監視・影響調査専門調査会(第11回)議事録

  • 日時: 平成18年6月19日(月) 15:00~17:00
  • 場所: 永田町合同庁舎第一共用会議室
  1. 出席委員:
    • 鹿嶋会長
    • 大沢委員
    • 勝又委員
    • 神田委員
    • 袖井委員
    • 林委員
  2. 議題
    • (1) 開会
    • (2) 都道府県・政令指定都市の審議会等における国の職務指定の報告書取りまとめに向けての審議
    • (3) 女性の能力開発に関する有識者ヒアリング及び質疑応答
      • 女性ユニオン東京 伊藤 みどり氏
        「パートタイム労働者の能力開発について考える」
    • (4) 閉会
鹿嶋会長
ただいまから、男女共同参画会議監視・影響調査専門調査会の第11回会合を開催させていただきます。
 神野先生は少し遅れるのですが、いらっしゃると思いますのでよろしくお願いします。
 今日の審議はあらかじめ事務局より御連絡させていただきましたとおり、都道府県・政令指定都市における審議会等の委員についての国の法令に基づく職務指定に関する調査検討結果の取りまとめに向けた審議を行います。
 その後、「多様な選択を可能にする能力開発・生涯学習に関する施策」について、有識者からヒアリングを行うこととします。本日は、女性ユニオン東京の伊藤みどり執行委員から「パートタイム労働者の能力開発について考える」についてお話をお聞きすることにしております。
 初めの議題ですけれども、先月、第10回の専門調査会における各委員の皆様からの御意見等を踏まえた報告書の修正案を事務局が用意しております。その修正点を中心に事務局から説明していただきます。よろしくお願いします。
塚崎調査官
前回の専門調査会での御議論や委員の先生方から頂きました御意見を踏まえて修正した案につきまして御説明をさせていただきます。前回から変更した部分については青い字で書いてございます。
 最初に1ページ目の「はじめに」のところを御覧ください。1ページ目、「はじめに」でございますが、この部分では、なぜ職務指定を取り上げたのかという理由を入れた方が良いという御意見を頂きましたので、理由を書き入れてございます。青い字の部分ですけれども、3段落目の一番後ろのところから始まりますが、3段落目で、今回、監視として「都道府県・政令指定都市における審議会等の委員についての国の法令に基づく職務指定について重点的に監視することが決定された。」その次の部分を加えてございます。
 「これは、次のような理由によるものである。
 第一に、地方公共団体の重要な政策・方針決定過程である審議会等において、男女共同参画を一層積極的に推進することが重要と考えられるからである。第二に、地方公共団体の審議会等の委員について、各分野における女性の参画の現状からみて、国の法令に基づく職務指定が女性の登用を難しくしているので、法令を見直して女性を登用しやすいようにしてほしいとの要望が地方公共団体から出されたこと等を踏まえたものである。」
 このように二つ理由を書いてございます。
 それから、次の「なお」の部分でございますけれども、こちらは、国の審議会については、平成13年度に監視をしていて今度は都道府県・政令指定都市を対象として取り上げるということが分かるように「なお」書きを2行追加してございます。
 「なお、国の審議会等については、平成13年度に監視を行い、見直しが行われた結果、委員全体に占める女性の割合が高まったところである。」という部分でございます。
 それから、一番最後の段落の青い字の部分でございますけれども、こちらにつきましては、各府省に対して言う部分ですけれども、各府省自身が取り組むことをはっきりさせた方がよいという御意見を頂きましたので、「審議会等の委員構成に係る規定を見直すことについて積極的に検討するとともに」という文言を入れてございます。各府省においては、この取りまとめを踏まえ「都道府県・政令指定都市の審議会等における女性の参画を拡大するよう、審議会等の委員構成に係る規定を見直すことについて積極的に検討するとともに、都道府県・政令指定都市等に対する一層の支援を図られるよう期待する。」と変えてございます。
 以上が「はじめに」の修正部分でございます。
 次に3ページ目のところを御覧いただきたいのですけれども、3ページ目の「Ⅰ 調査検討に当たっての基本的考え方等」の部分でございますが、こちらについて、基本法から説き起こして根拠を入れた方が良いという御意見を頂きました。基本法の基本理念の「政策等の立案及び決定への共同参画」というものを盛り込んでおります。それから、後ろの資料のところに基本法の抜粋を資料1として追加しております。その部分を読ませていただきますと、一番始めのところですが、「男女共同参画社会基本法においては、基本理念の一つとして、『政策等の立案及び決定への共同参画』が位置付けられており、(資料1)、その一環として重要な政策・方針決定過程である審議会等への女性の登用を積極的に進めてきたところである。」という部分を追加してございます。
 それから、次に5ページ目を御覧いただきたいと思います。こちらの部分は、13年度の国の審議会等についての監視について述べている部分でございます。前回の専門調査会において、職務指定についての女性割合を3割にするということではなくて、職務指定を含めて全体の女性登用率を3割にするということで、職務指定は全体の女性登用率を引き下げているということが問題なのに、そうでないように見える部分があるという御意見を頂きましたので、表現ぶりを見直してございます。それが5ページ目の一番上の「・」のところでございます。「平成13年9月30日現在で国の審議会等の委員のうち、職務指定委員に占める女性の割合は2.2%となっており、女性委員の割合が低い。」というところでございますが、前回の案では、この中に、2.2%と平均に比べて低いという文言を入れていたのですが、それを落として「2.2%となっており、女性委員の割合が低い。」にしてございます。
 それから、一つ、真ん中の青い字の部分を抜かしていただきまして、下の(イ)の部分でございますが、これも同じ趣旨で書き換えをしてございます。(イ)は、現在の国の審議会等の状況について触れている部分なのですけれども、こちらにつきましても、前回の案では、最後のところですが、職務指定委員に限定して女性の占める割合を見ると3.8%と全体の平均に比べて低いというふうになっていたのですけれども、それを見直しまして「3.8%と低く、全体の女性の割合を引き下げる要因になっている。」と変更してございます。
 それから、今、抜かしました5ページ目の真ん中の部分でございますが、これは前回の専門調査会で、13年度の国の審議会等についての監視でどういう成果があったのかを入れた方が良いという御意見を頂戴しましたので追加をした部分でございます。「・こうした見直しが行われた結果、国の審議会等の委員全体に占める女性の割合は、20.9%(平成12年9月30日時点)から24.7%(平成13年9月30日時点)に高まった。」ということで、監視の成果を入れてございます。
 次に7ページ目を御覧ください。
 7ページ目の真ん中より少し下の部分でございますが、Ⅱの1の部分では、都道府県・政令指定都市を対象とした調査の結果をまとめたところでございます。
 (1)の③の部分なのですが、こちらについては、もともとは女性委員の占める割合が30%未満の審議会の割合について書いてあったのですけれども、分かりにくいという御指摘を踏まえて修正したものでございます。
 ②の部分で、既に職務指定のある審議会の女性登用率が低いということは言っていますし、また、後ろに詳しい資料も付けてございますので、Ⅱの②でここでは十分ではないかということで、検討した結果、(1)の③の部分を削除しております。
 次の一番下の(2)の①の「困っている点」でございますが、一番困っている点としては、専門的分野の人材不足、組織の長に女性が少ないという点ではないかという御指摘を踏まえまして、2段落目と1段落目の順序を逆にしてございます。それから、現在の2段落目の初めの部分の表現が分かりにくいという御意見を踏まえ、表現を分かりやすく直してございます。その部分ですが、①の困っている点ですけれども、「専門的な分野において女性人材の確保が困難であることや機関・団体・施設の長の多くは男性であることから、職務指定委員に女性を登用することが困難であることが指摘された。」、その部分と2段落目、「また、特に委員定数の多い審議会等で職務指定委員が多い場合、職務指定が女性登用率の引下げの要因となっていることや地方公共団体の裁量を妨げていることが指摘された。」という部分でございます。
 次に8ページ目を御覧いただきたいと思います。
 こちらは都道府県・政令指定都市の調査の結果の中で、都道府県と政令指定都市からの提言や要望をまとめた部分でございます。②の2段落目ですけれども、こちらについて、防災や交通安全の分野で女性が地道に活動しているという趣旨を入れた方が良いという御意見を踏まえまして、「多くの女性が実際に活動している現状にかんがみ」という文言を入れてございます。「防災の分野や交通安全の分野において、多くの女性が実際に活動している現状にかんがみ、特にこれらの分野の審議会等への女性登用促進の必要性について言及があった。」というふうに変えてございます。
 それから、次の青い字の部分でございますけれども、こちらは縦の取組という言葉を使っていたのですけれども、それが分かりにくいという御意見がございましたので、表現を見直したものでございます。「また」のところですが、「また、審議会等に係る法令を所掌する各府省から、都道府県の関係部局に対し、積極的に女性登用を図るよう直接働きかけてほしいとの要望があった。」と変えてございます。
 次はⅡの2の部分なのですが、11ページの下のところでございます。
 こちらの部分は府省を対象とした調査の結果をまとめたところですけれども、職務指定に関連する、府省の取組についていくつか取り上げている部分でございます。その中の監査委員ですけれども、こちらについては、前回御意見いただいたわけではないのですが、改正法が成立していますので、前回の案では、改正案を提出とあったところを「改正したところである」と変えてございます。
 それでは、Ⅲの部分でございますが、12ページ、「Ⅲ 今後の取組に向けて」のところですが、まず、前文のところですが、後半部分において府省に対して言っている部分なのですが、こちらも「はじめに」のところと同趣旨でございますが、前回の案では支援するような取組を更に進めるとだけあったのですけれども、府省自身が積極的な取組をすることをはっきり強調すべきであるという御意見を頂きましたので、それを踏まえて修正をしてございます。2段落目を読ませていただきます。
 「このような中、一部の府省においては、法令による職務指定に関して、女性委員の参画の拡大に資する取組が行われている。しかし、都道府県・政令指定都市の審議会等における女性委員の参画の更なる拡大を図っていくためには、府省において、以下の点に留意しつつ、積極的な取組を進めるとともに、都道府県・政令指定都市に対する一層の支援を図ることが求められる。」ということで、「積極的な取組を進める」という部分を加えてございます。
