドメスティック・バイオレンス、DV関係の要望も引き続き多い状況でございます。DV関係の要望につきましては、かなり詳細で具体的なものが多くなっております。ワーク・ライフ・バランスや長時間労働の解消、男性の育児休業に関する苦情も出ております。防災や復興対策の意思決定に女性を参画させて、女性の視点を取り入れてほしいという要望も苦情として出されております。
 先日、本専門調査会で報告書案をまとめていただきました、地方の審議会の職務指定に関する要望も出されております。
 資料4-1、4-2につきましては、以上でございまして、もう一度資料2-3に戻っていただければと思います。こちらは「都道府県・政令指定都市における男女共同参画施策についての苦情処理体制等」についてまとめたものでございます。ほとんどの都道府県・政令指定都市に、何らかの苦情処理体制があるということが分かりました。
 また、具体的な体制としましては、一番最後の3ページ目の「処理体制の類型」の一番最後のところに、合計として処理体制の類型をまとめてございますが、都道府県・政令指定都市では庁内で苦情処理の体制を持っているパターンが多いということが、この調査で分かりました。
 資料2-4の1枚紙「男女共同参画に関する人権侵害被害における被害者救済の関する処理状況」という資料でございますが、こちらの方は人権侵害に関する処理状況でございます。
 まず1のところで「法務省の人権擁護制度で把握した件数について」ということでございます。内訳としましては、女性の人権ホットラインと人権相談のうちの女性を被害者とする相談、人権侵犯事件のうちの女性を被害者とする事案の数を上げております。
 全体で、約4万6千というかなりの数字になっております。詳しい資料が次の資料2-5でございます。人権ホットライン、2枚目が人権相談、3枚目が人権侵犯事件の内訳になってございます。
 またお戻りいただきまして、資料2-4の2の「都道府県・政令指定都市の体制について」という部分でございますが、まず人権侵犯の被害者救済制度の都道府県や政令指定都市における体制について調査をしているのですが、(1)に60団体139 体制とございますが、この60団体というのは都道府県・政令指定都市を併せたものが62団体でございまして、そのうちの60団体が何らかの人権侵害、救済のための制度を持っていました。
 具体的には、分野別の相談窓口、2の(1)の括弧でくくった部分に具体的に書いてございますが、例えば男女共同参画に関する人権侵害事案の申立制度、配偶者暴力相談支援センター、セクハラ相談、人権侵害に関する相談窓口、障害者相談、労働相談といった分野別の何らかの窓口を持っているというところが60団体で、その窓口の数が139 という結果になっております。
 また、具体的な結果が資料2-6になってございます。各都道府県別に、人権侵害における被害者救済に関する体制、または相談等の体制について、調査の結果をまとめてございます。
 こうした調査をしていまして分かったことですが、人権侵害の事案の中から男女共同参画に関する人権侵害を取り出して調べるというのは非常に難しいということでございまして、加えまして参画会議の決定でも指摘されているのですが、現実の相談の窓口には個々の人権侵害における被害者の救済という側面と施策についての苦情という側面が、渾然一体となった形で出てくるケースが多いということも調査の結果分かったところでございます。
 したがいまして、人権侵害の事案の中に施策についての苦情処理が含まれていても気がつかなかったり、うまく施策の苦情処理のプロセスにつなげていく方策がなかったりしまして、適切に処理できてないケースが多いのではないかということが推測できます。
 今後、苦情処理の研修などにおきましても、この人権侵害のケースから施策の苦情処理につなげるという点につきまして、留意すべき点としてしっかり伝えていきたいと考えているところでございます。
 もう一度、資料2-4の2の(2)でございますけれども、地域の連絡協議会に参加している窓口が139 窓口のうち36体制で参加している。何らかの形で地域の中で他の機関と連携しているものが36体制ございました。
 (3)ですけれども、人権侵害事案のうち男女共同参画に関する人権侵害の件数を調べた結果でございます。場面としましては、行政による人権侵害、雇用関係の人権侵害、親しい間柄の人権侵害と分けておりまして、親しい間柄が一番多いという結果になっております。