 それから、「なお」書きの部分ですけれども、こちらにつきましては、取組状況について、今後フォローアップすべきであるという御意見を頂戴しましたので、この「なお」書きの部分を追加しています。
 「なお、これらの取組については、内閣府男女共同参画局において、今後とも状況把握に努め、必要な対策を講じていく必要がある。」ということで、フォローアップをするということをはっきり盛り込んだものでございます。
 次の1.のところですが、こちらはタイトルを変えています。この部分は、審議会等の委員構成に係る規定の見直しについて入れた部分でございます。タイトルですが、前回お示しした案では、審議会等の委員構成に係る規定の見直しの可能性の検討としていたのですけれども、「可能性の検討」という言葉が弱いのではないかという御意見を頂きましたので、見直しをしています。「審議会等の委員についての職務指定の在り方の検討」というふうに変えています。
 それから、次の(1)の1段落目の一番最後ですが、こちらについても、前回の案では、見直しの可能性について検討ということで書いてございましたが、それにつきましても弱いのではないかという御意見を踏まえ、「審議会等の委員構成に係る規定を見直すことについて積極的に検討する必要がある。」と、「可能性」をとって「積極的に検討する」という言い方に変えてございます。
 次の13ページ目ですが、2段落目の部分に変更があるのですが、この部分は、審議会等の委員構成の規定について見直すに当たり、考慮すべき事項をまとめたところでございます。前回の専門調査会で、地方自治尊重の観点に立って、国による都道府県・政令指定都市の審議会等に対する関与は最小限のものにすべきであるという御意見を頂戴しましたので、その趣旨を盛り込むよう修正をしたものでございます。「国による都道府県・政令指定都市の審議会等に対する関与を最小限のものにとどめているか」という文言に変えてございます。
 それから、初めの部分で、「女性の参画の促進という観点にとどまらず」という文言を加えています。これを加えました趣旨は、審議会の女性委員の割合の低いところにつきましても、非合理なものは正していく方が良いという御意見を踏まえて、その趣旨を盛り込んだものでございます。
 全体としましては、「上記検討に当たっては、女性の参画の促進という観点にとどまらず、地方自治尊重の視点に立って、国による都道府県・政令指定都市の審議会等に対する関与を最小限のものにとどめているか、行政サービスの受益者の視点等多様な視点が反映さているか等も併せて考慮する必要がある。」というふうに変えてございます。二つ修正をしていまして、初めに「女性の参画の促進という観点にとどまらず」というのを加えましたのと、それから地方自治の部分ですけれども、「国の関与を最小限のものにとどめているか」と表現を強くしてございます。
 それから、(2)のところでございますが、法令によらず職務指定されている審議会等について、(1)と同じように職務指定に係る通知等を見直すことについて検討する必要があるという部分なのですが、こちらについても、見直す可能性について検討するという文言になっていたのですが、こちらも「可能性」という言葉を取りまして、「積極的に検討する必要がある。」というふうに変えてございます。
 次の14ページですけれども、こちらは、都道府県・政令指定都市に対して国が働きかけをするという部分についてです。その中の人材の掘り起こしについての部分なのですけれども、一つは、①の(イ)のところですけれども、受益者と消費者が並んで書いてあるのはおかしいのではないかという御意見を頂きましたので、それを踏まえて「消費者」という文言を削除してございます。
 それから、(ウ)のところですが、人材の掘り起こしについて、女性団体についても対象とすべきだという御意見を頂きましたので、それを踏まえまして、(ウ)の部分に「女性団体の構成員等」を入れてございます。「民間団体の各種研究会等における参加者や女性団体の構成員等も視野に入れて専門的知識・技術を有する女性を発掘すること」と修正をしてございます。
 それから、次の真ん中の部分でございますが、人材データベースにつきまして、もう少し検討課題として、できるだけ具体的に書き込んだ方が良いのではないかという御意見を頂きましたので、それを踏まえて見直しをしてございます。
 「なお」のところですが、①の最後の部分、「なお、女性の人材に関するデータベースについては、国としても,女性の人材に関する情報提供について、個人情報の保護に配慮しつつ、都道府県・政令指定都市等も利用可能なシステムの構築を検討する必要がある。」ということで前回の案よりも具体的に書き込んでございます。
 以上が前回の案からの修正の点でございます。
鹿嶋会長
ありがとうございました。前回の「可能性についての見直し」という持って回った表現があって、それについて皆さんから厳しい批判を浴びましたので、そのあたりをかなり強めた。要するにストレートに物を言ったということであります。
 それから、「はじめに」のところ、1ページですけれども、1ページの一番最後は「期待する」というふうになっていて、この期待するについても、これは各府省に要望している文章なのですけれども、もう少し強めたらどうかという話し合いはしたのですが、ただ、この文章につきましては、古橋前会長時代から、大体「はじめに」では、「期待する」という表現を使っていまして、それを踏襲した。「はじめに」につきましては、「期待する」ということになっておりますが、ほかにつきましては、皆さんの御指摘どおり「積極的な対策を講じていく必要がある」といったような、そういう強い表現にしてあります。
 私の全体を見た感想では、大分私どもの主張がかなりストレートに表現されているというふうな印象なのですが、皆さんの方から御意見とか御指摘をまた受けたいと思います。御意見がありましたら、皆さん御自由にどうぞ。
 それから、ページは指定せずに、全体を通して何ページというふうに言ってくださって結構ですので、御意見があるでしょうか。
勝又委員
ちょっとさらりと読んだとき、5ページのところで、始めに資料2の引用で、「職務指定委員に占める女性の割合は2.2%となっており」というふうに言った後にさっと来て、下の(イ)のところで、しっかり読めば分かるのですけど、平成17年度については、「しかし、職務指定委員に限定して、女性の占める割合をみると、3.8%と低く」というふうに同じもので数字の違うものがぱっと出てくるという印象があって、これは私の印象なのですけれども、何の話だったかなというふうに、上の方をもう一度読み直すというか、これは13年度に調べたときは2.2%で、今回17年度に調べたときには3.8%で、多少改善したという、けれども依然として低いということがもう少し出たら良いのかなという気がいたします。
塚崎調査官
はい。
鹿嶋会長
(イ)の下の青い文字のところは、平成13年は2.2%だったが、それが3.8%と改善されたもののまだ全体を見れば低くというふうな、そういうようなことをちょっとダブるけれども、入れましょうか。
 男女共同参画についての位置付けについては、「はじめに」ではなくて、3ページの方の最初に持ってきましたので、「はじめに」が良いのかどうかということも事務局と話し合ったのですけれども、これは3ページの方に持ってきました。「はじめに」の方は、なぜ職務指定についての監視が必要かということ、まず理由付けを明確に出していきたいというところですね。
 文章を削ったところは、7ページの③だけでしたか、ほかに削ったところはないのですね。削ったところも一応表示する予定だったのですね。
塚崎調査官
あとは変えたところです。
鹿嶋会長
あとは変えたところだけですね。
塚崎調査官
消費者というところは削除しました。
鹿嶋会長
14ページの消費者も削ったということですね。
 袖井委員はどうですか、御意見ございますか。
袖井委員
「積極的に検討する」という表現がところどころ出るのだけど、こういう表現というのはどうなのですか。いろんなところへ出ているけれども、これは本当にやりますよという意味なのですか。役所用語として、ただの検討するよりも強いという意味なのですか。何度も出てくるのですけど、ちょっと気になります。
鹿嶋会長
役所用語で「積極的に検討する」云々というのは慣例的なものなのですか。これは私たちの意思をかなり強く表明しているということでは、これで私良いと思うのですが、やっぱり違和感ありますか。
袖井委員
何度も出てくるので。
名取局長
これはあくまでも先生方の報告のものですから、ですから別に役所がどうのこうではございませんので。
鹿嶋会長
強い意思の現れであるというふうに、ここは解釈しましょう。林委員は。
林委員
以前よりずっと分かりやすくなって良かったと思います。「積極的に検討」という言葉は、前は良いか悪いかも含めて検討するというレベルだったものを、それはもう違うよということを表していると私は受けとめました。
鹿嶋会長
大沢委員は。
大沢委員
分かりやすくなって良くなったと思います。前回、神野委員がおっしゃった国の関与と都道府県との言い方については、どこら辺で説明されましたでしょうか。
鹿嶋会長
13ページ。
塚崎調査官
13ページの一番上の2段落目のところなのですけれども、前回、地方自治尊重の観点という、地方自治体の柔軟な取組を可能とするような地方自治尊重の観点というふうにだけ入れていたのですけれども、もう少し強く、国の関与を最小限にするという趣旨を込めまして、「地方自治尊重の視点に立って、国による都道府県・政令指定都市の審議会等に対する関与を最小限のものにとどめているか」という形で強くしてございます。
大沢委員
分かりました。こういった実効性がある上からというよりは、下からの試みが重要であるという点も含めてこの報告書で出ると良いのかなと思いましたので。
鹿嶋会長
勝又委員はどうですか。
勝又委員
非常に分かりやすくなってよろしいかと思います。
鹿嶋会長
神田委員は。
神田委員
分かりやすくなって、積極的な姿勢が出たと思うのです。今の13ページのところが、神野委員の御意見でこういうふうに入ったのですけれども。
鹿嶋会長
表現ですか。
神田委員
ええ。何かちょっと表現が……。
鹿嶋会長
神野委員の問題提起はかなり大きな問題提起で、ストレートにはなかなか書きにくいところですので。
神田委員
それで、今、都道府県・政令指定都市の中にも、こういうことについてあまり積極的でないところも多い状況の中で、どういうふうな言い方をしたら良いのかなというのがちょっと、具体的な文言が分からないのです。
鹿嶋会長
代案は何かございますか。
神田委員
それがないのですよ。それで何とも言えない。
林委員
私はその辺を、例えば「はじめに」のところで、法令を見直して女性を登用しやすいように、地方公共団体から要望を出されたこと等を踏まえているというのがありますよね。そういう考え方を受けて、都道府県・政令都市に対する関与を最小限のものにというつながりで受けとめると良いのではないかと私は思ったのですけれども、もちろんおっしゃるように、必ずしもそういうふうに進めようという地方自治体ばかりではないから、むしろ国の積極的な関与があった方が良いというのもあるとは思うのですよね。だけど、地方分権を進めていくときの基本的な問題として、逆に地方に委ねることで進めたら良いのかなと思って。