 残った資料は、資料7と8でございますけれども、これは御参考までに厚生労働省の方から頂きました、男女雇用機会均等法の施行状況の中の相談指導状況と、人事院の公平審査局から頂きました、国家公務員の苦情相談の概要をお配りしております。
 以上が資料の説明ですが、私どもとしましては、政策に関する苦情が適切に処理できるように、今後とも苦情処理を担当していらっしゃる方々に対しまして、苦情処理のガイドブック、これは毎年改訂しているものですから、なるべく新しい内容を盛り込んで配付していったり、事例についての演習などをたくさん盛り込んだ研修を実施していくことにしております。
 加えて、内閣府の男女共同参画局の苦情処理体制としてですけれども、局として一貫した整合性の取れた対応ができるように、苦情処理の体制を整備しつつありまして、苦情はメールやファックスや電話、手紙など、いろいろな形で、しかもいろいろな担当のところに来るのですけれども、それらの苦情に対しまして、オンラインに局内の共用のホルダーを作り、その中に苦情処理簿を作りまして、各担当が苦情処理の内容と対応の記録を残して、情報を局内で共有するという仕組みを今年度から導入したところでございます。
 できるだけ一貫性のある、整合性の取れた対応ができるようにしたいと思っているところでございます。
 苦情処理等につきましては、以上でございます。
鹿嶋会長
ありがとうございました。資料2-2を見ても分かるように、国の省庁窓口の苦情につきましては、件数がかなり多くて、行政相談が意外に少ないですね。これは人権擁護と全然違っていて、行政相談に対して男女共同参画がどういうふうにコミットしていくかというのは、改めて検討課題なのかと聞いておりました。
 あと都道府県も少なくて、国に対して各省庁の窓口が一番相談しやすいのか、あるいは具体的に対応しているのか、そこでの対応が一番多いということが改めて分かりました。 もう一つ、いわゆる人権侵害を受け付けて、どういうふうに施策に反映していくかというのも、これは最初から苦情処理の中の大きなテーマだったと思うのですが、それも改めてクローズアップされたような気が致します。
 御質問等々がございましたら、どうぞ。
林委員
まず資料2-2についての質問なのですが、先ほど国と都道府県との比較でお話されたのですが、その中で1番目の政策方針決定過程の参画拡大のところで、省庁の窓口への相談が3万7,000 件余りあるというのは、国家公務員の短時間勤務等への要望であるという説明があったようにお聞きしたのですが、これは個別に何か要望を上げていったのか、一つの制度を求める団体からの要望が上がってきたことを指しているのか、どちらですか。
塚崎調査官
国家公務員の短時間勤務の要望が主に団体から上がってきたものと思われます。
林委員
そういうことですか。分かりました。
 もう一点は、資料2-4について一番下の(3)のどのようなものがあったかということで、行政による人権侵害が6という数字が出ているのですけれども、この内容が分かりましたら教えてください。
塚崎調査官
件数で出していただいているので、具体的な内容は把握してないのですが、例えば相談窓口にやってきて、そこで非常に良くない対応をされたというケースが、一番典型的な例になるかと思います。
林委員
窓口の対応という意味ですね。
塚崎調査官
はい。それが一番典型的な例かと思います。
鹿嶋会長
例えば、DV相談で警察に行って、あなたがもうちょっと我慢すれば良いのだという話が、多分こちらに来るのかと思っていたのですけれども、そういうケースが結構多いみたいですね。
林委員
政策的なものではないのですね。
塚崎調査官
施策についての苦情は、初めの苦情処理の方で対応しています。
林委員
もう一度すみません。先ほどの3万7,000 のところにこだわってしようがないのですけれども、要望書を団体から出すものをこのような形でカウントするとしたら、地方にもあるような気がするのです。地方にあったものは、それは入っていなくて、国の分だけが入っているというのが、違和感があって仕方がないのです。
原田審議官
同じ意味合いで、3万9,000 の中で、いわゆる本当の陳情・要望のたぐいを別記で括弧書きにして、いわゆる一般的に苦情と言われるものと、表現上少し差を付けた方が良いかもしれませんね。おっしゃるとおりなのです。自治体もまさに陳情・要望を男女施策に関していっぱい受けておりますし、相談なんてまさに日々受けている訳ですから、同じレベルで考えたら同じぐらい、あるいは同じ以上にあるかもしれません。
鹿嶋会長
それはデータから差を付けられますか。
塚崎調査官
ちょっと工夫をしてみます。
鹿嶋会長
難しければ、それも注でやりますか。
名取局長
もともと「対象とする苦情」というのが、資料2-1の2の(1)にございまして、ここに提案・要望・意見等がございまして、それで調査しているものですから、こういうものが出ております。
塚崎調査官
こちらで調査の対象をお示しし、各機関が判断したものを頂いているので、それでかなり数的に違っていて、都道府県・政令指定都市から出てきているものは、資料4-2にまとめています、具体的な内容も入れて把握したものを出していただいておりまして、確かに数え方、カウントの仕方がばらばらになっている点はあると思いますので、工夫をしたいと思います。
鹿嶋会長
苦情と要望が明確にできない場合は、何か注を入れておきますか。
塚崎調査官
全部一緒にもらっておりますので。
山口委員
やはり心配したとおり、行政相談員の苦情処理の扱い、それから人権擁護員の救済というのは、やはり依然として根付いてないと思いました。
 各地の条例を見ておりますと、必ず苦情処理という機関は付けているのです。しかし、それの活用の仕方がない。分からない。私もいろいろ各地に行って条例を見るのだけれども、設置ができているけれども全く活用してないということは問題だと思います。
 苦情内容ですけれども、要望と苦情というのは違うのです。やはりどんな苦情を受け付ける対象なのかということはもっと明確にしないと、せっかくのこういうものが使えない。 あとはどういう処理をしたのは、こちらからこちらに流したから終わりではなくて、その先がどうかという成果がないと、これは問題があると思います。
 救済の方も、結局これを見ていると女性に対するDVですね。本当はそれだけではないと思うのです。しかし、労働関係だったらまた別な救済機関もある。いろいろなことがあると思うのですけれども、この救済機関についてもこういうことが救済なのですという事例を出していく必要があるのではないだろうか。地域に行っても、この機関は本当に話題になることないですよ。北欧なんか行きますと、この監視・苦情処理機関というのはすごく大事で、さっき男の人も文句あると言ったけれども、そのぐらい一般化しないと、どうも男女共同参画は先行き心配だと思いますので、もっとこの機関に関しては、具体的なガイドラインを出せるようにしたいと思います。
鹿嶋会長
人権侵害は、被害者救済の救済という言葉がちょっとあれですか。私は、人権侵害は救済まで行かないと思っているのです。要するに、資料2-6で書いてあるように、意見・助言・指導・勧告が精一杯でして、それが救済までつながるというのは、まずないような気もするので、例えば人権侵害における被害者相談に関する体制辺りにしておいた方が、救済だと何となく期待を持って読まれてしまうから、ここの表現を少し変えた方が良いのかもしれませんね。
 どうぞ。
神田委員
やはり要望と苦情を、何らかの形で分けないといけないと思いますし、例えばDVなどは日々相談という形で出てきている訳です。そうすると、今度は男女共同参画施策のところを見ると、これは暴力の根絶で都道府県・政令指定都市は9件しか出てきてない。具体的なものは見てないので分からないのですけれども、どういう関係になっているか等々、少し実態に即した形で有効な整理をする必要があるのではないかと思います。
鹿嶋会長
どうですか。
塚崎調査官
具体的な案件は、都道府県の方から出てきた暴力の関係は、資料4-2の区分で言いますと7が暴力の関係の苦情になっております。あと右側に処理状況が書いてあります。
矢島分析官
ですから、暴力に関する個々の相談のようなものは人権侵害の方に入っていて、苦情処理の方には入っていないというのがお感じになっている違和感かもしれません。
塚崎調査官
こちらの苦情処理の方は、施策の方の苦情処理でございまして、今、神田先生が言われていたことは、むしろ被害者救済の方の件数に上ってくると思います。
山口委員
もう一つ気になるのですけれども、やはりこの苦情処理に要望事項が入っているのはおかしいと思います。行政の方では受ける側ですから要望書になってきますね。何々に反対すると、しかし反対するけれども、こういう提案をしている訳です。それは苦情ではない訳です。行政がどう受けるかということですね。
 もう一つは、余り件数が上がらないと要望をカウントしてしまうということがありますから、やはりはっきりと苦情と要望と意見というのは全く別だと思うので、自治体がどう書くかですね。機関はあるけれども、何も言ってこないからこう処理してしまったのかどうか、とてもそれが気になります。