鹿嶋会長
なるほど、そういうふうな意見も出ました。ほかに皆様御意見ありますか。この問題につきましては、私の方と事務局でもう少しこの点につきましては詰めるようにいたしますので、そういうことで御了解ください。
 それと、まだ、神野委員がお見えにならないのですが、さっき申し上げましたように、少し遅れますので、定足数の関係から、この本案についての了承を得るのはもう少し時間を置いてから後刻にしたいと思っておりますので、その点、御了承いただきたいと思います。
 それでは、次に、有識者ヒアリングに移りたいと思います。
 (女性ユニオン東京・伊藤みどり氏着席)
鹿嶋会長
先ほど申し上げましたように、本日は「多様な選択を可能にする能力開発・生涯学習に関する施策」についてのヒアリングを、女性ユニオン東京の伊藤みどり執行委員にお願いをしてあります。テーマは「パートタイム労働者の能力開発について考える」であります。伊藤さんどうぞよろしくお願いします。
伊藤氏
今、御紹介いただきました女性ユニオン東京の伊藤と申します。
 今日は「パートタイム労働者の能力開発について」ということですけれども、最初に簡単に私の活動について自己紹介したいのですけれども、私は95年、ちょうど日本型の雇用管理というか、そういうのが変わる節目になる年だったと思うのですけれども、95年3月に、女性ユニオン東京という労働組合を立ち上げまして、今年で12年目になります。その間、私たちの労働組合というのは、個人加入できる非常に小さな労働組合なわけですけれども、大体年間500~600件の労働相談を私たち受けていまして、今まで数にして7,000件ぐらいの労働相談を受けています。
 私たち、毎年毎年労働相談統計をとっているのですけれども、厚生労働省などの統計と比べると大体比例してというか、社会の縮図がそのまま統計になっているような実態でして、というのは、95年当時というのは、その典型として、病気の相談というか、病気にかかわる相談というのは95年当時ただの1件でした、1年間に。それが今50~60件、年間平均して来まして、それは厚生労働省のいわゆるうつ病だとか精神疾患による労災認定の統計とほぼ重なった数字となっています。
 それで、今日私に与えられたテーマとして、「パートタイム労働者の能力開発について」ということでして、つい先週でしたか、パートタイムが自発的にパートタイムになっているのか、それとも非自発的なのかということで調査した結果を厚生労働省が調査結果発表していましたが、その中で、正社員を希望しているけれども、「パ゚ートでしか働くところがない」というふうに答えた人が40%を超えているという統計が新聞でも報道されていました。ですから、そのところからパートの能力開発という観点を、今日資料でお配りしていると思いますが、私なりの実感として現場の労働相談をしている者として、ユニオンの相談事例から具体的に皆さんに訴えたいと思って来ました。
 最初に私のレジュメに沿って話をしたいのですが、10年前と今と比べると本当に働いている人たちは悲鳴を上げているというふうに言わざるを得ません。格差社会ということがいろんなところで、マスコミでも取り上げられていますが、先ほどの相談事例でも過労自殺だとかうつ病が増えているように、この10年間というのは、働く人たちの状況が激変して悪化してきたというふうに言わざるを得ないのです。
 私がどういう形でしゃべりたいかというと、一番最初に、非正規雇用というか、日本型パートタイムというのは、労働時間週35時間未満を短時間労働者と定義でされていますが、パートタイムと呼ばれている人たちは、非常に日本型パートタイムというか、フルタイムパートタイムというような形で、最近ではパートタイムでも残業や配転があるというのが当たり前のような時代になっています。そういった中で、どこまでがパートタイムというのか、非常に不明確な実態があります。そこで「能力のある非正規雇用の実態」という形で書いてみました。
 最初に、45分ぐらいの時間ですので、細かく話しているときりがないのですが、一番最初の事例は、中国でテレコミュニケーター募集といううたい文句で、働きながら中国語が学べますと。実際は中国に日本からリクルートして連れて行って、日本の最低賃金をはるかに割る時給250円で働かせていたと。実際中国語がきちんと学べて、日本に戻ってきて、その能力がいかせれば良いわけですけれども、実態はそうでないという、これは大変典型的だと思ったので一番最初に挙げました。以下もほとんど現実に女性ユニオンに相談に来た実態の中で、大手会社の派遣社員・パートタイム社員・契約社員等の実例を挙げているわけですが、ある外資系の金融機関では、派遣社員が、これは大手に多いのですが、派遣社員が管理職というケースがとても多くなっています。時給1,400円で米国の企業ですので、連絡をとるのに時差がありますから、自宅に帰っても深夜インターネットを使って仕事をしなければず、求められる英語力ももちろん高いですし、金融関係の仕事をずっと長くやってきていますから、相当高いスキルを持っていたわけですが、契約期間内に中途解除されてしまいました。
 次の大手新聞社の派遣社員の事例もとても驚く事例ですけれども、雑誌2冊を企画から編集、校閲、執筆者との交渉に至るまで完全に任されていました。それも社会保険に加入したいということを要求したら、次回の契約からは400円減給すると、言われました。こういうことも、単に女性ユニオンにたまたま来ている相談ではなくて、こういうことがしばしば現実に起きているわけですね。土日は正社員はゴルフコンペがあると出かけて行き、派遣社員は残りの仕事を全てこなすという、あまりの過重で大変だということで会社に辞表を出したら、通常であれば、ここまでやらせて、会社に残ってほしいのであれば、正社員になってくれないか、というふうに企業が言ってくるのが通常だと思うのですけれども、連日のように、あなたのようなスキルの高い派遣はほかにいないので、同じスキルを持った派遣を探してこい、というふうに連日脅迫されて、退職強要じゃなくて、退職させないぞという脅しをかけられた実例です。最終的にはこの女性は会社に行かないということで退職は無事できたわけですが、このように現実は、スキルは高く求めるけれども、正社員にはしてくれないし、あげくの果てに脅迫まがいなことまで起きているという実態です。
 次の事例は大手損保会社の契約社員ですけれども、この人はファイナンシャルプランナーというか、いわゆる保険会社に働く人たちが持っている資格を全て取得しています。それは正社員も取得していない資格を取得しているわけですけれども、しかし絶対に正社員になれない。契約書には、転換試験制度というのがうたわれていて、転換試験を受ければ正社員になれるというふうに書かれているわけですけれども、いまだに彼女と同じ業務に就いている人で、男性は正社員になったケースがありますが女性は一人も正社員になっていません。この会社も、名前をいえば、ああという、本当に有名な会社ばかりなのですけれども、派遣社員がチーフマネージャーをやっていて、契約社員の人事評価までしているという、とても信じられない事態です。
 そのほか、この次のケースは、外資系の契約社員で、総務人事というと、ほとんど人事ですから、給与とか、重要な社員の個人情報にかかわるようなことまできちんとやっていた女性で、会社からも非常に高く評価されていたわけです。ですから4年ぐらい契約更新して、30代の女性だったわけですけれども、能力も高いし、契約社員という身分であったわけですが、通常に働いていたわけです。妊娠を告げた途端に、あなたの仕事は常勤的な仕事ではなくて、臨時的・一時的な仕事であったのだと、急に仕事が補助的な業務だというふうに、妊娠を告げる前は非常に重要な仕事というふうに言われていたものが、妊娠を告げた途端に、あなたの仕事は補助的・臨時的プロジェクトの仕事が終わったので、雇い止めです。企業は絶対に妊娠が理由だなんていうことは言わないわけですね。
 次の事例も妊娠・出産にかかわることなのですけれども、この鍼灸学校の非常勤講師というのは、鍼灸学校の生徒募集の企業案内書にまで顔写真入りで堂々と掲載されていた女性です。だからこの鍼灸学校の理事長にも気に入られて雇用されていたわけです。その女性が妊娠、切迫流産を告げて会社を休んだ途端に、手のひらを返したように、雇い止めにあって、この場合は組合の方で交渉して、いったん職場復帰したわけですけれど、月収が30万から13万円と、担当授業を減らされてしまうというふうな嫌がらせがあって、もう能力が発揮できなくて、この方はちゃんと彼女の能力を認めてもらって別の学校に無事転職できたわけですけれども、こういった事態も本当に典型的な事例です。
 次の年俸制契約社員というのは、これは新卒(大卒)で入ったわけですけれども、ここは年収が280万円で、イベントの企画・営業までやっていて、労働時間があってなしがごときというか、年俸制なので残業はつかないと言われて、深夜毎日11時過ぎまで残業しているというような状況だったわけです。この彼女も、まだ大学出て24歳ぐらいだったわけですけれども、本当に私たちのユニオンにたどり着いたときは、長時間労働で疲れ果てて、涙がとまらないという、そういった事態になっていました。彼女は入社のときは、1年は契約社員だけれども、その後、社員にしてあげるからということで入ったわけですけど、何年たっても社員にならないという事態を見て、組合と交渉をしてみましたら、取締役以外は全員契約社員ですということで、「社員というのは、我が社は契約社員なのです」と、こういった企業も非常に多く見受けられます。
 次の偽装請負というのは、これは実は某大手放送会社なのですけれども、朝の9時から5時半まで、帰りだけタイムカードを押させられていたそうなのですけれども、完全に教室の企画立案運営まで、だから海外出張もやっていました。しかも労働時間も拘束させられていたわけですけれども、契約書は「請負」という形になっていました。このケースの場合は、労働基準監督署に偽装請負ではないかということで、私どもが違法性を追求して、契約社員になることはできたのですね。請負が偽装であるということは労働基準監督署も認めたわけなのですけれども、今度契約社員に無事、請負から直雇用というか、雇用者になれたわけですけれども、今度その契約社員になったから単純な仕事しかさせられないというふうに、全く能力は変わらないのに、あなたは請負から契約社員にさせてあげたのだから、単純な仕事しかさせられないと不利益変更されました。この方も語学力もありますし、そういう旅行業界に長年勤めていた方で、結婚して子どもが生まれて再就職でこの大きな会社に入ったわけですけれども、契約社員、組合で交渉して直雇用にしたら、逆に単純作業をさせられてしまいました。今、この人はあまりのショックで精神的なダメージを受けて病気休職中という、そういった事態です。
 そのほか、細かくいろいろ言っていると切りがありませんので、二つぐらい映像制作会社と派遣会社の事例というのは読んでいただいて飛ばしますけれども、一番下のマンション清掃員の教育管理係、これがまた珍しい事例で、これも名前をいえば、大変大きな会社なのですけれども、マンションのいわゆる4時間ぐらいのパートタイムの人たちに大型の清掃機とか、そういう人たちの清掃の仕方を教育するマンション清掃員の教育係みたいなことをやっていた人たちなのですね。この人たちもパートタイム契約社員なのですけれども、それが社員になれということを言われまして、社員になるか、マンションの清掃員と同じ短時間のパートタイムになるか、どっちかを選べということで、「社員になります」と答えたら、「何で社員になりたいのだ」と言われて、退職勧奨に遭ったという事例です。しかし、彼女たちは今無事に組合で交渉して雇用継続になって働き続けているわけです。こうした中で、今、事例を大変飛び飛びに話をしたのですけれども、何を言いたいかというと、先ほどのテーマのパートタイム労働者の能力開発について考えるというところに結び付けて、事例を長々と挙げたのですけれども、仕事は高い能力を過重に求められる。しかし、労働時間は長く賃金は上がらない、もしくは下げられる、こういう事態が現実の中で起きているのだというのをここで訴えたかったわけです。
 次のページです。「家庭の補助的パートはもう過去のもの!!」という、先ほど厚生労働省の40%以上のパートタイム労働者が、非自発的であって、自発的にパートを選んでいるわけではないという結果が出たと思うのですけれども、10年前は補助的で、家計補助で非自発的パートタイム労働者というのはそういうものだと。専業主婦が時間があるからちょっと働いて小遣い稼ぎだとか、子どもの教育費のためにだとか、そういった人たちが大多数、パートタイム労働というイメージだったと思うのですね。
 しかし、今、パートタイム労働者というのは、先ほど言った非自発的で本当はもっと働きたいのだけれども、パートしかないという人たちがかなり増えている。ですからそこのところをもう少し、厚生労働省が幸いその統計を出してくれましたので、とても実感というか、事実であるということが分かっていただけると思うのです。短時間パートの人たちの実態はどうなのか。本当の意味のパートタイム、35時間以内という人たちがどうなのかということでユニオンに来た相談なのですが、これは大手テーマパークレストラン、大手テーマパークと言えば想像できると思うのですが、ここは6時間パートだそうです。それで、ぴったり6時間でタイムカードを押して1分もオーバーしない。さっさと帰れと言われるそうです。そのかわり、6時間勤務なので、労働基準法で6時間以内だと休憩時間が要りません。なので、休憩時間がなくて、10時、11、12、4時という働き方だそうなのですけど、みんなそうだそうです。
 先輩は上司の目を隠れてつまみ食いしているけれども、新人は御飯なんか食べたらとんでもないということで、しかしおなかがすいて、10時に食べて行っても、立ち仕事でレストランでおなかがすいてしまうということでトイレで隠れて食べていると、こういう休憩時間をとらせたくないという、だから、本当にぴったり交替、交替制勤務にして効率良く人を使うという意味では効率が良いのかもしれませんけれども、こういった事態が出ているわけですね。
 次の物流センターもこのテーマパークのすぐ近くにある物流センターの話なのですけれども、契約は9時から16時という事態になっているわけですけれども、仕事がないと帰れと言われるわけです。これはよく倉庫で、例えばお歳暮などのそういう配送みたいなセンターのことなのですけれども、パートの人とすれば、その収入を当てにしてやっているわけですけれども、仕事が早く効率良く終わってしまったというと、「もう、ないから早く帰りなさい」。その逆に、あると「残ってやりなさい」ということで、ほとんど自分の仕事がないときは自宅に待機していなければいけない。これもユニオンで交渉して、普通のパートタイムの契約書を交わしましたけれども、こういった働き方をしている人たちは本当に口約束だったりして、オンコールワークという言葉がありますけど、労働時間の管理があって、なしがごとくで、とても自由に見えますが、このパートタイム収入で生活しようと思うと、予定が立ちませんし、何か友人と約束したりだとか、そういったことも時間管理が自由と言えば自由なのですが、非常にイレギュラーで、使用者側の仕事があるから働け、ないから帰っていいよということによって毎月の定額の収入が得られないし、非常にイレギュラーな働き方で、なかなか定着しないという状況がありました。
 次の大手都市銀行関連会社、これは私は実際ここの現場を見てきました。実に驚きました。というのは、これはある大手都市銀行で、ここの正社員の相談から見に行ったわけですけれども、職業病になっちゃって、それは肉体労働だから、少し軽減してもらえないかということでそのところを見に行ったら、会社の方は、これは一般事務職の仕事ですというわけです。それが見たところ、かつて銀行の一般職がしていた仕事のうち、伝票を綴る、銀行に行けば分かりますけれども、入金伝票というか、振替伝票いろんな伝票があるのですけれども、そういった伝票の照合だけをしている。あるいは手形照合だけをしている。全て一般職がいろんな仕事の中で部分的な仕事としてあったものを全国の支店の仕事を1カ所にまとめちゃっているのですね。だから凄まじい体育館みたいな広い事務所に、パートの人たちがずらっと並んでいて、すごい勢いで1日ノルマ千何百枚みたいなことが書かれていて、加算機で伝票を入力して、照合して綴じてというようなすごい、ある種、銀行の人事部は一般事務だというのですけれども、どう見ても肉体労働としか思えようがない、そういった仕事をパートの人がやっている傍らで、大手都市銀行は何回も統廃合がありましたから、出向された社員も同じ仕事をしているというふうな事態がありました。
 それから、入力業務の方も、更新のために「土曜、日曜出勤可能です」と書かないと契約更新してもらえないだとか、パートタイムで働いている人たちの実態がとても厳しい事態が進んでいます。社会保険に入りたいと言ったら、労働時間減らされるというような事態は通常どこでもあるような話でして、今、パートタイムの人はどちらかというと、労働時間短くされちゃう。もっと働きたいのにという相談がユニオンにはたくさん来ています。
 それから、ここで特徴的には、指定管理者制度という新しい法律の中で、保育園などで非常に厳しい事態が起きています。ちょっとその辺の話をすると、非常に長くなりますのではしょりますけれども、現実の今、フルタイムパートタイムと本当の意味でのパートタイムの実態を長々と言いましたけれども、昨年1年、2005年度の2月から2006年度の1月の女性ユニオンに来る相談が600件ぐらいあるわけですけれども、そのうち210件が非正規雇用の相談で、契約によるトラブル、雇い止めというのが多くあるというのが実態です。
 次のページ、3ページ目からが、パートの能力開発について、今の実態を踏まえた上で、私の考えを述べさせていただきたいと思います。今、格差はあるところによると、団塊の世代が退職して、そこが増えるから格差が出ているのではないかという説もあるのですけれども、国税庁の調査ではっきりと、見れば一目瞭然で、女性の65.1%が300万円以下という、年収比較で見れば、本当に一目瞭然なものだと思うのですね。そういう中で、貧困の女性化という概念があります。これは共通した概念だと思うのですけれども、日本も例外ではなくて、雇用機会均等法によって、女性たちが職業のいろんな分野で活躍する機会は増えました。それはとても良いことであったわけですけれども、しかし、実際、機会が均等になって、女性たちがどのような状況になったかというと、伝統的に男性が従事していた仕事に女性が就くことで賃金が下がるというのを「貧困の女性化現象」と言うのですけれども、日本でも同じような事態が起きていると言わざるを得ないと思います。
 一番典型的な事例が、99年深夜勤解禁のときの一番話題になったタクシードライバー、女性もタクシードライバーやりたいから深夜の勤務を解禁してほしいということであったわけですけれども、今、タクシードライバーは年収200万円を得られないということで、食べていけないという事態になっているわけですよね。あと、大手バスのドライバー、都バスなども、今日も来る途中で都営地下鉄に乗ったら、45歳以上60歳まででしたか、非常勤職員という形になって、時給が1,500円。以前でしたら、バスのドライバーというのは、大型車両を運転する中でもベテラン中のベテランで、乗客の安全を保つために非常に熟練が必要なドライバーだったのですが、女性のドライバーがそこに進出することによって、男性の働き手も賃金が引き下がっていくという、そういった現象があると思うのですね。今、働く人の3人に1人が非正規雇用の時代というふうに、これは承知の事実なわけですけれども、パーセントでいえば、女性の52%が非正規雇用、男女合わせて約1,600万人、そのうち女性が1,100万人、女性のパートタイムと言われている人がそのうち870万人という、こういった事態の中で、パートの能力開発というのはどういうことなのだろうか。
 家事、育児、介護といった世界、いわゆるアンペイドワークと言われている女性たちが、伝統的に女性の役割とされてきた仕事が、保育、看護師、ケアワークと言われていると思うのですけれども、そこの仕事というのは、私は専門職で、人間の感情を扱う仕事で過重労働なわけです。ところがこういった現場で、人間関係の崩壊が起きているというふうに言わざるを得ない。
 私は、統計としては持ってこなかったのですけれども、この2~3年でケアワークの中のコミュニケーションがとれなくて、いじめが蔓延し、仕事干しだとか、人間関係が非常に悪化しているというのを労働相談の中で実感しております。これは一つの研究者の見解なのですけれども、人のケアをするという仕事はとても大変なことで、自分の感情を、疲れているとかそういったものを押さえて、人にいつも笑顔で接していなければいけないという、それが過重のストレスになって、逆にケアワークの人がお年寄りに虐待をしてしまうとか、保母さんたちが子どもに虐待をしてしまうとか、看護師が患者にとか、働く者同士で、今、モラルハラスメントという言葉も社会的に出てきていますけれども、そういった労働相談が急増しています。本当に荒れているなというふうに、あるケアワークの在宅支援センターのヘルパーさん、ほとんどこういう人たちはパートタイムというか、短い労働時間で働いているわけですけれども、携帯電話を持たされて、支援センターから電話が転送されてきて、労働相談の最中にも利用者さんから電話が鳴ってくるという、利用者さんからの電話が鳴ってきたときは、笑顔で答えなければいけないという、本当に人間技ではないぐらい非常に厳しい事態があり、これは実態をもっときちんと調べてほしいのですけれども、ここ2~3年、そういったことは10年前はありませんでした、ここまでひどい相談というのは。そのことが「落とされる自己尊重感」と私は書いたのですけれども、自己尊重、人の助けは一生懸命やる、会社のために働くということがぎりぎりまでやっている中で、非常に自己尊重感が持てなくなっている。パートタイムで働く人たちが自分のことを大事にできなくなっているという事態があります。