鹿嶋会長
確かに自治体の苦情というのは、男女共同参画施策に関するものについては、なかなかないというのが実態だと思うのですが、ただ要望と苦情はどこか紙一重のようなところもあって、それを全く離してしまうのはどうなのですかね。
山口委員
でも、私は苦情ではないと思います。要望というのは、もっと積極的なものではないですか。例えば何々に反対すると、しかし、こうだということをよく書きますね。私なんかも女性団体だからよくそういうことをやっているけれども、それを苦情ととられるのは困る。もっと積極的に政策提言だと思うのです。
鹿嶋会長
今はこういう施策状況は困ると。こうしてほしいという苦情を踏まえた要望でしょう。だから、そこを切り離してしまうのもどうかと思っているのです。
山口委員
案件が少ないから入れたのかなと思ったりしました。
鹿嶋会長
それは、もうちょっと私は性善説でとらえております。しかし、要望を全部ここから除外するのもいかがなものかと思っているのです。要望は要望で、苦情から発する要望もある訳ですから、それはきちっとつなげていかないとまずいと思っております。
林委員
逆に、私はこれを見て、そこを一緒にしてしまうことに違和感があるということを一つ申し上げましたけれども、それ以外にその数字を見て思ったことは、国家公務員の短時間勤務制度についてだけ、これほど要望があったということは、ほかのところに対する要望を我々は、団体の立場からするならばもっと出さなければいけなかったというふうに、なぜ出さなかっただろうかというふうに、逆に弱さとして感じてしまったのです。この運動だけがすごい運動なのだと、そんなに国家公務員の力はすごいのかと、我々の運動はまだまだ足りなかったなという逆の思いがして一つはお話ししました。
名取局長
もともとこの苦情処理が基本法に設置されましたのは、裁判制度は非常に時間がかかるので、現実に困っていることがあれば、苦情処理制度において問題を把握できるようになれば、そこに一つの解決策も見えるのではないかという問題認識があると思います。
 私自身ノルウェーに参りまして、オンブッドともお会いしました。
山口委員
私も行きました。
名取局長
同じ御感想かもしれませんけれども、ノルウェーでオンブッドがどうして機能しているかというと、オンブッドに苦情を言うことによって制度が変わる、制度が変わることがまた苦情を呼ぶというようなサイクルができ上がっていて、だからこそ期待を込めて苦情を言う。そこには、本当はこういうふうにしてほしいという提案型の苦情もある訳でして、そういうことを通して制度がどんどん男女共同参画の方向に向いていくということで、オンブッドが多分モデルになるのだろうと思っております。
 ですから、要望も入っても良いのかなと思うことと、現在こういうふうに低調であるということは、確かに処理の方がうまく回ってないということが一つあって、相談に行って改善されれば、また行こうかということにもなるのだけれども、なかなかそこが見えないから低調なのかという気もしております。先ほどの御指摘を伺ってそう思いました。
山口委員
私もノルウェーのオンブッドに会いましたけれども、やはりそれを担当している人がベテランです。ただ聞いてあっちに回したという話ではなくて、やはり徹底的にやる。だから、男の人たちも男女共同参画の視点で相談していく。ちゃんと対等に処置する。その意味では、行政相談員、人権擁護員、ちゃんと教育はしているけれども、お勉強で終わってしまっているのではないか、やはりもっと実地のトレーニングが必要だと思います。
名取局長
もう一つ非常に印象的なことがあったのですが、オンブッドの独立性の確保というのが、いつもテーマなのですけれども、聞いたところでは、ノルウェーの国会には解散がないそうなのです。ですから、4年任期なのですけれども、オンブッドは6年任期なのです。だから、政権にはこだわらないで判断できるということが確保されているということが、非常にすぐれたところです。
大沢委員
どういうところでトレーニングをされているのですか。
名取局長
もと弁護士さん等が多いようです。あとは人口がすごく少なくて400 万ぐらいなので、言うなれば日本の小さな一つの県ぐらいの単位なのです。
鹿嶋会長
ありがとうございました。
 どうぞ。
矢島分析官