 これはユニオンで実際に体験したある信用金庫の事件ですけれども、ある信用金庫で年金が横領されましたということで、きっとパートの人がお金に困っているから盗んだに違いないというか、疑いをかけられて刑事事件にまでなってしまったのですね。これは特殊な例のように書きますけれども、こういった労働相談はとても増えているのです。レジのお金を盗んだ、パートに違いないとか、レジのお金が合わなくなった、必ず疑われるのはパートの人たちなのですね。
 実際この事件は、刑事事件になりましたけれども、無実がちゃんと証明されて無罪判決を勝ち取りましたけれども、非常にこういった似たような事例がとても増えているというふうに、私がここでしゃべると、特殊な事例だというふうに思われるかもしれませんけれども、こういった相談も、10年前はほとんどというか、聞いたことありませんでした。最近それがいろんな大型チェーン店のスーパーだとか、そういうレジだとか、食品のそういうサービス業のレジ係のパートの人が濡れ衣を着せられるというふうなことがあります。それから、派遣社員のメンタルスケアも含めて心が傷ついているという事態も多く見られまして、派遣社員というのは、派遣元に雇用されて、別の会社に働きに行かされるという雇用形態なわけですけれども、人事評価をするために、派遣社員が派遣社員を監視するという、派遣社員の中に人事評価をさせるというか、派遣先の中でお互いの仲間を評価するような派遣社員を会社側が派遣しているという、そういった事態がありまして、とても厳しい状況になっています。
 あと、パート社員同士のいじめだとか、コミュニケーションの断絶といった問題も深刻に現れて、それは言うまでもなく厚生労働省の女性の精神疾患の急増、自殺率の急増にもあらわれている事態で、それは決して正社員だけの問題ではなくて、パートや派遣・アルバイトといった雇用形態で働く人たちの中にも自己尊重が保ちにくいというか、同じ社員が信頼できない、コミュニケーションが断絶しているという事態もあります。
 次に再チャレンジという能力開発の、これは私の率直な意見ですので、皆さんと話が合わないかもしれないのですけれど、今、政府で再チャレンジということで能力開発とかいろんな事業があちこちで起きているのですけれども、本当にそれが働いている人たちの役に立っているのだろうか。資格を取得している人たちが大変増えているのだけれども、就職率と結び付いているのだろうかというのが私は、一番疑問に思うところなのですね。
 それはつい最近までは載っていた統計が、最近になって非常に疑問なのですけれども、利用者が増えている学校だとか専門学校だとか、雇用・能力開発機構だとか、そういう政府の下請け的なところの事業などでも、非常に利用者は増えていると思うのです。というのは就職が厳しいので、手に職を付けないと再就職できないという事態があって、大学生もダブルスクールで専門学校は繁盛していますよね。でも、果たして就職率が、どこまで本当に就職できているかといったら非常に疑問です。先ほど言った非常に高いスキルを持っているのに、職場で協調性がないと言われたり、リストラされたりとか、そういったことを見ると、本当に再チャレンジというのがいかされてというか、実際に働いている人たちの真の再チャレンジに結び付いているかというのが非常に疑問なわけです。
 かつて女性の一般職の人たち、正社員の一般職のやっていた仕事が今ほとんどパートや派遣社員がやっています。一般職の人たちというのはほとんど死語に近いぐらいパートや派遣に置き換えられ始めていまして、逆に残業や時間外や転勤をしないというと、一般職の女性たちが、あなたはパート並みのことしかできないのだからパートになれというような逆なことを言われるという事態があります。そういった労働条件が上がらない中での能力開発という状況の中で、条件が上がるのであれば正社員を選択するのでしょうが、女性たちの中では契約社員の方がましだという選択も見受けられるというか、だから派遣であっても、パートであっても高い能力を求められているというのが、私が感じる実感なのです。
 よくあるのは、社会保険労務士なんかも、かなり100点ぐらいに近い点数を取らないと狭き門で、社会保険労務士の資格が取れないと聞いていますけれども、今度ADR法ができて、社会保険労務士も労働相談とか乗り出せるという、少し雇用がそこで広がるのかもしれないですけれども、本当にあれだけ毎年、毎年社会保険労務士が送り出されていて、開業できる人たちがどこまでいるのかというのが非常に疑問です。女性ユニオンの近く、代々木なのですけど、巨大な美容学校があるのですけれども、そこも物すごい数の生徒が毎年社会に送り出されていますけれども、そのうち何人が一体本当に美容師になっているだろうか。美容師になってきちんと生活できるというか、職にありつけているかというと、やはりとっても疑問です。厚生労働省や内閣府でも一度統計でとっていただきたいというか、資格と職業というのが完全に結び付いてないのではないかというのが、私の今の能力開発と言われているいろんな事業のお金が非常に巨額な予算をとられているにもかかわらず、そこの学校や会社はそれで潤うのかもしれないのですけれども、教育事業はそれで良くなっているというか、ある専門学校の先生が、今はとっても景気が良いです、と言っていました。それは生徒がとても増えているからですね。
 だけど、そこで資格を取った制度が本当に就職できるかといったら、いささか過剰な資格になっているのではないかと。単純に例えば英語ができるなんていっても、それだけではとんでもないというか、今、派遣でも英語できる人いっぱいいますし、パートの人でもできる人いっぱいいますし、それぐらいの能力では別に優れた能力だなんて言えないというか、そういった事態が今あるのですね。
 あと、これは外れるかもしれないのですけれども、障害者雇用の能力開発というのも、いろいろやられているのですけれども、ユニオンでは、障害者雇用で能力開発、ちょっと話がずれますけれども、ということで、能力開発してもらって、就職した先でセクハラに遭って、そのときに作業指導員という人が、障害者なんて、どうせセクシュアル・ハラスメントを受けたということを認識できない、被害妄想に違いないとか決めつけて、そういった人を能力開発と言いながら、何て言ったらいいのでしょう、うまく言えませんが、本当にその人自身の持っている力を引き出して能力を開発していくというのとはちょっとほぼ遠いのではないかというのが、私の労働相談やっている中での実感です。
 本当に必要な能力開発、生涯学習とはというところで、ここは私の独断でというか、私自身の意見になってしまいますけれども、最近、企業の人事管理者の、先ほどもモラルハラスメントという職場での自殺だとか、精神疾患の状況を見ますと、企業の人事管理に携わる人たちの教育というのが非常に遅れているのではないかというか、とても信じられないような、人権意識というものが低下しているのではないかという事態がとても多く見受けられます。セクシュアル・ハラスメントは一番女性ユニオンでよく取り扱っている事例なので分かりやすいので言いますけれども、セクシュアル・ハラスメントの就業規則を作った人事担当者自らが加害者であるとか、そういった事態が多々あるわけです。だから、そこの、例えば労働基準法はもう時代遅れだという、そういう考え方も最近一部の方たちの中に出ているようですが、私は労働基準法というのは、働く人の最低の人間らしい生活を守るために今も必要だと思いますし、ホワイトカラーが大部分を占める時代であっても、先ほど一番最初に言いましたホワイトカラーの仕事も非常に大変な肉体労働に劣らない精神的苦痛を味わう大変な仕事をしていまして、そういった労働基準法などの遵法精神というのが非常に衰えて、学校でも教えていません。企業でも、以前は入職したときに、企業は必ず社員研修で、労働時間がどうなっていて、休暇がこうなって、福利厚生がこうなっていてということは企業研修で職業訓練と同じように企業が教えていたわけです。ところが最近は、その存在すらも見せないというような企業が大手企業の中でも増えていまして、例えば若い、今20代の前半の人たちに聞くと、労働時間は仕事が終わるまでというふうに思っている人たちが大部分です。それと有給休暇があるということすら本人に知らされてないという、これは中小企業の話ではなくて、大手企業でもそういった事態が起きていることを知っていただきたいと思うのですね。
 職業訓練も金次第という、そういうことになってしまうと、それは格差社会どころではないという状況で、私は生涯学習に必要なことは、今、多様性とかダイバーシティーという言葉がとてもはやっていますけれども、一にも二にも人権教育というか、外国人労働者だけではなくて、雇用形態が職場の中で非常に多種多様になってきているわけですね。職場に派遣やパートやアルバイトや様々な雇用形態、最近では大手スーパーなどはクルーとか、いろんな名前を付けて社員を区分していますけれども、そういった社員たちの間で利害が対立したり、職場のいじめが起きてしまったり、最近はインターネット社会で、隣に座っているのに、業務指示まで、指揮命令を言葉でしゃべらないで、全部インターネットのメールでやるというような、本当にこれはいかがなものかというか、隣の席の人ともメールで業務指揮命令をやっているという、そういう状況の中で非常におかしな事態になっているわけです。
 ですから、労働法の周知徹底も、私は人権教育の一つだと思いますし、それから能力開発の中に必ず出てくる言葉で"エンパワーメント"という言葉があるわけですけれども、これが力をつけることという言葉の誤解を生んでいる。そうではなく、エンパワーメントというのは、一人一人が持っている資源をいかすこと、私はそういうふうに考えていまして、そのことが企業を本当の意味での一人一人の持てる力をいかしていくという教育が企業の活性化につながるというふうに本当は思うわけですけれども、力のない人に力をつけてあげるという一方通行の教育が多いのではないか。そのことがいくら多種多様に資格をたくさん取らせてもなかなか企業社会だとか一般社会の中でいかされてないというふうに感じます。
 それから、自信がなくなっているという、ここはパートで働く人や派遣で働く人や、女性たちの非正規雇用で働く人たちに見られるわけですけれども、ちょっとした自己主張をしただけで、あなたはだめだというふうな言われ方をしたり、すぐ退職勧奨やリストラ、いじめといった中で、自己肯定できなくなってうつ病や精神疾患に陥ってしまう人たちもいるわけですね。そういう人たちが自己肯定できるような教育の在り方というものが大変必要なのではないかと思います。
 パワーハラスメントという言葉を出しましたけれども、企業の社訓なども、とても良い社訓もあるのですが、全てこれを悪いとは言わないのですけれども、よくユニオンで、私はいろんな会社に団体交渉とかいろんなところに会社と交渉で出かけて行くわけですけれども、必ず会社の壁に社訓というのが貼られていて、それがとても自己犠牲を強いるものが非常に多くて、果たしてそういった精神的な締めつけというか、そういったもので本当に人が持っている力をいかせるだろうかというような気がします。
 それから、次にILOというのは、別の場所で話すことなのかもしれないのですけれども、実は私たちユニオンは、アジアのいろんなネットワークをしているわけですけれども、日本はどうしてコミュニケーショントレーニングとか、単に職業トレーニングだけではなくて、いろんなトレーニングのマニュアルというか、そういったものが、ILOなどでも何カ国語にも翻訳されていまして、アジアでもいろんなところで、そういった教育教材の開発がされているわけですけれども、なぜか日本語に翻訳されてないのですよね。東アジアの人たちはフィリピンとかに集まって、いろんな職業トレーニング、語学トレーニングだけではなくて、貧困の人たちが自信をつけて社会で生きていけるためにコミュニケーションのトレーニングだとか、いろんなトレー二ングをやっているわけです。そういったものが、日本では輸入されてないというか、今までは必要なかったのかもしれませんけれども、そういったものが必要なのではないか。
 実は女性ユニオン東京も、4年ぐらい前から、アメリカの教育プログラムを輸入してというか、コミュニケーションのトレーニング、エンパワーメントのトレーニングなどを取り入れて、ディスカッションの仕方だとか、ポジティブに考えていく考え方だとか、そういったトレーニングをやって、働く人たちが自信をつけていくという効果を目の当たりにしているわけですけれども、そういったものが少ないというか、学校教育の一方通行の教育だけで非常に少ないように感じています。
 それから、これは厚生労働省だとか内閣府などでも言われていますけれども、母子家庭や低賃金女性たちや介護、育児を抱える人たちが可能な職業訓練をする機関が非常に少ないと思います。今、育児休業をとれるようになったわけですけれども、今、1年半の育児休業期間というのは、とてもすごいスピード社会で、職場復帰するというのは不安になってくるわけですよね。だから、ユニオンに来ている人たちなどでも、育児休業中でも本当に戦々恐々として、職場に戻ったら、自分の居場所はなくなるのではないかと言って、休業中にもいろいろ自分で、会社で援助がない企業が多いものですから、自己資金で学校へ行ったり、通信教育やったり、そういったことをやっている人がとても増えています。それはせっかく会社で好きな仕事をしてきたのに、育児休業ということで違う仕事に置き換えられたら悔しいという思いで、それこそ自分のお金でやっているわけですね。そういったところが、本当にそれがお金があってやれる女性たちばかりではなくて、そういったことができる女性はまだまだ一部の女性でして、本当にやりたくても、妊娠・出産をしたということだけで、そういったチャレンジをするお金も時間もなくなってしまって、妊娠の前は会社から高く評価されていたのに、あっという間に手のひら返したように低い評価で、単に低い評価だけではなくて、パートタイマーになれなんていうふうに言われちゃう、そういった女性たちもいるわけです。
 ですからパートタイムの能力開発を考えるときに、今ちょっと言いたいことが伝わったか分かりませんが、女性たちの多くはパートタイムであっても、仕事に生きがいを見出していますし、仕事が好きですし、働きたいと思っていますし、先ほどの厚生労働省の統計にもあったように、実際はもっと長く働きたいと思っている。しかし働かせてもらえないという人たちが4割もいるのだという、そういった実態を踏まえて、ぜひ内閣府の会議でも考えていただきたいというふうに訴えて、そんなところでよろしいでしょうか。
鹿嶋会長
ありがとうございました。大変厳しい実態が報告されたと思います。高い能力を求められている割には処遇がそれに伴わない。セクハラ、パワーハラ等も含めれば、人権教育も必要なのではないかといったような報告もありました。
 皆さんから意見を頂きますが、私、まず最初にちょっと質問したいのですけれども、パートの処遇について、今、厚生労働省は指針で三つに分けてやっているわけですね。均衡を確保する人と、均衡の処遇をする人と、意欲、能力と。均衡を確保するという人たちについては、例えばパート店長とか、かなり能力開発されているような人も出ているのですけれども、伊藤さんのユニオンの活動の中では、そういう人たちというのはまだあまりいない。均衡を確保するという、そういう行政指導なんか行われているような人になるための、言ってみれば能力開発はなかなか現状では難しいと、そういうようなことなのですか。
伊藤氏
均衡処遇というふうに言われているのは、私もパートタイム労働法の審議会、ずっと傍聴していたわけですけれども、そのときに人事管理制度でしたか、人材活用の仕組みが正社員と比べて同等なものを均衡処遇にすると。それが、同等のものというのはどういうことかというので、人材活用の仕組みの中身で労働時間の長短、それと配置転換などという言われ方がありまして、それというのは、労働時間が長くても良いというふうになると、それはパートタイムでは当然ないという、本来の意味で、男性の働き方をモデルとした働き方によって処遇を同一にしていくという考え方が、最近はワーク・ライフ・バランスとか言われている状況の中で、もう一回見直す必要があるのではないか。
 私が今日一番訴えたかったのは、パートと言われている人たちは本当にゆとりがないということです。この間、パートの取締役という、ブックオフの古本屋さんが大きく報道されていましたけれども、彼女の場合は子育ても当然終わって、そういったことをやれる時間もゆとりもあるから良いわけですけれども、大部分の女性たちはそういったところには行けないわけですね。ですから、そこを考えていただかないと、本当にごく一握りのパートタイムの人たちが均衡処遇と言われているけれども、大部分の人たちは高い能力を求められ、なおかつ残業をやらないと上げられないと言われて、厳しい状況に据え置かれるという認識を持っています。
鹿嶋会長
どなたか、ほかに質問、御意見とかありますか。
林委員
現在の政府がやっている能力開発事業は、就業と結び付いて役に立っていないのではないかという指摘があったわけですが、私が聞いていて、それを就業と結び付けるためには何をすべきだというふうに端的にお考えなのかというところがちょっとつかみにくい点だったのです、それをちょっとお話くださいますか。それが分からないままに、もっと職業訓練をというものが出てきたものですから。
伊藤氏
私が働いていた若い時代というのは、必ず先輩がマンツーマンで教えてくれて、大体3年ぐらいかけて、一通りの仕事を、教えてもらわなくてもできるようにするというのが普通だったと思うのですね。ところが今企業は即戦力を求めていますから、最初からパソコン能力もあって当然というか、そういう能力が前提となってという、そういうところばっかりだと思うのですね。今、比較的、私は東京都だから、東京都の事例で言うと、都立の職業訓練校なんかは昔からの就職率、それなりに落ちてないと思うのですけれども、具体的に言っていいか分からないのですけれども、すごいうたい文句で作ったところでは、利用者の数は相当多いのですけれども、例えばユニオンでも失業した人は、大抵失業期間中にほとんどの人が再就職のために、仕事センターとか、アビリティーガーデンとか、いろんな労働局の出先のところや学校へ行っています。行っているのですけれども、そこで受けた訓練と全然違う業種に就職しているというのが現実なのです。
 例えば編集の資格の訓練校に行ったのだけれども、出版社の職業ではなかなか見つからなくて、結局エディターの非常に細かい仕事に就くなど、訓練を受けたのと全然違うところに就職していたり、ホームページ作成とか一生懸命やったのに不動産屋に就職したり、資格があるというのは履歴書を飾ることにはなりますけれども、就職先とは全然違うというのがかなりあります。今、訓練して合っているというのは、ケアワークのところ、ヘルパー2級をとってヘルパーさんになったというのはよく聞きます。看護師の資格で看護師になった、そういうのは聞くのですけれども、事務的なところは結構ミスマッチですよね。だから本当に履歴書を飾っているだけという感じですよね。
 資格をすごく持っている人が本当に多いのです。私も、「履歴書にあまりたくさん書き過ぎるのも問題あるんじゃない」と言ったことあるのですけれども、企業側としては、職務経歴書というのを必ず、昔は単に履歴書だったわけですけれども、今、職務経歴書で判断する企業が多いですよね。だから、どこどこ会社で何をやってきたという、そちらの方が、多分企業が採るときは、職能経歴書の方で採っているのじゃないかと。だから資格で企業が採っているかどうかというのは、ちょっと疑問というか、あとは資格があるということで雇用されて、やってみたら全然できないじゃないかと企業から言われてクビになったと、そういうケースもあるぐらいで、職業資格と実際の職業というのはやっぱり結び付いてない気がします。
鹿嶋会長
それはパートに限らず、資格と就職先がマッチするというのは、一部の業種を除いてほとんどミスマッチというのが、パートに限らず、正社員なんかもそういうような状況であって、それはでもなかなかマッチさせること自体が大変難しいのではないのか、どうなのだろう。むしろ資格があるということは、一定の能力があるという、そういう判断の基準とか、こういうところで資格を持って、そのプロフェッショナルとして雇うというところがごく一部にはあるのだろうけれども、それ以外は努力の跡とか……。
伊藤氏
本当はだから企業に入ってから、結構大きいところでは、入ってからその仕事に就かせて、そこで必要なスキルを企業がお金を、補助というか、出して、それで学校に行かせているところもありますよね。ああいうのは結構役に立つというか、実際に仕事をしている中で必要なスキルを磨くために企業側が学校に行かせるという、そこをむしろ援助した方がいいじゃないかというか、だから……。
鹿嶋会長
そこはむしろ私は疑問があって、派遣とかパートという非正規の人はOJTとOFF-JTから切り離された人だから、OJTやOFF-JTのようなことができれば、それは正社員はきちんとできるのだけれども、派遣はそれがない中で、能力を培わなければならないので、じゃあ、どうすればいいのだろうという話なのですね。企業に入って培うというのは、これは正社員だからやるのだけれども、派遣なんかはまずやってくれない。
伊藤氏
派遣会社は有料で職業訓練やっていますよね。お金を出せばやってくれるというか、でも派遣の人は26業種、専門業種の人たちはかなり最近は高いスキルですけれども、正社員以上にできるのではないか。
 さっきのこの事例の中の大手出版社の人は、本当に仕事ができるから、いつの間にか長く、完全に直接雇用の申し込みをされてもいいぐらい長く働いていた方なんですけれども、正社員で彼女と同じぐらいできる人はいないわけです、周りに。編集長も派遣だったのですよ、ここ。だから、そういう人が正社員に本当にいないのですよ。正社員はただ指揮命令するだけ。正社員に同じ仕事しろと言ってもできない。そこまで行っている。
 だから派遣からすると、「もうがまんできない」という、その女性が言っていたのですけれども、高いスキルを求められるのに、社会保険入りたいと言ったら、「じゃあ、400円減らすぞと、次回の契約は」と。彼女は年齢も40超えていますから、今さらほかに転職できなかったわけです。ですから我慢して、それでも彼女の能力を会社が認めているのはよく分かるわけですから、そこで我慢して働くわけですよね。でも本当に辞めるときは、ぎりぎりというか、完全にこれ以上、働いていたら病気になってしまうぐらいのところで辞表を出したわけですね。それでも辞めさせないときたときは、「何考えているの」と。「正社員にしてくれるという話が最後までなかった」というのですね。「同じ派遣を探してこい」と言われた。