苦情処理と人権侵害というふうに分かれているのですけれども、相談というものが人権侵害の方に多数入っているということを考えると、この中から施策の改善につなげるべき提案、事案をどうピックアップするかということが、一つ大きな課題かと思ったのですけれども。考え方として、それをピックアップするのをいかに効率的に行うかということと、相談者の個人情報にどう配慮するかという問題があると思うのですけれども、その辺りについて何かお考えがおありですか。
鹿嶋会長
これは都道府県の担当者に委ねられている課題で、人権侵害なのか、施策に対する苦情なのか、そこでの割り振りは多分窓口でやっているのだと思うのです。ただ問題は、特に人権侵害については、要するに不平・不満を聞いて、それで終わってしまう可能性がある訳で、そこから更に施策にまで発展するというシステムはまだ機能してないと思うのです。そこをどうするかというのが、多分これからの課題だと思います。
 都道府県に聞いても、苦情よりも人権侵害の方がはるかに多い訳です。一番言いやすいしね。
 どうぞ。
神田委員
相談のことですけれども、これを見ると専従担当者、常勤、非常勤ということで、圧倒的に非常勤が多い状況があります。それに対して相談者の側からは、非常勤ではなくて、やはり専従が要るのではないか、そういう方向をという要望が強いのです。その問題は、本来苦情処理で出すべきことなのですか。そういうのは、ここには出てこないのですか。
鹿嶋会長
そういうことになるのでしょうね。そちらは苦情処理なのでしょうね。制度的な問題ですからね。
神田委員
日常的にそういう意見は多いのですが、ここからはそういうものが出てこないですね。
鹿嶋会長
そこは、人権侵害と苦情処理はかなり密接なところがある訳ですね。
塚崎調査官
すぐに効果が発揮されることではないと思うのですけれども、研修等でもできるだけロールプレイ等、具体的な事例を使って研修することで、例えば人権侵害の中に施策についての苦情があるのだという意識を持っていただく等、そういう工夫はこれからもしていきたいと思います。
大沢委員
日本の場合は、苦情処理をしている職員に対して、現在のところはそういうトレーニングは全くされてない訳ですか。
塚崎調査官
ささやかではあるのですが、1年に1回私どもの方で担当者を集め苦情処理の研修をしております。あと総務省や人権擁護局の方でもそれぞれ研修はしていると思います。
鹿嶋会長
苦情をピックアップするという意味では、行政相談員の研修はこれから必要になってきますね。
塚崎調査官
そういうことも出てくると思います。
鹿嶋会長
ほかにございますか。
 それでは、御意見どうもありがとうございました。一応今日の審議事項は終わりましたが、事務局の人事異動についての報告がございます。まず、7月11日付で新木総務課長が農林水産省に転任されました。その後任に国土交通省から長谷川総務課長が就任されましたので御紹介いたします。
長谷川総務課長
長谷川でございます。よろしくお願い申し上げます。
鹿嶋会長
名取局長、どうぞ。
名取局長
既に一部の先生方には御報告したのですが、7月28日をもちまして局長職を退任することとなりました。どうも長いこといろいろとお世話になりまして、ありがとうございました。
 後任は、文部科学省の方から坂東久美子官房審議官が就いてくださるということですので、引き続きどうぞよろしくお願いいたします。
原田審議官
私も内閣府内で異動することになりまして、沖縄振興局の方に配属になりました。大変お世話になりまして、ありがとうございました。
塚崎調査官
調査課長の塩満から申しつかっているのですけれども、塩満の方も異動が決まっておりまして、科学技術振興機構、日本科学未来館に総括企画室の調査役として29日付で出向する予定でございます。
 加えて私も局内での異動ですけれども、推進課の女性に対する暴力の施策の担当の方に移ることになりました。本当にお世話になりまして、ありがとうございました。
鹿嶋会長
大幅な人事異動なので大変なのですが、皆さん今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
 事務局の方から、最後に連絡事項はございますか。
塚崎調査官
お手元に資料1としまして、5月29日の会議録をお配りしております。チェックを頂いておりますので、公表させていただきたいと思います。
 6月19日の前回の専門調査会の議事録の案をお配りしております。修正等ございましたら、8月4日までに事務局の方にお寄せいただきたいと思います。
 以上でございます。
鹿嶋会長
それでは、今日はこれで終わりにします。どうもありがとうございました。

(以上)