鹿嶋会長
どうぞ、質問があれば。
大沢委員
今のお話を伺っていると、能力開発も確かに重要かもしれないけれども、もう少し雇用の枠組みというのでしょうか、そのこと自体を今考えていかないと、問題が解決できないということがお話の趣旨だったのかなというふうにも思うのですが、つまり、96年からユニオンの活動を始められて、この10年の間に起きたことというのは、伊藤さんが見てらした、それが最初のお話にあったと思うのですが、つまり昔だったら正社員がやっていたような仕事が、雇用形態が変わって、偽装派遣になったり派遣社員になったりいろいろな形で変わっていたけれども、より不安定な仕事であって、能力は正社員並みのものが求められてきているというお話の趣旨だったと思うのですね。
 そうなってくると、能力開発ももちろん大切なのだけれども、それをやったとしても、より不安定な仕事で過重労働の中に労働者が入ってしまうのではないかと。結局そうすると、最終的には日本経済にとってもマイナスになっていくわけですね。そういう人たちの技能が会社の中に積み重なっていかないということで、そうすると枠組みを変えていくということが今重要になってくると思うし、ヨーロッパの国で見ると、派遣労働の問題なんかでも、規制を緩和して、そういう不安定な雇用を増やそうというよりは、規制の在り方を見直そうということで考えられているように思うのですね。
 そういうようなところで言うと、伊藤さんが考えられる理想的な枠組みというのはどのあたりにあって、どんなふうに規制が必要なのか。規制をしていかざるを得ないと私は思うのですが、その規制の在り方が、どこが問題で、どういうふうに変えたらいいのか、ちょっと大きな問題になって恐縮ですが、お知恵をぜひ拝借したいと思います。
伊藤氏
非常に難しい問題なのですけど、この間の厚生労働省の発表で、年間労働相談件数が90万件を超えている。これはこの間、フランスでも若者たちがいろいろ大きな運動をしたわけですけれども、それぐらい、90万人の人が相談窓口の門をたたいているという、それはフランスのような形にはなってないのですけれども、これは私は大変な悲鳴だと思っているのですね。それは5年前には20万件ぐらい、政府の統計では。
 今の再チャレンジの支援策の中で、求職者の能力開発と雇用のニーズがミスマッチという言い方になっているわけですけど、職業能力と雇用ニーズがミスマッチなのではなくて、人はいるわけですよ。さっきのエンパワーメントというのは人に力をつけることではないのだよという、そのエンパワーメントという言葉を、これはアメリカから生まれた言葉だと思うのですけれども、エンパワーメントという人の持っている力をどう引き出すかというふうにとらえ直すべきなのであって、どうも人に力をつけてあげろという、そういうふうになっているように思います。それが職場を大変荒れた状況にしていて、本当にこれが何か今景気が良くなったというふうに言われていますけれども、働いている人たちの現場ではあまり景気が良くなったという実感が持てない。
 確かに景気が良くなったと言われている企業の中では、何年ぶりかに昇進というか、昇給があったというところでは良くなったのでしょうけれども、女性の半数以上はそのおこぼれにはあずかってないわけです。しかもモラルハラスメントだとか何とかと言われた状況というのは決して企業にプラスになっていると思えない、逆だと思うのですよ。そこは企業でも今一生懸命コーチングトレーニングだとかエンパワーメントで、コミュニケーショントレーニングとか、最近大変はやりで、企業の中でもやっていますけれども、どうも同じ言葉を使いながら一方通行にやっている気がします。今の大沢さんの言っているのは非常に大きすぎて、何と答えたらいいか分かりませんけれども、今のようなパートタイム・派遣だとか雇用管理によって区分して、それで能力管理していくということではなくて、仕事に対してどういうスキルが必要なのかということで、ちょっと忘れてしまいましたが、社会生産性本部ではなくて、どこかで、派遣社員か、例えばSEだと、どういう知識、能力、技能が必要でという職業分析をやっている研究機関があったと思うのですけれども、もう少し職業分類をきちんとそういった形で開発して、それに必要な能力はどういうことだというふうな、それに見合う賃金がいくらいくらというふうに作られれば、職務に必要な技能と賃金とが結び付く雇用管理になれば、今のような不公平感ではなくて、目標が見えるわけですから、どういうスキルがあれば、いくらの賃金がもらえるという、そういったはっきりした形のものになれば、働く人たちの不満感というか、今の格差社会と言われているような事態ではないものがつくられてくるのかなと。
 私はそれは同一価値労働同一報酬と言われているILOの条約を実行することだと思っているのですが、それは、一部、ど忘れしてしまったのですが、少し職業分類がやられ始めていますよね。そこをもう少し明確にして、企業を超えた賃金相場というものがつくられていけば、少し一人一人が持っている力を引き出すという方向での能力開発になるのではないかというか、うまく言えませんけれども。
鹿嶋会長
ありがとうございました。袖井委員どうぞ。
袖井委員
簡単なことなのですけれども、今、お聞きすると、非常にひどい労働条件で働いていらっしゃるわけですね、休憩もないとか、労働基準監督署とか、ああいうところは何をやっているのでしょうか。
伊藤氏
労働基準監督署は行財政改革の中では減らされる対象になっているという、私は聞いたのですけれども、雇用均等・児童家庭局は据え置きらしいのですけれども、今、全国で労働基準監督官は3,500人とか非常に少ないわけですよ。それが90万件の労働相談を受けられるはずがないので、ほとんどが企業のOBだったり、経営コンサルタントだったような、リタイアした人が嘱託職員みたいな形で労働相談窓口に座っているわけです。
 私たちも何回も相談、当事者と付き添ったことあるのですけれども、その人たちはプロフェッショナルではないので、基準監督官のような相談は実際できないわけですね。だから話は聞くけど、聞くだけというか、ですので、私は労働行政でいうと、基準監督のところは予算がどんどん減っている。どうしてそうなっているのか、90万件という数字がありながら減らしていくというのはどういうことかと思います。それはあるところでは、その部分の予算を能力開発や職業訓練の方に取ると言っているのですけれども、どうもそちらのお金が、誰のためにいかされているのか。国民のニーズからすれば、労働相談の方がニーズがあると思うのですけど、大変そこは矛盾に感じています。
袖井委員
婦人相談室もあるのですよね。
伊藤氏
婦人相談室は今ないです。
袖井委員
どんどん削られちゃって、そうするとどこもないわけですね。
鹿嶋会長
雇用均等室は残っていますよ。
伊藤氏
雇用均等室は少子化問題があるので、そこだけは予算は。
袖井委員
予算的には減らされていますよね。
伊藤氏
均等室はあまり減らされてないと思うのだけど、少子化問題があるから。
袖井委員
少子化はやっているけど。分かりました。
神野委員
私はずっと6年間労務管理やってきましたので、その経験からいえば、もともと身分制による労務管理やっているわけですね、職種別にとかそういうやり方ではなくて。その身分制による管理というのは、終身雇用とか日本的経営というのを前提にしていたのですが、そこが崩されたときに、こちらでそれをバックアップする社会的なシステムができ上がってないというのが一番大きな要因で、それがどこから手をつけていいのか分からないのですが、例えば教育も、学校教育と成人教育というのはきちんと二本立てになっていない。それからミスマッチが起きるのも、試験雇用というか、試し雇用制度とか職業紹介行政がきちんとして行われていない。それから、欠勤の権利なども使えないのも、同一賃金同一労働にもなっていなくて代替要員がすぐ出て来ないわけです。かつ訓練を受けるための就学前教育というか、就学前施設、保育園と言っていいのか、幼稚園と言っていいのか分からないのですが、多種多様にでき上がってないわけですね。ごく短時間で預けるためのものとか、全然社会的にできてないわけですね。
 総合的に年功序列というか、日本的な労務管理を、これは大企業だけだったのだけれども、前提にしてでき上がっていた行政ないしは社会的なシステムをここでやめるのであれば、つくり上げておかなくてはいけない話が全然できてない。企業内教育というのは、一応私がやっているときには、見習い登用という制度があったのですが、見習いも教育やっているわけですよ。
 労働組合が一番責任あるかもしれないのですが、労働組合にもちゃんと話させて、あなたの権利はこうだという講座もちゃんと設けてきちんとやっていたわけですね。それは人手不足という労働の需給バランスがあったのかもしれませんが、そういう制度が維持できなくなったときに、それは社会的なシステムはそこを支えるようなことをやっておかなくてはいけない。
鹿嶋会長
それは正規雇用者が大半であれば機能したと思うのですね。今、彼女の話は、正規雇用じゃなくて非正規雇用ですから、今言ったようなものはほとんど崩れたものを前提にした話ですよね。
神野委員
ただ、我々のときにもちゃんとバッファーで季節工とか、見習い登用とか、正規従業員以外のところがたくさんいたのですよ。終身雇用で守られているというのは基幹的な部分だけで、バッファーは季節工とか期間工といいまして、アルバイトですね、簡単に言ってしまえば。それから見習い従業員、つまり登用制度というのがあって、昭和30年代であれば、かなり6年とか長い年月かけないと正規従業員に登用しないとか、そこでバッファーをやっていた。
 ということは、昔もそれなりにちゃんとあって、それは身分できちんとやっていたわけですね。それから、正規従業員の中もきちんと身分で身分制管理をやっていたわけです。そのかわり教育とリンクしていまして、初級から上級事務・技術員までそれぞれ教育を受けながら合わせていて、企業の方もちゃんと能力を身につけてもらわなくてはいけないので、さっきおっしゃった言葉でいえば、OFF-JTみたいなものが体系立ってあって、それと処遇と、つまり何級職で上げていくという話とは明確に結び付いていたわけですね。それを今度はある程度崩していくというのであれば、こっちのOFF-JTに代わるものを社会的につくっておかないと、ちょっとやりようがないのではないかと思うのですね。
大沢委員
うまく言えないのですけれど、今何が起きているかというと身分制の方の正社員の方はそのままになっていて、期間工とかアルバイトの部分がわあっと増えてきて、女性もそこに入ってきているということだと思うのですね。ですから日本が今できるとしたら、この身分制の身分というところを変えながらも、こちらのもっとできている教育訓練とか、そういうところの方の仕事をいかに増やすかというところで、この身分制を壊してしまって、みんなが不安定になっていくということはあまりに悲惨な状況なので、この身分制を壊していく中でも、かつ教育訓練が確立するように何か変化させていけないかということを考えようとしている。
神野委員
私のイメージでいけば、経理の、例えば2級職の何といえば、こういう能力があれば雇いますということになっているわけですよね。それは下から上がって行く正規従業員であろうと同じことになると。そうするとそこのところは緩やかにしてあげるといっても、そういう資格を持っていれば、同一労働同一賃金にすれば良いわけで、職務分析をすればその格付けはできるわけで、その職務について必要な人材ができてくれば良いと。
 普通、職業紹介所に行って、私の職業ないかしらとこういうふうに言いますよね。そしたらば、あなたの職業だったら、経理の2級の仕事があるのですが、チャレンジしてみますかといって紹介やりますよね。やって、そして普通の場合には、私が見ているスウェーデンなんかだと試し雇用期間が6カ月あるわけですね。この6カ月間は試験的に雇用されますが、その試験的に雇用される賃金は政府が支払うのですね。政府が支払いますので、ただ働きさせることが企業はできるのです。だめだと拒否したときには、企業の側はただ働きさせたのですから、あなたはこういう能力が足りないから雇わないので、こういう能力を身につけてくれば雇うというふうに言わないとだめなのですよ。それを今度、職業紹介所に戻されます。職業紹介所はこういう訓練を受けますか、受けるといえば受ける。教育はただ。それから生活も前にもらっていた賃金の75%保障する。ということとセットでないとだめなわけですね、そこが。賃金も保障され、そこにチャレンジできるというシステムがあれば、今度は訓練を受けてくれば、そこの企業はそこで雇うわけですね。
 それから、高校からやり直さなくてはいけないという場合も、コンボックスという成人教育施設が義務付けられて市町村は全部持っていますから、そこでやり直しがきくというような、つまりいつでも、誰でも、どこでも、ただでというやり直しのシステムがあれば、格差社会でも大丈夫だというふうに首相がおっしゃっているのだったら、積極的労働市場政策に日本はもっと金使うべきです。今はほとんど使ってないですよ。
鹿嶋会長
今の政策は日本での応用は可能ですか。
神野委員
私は可能だと思いますが、どこから手をつけるかというのが問題で、実行するためには賃金制度も変えなくてはいけないわけですし、ただ、徐々に徐々に年功序列制が適用される人や、あるいはそのものが崩されていっているときに、ある程度、体系立てて準備しておかないと、単なる女性の救済だけではなくて、男性も同じ目に遭っているわけですから。
大沢委員
ですからそこら辺の、今、これから人手不足になっていくわけで、そこでの正社員の在り方というのは、例えば間接雇用が禁止されるようになれば、転勤とか残業とか、伊藤さんの方が詳しいと思いますけれども、そういうことで身分差をつけること自体も法律で違反ということになってくる。だから、そこの制度をどうつくっていくのかということを考えて、そちらを増やしていくという方法が……。
神野委員
ミスマッチも臨時雇用制度を入れれば多分大丈夫だと思うのですが、例えばOECDの失業率とスウェーデンやデンマークで出している失業率との差がいつも2~3%あるのですよ。この差はそこの解釈なのですね。OECDは、国が賃金を出している以上、これは失業者だと認定するのですよ。冗談じゃない、ちゃんと働いているのだから、これは失業者じゃないと言っているのがスウェーデンとか何とかの主張で、OECDの統計でも、我々の基準からいうとこれは失業者なのだけれども、本国の主張では、当該国の主張では失業者でないと、両方載っけているはずなのですね。
 そういう制度とかがあるのか、ないような気がするのですけれど、日本には。
大沢委員
臨時雇用が増えている中には、そういうトライアル雇用を政府が積極的に増やしているがために臨時雇用が増えているという、ドイツとかデンマークのケースでしたけれども、失業と数えられる場合もあるけれども、臨時雇用というふうに数えられる場合もあって、日本とは違ってかなりそういったものを臨時雇用と考えていくと、ここで言われているような非典型雇用とはまた違った性質の臨時雇用になっていくわけですよね。そこで能力開発をしながら、正社員の資格がこうだから、この仕事に就くというような形に正社員の仕事に……。
神野委員
ここを連関させないとだめなので。
大沢委員
ということですよね。というようなことになってくると、もっと能力開発が生きてくるという話なのでしょうか。
伊藤氏
日本的経営というか、日本の経営者が能力というのは何かといったときに、時間の長短だとか、残業するか否かというのは能力では私はないと思うのですよ。例えば、女性たちが妊娠中とか、育児休業明けに育児時短とりますよね。そうすると労働時間が短くなる。労働時間が短くなるとほかの人と同じ仕事ができないと言われたくないので、短時間の間に仕事をして、昼休みも削ったりしてやっても評価されないという、だから私は、日本の成果主義がうまくいってないことについて考えますと、経営サイドの人事評価の中の能力とは何かというところに、時間の長短とか、企業に対する忠誠度とか、そういった精神主義につながるようなところの能力ということではなくて、何ができるかという、そういう評価になってないというのが一番問題ではないか。
 結局企業に育児休業をあきらめて、一人で起業してホームページの作成を請け負ってやっている女性がいますけど、そこの社長さんは、彼女は子どもがいるから能力が発揮できないと言って、すごい単純作業に追いやってしまったわけですよ。30年近く勤めていた人でもそういう目に遭っちゃうという、その人はすごい能力があって、自分で起業してしまうぐらい能力があったから起業したわけですけど、結局企業にとってみれば、そういう人材を失ったことになっているわけですよね。
 だから、いまだに伝統的なというか、人事評価というのが属人的な要素というか、協調性だとかというようなところばかりで能力の評価が多くて、仕事に対する評価じゃないというのが一番の問題というか、むしろ経営者側の教育をしてほしいなというか、経営者のその考え方、仕事を評価していくというのは能力の評価ではないという、本当に単なる協調性とか、そんなことばかり言っている気がするのですね。
林委員
時間がなくなって申し訳ないのですけど、今日のテーマというか、ヒアリングのテーマは、女性の能力開発というところですよね。能力開発というやり方が、就業と結び付いていない。そしたら能力開発の在り方、国のやっている能力開発事業そのものが問題であるのか、ないのかというところで考えると、一般的に社会でどんなに能力のニーズがあるかというようなことをもとにした能力開発というよりも、神野先生のお話を聞きながら、やった能力開発とそれを受けとめる企業との関係というのははっきりしているのですね。この能力が欲しいかから、こういう訓練を受けた人を雇用してみる、試しに雇用すると。そのときにどの部分が不足かということをかなり明確にして、なければ、これをつければ雇いますという、そこの関係というのを約束事としてきっちりしておけば、能力開発の在り方が、じゃあ、その能力をまたもう一回つけて訓練所はそこへ返していく。そうされたら、今伊藤さんが言ったように、違う理由で雇わないというわけにはいかないという責任が生じてくるのではないかなと思って、今お聞きしていたのです。
 だから、そこのところ、一般的なニーズの問題ではなくて、極めて具体的な企業ニーズと、本人の訓練と、企業の責任という問題と明確にした職業訓練の在り方とか、能力開発の在り方というものをつくっていくことで、無駄なことにならない仕組みをつくっていけるというふうな気が今したんですね。
 そのことで、その人の仕事の価値というものが非常に明確になってきて、しかもそれが年功型ではない賃金に結び付く要素を能力開発の中でつくっていくことができるのかというのを皆さんのお話を聞きながら私は思いました。
鹿嶋会長
ありがとうございました。この「多様な選択を可能にする能力開発及び生涯学習に関する施策」については、今後引き続いて調査検討を進めていきたいと思います。伊藤さん、どうも今日はありがとうございました。
 それでは、伊藤執行委員には御退席いただきます。どうもありがとうございました。
 

(伊藤氏退室)

鹿嶋会長
それでは、また最初の議論に戻りますけれども、職務指定に関する調査検討結果の取りまとめなのですが、先ほどは神野委員がいらっしゃいませんでしたので、これについての御了承いただく件について後回しにしておきました。神野委員の方で、全体として職務指定の調査検討結果の報告書を見て、何か御意見ございますか。
神野委員
私、前に申し上げたように、内容そのものは良いのではないかと思っていますので、問題ないかなと思います。
袖井委員
ちょっと議論になったのは、13ページのところで、神野先生の御意見を聞きたいということがありましたので、一番上の文章読んでいただけますか。
大沢委員
ブルーで書いてあるところですけど。「上記検討に当たっては」。
鹿嶋会長
要するに国が地方の問題についてどの程度いろんな主張していくことが可能なのかどうかといったような趣旨の発言がありましたね。前回、それについての意見をまとめたのが、3ページの上のブルーのところです。こういう形でまとめたということなのですが。
塚崎調査官
前回の表現を直しまして、「国の関与を最小限のものにとどめているか」という強い言い方に直しました。
神野委員
良いのじゃないでしょうか。何かまずいことありますか。
袖井委員
地方によってはあまりやってないところもあるので、こういう表現でも良いのかなという。
神野委員
積極的に地方の観点からやってないところがあるのでということですか。
袖井委員
「最小限のものにとどめているか」というこの辺。
鹿嶋会長
基本的には、これは私と事務局でもう一回見直します。
神野委員
だから、良いのではないかと思いますが。
鹿嶋会長
袖井委員もよろしいですか。
袖井委員
はい。
鹿嶋会長
それでは、御了承を得たいと思います。本案について、専門調査会の案として取りまとめ、次回の男女共同参画会議に報告させていただきますが、よろしいでしょうか。
 

(「はい」と声あり)

鹿嶋会長
ありがとうございます。なお、男女共同参画会議に報告する案につきましては、次回の男女共同参画会議の開催までに、皆さんに送付させていただきますので、よろしくお願いします。
 それでは、本日の審議はこれまでとさせていただきます。次回の専門調査会につきましては、別途事務局から連絡をさせていただきます。最後に事務局の方、何かありましたら。
塚崎調査官
お手元に資料1としまして、5月15日、前々回の会議の議事録を置いてございます。チェックをいただいておりますので、公表させていただきたいと思います。
 それから、前回の5月29日の議事録でございますが、この(案)につきまして、何か御意見等ございましたら、6月30日までに事務局までお寄せいただきたいと思います。
 それから、新しくできました男女共同参画白書をお配りしております。
 以上です。
鹿嶋会長
それでは、これで第11回の監視・影響調査専門調査会の議論を終わります。本日はどうもありがとうございました。

(以上)